(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記決定工程では、前記輸送工程により輸送されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、前記混練工程により混練されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、のうち少なくとも1つを測定し、測定結果に基づいて前記限界吸水時間を決定することを特徴とする請求項1に記載の電池電極スラリーの作製方法。
前記決定工程では、前記輸送工程により輸送されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、前記混練工程により混練されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、のうち少なくとも1つを測定し、測定結果およびスラリー水分量吸収マップに基づいて前記限界吸水時間を決定することを特徴とする請求項1に記載の電池電極スラリーの作製方法。
前記決定工程では、前記輸送工程により輸送されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、前記混練工程により混練されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、のうち少なくとも1つを測定し、測定結果から単位時間当たりの吸水量を取得し、取得結果に基づいて前記限界吸水時間を決定することを特徴とする請求項1に記載の電池電極スラリーの作製方法。
前記制御工程では、前記限界吸水時間に基づいて、前記混練工程において材料または混合物を混練する混練手段の回転数を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の電池電極スラリーの作製方法。
前記制御工程では、前記限界吸水時間に基づいて、前記混練工程での混練における混練手段から材料または混合物への力の印加強度を制御することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の電池電極スラリーの作製方法。
前記制御工程では、前記限界吸水時間に基づいて、前記輸送工程において材料または混合物を付勢する付勢手段の付勢力を制御することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の電池電極スラリーの作製方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示されている混練装置では、予備混練部による粗混練が、依然としてバッチ混練のままであるため、予備混練部による粗混練において、上述のように混練時間を変更することは一般的ではない。
【0007】
その一方で、材料やスラリーは、予備混練部における粗混練の最中であっても、周囲の雰囲気中に含まれている水分を吸収する。また、周囲の雰囲気中に含まれている水分量が多くなるに従って、材料やスラリーが吸収する単位時間当たりの水分量が増加する。このため、予備混練部における粗混練の時間を一定にしている環境において、周囲の雰囲気中に含まれている水分量が規定量よりも多かったり変化したりしてしまうと、材料やスラリーに吸収される水分量が多くなったり変化したりしてしまい、その結果、電池電極スラリーの質が劣化してしまうおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、混練している環境の水分量が異なっていても、電池電極スラリーの質の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の事項を提案している。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0010】
(1) 本発明は、電池電極スラリー(例えば、後述の正極スラリーに相当)の作製方法であって、前記電池電極スラリーの作製用の複数の材料(例えば、後述のバインダー、正極活物質、および導電助剤に相当)、または前記複数の材料のうち少なくとも2つの混合物を輸送する輸送工程と、前記輸送工程により輸送される材料または混合物を混練して連続的に排出する混練工程と、前記輸送工程および前記混練工程においてスラリーに吸水される水分量が所定量未満になるように、限界吸水時間を決定する決定工程と、前記限界吸水時間に基づいて、前記輸送工程による輸送時間と、前記混練工程による混練時間と、のうち少なくとも一方を制御する制御工程と、を備えることを特徴とする電池電極スラリーの作製方法を提案している。
【0011】
この発明によれば、決定工程により、輸送工程および混練工程においてスラリーに吸収される水分量が所定量未満になるように限界吸水時間を決定し、制御工程により、限界吸水時間に基づいて、輸送工程による輸送時間と、混練工程による混練時間と、のうち少なくとも一方を制御することとした。このため、輸送工程および混練工程においてスラリーに吸収される水分量を所定量未満に抑えることができ、混練工程を行っている環境の水分量が異なっていても、電池電極スラリーの質の劣化を抑制することができる。
【0012】
(2) 本発明は、(1)の電池電極スラリーの作製方法について、前記決定工程では、前記輸送工程により輸送されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、前記混練工程により混練されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、のうち少なくとも1つを測定し、測定結果に基づいて前記限界吸水時間を決定することを特徴とする電池電極スラリーの作製方法を提案している。
【0013】
この発明によれば、(1)の電池電極スラリーの作製方法において、決定工程により、輸送工程により輸送されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、混練工程により混練されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、のうち少なくとも1つを測定し、測定結果に基づいて限界吸水時間を決定することとした。このため、輸送工程を行っている環境の水分量や、混練工程を行っている環境の水分量を考慮した上で、限界吸水時間を決定することができる。したがって、輸送工程を行っている環境の水分量や、混練工程を行っている環境の水分量が異なっていても、電池電極スラリーの質の劣化を抑制することができる。
【0014】
(3) 本発明は、(1)の電池電極スラリーの作製方法について、前記決定工程では、前記輸送工程により輸送されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、前記混練工程により混練されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、のうち少なくとも1つを測定し、測定結果およびスラリー水分量吸収マップ(例えば、後述の関係マップに相当)に基づいて前記限界吸水時間を決定することを特徴とする電池電極スラリーの作製方法を提案している。
【0015】
この発明によれば、(1)の電池電極スラリーの作製方法において、決定工程により、輸送工程により輸送されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、混練工程により混練されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、のうち少なくとも1つを測定し、測定結果およびスラリー水分量吸収マップに基づいて前記限界吸水時間を決定することとした。このため、スラリー水分量吸収マップに、測定した水分量と限界吸水時間との関係を予め定めておくことで、このスラリー水分量吸水マップを用いて限界吸水時間を決定することができる。
【0016】
(4) 本発明は、(1)の電池電極スラリーの作製方法について、前記決定工程では、前記輸送工程により輸送されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、前記混練工程により混練されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、のうち少なくとも1つを測定し、測定結果から単位時間当たりの吸水量を取得し、取得結果に基づいて前記限界吸水時間を決定することを特徴とする電池電極スラリーの作製方法を提案している。
【0017】
この発明によれば、(1)の電池電極スラリーの作製方法において、決定工程により、輸送工程により輸送されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、混練工程により混練されている材料または混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、のうち少なくとも1つを測定し、測定結果から単位時間当たりの吸水量を取得し、取得結果に基づいて限界吸水時間を決定することとした。このため、単位時間当たりの吸水量から限界吸水時間を決定することができる。
【0018】
(5) 本発明は、(1)から(4)のいずれか1つの電池電極スラリーの作製方法について、前記制御工程では、前記限界吸水時間に基づいて、前記混練工程において材料または混合物を混練する混練手段(例えば、
図1の予備混練部14や本混練部15に相当)の回転数を制御することを特徴とする電池電極スラリーの作製方法を提案している。
【0019】
この発明によれば、(1)から(4)のいずれか1つの電池電極スラリーの作製方法において、制御工程により、限界吸水時間に基づいて、混練工程において材料または混合物を混練する混練手段の回転数を制御することとした。このため、混練工程による混練時間を制御して、電池電極スラリーの質の劣化を抑制することができる。
【0020】
(6) 本発明は、(1)から(5)のいずれか1つの電池電極スラリーの作製方法について、前記制御工程では、前記限界吸水時間に基づいて、前記混練工程での混練における混練手段(例えば、
図1の予備混練部14や本混練部15に相当)から材料または混合物への力の印加強度を制御することを特徴とする電池電極スラリーの作製方法を提案している。
【0021】
この発明によれば、(1)から(5)のいずれか1つの電池電極スラリーの作製方法において、制御工程により、限界吸水時間に基づいて、混練工程での混練における混練手段から材料または混合物への力の印加強度を制御することとした。このため、混練工程による混練時間を制御して、電池電極スラリーの質の劣化を抑制することができる。
【0022】
(7) 本発明は、(1)から(6)のいずれか1つの電池電極スラリーの作製方法について、前記制御工程では、前記限界吸水時間に基づいて、前記輸送工程において材料または混合物を付勢する付勢手段(例えば、
図1のモーノポンプ51に相当)の付勢力を制御することを特徴とする電池電極スラリーの作製方法を提案している。
【0023】
この発明によれば、(1)から(6)のいずれか1つの電池電極スラリーの作製方法において、制御工程により、限界吸水時間に基づいて、輸送工程において材料または混合物を付勢する付勢手段の付勢力を制御することとした。このため、輸送工程による輸送時間を制御して、電池電極スラリーの質の劣化を抑制することができる。
【0024】
(8) 本発明は、(1)から(7)のいずれか1つの電池電極スラリーの作製方法について、前記混練工程において材料または混合物を混練する混練手段(例えば、
図1の予備混練部14や本混練部15に相当)は、複数直列につながって設けられており、前記混練工程では、前記複数の混練手段により、前記輸送工程により輸送される材料または混合物を混練して、電池電極スラリーとして連続的に排出することを特徴とする電池電極スラリーの作製方法を提案している。
【0025】
この発明によれば、(1)から(7)のいずれか1つの電池電極スラリーの作製方法において、混練工程において材料または混合物を混練する混練手段は、複数直列につながって設けられており、混練工程において、複数の混練手段により、輸送工程により輸送される材料または混合物を混練して電池電極スラリーとして連続的に排出することとした。このため、材料または混練物を複数回に亘って混練することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、混練している環境の水分量が異なっていても、電池電極スラリーの質の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて、詳細に説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0029】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電池電極スラリー作製用混練装置1の概略を示す構成図である。電池電極スラリー作製用混練装置1は、複数の材料としてバインダー、正極活物質、および導電助剤(導電助材)を混練して、リチウムイオン二次電池の正極に用いられる正極スラリーを作製する装置である。
【0030】
バインダーは、バインダー供給部11に収容される。バインダー供給部11には、配管21が連通しており、バインダー供給部11は、配管21にバインダーを連続的に供給する。配管21には、予備混練部14が連通しているとともに、モーノポンプ51および質量流量計52が設けられている。質量流量計52は、バインダー供給部11から予備混練部14に向かって配管21の内部を流通したバインダーの質量流量を計測して、配管21の内部を流通したバインダーの瞬時流量を測定し、測定結果を制御部34に送信する。制御部34は、瞬時流量の変動の有無の確認と、積算流量の管理と、を行うとともに、質量流量計52から送信された測定結果に基づいて付勢量を調整し、調整した付勢量をモーノポンプ51に送信する。モーノポンプ51は、制御部34から送信された付勢量に基づいて、配管21に供給されたバインダーを予備混練部14に向って付勢する。
【0031】
なお、上述の連続的とは、本実施形態では、時間的に途切れることなくという意味である。このため、配管21にバインダーを連続的に供給するとは、時間的に途切れることなく配管21にバインダーを供給するということである。
【0032】
また、バインダーとしては、有機溶剤に溶かして用いるポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。また、SBRと併用されるだけでなく近年バインダーとしても注目されているカルボキシメチルセルロース(CMC)や、アルギン酸化合物などを使用することもできる。また、これらを複数種類混合したものを使用することもできる。
【0033】
さらに、バインダーは、溶剤に溶解または分散させて使用することもできる。溶剤としては、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、イソプロパノール、トルエンなどを使用することができ、これらを複数種類混合したものを使用することもできる。これらは、使用する導電助剤や活物質の種類および特性に応じて、適宜選択して使用することができる。
【0034】
正極活物質は、正極材供給部12に収容される。正極材供給部12には、配管22が連通しており、正極材供給部12は、配管22に正極活物質を連続的に供給する。配管22には、予備混練部14が連通しているとともに、重量計53が設けられている。重量計53は、正極材供給部12から予備混練部14に向かって配管22の内部を流通した正極活物質の重量を計測して、配管22に供給された正極活物質の瞬時供給量を測定し、測定結果を制御部34に送信する。正極材供給部12には、投入された正極活物質を配管22に供給するフィーダー(図示省略)が設けられており、制御部34は、瞬時供給量の変動の有無の確認と、積算供給量の管理と、を行うとともに、重量計53から送信された測定結果に基づいて供給量を調整し、調整した供給量を正極材供給部12のフィーダーに送信する。正極材供給部12のフィーダーは、制御部34から送信された供給量に基づいて、正極活物質を配管22に連続的に供給する。配管22は、鉛直方向に延伸しており、予備混練部14は、配管22の下端に連通している。このため、配管22に供給された正極活物質は、重力により自由落下して連続的に予備混練部14に供給されることになる。
【0035】
なお、正極活物質としては、一般式Li
xMO
2(Mは、Ni、Co、Fe、Mn、Si、Alの中から選ばれる1種以上の元素であり、xは0<x<1.5を満たすものとする)などの層状構造・スピネル構造を有する物質や、一般式Li
xAPO
4(Aは、Ti、Zn、Mg、Co、Mnの中から選ばれる1種以上の金属元素であり、xは0<x≦1.2を満たすものとする)などのオリビン型構造を有する物質などを使用することができる。特に、オリビン型リン酸鉄リチウムを有する物質である、一般式Li
xFe
yA
(1−y)PO
4(ただし、xは0<x≦1を満たし、yは0<y≦1を満たし、AはTi、Zn、Mg、Co、Mnの中から選ばれる一種の金属元素であるものとする)で表わされるリチウムリン酸金属化合物を使用することが望ましい。また、リチウムリン酸金属化合物の表面にカーボンが被覆された粒子、または、この粒子の凝集体を使用することもできる。
【0036】
導電助剤は、導電助剤供給部13に収容される。導電助剤供給部13には、配管23が連通しており、導電助剤供給部13は、配管23に導電助剤を連続的に供給する。配管23には、予備混練部14が連通しているとともに、重量計54が設けられている。重量計54は、導電助剤供給部13から予備混練部14に向かって配管23の内部を流通した導電助剤の重量を計測して、配管23に供給された導電助剤の瞬時供給量を測定し、測定結果を制御部34に送信する。導電助剤供給部13には、投入された導電助剤を配管23に供給するフィーダー(図示省略)が設けられており、制御部34は、瞬時供給量の変動の有無の確認と、積算供給量の管理と、を行うとともに、重量計54から送信された測定結果に基づいて供給量を調整し、調整した供給量を導電助剤供給部13のフィーダーに送信する。導電助剤供給部13のフィーダーは、制御部34から送信された供給量に基づいて、導電助剤を配管23に連続的に供給する。配管23は、鉛直方向に延伸しており、予備混練部14は、配管23の下端に連通している。このため、配管23に供給された導電助剤は、重力により自由落下して連続的に予備混練部14に供給されることになる。
【0037】
なお、導電助剤としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラックなどのカーボン粉体を使用することができる。また、これらを複数種類混合したものを使用することもできる。
【0038】
以上より、予備混練部14には、モーノポンプ51により付勢されたバインダーが適切な分量で連続的に供給されるとともに、重力により自由落下して正極活物質および導電助剤がそれぞれ適切な分量で連続的に供給されることになる。
【0039】
予備混練部14は、連続的に供給されるバインダー、正極活物質、および導電助剤を、逐次、粗混練して予備混練スラリーとして連続的に排出する。予備混練部14には、配管24を介して本混練部15が連通しており、予備混練部14と本混練部15とは、配管24を介して直列につながって設けられる。予備混練部14から連続的に排出された予備混練スラリーは、上述のモーノポンプ51からバインダーへの付勢力と、予備混練部14からの吐出力と、により、配管24を介して本混練部15に連続的に供給される。
【0040】
以上によれば、予備混練部14は、バインダー、正極活物質、および導電助剤の粗混練を行いつつ、これら材料の連続的な受け入れと、本混練部15への予備混練スラリーの連続的な供給と、を行う。すなわち、予備混練部14は、予備混練スラリーを本混練部15へ連続的に供給することと、新たに供給された材料を連続的に粗混練することと、を並行して行う。なお、予備混練部14および本混練部15は、バインダー、正極活物質、および導電助剤を正極スラリーとして排出する混練ユニット10を形成する。
【0041】
予備混練部14には、例えば、浅田鉄工株式会社のミラクルKCK、シルバーソン社製のインライン型ミキサーであるフラッシュブレンドやフラッシュミックス、ティーメックス社製の粉体溶解システム、IKA社製のMHDなどを用いることができる。予備混練部14の構成の一例を、
図2から4を用いて以下に説明する。
【0042】
図2は、予備混練部14の概略を示す断面図である。予備混練部14は、回転軸141、スクリュー142、プロペラ143、ステーター144、ローター145、およびケース146を備える。ケース146は、スクリュー142、プロペラ143、ステーター144、およびローター145を内部に収容し、第1の開口部146a、第2の開口部146b、および第3の開口部146cが形成されている。
【0043】
図3は、スクリュー142およびプロペラ143の斜視図である。スクリュー142は、回転軸141を中心として螺旋状に設けられる。プロペラ143は、複数枚の羽1431を備えており、これら羽1431は、回転軸141に対して螺旋状に配置されている。回転軸141は、回転軸141の長手方向の中心線を回転軸として、モーター(図示省略)により回転駆動され、回転軸141が回転すると、スクリュー142およびプロペラ143も回転する。
【0044】
図2に戻って、第1の開口部146aには、配管22、23が連通しており、第1の開口部146aから、正極活物質および導電助剤がケース146の内部に供給される。ケース146の内部に供給された正極活物質および導電助剤は、回転するスクリュー142により、鉛直下方に移送される。
【0045】
第2の開口部146bには、配管21が連通しており、第2の開口部146bから、バインダーがケース146の内部に供給される。ケース146の内部に供給されたバインダーは、スクリュー142により移送された正極活物質および導電助剤と、プロペラ143により初期混合され、ステーター144およびローター145が設けられた位置まで初期混合物として移送される。
【0046】
図4は、ステーター144およびローター145の斜視図である。ステーター144は、基体1441および複数の上くし刃1442を備える。基体1441は、円盤状に形成されており、基体1441の中央には、貫通孔1441aが形成されている。また、基体1441の一方の面には、貫通孔1441aの周りを環状に、複数の上くし刃1442がそれぞれ所定の間隙を空けて立設して配置されている。基体1441の他方の面は、
図2に示したように、ケース146に固定されており、上くし刃1442は、基体1441から鉛直下向きに突出する。
【0047】
ローター145は、基体1451および複数の下くし刃1452を備える。基体1451は、円盤状に形成されており、基体1451の中央には、貫通孔1451aが形成されている。また、基体1451の一方の面には、基体1451の周縁に沿って複数の下くし刃1452がそれぞれ所定の間隙を空けて立設して配置されている。基体1451は、貫通孔1451aに回転軸141が挿通され、かつ、基体1451の一方の面がステーター144に対向した状態で、回転軸141に固定されている。このため、下くし刃1452は、基体1451から鉛直上向きに突出し、回転軸141が回転するとローター145も回転する。
【0048】
ここで、ローター145は、ステーター144に設けられた複数の上くし刃1442に囲まれた領域に収まるように配置される。このため、ステーター144の基体1441と、ローター145の基体1451と、下くし刃1452と、で囲まれた空間が形成されることになる。この空間には、貫通孔1441aから、プロペラ143で初期混合された初期混合物が移送される。
【0049】
ローター145が回転すると、遠心力により、上述の空間に移送された初期混合物は、複数の下くし刃1452の間隙を通過した後、複数の上くし刃1442の間隙を通過して、配管24に連通する第3の開口部146cから予備混練スラリーとして排出される。なお、初期混合物には、複数の下くし刃1452の間隙を通過した段階において、静止している複数の上くし刃1442と、回転する複数の下くし刃1452と、に挟まれることによって強いせん断応力が付与される。このため、初期混合物に含まれるバインダー、正極活物質、および導電助剤の混合が促進され、予備混練スラリーが得られることになる。
【0050】
本混練部15は、連続的に供給される予備混練スラリーを、逐次、本混練して正極スラリーとして連続的に排出する。本混練部15による本混練は、予備混練部14により粗混練された予備混練スラリーを、所望の品質を有する正極スラリーになるまで混練することを目的とする。この本混練部15から連続的に排出された正極スラリーは、例えばコーターに送られる。本混練部15からコーターに正極スラリーを送る場合、配管を介して直接送ってもよいし、タンクなどの容器に溜めて送ってもよい。
【0051】
以上によれば、本混練部15は、予備混練スラリーの本混練を行いつつ、予備混練スラリーの連続的な受け入れと、正極スラリーの連続的な排出と、を行うことができる。
【0052】
本混練部15には、例えば、IKA社製の攪拌装置DR/DROやUTLやMKO、プライミクス社製の混合装置薄膜旋回型ミキサーのフィルミックス(登録商標)、浅田鉄工株式会社製の混合装置ゼロミル(登録商標)などを用いることができる。本混練部15の構成の一例を、
図5、6を用いて以下に説明する。
【0053】
図5は、本混練部15の概略を示す断面図である。本混練部15は、回転軸151、ステーター152、ローター153、およびケース154を備える。ケース154は、ステーター152およびローター153を内部に収容し、第1の開口部154aおよび第2の開口部154bが形成されている。
【0054】
図6は、ステーター152およびローター153の斜視図である。ステーター152は、円柱状に形成されており、ステーター152の内部には、上面から底面まで貫通孔152aが形成されている。貫通孔152aは、
図5に示したように、ステーター152の上面および底面と水平な平面での断面が円形で、ステーター152の上面から底面に向かうに従って直径が大きくなるようにテーパ状に形成されている。このステーター152は、ケース154に固定されており、第1の開口部154a側にステーター152の上面が配置される。
【0055】
ローター153は、円錐台状であり、ローター153の上面から底面に向かうに従って直径が大きくなるように、ステーター152の貫通孔152aと略等しい傾斜でテーパ状に形成されている。このローター153は、上面から、ステーター152の貫通孔152aに挿入され、底面に形成された回転軸受け穴153aに回転軸151が挿入された状態で回転軸151に固定されている。回転軸151は、回転軸151の長手方向の中心線を回転軸として、モーター(図示省略)により回転駆動され、回転軸151が回転すると、ローター153も回転する。
【0056】
ここで、第1の開口部154aには、配管24が連通しており、第1の開口部154aから、予備混練スラリーが貫通孔152aの内部に供給される。貫通孔152aの内部に供給された予備混練スラリーは、静止しているステーター152と、回転するローター153と、の間隙を通過して、配管25に連通する第2の開口部154bから正極スラリーとして排出される。なお、予備混練スラリーは、ステーター152とローター153との間隙を通過する段階において、静止しているステーター152と、回転するローター153とにより、せん断応力が付与される。このため、予備混練スラリーに含まれるバインダー、正極活物質、および導電助剤の粉砕および混合がさらに促進され、均一な正極スラリーが得られることになる。
【0057】
空間制御部31は、バインダー供給部11、正極材供給部12、導電助剤供給部13、および混練ユニット10が連通して形成される空間を、減圧または不活性ガスを充満させた状態にすることができる。不活性ガスとしては、例えば窒素を使用することができる。
【0058】
測定部32は、輸送されたり混練されたりしている材料や混合物、すなわち電池電極スラリー作製用混練装置1内に存在するバインダー、正極活物質、導電助剤、予備混練スラリー、および正極スラリーの周囲の雰囲気中の水分量を測定する。本実施形態では、測定部32は、配管24に設けられており、配管24内の水分量を測定する。測定部32により配管24内の水分量を測定することで、配管24の内部を通過するスラリーの吸水量を求めることができるとともに、スラリーの周囲の雰囲気が変化した場合に、混練ユニット10を制御することでスラリーの質の劣化を抑制することもできる。
また、測定部32としては、例えば温湿度計や露点計などを用いることができる。
【0059】
限界吸水時間決定部33は、バインダー、正極活物質、および導電助剤が電池電極スラリー作製用混練装置1に投入されてから本混練部15から排出されるまでの期間(以降では、材料滞在期間と呼ぶ)にスラリーに吸水される水分量が吸水量上限値未満になるように、限界吸水時間を決定する。具体的には、限界吸水時間決定部33は、測定部32により測定された配管24内の水分量と、上述の関係マップと、に基づいて吸水限界時間を決定する。この限界吸水時間決定部33について、以下に詳述する。
【0060】
電池電極スラリー作製用混練装置1内に存在するバインダー、正極活物質、導電助剤、予備混練スラリー、および正極スラリーは、それぞれ、周囲の雰囲気中の水分を吸収する場合がある。また、これら材料がどれだけの量の水分を吸収するのかは、材料に応じて変化するとともに、それら材料の周囲の雰囲気中の水分量に応じても変化する。そこで、限界吸水時間決定部33は、関係マップと、吸水量上限値と、を予め記憶している。
【0061】
吸水量上限値とは、材料滞在期間に吸水する水分量の合計値のうち、正極スラリーとしての品質を確保できる範囲内での吸水量の上限値のことである。吸水するとスラリーの粘度や体積などが変化し、混練ユニット10から材料へのせん断応力の加わり方が変化してしまう。このため、材料滞在期間に上述の材料のそれぞれが吸水した水分量の合計値が吸水量上限値を超えると、正極スラリーとしての品質の確保が難しくなる。この吸水量上限値は、実験などによって求めることができる。
【0062】
関係マップとは、上述の材料のそれぞれやこれら材料の混合物であるスラリーについての吸水量と時間との関係を、材料と、輸送されたり混練されたりしている材料や混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、に応じて、記録したものである。この関係マップを参照することで、材料と、輸送されたり混練されたりしている材料や混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、に応じて、吸水量上限値に達するまでの時間を求めることができる。
【0063】
吸水限界時間とは、正極スラリーとしての品質を確保できる範囲内での材料滞在期間の時間の最大値のことである。材料滞在期間の時間が吸水限界時間を超えると、上述の材料のそれぞれが吸水した水分量の合計値が吸水量上限値を超えることになり、正極スラリーとしての品質の確保が難しくなる。
【0064】
図7は、関係マップの一例を示す図である。
図7において、縦軸は吸水量を示し、横軸は時間を示す。
図7に示すような関係マップは、材料と、材料や混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、に応じて複数設けられている。
【0065】
そこで、限界吸水時間決定部33は、まず、材料と、測定部32により測定された水分量と、に基づいて適切な関係マップを選択する。次に、上述の吸水量上限値に基づいて、選択した関係マップから吸水限界時間を求める。
【0066】
制御部34は、配管21から24のそれぞれの内部をそれぞれの材料が流通する時間と、予備混練部14および本混練部15のうち少なくとも一方による混練時間と、のうち少なくともいずれかを制御して、材料滞在期間の時間を吸水限界時間未満にする。
【0067】
具体的には、制御部34は、材料滞在期間の時間が吸水限界時間未満になるように、モーノポンプ51による付勢力を制御したり、予備混練部14および本混練部15のうち少なくとも一方の混練速度(回転数)を制御したりする。上述のように付勢量や混練速度を制御することによって、電池電極スラリー作製用混練装置1の内部を材料やスラリーが通過する時間を制御することができ、材料やスラリーの吸水量を制御することが可能になる。
【0068】
なお、制御部34は、上述の付勢量と、上述の混練速度と、を連動させて制御することが好ましい。これらを連動させて制御することで、電池電極スラリー作製用混練装置1の内部での材料の偏りが起こりにくくなり、電池電極スラリー作製用混練装置1の安定した運用がしやすくなる。
【0069】
以上の構成を備える電池電極スラリー作製用混練装置1は、以下の効果を奏することができる。
【0070】
電池電極スラリー作製用混練装置1は、材料滞在期間においてスラリーに吸水される水分量が吸水量上限値未満になるように、限界吸水時間を決定する。また、制御部34により、配管21から24のそれぞれの内部をそれぞれの材料が流通する時間と、予備混練部14および本混練部15のうち少なくとも一方による混練時間と、のうち少なくともいずれかを制御して、材料滞在期間の時間を吸水限界時間未満にする。このため、材料滞在期間においてスラリーに吸収される水分量を吸水量上限値未満に抑えることができ、正極スラリーの質の劣化を抑制することができる。
【0071】
また、電池電極スラリー作製用混練装置1は、測定部32により、配管24内の水分量を測定し、限界吸水時間決定部33により、測定部32による測定結果に基づいて限界吸水時間を決定する。このため、配管24の内部を通過するスラリーの吸水量を考慮した上で、限界吸水時間を決定することができる。したがって、配管24の内部を通過するスラリーの吸水量が異なっていても、正極スラリーの質の劣化を抑制することができる。
【0072】
また、電池電極スラリー作製用混練装置1は、限界吸水時間決定部33により、測定部32により測定された水分量および関係マップに基づいて限界吸水時間を決定する。このため、関係マップを用いて限界吸水時間を決定することができる。
【0073】
<第2実施形態>
図8は、本発明の第2実施形態に係る電池電極スラリー作製用混練装置1Aの概略を示す構成図である。電池電極スラリー作製用混練装置1Aは、
図1に示した本発明の第1実施形態に係る電池電極スラリー作製用混練装置1とは、限界吸水時間決定部33の代わりに限界吸水時間決定部33Aを備える点で異なる。なお、電池電極スラリー作製用混練装置1Aにおいて、電池電極スラリー作製用混練装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
限界吸水時間決定部33Aは、材料滞在期間においてスラリーに吸水される水分量が吸水量上限値未満になるように、限界吸水時間を決定する。具体的には、限界吸水時間決定部33Aは、測定部32により測定された配管24内の水分量から単位時間当たりの吸水量を取得し、取得結果に基づいて吸水限界時間を決定する。この限界吸水時間決定部33Aについて、以下に詳述する。
【0075】
正極活物質、導電助剤、予備混練スラリー、および正極スラリーがどれだけの量の水分を単位時間当たりに吸収するのかは、材料に応じて変化するとともに、周囲の雰囲気中の水分量に応じても変化する。そこで、限界吸水時間決定部33Aは、吸水量関係表と、吸水量上限値と、を予め記憶している。
【0076】
吸水量関係表とは、上述の材料のそれぞれや、これら材料の混合物であるスラリーについて、周囲の雰囲気中の水分量と、単位時間当たりの吸水量と、の関係を記録したものである。この吸水量関係表を参照することで、材料と、輸送されたり混練されたりしている材料や混合物の周囲の雰囲気中の水分量と、に応じて、単位時間当たりの吸水量を求めることができる。
【0077】
そこで、限界吸水時間決定部33Aは、まず、材料と、測定部32により測定された水分量と、に基づいて適切な吸水量関係表を選択し、単位時間当たりの吸水量を求める。次に、以下の数式(1)を用いて、吸水限界時間を決定する。
【0079】
数式(1)において、t
maxは、吸水限界時間を示す。A
maxは、予め記憶している吸水量限界値を示し、aは、求めた単位時間当たりの吸水量を示す。
【0080】
以上の構成を備える電池電極スラリー作製用混練装置1Aによれば、電池電極スラリー作製用混練装置1と同様の効果を奏することができる。
【0081】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態に係る電池電極スラリー作製用混練装置1Bの概略を示す構成図である。電池電極スラリー作製用混練装置1Bは、
図1に示した本発明の第1実施形態に係る電池電極スラリー作製用混練装置1とは、タンク41、配管26、およびモーノポンプ58を備える点が異なる。なお、電池電極スラリー作製用混練装置1Bにおいて、電池電極スラリー作製用混練装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
タンク41は、予備混練部14に連通する配管24と連通している。このタンク41は、配管24を介して予備混練部14から連続的に供給される予備混練スラリーを貯留する。
【0083】
タンク41には、配管26が連通しており、タンク41は、貯留している予備混練スラリーを配管26に連続的に供給する。配管26には、本混練部15が連通しているとともに、モーノポンプ58が設けられている。タンク41は、貯留している予備混練スラリーを配管26に連続的に供給する。モーノポンプ58は、配管26に供給された予備混練スラリーを本混練部15に向って付勢する。タンク41の構成の一例を、
図10を用いて以下に説明する。
【0084】
図10は、タンク41の概略を示す断面図である。タンク41は、モーター411、攪拌部412、およびケース413を備える。攪拌部412は、いわゆるアンカー型攪拌翼であり、回転軸4121および攪拌翼4122を備える。回転軸4121は、回転軸4121の長手方向の中心線を回転軸として、モーター411により回転駆動され、回転軸4121が回転すると、攪拌翼4122も回転する。タンク41は、モーター411を駆動して攪拌翼4122を回転させることで、貯留している予備混練スラリーを攪拌する。なお、予備混練スラリーは、タンク41の側面に設けられた搬入口(図示省略)からタンク41の内壁をつたってタンク41内に入る。これは、タンク41の上方から入ることによって、予備混練スラリーに気泡が含まれてしまうのを避けるためである。また、タンク41に貯留されている予備混練スラリーは、タンク41の底面に設けられた排出口(図示省略)から排出される。
【0085】
以上の電池電極スラリー作製用混練装置1Bによれば、電池電極スラリー作製用混練装置1が奏することのできる上述の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
【0086】
予備混練部14には、バインダー供給部11、正極材供給部12、および導電助剤供給部13のそれぞれからバインダー、正極活物質、および導電助剤が予め定められた配合比で供給されてはくる。しかし、フィーダーのタイミング、計量誤差、搬送に基づく影響(搬送速度、搬送タイミング、搬送量など)などにより、僅かではあるが、予備混練部14で粗混練されて連続的に排出される予備混練スラリーの品質にばらつきが生じてしまうことがある。しかし、電池電極スラリー作製用混練装置1Bは、予備混練部14と本混練部15との間にタンク41を備える。このため、予備混練部14で粗混練されて連続的に排出される予備混練スラリーは、タンク41で貯留された後に、本混練部15に供給される。したがって、予備混練部14で粗混練された予備混練スラリーは、タンク41で貯留されている間に混ざり合うので、本混練部15に供給された時点での予備混練スラリーの品質のばらつきは、予備混練部14から排出された時点での予備混練スラリーの品質のばらつきと比べて、小さくなる。よって、正極スラリーの品質を向上させることができる。
【0087】
また、電池電極スラリー作製用混練装置1Bでは、タンク41に、貯留している予備混練スラリーを攪拌する攪拌部412が設けられている。このため、予備混練部14で粗混練された予備混練スラリーは、タンク41で貯留されている間にさらに混ざり合うので、粗混練により分散させた、予備混練スラリーを構成する材料が分離してしまうことなく、予備混練スラリーを複数の材料が混練された状態に維持することができ、正極スラリーの品質をさらに向上させることができる。
【0088】
また、電池電極スラリー作製用混練装置1Bでは、予備混練部14と本混練部15との間にタンク41が設けられているので、予備混練部14の処理量と、本混練部15の処理量と、が異なっていても、タンク41をいわゆるバッファとして利用することができ、本混練部15の処理量に等しい量の予備混練スラリーを本混練部15に供給することができる。具体的には、予備混練部14の処理量が、本混練部15の処理量よりも少ない場合、その差分をタンク41に貯留されている予備混練スラリーで補って、本混練部15の処理量に等しい量の予備混練スラリーを本混練部15に供給することができる。また、予備混練部14の処理量が、本混練部15の処理量よりも多い場合、その差分をタンク41に貯留して、本混練部15の処理量に等しい量の予備混練スラリーを本混練部15に供給することができる。このため、予備混練部14により粗混練された予備混練スラリーを連続的に本混練部15に供給しつつ、作製する正極スラリーの目標量や、清掃といったメンテナンス状況などに応じて、適宜、予備混練部14と本混練部15とを独立して駆動させることができる。
【0089】
<第4実施形態>
図11は、本発明の第4実施形態に係る電池電極スラリー作製用混練装置1Cの概略を示す構成図である。電池電極スラリー作製用混練装置1Cは、
図9に示した本発明の第3実施形態に係る電池電極スラリー作製用混練装置1Cとは、測定部35、36を備える点と、限界吸水時間決定部33の代わりに限界吸水時間決定部33Bを備える点と、が異なる。なお、電池電極スラリー作製用混練装置1Cにおいて、電池電極スラリー作製用混練装置1Bと同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0090】
測定部35は、配管23に設けられており、配管23内の水分量を測定する。測定部36は、配管26に設けられており、配管26内の水分量を測定する。
【0091】
限界吸水時間決定部33Bは、材料滞在期間においてスラリーに吸水される水分量が吸水量上限値未満になるように、限界吸水時間を決定する。具体的には、限界吸水時間決定部33Bは、まず、測定部32により測定された配管24内の水分量と、測定部35により測定された配管23内の水分量と、測定部36により測定された配管26内の水分量と、から特定水分量を求める。次に、求めた特定水分量と、上述の関係マップと、に基づいて吸水限界時間を決定する。特定水分量の求め方について、以下に詳述する。
【0092】
測定部32により測定された配管24内の水分量と、測定部35により測定された配管23内の水分量と、測定部36により測定された配管26内の水分量と、の最小値と最大値との差分が第2の閾値未満である場合には、測定部35は、これら3つの水分量にあまり差がないと判断し、これら3つの水分量の平均値を特定水分量として決定する。一方、測定部32により測定された配管24内の水分量と、測定部35により測定された配管23内の水分量と、測定部36により測定された配管26内の水分量と、の最小値と最大値との差分が第2の閾値以上である場合には、測定部35は、これら3つの水分量に大きな差があると判断し、最も多い水分量を特定水分量として決定する。
【0093】
以上の電池電極スラリー作製用混練装置1Cによれば、電池電極スラリー作製用混練装置1Aが奏することのできる上述の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
【0094】
電池電極スラリー作製用混練装置1Cは、測定部32による測定結果だけでなく、測定部35、36のそれぞれによる測定結果も用いて、限界吸水時間を決定する。このため、電池電極スラリー作製用混練装置1Cの内部の複数箇所での測定結果を用いて限界吸水時間を決定することができる。したがって、限界吸水時間をより適切に決定して、材料やスラリーの吸水量をより適切に制御することができる場合がある。
【0095】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計なども含まれる。
【0096】
例えば、上述の各実施形態では、混練ユニット10を、予備混練部14および本混練部15の2段の構成としているが、これに限らず、例えば1段の構成としてもよいし、3段以上の構成としてもよい。
なお、バインダーのように液体と、正極活物質および導電助剤のように粉体と、を混練する場合には、最初から本混練を行ってしまうと、液体リッチな領域と、粉体リッチな領域と、ができてしまうおそれがある。そこで、上述の各実施形態では、予備混練部14により粗混練をすることで、液体内の粉体の偏りを防止している。また、粗混練だけでも、液体内における粉体の分散が十分に均等化されていないおそれがある。そこで、上述の各実施形態では、予備混練部14による粗混練を行った後に、本混練部15による本混練を行っている。
ただし、混練する材料次第で、均一なスラリーのできやすさは異なる。このため、混練ユニット10の構成は、必要に応じて適宜決めればよい。
【0097】
また、上述の各実施形態では、正極スラリーの作製用の複数の材料や、これら複数の材料のうち少なくとも2つの混合物を輸送する輸送手段は、配管21から26のように閉鎖系の構成とした。しかし、輸送手段は、バインダー供給部11、正極材供給部12、および導電助剤供給部13のそれぞれから予備混練部14を介して本混練部15まで、上述の材料や混合物を連続的に送れればよく、ベルトコンベアや樋などの開放系の構成であってもよい。
また、閉鎖系の輸送手段は、開放系の輸送手段と比べてスラリーの管理の面では優れているが、輸送手段の全体を開放系にしたり、閉鎖系の輸送手段の一部を開放系にしたりしてもよい。
【0098】
また、上述の各実施形態では、測定部32を、配管24に設けたが、バインダー供給部11、正極材供給部12、導電助剤供給部13、および混練ユニット10が連通して形成される空間であればどこに設けてもよい。
ただし、配置のしやすさから、配管に設けることが好ましい。
また、予備混練部14を通過することで材料やスラリーの周囲の雰囲気中の水分量が変わるおそれがある場合には、予備混練部14に連通している配管のうち、予備混練部14の入口付近や出口付近に設けることが好ましい。また、本混練部15を通過することで材料やスラリーの周囲の雰囲気中の水分量が変わるおそれがある場合には、本混練部15に連通している配管のうち、本混練部15の入口付近や出口付近に設けることが好ましい。
【0099】
また、上述の第1実施形態から第3実施形態では、測定部32を、配管24にのみ設けたが、複数の場所に設け、これら複数の場所で水分量を測定してもよい。
例えば材料やスラリーの周囲の雰囲気中の水分量が一定ではない場合には、上述の第4実施形態のように複数の場所で水分量を測定することが好ましい。
また、上述のように輸送手段が閉鎖系であっても、配管と配管との継ぎ目や、予備混練部14といった構成と配管との継ぎ目などから、外部の空気が侵入する可能性がある。このため、水分量の監視は、スラリーの質の劣化を抑制するために重要である。
また、上述のように輸送手段が開放系であれば、電池電極スラリー作製用混練装置の近傍に測定部32を設けて、電池電極スラリー作製用混練装置が設置されている部屋の水分量を測定してもよい。
【0100】
また、上述の各実施形態では、吸水量上限値を、材料滞在期間において吸水する水分量の合計値のうち、正極スラリーとしての品質を確保できる範囲内での吸水量の上限値のこととした。しかし、これに限らず、例えばバインダー、正極活物質、および導電助剤のそれぞれが電池電極スラリー作製用混練装置1に投入された際に含んでいた水分量についても考慮してもよい。
【0101】
また、上述の各実施形態では、制御部34は、配管21から24のそれぞれの内部をそれぞれの材料が流通する時間と、予備混練部14および本混練部15のそれぞれによる混練時間と、のうち少なくともいずれかを制御して、材料滞在期間の時間を吸水限界時間未満にした。しかし、上述の流通する時間を制御したり、上述の混練時間を制御したりすると、電池電極スラリー作製用混練装置の制御の範囲を超えてしまう場合には、制御部34は、電池電極スラリー作製用混練装置の全体の動作を停止させるようにしてもよい。
【0102】
また、上述の各実施形態では、制御部34は、材料滞在期間の時間が吸水限界時間未満になるように、モーノポンプ51による付勢力を制御したり、予備混練部14および本混練部15のうち少なくとも一方の混練速度(回転数)を制御したりした。
しかし、制御部34は、材料滞在期間が吸水限界時間未満になるように、モーノポンプ51による付勢力を制御することと、予備混練部14および本混練部15のうち少なくとも一方の混練速度を制御することと、予備混練部14および本混練部15のうち少なくとも一方から材料または混合物への力の印加強度を制御することと、のうち少なくともいずれかを行ってもよい。
また、制御部34は、予備混練部14および本混練部15のうち少なくとも一方の代わりに、予備混練部14および本混練部15のうち最終段に位置する本混練部15だけの、混練速度や印加強度を制御してもよい。電池電極スラリー作製用混練装置の終端部の制御のみの変更であれば、電池電極スラリー作製用混練装置の安定した運用がしやすくなる。
また、上述の第4実施形態において、制御部34は、測定部32、35、36のそれぞれで測定された水分量の最小値と最大値との差分が第2の閾値以上である場合には、測定部32、35、36のうち測定した水分量が最も多かった測定部の近傍の混練手段だけの混練速度や印加強度を制御してもよい。例えば、測定部32、35、36のそれぞれで測定された水分量の最小値と最大値との差分が第2の閾値以上であり、測定部36で測定した水分量が最も多い場合には、本混練部15だけの混練速度や印加強度を制御してもよい。
【0103】
また、上述の第1実施形態および第3実施形態では、限界吸水時間決定部33は、測定部32により測定された配管24内の水分量と、上述の関係マップと、に基づいて吸水限界時間を決定した。しかし、測定部32により測定された配管24内の水分量の代わりに、測定部32により測定された配管24内の水分量と、混練ユニット10により混練されている材料または混練物の周囲の雰囲気中の水分量と、のうち少なくともいずれかを用いてもよい。
なお、混練ユニット10により混練されている材料または混練物の周囲の雰囲気中の水分量を用いる場合には、予備混練部14および本混練部15のうち少なくともいずれかに測定部32と同様の測定手段を設け、この測定手段により、予備混練部14および本混練部15のうち少なくともいずれかの内部の水分量を測定する必要がある。
第2実施形態に係る限界吸水時間決定部33Aや、第4実施形態に係る限界吸水時間決定部33Bでも、限界吸水時間決定部33と同様に、測定部32により測定された配管24内の水分量の代わりに、測定部32により測定された配管24内の水分量と、混練ユニット10により混練されている材料または混練物の周囲の雰囲気中の水分量と、のうち少なくともいずれかを用いてもよい。
【0104】
例えば、上述の各実施形態において、予備混練部14に供給されるバインダーの粘度も計測してもよい。これによれば、スラリーの移動速度が予測できるため、スラリーの輸送時間の補正が可能となる。
【0105】
また、上述の第1実施形態では、バインダー供給部11から予備混練部14へのバインダーの供給を、モーノポンプ51により行うものとした。しかしこれに限らず、例えば、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、デラスコポンプ、ギヤーポンプ、ベーンポンプなどを用いることもできる。また、バインダー供給部11を予備混練部14よりも高い位置に設け、重力を利用してバインダーに圧力を付勢することで、バインダー供給部11から予備混練部14へのバインダーの供給を行うものとしてもよい。なお、重力を利用する場合でも、供給する材料の供給量を制御するために、配管21にモーノポンプ51を設けておくことが好ましい。
【0106】
また、上述の第1実施形態では、ローター145の回転による遠心力により、ステーター144の基体1441と、ローター145の基体1451と、下くし刃1452と、で囲まれた空間に移送された初期混合物を、第3の開口部146cから排出させることとした。しかし、ローター145の回転による遠心力だけでは、上述の空間に移送された初期混合物を第3の開口部146cから排出させるための搬送力が、不足するおそれがある。特に、配管21から25の長さが長くなるに従って、上述の搬送力が不足する可能性が高くなる。そこで、配管24および配管25のうち少なくともいずれかにも、内部を流通する材料を付勢するモーノポンプといった構成を設けるものとしてもよい。
【0107】
また、上述の第1実施形態では、予備混練部14は、1つ設けられるものとしたが、これに限らず、例えば
図12、13に示すように、複数(
図12、13では2つ)が並列に設けられるものとしてもよい。これによれば、作製する正極スラリーの目標量や、清掃といったメンテナンス状況に応じて、複数の予備混練部14のそれぞれを独立して駆動させることができる。
【0108】
また、上述の第1実施形態では、本混練部15は、1つ設けられるものとしたが、これに限らず、上述の予備混練部14と同様に、複数が並列に設けられるものとしてもよい。これによれば、作製する正極スラリーの目標量や、清掃といったメンテナンス状況に応じて、複数の本混練部15のそれぞれを独立して駆動させることができる。
【0109】
また、上述の第2実施形態における仕上げ混練部17も、第1実施形態における予備混練部14や本混練部15と同様に、複数が並列に設けられるものとしてもよい。
【0110】
また、上述の第1実施形態において、予備混練部14を上述のように複数並列に設けるとともに、本混練部15も上述のように複数並列に設けるものとしてもよい。この場合、予備混練部14のそれぞれと、本混練部15のそれぞれと、をそれぞれ独立して制御し、予備混練部14のそれぞれの処理量の総和と、本混練部15のそれぞれの処理量の総和と、を等しくする。これによれば、予備混練部14により混練された予備混練スラリーを連続的に本混練部15に供給しつつ、作製する正極スラリーの目標量や、清掃といったメンテナンス状況などに応じて、適宜、予備混練部14のそれぞれや本混練部15のそれぞれを駆動させることができる。
【0111】
また、上述の第1実施形態では、バインダー供給部11、正極材供給部12、および導電助剤供給部13のそれぞれから、すなわち異なる構成から、バインダー、正極活物質、および導電助剤のそれぞれが供給されるものとした。しかし、これに限らず、バインダー、正極活物質、および導電助剤のそれぞれが、同一の構成から供給されるものとしてもよい。
【0112】
また、上述の第1実施形態では、モーノポンプ51は、配管21に設けられるものとした。しかし、これに限らず、配管24または配管25に設けられるものとしてもよく、また、配管21、24、25のうち複数に設けられるものとしてもよい。配管24や配管25に設ける場合には、付勢手段として、圧力などによりスラリーを吸引するようにして付勢する構成を設けることが好ましい。さらに、配管24に設ける場合には、最初の予備混練スラリーが予備混練部14から排出されるまで、配管25に設ける場合には、最初の正極スラリーが本混練部15から排出されるまで、配管21に設けられたモーノポンプ51によりバインダーを付勢させたり、予備混練部14や本混練部15にある程度の付勢力を有する構成を設けて材料を付勢させたりすることが好ましい。このように付勢させることで、電池電極スラリー作製用混練装置1内における材料やスラリーの移送をよりスムーズに行うことができる。
【0113】
また、上述の各実施形態では、予備混練部14には、3種類の材料が供給されるものとしたが、これに限らず、例えば2種類の材料や、4種類の材料が供給されるものとしてもよい。