(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の非接触式眼圧計について簡単に説明する。本実施形態の非接触式眼圧計は、例えば、被検眼の眼圧を非接触にて測定する。例えば、非接触式眼圧計は、流体を噴出して被検眼Eの角膜を変形させ、その変形状態と流体の圧力に基づいて被検眼Eの眼圧を測定してもよい。非接触式眼圧計は、例えば、駆動部(例えば、ソレノイド3)と、流体噴出部(例えば、流体噴出部30)と、制御部(例えば、制御部70)と、を備える。
【0010】
駆動部は、例えば、駆動電流を供給することにより駆動力を生じる。流体噴出部は、例えば、駆動部の駆動によってシリンダ内でピストンを第1方向に移動させて加圧動作をさせることによって被検眼の角膜に流体を噴出する。第1方向は、例えば、シリンダ内の空気を圧縮するときにピストンが移動する方向である。制御部は、例えば、駆動部への駆動電流の供給を制御する。もちろん、制御部は、駆動電圧を制御することによって駆動部への駆動電流の供給を制御してもよい。制御部は、例えば、駆動部に順方向の駆動電流を供給することによってピストンに第1方向の第1駆動力を与えてもよい。さらに制御部は、例えば、駆動部に順方向とは逆方向の駆動電流を供給することによってピストンに第1方向とは逆方向である第2方向の第2駆動力を与えてもよい。なお、駆動電流の方向は、Hブリッジ回路等の種々のスイッチ回路を用いて切り換えてもよい。
【0011】
なお、制御部は、例えば、第1駆動力によって第1方向に移動するピストンに対して、第2駆動力を与えることによって、ピストンの移動速度を減少させてもよい。
【0012】
なお、制御部は、駆動部に供給する駆動電流を制御することによって、第1駆動力によって第1方向に移動するピストンに対して、第1駆動力よりも大きな第2駆動力を与えてもよい。これによって、例えば、ピストンの減速を速やかに行ってもよい。
【0013】
なお、制御部は、駆動部に供給する逆方向の駆動電流を制御することによって、ピストンに与える第2駆動力の大きさを調整してもよい。例えば、制御部は、駆動電流を大きくすることによって、駆動部の駆動力を大きくしてもよい。
【0014】
なお、制御部は、駆動部に逆方向の駆動電流を供給する供給時間を制御することによってピストンに第2駆動力を与える時間を調整してもよい。例えば、制御部は、駆動電流を長い時間供給することによって、ピストンに与える第2駆動力の時間を長くしてもよい。
【0015】
なお、制御部は、駆動部に供給する順方向の駆動電流の大きさおよび供給時間の少なくともいずれかに応じて駆動部に供給する逆方向の駆動電流の大きさおよび供給時間の少なくともいずれかを制御することによって、第1駆動力の大きさに応じて第2駆動力の大きさを調整してもよい。例えば、制御部は、第1駆動力を大きくした場合、それに応じて第2駆動力の大きさも大きくしてもよい。
【0016】
なお、本装置は、例えば、変形検出部(例えば、検出光学系10)をさらに備えてもよい。変形検出部は、例えば、流体噴射部による角膜の変形を検出する。この場合、制御部は、変形検出部から出力される検出信号の立ち上がりを検知してもよい。そして、制御部は、例えば、ピストンの第1方向への移動による加圧動作を停止させるように、駆動部に逆方向の駆動電流を供給し、ピストンに第2駆動力を与えてもよい。なお、制御部は、変形検出部によって角膜の変形が所定時間の間検出された場合に、検出信号の立ち上がりを検知してもよい。
【0017】
なお、制御部は、例えば、第1駆動力によってピストンを初期位置から加圧終了位置まで第1方向に移動させ、第2駆動力によってピストンを加圧終了位置から初期位置まで第2方向に移動させてもよい。
【0018】
なお、本装置は、位置検出部(例えば、位置検出センサ50)をさらに備えてもよい。位置検出部は、例えば、ピストンの位置を検出する。この場合、制御部は、位置検出部によって検出されるピストンの位置に応じて、駆動部に供給する駆動電流を変化させてもよい。
【0019】
なお、制御部は、ピストンの加圧動作終了後、ピストンを一時的に停止させてから初期位置に戻してもよい。なお、ピストンを一時的に停止させる場合、制御部は、駆動電流の供給を停止させてもよい。
【0020】
なお、流体噴出部は、水平面に対して平行に配置されたシリンダ内でピストンを駆動部により水平に移動させて加圧動作をさせることによって被検眼の角膜に流体を噴射してもよい。つまり、シリンダおよびピストンは、水平に配置されてもよい。この場合も前述と同様に、制御部は、ピストンを一時的に停止させる際に、駆動電流の供給を停止させてもよい。これによって、例えば、ピストンに対して駆動力が働かないまめ、ピストンは停止する。
【0021】
なお、駆動部は、直動ソレノイドであってもよい。直動ソレノイドは、例えば、作動方向が直線である。
【0022】
<実施例>
以下、本実施例について図面に基づいて説明する。本実施例の非接触式眼圧計は、例えば、被検眼の眼圧を非接触にて測定する。非接触式眼圧計は、例えば、被検眼の角膜に流体を噴射し、そのときの角膜の変形状態と流体の圧力の関係から被検眼の眼圧を測定する。
図1または
図2に示すように、非接触式眼圧計は、例えば、流体噴出部30、検出光学系10(
図2)、観察・アライメント光学系11、制御部70等を備える。流体噴出部30は、例えば、被検眼Eの角膜に流体を噴射する。検出光学系10は、例えば、被検眼Eの角膜の変形状態を検出する。観察・アライメント光学系11は、被検眼の観察画像の撮影、アライメント指標の投影などを行う。制御部70は、例えば、装置全体の制御を司る。なお、
図1におけるX方向は左右方向、Y方向は上下方向、Z方向は前後方向を表す。
【0023】
<流体噴出部>
流体噴出部30は、例えば、シリンダ1、ピストン2、ソレノイドアクチュエータ(以下、ソレノイドともいう)3、ノズル6を備える。シリンダ1とピストン2は、被検眼に噴出する空気を圧縮する空気圧縮機構として用いられる。シリンダ1は、例えば、円筒状である。ピストン2は、シリンダ1の軸方向に沿って摺動する。ピストン2は、シリンダ1内の空気圧縮室34の空気を圧縮する。本実施例のソレノイド3は、いわゆる直動ソレノイドであり、直線的に作動する。ソレノイド3は、可動体4とコイル5を備える。可動体4には、例えば、永久磁石等の磁性体が用いられる。コイル5に電流が流れると、コイル5の内側に磁界が生じる。可動体4は、磁界から受けた電磁力によって
図1のA方向に移動される。可動体4は、図示無きビス、ボルト、ナット等によってピストン2に固定される。したがって、ピストン2は、可動体4とともに移動する。可動体4の移動によって、ピストン2は圧縮方向(または前進方向、
図1のA方向)に移動される。
【0024】
ピストン2の移動によりシリンダ1内の空気圧縮室34で圧縮された空気は、シリンダ1の先端に連結されるチューブ(パイプでもよい)20、圧縮された空気を収容する気密室21を介して、ノズル6から被検者眼Eの角膜に向けて噴出される。なお、例えば、シリンダ1は水平面(XZ面)に対して平行に配置されており、ソレノイド3の駆動によってピストン2がシリンダ1内で水平に移動されることにより空気の圧縮が行われてもよい。例えば、シリンダ1はその長手方向が水平方向と平行に配置され、シリンダ1の内面はピストン2をガイドする。このため、ピストン2の移動方向(圧縮方向)は、水平方向となる。なお、上記各構成部材は、装置本体の筐体内に設けられたステージ上にそれぞれ配置されている(図示省略)。
【0025】
また、本実施例のソレノイド3は、コイル5に流す電流の方向を変えることで、可動体4の移動方向を変更することができる。例えば、コイル5に順方向に電流を流すときに可動体4が圧縮方向(前進方向、
図1のA方向)に移動し、逆方向に電流を流すときは可動体4が反対方向(後退方向、
図1のB方向)に移動する。したがって、コイル5に流す電流の向きを切り換えることによって、可動体4とともに移動するピストン2の移動方向を変更できる。例えば、コイル5に順方向の電流を流し、ピストン2をA方向に移動させて空気圧縮室34の空気を圧縮した後、コイル5に逆方向の電流を流すことによって、ピストン2をB方向に移動させて初期位置に戻すことができる。
【0026】
流体噴出部30は、例えば、ガラス板8と、ガラス板9を備えてもよい。ガラス板8は、透明であり、ノズル6を保持するとともに、観察光やアライメント光を透過させる。ガラス板9は、気密室21の後壁を構成するとともに、観察光やアライメント光を透過させる。ガラス板9の背後には、観察・アライメント光学系11がその観察光軸及びアライメント光軸と、ノズル6の軸線が同軸になるように配置されているが、本開示とは関連が少ないため、説明は省略する。
【0027】
なお、流体噴出部30は、例えば、圧力センサ12、エア抜き穴13を備えてもよい。圧力センサ12は、例えば、気密室21の圧力を検出する。エア抜き穴13は、例えば、ピストン2に初速が付くまでの間の抵抗が減少され、時間的に比例的な立ち上がりの圧力変化を得ることができる。
【0028】
<検出光学系>
検出光学系10は、光源14、コリメータレンズ15、受光レンズ16、ピンホール板17、受光素子18等を備える。光源14は、例えば、角膜変形検出用の赤外LEDであってもよい。コリメータレンズ15は、光源14を出射した光を平行光束として被検眼Eの角膜に投光する。受光レンズ16およびピンポール板17は、角膜で反射した光を通過させて受光素子18に受光させる。なお、検出光学系10は、被検眼が所定の圧平状態のときに受光素子18の受光量が最大となるように配置されている。
【0029】
<制御系>
非接触式眼圧計は、例えば、制御部70を備える。制御部70は、例えば、装置全体の制御を司る。制御部70は、例えば、ソレノイド3、検出光学系10、観察・アライメント光学系11、圧力センサ12、位置検出センサ50等と接続される。制御部70は、例えば、圧力センサ12からの信号処理、受光素子18からの信号処理、ソレノイド3の駆動制御等を行ってもよい。
【0030】
<制御動作>
以上のような構成を備える非接触式眼圧計における制御動作について説明する。検者は被検眼Eを所定の位置に配置させ、図示なきジョイスティック等を操作してアライメント調整を行う。アライメントが完了すると、検者は測定開始スイッチを押して(あるいは制御部がアライメント光学系からの信号に基づき測定開始信号を自動的に発して)測定を開始する。
【0031】
制御部70は、測定開始信号が入力されると、ソレノイド3に動作可能な駆動エネルギーとしての電流の付与を開始する。ソレノイド3が作動し、その駆動力がピストン2に伝達されると、ピストン2が圧縮方向に前進され、シリンダ1内で圧縮された空気は、チューブ20を介して気密室21内の空気を圧縮する。そして、ノズル6を介して被検眼の角膜に圧縮空気が吹き付けられることによって、被検眼の角膜が徐々に変形される。
【0032】
光源14から投光された光の角膜による反射光は受光素子18へ入射し、角膜の変形状態が受光素子18により検出される。そして、制御部70は、受光素子18からの信号によって、その受光光量が所定のピ−クを示したことを検知すると、被検眼の角膜が圧平状態に達したことを検知する。そして、制御部70は、圧力センサ12から出力される検出信号に基づいて圧平状態検知時における圧力値を得て、これに基づいて眼圧値を算出する。
【0033】
また、制御部70は、角膜が圧平状態に達したことを検知すると、コイル5に逆方向の電流を付与し、B方向の駆動力(復帰力)をピストン2に加える。ピストン2は、復帰力によって徐々に減速し、停止する。制御部70は、ピストンが停止すると、一旦時間を置いてピストン2を停止させてから、ピストン2に再び復帰力を加えて初期位置に戻す。一旦時間を置いてピストン2を停止させるのは、流体の噴射によって被検眼Eから飛散した涙または埃等の吸い込みを抑制するためである。ピストン2を一旦停止させることによって、ピストン2を初期位置に戻すタイミングと、涙または埃等がノズル6付近に飛散するタイミングをずらすことができる。
【0034】
なお、制御部70は、ピストン2を初期位置に戻す際、ピストン2がシリンダ1に衝突することによって大きな衝突音が発生することを抑制するために、ピストン2の戻り速度を徐々に落としてもよい。例えば、ピストン2の位置によってコイル5に加える電流を変化させてもよい。例えば、制御部70は、ピストン2の位置を位置検出センサ50によって検出し、その位置に応じて設定された電流をコイル5に流してもよい。例えば、制御部70は、ピストン2が初期位置に近づくにつれて、コイル5に流す電流を小さくしてもよい。これによって、ピストン2に加わる復帰力を段階的に小さくでき、ピストン2の戻り速度を徐々に低下させることができる。位置検出センサ50は、例えば、磁気センサ等であってもよい。例えば、磁気センサによってピストン2に固定された可動体4の位置を検出してもよい。もちろん、位置検出センサ50は、その他の方式のセンサ(例えば、光学式センサ)であってもよい。
【0035】
上記のように、本実施例の制御部70は、コイル5の電流の向きを切り換えることによって、ピストン2の前進と後退を切り換えることができる。さらに、コイル5に流す電流の大きさを調整することによって、ピストン2を前進または後退させるときの駆動力の大きさを調整することができる。例えば、制御部70は、電流の大きさを一定にすることで、復帰力の大きさを一定に保つこともできる。このように、ピストン2を前進または後退させる際の動作を制御しやすい。例えば、バネの復元力などによってピストン2を初期位置に復帰させる構成の場合、ピストン2の位置(つまり、バネの伸び)によって復元力の大きさが異なり、また、復帰力が解除できないため、ピストン2の速度を制御することが難しい。また、バネの復元力は個体差が大きく、装置ごとの調整が必要となる場合がある。これに比べ、本実施例の流体噴出部30は、ソレノイド3の制御によって簡単にピストン2の速度を制御できるため、ピストン2の後退速度を遅く設定し、涙または埃などの吸い込みを抑えることができる。
【0036】
図3は、バネの復元力によってピストン2を後退させる場合(
図3(a)参照)と、ソレノイド3の駆動方向を切り換えることによってピストン2を後退させる場合(
図3(b)参照)に、制御部70がソレノイド3に供給する電流波形(実線)と圧力センサ12によって検出された圧力波形(鎖線)を示す。
図3(a)に示すように、バネを用いる場合、制御部70は、ソレノイド3へ順方向の電流を付与する。一方、
図3(b)に示すように、ソレノイド3の駆動方向を切り換える場合、制御部70は、ソレノイド3へ順方向の電流を付与し、所期する圧力が得られると、ソレノイド3に逆方向の電流を付与し、ピストン2を減速させる。
図4に示すように、両者の圧力波形を比較すると、ソレノイド3の駆動方向を切り換えた場合(実線)の方が、バネを用いた場合(鎖線)より、圧力の減少が速やかになる。つまり、バネの復元力を用いた場合よりも速やかにピストン2を減速させ、余計な流体を被検眼に噴射することを防ぐことができる。これによって、本装置は、被検者に与える不快感を低減させることができる。
【0037】
なお、本実施例において、ピストン2を圧縮方向に前進させるときにコイル5に流す電流の大きさに比べ、圧縮方向に移動するピストン2を停止させるときにコイル5に流す電流の大きさの方が大きくなるように設定される。これは、短い時間でピストン2を停止させ、余計な流体の吹付けを低減させるためである。
【0038】
なお、制御部70は、ソレノイド3によって、ピストン2が停止するまで復帰力を加えてもよいし、ピストン2が停止する前に復帰力を解除し、ピストン2とシリンダ1との摩擦力によってピストン2を停止させるようにしてもよい。また、制御部70は、ピストン2が逆方向に移動し始めるまで復帰力を加えて続けてもよい。このように、ソレノイド3の制御方法は本実施例の方法に限定されない。
【0039】
なお、制御部70は、検出光学系10によって検出された角膜の変形信号の立ち上がりを検知し、その検知信号に基づいてソレノイド3への電流の方向を順方向から逆方向に切り換えてもよい。ここで、制御部70は、例えば、立ち上がりが検知された時点でソレノイド3への電流の方向を逆方向に切り換える。このとき、ピストン2は、ソレノイド3への電流が逆方向に切り換えられた後も慣性力で圧縮方向に移動されるが、逆方向の電流によって初期位置へ向かう方向への駆動力が働く。そして、この駆動力によりピストン2の速度は減衰されて一旦停止し、その後戻り方向へ移動される。このように、角膜が圧平状態になる前であって角膜の変形が始まるタイミングでソレノイド3の電流の方向を切り換えることによって、被検眼に余計な流体を吹き付けることを低減し、速やかにピストン2を初期位置に戻すことができる。
【0040】
なお、以上の説明では、非接触式眼圧計を例に挙げたが、非接触式眼圧計とその他の眼特性を測定する眼科装置との複合機であってもよい。例えば、被検眼の眼屈折力を測定する眼屈折力測定部を備える非接触式眼圧計であってもよい。
【0041】
なお、以上の説明では、直動ソレノイドを用いたが、ロータリーソレノイドでもよい。例えば、電流の向きを切り換えることによって回転方向を切り換え可能なロータリーソレノイドを用いて、上記のようなピストン2の駆動制御を行ってもよい。