(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、医療現場において、患者や送液ラインに対し、所定の速度及びタイミングで薬液や血液等を送液する目的で、輸液用のチューブを装着し、ポンプによって送液を行う輸液装置が利用されている。輸液装置に用いられるポンプとしては、ペリスタルティック(蠕動運動)式ポンプが広く用いられている。ペリスタルティック式ポンプとしては、例えば、ローラ式のポンプが知られている。
【0003】
ローラ式のポンプを用いた輸液装置は、ハウジングと、このハウジング内に配置される、ロータと、ロータによって押圧される輸液チューブと、を備える。このような輸液装置においては、モータによってロータを回転させ、そのロータによって輸液チューブをしごくことで液体を送液する。
【0004】
なお、輸液装置として、いわゆるカセット式の輸液装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。カセット式の輸液装置は、ロータ及び輸液チューブを収納したカセットを、装置本体に着脱可能であり、携帯性やメンテナンス性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る輸液装置1を示す正面図である。
図1に示すように、輸液装置1は、カセット2Aと、カセット2Aを着脱可能な装置本体3と、を備える、いわゆるカセット式の輸液装置である。
【0013】
図2は、カセット2Aを示す正面図である。また、
図3Aは、カセット2Aの背面図であり、
図3Bは、カセット2Aの側面図である。カセット2Aは、例えば、高カロリー輸液を行う際に用いられる。高カロリー輸液においては、患者に対して輸液を多く供給することが求められる。
カセット2Aは、ハウジング21Aと、ロータ22Aと、輸液チューブ23Aと、識別部としての突起24Aと、を備える。
【0014】
ハウジング21Aは、平面視において長円状に形成される。ハウジング21Aの背面には、
図3A及び
図3Bに示すように、孔211A及び爪状の係合部212A,213A,214Aが形成される。
ロータ22Aは、ハウジング21Aに収容される。ロータ22Aは、円盤状に形成される図示しないベース部材と、等間隔を空けてベース部材に軸支され、個別に回動可能な3つのローラ部材221A,222A,223Aと、を有する。ロータ22Aは、ベース部材が回動することによって回動する。
【0015】
輸液チューブ23Aは、例えばシリコン製のチューブであり、液体が充填された点滴バックに上流側が接続され、患者に下流側が接続される。輸液チューブ23Aの内径は、例えば、2.5mmである。輸液チューブ23Aは、一部がロータ22Aの外周に配置されて、ハウジング21Aの内部で折り返される。詳しくは、輸液チューブ23Aは、3つのローラ部材221A,222A,223Aを囲うように配置される。輸液チューブ23Aは、ロータ22Aにより押圧される。詳しくは、輸液チューブ23Aは、ローラ部材221A,222A,223Aによって押圧されることで径方向に潰される。輸液チューブ23Aは、回動するローラ部材221A,222A,223Aによってしごかれることで、その内部の液体(血液、薬液等)を送液する。
【0016】
突起24Aは、
図3A及び
図3Bに示すように、ハウジング21Aの背面に配置される。突起24Aは、輸液チューブ23Aの内径を識別するための突起である。突起24Aは、
図3Aに示すように、ハウジング21Aの背面における輸液チューブ23Aの折り返された側の端部近傍から突出する。
続いて、輸液チューブの内径と、突起の配置の関係を説明する。
【0017】
図4A及び
図4Bは、カセット2Aに代えて装置本体3に着脱可能なカセット2Bを示す図である。具体的には、
図4Aは、カセット2Bの背面図であり、
図4Bは、カセット2Bの側面図である。カセット2Bは、例えば、疼痛管理のための輸液に用いられる。疼痛管理のための輸液においては、患者に対して鎮痛剤等を含む輸液を少量ずつ継続して供給することが求められる。カセット2Bについては、カセット2Aと同じ構成については同様の符号を付して説明を省略し、カセット2Aと異なる構成について説明する。
【0018】
カセット2Bの備える輸液チューブ23Bの内径は、輸液チューブ23Aの内径よりも小さい。輸液チューブ23Bの内径は、例えば、0.5mmである。つまり、カセット2Bを用いることで、カセット2Aを用いる場合よりも輸液の流量を少なくできる。
【0019】
カセット2Bの備える識別部としての突起24Bは、
図4Aに示すように、ハウジング21Bの裏面の中央部近傍から突出する。このように、突起24Bは、突起24Aとは異なる位置から突出している。
【0020】
図5は、装置本体3を示す正面図である。装置本体3は、ケース36と、ロータ駆動部としてのモータ31と、検出部32と、表示部33と、操作部37と、
図5においては図示しない制御部34と、を備える。
ケース36は、直方体状に形成され、装置本体3の外形を構成する。ケース36の長手方向の一端側には、カセット2A,2Bが装着される。
【0021】
モータ31は、ケース36の内部に収納されるモータ本体311と、カセット2A(カセット2B)が装置本体3に装着された状態で孔211A(孔211B)に挿入されるモータ軸312と、を有する。モータ31は、カセット2A(カセット2B)が装着された状態で、モータ軸312を介して駆動力をロータ22A(ロータ22B)に伝達し、ロータ22A(ロータ22B)を回転させる(ロータ22Bは図示せず)。
【0022】
検出部32は、カセット2A又はカセット2Bが装着された場合に、突起24A又は突起24Bの配置を検出する。本実施形態では、ケース36におけるカセット2A,2Bが取り付けられる位置には、複数の突起24Aを挿入可能な孔321,322が形成されている。より具体的には、ケース36には、カセット2A,2Bの突起24A,24Bに対応する位置に突起24A,24Bがそれぞれ挿入可能な孔321,322が形成される。検出部は、例えば、ケース36の内部における孔321,322に対応する位置に配置された図示しない圧力センサにより構成され、突起24A,24Bがそれぞれ孔321,322に挿入されたことを検出する。
【0023】
表示部33は、装置本体3の正面側に配置される。表示部33は、輸液チューブ23A又は輸液チューブ23Bを流通する液体の流量等の情報を表示する。具体的には、表示部33は、後述する流量抽出部341により抽出された流量の範囲において輸液の流量を表示する。
なお、装置本体3には、カセット2A(カセット2B)が装置本体3に装着された状態で係合部212A,213A,214A(係合部212B,213B,214B)がそれぞれ係合する孔状の被係合部351,352,353が形成される。
操作部37は、装置本体3の電源のON/OFFや、モータ31のON/OFFや、カセット2A,2Bによって供給する輸液の流量を入力するボタン等を含む。
【0024】
図6は、装置本体3の備える制御部34の機能ブロック図である。
図6に示すように、制御部34は、記憶部343と、流量抽出部341と、を備える。
記憶部343は、識別部としての突起24Aの配置と該突起24Aの配置を有するカセット2Aにより供給可能な輸液の流量の範囲(例えば、40〜80mL/h)とを対応付けて記憶する。また、記憶部343は、突起24Bの配置と該突起24Bの配置を有するカセット2Bにより供給可能な輸液の流量の範囲(例えば、1〜5mL/h)とを対応付けて記憶する。突起24Aの配置と該突起24Aの配置を有するカセット2Aにより供給可能な輸液の流量の範囲(流量の上限及び下限)とは、以下のように対応付けられる。突起24Aを備えるカセット2Aにより供給される輸液の流量は、カセット2Aの備える輸液チューブ23Aの内径とモータ31の出力により決定される。従って、カセット2Aによって供給可能な輸液の流量の下限は、モータ31の出力が下限の場合に輸液チューブ23Aを流通する輸液の流量である。一方、カセット2Aによって供給可能な輸液の流量の上限は、モータ31の出力が上限の場合に輸液チューブ23Aを流通する輸液の流量である。突起24Bの配置とカセット2Bにより供給可能な輸液の流量の範囲も、突起24Aの配置とカセット2Aにより供給可能な輸液の流量の範囲と同様に対応付けることができる。
【0025】
流量抽出部341は、検出部32により検出された突起24A又は突起24Bの配置に基いて、装着されたカセット2A又はカセット2Bの輸液の流量の範囲を記憶部343から抽出する。つまり、検出部32によって突起24Aの配置が検出された場合、カセット2Aによって供給可能な輸液の流量の範囲を記憶部343から抽出する。一方、検出部32によって突起24Bの配置が検出された場合、カセット2Bによって供給可能な輸液の流量の範囲を記憶部343から抽出する。
【0026】
続いて、輸液装置1の動作について説明する。
まずは、操作部37が操作されることで、装置本体3の電源がONになる。そして、カセット2Aが装置本体3に装着される。カセット2Aが装置本体3に装着されることで、突起24Aが孔321に挿入される。
【0027】
続いて、検出部32が突起24Aの配置を検出する。そして、流量抽出部341が、検出部32により検出された突起24Aの配置に基いて、装着されたカセット2Aの輸液の流量の範囲を記憶部343から抽出する。流量抽出部341によって抽出されたカセット2Aによって供給可能な輸液の流量の範囲は、表示部33に表示される。
【0028】
続いて、操作部37が操作されることで、流量抽出部341によって抽出されたカセット2Aによって供給可能な輸液の流量の範囲内において、カセット2Aによって供給される輸液の流量が入力される。カセット2Aによって供給される輸液の流量は、表示部33に表示される。そして、操作部37が操作されることで、モータ31がONになり、例えば患者に、所定の流量で輸液が供給される。
【0029】
輸液装置1は、カセット2Bを装置本体3に装着する場合も、カセット2Aを装着する場合と同様に動作する。
カセット2Bを装置本体3に装着した場合、検出部32は孔322に挿入された突起24Bの配置を検出する。そして、流量抽出部341が、検出部32により検出された突起24Bの配置に基いて、装着されたカセット2Bの輸液の流量の範囲を記憶部343から抽出する。流量抽出部341によって抽出されたカセット2Bによって供給可能な輸液の流量の範囲は、表示部33に表示される。
【0030】
続いて、操作部37が操作されることで、流量抽出部341によって抽出されたカセット2Bによって供給可能な輸液の流量の範囲内において、カセット2Bによって供給される輸液の流量が入力される。カセット2Bによって供給される輸液の流量は、表示部33に表示される。そして、操作部37が操作されることで、モータ31がONになり、例えば患者に、所定の流量で輸液が供給される。
【0031】
上記実施形態に係る輸液装置1によれば、以下の効果が奏される。
上記実施形態では、カセット式の輸液装置1において、カセット2A,2Bがそれぞれ、ハウジング21A,21Bに配置され、輸液チューブ23A,23Bの内径を識別するための識別部としての突起24A,24Bを備え、装置本体3が、突起24A,24Bの配置を検出する検出部32と、突起24A,24Bの配置と該突起24A,24Bの配置を有するカセット2A,2Bにより供給可能な輸液の流量の範囲とを対応付けて記憶する記憶部343と、検出部32により検出された突起24A,24Bの配置に基いて、記憶部343からカセット2A,2Bの配置に対応する輸液の流量の範囲を抽出する流量抽出部341と、流量抽出部341により抽出された流量の範囲において輸液の流量を表示する表示部33と、を備えるものとした。
これにより、輸液チューブ23Aを備えるカセット2Aと共に、輸液チューブ23Aの内径よりも小さい内径の輸液チューブ23Bを備えるカセット2Bを用いることで、間欠運転を行うことなく輸液を低流量にすることが可能になる。更に、装置本体3の備える検出部32がカセット2A及びカセット2Bのどちらが装置本体3に装着されているか識別した上で、流量抽出部341が供給可能な輸液の流量の範囲を記憶部343から抽出し、その輸液の流量の範囲において輸液の流量を表示部33に表示するので、上記実施形態に係る輸液装置1によれば、輸液チューブの内径の異なる複数のカセットを用いていることができるにも関わらず、容易に輸液の流量の確認ができる。
【0032】
また、上記実施形態では、ハウジング21A,21Bの裏面から突出する突起24A,24Bを、輸液チューブ23A,23Bの内径を識別するための識別部とした。
これにより、例えば、検出部32を圧力センサによって構成することで、容易に突起24A又は突起24Bを検出できる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
上記実施形態においては、カセットの備える識別部として突起を配置したが、識別部の形状は突起に限定されない。
【0034】
また、上記実施形態においては、カセット2A,2Bに識別部としてそれぞれ1つの突起を配置したが、本発明はこれに限定されない。本発明では、カセットに識別部として複数の突起を配置して、複数の突起の配置の組み合わせに基いて、供給可能な輸液の流量の範囲を決定してもよい。