特許第6661738号(P6661738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6661738
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】スーツケース
(51)【国際特許分類】
   A45C 5/14 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
   A45C5/14 Z
   A45C5/14 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-229637(P2018-229637)
(22)【出願日】2018年12月7日
【審査請求日】2018年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】516339830
【氏名又は名称】株式会社モダニズム
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】齊 瑞成
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0208774(US,A1)
【文献】 特表2002−505127(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3180777(JP,U)
【文献】 実開昭60−087804(JP,U)
【文献】 特開2002−264817(JP,A)
【文献】 実開昭47−026850(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0110203(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0163910(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床上を転がる少なくとも2個の車輪を備えると共に前記車輪を各々収納する凹部を備えているスーツケースにおいて、
前記凹部に取付けられ前記車輪を支える車輪ホルダーと、前記スーツケースの上面又は上部に備えられる1個の押しボタンと、前記スーツケースに内蔵され前記押しボタンの動作方向を変換する変換機構と、この変換機構から前記車輪ホルダーまで延びる少なくとも2本のワイヤとを備え、
前記車輪ホルダーは、前記車輪を支える車輪支持片と、この車輪支持片を昇降自在に支える支持筒と、前記車輪支持片を下方へ付勢するホッピングばねと、前記支持筒に水平移動可能に取付けられ前記車輪が前記凹部に収納される収納位置と前記車輪が前記凹部から突出する突出位置とを各々位置決めする位置決め片と、前記ワイヤの下端に連結され前記位置決め片を水平移動させる位置決め片移動機構とからなることを特徴とするスーツケース。
【請求項2】
請求項1記載のスーツケースであって、
前記突出位置では前記車輪支持片が一定量上下動可能となるように、前記車輪支持片に前記位置決め片の先端の高さより長い切欠きが設けられていることを特徴とするスーツケース。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のスーツケースであって、
前記車輪は、クッションばねを介して前記車輪支持片に上下動可能に取付けられていることを特徴とするスーツケース。
【請求項4】
請求項3記載のスーツケースであって、
前記クッションばねは、前記ホッピングばねより、ばね常数が小さいことを特徴とするスーツケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪付きスーツケースに関する。
【背景技術】
【0002】
キャスター(自在車輪)に代表される車輪が付属したスーツケースが、広く実用に供されている。車輪を回転させることで、重いスーツケースを軽く横に移動させることができる。
【0003】
車輪は、スーツケースから突出した状態となる。
航空機などに積み込む場合、荷物の寸法が制限されていることがある。この場合、スーツケースの寸法は、車輪を含めて計測される。寸法が制限されて場合、車輪が突き出ている分だけ、スーツケースを小さくする必要があり、スーツケースの容量が小さくなる。
車輪をスーツケースに収納する構造が、提案されている(例えば、特許文献1(図14)参照)。車輪を収納することで、スーツケースの大型化が可能になる。
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図12は従来の収納式車輪の概要を説明する図であり、スーツケース100の底に、上に凸となる車輪収納部101が設けられている。また、スーツケース100の底に、支持ピン102を介して揺動レバー103が取付けられ、この揺動レバー103の先端に車輪104が取付けられている。
【0005】
図では、実線で収納状態が示され、想像線で突出状態が示されている。すなわち、ボタン105を押すと、揺動レバー103は、ロックが解除され、揺動が自由となる。すると、車輪104が想像線の位置まで突出する。
【0006】
特許文献1の技術は、スーツケース100の容量を増すことができるという利点を有するものの、次に述べる欠点をも有する。
まず、ボタン105は、床106の近傍にあるため、ボタン操作の度に、姿勢を低くする必要がある。利用者によっては姿勢を低くすることを負担に感じる。
そのため、楽な姿勢でボタン操作ができる構造が求められる。
【0007】
また、特許文献1では、2個の車輪104当たり、1個のボタン105が設けられている。
大型スーツケースの多くは4個の車輪104を備えており、この場合は、ボタン105は2個となる。一般に、1個のボタン105は左側面に設けられ、残る1個のボタン105は右側面に設けられる。一方のボタン105を押した後で、スーツケースを半周した後に他方のボタン105を押すことになり、ボタン操作が面倒であり、時間が掛かる。
そのため、簡単で且つ迅速にボタン操作が行える構造が求められる。
【0008】
すなわち、収納可能な車輪を備えるスーツケースにおいて、車輪を突出させるときのボタン操作が楽な姿勢で、簡単に且つ迅速に行える構造が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−50375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、収納可能な車輪を備えるスーツケースにおいて、車輪を突出させるときのボタン操作が楽な姿勢で、簡単に且つ迅速に行える構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、床上を転がる少なくとも2個の車輪を備えると共に前記車輪を各々収納する凹部を備えているスーツケースにおいて、
前記凹部に取付けられ前記車輪を支える車輪ホルダーと、前記スーツケースの上面又は上部に備えられる1個の押しボタンと、前記スーツケースに内蔵され前記押しボタンの動作方向を変換する変換機構と、この変換機構から前記車輪ホルダーまで延びる少なくとも2本のワイヤとを備え、
前記車輪ホルダーは、前記車輪を支える車輪支持片と、この車輪支持片を昇降自在に支える支持筒と、前記車輪支持片を下方へ付勢するホッピングばねと、前記支持筒に水平移動可能に取付けられ前記車輪が前記凹部に収納される収納位置と前記車輪が前記凹部から突出する突出位置とを各々位置決めする位置決め片と、前記ワイヤの下端に連結され前記位置決め片を水平移動させる位置決め片移動機構とからなることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のスーツケースであって、
前記突出位置では前記車輪支持片が一定量上下動可能となるように、前記車輪支持片に前記位置決め片の先端の高さより長い切欠きが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載のスーツケースであって、
前記車輪は、クッションばねを介して前記車輪支持片に上下動可能に取付けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3記載のスーツケースであって、
前記クッションばねは、前記ホッピングばねより、ばね常数が小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、車輪が収納されているときに、押しボタンを押すと変換機構によりワイヤが引かれ、これらのワイヤで位置決め片が水平移動される。すると、ホッピングばねの付勢作用により、車輪支持片が収納位置から突出位置へ移動し、車輪がスーツケースから突出する。
押しボタンは、スーツケースの上面又は上部に設けられているため、ボタン操作は容易になる。
すなわち、本発明により、収納可能な車輪を備えるスーツケースにおいて、車輪を突出させるときのボタン操作が楽な姿勢で、簡単に且つ迅速に行える構造が提供される。
【0016】
請求項2に係る発明では、突出位置では車輪支持片が上下動可能となっている。床上に凹凸がある場合、ホッピングはねで衝撃を吸収又は緩和する。
【0017】
請求項3に係る発明では、車輪は、クッションばねを介して車輪支持片に上下動可能に取付けられている。床上に凹凸がある場合、クッションばねとホッピングばねとが協同して衝撃を吸収又は緩和する。請求項2より、大きな衝撃吸収作用又は緩和作用が発揮される。
【0018】
請求項4に係る発明では、クッションばねは、ホッピングばねより、ばね常数が小さい。ばね特性が異なる2つのばねにより、請求項3より、大きな衝撃吸収作用又は緩和作用が発揮される。
特に、車輪が凹凸に衝突するときに衝突音が発生するが、本発明により、衝突音を軽減することができ、車輪の静音化を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るスーツケースの斜視図である。
図2図2(a)は図1の2a−2a線断面図、図2(b)は作用図である。
図3】変換機構の分解斜視図である。
図4】車輪が突出位置にあるときの車輪ホルダーの断面図である。
図5】位置決め片移動機構の構造を説明する図である。
図6図6(a)は車輪が突出位置にあるときのスーツケースを示す図であり、図6(b)は車輪が収納位置にあるときのスーツケースを示す図である。
図7】位置決め片移動機構の作用を説明する図である。
図8】車輪が収納位置にあるときの車輪ホルダーの断面図である。
図9】押しボタンと変換機構とワイヤと車輪ホルダーとの構成を示す図である。
図10】車輪ホルダーの変更例を説明する図である。
図11】車輪ホルダーの更なる変更例を説明する図である。
図12】従来の収納式車輪の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0021】
図1に示すように、スーツケース10は、ケース本体11と、このケース本体11にヒンジ12で繋がれた蓋体13と、底に設けた4個の車輪14と、ケース本体11に設けた伸縮ハンドル15と、非伸縮形のハンドル16とを備えている。
【0022】
スーツケース10は、図から90°回転させて、ケース本体11を下にし、蓋体13を上にすることや、側面の脚17を床18に当てるようにすることができる。
本発明では、便宜上、図1の状態で上下を定める。すなわち、車輪14側を「下」、ハンドル16側を「上」とする。
【0023】
蓋体13の上面に押しボタン20が取付けられている。蓋体13の上面を窪ませ、この窪みに押しボタン20を設けてもよい。または、押しボタン20は、ケース本体11の上面(又は上部)に設けてもよい。
押しボタン20を含む断面図を、図2(a)で説明する。
【0024】
図2(a)に示すように、押しボタン20は、蓋21に取付けられている。この蓋21は、変換機構30を収納するケース22を塞ぐ部材である。
押しボタン20は、ボタン戻しばね23で押し上げられる。押しボタン20は、鍔24を備え、この鍔24が蓋21の下面に当たることで、上限位置が規定される。
【0025】
図3に示すように、ワイヤ26の総数は4本である。この4本のワイヤ26に対し、場所を区別する必要があるときには、左手前を示すLf、左奥を示すLr、右手前を示すRf、右奥を示すRrを符号26に添える。
【0026】
変換機構30は、押しボタン20の下向き動作を、ワイヤ26の引き動作に変換する機構であり、左手前のワイヤ26Lfと左奥のワイヤ26Lrとの一端が嵌められる左L字部材31Lと、この左L字部材31Lから押しボタン20の下まで延びる左コ字部材32Lと、右手前のワイヤ26Rfと右奥のワイヤ26Rrとの一端が嵌められる右L字部材31Rと、この右L字部材31Rから押しボタン20の下まで延びる右コ字部材32Rとからなる。
すなわち、1個の押しボタン20で4本のワイヤ26を操作することができる。
なお、左コ字部材32L及び右コ字部材32Rに各々軸33が備えられ、これらの軸33がケース(図2(a)、符号22)に回転自在に支持される。
【0027】
図2(a)にて、押しボタン20を押し下げると、左コ字部材32Lが軸33を中心にして図面時計方向に回転し、右コ字部材32Rが軸33を中心にして図面反時計方向に回転する。
図2(b)に示すように、左手前のワイヤ26Lf及び左奥のワイヤ26Lrが、距離L1だけ引かれる。右手前のワイヤ26Rf及び右奥のワイヤ26Rrも同様に引かれる。指を離す(又は緩める)と、ボタン戻しばね23の付勢力で押しボタン20は図2(a)の位置へ戻る。
【0028】
ところで、ワイヤ26は、信頼性が高く且つ安価な伝動部品であるが、圧縮すると簡単に曲がって伝動性を発揮し得ないため、引っ張りのみで使用される。
そこで、変換機構30は、押しボタン20の下降動作を、ワイヤ26の引き動作に変換する役割を果たす。
なお、変換機構30は、押しボタン20の下降動作を、ワイヤ26の引き動作に変換する機能を発揮する機構であればよく、図2図3に示す構造に限定されるものではない。
【0029】
次に、本発明の主凹部品である車輪ホルダー40の構造例を、図4に基づいて説明する。
図4に示すように、スーツケース10の下部に車輪ホルダー40を収納する凹部19が設けられている。
車輪ホルダー40は、車輪14を支える車輪支持片41と、この車輪支持片41を昇降自在に支える支持筒42と、車輪支持片41を下方へ付勢するホッピングばね43と、支持筒42に水平移動可能に取付けられ車輪14が凹部19に収納される収納位置と車輪14が凹部19から突出する突出位置とを各々位置決めする位置決め片44と、ワイヤ26の下端に連結され位置決め片44を水平移動させる位置決め片移動機構50とからなる。
【0030】
車輪14は、自在車輪ではない単なる回転輪であってもよいが、方向変化に良好に追従する自在車輪が推奨される。また、車輪14は、実施例では双輪タイプであるが、単輪タイプであってもよい。
自在車輪は、キャスターとも呼ばれ、車輪支持片41に上から下へ鉛直に差し込まれたキャスター軸45と、このキャスター軸45周りに旋回する旋回片46と、この旋回片46に水平に取付けた車軸47と、この車軸47に取付けた車輪14からなる。
キャスター軸45は、回転軸、固定軸の何れであってもよく、要は、旋回片46が旋回すればよい。
【0031】
車輪支持片41は、下へ開口するリテーナ収納凹部41aを有する。このリテーナ収納凹部41aにクッションばね48が収納され、このクッションばね48の下端がリテーナ49で支持され、このリテーナ49がリテーナ収納凹部41aに上下動可能に嵌められている。リテーナ49は、旋回片46に載っており、この旋回片46と一緒に上下に移動する。
【0032】
床18上の凹凸などにより、車輪14に上向き力が加わると、キャスター軸45が車輪支持片41に対して上昇し、クッションばね48が縮む。クッションばね48で外力が吸収され、衝撃が緩和される。外力が消失すると、クッションばね48が伸びて、図4に戻る。
【0033】
また、車輪支持片41は、側面に上部切欠き51と、下部切欠き52とを有する。下部切欠き52は、位置決め片44の先端の形状に対応する形状とされる。対して、上部切欠き51は、位置決め片44の先端の高さhの1.5倍〜2.5倍程度の長さの底面51aと、この底面51aの下端から延びる斜面51bとを有する。
【0034】
縁石など大きな障害物に、車輪14が乗り上げた場合、クッションばね48が大きく縮む。クッションばね48のばね反力が一定以上になると、以降は、ホッピングばね43を縮めつつ車輪支持片41が上昇する。
クッションばね48とホッピングばね43との協同作用により、車輪14に加わる小さな外力から大きな外力までに、対応させることができる。
【0035】
好ましくは、クッションばね48は、ホッピングばね43より、ばね常数が小さくする。ばね常数は、線径を小さくすると、小さくなる。
ばね特性が異なる2つのばね43、48により、大きな衝撃吸収作用又は緩和作用が発揮される。特に、車輪14が凹凸に衝突するときに衝突音が発生するが、衝突音を軽減することができ、車輪の静音化を強化することができる。
【0036】
図5に示すように、位置決め片移動機構50は、例えば、ワイヤ26で吊られる吊り籠53と、この吊り籠53を下方へ付勢する第1圧縮ばね54と、吊り籠53の側面に設けられたカム溝55とからなる。
カム溝55は、横に延びる横溝56と、この横溝56の一端(車輪支持片(図4、符号41)側の一端)から下へ延びる湾曲溝57とからなる。この湾曲溝57の下部は、横溝56の他端のほぼ真下に位置する。
【0037】
位置決め片44は、横長の棒形状を呈し、カム溝55に嵌るピン44aを有する。位置決め片44は、第2圧縮ばね58で、車輪支持片(図4、符号41)側へ付勢される。
【0038】
図6(a)は、車輪14がスーツケース10から突出しており、この状態で車輪14を転がすことにより、スーツケース10を横に移動することができる。
図6(a)において、利用者がスーツケース10の上面を押す。
【0039】
すると、図4において、車輪支持片41に対して、支持筒42及び位置決め片44が下がる。位置決め片44は、上部切欠き51の斜面51bを通過するときに、第2圧縮ばね58が縮む方向へ移動する。
すなわち、図7(a)に示すように、横溝56をピン44aが進むため、位置決め片44の後退移動が可能となる。ワイヤ26が引かれていなく、吊り籠53が下位位置にある場合には、位置決め片44は横溝56に沿って前進/後退が可能となる。
【0040】
図8に示すように、スーツケース10の底に付した脚部材61が床18に当った時点で、スーツケース10の下降は完了する。この完了時点では、車輪14は凹部19に収納され、下部切欠き52に位置決め片44が嵌る。ホッピングばね43は十分に圧縮される。
結果、図6(b)に示す形態が得られる。
【0041】
次に、図6(b)の形態を、図6(a)に戻す手順を説明する。
利用者は、図1に示す押しボタン20を押す。この押し操作により、図8に示すワイヤ26が引き上げられ、吊り籠53が上昇する。
【0042】
すると、図7(b)に示すように、ピン44aが湾曲溝57で案内されることにより、位置決め片44が後退する。
図8にて、位置決め片44が下部切欠き52から外れると、ホッピングばね43の付勢力で車輪支持片41が下がり、図4に戻る。
【0043】
図9に示すように、1個の押しボタン20の下に変換機構30が配置され、この変換機構30から4本のワイヤ26が延び、これらのワイヤ26の各々が4個の車輪ホルダー40に連結されている。
1個の押しボタン20を押すことで、収納状態の4個の車輪14を、一括して突出状態に変更することができる。
【0044】
押しボタン20は、図1に示すように、スーツケース10の上面(又は上部)に設けられているため、利用者は楽な姿勢で押しボタン20を押すことができる。姿勢を低くする必要がないため、押し操作は迅速に行える。
よって、本発明により、収納可能な車輪14を備えるスーツケース10において、車輪14を突出させるときのボタン操作が楽な姿勢で、簡単に且つ迅速に行える構造が提供される。
【0045】
なお、スーツケース10は、4個の車輪14を備えるものと、2個の車輪14を備えるものとがある。
2個の車輪14を備えるスーツケース10においては、図9において奥のワイヤ26Lr、26Rrが省かれ、1個の押しボタン20で、2本のワイヤ26Lf、26Rfを引くようにする。
したがって、本発明は、少なくとも2個の車輪14を備えるスーツケース10に適用される。
【0046】
次に、本発明に係る変更例を説明する。
図10(a)のb部拡大図が図10(b)である。
図10(b)に示すように、車輪支持片41に、横に延びるピン63を貫通させる。このピン63の一端は、下部切欠き52に、出没させるようにする。ピン63は途中に鍔状のフランジ64を備えている。このようなピン63をリテーナ49側から車輪支持片41へ挿入し、フランジ64に当たるように第3圧縮ばね65を取付け、ナット66を車輪支持片41にねじ込む。図10(b)では、ピン63がリテーナ49に嵌っていないため、リテーナ49の上下動は自在である。
【0047】
対して、図10(a)では、下部切欠き52に位置決め片44が嵌り、この位置決め片44で車輪支持片41の上下動が制限されると共に、図10(b)に示すピン63が図面左へ移動してリテーナ49側の穴49aに嵌り、リテーナ49の上下動が制限される。
よって、図10(a)の構造であれば、ばね43、48が共に伸びが制限される。
【0048】
次に、本発明に係る更なる変更例を説明する。
図4に示す車輪支持片41からクッションばね48と、リテーナ49と、リテーナ収納凹部41aとを省くことができる。
【0049】
すなわち、図11に示すように、車輪支持片41を簡単な構造にすることができる。なお、図4と同じ要素には、図4の符号を流用し、詳しい説明は省略する。
床18上の凹凸による突き上げは、ホッピングばね43で吸収する。
【0050】
尚、図2(a)では、理解を容易にするために、押しボタン20を蓋21から上に突出させたが、押しボタン20の上面が蓋21の上面と面一(つらいち)か、蓋21の上面より沈むようにしてもよい。この場合は、蓋21に利用者の指を収納する窪みを設けておくことで、押しボタン20を押し下げることができる。
押しボタン20の上面が蓋21の上面と面一又はそれ以下であれば、図1において、スーツケース10の上に手提げバッグなどの荷物を載せることができるという利点がある。
【0051】
また、スーツケース10は、トランクや旅行鞄や大型バッグを含み、狭義のスーツケースに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、2個以上の車輪を備えるスーツケースに好適である。
【符号の説明】
【0053】
10…スーツケース、14…車輪、19…凹部、20…押しボタン、26、26Lf、26Lr、26Rf、26Rr…ワイヤ、30…変換機構、40…車輪ホルダー、41…車輪支持片、42…支持筒、43…ホッピングばね、44…位置決め片、48…クッションばね、50…位置決め片移動機構、51…長い切欠き(上部切欠き)、h…位置決め片の先端の高さ。
【要約】
【課題】収納可能な車輪を備えるスーツケースにおいて、車輪を突出させるときのボタン操作が楽な姿勢で、簡単に且つ迅速に行える構造を提供する。
【解決手段】1個の押しボタン20の下に変換機構30が配置され、この変換機構30から4本のワイヤ26が延び、これらのワイヤ26の各々が4個の車輪ホルダー40に連結されている。1個の押しボタン20を押すことで、収納状態の車輪14を、突出状態に変更することができる。押しボタン20は、スーツケース10の上面に設けられているため、利用者は楽な姿勢で押しボタン20を押すことができる。姿勢を低くする必要がないため、押し操作は迅速に行える。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12