(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661849
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】パチンコ球の発射装置における槌戻し方法
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
A63F7/02 308K
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-250638(P2014-250638)
(22)【出願日】2014年12月11日
(65)【公開番号】特開2016-112039(P2016-112039A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章吾
(72)【発明者】
【氏名】山崎 真一
【審査官】
下村 輝秋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−045662(JP,A)
【文献】
特開2010−162142(JP,A)
【文献】
特開2000−334090(JP,A)
【文献】
特開平09−313677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪状ステータ(350)の突出磁極(351,352)に設けたステータ巻線(208,208A)の励磁により有限角回転する着磁ロータ(302)におもりを有しない構成で、かつ、鋭角状に曲折したL字型の槌(209)を設け、初期位置(A)から発射位置(B)までの前記槌(209)の有限角回転によりパチンコ球(305)を発射するようにしたパチンコ球の発射装置において、
前記ステータ巻線(208,208A)に対して第1電流(I1)を流して前記槌(209)を第1方向(M)へ有限角回転させることにより、前記パチンコ球(305)を発射させた後、前記発射時とは逆方向の第2電流(I2)を流すことによって前記槌(209)を前記第1方向(M)とは逆の第2方向(N)へ回転させ前記初期位置(A)に戻し、
前記第2電流(I2)の第2電流値(IB)は、前記第1電流(I1)の第1電流値(IA)より小であり、発射から次の発射までは、同一電流値レベルからなる前記第2電流(I2)を継続して前記ステータ巻線(208,208A)に供給することにより、前記槌(209)が発射前の前記初期位置(A)に戻って保持され、前記槌(209)は鉄又は樹脂を用いることを特徴とするパチンコ球の発射装置における槌戻し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ球の発射装置における槌の戻し方法に関し、特に、パチンコ球発射後は、逆方向の電流を流すことにより、槌を初期位置へ戻すと共に、おもりを有しない槌を用いることができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のパチンコ球の発射装置における槌の戻し方法としては、例えば、特許文献1に開示された構成を
図7として開示している。
図7において、パチンコ球の発射装置200のコの字型をなすステータ206のヨーク214,215の内側には、ボビン217に巻付けたコイル208が設けられ、このボビン217の先端近傍位置には複数の腕状部202,204を有するロータ205がシャフト201を介して配設されている。
【0003】
前記シャフト201の先端には、全体形状がL字状又はへの字状をなす槌209が有限角だけ往復回動できるように設けられ、この槌209は矢印Mの方向に回動された場合には、図示しないパチンコ球を打って発射となるが、発射後は、この槌209の自重と磁石251の磁気的吸引によって、次の発射に備えた初期位置Sに位置させることができるように構成されている。
【0004】
次に、文献名を開示していないが、現在使用されている
図4で示されるパチンコ球の発射装置200には、
図5で示される有限角モータである駆動モータ300が設けられている。
前記パチンコ球の発射装置200の中央位置には、前記駆動モータ300の駆動軸301が突出しており、この駆動軸301の先端には、全体形状がほぼへの字又はL字型をなすと共におもり209aを有する槌209が設けられている。
【0005】
前記パチンコ球の発射装置200においては、前記槌209の初期位置Aを規則するための初期ストッパ303が設けられている。
前記槌209の前方位置には、台304上に位置するパチンコ球305が配設されており、このパチンコ球305の上方位置には、前記パチンコ球305を発射した時の前記槌209の発射位置Bを規制するための発射ストッパ306が配設されている。
【0006】
前記駆動モータ300は、輪状ステータ350と、前記輪状ステータ350の内面350aから互いに180度対向する位置に形成された一対の突出磁極351,352と、前記各突出磁極351,352に巻回された一対のステータ巻線280,280Aとから構成されている。
尚、前記槌209は、磁気的作用を必要とするためケイ素鋼板で形成すると共に、一対の突出したロータ磁極302a,302bが形成されている。
【0007】
図6は、前述の従来構成におけるパチンコ球305の球発射と槌209の角度及び電流−時間特性を示している。
図4において、
図4の矢印に示した方向に励磁電流である第1電流I
1をステータ巻線208,208Aに流すと、槌209が時計(CW)方向へ有限角回転角θaだけ回転することによってパチンコ球305が発射されて
図6の発射となる。
また、
図6の前記発射で発射した後には、前記第1電流I
1に電流が流されない無励磁区間Pとなるため、前記槌209はおもり209aの作用によって反時計方向へ回転し、槌209が初期ストッパ303に当接し、槌209は
図4のように初期位置Aに保持され、次の発射に備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−45667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のパチンコ球の発射装置における槌戻し方法は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、
図4の従来構成においては、槌209の他端におもり209aを有していたため、初期位置Aにおいて、このおもり209aの質量に抗して次の発射のために流す第1電流I
1を大電流としなければ発射することができず、長時間の使用においては、省電力化に逆行するものであった。また、駆動モータを小型化することが難しく、装置全体の小型化及び低消費電力化が困難であった。
また、
図7の従来構成においては、パチンコ球発射後の槌209は、その自重で初期位置方向へ戻ろうとする時に、磁石251の磁力のアシストによって初期位置(待機位置)に戻して保持させていたため、発射時には大トルクを必要とし、駆動モータ300の大型化となり、槌209を磁気吸引するための前述の磁石251を必要とし、コストアップになっていた。
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、槌にはおもりを設けない構成とし、パチンコ球発射後には、発射時の第1電流I
1よりも低い電流値の第2電流を流すことにより駆動モータを逆転させて槌を初期位置に戻すことにより、装置の小型化及び低価格化を達成することができるようにしたパチンコ球の発射装置における槌戻し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるパチンコ球の発射装置における槌戻し方法は、輪状ステータの突出磁極に設けたステータ巻線の励磁により有限角回転する着磁ロータにおもりを有しない構成で、かつ
、鋭角状に曲折したL字型の槌を設け、初期位置から発射位置までの前記槌の有限角回転によりパチンコ球を発射するようにしたパチンコ球の発射装置において、前記ステータ巻線に対して第1電流を流して前記槌を第1方向へ有限角回転させることにより、前記パチンコ球を発射させた後、前記発射時とは逆方向の第2電流を流すことによって前記槌を前記第1方向とは逆の第2方向へ回転させ前記初期位置に戻し、前記第2電流の第2電流値は、前記第1電流の第1電流値より小であり、発射から次の発射までは、同一電流値レベルからなる前記第2電流を継続して前記ステータ巻線に供給することにより、前記槌が発射前の前記初期位置に戻って保持され、前記槌は鉄又は樹脂を用いる方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるパチンコ球の発射装置における槌の戻し方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、輪状ステータの突出磁極に設けたステータ巻線の励磁により有限角回転する着磁ロータにおもりを有しない構成で、かつ
、鋭角状に曲折したL字型の槌を設け、初期位置から発射位置までの前記槌の有限角回転によりパチンコ球を発射するようにしたパチンコ球の発射装置において、前記ステータ巻線に対して第1電流を流して前記槌を第1方向へ有限角回転させることにより、前記パチンコ球を発射させた後、前記発射時とは逆方向の第2電流を流すことによって前記槌を前記第1方向とは逆の第2方向へ回転させ前記初期位置に戻すことにより、槌自体にはおもりが不要となり、装置の小型化及び低価格化が達成できる。また、槌自体も磁性材の必要はなく、非金属も採用できる。
また、前記第2電流の第2電流値は、前記第1電流の第1電流値より小であることにより、大電流と小電流の組み合わせとなり、従来方法よりも省電力化の状態で槌を発射前の初期位置に戻って保持できる。また、所定時間は、
図3に示すように、発射から次の発射までの時間を示している。
また、前記着磁ロータは、マグネットのみ又はロータヨークにマグネットが添着されていることにより、槌の軽量化が可能となり、従来よりも小型の駆動モータによってパチンコ球の発射及び槌戻しが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明によるパチンコ球の発射装置における槌戻し方法を示すためのパチンコ球の発射装置を示す構成図である。
【
図3】
図1の槌の角度及び電流−時間特性を示す特性図である。
【
図5】
図4のパチンコ発射機の駆動モータを示す構成図である。
【
図6】従来の槌の角度及び電流−時間特性を示す特性図である。
【
図7】従来のパチンコ球の発射装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によるパチンコ球の発射装置における槌戻し方法は、パチンコ球の発射後、逆方向の電流を流すことにより、槌を初期位置へ戻すと共に、おもりを有しない槌を用いることができるようにすることである。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明によるパチンコ球の発射装置における槌戻し方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1で示されるパチンコ球の発射装置200には、
図2で示される駆動モータ300が設けられている。
前記パチンコ球の発射装置200の中央位置には、有限角モータである前記駆動モータ300の駆動軸301が突出しており、この駆動軸301の先端には、全体形状が
図3のよう
に鋭角状に曲折したL字型をなす槌209が設けられている。
【0016】
前記パチンコ球の発射装置200においては、前記槌209の初期位置Aを規制するための初期ストッパ303が設けられている。
前記槌209の前方位置には、台304上に位置するパチンコ球305が配設されており、このパチンコ球305の近傍位置には、前記パチンコ球305を発射した時の前記槌209の発射位置Bを規制するための発射ストッパ306が配設されている。
【0017】
前記駆動モータ300は、輪状ステータ350と、前記輪状ステータ350の内面350aから互いに180度対向する位置に形成された一対の突出磁極351,352と、前記各突出磁極351,352に巻回された一対のステータ巻線280,280Aとから構成されている。
尚、前記槌209は、磁気的作用は従来構成とは異なって必要ないため、鉄等ではなく樹脂等の非磁性材を採用することもできる。
また、着磁ロータ302も、全体が永久磁石である場合と、図示しないロータヨークに永久磁石を組み合わせた構成とすることもできる。
【0018】
図3は、前述の本発明構成におけるパチンコ球305の球発射と槌209の角度及び電流−時間特性を示している。
図3において、
図1の矢印に示した方向に励磁電流である第1電流I
1をステータ巻線208,208Aに流すと、槌209が第1方向Mの時計(CW)方向へ有限角回転角θaだけ回転することによって槌209が発射位置Bとなってパチンコ球305が発射される。
また、前記発射で発射した後に、
図3のように、前記第1電流I
1と逆方向に第2電流I
2を流すことにより第2方向Nである反時計方向(CCW)方向へ槌209が回転して次のパチンコ球305を発射するための
図1で示す初期位置Aまで戻る。
【0019】
前述の場合、
図3に示されるように、パチンコ球305の発射後、初期位置Aに戻されたパチンコ球305は、次の発射となる迄の間は、第1電流値I
Aの前記第1電流I
1よりも電流値が小であると共に第2電流値I
Bからなる逆方向電流である第2電流I
2を継続して供給することにより、前記槌209が発射前の初期位置Aに戻って保持される。
【0020】
従って、本発明によるパチンコ球の発射装置における槌戻り方法によれば、槌209を初期位置Aに戻すためには、発射時とは逆の逆電流である第2電流I
2を流すのみであるため、槌209に従来用いていたおもり209aを不要とし、構造を簡略化することができる。
尚、前述の本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
すなわち、輪状ステータ350の突出磁極351,352に設けたステータ巻線208,208Aの励磁により有限角回転する着磁ロータ302におもりを有しない構成の槌209を設け、初期位置Aから発射位置Bまでの前記槌209の有限角回転によりパチンコ球305を発射するようにしたパチンコ球の発射装置において、前記ステータ巻線208,208Aに対して第1電流I
1を流して前記槌209を第1方向Mへ有限角回転させることにより、前記パチンコ球305を発射させた後、前記発射時とは逆方向の第2電流I
2を流すことによって前記槌209を前記第1方向Mとは逆の第2方向Nへ回転させ前記初期位置Aに戻す方法であり、また、前記第2電流I
2の第2電流値I
Bは、前記第1電流I
1の第1電流値I
Aより小である方法であり、また、前記着磁ロータ302は、マグネットのみ又はロータヨークにマグネットが添着されている方法である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によるパチンコ球の発射装置における槌戻し方法は、発射後の槌を逆方向の第2電流によって初期位置に戻すため、従来のおもりが不要となり、パチンコ発射装置の小型化及び低消費電力化が可能である。
【符号の説明】
【0022】
200 パチンコ球の発射装置
209 槌
208,208A ステータ巻線
300 駆動モータ
301 駆動軸
302 着磁ロータ
304 台
305 パチンコ球
306 発射ストッパ
350 輪状ステータ
350a 内面
351 突出磁極
I
1 第1電流
I
2 第2電流
I
A 第1電流値
I
B 第2電流値