(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態.
本実施の形態に係る冷凍サイクル装置100について説明する。
図1は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置100の冷媒回路Cの説明図である。
本実施の形態の冷凍サイクル装置100は、例えば、空気調和装置、冷凍装置及びヒートポンプ給湯機等に適用することができる。
【0010】
[構成説明]
図1に示すように、冷凍サイクル装置100は、冷媒を循環させる冷媒回路Cを含む。
また、冷凍サイクル装置100は、室外機101と、複数の室内機102とを含む。
【0011】
冷媒回路Cは、圧縮機1、四方弁2、第1の熱交換器3、複数の絞り装置4、複数の第2の熱交換器5、アキュムレータ6、熱交換器HIC、絞り装置7及び冷媒配管P1〜P13を含む。冷凍サイクル装置100が含む冷媒回路Cは、冷媒配管P4から冷媒が供給されるインジェクション回路C1を含む。
また、冷凍サイクル装置100は、第1の熱交換器3に付設される第1のファン3Aと、第2の熱交換器5に付設される第2のファン5Aとを含む。
室外機101には、圧縮機1、四方弁2、第1の熱交換器3、第1のファン3A、アキュムレータ6、熱交換器HIC及び絞り装置7が搭載されている。
各室内機102には、絞り装置4、第2の熱交換器5及び第2のファン5Aが搭載されている。
【0012】
更に、冷凍サイクル装置100は、圧縮機1等を統括制御する制御装置50と、制御装置50によって制御され、圧縮機1の劣化等の報知を行う報知部51と、後述するセンサ群とを含む。
【0013】
圧縮機1は、吸入した低圧冷媒を圧縮し、高圧冷媒として吐出する流体機械である。本実施の形態の圧縮機1は、インバータにより回転数が制御されるようになっている。圧縮機1は高圧冷媒を吐出する冷媒吐出部と冷媒回路Cを循環して戻ってきた低圧冷媒を吸入する冷媒吸入部とを備えている。
【0014】
四方弁2は、圧縮機1の冷媒吐出部と第1の熱交換器3とを連通し、且つ、圧縮機1の冷媒吸入部と第2の熱交換器とを連通する第1の流路と、圧縮機1の冷媒吐出部と第2の熱交換器5とを連通し、且つ、圧縮機1の冷媒吸入部と第1の熱交換器3とを連通する第2の流路とを含む。四方弁2は制御装置50によって、第1の流路と第2の流路とが選択的に切り替えられる。冷凍サイクル装置100が空気調和装置である場合には、四方弁2が第1の流路に切り替えられている状態では、冷房運転を実行しており、四方弁2が第2の流路に切り替えられている状態では、暖房運転を実行している。
【0015】
第1の熱交換器3は、例えば、内部を流通する冷媒と、第1のファン3Aにより送風される空気との熱交換を行う空冷式熱交換器として構成することができる。空冷式熱源側熱交換器は、例えば、伝熱管と複数のフィンとにより構成されたクロスフィン式のフィンアンドチューブ型熱交換器として構成できる。第1の熱交換器3は、冷凍サイクル装置100が冷房運転を実行している場合には凝縮器(放熱器)として機能し、暖房運転を実行している場合には蒸発器として機能する。第1のファン3Aは、第1の熱交換器3に供給する空気の流量を可変に調整できるようになっている。第1のファン3Aは、例えば、DCファンモータによって駆動されるプロペラファンである。
【0016】
絞り装置4及び絞り装置7は、例えば、開度を調節可能な電子膨張弁である。電子膨張弁としては、例えばリニア電子膨張弁が用いられる。なお、絞り装置4はキャピラリーチューブ等の他の減圧手段を用いることもできる。
【0017】
第2の熱交換器5は、例えば、内部を流通する冷媒と、第2のファン5Aにより送風される空気との熱交換を行う空冷式熱交換器として構成することができる。第2の熱交換器5は、フィンアンドチューブ型熱交換器として構成できる。第2の熱交換器5は、冷凍サイクル装置100が冷房運転を実行している場合には蒸発器として機能し、暖房運転を実行している場合には凝縮器として機能する。第2のファン5Aは、第2の熱交換器5に供給する空気の流量を可変に調整できるようになっている。第2のファン5Aは、例えば、DCファンモータによって駆動されるプロペラファンである。
【0018】
アキュムレータ6は、余剰の冷媒を貯留する冷媒貯留機能と、運転状態が変化する際に一時的に発生する液冷媒を滞留せることにより、圧縮機1に大量の液冷媒が流入するのを防ぐ気液分離機能と、を有している。アキュムレータ6は、冷媒流入部及び冷媒流出部を備えている。アキュムレータ6は、冷媒流入部が四方弁2に接続されている。また、アキュムレータ6は冷媒流出部が圧縮機1の冷媒吸入部に接続されている。
【0019】
熱交換器HICは、インジェクション回路C1に接続された第1の流路と、冷媒配管P3及び冷媒配管P4に接続された第2の流路とを含む。熱交換器HICは、例えば低外気温度時において、圧縮機1の吐出冷媒温度を抑制することに用いられる。熱交換器HICは、冷媒配管P4及び絞り装置7を介して第1の流路に流入した冷媒と、冷媒配管P4を介して第2の流路に流入した冷媒とを熱交換させる。熱交換器HICの第1の流路から流出した冷媒は、気液二相状態となる。熱交換器HICの第1の流路から流出した冷媒は、アキュムレータ6を介して圧縮機1に戻される。
【0020】
冷媒配管P1は、一端が圧縮機1の吸入側に接続され、他端が四方弁2に接続されている。冷媒配管P2は、一端が四方弁2に接続され、他端が第1の熱交換器3に接続されている。冷媒配管P3は、一端が第1の熱交換器3に接続され、他端が熱交換器HICに接続されている。冷媒配管P4は、一端が熱交換器HICに接続され、他端側が各冷媒配管P5に接続されている。冷媒配管P5は、一端が冷媒配管P4に接続され、他端が絞り装置4に接続されている。冷媒配管P6は、一端が絞り装置4に接続され、他端が第2の熱交換器5に接続されている。冷媒配管P7は、一端が第2の熱交換器5に接続され、他端が冷媒配管P8に接続されている。冷媒配管P5、冷媒配管P6及び冷媒配管P7は室内機102の台数に応じた本数が設けられている。
【0021】
冷媒配管P8は、一端側が各冷媒配管P7に接続され、他端が四方弁2に接続されている。冷媒配管P9は、一端が四方弁2に接続され、他端がアキュムレータ6の冷媒流入部に接続されている。冷媒配管P10は、一端がアキュムレータ6の冷媒流出部に接続され、他端が圧縮機1の冷媒吸入部に接続されている。冷媒配管P11は、一端が冷媒配管P4に接続され、他端が絞り装置7に接続されている。冷媒配管P12は、一端が絞り装置7に接続され、他端が熱交換器HICに接続されている。冷媒配管P13は、一端が熱交換器HICに接続され、他端が冷媒配管P9に接続されている。
【0022】
制御装置50は、圧縮機1、報知部51、絞り装置4、絞り装置7、第1のファン3A及び第2のファン5A等を統括制御する。制御装置50は、例えば、室外機101に搭載される。制御装置50に含まれる各機能部は、専用のハードウェア、またはメモリに格納されるプログラムを実行するMPU(Micro Processing Unit)で構成される。制御装置50が専用のハードウェアである場合、制御装置50は、例えば、単一回路、複合回路、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。制御装置50が実現する各機能部のそれぞれを、個別のハードウェアで実現してもよいし、各機能部を一つのハードウェアで実現してもよい。制御装置50がMPUの場合、制御装置50が実行する各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアやファームウェアはプログラムとして記述され、メモリに格納される。MPUは、メモリに格納されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置50の各機能を実現する。メモリは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリである。
【0023】
報知部51は、圧縮機1の劣化に関する報知を行う。報知部51は、リモコン等のディスプレイで表示することで報知する構成であってもよいし、LED等の点灯装置で表示することで報知する構成であってもよいし、音声で報知する構成であってもよいし、これらを組み合わせてもよい。このように、報知部51は、例えば、ディスプレイ表示部、点灯装置及びスピーカー等で構成することができる。報知部51は、例えば、室外機101に搭載される。なお、報知部51は、その他に、冷凍サイクル装置100を統括管理する管理人室等に設けられていてもよい。
【0024】
センサ群は、第1の圧力センサSE1と、第2の圧力センサSE2と、温度センサSE3と、温度センサSE4と、温度センサSE5と、温度センサSE6と、液面センサSE7とを含む。
第1の圧力センサSE1は、圧縮機1から吐出される高圧冷媒の圧力(第1の圧力)を検出するセンサである。第1の圧力センサSE1は、例えば、冷媒配管P1に設けられている。
第2の圧力センサSE2は、圧縮機1へ吸入される低圧冷媒の圧力(第2の圧力)を検出するセンサである。第2の圧力センサSE2は、例えば、冷媒配管P9に設けられている。
温度センサSE3は、冷房運転時におけて、蒸発器(第2の熱交換器5)から流出する冷媒の温度(室内機出口温度)を検出するセンサである。温度センサSE3は、例えば、冷媒配管P7に設けられている。温度センサSE3は、各第2の熱交換器5に設けられている。
温度センサSE4は、熱交換器HICに付設されているセンサである。制御装置50は、例えば、温度センサSE4の検出温度に基づいて、絞り装置7の開度を制御する。
温度センサSE5は、圧縮機1から吐出される高温冷媒の温度を検出するセンサである。温度センサSE5は、例えば、冷媒配管P1に設けられている。
温度センサSE6は、外気温度を検出するセンサである。温度センサSE6は、例えば、室外機101に設けられている。
液面センサSE7は、アキュムレータに貯留されている液冷媒の液面高さを検出するセンサである。液面センサSE7は、アキュムレータ6に設けられている。
【0025】
なお、温度センサSE5が第1の温度センサに対応し、温度センサSE3が第2の温度センサに対応し、温度センサSE6が第3の温度センサに対応している。また、温度センサSE5の検出温度が第1の温度に対応し、温度センサSE3の検出温度が第2の温度に対応し、温度センサSE6の検出温度が第3の温度に対応する。
【0026】
[制御装置50について]
図2は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置100の制御装置50の機能ブロック図である。
図3Aは、制御装置50で取得した各種データの説明図である。
図3Bは、分別部50Bが、
図3Aに示すデータd1〜d100を、アキュムレータ6の液面高さ及び圧縮機1の回転数に基づいて分別したことを示す説明図である。
図4Aは、基準となる外気温度の基準値Torefのときにおける、判定指標δの値(=L1(Toref))を算出するときに用いる直線L1の説明図である。
図4Bは、基準となる外気温度の基準値Torefのときにおける、判定基準値δmの値(=L2(Toref))を算出するときに用いる直線L2の説明図である。
【0027】
制御装置50は、運転状態取得部50Aと、分別部50Bと、判定基準値取得部50Cと、補正係数取得部50Dと、判定基準値補正部50Eと、劣化判定部50Fと、記憶部50Gと、アクチュエータ制御部50Hと、回転数比較部50Iとを備えている。
【0028】
(運転状態取得部50A)
運転状態取得部50Aが逐次取得するデータの構成要素は次の通りである。
運転状態取得部50Aは、日時(日時データ)を取得する。運転状態取得部50Aは、圧縮機1の回転数r(回転数データ)を取得する。運転状態取得部50Aは、室内機102が冷房運転をしている、暖房運転をしている、といった運転内容(運転内容データ)を取得する。運転状態取得部50Aは、液面センサSE7の検出結果に基づいて、アキュムレータ6の液面高さh(液面高さデータ)を取得する。運転状態取得部50Aは、第1の圧力センサSE1の検出圧力に基づいて、圧縮機1の吐出冷媒圧力Pd(吐出冷媒圧力データ)を取得する。運転状態取得部50Aは、第2の圧力センサSE2の検出圧力に基づいて、圧縮機1の吸入冷媒圧力Ps(吸入冷媒圧力データ)を取得する。運転状態取得部50Aは、温度センサSE5の検出温度に基づいて、吐出冷媒温度Td(吐出冷媒温度データ)を取得する。運転状態取得部50Aは、各温度センサSE3の検出温度に基づいて、各室内機102から流出する冷媒の各温度TH1〜TH4(室内機出口温度データ)を取得する。また、運転状態取得部50Aは、予め定められたタイミングで取得した、各温度TH1〜TH4から、その平均温度THav(平均温度データ)を取得する。運転状態取得部50Aは、温度センサSE6の検出温度から外気温度To(外気温度データ)を取得する。運転状態取得部50Aは、予め定められたタイミングで取得した吐出冷媒温度Tdと、同様のタイミングで取得した平均温度THavとの差から、判定指標δ(判定指標データ)を取得する。
このように、運転状態取得部50Aは、上述した日時データ等を構成要素とするデータを逐次取得する。
【0029】
(分別部50B)
分別部50Bは、
図3Bに示すように、運転状態取得部50Aで取得したデータを分別する機能を有する。分別部50Bは、例えば、次の要領で、データを分別する。
分別部50Bは、アキュムレータ6の液面高さhと圧縮機1の回転数rとに基づいて、任意の複数のデータ群から、出現頻度が最も高い複数のデータを分別する。なお、ここでの説明では、任意の複数のデータ群とは、
図3Aに示すように、データ名d1〜d100の計100のデータである。ここでは、説明の都合上、データ数を100としている。データ名d1〜d100のデータには、それぞれ、測定日時t1〜t100が定められている。そして、測定日時t1〜t100は、例えば、予め定められた期間内に属する。予め定められた期間とは、任意の第1の日時から、第1の日時後の任意の第2の日時までに含まれる期間である。予め定められた期間は、例えば、任意の年を採用してもよいし、任意の年の任意の月を採用してもよいし、任意の年の任意の月の任意の週を採用してもよい。データ名d1〜d100の各データは、
図3Aに示すように、それぞれ、圧縮機の回転数r1〜r100及びアキュムレータ液面高さh1〜h100等の各種データを含んでいる。
【0030】
ここで、制御装置50には、アキュムレータ6の液面高さhの範囲として、液面高さが0以上であってh1未満である第1の液面高さ範囲と、液面高さがh1以上であってh2未満である第2の液面高さ範囲と、液面高さがh2以上である第3の液面高さ範囲が、予め定められているものとする。
また、制御装置50には、圧縮機1の回転数rの範囲として、回転数がr1未満である第1の回転数範囲と、回転数がr1以上であってr2未満である第2の回転数範囲と、回転数がr2以上であってr3未満である第3の回転数範囲と、回転数がr3以上であってr4未満である第4の回転数範囲と、回転数がr4以上である第5の回転数範囲が、予め定められているものとする。
【0031】
分別部50Bは、第1の液面高さ範囲〜第3の液面高さ範囲と、第1の回転数範囲〜第5の回転数範囲と、で特定される複数のグループを含むテーブルを作成する。なお、このテーブルは、
図3Bに示すように、液面高さ範囲が3つ×回転数範囲が5つ=15のグループを含んでいる。すなわち、分別部50Bは、液面高さ範囲及び回転数範囲ごとに特定される各グループを特定する機能を備えている。
分別部50Bは、データ名d1〜d100が、テーブルのいずれのグループに対応するかを判定し、各グループに格納されるデータ数を算出する。
図3Bの例では、第1の液面高さ範囲及び第4の回転数範囲で関連づけられるグループのデータ数が80となっており、全15のグループの中で最大である。このグループを最頻出グループと定義する。データ名d1〜d100のうち、この最頻出グループに該当するデータを最頻出データと称する。
図3Aに示すように、データ名d1、d2、d5、・・・d98〜d100を含む80のデータが、最頻出データである。逆に、データ名d3、d4を含む20のデータが、最頻出データではない。なお、
図3Aでは、最頻出データでないデータには、「−」を付している。
【0032】
このように、分別部50Bは、任意の複数のデータ群から、最頻出データを分別している。なお、アキュムレータ6の液面高さ範囲は3つに限定されるものではなく、2つ以上であればよく、また、圧縮機1の回転数範囲は5つに限定されるものではなく、2つ以上であればよい。
制御装置50は、複数のデータ群の中から、最頻出データを分別し、圧縮機1の劣化判定に用いる。最頻出データの運転状態は、安定していることが推測されることから、最頻出データを用いて劣化判定をすることで、高精度に圧縮機1の劣化判定をすることができる。
【0033】
(判定基準値取得部50C)
判定基準値取得部50Cは、運転状態取得部50Aで取得した圧縮機1の回転数rと、運転状態取得部50Aで取得した吐出冷媒圧力Pdと、運転状態取得部50Aで取得した吸入冷媒圧力Psと、予め定められた演算式と、に基づいて、判定基準値δmを算出する。予め定められた演算式は、圧縮機1のパフォーマンスカーブから得られる近似式であり、次の式(1)の通りである。なお、予め定められた演算式は、冷凍サイクル装置100に搭載される圧縮機1の種類に応じて異なる。
【0035】
例えば、30(Hz)≦回転数r≦60(Hz)の範囲であれば、f(r)=−A×r+Bである。
例えば、60(Hz)<回転数r≦120(Hz)の範囲であれば、f(r)=C×r+Dである。
また、例えば、γ=E(Pd/Ps)
4 +F(Pd/Ps)
3 +G(Pd/Ps)
2 +H(Pd/Ps)−Iである。
なお、A〜Iは、任意の定数である。
なお、Ps/Psの値は圧縮比に対応している。また、吐出冷媒圧力Pd及び吸入冷媒圧力Psは、第1の圧力センサSE1及び第2の圧力センサSE2から取得することができる。
【0036】
本実施の形態において、制御装置50は、判定基準値δmをそのまま圧縮機1の劣化判定に用いない。というのも、この判定基準値では、冷凍サイクル装置(冷媒回路)の個体差のばらつき、及び、外気温度条件毎の断熱条件の違い、によってより高精度な劣化判定を実現できない場合がある。そこで、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置100では、より高精度な劣化判定のために、判定基準値δmを補正した値(=補正後の判定基準値δmc)を用いて、劣化判定を行う。
【0037】
(補正係数取得部50D)
補正係数取得部50Dは、少なくとも、冷凍サイクル装置(冷媒回路)の個体差を加味し、判定基準値δmを補正する機能を備えている。補正係数取得部50Dは、補正係数α及び補正係数βを算出する。
ここで、補正係数αは、冷凍サイクル装置100の個体差のばらつきを考慮し、判定基準値δmを補正する数値である。
また、補正係数βは、外気温度条件毎に異なる断熱条件の違いを考慮し、判定基準値δmを補正する数値である。
【0038】
補正係数取得部50Dは、補正係数αを算出するため、第1の直線式L1及び第2の直線式L2を取得する。具体的には、第1の直線式L1は、
図4Aに示すように、ある外気温度のときの判定指標δを算出するのに用いる。また、第2の直線式L2は、
図4Bに示すように、ある外気温度のときの判定基準値δmを算出するのに用いる。第1の直線式L1及び第2の直線式L2は次のようにして算出する。
【0039】
補正係数取得部50Dは、データ名d1、d2、d5、・・・d98〜d100のうち、最頻出データに含まれるデータの外気温度及び判定指標δを、
図4Aに示すように、横軸を外気温度とし、縦軸を判定指標δとする座標に、プロットする。補正係数取得部50Dは、このプロットした座標から、例えば、最小自乗法を用いて第1の直線式L1を算出する。
同様に、補正係数取得部50Dは、データ名d1、d2、d5、・・・d98〜d100のうち、最頻出データに含まれるデータの外気温度及び判定基準値δmを、
図4Bに示すように、横軸を外気温度とし、縦軸を判定基準値δmとする座標に、プロットする。補正係数取得部50Dは、このプロットした座標から、例えば、最小自乗法を用いて第2の直線式L2を算出する。
【0040】
ここで、補正係数取得部50Dは、データ名d1、d2、d5、・・・d98〜d100のうちの最頻出データの外気温度の最大値Tomaxと、最小値Tominとの差が、予め定められた温度幅(例えば、5℃)以上となっているときに、第1の直線式L1及び第2の直線式L2を算出する。なお、以下の説明では、データ名d1、d2、d5、・・・d98〜d100のうちの最頻出データを、単に、最頻出データとも称する。
図4A及び
図4Bに示す例では、最大値Tomaxと、最小値Tominとの差が、予め定められた温度幅よりも広くなっていることを示している。このため、補正係数取得部50Dは、最頻出データから、第1の直線式L1及び第2の直線式L2を算出する。
【0041】
補正係数取得部50Dは、基準となる外気温度の基準値Torefを決定している。ここでの説明では、外気温度の基準値Torefは、最大値Tomaxと最小値Tominとの間の中間値である。つまり、外気温度の基準値Toref=(最大値Tomax+最小値Tomin)/2の関係を満たす。
また、補正係数取得部50Dは、第1の直線式L1を用いて、外気温度の基準値Torefのときの判定指標δを算出する。つまり、補正係数取得部50Dは、L1(Toref)を算出する。同様に、補正係数取得部50Dは、第2の直線式L2を用いて、外気温度の基準値Torefのときの判定基準値δmを算出する。つまり、補正係数取得部50Dは、L2(Toref)を算出する。
そして、補正係数取得部50Dは、L2(Toref)からL1(Toref)を減算して、補正係数αを算出する。つまり、補正係数α=L2(Toref)−L1(Toref)の関係を満たす。
【0042】
補正係数取得部50Dは、最頻出データの判定指標δと、最頻出データの判定基準値δmと、補正係数αとに基づいて、補正係数βを算出する。具体的には、補正係数取得部50Dは、各最頻出データごとに算出値ΔMsを算出する。なお、算出値ΔMsは、判定指標δから、判定基準値δm及び補正係数αの和を減算して算出される。つまり、算出値ΔMs=判定指標δ−(判定基準値δm+補正係数α)の関係を満たす。
また、補正係数取得部50Dは、最頻出データの外気温度Toから基準となる外気温度の基準値Torefを減算して得られる外気温度差ΔMoを算出する。補正係数取得部50Dは、各最頻出データごとに外気温度差ΔMoを算出する。
補正係数取得部50Dは、このように算出した算出値ΔMs及び外気温度差ΔMoを、横軸を外気温度差とし、縦軸を算出値とする座標に、プロットする。補正係数取得部50Dは、このプロットした座標から、例えば、最小自乗法を用いて線形近似式を算出する。補正係数取得部50Dは、この線形近似式から補正係数βを取得する。
【0043】
(判定基準値補正部50E)
判定基準値補正部50Eは、補正係数α及び補正係数βに基づいて、判定基準値δmを補正し、補正後の判定基準値δmcを取得する。具体的には、補正後の判定基準値δmc=判定基準値δm−補正係数α+補正係数βの関係を満たす。
【0044】
なお、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置100では補正係数α及び補正係数βで判定基準値δmを補正する態様を例に説明しているが、それに限定されるものではない。補正係数α及び補正係数βの影響が小さい等の場合には、判定基準値δmと判定指標δとを比較し、圧縮機1の劣化判定をしてもよい。つまり、補正係数取得部50D及び判定基準値補正部50Eは、必ずしも、制御装置50に備えられていなくてもよい。
【0045】
(劣化判定部50F)
現在の判定指標δから補正後の判定基準値δmcを減算した値が大きくなると、圧縮機効率が低下する傾向がわかっている。例えば、現在の判定指標δ−判定基準値δmc=0.51(K)で、圧縮機効率が1%低下する。そこで、劣化判定部50Fは、現在の判定指標δの値と、補正後の判定基準値δmcとを比較し、圧縮機1が劣化しているか否かを判定する。なお、現在の判定指標δは、分別部50Bが測定日時からデータd1〜d100を絞り込むときに使った、予め定められた期間(第1の日時から第2の日時までの期間)の後に取得した値である。
劣化判定部50Fは、現在の判定指標δの値と、補正後の判定基準値δmcとの差分が、予め定められた閾値よりも大きくなると、圧縮機1が劣化したと判定する。
なお、補正後の判定基準値δmcは、判定基準値補正部50Eによって最頻出データの数だけ算出される。このため、どの補正後の判定基準値δmcを、現在の判定指標δと比較するかが問題となる。例えば、判定指標δ及び補正後の判定基準値δmc以外の運転状態量(例えば、吐出冷媒圧力Pd、吸入冷媒圧力Ps、吐出冷媒温度Td、アキュムレータ6の液面高さh、圧縮機1の回転数r等)が近いものを選定すればよい。
【0046】
(記憶部50G)
記憶部50Gには、各種のデータが格納される。例えば、記憶部50Gは、運転状態取得部50Aが取得する運転状態量、式(1)、第1の直線式L1、第2の直線式L2及び補正係数βを取得するときに用いる線形近似式等が格納される。
【0047】
(アクチュエータ制御部50H)
アクチュエータ制御部50Hは、劣化判定部50Fの判定結果に基づいて、圧縮機1が劣化している旨を、報知部51に報知させる。その他に、アクチュエータ制御部50Hは、各種のセンサの検出結果に基づいて、圧縮機1、絞り装置4、絞り装置7、第1のファン3A及び第2のファン5Aの少なくとも一つを制御する。
【0048】
(回転数比較部50I)
回転数比較部50Iは、運転状態取得部50Aで取得した圧縮機1の回転数rと、予め定められた時間だけ前のタイミングの圧縮機1の回転数rとを比較する機能を備えている。なお、この予め定められた時間とは、例えば、1分程度に設定することができる。
【0049】
[制御フロー]
図5は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置100の制御フローの説明図である。
図5を参照して、冷凍サイクル装置100の制御フローの一例を説明する。
【0050】
運転状態取得部50Aは、例えば、測定日時、圧縮機1の回転数r及びアキュムレータ6の液冷媒の液面高さh等の運転状態量を取得する(ステップS1)。次に、回転数比較部50Iは、ステップS1で取得した回転数rが、1分前に取得した圧縮機1の回転数rと同じであるか否かを判定する(ステップS2)。なお、ステップS2はこの態様に限定されるものではなく、例えば、ステップS2の判定条件は、ステップS1で取得した回転数rが、1分前に取得した圧縮機1の回転数rを含む所定の回転数範囲内に収まっているか否か、という判定条件でもよい。
ステップS2でYesの場合には、ステップS3に移行し、記憶部50Gは、ステップS1で取得した運転状態量及び一分前に取得した運転状態量を記憶する(ステップS3)。また、ステップS2でNoの場合には、ステップS1に戻る。
【0051】
分別部50Bは、記憶部50Gに記憶されているデータの中から、任意の複数のデータ群を選ぶ。この任意の複数のデータ群とは、ある時間範囲に含まれるデータである。例えば、2015年9月中の全データ群を選ぶといった要領で、分別部50Bは任意の複数のデータ群を選ぶ。そして、分別部50Bは、アキュムレータ6の液面高さhと圧縮機1の回転数rとに基づいて、任意の複数のデータ群から、出現頻度が最も高い複数のデータ(最頻出データ)を分別する(ステップS4)。
【0052】
運転状態取得部50Aは、ステップS1で取得した吐出冷媒温度Td及び室内機出口温度の平均温度THavに基づいて、運転状態量としての判定指標δを取得する。なお、判定指標δは、圧縮機1の吐出冷媒温度Tdと圧縮機1の吸入冷媒温度Tsとから算出される。しかし、ビル用マルチエアコン等であると、圧縮機1の吸入側の冷媒配管に温度センサが設けられていない場合がある。本実施の形態に係る冷凍サイクル装置100も、冷媒配管P9及び冷媒配管P10等に温度センサが設けられていない。そこで、冷凍サイクル装置100では、圧縮機1の吸入側の冷媒配管の温度センサを、温度センサSE3で代用し、吸入冷媒温度Tsの代わりに平均温度THavを用いて判定指標δを算出している。これにより、冷媒配管P9及び冷媒配管P10等に、別途、温度センサを設けなくても、判定指標δを算出することができ、冷凍サイクル装置100の製造コストが上昇してしまうことを抑制することができる。
また、判定基準値取得部50Cは、ステップS1で取得した圧縮機1の回転数r、吐出冷媒圧力Pd及び吸入冷媒圧力Psと、記憶部50Gに記憶されている予め定められた演算式と、に基づいて判定基準値δmを取得する。そして、記憶部50Gは、判定指標δ及び判定基準値δmを記憶する(ステップS5)。
【0053】
判定基準値補正部50Eは、補正係数α及び補正係数βが記憶部50Gに記憶されているか否かを判定する(ステップS6)。記憶されていれば、判定基準値補正部50Eは、補正係数α及び補正係数βに基づいて、判定基準値δmを補正し、補正後の判定基準値δmcを取得し(ステップS7)、制御装置50は制御フローを終了する(ステップS17)。一方、記憶されていなければ、ステップS8に移行する。
【0054】
補正係数取得部50Dは、最頻出データの外気温度Toの温度幅に関する判定をする。すなわち、補正係数取得部50Dは、ステップS4で分別した最頻出データの外気温度の最大値Tomaxと最小値Tominとの差が、5℃以上となっているか否かを判定する。5℃以上となっていなければ、制御装置50は、ステップS1に戻る。5℃移行となっていれば、補正係数取得部50Dは、最大値Tomaxと最小値Tominとの間の基準値Torefを取得し、記憶部50Gはこの基準値Torefを記憶する(ステップS9)。
【0055】
補正係数取得部50Dは、ステップS4で分別した最頻出データの外気温度To及び判定指標δに基づいて、第1の直線式L1を算出する。そして、記憶部50Gは、第1の直線式L1を記憶する(ステップS10)。また、補正係数取得部50Dは、ステップS4で分別した最頻出データの外気温度To及び判定基準値δmに基づいて、第2の直線式L2を算出する。そして、記憶部50Gは、第2の直線式L2を記憶する(ステップS11)。
【0056】
補正係数取得部50Dは、ステップS11で取得した第2の直線式L2に、外気温度の基準値Torefを代入した値L2(Toref)から、ステップS10で取得した第1の直線式L1に、外気温度の基準値Torefを代入した値L1(Toref)を減算し、補正係数αを取得する。そして、記憶部50Gは、補正係数αを記憶する(ステップS12)。
また、補正係数取得部50Dは、ステップS4で分別した最頻出データの判定指標δから、ステップS4で分別した最頻出データの判定基準値δm及び補正係数αの和を減算し、算出値ΔMsを取得する(ステップS13)。補正係数取得部50Dは、ステップS4で分別した最頻出データの外気温度Toから基準となる外気温度の基準値Torefを減算し、外気温度差ΔMoを取得する(ステップS14)。そして、補正係数取得部50Dは、算出値ΔMs及び外気温度差ΔMoに基づいて、線形近似式を算出し、補正係数βを取得する。そして、記憶部50Gは補正係数βを記憶する(ステップS15)。
【0057】
[制御フローの補足説明]
ステップS2においてNoである場合に、ステップS1に戻る理由は、回転数rがばらついていると、冷凍サイクル装置100の運転状態が安定していないことが想定されるためである。つまり、冷凍サイクル装置100の運転状態が安定していないと、運転状態量が様々な値を取り得るため、運転状態に対して、運転状態量が一義的に定まらず、その結果、精度よく圧縮機1の劣化判定ができなくなる。
【0058】
ステップS8においてNoであれば、ステップS1に戻る。冷凍サイクル装置100の据付当初等のように、冷凍サイクル装置100が、まだ、運転状態量の蓄積が不十分であり、外気温度データがあまりばらついていないことがある。外気温度データがあまりばらついていないと、補正係数α及び補正係数βの算出精度が低下し、結果的に、判定基準値δmを精度よく補正できなくなる可能性がある。このため、ステップS8においてNoであれば、ステップS1に戻ることとなっている。
【0059】
[実施の形態の効果]
分別部50Bは、圧縮機1の回転数範囲及びアキュムレータ6の液面高さ範囲に基づいて取得したデータを分別し、判定で用いる運転状態を適度に絞り込む。これにより、圧縮機1の劣化判定の精度を向上させることができる。
また、分別部50Bの分別にあたっては、圧縮機1の回転数範囲の条件及びアキュムレータ6の液面高さ範囲の条件に留めているため、運転状態量の蓄積が妨げられることを回避することができ、圧縮機1の劣化判定の精度を向上させることができる。
【0060】
制御装置50は、判定基準値δmを補正した判定基準値δmcと、判定指標δとを比較することで、圧縮機1の劣化判定を行うことができる。圧縮機1が劣化してくると、劣化判定基準値δmcと、判定指標δとの差分が増大するからである。なお、判定基準値δmは、圧縮機の基本性能であるパフォーマンスカーブに基づいて算出する。同一状況下であって同一の圧縮機であれば、それぞれの圧縮機の判定基準値も同一となる。ここで、同一状況下とは、吐出冷媒圧力Pd、吸入冷媒圧力Ps及び回転数rが同じ値であることを指す。制御装置50は、冷凍サイクル装置(冷媒回路)の個体差のばらつき等を考慮し、判定基準値δmを圧縮機1の劣化判定の比較の際に用いず、判定基準値δmに補正をした判定基準値δmcを圧縮機1の劣化判定の比較の際に用いている。このように、判定基準値δmcは、パフォーマンスカーブに基づく演算及び補正に基づく演算、を実行することで取得する推定値である。一方、判定指標δは、温度センサから取得される実測温度に基づいて、取得する値である。