特許第6661803号(P6661803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6661803
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】移動式ガス検査機
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/02 20060101AFI20200227BHJP
   G01M 3/04 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   G01M3/02 B
   G01M3/04 F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-6165(P2019-6165)
(22)【出願日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年12月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真二
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−182330(JP,A)
【文献】 特開昭61−172024(JP,A)
【文献】 特開昭61−172025(JP,A)
【文献】 特開平11−132894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 − 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面に沿って移動可能に構成され、ガスを検査する移動式ガス検査機において、
検査対象空気中の所定のガス濃度を検知するガス検知部と、
前記移動式ガス検査機の走行速度を検知する速度検知部と、
前記速度検知部が検知した前記移動式ガス検査機の走行速度に応じて、前記ガス検知部における前記検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する検知レベルを変更する制御部と、を備える、
移動式ガス検査機。
【請求項2】
前記検査対象空気を導入する空気導入部を備え、
前記空気導入部から前記地表面までの距離を検知する距離検知部を備え、
前記制御部は、前記距離検知部が検知した地表面までの距離に応じて、前記ガス検知部の前記検知レベルを変更する、
請求項1に記載の移動式ガス検査機。
【請求項3】
前記制御部は、前記速度検知部が検知した前記移動式ガス検査機の走行速度および/または前記距離検知部が検知した地表面までの距離に応じて、前記空気導入部からの検査対象空気の導入量を増減させる、
請求項2に記載の移動式ガス検査機。
【請求項4】
前記制御部は、前記速度検知部が検知した前記移動式ガス検査機の走行速度に応じて、前記ガス検知部の検知レベルを変更する間隔を変更する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の移動式ガス検査機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式ガス検査機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地表面に沿って移動(走行)しながら、地表面下方の地中に埋設されたガス導管等から地表面側に漏れ出したガスを検査する移動式ガス検査機に関する技術は公知となっている(特許文献1参照)。
前記移動式ガス検査機では、予め決められた速度パターンで走行しながらガスを検査する作業が行われる。例えば、検知されるガスの濃度が高濃度である場合には、走行速度が遅くなるように速度パターンが変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−172024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際の地表面側に漏れ出したガスを検査する作業においては、作業環境や作業時間に応じてある程度自由に走行速度を変更することが要求される場合がある。もっとも、前記移動式ガス検査機では、検知されたガスが低濃度である場合と高濃度である場合との2種類の速度パターンしか備えておらず、このような要求に対応することが困難であった。このため、前記移動式ガス検査機では、地表面側に漏れ出したガスを検査する作業において、作業者への作業負担が大きくなり、また、作業効率が悪くなる場合があった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、作業者への作業負担を低下させることができ、また、作業効率の悪化を抑制することができる、移動式ガス検査機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、本願に開示する移動式ガス検査機においては、ガスを検査する移動式ガス検査機において、検査対象空気中の所定のガス濃度を検知するガス検知部と、前記移動式ガス検査機の走行速度を検知する速度検知部と、前記速度検知部が検知した前記移動式ガス検査機の走行速度に応じて、前記ガス検知部における前記検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する検知レベルを変更する制御部と、を備えるものである。
【0008】
本願に開示する移動式ガス検査機においては、前記検査対象空気を導入する空気導入部を備え、前記空気導入部から前記地表面までの距離を検知する距離検知部を備え、前記制御部は、前記距離検知部が検知した地表面までの距離に応じて、前記ガス検知部の前記検知レベルを変更するものである。
【0009】
本願に開示する移動式ガス検査機においては、前記制御部は、前記速度検知部が検知した前記移動式ガス検査機の走行速度および/または前記距離検知部が検知した地表面までの距離に応じて、前記空気導入部からの検査対象空気の導入量を増減させるものである。
【0010】
本願に開示する移動式ガス検査機においては、前記制御部は、前記速度検知部が検知した前記移動式ガス検査機の走行速度に応じて、前記ガス検知部の検知レベルを変更する間隔を変更するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、作業者への作業負担を低下させることができ、また、作業効率の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る移動式ガス検査機の全体的な構成を示した側面図。
図2】同じく移動式ガス検査機の全体的な構成を示した正面図。
図3】同じく移動式ガス検査機のブロック図。
図4】同じく移動式ガス検査機の別実施例のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態に係る移動式ガス検査機1について、図1から図4を用いて説明する。
【0014】
移動式ガス検査機1は、地表面に沿って移動(走行)し、検査対象空気を導入して、地表面下方の地中に埋設されたガス導管等から地表面側に漏れ出した地表面上方のガス(地表面周囲のガス)を検査する。
図1から図3に示すように、移動式ガス検査機1は、自走式の立乗り二輪車であり、本体2、バー、ハンドル、空気導入部7、表示部9、操作部10、スピーカ11、および制御部20を備える。
【0015】
本体2の両側に車輪3・3が設けられ、本体2の前上部から上方に突出するようにバー4が設けられ、バー4の上端部にハンドル5が設けられる。
本体2の下部には下方に開口する空気導入部7が設けられ、空気導入部7から移動式ガス検査機1内に地表面側の検査対象空気が導入される。
バー4の中途部には、液晶表示やランプ等を備える表示部9と、電源スイッチや作業者が各種の設定を行う操作スイッチ等の操作部10と、音声を発生するスピーカ11と、が設けられる。
作業者は、本体2の上面に両足を配置し、両手でハンドル5を把持した状態で、前方または後方に重心を移動させる。そして、ジャイロセンサ等が検知した前記作業者の姿勢に関する情報を基に、本体2の内部に配置される制御部20がモータ等を制御して前進または後進する方向に車輪3を回転駆動させる。このようにして、移動式ガス検査機1は地表面に沿って移動可能とされる。
【0016】
制御部20は、移動式ガス検査機1の各種の動作を制御し、また、各種情報を記憶する記憶装置を有する。
制御部20は、ガス検知部22や操作部10等の出力信号に基づき各種演算処理を行い、その演算結果に基づき、表示部9やスピーカ11を制御して所望の情報表示や音声出力を行う。
【0017】
また、移動式ガス検査機1は、本体2の内部に、吸引ポンプ21と、ガス検知部22と、速度検知部23と、を備える。
【0018】
吸引ポンプ21は、空気導入部7から導入された検査対象空気を吸引してガス流路を介してガス検知部22に導入させる。
【0019】
ガス検知部22は、導入された検査対象空気中の所定のガス濃度を検知するガスセンサであり、メタンセンサ、酸素センサ、COセンサ、または、都市ガスセンサ等で構成される。ガス検知部22は、空気導入部7からガス流路を介して導入された検査対象空気中の特定成分の濃度を検知し、これに応じた信号を制御部20に出力する。
制御部20は、ガス検知部22の出力信号に基づいて、検査対象空気中のガスの濃度に応じた表示を表示部9に表示させる。また、制御部20は、検査対象空気中のガスの濃度が所定の閾値(許容範囲)を超える場合には、表示部9に所定の警報を表示させ、また、スピーカ11から所定の警報音を発報させる。
【0020】
速度検知部23は、車輪3の回転数に基づいて、移動式ガス検査機1が地表面に沿って移動するときの速度を検知し、これに応じた信号を制御部20に出力する。なお、速度検知部23は、他の構成(例えば、車軸の回転数に基づいて移動式ガス検査機1の走行速度を検出する構成、または、加速度センサ、GNSS(Global Navigation Satellite System)若しくはモーションキャプチャ等を用いて移動式ガス検査機1の走行速度を検出する構成)によって、移動式ガス検査機1の速度を検知する構成とすることもできる。
【0021】
制御部20は、速度検知部23の出力信号に基づいて、移動式ガス検査機1の走行速度を表示部9に表示させる。
また、制御部20は、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度に応じて、ガス検知部22の検知レベル(ガス検知部22の分解能)を変更する。
制御部20は、移動式ガス検査機1の走行速度とガス検知部22の検知レベルとの対応関係を示すテーブルに基づいて、移動式ガス検査機1の走行速度に応じてガス検知部22の検知レベルを好適なものに変更する。前記テーブルは、制御部20の記憶装置に予め記憶される。制御部20は、例えば、移動式ガス検査機1の走行速度が比較的速い場合には、ガス検知部22の検知レベルを高くする。
制御部20は、ガス検知部22の検知レベルが変更されたとき、現在のガス検知部22の検知レベルについて、その旨を表示部9に表示させ、また、その旨をスピーカ11で報知させる。
制御部20は、速度検知部23の出力信号に基づいて、移動式ガス検査機1の走行速度をスピーカ11から音声によって報知する構成とすることもできる。
制御部20は、移動式ガス検査機1の走行速度を表示等するにあたって、キロ表示やマイル表示等の具体的な数値で示す構成以外に、予め設定された所定の速度レベルで示す構成とすることもできる。
【0022】
このように構成される、移動式ガス検査機1では、制御部20によって速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度に応じてガス検知部22の検知レベルを変更することから、例えば、移動式ガス検査機1の走行速度が比較的速い場合にはガス検知部22の検知レベルを高くし、また、移動式ガス検査機1の走行速度が比較的遅い場合にはガス検知部22の検知レベルを低くする。
このため、移動式ガス検査機1によれば、移動式ガス検査機1を用いて地表面側に漏れ出したガスを検査する作業を行うにあたって作業環境や作業時間に応じてある程度自由に移動式ガス検査機1の走行速度を変更させることができる。
したがって、移動式ガス検査機1によれば、作業者への作業負担を低下させることができ、また、作業効率の悪化を抑制することができる。
【0023】
制御部20は、ガス検知部22の検知レベルの変更を所定時間毎(例えば、1秒間隔毎、または0.1秒間隔毎)に行う。即ち、ガス検知部22は、変更された検知レベルによって検査対象空気中のガス濃度を検知する状態が数秒間継続する。ガス検知部22の検知レベルを変更する間隔については、制御部20の記憶装置に記憶され、予め設定される。
【0024】
このように構成されるとき、制御部20は、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度に応じて、ガス検知部22の検知レベルを変更する間隔を変更可能に構成することもできる。制御部20は、移動式ガス検査機1の走行速度とガス検知部22の検知レベルを変更する間隔との対応関係を示すテーブルに基づいて、移動式ガス検査機1の走行速度に応じてガス検知部22の検知レベルを変更する間隔を好適なものに変更する。前記テーブルは、制御部20の記憶装置に予め記憶される。制御部20は、例えば、移動式ガス検査機1の走行速度が比較的速い場合には、ガス検知部22の検知レベルを変更する間隔を短くする。
このように構成することによって、ガス検知部22の検知レベルを移動式ガス検査機1の走行速度により対応させた状態で、ガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する動作を行うことができる。
なお、ガス検知部22の検知レベルを変更する間隔の設定については、作業者が操作部10を操作することによって変更可能に構成することもできる。
【0025】
ガス検知部22の検知レベルの変更にあたっては、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度のうち直近のものが採用される。また、ガス検知部22の検知レベルの変更にあたって、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度のうち所定時間前(例えば、1秒前)のものを採用することもでき、また、直近の所定時間中(例えば、1秒間)の平均速度を採用することもできる。ガス検知部22の検知レベルを変更する際に採用される走行速度のタイミングや平均速度を求める間隔等については、制御部20の記憶装置に記憶され、予め設定される。
【0026】
このように構成されるとき、制御部20は、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度に応じて、ガス検知部22の検知レベルを変更する際に採用される走行速度のタイミングや平均速度を求める間隔等を変更可能に構成することもできる。制御部20は、移動式ガス検査機1の走行速度とガス検知部22の検知レベルを変更する際に採用される走行速度のタイミングや平均速度を求める間隔との対応関係を示すテーブルに基づいて、移動式ガス検査機1の走行速度に応じてガス検知部22の検知レベルを変更する際に採用される走行速度のタイミングや平均速度を求める間隔等を好適なものに変更する。前記テーブルは、制御部20の記憶装置に予め記憶される。制御部20は、例えば、移動式ガス検査機1の走行速度が比較的速い場合には、ガス検知部22の検知レベルを変更する際に採用される走行速度のタイミングをより直前のものとし、または、ガス検知部22の検知レベルを変更する際に採用される平均速度を求める間隔を短くする。
このように構成することによって、ガス検知部22の検知レベルを移動式ガス検査機1の走行速度により対応させた状態で、ガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する動作を行うことができる。
なお、ガス検知部22の検知レベルを変更する際に採用される走行速度のタイミングや平均速度の時間等については、作業者が操作部10を操作することによって変更可能に構成することもできる。
【0027】
ガス検知部22の検知レベルの変更については、例えば、ガス検知部22を一個の高感度センサで構成し、走行速度に関する基準を複数段階(例えば10段階)に予め設定しておき、速度検知部23によって検知された速度の段階に応じてガス検知部22の検知レベル変更する構成とされる。
また例えば、ガス検知部22を複数個(例えば10個)のガスセンサで構成して、検知レベルを比較的低くする場合には、複数個のガスセンサのうち比較的少数のもので検査対象空気中のガス濃度を検知する動作を行い、また、検知レベルを比較的高くする場合には、複数個のガスセンサのうち比較的多数のもので検査対象空気中のガス濃度を検知する動作を行う構成とすることもできる。
【0028】
図4に示すように、移動式ガス検査機1(本体2)は、距離検知部24を備える構成とすることもできる。
距離検知部24は、本体2(空気導入部7)と本体2の下方の地表面との距離を検知し、これに応じた信号を制御部20に出力する。距離検知部24は、例えば、光学式変位センサ、超音波式変位センサ、また、カメラ等の画像認識手段によって構成される。
【0029】
このとき、制御部20は、距離検知部24の出力信号に基づいて、本体2と地表面との距離を表示部9に表示させる。
また、制御部20は、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度および距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離に応じて、ガス検知部22の検知レベルを変更する。
制御部20は、移動式ガス検査機1の走行速度と地表面までの距離とガス検知部22の検知レベルとの対応関係を示すテーブルに基づいて、移動式ガス検査機1の走行速度および地表面までの距離に応じてガス検知部22の検知レベルを好適なものに変更する。制御部20は、例えば、本体2と地表面との距離が比較的遠い場合には、ガス検知部22の検知レベルを高くする。
【0030】
このように、移動式ガス検査機1では、制御部20によって速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度および距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離に応じてガス検知部22の検知レベルを変更することから、ガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する動作をより確実に行うことができ、作業者への作業負担を低下させることができ、また、作業効率の悪化を抑制することができる。
【0031】
制御部20は、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度および距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離に応じて、ガス検知部22の検知レベルを変更する間隔を変更可能に構成することもできる。制御部20は、移動式ガス検査機1の走行速度と地表面までの距離とガス検知部22の検知レベルを変更する間隔との対応関係を示すテーブルに基づいて、移動式ガス検査機1の走行速度および距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離に応じてガス検知部22の検知レベルを変更する間隔を好適なものに変更する。
このように構成することによって、移動式ガス検査機1の走行速度および距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離にガス検知部22の検知レベルをより対応させた状態で、ガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する動作を行うことができる。
【0032】
制御部20は、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度および距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離に応じて、ガス検知部22の検知レベルを変更する際に採用される走行速度のタイミングや平均速度を求める間隔等を変更可能に構成することもできる。制御部20は、移動式ガス検査機1の走行速度と地表面までの距離とガス検知部22の検知レベルを変更する際に採用される走行速度のタイミングや平均速度を求める間隔との対応関係を示すテーブルに基づいて、移動式ガス検査機1の走行速度および地表面までの距離に応じてガス検知部22の検知レベルを変更する際に採用される走行速度のタイミングや平均速度を求める間隔等を好適なものに変更する。
このように構成することによって、移動式ガス検査機1の走行速度および距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離にガス検知部22の検知レベルをより対応させた状態で、ガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する動作を行うことができる。
【0033】
ガス検知部22の検知レベルの変更については、例えば、地表面までの距離に関する基準を複数段階(例えば10段階)に予め設定しておき、距離検知部24によって検知された地表面までの距離の段階に応じてガス検知部22の検知レベルの変更する構成とされる。
【0034】
制御部20は、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度および/または距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離に応じて、吸引ポンプ21の吸引量を変更(増減)させて空気導入部7から検査対象空気の導入量を増減可能に構成することもできる。
制御部20は、移動式ガス検査機1の走行速度と地表面までの距離と吸引ポンプ21の吸引量との対応関係を示すテーブルに基づいて、移動式ガス検査機1の走行速度および地表面までの距離に応じて吸引ポンプ21の吸引量を好適なものに変更させる。制御部20は、例えば、移動式ガス検査機1の走行速度が比較的速い場合、または本体2と地表面との距離が比較的遠い場合には、吸引ポンプ21の出力を上げて吸引量を増加させる。
【0035】
このように、移動式ガス検査機1では、制御部20によって速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度および/または距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離に応じて、吸引ポンプ21の吸引量を変更させて空気導入部7から検査対象空気の導入量を増減可能に構成することから、ガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する動作をより確実に行うことができ、作業者への作業負担を低下させることができ、また、作業効率の悪化を抑制することができる。
【0036】
吸引ポンプ21の吸引量の変更にあたっては、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度のうち直近のものおよび距離検知部24が検知した地表面までの距離のうち直近のものが採用される。また、吸引ポンプ21の吸引量の変更にあたっては、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度のうち所定時間前のもの、および距離検知部24が検知した地表面までの距離のうち所定時間前のものを採用することもできる。また、吸引ポンプ21の吸引量の変更にあたって、直近の所定時間中の平均速度および地表面までの平均距離を採用することもできる。
【0037】
制御部20は、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度および距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離に応じて、吸引ポンプ21の吸引量を変更する間隔、また、ガス検知部22の検知レベルを変更する際に採用される走行速度のタイミングや平均速度を求める間隔等を変更可能に構成することもできる。
このように構成することによって、移動式ガス検査機1の走行速度および距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離にガス検知部22の検知レベルをより対応させた状態で、吸引ポンプ21の吸引量を変更させて空気導入部7から検査対象空気の導入量の増減動作を行うことができる。
【0038】
吸引ポンプ21の吸引量の変更については、例えば、走行速度に関する基準および地表面までの距離に関する基準をそれぞれ複数段階設定しておき、速度検知部23によって検知された速度および距離検知部24によって検知された地表面までの距離を段階に応じて吸引ポンプ21の吸引量を変更する構成とされる。
【0039】
また、制御部20は、変更されたガス検知部22の検知レベルに応じて、吸引ポンプ21の吸引量を変更させて空気導入部7から検査対象空気の導入量を増減可能に構成することもできる。
制御部20は、ガス検知部22の検知レベルと吸引ポンプ21の吸引量との対応関係を示すテーブルに基づいて、ガス検知部22の検知レベルに応じて吸引ポンプ21の吸引量を好適なものに変更する。
制御部20は、例えば、ガス検知部22の検知レベルが比較的高い場合には、吸引ポンプ21の吸引量を増加させる。このように構成することによって、ガス検知部22によってガス濃度を検知する環境が良くない場合であっても、ガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する動作をより確実に行うことができる。
また例えば、制御部20は、ガス検知部22の検知レベルが比較的高い場合には、吸引ポンプ21の吸引量を減少させる構成とすることもできる。
このように構成することによって、必要以上に吸引ポンプ21の吸引量が増加することを抑制して吸引ポンプ21を動作させる消費電力を低減させることができる。
【0040】
制御部20は、ガス検知部22によって検知された検査対象空気中のガス濃度に応じて、吸引ポンプ21の吸引量を変更させて空気導入部7から検査対象空気の導入量を増減可能に構成することもできる。
制御部20は、ガス濃度と吸引ポンプ21の吸引量との対応関係を示すテーブルに基づいて、ガス検知部22によって検知されたガス濃度に応じて吸引ポンプ21の吸引量を好適なものに変更する。
制御部20は、例えば、ガス検知部22によって検知されたガス濃度が比較的高い場合には、吸引ポンプ21の吸引量を増加させる。このように構成することによって、ガス検知部22によってガス濃度を検知する環境が良くない場合であっても、ガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する動作をより確実に行うことができる。
また例えば、制御部20は、ガス検知部22によって検知されたガス濃度が比較的高い場合には、吸引ポンプ21の吸引量を減少させる。このように構成することによって、必要以上に吸引ポンプ21の吸引量が増加することを抑制して吸引ポンプ21を動作させる消費電力を低減させることができる。
【0041】
移動式ガス検査機1では、所定の駆動装置を用いてガス検知部22の位置を変更可能に構成することもできる。
このとき、制御部20は、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度および/または距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離に応じて、ガス検知部22の位置を地表面方向または地表面と反対方向に移動させる。制御部20は、移動式ガス検査機1の走行速度と地表面までの距離とガス検知部22の位置との対応関係を示すテーブルに基づいて、移動式ガス検査機1の走行速度および地表面までの距離に応じてガス検知部22の位置を好適なものに変更する。制御部20は、例えば、走行速度が比較的速い場合には、ガス検知部22の位置を地表面側に移動させる。また例えば、制御部20は、ガス検知部22から地表面までの距離が所定の距離から外れると、ガス検知部22の位置を地表面方向または地表面と反対方向に移動させて、ガス検知部22から地表面までの距離を一定に保つ。
このように構成することによって、ガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する動作をより確実に行うことができる。
【0042】
ガス検知部22の位置の変更にあたっては、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度のうち直近のものおよび距離検知部24が検知した地表面までの距離のうち直近のものが採用される。また、ガス検知部22の位置の変更にあたっては、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度のうち所定時間前のもの、および距離検知部24が検知した地表面までの距離のうち所定時間前のものを採用することもできる。また、ガス検知部22の位置の変更にあたって、直近の所定時間中の平均速度および地表面までの平均距離を採用することもできる。
【0043】
移動式ガス検査機1では、所定の駆動装置を用いて空気導入部7における検査対象空気の取込み態様(例えば、空気導入部7の開口部の位置、空気導入部7の開口部の大きさ、また空気導入部7の開口部の角度等)を変更可能に構成することもできる。
このとき、制御部20は、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度および/または距離検知部24が検知した本体2と地表面との距離に応じて、空気導入部7における検査対象空気の取込み態様を変更させる。制御部20は、移動式ガス検査機1の走行速度と地表面までの距離と空気導入部7における検査対象空気の取込み態様との対応関係を示すテーブルに基づいて、移動式ガス検査機1の走行速度および地表面までの距離に応じて空気導入部7における検査対象空気の取込み態様を好適なものに変更する。制御部20は、例えば、地表面までの距離が所定の距離から外れると、ガス検知部22の位置を地表面方向または地表面と反対方向に移動させて、ガス検知部22から地表面までの距離を一定に保つ。制御部20は、また例えば、走行速度が比較的速い場合また地表面までの距離が比較的遠い場合には、空気導入部7の開口部の位置を地表面方向に移動させ、空気導入部7の開口部を大きくさせ、また、空気導入部7の開口部を前方に傾斜させる。
このように構成することによって、空気導入部7から検査対象空気をより確実に取込んで、ガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する動作をより確実に行うことができる。
【0044】
空気導入部7における検査対象空気の取込み態様の変更にあたっては、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度のうち直近のものおよび距離検知部24が検知した地表面までの距離のうち直近のものが採用される。また、空気導入部7における検査対象空気の取込み態様の変更にあたっては、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度のうち所定時間前のもの、および距離検知部24が検知した地表面までの距離のうち所定時間前のものを採用することもできる。また、空気導入部7における検査対象空気の取込み態様の変更にあたって、直近の所定時間中の平均速度および地表面までの平均距離を採用することもできる。
【0045】
移動式ガス検査機1は、地表面状態検知部25を備える構成とすることもできる。
地表面状態検知部25は、移動式ガス検査機1の下方の地表面の状態(例えば、舗装面か非舗装面か、アスファルトかコンクリートか岩場か砂地か、濡れているか乾いているか等)について検知し、これに応じた信号を制御部20に出力する。地表面状態検知部25は、例えば、カメラ等の画像認識手段、湿度センサ、または振動センサ等によって構成される。
【0046】
このとき、制御部20は、地表面状態検知部25の出力信号に基づいて、移動式ガス検査機1の下方の地表面の状態を表示部9に表示させる。
制御部20は、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度等に加えて、移動式ガス検査機1の下方の地表面の状態に応じて、ガス検知部22の検知レベルを変更する。制御部20は、移動式ガス検査機1の走行速度等と地表面の状態との対応関係を示すテーブルに基づいて、移動式ガス検査機1の走行速度等と地表面の状態に応じてガス検知部22の検知レベルを好適なものに変更する。制御部20は、例えば、地表面の状態が比較的悪いことから移動式ガス検査機1の走行速度を正確に検知することができないおそれがある場合には、ガス検知部22の検知レベルを高くする。
このように構成されることから、ガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する動作をより確実に行うことができる。
また、移動式ガス検査機1の下方の地表面の状態に応じてガス検知部22の検知レベルを変更するにあたっては、作業者が操作部10を操作することによって設定を行うことができるように構成することもできる。
【0047】
制御部20は、移動式ガス検査機1(ガス検知部22や空気導入部7等)の周囲の状況に応じて、ガス検知部22の変更されたガス検知部22の検知レベルについてさらに補正する処理を行う構成とすることもできる。
移動式ガス検査機1は、例えば、流量センサ、温湿度センサ、または風量センサ等の補正用検知部26を備え、制御部20は、補正用検知部26が検知した、ガス検知部22への検査対象空気の流量、移動式ガス検査機1(ガス検知部22)の周囲の温湿度、または移動式ガス検査機1(空気導入部7)の周囲の風量等に応じて、ガス検知部22の検知レベルをより好適なものに補正する。
このように構成することによって、移動式ガス検査機1の周囲の状況を考慮して、より適切な検知レベルとした状態でガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度の検知を行うことができる。
【0048】
制御部20は、ガス検知部22の機能点検(初期点検や定期点検等)時において、ガス検知部22の個体差におけるガス検知能力を判断しておき、当該判断されたガス検知能力に応じてガス検知部22の検知レベルを変更可能に構成することもできる。
このように構成することによって、ガス検知部22の個体差におけるガス検知能力を考慮して、より適切な検知レベルとした状態でガス検知部22による検査対象空気中の所定のガス濃度の検知を行うことができる。
なお、ガス検知能力に応じてガス検知部22の検知レベルを変更するにあたっては、作業者が操作部10を操作することによって設定を行うことができるように構成することもできる。
【0049】
移動式ガス検査機1は、自走式の立乗り二輪車であることに限定されず、作業者が歩行しながら押しまたは引くことによって走行するもの、自転車等の作業者の脚力や腕力を動力として走行するもの、自動車やカート等の作業者が運転してモータやエンジン等を動力として走行するもの、または、リモコン車またはリモコンヘリ等の作業者が遠隔操作してモータやエンジン等を動力として走行するもの等で構成することもできる。
移動式ガス検査機1がモータやエンジン等を動力として走行する構成の場合には、速度検知部23は、モータやエンジンの回転数、またはアクセルペダルやアクセルレバー等の速度操作具の移動量に基づいて移動式ガス検査機1の走行速度を検知する構成とすることもできる。また、速度検知部23は、車輪3の回転数に加えて、前述のモータやエンジンの回転数等の他の構成によって、移動式ガス検査機1の走行速度を検知する構成とすることもできる。このように構成することによって、移動式ガス検査機1の走行速度をより正確に検知することができ、また、移動式ガス検査機1の走行速度を検知する際のタイムラグを抑制することができる。
移動式ガス検査機1は、地中に埋設されたガス導管等から地表面側に漏れだしたガスの検査に限らず、地表面周囲で検知できるガスの検査に関して利用することが可能である。
移動式ガス検査機1は、無線通信部を備え、情報端末や管理システムと通信可能にすることもできる。このように通信機能を備える場合、ガス濃度が所定の閾値を超えた場合の警報情報、走行速度の情報、また検知レベルの変更情報等の各種の情報を制御部20が情報端末や管理システム等の外部に送信し、情報端末や管理システムで当該各種の情報を確認できるようにしてもよい。
【0050】
移動式ガス検査機1は、走行速度に応じて、ガス検知部22における検知レベルを変更可能としつつ、ガス検知部22でガスを検知した場合には、走行速度によらず当該検知レベルを維持するようにしてもよい。またガス検知部22で検知したガス濃度に応じて、走行速度を制御するようにしてもよい。
例えば、検査開始時は、速い走行速度に応じて、高感度の検知レベルでのガス検知を行い、ガスが検知されると、高感度の検知レベルを維持したまま、走行速度を遅くするようにする。このようにすることで、ガス非検知時は、高感度で効率よく検査を実施し、ガス検知後は、高精度の検査を実施することができるので、誤報や検知漏れを防ぎつつ、効率的な検査を実施することができる。
移動式ガス検査機1は、制御部20による、ガス検知部22の検知レベルの変更を、走行距離に応じて変更するようにしてもよい。例えば、50cm毎や、5m毎に検知レベルの変更を行う。このようにすることで所定の範囲において同じ検知レベルで検査されるので、当該範囲内の検知結果を比較することでガス漏洩箇所を特定しやすくできる。
移動式ガス検査機1は、ガス検知部22によるガス検知を連続で行う構成とすることもでき、また間歇的に行う構成とすることもできる。ガス検知を連続で行うことで、詳細な検査を実現できる。またガス検知を間歇的に行うことで、広い範囲を効率的に検査することができる。このとき、例えば、連続検知モードと間歇検知モードのように2つのモードを備え、前記2つのモードを切り替えることができるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 移動式ガス検査機
2 本体
3 車輪
4 バー
5 ハンドル
7 空気導入部
20 制御部
21 吸引ポンプ
22 ガス検知部
23 速度検知部
24 距離検知部
【要約】
【課題】作業者への作業負担を低下させることができ、また、作業効率の悪化を抑制することができる移動式ガス検査機とする。
【解決手段】地表面に沿って移動可能に構成され、ガスを検査する移動式ガス検査機1において、検査対象空気中の所定のガス濃度を検知するガス検知部22と、移動式ガス検査機1の走行速度を検知する速度検知部23と、速度検知部23が検知した移動式ガス検査機1の走行速度に応じて、ガス検知部22における検査対象空気中の所定のガス濃度を検知する検知レベルを変更する制御部20と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4