【実施例】
【0036】
<3.実施例>
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。本実施例では、反応性スパッタリングによりTi膜とSiO
2膜とを積層させたND(Neutral Density)フィルターを作製した。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
<実施例>
可視波長域(400nm〜700nm)において、透過率が40%の一定値となるNDフィルターについて、光学多層膜のシミュレーションソフト(商品名:OptiLayer、(株)ケイワン)を用いて設計した。設計環境は、垂直入射とし、金属膜をTi、誘電体膜をSiO
2、入射及び出射媒質を空気、基板を白板ガラス基板としてシミュレーション設計を行った。
【0038】
表1に、基板側から第1層〜第6層からなる光学多層膜のシミュレーション設計の結果を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
図3に示すようなバッチ式の反応性スパッタリング装置(RAS1100B、(株)シンクロン)を用いて、表1に示す6層構成のNDフィルターを作製した。このような反応性スパッタリング装置において、スパッタリングターゲット14a,14bが保持されたカソードが2元あるスパッタ室に、Arガスをそれぞれカソード近傍に供給し、ラジカル酸化源11を備えるラジカル室にO
2ガスを供給し、Ar/O
2ガス比を制御した。なお、スパッタ室及びラジカル室は、同じ真空チャンバー内に存在し、間仕切りされているものの密閉されていないため、ArとO
2は、真空チャンバー内で混合される。
【0041】
Ti材料としてTiからなるスパッタリングターゲット(3N以上グレード、デクセリアルズ(株)製)を準備した。また、SiO
2材料としてケイ素(Si)1に対して炭化ケイ素(SiC)が1.3の割合で焼成されたSi
xC(x=2.3)からなるスパッタリングターゲット(デクセリアルズ(株)製)を準備した。
【0042】
表2に、実施例におけるTi膜及びSiO
2膜の成膜条件を示す。表2において、金属モードは、無酸素モードである。また、酸化物モードは、酸化物成膜時の通常モードである。また、ターゲット酸化モードは、成膜速度が非常に小さい過剰酸化モードである。
【0043】
【表2】
【0044】
図4は、実施例の成膜条件で成膜したNDフィルターの断面構成を示す説明図である。
図4に示すように、先ず、ガラス基板100上に密着膜として厚み2.5nmのSiO
2からなる第1層101を酸化物モードにて成膜した。次に、第1層101上に密着膜として厚み0.5nmのSiO
2からなる第2層102をターゲット酸化モードにて成膜した。次に、第2層102上に金属膜として厚み3nmのTiからなる第3層103を金属モードにて成膜した。次に、第3層103上に第1の金属酸化物膜として厚み3nmのSiO
2からなる第4層104を金属モードにて成膜した。次に、第4層104上に第2の金属酸化物膜として厚み36.5nmのSiO
2からなる第5層105を酸化物モードにて成膜した。次に、第5層105上に第3の金属酸化物膜として厚み0.5nmのSiO
2からなる第6層106をターゲット酸化モードにて成膜した。次に、第6層106上に金属膜として厚み3nmのTiからなる第7層107を金属モードにて成膜した。次に、第7層107上に第1の金属酸化物膜として厚み3nmのSiO
2からなる第8層108を金属モードにて成膜した。次に、第8層108上に第2の金属酸化物膜として厚み16.5nmのSiO
2からなる第9層109を酸化物モードにて成膜した。次に、第9層109上に第3の金属酸化物膜として厚み0.5nmのSiO
2からなる第10層110をターゲット酸化モードにて成膜した。次に、第10層110上に金属膜として厚み4nmのTiからなる第11層111を金属モードにて成膜した。次に、第11層111上に第1の金属酸化物膜として厚み3nmのSiO
2からなる第12層112を金属モードにて成膜した。次に、第12層112上に第2の金属酸化物膜として厚み77nmのSiO
2からなる第13層113を酸化物モードにて成膜した。これにより、基板側から3nmのTi膜、40nmのSiO
2膜、3nmのTi膜、20nmのSiO
2膜、4nmのTi膜、80nmのSiO
2膜が順次積層されたシミュレーション設計通りのNDフィルターを得た。
【0045】
図5は、実施例の成膜条件で成膜したNDフィルターの透過率を示すグラフである。また、
図5のグラフに、シミュレーション設計したNDフィルターの透過率の理論値を示す。実施例の成膜条件で成膜したNDフィルターの透過率は、波長400nm〜700nmの範囲において、理論値とほぼ一致した。これは、第1の金属酸化膜を無酸素状態で成膜したことによって、下地の金属膜の酸化を抑制したためであると考えられる。さらに、第1の金属膜が、第2の金属酸化膜及び第3の金属酸化膜と同一組成であることによって、光学特性の変化を抑制したためであると考えられる。
【0046】
また、SiO
2材料としてSiO
x(x=1.8)からなるスパッタリングターゲット(デクセリアルズ(株)製)を準備した以外は、前述の実施例と同様にしてNDフィルターを作製した。Si
xC(x=2.3)スパッタリングターゲットを使用したときに比べ、第2の金属酸化物膜の成膜速度が小さかったものの、NDフィルターの透過率は、波長400nm〜700nmの範囲において、理論値とほぼ一致した。これにより、緻密でバリア性が高くなりやすいSiO
2ターゲット材料を用いた場合でも、同様の多層膜が得られることが分かった。
【0047】
<比較例>
表2に示すSiO
2の成膜条件において、酸化物モードのみを用いた以外は、実施例と同様にしてNDフィルターを作製した。
【0048】
図6は、比較例の成膜条件で成膜したNDフィルターの断面構成を示す説明図である。
図6に示すように、先ず、ガラス基板200上に密着膜として厚み3nmのSiO
2からなる第1層201を酸化物モードにて成膜した。次に、第1層201上に金属膜として厚み3nmのTiからなる第2層202を金属モードにて成膜した。次に、第2層202上に金属酸化物膜として厚み40nmのSiO
2からなる第3層203を酸化物モードにて成膜した。次に、第3層203上に金属膜として厚み3nmのTiからなる第4層204を金属モードにて成膜した。次に、第4層204上に金属酸化物膜として厚み20nmのSiO
2からなる第5層205を酸化物モードにて成膜した。次に、第5層205上に金属膜として厚み4nmのTiからなる第6層206を金属モードにて成膜した。次に、第6層206上に金属酸化物膜として厚み80nmのSiO
2からなる第7層207を酸化物モードにて成膜した。これにより、基板側から3nmのTi膜、40nmのSiO
2膜、3nmのTi膜、20nmのSiO
2膜、4nmのTi膜、80nmのSiO
2膜が順次積層されたシミュレーション設計通りのNDフィルターを得た。
【0049】
図7は、比較例の成膜条件で成膜したNDフィルターの透過率を示すグラフである。また、
図7のグラフに、シミュレーション設計したNDフィルターの透過率の理論値を示す。比較例の成膜条件で成膜したNDフィルターの透過率は、波長400nm〜700nmの範囲において、30%ほど理論値よりも高くなった。これは、金属酸化膜を酸素が供給された状態で成膜したことによって、下地の金属膜が酸化されたためであると考えられる。
【0050】
<従来例>
実施例と同様、可視波長域(400nm〜700nm)において、透過率が40%の一定値となるNDフィルターを、従来技術であるバリア膜を設けた構成としてシミュレーションを行った。設計環境は、バリア膜をSiO
x、金属膜をTi、誘電体膜をSiO
2とし、各膜厚を最適化した以外は、実施例と同様にシミュレーション設計を行った。
【0051】
表3に、基板側から第1層〜第12層からなる光学多層膜のシミュレーション設計の結果を示す。
【0052】
【表3】
【0053】
図8は、従来例のNDフィルターにおける透過率のシミュレーション結果を示すグラフである。また、
図8のグラフに、実施例でシミュレーション設計したNDフィルターの透過率の理論値を示す。表3に示すように、バリア膜を設け、各膜厚を最適化したのにも関わらず、従来例のNDフィルターの理論値は、波長400nm〜700nmの範囲において、3〜5%ほど実施例のNDフィルターの理論値よりも低くなった。これは、バリア膜のSiO
xが酸素欠損を有し、光学吸収を有するため、透過率が低下したものと考えられる。