(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661770
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】電池の受動的な熱管理システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20200227BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20200227BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20200227BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20200227BHJP
H01M 10/623 20140101ALI20200227BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20200227BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20200227BHJP
H01M 2/34 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/653
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/623
H01M10/6554
H01M2/10 S
H01M2/34 A
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-529613(P2018-529613)
(86)(22)【出願日】2016年12月13日
(65)【公表番号】特表2019-503042(P2019-503042A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】US2016066389
(87)【国際公開番号】WO2017106195
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年6月7日
(31)【優先権主張番号】14/975,253
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506329306
【氏名又は名称】アマゾン テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【弁理士】
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ピングリー リアム ステュワート キャヴァナウ
【審査官】
羽鳥 友哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−023355(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0136404(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/613
H01M 10/623
H01M 10/625
H01M 10/653
H01M 10/6554
H01M 10/658
H01M 2/10
H01M 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池モジュールであって、
第1の電池セルと、
1つ以上の熱伝導層及び1つ以上の膨張層を含む積層要素とを備え、前記積層要素は、前記第1の電池セルが延長されて通り、かつ、前記第1の電池セルが前記積層要素に接触する開口部を含み、前記1つ以上の膨張層は、前記積層要素を、前記積層要素が前記第1の電池セルによって発生した熱を伝達する第1の構成から、前記積層要素が前記第1の電池セルによって発生した熱を実質的には伝達しない第2の構成に再構成するために、前記膨張層の温度超過に応じて膨張するように構成される、前記電池モジュール。
【請求項2】
前記1つ以上の熱伝導層のうちの少なくとも1つは、熱伝導層の温度超過に応じて熱伝導構成から非熱伝導構成に再構成し、前記熱伝導構成は前記第1の電池セルによって発生した熱を伝達し、前記非熱伝導構成は前記第1の電池セルによって発生した熱を実質的には伝達しない、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記1つ以上の熱伝導層の少なくとも1つは、前記熱伝導層の温度超過に応じて融解するマトリクス材料に懸濁された熱伝導性材料を含む、請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記熱伝導層の温度超過は、摂氏80〜120度の範囲の温度を上回る温度上昇を含む、請求項3に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記マトリクス材料は合成ワックスを含み、
前記熱伝導性材料は、窒化アルミニウムまたはカーボンブラックのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記膨張層の温度超過は、摂氏200〜300度の範囲の温度を上回る温度上昇を含む、請求項1、2、3、4または5のいずれかに記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記第1の電池セルは第1の電池セルアノード及び第1の電池セルカソードを有し、前記電池モジュールはさらに、
アノード膨張層を、前記アノード膨張層が前記第1の電池セルアノードを介する電流フローを許容する第1の構成から、前記第1の電池セルアノードを介する電流フローが前記第1の構成の電流フローに対して少なくとも部分的に阻止される第2の構成に再構成するために、前記アノード膨張層の温度超過に応じて膨張するように構成される、前記アノード膨張層と、
カソード膨張層を、前記カソード膨張層が前記第1の電池セルカソードを介する電流フローを許容する第1の構成から、前記第1の電池セルカソードを介する電流フローが前記第1の構成の電流フローに対して少なくとも部分的に阻止される第2の構成に再構成するために、前記カソード膨張層の温度超過に応じて膨張するように構成される、前記カソード膨張層と
のうち少なくとも1つを備える、請求項1、2、3、4、5または6のいずれかに記載の電池モジュール。
【請求項8】
第2の電池セルをさらに備え、前記積層要素は、前記積層要素が前記第1の構成にあるときに前記第2の電池セルによって発生した熱を伝達し、前記積層要素が前記第2の構成にあるときに前記第2の電池セルによって発生した熱を実質的には伝達しないように構成される、請求項1、2、3、4、5、6または7のいずれかに記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記第1及び第2の電池セルのそれぞれは、前記積層要素を通るそれぞれの開口部まで少なくとも部分的に延長する、請求項8に記載の電池モジュール。
【請求項10】
第2の積層要素をさらに備え、前記第1及び第2の電池セルのそれぞれは、前記第2の積層要素を通るそれぞれの開口部まで少なくとも部分的に延長する、請求項9に記載の電池モジュール。
【請求項11】
前記積層要素は複数の積層サブアセンブリを含み、前記積層サブアセンブリのそれぞれは、前記熱伝導層のうちの1つ及び前記膨張層のうちの1つを含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のいずれかに記載の電池モジュール。
【請求項12】
前記積層サブアセンブリの少なくとも1つは、金網または炭素メッシュのうちの少なくとも1つを含む支持層を含む、請求項11に記載の電池モジュール。
【請求項13】
前記第1の電池セル及び前記積層要素を囲む熱伝導筐体をさらに備え、前記熱伝導筐体は、前記積層要素が熱を前記積層要素に伝達する前記第1の構成にあるときに、前記積層要素に連結される、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のいずれかに記載の電池モジュール。
【請求項14】
1つ以上の熱伝導スタンドオフ部材を介して前記熱伝導筐体に熱連結されるヒートシンク要素をさらに備える、請求項13に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電池式デバイスはますます一般的になっている。多くの用途では、デバイスに電力供給するために使用される電池のサイズ及び/または重量は、デバイスによって必要とされる電力に対してできる限り小型であることが望ましい。追加的には、電池は多数の放電/充電サイクルに対応する長寿命であることが望ましい。例えば、リチウムイオン(Li−ion)電池は高比エネルギーを有し、鉛蓄電池及びニッケル・水素電池に比べて好適な経年劣化特性を有するため、リチウムイオン電池は携帯用電子機器(例えば、携帯電話、携帯用コンピュータ等)に幅広く利用されている。電気自動車でのリチウムイオン電池の使用も増加している。
【0002】
しかしながら、高比エネルギー電池は、突発的な熱暴走の影響を受け得る。熱暴走は、過充電、過放電及び/または内部短絡などの状態によって引き起こされることがあり、これによって、電池の内部温度が安全な温度限界を大幅に超え得る。臨界温度を上回ると、さらなる温度増加を引き起こす発熱反応が発生する可能性があり、これにより、さらなる発熱反応が発生し熱暴走を引き起こし得る。熱暴走は安全上の重大な問題となる場合がある。例えば、リチウムイオン電池では、900°Cまで温度が高くなり得るだけでなく、相当な量の可燃性ガス及び有毒ガスも放出され得る。
【0003】
本開示に従った多様な実施形態を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】多数の実施形態による、電池セルによって発生した熱を受動的に管理するように構成された積層要素を含む電池モジュールを例示する、簡略化された模式断面図である。
【
図2】
図1の電池モジュールの積層要素のうちの1つを例示する、簡略化された模式断面図である。
【
図3】
図1の電池モジュールを含む電池を例示する、簡略化された模式断面図である。
【
図4】多数の実施形態による、電池セルによって発生した熱を受動的に管理するように構成された積層要素を含む電池モジュールを含む電気自動車を例示する、簡略化された模式図である。
【
図5】多数の実施形態による、電池セルによって発生した熱を受動的に管理するように構成された積層要素を含む電池モジュールによって電力供給される航空機を例示する、簡略化された模式図である。
【
図6】多数の実施形態による、電池セルによって発生した熱を受動的に管理するように構成された積層要素を含む電池モジュールによって電力供給される航空機を例示する、簡略化された模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の説明では多様な実施形態が説明される。説明の目的のため、特定の構成及び詳細が実施形態の完全な理解を提供するために記載される。しかしながら、本実施形態が特定の詳細なしに実施され得ることも当業者に明らかとなるだろう。さらに、周知の特徴は、説明されている実施形態を不明瞭にしないために省略または簡略化され得る。
【0006】
本明細書に記載する構成部品、アセンブリ及び関連する手法は電池の熱管理を受動的に達成する。多数の実施形態では、少なくとも1つの積層要素は、(1)正常な動作状態の間に、1つ以上の電池セルから熱を奪い、(2)1つ以上の電池セルの熱暴走を示す温度に曝されるときに、非熱伝導構成に再構成するように構成される。積層要素のうちの少なくとも1つを電池モジュールに組み込むことによって、正常な動作の間に、能動的な冷却要素(例えば、ファン、冷却液ポンプ)を利用する必要なく、電池モジュールによって発生した熱を1つ以上の電池セルから電池モジュールの外部に伝達することができる。追加的には、積層要素(複数可)は、熱暴走を示す温度に曝されるときに非熱伝達構成に再構成するため、電池モジュールはより軽量な及び/またはより安価な外部筐体を利用することができ、さらに熱暴走の際には1つ以上の電池セルの熱分離を提供することができる。
【0007】
同様の参照番号が様々な図面において同様の要素を指す図面を参照すると、
図1は、多数の実施形態による、電池モジュール10によって発生した熱を受動的に管理するように構成された電池モジュール10を示す。電池モジュール10は、アレイ電池セル12、上部セルホルダ14、下部セルホルダ16、カソード18、アノード20、積層要素22、カソード18と電池セル12のアレイのカソードとの間のカソード膨張コーティング24、アノード20と電池セル12のアレイのアノードとの間のアノード膨張コーティング26、任意の膨張可能な熱フェルト絶縁体28及び任意のワックス/相変化材料30を含む。例示の実施形態では、上部セルホルダ14及び下部セルホルダ16は、電池セル12のアレイの端部がここまで延長して保持される開口部を有する。上部セルホルダ14及び下部セルホルダ16は、任意の好適な材料(例えば、ポリマー、セラミック繊維板)から作製することができる。電池セル12のアレイは、積層要素22の開口部、膨張可能な熱フェルト絶縁体28及び含まれる場合にはワックス/相変化材料30まで延長する。実施形態では、ワックス/相変化材料30は、好適な温度(例えば、摂氏80度)で融解するように構成される。
【0008】
積層要素22は、最初は、正常な動作状態の間に1つ以上の電池セルから熱を奪うように構成される。正常な動作状態の間に、電池セル12のアレイの各セルから発生した熱は、積層要素22によってセルから熱が奪われる。例示の実施形態では、積層要素22は、電池セル12のアレイからヒートシンク32に熱伝導経路を提供できるよう、電池セル12のアレイのそれぞれ及び外部のヒートシンク32に接触している。任意の好適な外部のヒートシンク32を使用することができる。例えば、電池モジュール10は、後続的に筐体の外部に伝番するために、電池セル12によって発生した熱を筐体に伝達することができるよう、積層要素22に熱結合した熱伝導性の外部筐体を含むことができる。
【0009】
積層要素22はさらに、熱暴走の間に、電池セル12のうちの1つ以上によって発生した高温に曝されるときに、最初の熱伝導構成から非熱伝導構成に再構成するように構成される。
図2を参照して本明細書にさらに詳細に記載する通り、積層要素22のぞれぞれは、高温に曝されたときに再構成する熱伝導層及び膨張層を含み、これによって、積層要素を最初の熱伝導構成から非熱伝導構成に再構成する。非熱伝導構成では、積層要素22は、熱伝導を阻止するように構成され、これによって、熱暴走を受ける電池セル12のアレイの任意のセルを熱分離するのに役立つ。
【0010】
いくつかの例では、積層要素22は熱伝導構成から非熱伝導構成に局所的に再構成するだろう。例えば、電池セル12のアレイのセルのうちの1つのみが熱暴走を受ける場合、積層要素22が熱暴走を受けるセルに接触している部分に隣接している積層要素22のそれぞれの局所的な部分を非熱伝導構成に再構成することができ、したがって、熱暴走を受けているセルを熱分離し、まだ最初の熱伝導構成にある積層要素22の残りの部分への熱の伝達を阻止する。これによって、積層要素22は、熱暴走を受けていないセルから熱をなおも奪いながら、熱暴走を受けているセルのみを熱分離するように機能し得る。
【0011】
カソード18と電池セル12のアレイのカソードとの間のカソード膨張コーティング24は、最初に、カソード18と電池セル12のアレイのそれぞれのカソードとの間の電気伝導に対応するように構成される。例えば、実施形態では、電池セル12のそれぞれのカソードの接触領域は、カソード膨張コーティング24を塗布する前にマスクされ、これによって、カソード18はそれぞれのカソード接触領域に直接接触する。カソード18は、任意の好適な導電性材料(例えば、ニッケル、銅)から作製することができる。電池セル12のうちの1つ以上の熱暴走によって好適な温度超過に曝される場合、カソード膨張コーティング24は膨張して、カソード18と、熱暴走を受けている電池セル12のアレイの電池セルのそれぞれのカソードとの間の分離を誘発し、これによって、電気接続を妨げる。積層要素22の上記の局所的膨張と同様に、カソード膨張コーティング24は、熱暴走を受けている電池セル12のカソードのすぐ近隣で部分的に膨張し、これによって、熱暴走を受けている電池セル12からカソード18のみを分離し得る。
【0012】
カソード膨張コーティング24と同様の方式で、アノード20と電池セル12のアレイのアノードとの間のアノード膨張コーティング26は、最初に、アノード20と電池セル12のアレイのそれぞれのアノードとの間の電気伝導に対応するように構成される。例えば、実施形態では、電池セル12のそれぞれのアノードの接触領域は、アノード膨張コーティング26を塗布する前にマスクされ、これによって、アノード20はそれぞれのアノード接触領域に直接接触する。アノード20は、任意の好適な導電性材料(例えば、ニッケル、銅)から作製することができる。電池セル12のうちの1つ以上の熱暴走によって好適な温度超過に曝される場合、アノード膨張コーティング26は膨張して、アノード20と、熱暴走を受けている電池セル12のアレイの電池セルのそれぞれのアノードとの間の分離を誘発し、これによって、電気接続を防ぐ。カソード膨張コーティング24の上記の局所的膨張と同様に、アノード膨張コーティング26は、熱暴走を受けている電池セル12のアノードのすぐ近隣で部分的に膨張し、これによって、熱暴走を受けている電池セル12からアノード20のみを分離し得る。
【0013】
図2は、積層要素22の実施形態を例示する。例示の実施形態では、積層要素22は、膨張層34、支持層36及び熱伝導層38を含む。膨張層34は、電池セル12のうちの1つ以上の熱暴走の結果として誘発される好適な温度(例えば、摂氏200〜300度)に曝されたときに、膨張するように構成される。膨張層34は任意の好適な膨張材料から作製することができる。例えば、好適な膨張材料は、ケイ酸ナトリウムベースの材料、グラファイトベースの膨張材料、酸剥離剤を伴う高炭素多価化合物、アミンまたはアミド脱水要素及び発泡剤を含む。支持層36は、電池セル12の熱暴走が発生しない正常な動作状態の間に、膨張層34及び熱伝導層38への支持を提供する任意の好適な材料/要素(例えば、金網、炭素メッシュ、フェルト)を含むことができる。
【0014】
熱伝導層38は、電池セル12のうちの1つ以上の熱暴走によって生じる温度超過に曝されるときに、再構成可能な任意の好適な材料から作製することができる。例えば、実施形態では、熱伝導層38は、好適に低い融解温度(例えば、摂氏80〜120度)を有するマトリクス材料(例えば、合成ワックス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、低密度ポリエチレン(LDPE))に懸濁された熱伝導性材料(例えば、窒化アルミニウム、カーボンブラック)を含む。正常な動作状態(つまり、電池セル12に熱暴走が発生していない)の間に、熱伝導層38は電池セル(12)から熱を奪う。電池セル12のうちの1つ以上の熱暴走の間に、マトリクス材料は最初に融解し(例えば、摂氏80〜120度)、これによって、熱伝導層38の熱伝導性を減少させ、熱暴走を受けている1つ以上の電池セル12の熱分離の初期レベルを提供する。
【0015】
さらに十分な温度超過(例えば、摂氏200〜300度)では、膨張層34は膨張して熱伝導層38の熱伝導性をさらに減少させる。膨張層34の膨張は積層要素22の絶縁特性を高め、これによって、熱暴走を受けている1つ以上の電池セル12の熱分離を増加させる。
【0016】
積層要素22を製造するために任意の好適な手法を使用することができる。例えば、熱伝導層38は溶融及びロール成形またはドクターブレードによって形成することができる。熱伝導層38及び膨張層34を含む積層シートを形成することができる。例えば、熱伝導層38に膨張材料を噴霧することができる。積層シートはさらに、シートの温度を熱伝導層38の融解温度付近まで上昇させ、シートを共に(例えば、ローラを使用して)プレスして膨張層24と熱伝導層38を共に接着することによる、膨張材料のシートの熱伝導層38への接着によって形成することができる。積層要素22は、交互の層を伴う積層シートを切断及び積み重ねることによって形成することができる。積層要素22はさらに、膨張材料を熱伝導層38に噴霧し、噴霧された膨張層に別の熱伝導層38を追加し、噴霧された膨張層34により分離された所望の好適な数の熱伝導層38を組み込むことを任意の好適な回数繰り返すことによって形成することができる。積層要素22はさらに、スタンドオフ付きのツール内に膨張材料のシートを配置することによって形成することができ、注入によって大型の2層材シートを作成するために閉鎖型のツール成形を使用する。大型の2層材シートは、従来の機械加工手法を使用して、所望に応じてトリミング及び/または形成することができる。代替的には、閉鎖型のツールは、電池セルがそこまで延長する全ての穴の有無に関係なく、ネット状の積層要素を形成するように構成することができる。同じ手法を使用して1つ以上の支持層36を含めることができる。
【0017】
電池モジュール10は、任意の好適な電池に組み込むことができる。例えば、
図3は、電池モジュール10を含む電池50を例示する。電池50は、電池モジュール10、外部のヒートシンク54及び筐体52をヒートシンク54に熱連結する熱伝導スタンドオフ56を囲む熱伝導筐体52を含む。例示の実施形態では、電池50はさらに、筐体52の温度が好適な温度(例えば、摂氏200〜300度)を超える場合に膨張するように構成される任意の外部の膨張コーティング58を含み、本明細書に記載する積層要素22、カソード膨張コーティング24及びアノード膨張コーティング26を介して電池モジュール10に提供される受動的な熱分離だけでなく、電池50のさらなる熱分離を提供する。外部のヒートシンク54は、外部のヒートシンク54から熱を分散するのに好適な位置に配置することができる。例えば、電池50が車両に電力供給するために使用される場合、ヒートシンク54からの周囲環境に熱を伝達するために、ヒートシンク54を車両の外面に配置することができる。
【0018】
電池50は、任意の好適な電動アイテムに電力供給するために使用することができる。例えば、
図4は、電池モジュール50を含む電気自動車60を例示する、簡略化された模式図である。電気自動車60はさらに、トランスミッション66を介して駆動ホイール64に電力供給する電気モータ62を含む。本明細書に記載する通り、電池50のヒートシンク54は、正常な動作状態の間にヒートシンク54から周辺環境に熱を伝達するために電気自動車60の外面に配置される場合がある。別の例として、
図5は、電池モジュール50を含む遠隔制御されるドローン70を例示する、簡略化された模式図である。ドローン70はさらに、回転子74に電力供給する電子モータ72を含む。本明細書に記載する通り、電池50のヒートシンク54は、正常な動作状態の間にヒートシンク54から周辺環境に熱を伝達するためにドローン70の外面に配置される場合がある。さらに別の例では、
図6は、電池50を含む電子装置80を例示する、簡略化された模式図である。電子装置80はさらに、電池50によって電力供給される1つ以上の電動構成部品82を含む。電子装置80は、任意の好適な電動の携帯用電子装置(例えば、ノートパソコン、携帯電話、フィットネス監視デバイス、タブレット、電子書籍)とすることができる。
【0019】
本明細書に開示する実施形態は、電池セルのアレイのうちの1つ以上、電池セルのアレイを支持するセルホルダ及び/または電池セルのそれぞれに接触する積層要素を含む電池モジュールを含んでよい。積層要素は、熱伝導層及び熱伝導層が組み入れられている膨張層を含んでよい。膨張層は、積層要素を第1の構成から第2の構成に再構成するために、膨張層の温度超過に応じて膨張するように構成されてよい。第1の構成は電池セルのアレイによって発生した熱を伝達する積層要素を含んでよく、及び/または第2の構成は電池セルのアレイによって発生した熱を実質的には伝達しない積層要素を含んでよい。
【0020】
任意には、熱伝導層はマトリクス材料に懸濁された熱伝導性材料を含んでよく、マトリクス材料は、摂氏80〜120度の範囲の融点温度を有してよい。任意には、電池モジュールは、アノード膨張層を、アノード膨張層が電池セルのアレイのアノードを介する電流フローを許容する第1の構成から、電池セルのアレイの少なくとも1つのアノードを介する電流フローが第1の構成の電流フローに対して少なくとも部分的に阻止される第2の構成に再構成するために、アノード膨張層の温度超過に応じて膨張するように構成されるアノード膨張層を含んでよい。任意には、カソード膨張層は、カソード膨張層を、カソード膨張層が電池セルのアレイのカソードを介する電流フローを許容する第1の構成から、電池セルのアレイの少なくとも1つを介する電流フローが第1の構成の電流フローに対して少なくとも部分的に阻止される第2の構成に再構成するために、カソード膨張層の温度超過に応じて膨張するように構成されてよい。
【0021】
本明細書に開示する実施形態は、第1の電池セルのうちの1つ以上及び/または1つ以上の熱伝導層及び1つ以上の膨張層を含む積層要素を含む電池モジュールを含んでよい。任意には、1つ以上の膨張層は、積層要素を第1の構成から第2の構成に再構成するために、膨張層の温度超過に応じて膨張するように構成されてよい。第1の構成は、積層要素が第1の電池セルによって発生した熱を伝達することを特徴としてよく、第2の構成は、積層要素が第1の電池セルによって発生した熱を実質的には伝達しないことを特徴としてよい。
【0022】
任意には、1つ以上の熱伝導層のうちの少なくとも1つは、熱伝導層の温度超過に応じて熱伝導構成から非熱伝導構成に再構成してよく、熱伝導構成は第1の電池セルによって発生した熱を伝達し、非熱伝導構成は第1の電池セルによって発生した熱を実質的には伝達しない。任意には、1つ以上の熱伝導層の少なくとも1つは、熱伝導層の温度超過に応じて融解するマトリクス材料に懸濁された熱伝導性材料を含んでよい。任意には、熱伝導層の温度超過は、摂氏80〜120度の範囲の温度を上回る温度上昇を含んでよい。任意には、マトリクス材料は合成ワックスを含んでよく、及び/または熱伝導性材料は窒化アルミニウムまたはカーボンブラックのうちの少なくとも1つを含んでよい。任意には、膨張層の温度超過は、摂氏200〜300度の範囲の温度を上回る温度上昇を含んでよい。
【0023】
任意には、第1の電池セルは第1の電池セルアノード及び第1の電池セルカソードを有してよく、電池モジュールは、アノード膨張層を、アノード膨張層が第1の電池セルアノードを介する電流フローを許容する第1の構成から、第1の電池セルアノードを介する電流フローが第1の構成の電流フローに対して少なくとも部分的に阻止される第2の構成に再構成するために、アノード膨張層の温度超過に応じて膨張するように構成されるアノード膨張層のうちの1つ以上及び/またはカソード膨張層を、カソード膨張層が第1の電池セルカソードを介する電流フローを許容する第1の構成から、第1の電池セルカソードを介する電流フローが第1の構成の電流フローに対して少なくとも部分的に阻止される第2の構成に再構成するために、カソード膨張層の温度超過に応じて膨張するように構成されるカソード膨張層をさらに含んでよい。
【0024】
任意には、電池モジュールは第2の電池セルを含んでよく、積層要素は、積層要素が第1の構成であるときに第2の電池セルによって発生した熱を伝達し、積層要素が第2の構成であるときに第2の電池セルによって発生した熱を実質的には伝達しないように構成されてよい。任意には、第1及び第2の電池セルのそれぞれは、積層要素を通るそれぞれの開口部まで少なくとも部分的に延長してよい。任意には、電池モジュールは第2の積層要素をさらに含んでよく、第1及び第2の電池セルのそれぞれは、第2の積層要素を通るそれぞれの開口部まで少なくとも部分的に延長してよい。任意には、積層要素は複数の積層サブアセンブリを含み、積層サブアセンブリのそれぞれは、熱伝導層のうちの1つ及び膨張層のうちの1つを含んでよい。任意には、積層サブアセンブリの少なくとも1つは、金網または炭素メッシュのうちの少なくとも1つを含み得る支持層を含んでよい。任意には、電池モジュールは、第1の電池セル及び積層要素を囲む熱伝導筐体をさらに含んでよく、熱伝導筐体は、積層要素が積層要素からの熱を伝達する第1の構成にあるときに、積層要素に連結されてよい。任意には、電池モジュールは、1つ以上の熱伝導スタンドオフ部材を介して熱伝導筐体に熱連結されるヒートシンク要素をさらに含んでよい。
【0025】
本明細書に開示する実施形態は、電池によって発生した熱の受動管理のための積層構造を含んでよく、積層構造は、1つ以上の熱伝導層及び1つ以上の熱伝導層が組み入れられている1つ以上の膨張層を含んでよい。任意には、1つ以上の膨張層のそれぞれは、積層構造を第1の構成から第2の構成に再構成するために、膨張層の温度超過に応じて膨張するように構成されてよい。任意には、積層構造は第1の構成において熱伝導性であってよく、積層構造は第2の構成において実質的には熱伝導性でなくてよい。
【0026】
任意には、積層構造は、1つ以上の熱伝導層が組み入れられている1つ以上の支持層及び1つ以上の膨張層をさらに含んでよい。任意には、支持層のうちの1つ以上は強化メッシュを含んでよい。任意には、1つ以上の熱伝導層の少なくとも1つは、熱伝導層の温度超過に応じて熱伝導構成から非熱伝導構成に再構成してよい。任意には、熱伝導構成は第1の電池セルによって発生した熱を伝達してよく、非熱伝導構成は第1の電池セルによって発生した熱を実質的には伝達できない。
【0027】
したがって、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で考えられるべきである。しかしながら、特許請求の範囲に記載される本開示のより広範の精神及び範囲から逸脱することなく、多様な修正形態及び変形形態が本明細書に加えられ得ることは明らかである。
【0028】
他の変形形態は、本開示の精神の範囲内である。ゆえに、開示された技法は多様な修正形態及び代替構成の影響を受けやすいが、その特定の例示される実施形態は図面に示され、上記に詳細に記載されている。しかしながら、本開示を開示された特定の1つ以上の形に限定する意図はなく、逆に意図は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲に入る全ての修正形態、代替的な構成及び均等物を包含することであることが理解されるべきである。
【0029】
開示される実施形態を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「a」、「an」及び「the」ならびに同様の指示語の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈に明らかに矛盾するものでない限り、単数及び複数の両方を網羅すると解釈される。用語「comprising(備える)」、「having(有する)」、「including(含む)」及び「containing(含む)」は、特に断りのない限り、オープンエンド用語(すなわち「を含むが、これらに限定されるものではない」を意味する)として解釈されるべきである。用語「接続された」は、たとえ介在するものがあっても部分的にまたは完全に、中に含まれる、取り付けられる、または互いに結合されるとして解釈されるべきである。本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、単に、範囲内に入るそれぞれの別個の値に個別に言及する短縮方法としての役割を果たすことが意図され、各個別の値は、それが個別に本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈に明らかに矛盾するものでない限り、任意の好適な順序で実行できる。本明細書内に提供される任意及び全ての例または例示的言語(例えば、「など」)の使用は、単に本開示の実施形態をより良く明らかにすることが意図され、別段の請求がない限り、本開示の範囲に対して制限を課すものではない。本明細書のいかなる言葉も、本開示の実施にとって必須として任意の請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0030】
特に断りのない限り、句「X、YまたはZのうちの少なくとも1つ」のような選言的な言葉は、項目、用語等がX、YもしくはZまたはそのいずれかの組合せ(例えば、X、Y及び/またはZ)であってよいことを示すために一般的に用いられるとして文脈の中で理解されることが意図される。したがって、係る選言的言語は、特定の実施形態がXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ及びZの少なくとも1つがそれぞれ存在することを必要とすることを暗示することを概して意図しておらず、意味するべきではない。
【0031】
本開示を実施するために発明者に知られている最良の形態を含む本開示の好ましい実施形態が本明細書に説明される。これらの好ましい実施形態の変形形態は、前述の説明を読むと当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形形態を必要に応じて利用することを期待し、本発明者らは本開示が本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で実施されることを意図する。したがって、本開示は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された主題の全ての修正形態及び均等物を含む。さらに、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈に明らかに矛盾するものでない限り、上述要素の全ての考え得る変形形態での上記要素の任意の組み合わせが本開示に包含される。
【0032】
あたかも各参考文献が参照により個々にかつ具体的に援用されるように示され、その全体として本明細書に記載されるかのように、本明細書で引用した刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、同程度に参照により本明細書に援用される。