(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材の表面に、請求項1〜5の何れか1項に記載の塗料組成物からプライマー塗膜を形成する工程、および、該プライマー塗膜上に防汚塗膜を形成する工程を含む、積層防汚塗膜付き基材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪塗料組成物≫
本発明の一実施形態に係る塗料組成物(以下単に「本組成物」ともいう。)は、エポキシ樹脂(A)、アミン系硬化剤(B)、シランカップリング剤(C)、水(D)および顔料(E)を含有し、該組成物100重量部(不揮発分)に対して水(D)を3.5〜11重量部含有し、かつ、PVC(顔料体積濃度)が37〜47%である組成物である。
本組成物は乾燥性に優れるクロム化合物フリーの組成物であり、該組成物によれば、基材、特に非鉄金属等、さらにはプロペラへの付着性に優れ、低温乾燥条件下でも高硬度の塗膜を形成することができ、さらに、防食性および上塗り塗膜との付着性に優れる塗膜、具体的にはプライマー塗膜を容易に形成することができる。
特に、本組成物は、水を所定量含むにもかかわらず、乾燥性、特に低温乾燥性に優れるという顕著な効果を奏する。
【0021】
プロペラは、海洋中のごみを巻き込むことでダメージを受けたり、高速回転により発生する気泡のためキャビテーションを起こしやすく、該プロペラ上に形成される塗膜には強靭な付着性、高い塗膜硬度および耐衝撃性等が要求される。また、プロペラ表面に形成される塗膜は、通常、塗装した後、加熱、送風等による強制乾燥を行うことなく自然乾燥させることにより形成され、作業性、コストなどの点から、多くの場合、得られたプロペラは、塗装後あまり時間を経ずに使用される。このように塗装後すぐにプロペラを使用すると、回転による強烈な水流、また、キャビテーションによる高い圧力を受けるため、塗膜を形成する組成物は乾燥時間が短いことが求められる上、プロペラ表面に形成される塗膜は、塗装後初期における硬度に優れることが求められる。特に、冬場でもプロペラ上への塗膜の形成は行われるため、低温下でもこれらの特性を有する塗膜を形成できることが要求される。
さらに得られる塗膜は、防汚性および耐キャビテーション性等のために上塗りされることが多いシリコーン樹脂系防汚塗膜との良好な付着性を有することが望ましい。
本組成物は、これら要求を充分に満足する組成物であり、該組成物によれば、これら要求を充分に満足する塗膜を容易に形成することができる。
【0022】
また、本組成物は、クロム化合物を有しなくても前記効果を奏する塗膜を形成することができるため、塗装安全性、環境安全性に優れた組成物である。
【0023】
以上のことなどから、本組成物は、非鉄金属等、特に、プロペラに塗装するためのプライマーとして好適に使用することができる。
【0024】
<エポキシ樹脂(A)>
エポキシ樹脂(A)は、接する基材に対し強い付着性を示し、機械的性質等に優れ、後述する硬化剤を用いれば容易に硬化するため好ましい。
エポキシ樹脂(A)は、1種単独でまたは2種以上を用いることができる。
【0025】
エポキシ樹脂(A)としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、分子内に2個以上のエポキシ基を含むポリマーまたはオリゴマーが挙げられる。このようなエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(例;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、脂肪酸変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、基材(特に非鉄金属等)への付着性および防食性に優れる塗膜が容易に得られるなどの点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂および/またはノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、さらに、乾燥性に優れる組成物が得られ、硬度および耐衝撃性により優れる塗膜が得られるなどの点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。また、ノボラック型エポキシ樹脂を用いることで、より乾燥性に優れる組成物が得られ、より硬度に優れる塗膜が得られるため、ビスフェノール型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂とを併用することが特に好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂(A)は、硬度および基材(特に非鉄金属等)との付着性により優れる塗膜が得られる等の点から、固形分あたりのエポキシ当量(以下、単に「エポキシ当量」ともいう。)が、好ましくは160〜700g/eq、より好ましくは200〜550g/eqの範囲にあることが望ましい。
【0028】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、常温(5〜35℃、JIS Z 8703に準拠。以下同様。)で液状の市販品は、「jER−828」(エポキシ当量180〜190g/eq)等が挙げられ、常温で半固形状の市販品は、「jER−834−X90」(固形分90%、エポキシ当量230〜270g/eq)等が挙げられ、常温で固形状の市販品は、「jER−1001−X75」(固形分75%、エポキシ当量450〜500g/eq)等が挙げられる。前記はいずれも三菱化学(株)製である。また、前記ノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、「Epiclon 5300−70」(DIC(株)製、固形分70%、エポキシ当量300〜340g/eq)等が挙げられる。
【0029】
エポキシ樹脂(A)は、本組成物中の不揮発分100重量%に対し、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%含まれることが望ましい。エポキシ樹脂(A)の配合量が前記範囲にあると、塗装作業性、レベリング性により優れる組成物が得られ、基材(特に非鉄金属等)との付着性がより良好であり、強靭かつ柔軟性がある塗膜が得られるため好ましい。
エポキシ樹脂(A)を2種類以上使用する場合にも、その使用量の合計は前記範囲にあることが好ましい。
【0030】
また、前記のように、(i)ビスフェノール型エポキシ樹脂と(ii)ノボラック型エポキシ樹脂とを併用する場合、塗膜硬度および耐衝撃性により優れる塗膜が得られる等の点から、その使用割合((i):(ii))は重量比で、好ましくは100:30〜300であり、より好ましくは100:50〜200であり、さらに好ましくは100:60〜150である。
【0031】
<アミン系硬化剤(B)>
アミン系硬化剤(B)としては、特に制限されず、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、芳香環を有する脂肪族アミン、複素環式アミン等のアミン系硬化剤およびその変性物が挙げられる。
アミン系硬化剤(B)は、1種単独で、または2種以上を用いることができる。
【0032】
前記脂肪族アミンとしては、アルキルモノアミン、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、アルキルアミノアルキルアミン等が挙げられる。
【0033】
前記アルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H
2N−(CH
2)
n−NH
2」(nは1〜12の整数であり、−(CH
2)
n−の任意の水素原子は、炭素数1〜10の炭化水素基で置換されていてもよい。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0034】
前記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H
2N−(C
mH
2mNH)
nH」(mは1〜10の整数であり、nは2〜10であり、好ましくは2〜6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等が挙げられる。
【0035】
これら以外の脂肪族アミンとしては、例えば、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2−アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3−ビス(2’−アミノエチルアミノ)プロパン、2,2’−[エチレンビス(イミノトリメチレンイミノ)]ビス(エタンアミン)、トリス(2−アミノエチル)アミン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミンが挙げられる。
【0036】
前記脂環式アミンとしては、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、4,4’−イソプロピリデンビス(シクロヘキサンアミン)、ノルボルナンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン(MDA)等が挙げられる。
【0037】
前記芳香族アミンとしては、芳香環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物等が挙げられる。
【0038】
この芳香族アミンとして、より具体的には、フェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4、4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0039】
前記芳香環を有する脂肪族アミンとしては、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、ビス(アミノアルキル)ナフタレン等が挙げられる。
【0040】
この芳香環を有する脂肪族アミンとしては、より具体的には、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン(MXDA)、p−キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン等が挙げられる。
【0041】
前記複素環式アミンとしては、N−メチルピペラジン、モルホリン、1,4−ビス−(3−アミノプロピル)ピペラジン、1,4−ジアザシクロヘプタン、1−(2'−アミノエチルピペラジン)、1−[2’−(2’’−アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン、1,11−ジアザシクロエイコサン、1,15−ジアザシクロオクタコサン等が挙げられる。
【0042】
その他のアミン系硬化剤(B)としては、特公昭49−48480号公報に記載のアミン類(アミン化合物)、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
【0043】
アミン系硬化剤(B)としては、さらに、前述したアミン系硬化剤の変性物、例えば、脂肪酸変性物(ポリアミドアミン)、エポキシ樹脂アダクト変性物、マンニッヒ変性物(例:フェナルカミン、フェナルカマイドなどを含む。)、マイケル付加物、ケチミン、アルジミン、ウレタン変性物が挙げられ、マンニッヒ変性物が好ましい。
【0044】
アミン系硬化剤(B)の内、カルダノール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類と、前述のアミン系硬化剤とをマンニッヒ縮合することで得られるマンニッヒ変性物が好ましく、芳香環を有する脂肪族アミンのマンニッヒ変性物がより好ましい。
【0045】
このようなマンニッヒ変性物を用いると、乾燥性、特に、低温乾燥性に優れる組成物が得られ、基材(特に非鉄金属等)に対する付着性および硬度等にバランス良く優れる塗膜が得られるため好ましい。
特に、前記芳香環を有する脂肪族アミンとして、m−キシリレンジアミンを用いたMXDAマンニッヒ変性アミンをアミン系硬化剤(B)として用いると、乾燥性により優れる塗料組成物が得られ、塗膜硬度に優れる塗膜が得られる。
【0046】
前記マンニッヒ縮合の際には、例えば、フェノール類と、アルデヒド類と、アミン系硬化剤とを、理論的には等モルで用いればよいが、通常、フェノール類1モルに対して、アルデヒド類は0.5〜2.5モルの量で、アミン系硬化剤は0.5〜2.5モルの量で用いて、50〜180℃程度の温度で3〜12時間程度加熱すればよい。反応終了後には、反応生成物を減圧下で加熱し、水分および未反応物を除去してもよい。
【0047】
アミン系硬化剤(B)は、乾燥性に優れる組成物が得られ、塗膜硬度および基材(特に非鉄金属等)との付着性にバランス良く優れる塗膜が得られる等の点から、固形分あたりの活性水素当量(以下、単に「活性水素当量」ともいう。)が、好ましくは50〜500g/eq、より好ましくは70〜400g/eqの範囲にあることが望ましい。
【0048】
前記アミン系硬化剤(B)の市販品としては、「MAD−204(A)」(大竹明新化学(株)製、m−キシリレンジアミンのマンニッヒ変性物、固形分65%、活性水素当量110〜150g/eq)、「Luckamide V6−221」(DIC(株)製、m−キシリレンジアミンのマンニッヒ変性物、活性水素当量80g/eq)、「Ancamine 2143」(エアープロダクツ社製、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミンのエポキシ樹脂アダクト変性物、活性水素当量115g/eq)、「Ancamine 2074」(エアープロダクツ社製、イソホロンジアミンのエポキシ樹脂アダクト変性物、活性水素当量92g/eq)、「Luckamide TD−966」(DIC(株)製、ポリアミドアミン、固形分60%、活性水素当量200〜250g/eq)、「Cardolite NX−4918」(カードライト社製、フェナルカミンのエポキシ樹脂アダクト変性物、固形分80%、活性水素当量180〜220g/eq)等が挙げられる。
【0049】
本組成物には、下記式[1]から算出される反応比が、好ましくは0.5〜1.0、より好ましくは0.5〜0.9となる量でアミン系硬化剤(B)が含まれている。反応比が前記範囲となるように、アミン系硬化剤(B)の含有量を調整すると、乾燥性により優れる塗料組成物が得られ、基材(特に非鉄金属等)への付着性および塗膜硬度により優れる塗膜が得られる。
【0051】
ここで、前記式[1]における「エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有するその他成分」および「アミン系硬化剤(B)に対して反応性を有するその他成分」は、それぞれエポキシ樹脂(A)またはアミン系硬化剤(B)と反応する官能基(以下「反応性基」ともいう。)を有する成分、具体的には、後述するシランカップリング剤(C)、および硬化促進剤(E)であるアクリル酸エステル等の成分のことをいう。また、「その他成分の官能基当量」とは、これらの成分1molにおける1官能基あたりの質量(g)を意味する。
例えば、シランカップリング剤(C)として、以下のように、反応性基としてアミノ基やエポキシ基を有するシランカップリング剤を使用する場合、反応性基の種類によって、シランカップリング剤(C)がエポキシ樹脂(A)に対して反応性を有するのか、アミン系硬化剤(B)に対して反応性を有するのかを判断し、前記式[1]より反応比を算出する。
【0052】
<シランカップリング剤(C)>
シランカップリング剤(C)を他の成分、特に所定量の水と共に用いることで、得られる塗膜の基材(特に非鉄金属等)への付着性を顕著に向上させることができるのみならず、得られる塗膜の防食性をも向上させることができる。
シランカップリング剤(C)は、1種単独で、または2種以上を用いることができる。
【0053】
シランカップリング剤(C)としては、エポキシ樹脂(A)またはアミン系硬化剤(B)との相溶性に優れ、後述する顔料(E)の分散性を向上させることで均質な塗膜を得ることができる上、塗膜硬度を低下させ難いなどの点から、エポキシ基またはアミノ基を有する化合物が好ましい。
【0054】
シランカップリング剤(C)としては、特に制限されず、従来公知の化合物を用いることができるが、同一分子内に少なくとも2つの加水分解性基を有し、基材に対する付着性の向上に寄与できる化合物であることが好ましく、式:X−SiMe
nY
3-n[Xは、有機質との反応が可能な反応性基(例:アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロ基、またはこれらの基を含有する炭化水素基。なお、この炭化水素基にはエーテル結合等が存在していてもよい。)を示し、Yは、加水分解性基(例:メトキシ基、エトキシ基)を示し、nは0または1を示し、Meはメチル基を示す。]で表される化合物であることがより好ましい。
これらのシランカップリング剤の内、前記Xがアミノ基またはエポキシ基である化合物が好ましい。
【0055】
シランカップリング剤(C)の市販品としては、「KBM−403」(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシ当量236g/eq)、「KBE−903」(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、活性水素当量111g/eq)、「KBP−90」(アミノシラン水溶液、固形分32%、活性水素当量100〜140g/eq)等が挙げられる。前記はいずれも信越化学工業(株)製である。
【0056】
本組成物において、シランカップリング剤(C)の含有量は、該組成物の不揮発分100重量%に対して、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。シランカップリング剤(C)の含有量が前記範囲にあると、基材(特に非鉄金属等)との付着性および後述する防汚塗膜(Q)との付着性に優れる塗膜を得ることができる。
【0057】
<水(D)>
本組成物は、塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して、水(D)を3.5〜11重量部、好ましくは3.5〜10.9重量部、3.5〜10.8重量部、3.5〜10.7重量部、3.5〜10.6重量部、3.5〜10.5重量部、より好ましくは5.5〜10.5重量部、特に好ましくは6〜10重量部含有する。このように、所定量の水(D)を、シランカップリング剤(C)などと併用することによって、基材(特に非鉄金属等)に対する付着性が顕著に優れる塗膜を得ることができる。
水(D)の使用量が3.5重量部未満であると、該組成物は、乾燥性が不十分となり、得られる塗膜は、基材(特に非鉄金属等)との付着性が不十分となり、また、11重量部より多いと、該塗料組成物より形成される塗膜は、連続性のある均質な塗膜とならない。
また、本組成物は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、20重量部を超える量で水(D)を含有する場合、特に乾燥性に優れる組成物であり、特に塗膜硬度に優れる塗膜を得ることができる。
【0058】
<顔料(E)>
前記顔料(E)は、特に制限されず、例えば、体質顔料、着色顔料、防錆顔料が挙げられ、有機系、無機系の何れでもよい。
顔料(E)は、1種単独でまたは2種以上を用いることができる。
【0059】
本組成物が体質顔料を含有していると、基材(特に非鉄金属等)に対する付着性、耐クラック性等の塗膜物性が向上するなどの点で好ましい。
前記体質顔料としては、酸化亜鉛、タルク、シリカ、マイカ、クレー、カリ長石、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム(例;バライト粉)、石膏、ロックウールやガラス繊維などの繊維状フィラー等が挙げられ、これらの中では、タルク、シリカ、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、カリ長石および石膏からなる群より選ばれる顔料が好ましい。
【0060】
前記体質顔料として、マイカやガラスフレーク等の扁平状顔料を含むことが、得られる塗膜の内部応力緩和および基材に対する付着性の向上などの点でより好ましく、安価で入手容易性に優れ、より付着性向上効果に優れる塗膜を形成できることからマイカがより好ましい。
【0061】
また、前記体質顔料として、無水石膏(CaSO
4)または半水石膏(CaSO
4・1/2H
2O)を含有することが、耐水性、耐塩水性および防食性に優れる塗膜を得ることができるなどの点でより好ましい。また、無水石膏および半水石膏は、水分を吸着すると固まり、また水分を保持する特性がある。従って、無水石膏または半水石膏を含む塗膜は、水分を保持し、可塑効果により塗膜の内部応力を緩和する作用があるため、塗膜の基材(特に非鉄金属等)に対する付着性が向上すると考えられる。
前記石膏は、天然物であっても、人工物であっても構わず、形状も特に制限されないが、粉末状であることが好ましい。
【0062】
前記体質顔料は、本組成物のPVCが下記範囲となるように組成物中に含まれていれば特に制限されないが、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜500重量部、より好ましくは50〜400重量部配合される。
また、前記扁平状顔料は、本組成物のPVCが下記範囲となるように組成物中に含まれていれば特に制限されないが、基材に対する付着性に優れる塗膜が得られる等の点から、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、好ましくは0.1〜300重量部、より好ましくは30〜100重量部配合される。
【0063】
前記石膏は、本組成物のPVCが下記範囲となるように本組成物中に含まれていれば特に制限されないが、得られる塗膜の基材への付着性などの点から、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、好ましくは5〜300重量部、より好ましくは5〜200重量部配合される。
【0064】
前記着色顔料としては、従来公知の有機系および無機系の各種顔料を用いることができる。
有機系顔料としては、ナフトールレッド、フタロシアニンブルー等が挙げられる。無機系顔料としては、カーボンブラック、ベンガラ、チタン白、黄色酸化鉄(黄色弁柄)、アルミニウム粉等が挙げられる。
【0065】
着色顔料は、本組成物のPVCが下記範囲となるように本組成物中に含まれていれば特に制限されないが、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、好ましくは0.01〜200重量部、より好ましくは0.01〜100重量部配合される。
【0066】
前記防錆顔料としては、モリブデン酸系、リン酸系、ホウ酸系、フェライト系、鉛酸系の顔料等が挙げられる。
【0067】
本組成物において、顔料体積濃度(PVC)は37〜47%であり、好ましくは40〜46%である。PVCが前記範囲にあると、乾燥性に優れる組成物が得られ、基材(特に非鉄金属等)に対する付着性に優れ、フクレやクラックが抑制された塗膜を得ることができる。
PVCが37%未満であると、該組成物の乾燥性が低下するうえ、硬化収縮応力によって得られる塗膜の基材(特に非鉄金属等)に対する付着性が低下する。また、PVCが47%を超えると、形成される塗膜の造膜性が低下することにより、基材(特に非鉄金属等)に対する付着性が低下する。
【0068】
PVCは、具体的には下記式より求めることができる。
PVC[%]=塗料組成物中の全ての顔料の体積の合計×100/塗料組成物中の不揮発分の体積の合計
【0069】
なお、一般的に、塗料組成物の不揮発分は、JIS K 5601−1−2(加熱温度:125℃、加熱時間:60分)に従って測定した加熱残分を測定することで算出することができる。
また、得られた加熱残分より、顔料成分と他の成分とを分離し、分離された顔料成分と他の成分それぞれの質量および真密度を測定することで、PVCを算出することができる。
【0070】
<任意成分>
本組成物には、さらに、エポキシ樹脂(A)、アミン系硬化剤(B)、シランカップリング剤(C)、水(D)および顔料(E)以外の任意成分、例えば、硬化促進剤(F);石油樹脂(可塑剤);顔料分散剤;タレ止め剤;沈降防止剤;溶剤;反応性希釈剤;熱可塑性樹脂(但し、石油樹脂を除く。);アミン系硬化剤(B)以外の硬化剤;無機脱水剤(安定剤);防汚剤;染料;その他の塗膜形成成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。
これらの任意成分は、それぞれ、1種単独でまたは2種以上を用いることができる。
【0071】
〈硬化促進剤(F)〉
本組成物は、該組成物の硬化速度および低温硬化性をさらに向上させるため、硬化促進剤(F)を含有することが好ましい。
硬化促進剤としては、塗料に用いられる従来公知の硬化促進剤であればよいが、硬化速度、低温硬化性により優れる組成物が得られるなどの点から、3級アミンやアクリル酸エステルなどが好ましい。
【0072】
前記3級アミンとしては、特に制限されないが、例えば、トリエタノールアミン、ジアルキルアミノエタノール{[CH
3(CH
2)
n]
2NCH
2CH
2OH}、トリエチレンジアミン[1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン]、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(例;「Versamine EH30」(BASFジャパン(株)製))が挙げられる。これらの中でも2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが好ましい。
【0073】
前記アクリル酸エステルとしては、特に制限されないが、多官能アクリル酸エステルが好ましく、市販品としては、例えば、「M−Cure 400」(サートマー社製、官能基当量85g/eq)が挙げられる。
【0074】
硬化促進剤(F)は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、好ましくは0.01〜80重量部、より好ましくは0.01〜50重量部配合される。
硬化促進剤(F)の配合量が前記範囲にあると、得られる組成物の硬化速度、低温硬化性がさらに向上するため好ましい。
【0075】
〈石油樹脂〉
本組成物の粘度を容易に調整でき、得られる塗膜硬度を容易に調整できるなどの点から、本組成物は、可塑剤として石油樹脂を含有してもよい。
【0076】
前記石油樹脂としては、特に制限されず、例えば、石油精製で副生される留分を主原料とする重合体が挙げられる。具体的には、石油ナフサの分解で副生する重質油中からスチレン誘導体、インデン、ビニルトルエン等のC
9留分を重合させた芳香族系石油樹脂、1,3−ペンタジエン、イソプレン等のC
5留分を重合させた脂肪族系石油樹脂、前記C
9留分とC
5留分とを共重合させた共重合系石油樹脂、シクロペンタジエン、1,3−ペンタジエン等のC
5留分の共役ジエンが一部環化重合した脂肪族系石油樹脂、これらの石油樹脂を水素添加した樹脂、ジシクロペンタジエンを重合させた脂環族系石油樹脂などが挙げられる。
これらのうち、C
9留分を重合させた樹脂が、エポキシ樹脂(A)やアミン系硬化剤(B)との相溶性に優れるため好ましい。
【0077】
前記石油樹脂は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、好ましくは0.1〜100重量部、より好ましくは0.1〜50重量部配合される。
石油樹脂の配合量が前記範囲にあると、本組成物の粘度を容易に調整でき、得られる塗膜硬度を容易に調整できる。
【0078】
〈タレ止め剤〉
本組成物は、水を所定量で含むため、塗装作業性に優れ、該組成物を用いて厚塗りしても塗布物がタレ難く、所望膜厚の塗膜を容易に形成することができる。本組成物はこのような効果を有するため、貯蔵安定性の低下や積層体における層間剥離、特に、本組成物を塗り重ねることで、塗膜を形成する場合の積層体における層間剥離の原因となり得るタレ止め剤を用いなくても、タレ難く、厚塗り可能であり、塗装作業性に優れる。
このような、貯蔵安定性に優れ、積層体における層間剥離が生じ難いことと、タレ難く、厚塗り可能であり、塗装作業性に優れることを両立した組成物(タレ止め剤を含まない本組成物)は、従来存在しなかった顕著な効果を有する組成物である。
【0079】
本組成物は、タレ止め剤を用いなくても、前記効果を奏するが、所望に応じて、本発明の効果を損なわない限り、タレ止め剤を用いてもよい。
該タレ止め剤としては、アマイドワックス系化合物、水添ヒマシ油ワックス系化合物、ポリアマイドワックス系化合物、無機系ベントナイト系化合物、合成微粉シリカ、およびこれらの混合物が挙げられ、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカが好ましい。
市販品であれば、楠本化成(株)製の「ディスパロン6650」、「ディスパロンA630−20XC」、伊藤精油(株)製の「ASAT−250F」等が挙げられる。
【0080】
タレ止め剤は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部配合される。
【0081】
〈溶剤〉
本組成物は、溶剤を含有することができる。
溶剤としては、従来公知の広範な沸点の溶剤が使用でき、具体的には、ターペン等の脂肪族系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル系またはエーテルエステル系溶剤;などの溶剤が挙げられ、好ましくはキシレン、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0082】
溶剤は、特に制限されないが、本組成物の塗工性などを考慮すると、通常、本組成物中に、好ましくは0.1〜80重量%、より好ましくは0.1〜50重量%配合される。
なお、前記溶剤の配合量は、エポキシ樹脂(A)や硬化剤として市販品を用いた場合、これらの市販品中に含まれることのある溶剤(希釈剤)を除いた成分の総重量である。
【0083】
<本組成物の調製方法>
本組成物は、前記(A)〜(E)成分を、水の量およびPVCが特定の範囲となるように混合することで調製することができる。
PVCが前記特定の範囲にある組成物は、例えば、以下のようにして調製することができる。
(1)組成物全体を100gとし、エポキシ樹脂(A)の配合量(g)を設定し、反応比等を考慮して、それに応じたアミン系硬化剤(B)およびシランカップリング剤(C)の配合量(g)を決める。
(2)配合する顔料(E)の種類を決め、該顔料(E)の密度ならびにエポキシ樹脂(A)、アミン系硬化剤(B)およびシランカップリング剤(C)の密度および配合量から、PVC(37〜47%)に応じて、顔料の配合量(g)を決める。
【0084】
本組成物の形態は、特に制限されず、2成分型または3成分型の組成物にすることができる。特に、保存安定性、保存容易性および塗膜の形成性等に優れる組成物となり、前記優れた物性を有する塗膜を容易に得ることができるなどの点から、エポキシ樹脂(A)を含有する主剤成分と、アミン系硬化剤(B)を含有する硬化剤成分と、水(D)を含有する第3成分とからなる3成分型の組成物であることが好ましい。特に、第3成分が水(D)を含有する場合、冬季における凍結を防止するため、また、塗料組成物としての適性な塗装作業性を得るために、任意な量で水と混和可能な溶剤を併用することができる。このような溶剤としては、前記溶剤の内、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜3のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤などが挙げられる。
【0085】
前記2成分または3成分型の組成物において、顔料(E)は、主剤成分および硬化剤成分の何れか一方または、両方に含まれていてもよい。顔料(E)が主剤成分中に含まれると、組成物の製造容易性、組成物を使用する際における各成分の混練・攪拌の容易性および保存安定性等に優れる組成物が得られるため好ましい。
【0086】
また、前記2成分または3成分型の組成物において、シランカップリング剤(C)は、主剤成分、硬化剤成分および第3成分の何れか1つ、何れか2つ、または全ての成分に含まれていてもよい。
【0087】
前記主剤成分、硬化剤成分および第3成分は、それぞれに配合する成分を撹拌・混合等することにより製造することができ、本組成物は、予め調製した主剤成分、硬化剤成分および第3成分を、撹拌・混合等することにより製造することができる。本組成物が3成分型の組成物である場合、具体的には、塗装直前に前記主剤成分および硬化剤成分を撹拌・混合等した後、該混合物と前記第3成分とを、塗料組成物中の水(D)の含有量が前記所定量になるように調整して撹拌・混合等することが好ましい。
撹拌・混合の際には、ペイントシェーカー、ハイスピードディスパー、サンドグラインドミル、バスケットミル、ボールミル、三本ロールミル、ロスミキサー、プラネタリーミキサー等の、従来公知の混合・撹拌装置を用いればよい。
【0088】
<本組成物の用途>
本組成物は、特に制限されず様々な用途に用いることができるが、本組成物は前記効果を有するため、プライマー組成物として、特に、非鉄金属またはステンレス基材に用いられる組成物として、さらにはプロペラに用いられるプライマー組成物として好適に使用される。
【0089】
本組成物は、特に非鉄金属およびステンレスに対し、良好な付着性および防食性を示すため、前記基材としては、非鉄金属またはステンレス基材を用いることが、本発明の効果をより有効に発揮できる点から好ましい。
【0090】
前記非鉄金属としては、例えば、銅、銅合金{例:青銅(ブロンズ)、アルミ青銅、ニッケル・アルミ青銅、マンガン青銅、黄銅(しんちゅう)、銅亜鉛合金、ベリリウム銅}、アルミニウム、アルミ合金、ニッケル合金(例:ニッケル・クロム)、チタン合金が挙げられる。また、該非鉄金属には、メッキ処理された金属も含まれる。すなわち、本組成物が接する面が鉄鋼材料以外の金属である金属も含まれる。
前記メッキ処理された金属としては、例えば、スズをメッキした鋼板(ブリキ)、亜鉛をメッキした鋼板(亜鉛メッキ鋼板、トタンなど)が挙げられる。
【0091】
前記ステンレスとは、鉄(Fe)を主成分(50%以上)とし、クロム(Cr)を10.5%以上含む合金鋼であり、具体的には、SUS304(オーステナイト系ステンレス)、SUS430(フェライト系ステンレス)等が挙げられる。
【0092】
前記基材としては、具体的には、水中構造物、船舶および漁具などが挙げられ、プロペラが好ましい。
ここで、プロペラの素材は、例えば、高力黄銅鋳物(JIS記号CAC301)、アルミニウム青銅鋳物(JIS記号CAC703)などの銅合金;アルミニウム;ステンレスである。
【0093】
≪プライマー塗膜(P)≫
本発明の一実施形態に係るプライマー塗膜(P)は、本組成物を用いて作成される塗膜であれば特に制限されない。該プライマー塗膜(P)は、基材の表面に、本組成物からプライマー塗膜(P)を形成する工程を含む方法で形成される、プライマー塗膜(P)付き基材であることが好ましく、具体的には、本組成物を基材上に塗装し、乾燥、硬化させることによって得られるプライマー塗膜(P)付き基材であることが好ましい。
【0094】
前記プライマー塗膜(P)は、本組成物から形成されるため、硬度、基材(特に非鉄金属等)との付着性および長期防食性等にバランス良く優れており、また、後述する防汚塗膜(Q)との付着性にも優れている。
また、本組成物は、乾燥性に優れ、低温乾燥可能であるため、低温で、短時間に所望の塗膜を容易に形成することができる。
【0095】
前記基材としては、本組成物の用途の欄に記載した基材と同様の基材が挙げられる。
なお、前記基材としては、基材と本組成物との密着性をさらに向上させるために、サンドブラスト法、摩擦法、脱脂による油分・粉塵を除去する方法等により、予め基材表面が処理された基材であることが好ましい。
【0096】
本組成物の塗装方法は、特に限定されず、従来公知の塗装方法を採用することができる。
前記塗装された組成物は、乾燥性に優れ、低温乾燥可能であるため、所望により加熱、送風により強制乾燥し、硬化させてもよいが、通常は自然条件下で乾燥、硬化される。
【0097】
前記プライマー塗膜(P)の実用硬度は、用いる用途に応じて適宜選択されるが、好ましくは鉛筆硬度で3B〜6H、より好ましくは3B〜4Hである。
プライマー塗膜がこのような硬度を有すると、該塗膜は、実際の使用に十分耐えることができ、耐久性に優れるため好ましい。
【0098】
前記プライマー塗膜(P)の膜厚は、所望の用途に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは50〜300μm、より好ましくは70〜150μmである。
【0099】
≪積層防汚塗膜≫
本発明の一実施形態に係る積層防汚塗膜は、前記プライマー塗膜(P)と、該プライマー塗膜(P)上に形成された防汚塗膜(Q)とを含む。
本組成物は、該積層防汚塗膜の製造に適しており、該積層防汚塗膜は、基材、特に非鉄金属等、さらにはプロペラを長期間防食、防汚することができる。具体的には、基材表面、特に非鉄金属等の表面への、アオサ、フジツボ、アオノリ、セルプラ、カキ、フサコケムシ等の水棲生物の付着を長期間防止することが期待できる。
【0100】
このような積層防汚塗膜は、基材上に形成されることが好ましく、具体的には、本組成物からプライマー塗膜(P)を形成する工程、および、該プライマー塗膜(P)上に防汚塗膜(Q)を形成する工程を含む方法で形成することが好ましい。
該基材としては、前記本組成物の用途の欄で例示した基材と同様の基材などが挙げられる。
【0101】
前記防汚塗膜(Q)は、特に制限されず、防汚剤を含有する自己研磨型の防汚塗膜であってもよいが、基材としてプロペラを使用し、前記防汚塗膜(Q)として自己研磨型の防汚塗膜を用いる場合、プロペラの高速回転によって該防汚塗膜(Q)の消耗が早くなり、長期防汚性の点で問題が生じる可能性がある。また、プロペラは、塗装後十分な乾燥時間を経ることなく使用されることが多いため、前記積層防汚塗膜をプロペラ表面に形成する場合には、防汚塗膜(Q)として、塗膜の強靭さが得られ易く、防汚剤を含まなくとも長期防汚性を示すシリコーン樹脂系防汚塗膜が好ましい。
【0102】
前記シリコーン樹脂系防汚塗膜としては、少なくとも2個の縮合反応性官能基を有するオルガノポリシロキサンを含むシリコーン樹脂含有組成物を用いて形成される膜などが挙げられ、より具体的には、特開2001−139816号公報、特開2001−181509号公報などに記載の従来公知の組成物を用いて形成される膜などが挙げられる。
【0103】
前記シリコーン樹脂含有組成物としては、具体的には、(I)分子の両末端に縮合反応性官能基を有するオルガノポリシロキサンと、(II)疎水性シリカとを含有する硬化性組成物であって、前記疎水性シリカ(II)がオルガノポリシロキサン(I)と加熱処理されたシリカである硬化性組成物であることが好ましい。
【0104】
前記オルガノポリシロキサン(I)は、プライマー塗膜(P)との付着性に優れる防汚塗膜が得られるなどの点から、下記式[α]で示される化合物であることが好ましい。
【0106】
前記式[α]中、Wは独立に、水酸基または加水分解性基を示し、R
1およびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜12の非置換または置換の1価炭化水素基を示し、nは5以上の整数を示し、aは0、1または2を示す。該1価炭化水素基としては、例えば、直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アラルキル基が挙げられる。
【0107】
また、前記シリコーン樹脂含有組成物は、前記式[α]中のWがケトオキシム基であり、かつaが1である前記オルガノポリシロキサン(I)および前記疎水性シリカ(II)を含有することが好ましい。
【0108】
防汚塗膜(Q)は、例えば、該防汚塗膜(Q)を形成し得る組成物を、従来公知の方法で塗装、好ましくはプライマー塗膜(P)上に塗装し、その後、所望により加熱、送風により強制乾燥し、硬化させることで形成してもよいが、通常は自然条件下で乾燥、硬化させることにより形成することができる。
【0109】
前記防汚塗膜(Q)の膜厚は、所望の用途に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは50〜300μm、より好ましくは70〜150μmである。
【実施例】
【0110】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。なお、以下の実施例および比較例における、「部」は、特に断らない限り、重量部のことを示す。
【0111】
下記実施例および比較例で用いた原料を下記表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
[実施例1〜24および比較例1〜9]
下記表2および3に示す種類の成分を該表の量(部)で混合し、それぞれ、主剤成分、硬化剤成分および第3成分を調製した。
以下では、これら主剤成分、硬化剤成分および第3成分を使用直前に混合した塗料組成物を用いて、下記評価を行った。なお、比較例4および5で得られた塗料組成物を用いて下記塗膜を形成しようとしたが、連続性のある均質な塗膜が得られなかった(塗膜分離)。
【0114】
[塗料組成物中の不揮発分およびPVC]
JIS K 5601−1−2(加熱温度:125℃、加熱時間:60分)に従って測定した加熱残分を基に塗料組成物の不揮発分を算出した。なお、この不揮発分は、塗料組成物に用いる原料成分の固形分(溶媒以外の成分)の総量と同等の値である。
また、得られた加熱残分より、顔料成分と他の成分とを分離し、分離された顔料成分と他の成分それぞれの質量および真密度を測定することで、PVCを算出した。
【0115】
[乾燥性]
前記各塗料組成物を、348mm×25mm×厚み2mmのガラス板に、乾燥塗膜厚が150μmになるようにフィルムアプリケータで塗布し、23℃または5℃の各温度下でRC型ドライングタイムレコーダー(コーティングテスター(株)製)を用いて、塗膜が半または完全硬化するまでの時間を測定した。
【0116】
この乾燥性試験では、未乾燥の塗膜上で、RC型ドライングタイムレコーダーの試験針を一定の速度でゆっくりと移動させることにより、試験針の通った跡から塗膜の状態を判断し、塗膜の半硬化または完全硬化するまでの時間を判断した。半硬化または完全硬化するまでの時間を示す模式図を
図1に示す。
具体的には、
図1の半硬化10が示すように、試験針の通った跡において、ガラス板が見えなくなった時間を半硬化するまでの時間とし、
図1の完全硬化20が示すように、試験針が塗膜表面を滑り、試験針の跡が完全につかなくなった時間を完全硬化するまでの時間とした。
なお、乾燥性は、5℃下での完全硬化時間が12時間以内であれば、実用上問題ないといえる。
【0117】
[塗膜硬度]
前記各塗料組成物を、200mm×200mm×厚み0.3mmのブリキ板に、乾燥塗膜厚が150μmになるようにフィルムアプリケータで塗布し、23℃または5℃の各温度下で24時間乾燥させた後、JIS K 5600−5−4(1999)の規格に従って塗膜の鉛筆硬度を測定し、塗膜硬度を評価した。
なお、塗膜硬度は、5℃下での鉛筆硬度が『3B』以上であれば、実用上問題ないといえる。
【0118】
[タレ止め性]
前記各塗料組成物を、水平な台の上でJIS K 5400(1990)6.4に示されるボックス型のサグテスター(隙間300μm、400μmまたは500μm)を用いて、23℃下で200mm×200mm×厚み0.3mmのブリキ板に塗布した後、直ちに該ブリキ板をサグテスターの軌道線が水平になるように垂直に立て、塗膜のタレ止め性を調べた。サグテスターの各隙間によって形成された塗料層と塗料層の間の間隙(3mm)に流れ出た組成物が、該間隙距離の1/2に達しない場合(サグテスターによって形成された塗料層から垂れた長さが1.5mmに達しない場合)をタレが発生していない(○)とし、また、前記間隙距離の1/2に達した場合をタレが発生している(×)と判断した。
なお、タレ止め性は、サグテスターの隙間400μmでタレが発生しなければ、実用上問題ないといえる。
【0119】
[電気防食付着性試験]
[単膜の試験板]
150mm×70mm×厚み10mmの真鍮製、ステンレス製(SUS304)またはアルミニウム製の各基材(日本テストパネル(株)製)に、直径2cm×高さ1cmの円柱状の防食亜鉛をリード線(銅製)で取り付け、得られた試験片それぞれに対し、前記各塗料組成物を乾燥塗膜厚が100μmになるようにスプレー塗装し、23℃で24時間乾燥させ、単膜付き電気防食付着性試験板を作成した。
【0120】
[積層防汚塗膜の試験板]
前記と同様の試験片それぞれに対し、前記各塗料組成物を乾燥塗膜厚が100μmになるようにスプレー塗装し、23℃で24時間乾燥させた後、乾燥後の塗膜上に、シリコーン樹脂含有防汚塗料組成物を乾燥塗膜厚が100μmになるようにスプレー塗装し、23℃で24時間乾燥させ、積層防汚塗膜付き電気防食付着性試験板を作成した。
【0121】
前記シリコーン樹脂含有防汚塗料組成物は、オルガノポリシロキサン「KE−45」(信越化学工業(株)製)100部、シリコーンオイル「DOW CORNING TORAY SH550 FLUID」(東レダウコーニング(株)製)30部およびキシレン30部を混合することにより調製した。
【0122】
[試験]
得られた前記各単膜付きまたは積層防汚塗膜付き電気防食付着性試験板を、40℃の塩水(3%)に3ヵ月間浸漬した(電気防食3M)。浸漬後の各試験板の塗膜表面を水で洗浄し、23℃で24時間乾燥させた後、塗膜の付着性を確認した。
【0123】
付着性は、基本的にJIS K 5600−5−6(1999)に準拠するが、乾燥塗膜厚に依らず、2mm×2mmの25マスの碁盤目剥離試験(クロスカット法)を実施し、基材上に残存する塗膜の残存マス数で評価した。例えば、残存マス数が20である場合、20/25と表記する。
前記塗膜の残存マス数とは、25マスの碁盤目状にカットした全体の面積に対し、塗膜が基材上に残存している面積の合計をマス数に変換した時の値である。例えば、基材上に残存している塗膜の合計面積が80mm
2である場合、残存マス数は20/25と表記する。また、例えば、基材上に残存している塗膜の合計面積が75mm
2などの4で割り切れない値の場合、残存マス数は四捨五入して19/25と表記する。
なお、付着性は、前記残存マス数が『20/25』以上であれば、実用上問題ないといえる。
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】