特許第6661840号(P6661840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6661840-熱核融合炉 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661840
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】熱核融合炉
(51)【国際特許分類】
   G21B 1/13 20060101AFI20200227BHJP
   H01R 4/60 20060101ALI20200227BHJP
   G21B 1/05 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   G21B1/13
   H01R4/60
   G21B1/05
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-527176(P2019-527176)
(86)(22)【出願日】2017年10月17日
(65)【公表番号】特表2020-501128(P2020-501128A)
(43)【公表日】2020年1月16日
(86)【国際出願番号】RU2017000762
(87)【国際公開番号】WO2018093294
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2019年7月4日
(31)【優先権主張番号】2016145575
(32)【優先日】2016年11月21日
(33)【優先権主張国】RU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516219347
【氏名又は名称】ステート・アトミック・エナジー・コーポレーション・ロスアトム・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ロシアン・フェデレーション
【氏名又は名称原語表記】STATE ATOMIC ENERGY CORPORATION ‘ROSATOM’ ON BEHALF OF THE RUSSIAN FEDERATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】コルガノフ、ウラジミール・ユリエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ポドゥブニー、イバン・イゴレビッチ
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−105985(JP,A)
【文献】 特開平07−191162(JP,A)
【文献】 特開平04−305189(JP,A)
【文献】 特開昭58−055880(JP,A)
【文献】 A.R. Raffray et al.,The ITER blanket system design challenge,Nuclear Fusion,英国,IOP Publishing,2014年 2月20日,Vol. 54, 033004
【文献】 I. Poddubnyi et al.,Electrical connectors for blanket modules in ITER,Fusion Engineering and Design,NL,Elsevier,2014年 4月 1日,Vol.89,pp.1336-1340
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21B 1/13
G21B 1/05
H01R 4/60
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、フレキシブルサポートを用いてそこに接続されたブランケットモジュールとを備える熱核融合炉であって、各フレキシブルサポートが、一端において前記真空容器上に、他端において前記ブランケットモジュール上に固定される、熱核融合炉において、前記フレキシブルサポートがさらに、電気コネクタの機能を果たし、前記フレキシブルサポートが、電気伝導性をもつ材料からできており、一方、各フレキシブルサポートの2つの固定された端部が、前記ブランケットモジュール側にあり、前記フレキシブルサポート自体が、一方が他方の中に配置されるとともに固定された端部とは反対側フレキシブルサポートの長手方向のスロットにより開孔された、2つの中空円筒形要素から形成され、前記2つの中空円筒形要素の、固定された端部とは反対側にある端部同士が、電気的および機械的に接続されることを特徴とする、熱核融合炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱核融合工学に関し、トカマク型熱核融合パワープラントの製造に使用される。
【背景技術】
【0002】
熱核融合炉は、従来技術から知られており、真空容器と、留め具付きフレキシブルサポートおよび電気コネクタを用いてそこに接続された保護ブランケットモジュールとを備える(A.Rene Raffray、Mario Merola。Overview of the design and R&D of the ITER blanket system。Fusion Engineering and Design、87(2012)、769〜776ページ)。留め具付きサポートは機械的接続を行い、一方、電気コネクタは電気的接続を行う。
【0003】
知られている熱核融合炉では、サポートが、熱核融合炉の真空容器上にブランケットモジュールを装着するように設計されており、外部荷重からの圧縮成分および引張成分に対処する。電気コネクタが、ブランケットモジュールから炉の真空容器に電流を逸らすように設計されている。サポートを通って電流が流れるのを防ぐために、サポートの数個の留め具のいくつかの表面上に電気絶縁被覆が施されている。サポート内に絶縁被覆を含めると、絶縁被覆を施すための追加の工程作業が必要となり、加えて、被覆には、真空中で、変動する温度場および高衝撃荷重の下で、健全性と性能(performance capability)とを保つという条件が課され、それにより、サポートの設計が複雑になり、絶縁被覆付き構造要素を製品のライフサイクルの全ての段階において被覆の健全性および絶縁特性の保全を可能にするようにハンドリングするための、いくつかの要件を順守しなければならず、その結果として、サポートアセンブリの信頼性が低下する。その上、前記被覆は、ブランケットモジュールから渦電流が逸らされることの妨げとなり、その渦電流は、熱核融合炉の動作中にプラズマディスラプションが起きたときにモジュール内に誘起されるものであり、それが、この目的のために特別なデバイスが必要となる理由であり、すなわち、炉の真空容器とブランケットモジュールとの間に取り付けられた電気コネクタが、容器とブランケットモジュールとの間の接点を提供している。サポートに加えて、冷媒入口および出口パイプ、絶縁カバープレート、冷媒コレクタ、ならびに診断システム用のケーブルおよびセンサが、保護ブランケットモジュールの、真空容器に面する側に構成され、このようにして、保護モジュールの後部部分全体が完全に占有される。(トリチウム増殖を伴って、長寿命のアクチニドのアフターバーニングを伴って、重元素の濃縮、研究モジュールおよび材料試験モジュールを伴ってなど)保護機能単体を有しているのではない次世代熱核融合炉モジュールでは、遠隔からサービスされる適切なチャネルが要求されるが、現在のモジュール装着構成が維持される場合、これらのチャネルの接続に残された空間はない。
【0004】
知られている熱核融合炉の欠点は、次の通りである:ブランケットモジュールから渦電流を逸らすために電気コネクタを取り付ける必要性、および絶縁被覆付き構造要素をサポートに導入する必要性。
【0005】
電気コネクタを取り付ける必要性は、それに組み込まれる要素の増加された数のため炉の信頼性を低下させ、また真空容器に面するモジュール側の密集(bunching)を生み出す。
【0006】
絶縁被覆付き構造要素をサポートに導入する必要性は、炉の信頼性を低下させ、というのも、サポートアセンブリ内の構造要素の数が増加され、またこれらの要素のうちのいくつかの要素の設計が、特別な設計およびハンドリングの要件をもつ絶縁被覆を有していなければならないためである。この欠点はまた、モジュール装着エリア内の密集の度合いを増加させ、というのも、絶縁被覆付き構造要素を含むサポートアセンブリの設計は、より多くの空間を占め、絶縁被覆付き部分をその空間が収容するモジュールの設計を複雑にするためであり、というのも、絶縁被覆付き表面は、被覆の仕上げを可能にすべく直線状(平面、円筒、円錐)のみであるべきであり、またそれらは、溝、チャンファ(chamfer)、移動局面(translational surface)などをもつ特別な構造設計を必要とするためである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、より高い信頼性をもつ熱核融合炉を提供することである。
【0008】
本発明の技術的結果は、熱核融合炉のブランケットモジュールから渦電流を逸らすと同時に、ブランケットの構成から電気コネクタをなくし、ブランケットモジュールの、真空容器に面する側の密集を低減させることからなる。
【0009】
この技術的結果は、真空ケースと、フレキシブルサポートを用いてそこに接続されたブランケットモジュールとを備える熱核融合炉であって、各フレキシブルサポートが、一端において真空容器上に、他端においてブランケットモジュール上に固定される、熱核融合炉において、本発明によれば、フレキシブルサポートがさらに、電気コネクタの機能を果たし、サポートが、高い電気伝導性をもつ材料からできており、一方、各フレキシブルサポートの2つの固定された端部が、ブランケットモジュールに面し、フレキシブルサポート自体が、一方が他方の中に配置されるとともに装着部のない部分内に長手方向スロットにより開孔された、2つの中空円筒形要素から形成され、中空円筒形要素の、固定された端部とは反対側にある端部が、電気的および機械的に接続される、という事実によって達成される。
【0010】
熱核融合炉の前記要素をこのようにして構成すると、サポートの設計における絶縁被覆の使用がなくなり、一方、サポートを高い電気伝導性をもつ材料から形成すると、追加機器(電気コネクタ)を使用せずに、熱核融合炉のブランケットモジュールから渦電流が逸らされることが可能になり、またサポートへのエネルギーの放出が低下し、それに応じてサポートの温度が低下し、それらの要因が相まって、熱核融合炉の設計を単純なものにし、結果としてその信頼性を高める。しかし、電気コネクタの機能がフレキシブルサポートに移されると、電流が炉の磁場と相互作用したときに発生される横方向の力が、サポートにも作用し始める。横方向の力を相殺するために、フレキシブルサポートは、一方が他方の中に配置された、開孔された2つの円筒形要素として構成され、そうすることで、それらを通る電流の向流が可能になる。これにより、電流が炉の磁場と相互作用したときにサポートに作用する横方向の力が相殺され、というのも、2つの等しく、逆方向に向けられる力からもたらされる力がゼロとなるためである。サポート内部で横方向の力を相殺することにより、サポート内の応力が低下し、その荷重容量および信頼性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の本質がそれにより示される図であって、熱核融合炉の、真空容器がブランケットモジュールに接続されている部分(長手方向断面)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
熱核融合炉は、真空容器1と、フレキシブルサポート3を用いてそこに接続されたブランケットモジュール2とを備える。サポート3は、一端においてブランケットモジュール2上に固定され、機械的接続と電気的接続とを成す。フレキシブルサポート3の他端は、熱核融合炉の真空容器1に接続される。フレキシブルサポート3の2つの固定された端部が、ブランケットモジュール2に面し、一方、フレキシブルサポート3自体が、一方が他方の中に配置されるとともに装着部のない部分内に軸方向に延在されたスロットが開孔された、2つの中空円筒形要素から形成される。中空円筒形要素の、固定された端部とは反対側にある端部が、何らかの知られた方法(例えばはんだ付け、溶接、またははんだ付け糸(soldered thread))で電気的および機械的に接続されるか、そうでなければ、サポート全体が中実のワークピースからできている。フレキシブルサポート3は、クロム−ジルコニウム青銅(chrome-zirconium bronze)などの高い電気伝導性をもつ材料からできており、さらに電気コネクタの機能も果たす。
【産業上の利用可能性】
【0013】
特許請求される熱核融合炉は、次のように動作する。
【0014】
熱核融合炉の動作中、プラズマディスラプションによって引き起こされた電流および動荷重が、ブランケットモジュール2に作用する。モジュール2は、外部荷重の圧縮成分および引張成分を相殺するために、熱核融合炉の真空容器1上に高信頼に固定されるべきである。加えて、モジュール2から真空容器1に渦電流を逸らすために、モジュール2と炉容器1との間に高信頼の電気接点が必要となる。フレキシブルサポート3が、真空容器1上にブランケットモジュール2を装着する機能を果たし、一方、ブランケットモジュール2からの外部荷重の圧縮成分または引張成分は、従来技術から知られている方法で、接続部を介してフレキシブルサポート3に伝達され、サポートから第2の接続部を介して真空容器1に伝達される。フレキシブルサポート3は、高い電気伝導性をもつ材料からできているので、力の圧縮成分と引張成分とを伝達することに加えて、ブランケットモジュール2から真空容器1に電流を逸らす。電流は、ブランケットモジュール2から、そこに接続されたフレキシブルサポート3の円筒形開孔要素4に流れ込む。電流は次いで、前記開孔要素4から別の開孔要素5に、それらの接続点を介して流れる。電流は次いで、第2の要素5から真空容器1に、フレキシブルサポートが接続されている点を介して流れる。その間、電流は、密に隔置された開孔要素4および5を逆方向に通って流れ、それにより、電流と炉の磁場との間の相互作用から発生されてサポート全体に作用する横方向の力が相殺され、というのも、2つの等しく、逆方向に向けられる力からもたらされる力がゼロとなるためである。圧縮荷重および引張荷重は、フレキシブルサポート3の開孔要素によって対処され、というのも、開孔はこの荷重成分が作用する方向に(軸方向に)延在されたスロットによって実施されるためである。軸方向に対して横断する方向では、サポート3は曲がりやすく(フレキシブルであり)、というのも、装着部のない部分内では、サポートの開孔要素は、曲がることの可能な1組のロッドであるためである。

以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 真空容器と、フレキシブルサポートを用いてそこに接続されたブランケットモジュールとを備える熱核融合炉であって、各フレキシブルサポートが、一端において前記真空容器上に、他端において前記ブランケットモジュール上に固定される、熱核融合炉において、前記フレキシブルサポートがさらに、電気コネクタの機能を果たし、前記サポートが、高い電気伝導性をもつ材料からできており、一方、各フレキシブルサポートの2つの固定された端部が、前記ブランケットモジュールに面し、前記フレキシブルサポート自体が、一方が他方の中に配置されるとともに装着部のない部分内に長手方向スロットにより開孔された、2つの中空円筒形要素から形成され、前記中空円筒形要素の、固定された端部とは反対側にある端部が、電気的および機械的に接続されることを特徴とする、熱核融合炉。
図1