【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記目的を達成するために、本発明のシステムは、現在の車両の位置情報と、予め定められた所定の警報対象物の位置情報とに基づいて、車両が前記警報対象物に所定の接近状態になったと判別したときに、少なくとも前記警報対象物に接近する過程の風景を撮像した実写動画を表示手段に表示させる制御手段を備えた構成としてある。
【0013】
上記構成によれば、実際の警報対象物に接近する過程の実写動画を表示して警報を行なうことにより、実写動画の映像と、車両の走行に伴って変化する実際の前方風景とを一致させることができる。例えば、警報対象物が速度測定装置の場合は、実写動画中の警報対象物を分かりやすく指示することで、ユーザは、前方風景中の実際の速度測定装置を容易に特定することが可能となる。
また、例えば、警報対象物が取締又は検問などのエリアの場合は、当該エリアの開始点から終了点までの範囲を含む実写動画を表示することで、ユーザは、前方風景中の実際のエリアを容易に特定することが可能となる。このような本発明の車載電子機器によれば、ユーザによる警報対象物の特定が容易となり、ユーザに安全運転を促すことが可能となる。
【0014】
ここで、本発明のシステムは、例えば、レーダ探知機やカーナビゲーションシステムなどの車載用電子機器の形態で実施してもよい。
さらに、本発明のシステムは、主として、位置情報の取得手段、警報対象物に接近する過程の風景を撮像した実写動画の映像データ、実写動画の表示手段、及び上述した制御処理を実行する制御手段などを備えていれば、実現することが可能である。
従って、汎用のパーソナルコンピュータ、携帯電話機、スマートフォン、携帯ゲーム機等のハードウエアを利用して本発明のシステムを実施してもよい。この場合、これら汎用の携帯端末を本発明のシステムとして動作させるためのソフトウエア、実写動画の映像データをサーバに格納し、インターネットを介して携帯端末に提供する構成としてもよい。
【0015】
なお、本明細書における「実写動画」の記載は、実際の風景を撮像した動画であって、表示手段に表示される視認可能な映像を意味する。特に「実写動画の映像」と記載しない場合でも、「実写動画」は、表示手段に表示された映像を意味する。映像ではなくデータを指す場合は「実写動画の映像データ」と記載する。
【0016】
(2)好ましくは、前記実写動画の映像データには撮像時の位置情報が関連付けてあり、前記制御手段は、前記車両の位置情報と、前記映像データの位置情報とに基づいて、前記実写動画を表示させるタイミングを決定する構成にするとよい。
(3)より好ましくは、前記制御手段は、前記車両の位置情報と、前記映像データの位置情報とが一致するタイミングで前記実写動画を前記表示手段に表示させる構成にするとよい。
(4)より好ましくは、前記制御手段は、現在の前記車両の位置情報と、前記映像データの位置情報とが一致する数〜数十秒前のタイミングで実写動画を表示させる構成にするとよい。
【0017】
上記構成によれば、現在の車両の位置情報と、実写動画の撮像時の位置情報とに基づいて、実写動画の最適な表示タイミングを決定することができ、実写動画の映像と、実際の前方風景との間に任意の対応関係をもたせることが可能となる。なお、上記(1)における、車両が前記警報対象物に所定の距離まで接近したか否かの判別は、例えば、単独で記憶した警報対象物の位置情報、又は上記(2)の映像データに関連付けた位置情報のいずれに基づいて行なう構成としてもよい。
【0018】
例えば、現在の車両の位置情報が、実写動画の撮像時の位置情報と一致するタイミングで実写動画を表示させることにより、実写動画の表示開始の時点で、実写動画の映像を、実際の前方風景と一致させることができる。以後、実写動画の再生速度を車速と同期させることにより、ユーザは、実写動画と前方風景とを対比して、実際の警報対象物を容易に特定することができる。
【0019】
また、例えば、現在の車両の位置情報が、実写動画の位置情報と一致する数〜数十秒前のタイミングで実写動画を表示させることにより、以後、現時点よりも数秒先の前方風景の実写動画が表示されることとなる。この結果、ユーザは、実写動画中の警報対象物を事前に確認し、その後、車両が前記実写動画の撮像地点に到達したときに、前方風景中から実際の警報対象物を容易に特定することができる。
【0020】
ここで、本発明における実写動画の映像データは、例えば、ドライブレコーダをレーダ探知機に連動させた専用の撮像装置を用いて取得することができる。即ち、レーダ探知機は、全国の警報対象物の位置情報を記憶しており、いずれかの警報対象物に対して、現在の車両の位置が所定の接近関係になった場合に、接近警報の出力を開始し、警報対象物を通過すると接近警報の出力を停止する構成となっている。
【0021】
一方、ドライブレコーダには、連続録画の開始、終了のボタンが設けられている。そこで、レーダ探知機が接近警報の出力を開始するタイミングで、ドライブレコーダに対して開始ボタンを押下するのと同様の信号を与え、レーダ探知機が接近警報の出力を停止するタイミングで、ドライブレコーダに対して終了ボタンを押下するのと同様の信号を与える撮像装置を構成する。このような構成の撮像装置を用いて、全国の警報対象物を通過すれば、警報対象物の通過前から通過後にわたる実写動画を撮像することができる。
【0022】
また、ドライブレコーダが撮像した映像には、撮像時の車両の位置情報、速度情報、撮像時刻などが関連付けて記録される。上記構成からなる専用の撮像装置を用いて、例えば、警報対象物の到達前20秒から通過後10秒の映像と位置情報とを自動的に記録し、又は警報対象物の到達前1kmから通過後500mの映像と位置情報とを自動的に記録して、全国の警報対象物にそれぞれ対応する実写動画の映像データを取得することが可能となる。
【0023】
(5)好ましくは、前記制御手段が、車両の速度情報に基づいて、前記実写動画の再生速度を、現在の車両の速度と同期させる構成にするとよい。
【0024】
上記構成によれば、車両の速度に実写動画の再生速度を同期させることで、警報時の車両の速度に応じて、実際の前方風景と実写動画との一定の対応関係を維持することが可能となる。これにより、警報時の車両の速度、車両の速度変化に応じた再生速度で実写動画を表示させることができ、常に適切な警報を行なうことが可能となる。
【0025】
(6)好ましくは、前記実写動画が、前記警報対象物の通過前の地点で撮像した前記警報対象物を含まない風景の映像を含む構成にするとよい。
【0026】
上記構成によれば、未だ警報対象物を視認することができない接近状態、例えば、警報対象物の1km手前、500m手前で実写動画を表示させた場合でも、これら実写動画と、実際の前方風景とが一致するので、警報対象物を含まない実写動画を見て、実際に車両が警報対象物に接近しつつある状況を容易に理解することができる。
【0027】
(7)好ましくは、前記実写動画が、前記警報対象物の通過前から通過後までの風景を撮像した一連の映像である構成にするとよい。
【0028】
上記構成によれば、警報の開始から解除までを一連の実写動画でユーザに報知することができる。ここで、上述した従来のレーダ探知機における警報は、いずれも静止画であったため、警報対象物の通過前の静止画を表示させるに止まり、警報対象物の通過後の静止画を表示させるものはなかった。このため、警報解除のタイミングが不明確であった。これに対し、上記構成からなる本発明のシステムでは、警報対象物の通過後までの映像を連続的に表示させることで、警報の解除をユーザに直感的に伝えることができる。
【0029】
(8)好ましくは、前記制御手段が、前記表示手段に地図を表示させるとともに、車両が前記警報対象物に所定の距離まで接近したときに、前記地図上に前記実写動画を重ねて表示させる構成にするとよい。
【0030】
上記構成によれば、レーダ探知機やカーナビゲーションシステムなどのシステムにおいて、警報対象物の位置や車両の位置を画面上の地図に表示し、この地図上に実写動画の警報を重ねて表示することが可能となる。これにより、実際の警報対象物を実写動画で確認しつつ、車両と警報対象物との接近状態を地図上のアイコン等で客観的に把握することができる。
【0031】
(9)好ましくは、前記制御手段が、車両から前記警報対象物までの距離に応じて、前記地図上に表示させる前記実写動画の表示面積を変化させる構成にするとよい。
【0032】
上記構成によれば、地図上に表示される実写動画の表示面積により、車両と警報対象物との接近状態をユーザに報知することができる。例えば、車両と警報対象物とが所定の距離まで接近したときに、最も小さな表示面積で実写動画を表示させ、その後、車両と警報対象物とが接近するにつれて実写動画の表示面積を大きくする。
これにより、実写動画の大きさで車両と警報対象物との接近状態を相対的に報知することができるとともに、車両が警報対象物に接近するほど実写動画の表示面積が大きくなって、実写動画中の警報対象物の特定が容易となる。また、車両が警報対象物に接近するほど実写動画の表示面積が大きくなり、実写動画中に多くの情報を付加することが可能となる。
【0033】
(10)好ましくは、前記実写動画に、当該実写動画中に含まれる前記警報対象物を視覚的に特定するための指示表示を付加した構成にするとよい。
【0034】
上記構成によれば、実写動画の前方風景中に含まれる警報対象物を、指示表示によって容易に特定することができる。実写動画の前方風景には、道路、他の車両、建物、標識や街灯などの構造物が含まれ、このような前方風景中から速度測定装置などの警報対象物を特定することは難しい。車両の速度が速いほど、実写動画中の警報対象物を特定することは困難になる。そこで、実写動画中に指示表示を追加することで、ユーザは実写動画中の警報対象物を一見して特定することが可能となる。
【0035】
ここで、上述した「指示表示」には、実写動画中の警報対象物を指示する表示が広く含まれ、例えば、実写動画中の警報対象物を指し示す矢印、警報対象物に関する情報を含む吹き出し、警報対象物全体への着色、警報対象物の輪郭をなぞる線などの表示が広く含まれる。
このような指示表示は、例えば、実写動画の映像中に埋め込む構成としてもよいが、映像の前面に描画する構成とするのがよい。例えば、実写動画中の警報対象物の画面内における座標位置、指示表示の大きさ、指示表示の方向などの情報を、所定フレーム毎に記録しておき、これら情報に基づいて、実写動画の映像の前面に指示表示を表示するとよい。
【0036】
(11)好ましくは、前記実写動画中に含まれる前記警報対象物に追従して、前記指示表示の位置又は大きさの少なくとも一方を変化させる構成にするとよい。
【0037】
上記構成によれば、車両と警報対象物との接近に伴って、位置や大きさが変化する実写動画中の警報対象物を、動的な指示表示で的確に指し示すことができ、ユーザは実写動画中の警報対象物をより容易に特定することが可能となる。例えば、車両から警報対象物までの距離が遠い警報開始時は、実写動画中に小さく写し出された警報対象物を小さい矢印で指し示し、車両が警報対象物に接近するに従って大きい矢印で警報対象物を指し示すようにする。
【0038】
また、このような動的な指示表示は、実写動画中でプログラムに従った人工的な動作を行なうので、車両の走行に伴って自然に変化する実写動画中でも特に目立ち、ユーザの注意を瞬時に引き付けることができる。
【0039】
(12)好ましくは、前記実写動画中に含まれる前記警報対象物が複数の構成要素からなる場合に、前記警報対象物の各構成要素に、前記指示表示をそれぞれ付加した構成にするとよい。
【0040】
上記構成によれば、警報対象物が速度測定装置の場合に、速度測定に寄与する重要な構成要素を指示表示で指し示すことができ、ユーザの注意を喚起して安全運転を促すことが可能となる。
例えば、速度測定装置がレーダ式、ループコイル式、Hシステム、LHシステムの場合には、これら速度測定装置のカメラの位置を矢印で指し示す。また、速度測定装置がループコイル式、LHシステムの場合には、舗装路に埋め込まれたループコイルを線でなぞって指し示す。これにより、速度測定装置の目的や機能をユーザに直感させ、より効果的な警報が行えるとともに、実写動画による警報を見たユーザの注意を喚起して安全運転を促すことができる。
【0041】
(13)好ましくは、同一の前記警報対象物について、異なる時期に撮像した複数の前記実写動画の映像データを対応させ、前記制御手段は、現在の時期情報に基づいて、異なる時期に撮像したいずれかの前記映像データを選択し、前記実写動画を前記表示手段に表示させる構成にするとよい。
(14)より好ましくは、同一の前記警報対象物について、少なくとも日中及び夜間に撮像した2種類の前記実写動画を対応させ、前記制御手段は、現在の時期情報に基づいて、日中又は夜間のいずれかの前記映像データを選択し、前記実写動画を前記表示手段に表示させる構成にするとよい。
【0042】
上記構成によれば、実写動画による警報を行う時期と、表示手段に表示される実写動画の撮像時期とを対応させて、例えば、実写動画の映像と、実際の前方風景との環境条件を一致又は近似させることができる。ここで、本発明における「異なる時期」としては、実写動画に表示される範囲を車両で走行した際に、実際の走行時の前方風景と、表示された実車動画とが異なるとユーザが感じられる「時期」を選択するとよい。
【0043】
例えば、春、夏、秋、冬、月、日、時、朝、昼、夕、晩など、風景の変化の少ないある幅をもった期間毎に実写動画を備えるとよい。このような本発明の速度測定装置によれば、例えば、車両が警報対象物と所定の接近状態になった時期が、日中ならば日中の実写動画、夕方ならば夕方の実写動画、夜間ならば夜間の実写動画を表示させることが可能となる。但し、本発明は、実写動画の映像と、実際の前方風景との環境条件を整合させる場合に限らず、例えば、視界の悪い夜間に、視界の良好な日中の実写動画を表示させてもよいし、これと同様の観点から、雪の降る冬に、夏の実写動画を表示させてもよい。
【0044】
(15)好ましくは、前記夜間に撮像した前記実写画像の映像データが、ナイトビジョンを用いて夜間に撮像したものにするとよい。
【0045】
警報対象物の周辺が街灯の少ない暗所の場合は、通常のカメラで夜間の映像を撮像しても、警報対象物自体やその周辺の状況を実写動画に収めることができない。そこで、上記構成のように、ナイトビジョンを用いて夜間の映像を撮像すれば、警報対象物自体やその周辺の状況を視認可能に実写動画に収めることができる。
これにより、実写動画と、実際の前方風景との環境条件の整合を図りつつ、夜間の暗所において、前方風景中の実際の警報対象物が視認しにくい場合でも、実写動画のナイトビジョン映像を参考にして、実際の警報対象物の位置や範囲を特定することが可能となる。
【0046】
(16)上記目的を達成するために、本発明のプログラムは、携帯端末を、上述したいずれかの本発明のシステムとして機能させる構成としてある。
【0047】
本発明のプログラムによれば、例えば、携帯電話、スマートフォン又は携帯ゲーム機などの携帯端末にダウンロードし、当該携帯端末に搭載されたコンピュータに、上述した制御手段の制御処理を実行させ、車両が警報対象物と所定の接近状態になったときに、当該携帯端末の表示手段に実写動画を表示させて、上述した本発明のシステムとして機能させることができる。なお、実写動画の画像データは、例えば、携帯端末に内蔵された記憶手段に記憶する構成としてもよいし、インターネット上のサーバ内に記憶する。
【0048】
(17)上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、上述した(1)〜(15)のいずれかのシステムに用いられる実写動画の映像データを取得するための撮像装置であって、既に設置された前記警報対象物の位置情報を記憶する記憶手段と、車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、走行中の前記車両から前方の風景の動画撮像が可能な撮像手段と、前記車両の位置情報と前記警報対象物の位置情報とに基づいて、前記車両が前記警報対象物に所定の接近状態になったと判別したときに、前記撮像手段に動画撮像を開始させ、前記車両が前記警報対象物を通過したと判別したときに、前記撮像手段に動画撮像を終了させる撮像制御手段と、を備えた構成としてある。
【0049】
(18)好ましくは、前記位置情報取得手段及び前記記憶手段を含むレーダ探知機と、前記撮像手段を含むドライブレコーダとを組み合わせ、前記撮像制御手段によって、前記ドライブレコーダの撮像開始タイミング及び撮像終了タイミングを制御する構成にするとよい。
【0050】
(19)上記目的を達成するために、本発明のソフトウエアは、上述した(17)又は(18)の撮像装置によって取得した前記実写動画の映像データと、前記実写動画を前記表示手段に表示させる機能をコンピュータに実現させるためのプログラムとを含む構成としてある。
【0051】
(20)上記目的を達成するために、本発明の撮像方法は、上述した(1)〜(15)のいずれかのシステムに用いられる実写動画の映像データを取得するための撮像方法であって、既に設置された前記警報対象物の位置情報を記憶手段に記憶し、位置情報取得手段によって、車両の位置情報を取得し、撮像制御手段が、前記車両の位置情報と前記警報対象物の位置情報とに基づいて、走行中の前記車両から前方の風景の動画撮像が可能な撮像手段を制御し、前記撮像制御手段は、前記車両が前記警報対象物に所定の接近状態になったと判別したときに、前記撮像手段に動画撮像を開始させ、前記車両が前記警報対象物を通過したと判別したときに、前記撮像手段に動画撮像を終了させる手順としてある。
【0052】
(21)好ましくは、前記位置情報取得手段及び前記記憶手段を含むレーダ探知機と、前記撮像手段を含むドライブレコーダとを組み合わせ、前記撮像制御手段によって、前記ドライブレコーダの撮像開始タイミング及び撮像終了タイミングを制御するとよい。
【0053】
(22)上記目的を達成するために、本発明のソフトウエアは、上述した(20)又は(21)の撮像装置によって取得した前記実写動画の映像データと、前記実写動画を前記表示手段に表示させる機能をコンピュータに実現させるためのプログラムとを含む構成としてある。
【0054】
実写動画の映像データを取得するための撮像装置又は撮像方法の基本原理については、レーダ探知機とドライブレコーダとの組み合わせを例に挙げて、既に説明したとおりである。
本発明の撮像装置又は撮像方法によれば、既に設置された警報対象物を通過するだけで、当該警報対象物の通過前から通過後にわたる実写動画を簡単に撮像することができる。これにより、全国に設置された多数の警報対象物の実写動画を極めて容易に取得することが可能となり、豊富な実写動画の映像データを備えたシステムを実現することができる。