特許第6661962号(P6661962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661962
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20200227BHJP
【FI】
   A63B53/04 E
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-207335(P2015-207335)
(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公開番号】特開2017-77397(P2017-77397A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 進太郎
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−308967(JP,A)
【文献】 特開2008−272241(JP,A)
【文献】 特開2005−143601(JP,A)
【文献】 特開2015−029836(JP,A)
【文献】 特開2015−023945(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0092331(US,A1)
【文献】 特開2008−279249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04−53/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドのフェース部のバック面に凹部が設けられているアイアン型のゴルフクラブヘッドにおいて、
前記バック面のトウ側、トップ側及びヒール側に第1凹部が配置され、
前記バック面のソール側に第2凹部が配置され、
前記第2凹部のフェース・バック方向の深さは、前記第1凹部のフェース・バック方向の深さよりも大きいゴルフクラブヘッドであって
前記ゴルフクラブヘッドは、ホゼル部を有するヘッド本体と、前記ヘッド本体の前面に装着され、前記フェース部を含むフェース本体とを備え、
前記フェース本体は、前記ゴルフクラブヘッドのソール部の一部を構成する底部を有しており、
前記第2凹部は、フェース面側に凹陥するとともに該底部においてソール側に凹陥していることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記第1凹部はトウ側からトップ側を経てヒール側まで連続して配置されていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記第1凹部と前記第2凹部とが連なっていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
請求項3において、トウ側の前記第1凹部はソール側に回り込んで、前記第2凹部のトウ側端部に連なっていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記第2凹部は、前記フェース本体のソール側エッジに沿って設けられていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記第2凹部は断面形状が円弧形状であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記ソール部の底面部には、トウ・ヒール方向に延びる溝が設けられており、該溝のトウ・ヒール方向の両端部は、端部ほどバック側に近付くことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイアン型のゴルフクラブヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アイアン型ゴルフクラブは、ボール反発性能が高く、フェース部においてオフセンターでボールを打撃しても、飛距離の変化が小さいことが望ましい。
【0003】
特許文献1には、フェースプレートの裏面における弾性環状区域において間隔をおいて内外に配列される複数本の環状溝を形成し、2つの隣り合う環状溝の間に環状フランジを形成することで、高弾性反発を生じ、スイートゾーンを拡大させるゴルフクラブヘッドが提案されている。
【0004】
特許文献2には、キャビティ部のフェース面側の内面の下部が、フェース面に向って凹陥する前向き凹所となっており、ボールをヒットしたときのフェース部の撓みが大きく、ボールの初速が大きくなり、飛距離が増大するアイアン型ゴルフクラブヘッドが提案されている。
【0005】
特許文献3には、フェース部の裏面のトップ部側及びソール部側に、トップ部側及びソール部側のエッジに沿って薄肉厚部を形成したり貫通孔を形成したりすることで、その近傍領域を大変形部としたアイアン型ゴルフクラブが提案されている。
【0006】
特許文献4には、フェース部の下方寄りの箇所にフェース部側薄肉部およびソール部側薄肉部を設けることで、フェース部でボールを打撃した際にたわむたわみエリアがフェース部の下部において拡大されるゴルフクラブヘッドが提案されている。
【0007】
特許文献5には、フェース裏面のトップ側エッジ、トウ側エッジ及びリーディングエッジに溝を設けたゴルフクラブが提案されている。
【0008】
特許文献6には、フェース部材の背面に、外周端面に沿って環状にのびる凹溝が形成されたアイアン型ゴルフクラブヘッドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−23945公報
【特許文献2】特開2015−19746号公報
【特許文献3】特開2012−90680号公報
【特許文献4】特許第5472522号明細書
【特許文献5】特開2007−44445号公報
【特許文献6】特開2005−143591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ボール打撃時の反発性能を向上させると共に、オフセンターでボールを打撃した際の飛距離減少を抑えることができるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のゴルフクラブヘッドは、ゴルフクラブヘッドのフェース部のバック面に凹部が設けられているアイアン型のゴルフクラブヘッドにおいて、前記バック面のトウ側、トップ側及びヒール側に第1凹部が配置され、前記バック面のソール側に第2凹部が配置され、前記第2凹部のフェース・バック方向の深さは、前記第1凹部のフェース・バック方向の深さよりも大きいことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の一態様では、前記第1凹部はトウ側からトップ側を経てヒール側まで連続して配置されている。
【0013】
本発明の一態様では、前記第1凹部と前記第2凹部とが連なっている。
【0014】
本発明の一態様では、トウ側の前記第1凹部はソール側に回り込んで、前記第2凹部のトウ側端部に連なっている。
【0015】
本発明の一態様では、前記ゴルフクラブヘッドは、ホゼル部を有するヘッド本体と、前記ヘッド本体の前面に装着され、前記フェース部を含むフェース本体とを備え、前記フェース本体は、前記ゴルフクラブヘッドのソール部の一部を構成している。
【発明の効果】
【0016】
本発明のゴルフクラブヘッドにあっては、フェース部のバック面のトウ側、トップ側及びヒール側に第1凹部が配置され、バック面のソール側にフェース・バック方向の深さが第1凹部の深さよりも大きい第2凹部が配置されているため、フェース部の撓みが大きくなってボールの反発性が向上すると共に、フェース部においてオフセンターでボールを打撃した際の飛距離減少を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係るアイアン型ゴルフクラブヘッドの背面図である。
図2図1のゴルフクラブヘッドの正面図である。
図3図1のゴルフクラブヘッドの底面図である。
図4図1のIV−IV線に沿う断面図である。
図5】フェース本体のバック側からの斜視図である。
図6】フェース本体の図4に対応する端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1図6を参照して実施の形態に係るアイアン型ゴルフクラブヘッドについて説明する。
【0019】
このアイアン型のゴルフクラブヘッド1は、シャフトの先端に取り付けられるものであり、ヘッド本体10と、このヘッド本体10の前面に装着されたフェース本体20とを備え、フェース本体20のフェース部21のバック面21bに第1凹部23〜25及び第2凹部26が設けられている。図2では、第1凹部23〜25及び第2凹部26を破線で示している。
【0020】
ヘッド本体10は、フェース本体20が装着されるフェース本体装着部11と、フェース本体装着部11のヒール側に連なるホゼル部12と、フェース本体装着部11の下部に連なるソール部13とを有している。ホゼル部12にはシャフトを差し込むためのホゼル穴(図示略)が設けられている。フェース部21の前面がフェース面21fである。フェース面21fには、多数のスコアライン(溝、図示略)が設けられてもよい。
【0021】
ゴルフクラブヘッド1のフェース部21のバック面21b側にキャビティ部14が設けられている。キャビティ部14は、トウ側からヒール側にまで延在しており、ソール部13と、トウ側凸部15、トップ側凸部16及びヒール側凸部17とによって周囲が囲まれている。これらの凸部15〜17は、フェース本体装着部11の周縁からバック側に起立している。
【0022】
図4に示すように、フェース本体20は、フェース部21と、ソール部13に連なる底部22とを有した、略L字形の縦断面形状となっている。フェース本体装着部11にフェース本体20を装着し、ヘッド本体10とフェース本体20とを一体としてゴルフクラブヘッド1を作製した場合、フェース本体20の底部22及びヘッド本体10のソール部13とにより、ゴルフクラブヘッド1のソール部が構成される。フェース本体20は、例えば、電子ビーム溶接などの固着手段によってフェース本体装着部11に固着されている。
【0023】
ソール部13の上面部13tは、トウ・ヒール方向の中間部がトウ側及びヒール側よりも高位の山部となっており、この中間部からトウ側、ヒール側に向かって徐々に低位となっている。図3に示すように、ソール部13の底面部13bにはトウ・ヒール方向に延びる溝13aが設けられてもよい。溝13aのトウ・ヒール方向の両端部は、端部ほどバック側に近付くように設けられている。
【0024】
フェース部21のバック面21bには、第1凹部23〜25と第2凹部26とが設けられている。第1凹部23は、フェース本体20のトウ側エッジ20aに沿って設けられている。第1凹部24は、フェース本体20のトップ側エッジ20bに沿って設けられている。第1凹部25は、フェース本体20のヒール側エッジ20cに沿って設けられている。第2凹部26は、フェース本体20のソール側エッジ20dに沿って設けられている。
【0025】
第1凹部23のトップ側は、第1凹部24のトウ側に連なっている。第1凹部24のヒール側は、第1凹部25のトップ側に連なっている。第1凹部25のソール側は、第2凹部26のヒール側に連なっている。第1凹部23のソール側は、第2凹部26のトウ側に連なっている。第1凹部24及び第1凹部25と、第2凹部26が連なるようにすることで、フェース部21をより撓みやすくすることができる。
【0026】
底部22のトウ・ヒール方向の長さは、フェース部21のトウ・ヒール方向の長さより短くなっている。底部22のトウ側端面22a(図5)は、フェース本体20のトウ側エッジ20aよりもヒール側に位置している。そのため、第1凹部23はソール側に向かうに従いヒール側へ湾曲し、フェース本体20のソール側に回り込むようにして、第2凹部26のトウ側端部に連なる。
【0027】
第2凹部26のトウ側端部は、底部22のトウ側端面22aまで延び、開口端となっている。同様に、第2凹部26のヒール側端部は、底部22のヒール側端面まで延び、開口端となっている。このように第2凹部のトウ側及びヒール側を開口端とすることで、フェース部21をより撓みやすくすることができる。第1凹部23は、底部22のトウ側端面22aよりも僅かにヒール側において第2凹部26に連なる。また、第1凹部25は、底部22のヒール側端面よりもわずかにトウ側において第2凹部26に連なる。
【0028】
この実施の形態では、第1凹部23〜25は、幅及び深さが互いに同一又は略同一であり、第2凹部26よりも幅及び深さが小さくなっている。第1凹部23〜25は、幅及び深さを互いに異ならせてもよい。
【0029】
この実施の形態では、第1凹部23〜25は、フェース本体20のバック面21bにおいてトウ側からトップ側を経てヒール側まで連続して配置され、第2凹部26に連なっている。従って、フェース本体20のバック面21bには、トウ側、トップ側、ヒール側及びソール側を囲むように凹部23〜26が設けられており、フェース部21をより撓みやすくすることができる。
【0030】
図6は、フェース面21fを水平面に対し垂直となるように設定した状態(以下、フェース面垂直状態とよぶ)である。フェース本体20のフェース部21の厚みT1は、特に制限されないが、例えば1.8mm以上、2.6mm以下である。この実施の形態では2.2mmである。
【0031】
フェース面垂直状態における第1凹部23〜25のフェース・バック方向の深さD1は0.1mm以上特に0.2mm以上が好ましく、0.5mm以下特に0.4mm以下が好ましい。この実施の形態では0.3mmである。フェース面垂直状態における第1凹部23〜25のトップ・ソール方向の幅W1は0.5mm以上特に0.7mm以上が好ましく、1.5mm以下特に1.3mm以下が好ましい。この実施の形態では1.0mmである。
【0032】
フェース面垂直状態におけるフェース本体20のトウ側エッジ20a、トップ側エッジ20b、ヒール側エッジ20cから第1凹部23〜25までの距離L3は、5.0mm以下特に4.0mm以下が好ましい。この実施の形態では3.0mmである。
【0033】
フェース面垂直状態において第2凹部26のバック面21bに対するフェース・バック方向の深さD2は、0.3mm以上特に0.5mm以上が好ましく、1.3mm以下特に1.1mm以下が好ましい。この実施の形態では0.8mmである。第2凹部26の深さD2は、第1凹部23〜25の深さD1より大きくなっており、フェース部21のソール側をより撓みやすくすることができる。アイアン型のゴルフクラブは、地面にあるゴルフボールを打撃する場面が主であるため、フェース部21のソール側でボールを打撃する事が多い。そのため、主な打撃位置となるフェース部21のソール側をより撓みやすくすることで、主な打撃位置での反発性をより向上させることができる。また、フェース部21のバック面21bの全周にわたり深い凹部を設けると打撃耐久性に劣るおそれがある。そのため、第1凹部23〜25の深さD1と第2凹部26の深さD2を異ならせることで、反発性を向上させながらも、必要な打撃耐久性を備えるようにすることができる。フェース面垂直状態において、バック面21bからソール方向に延長した仮想面21cが第2凹部26と交わるトップ側の位置から、仮想面21cと第2凹部26とが交わるソール側の位置までの距離W2は、2.5mm以上特に2.7mm以上が好ましく、3.5mm以下特に3.3mm以下が好ましい。この実施の形態では3.0mmである。
【0034】
第2凹部26は、フェース部21においてフェース面21f側に凹陥するだけでなく、底部22においてソール側に凹陥させてもよい。これにより、フェース部21のソール側をより撓みやすくすることができる。フェース面垂直状態における第2凹部26全体としてのトップ・ソール方向の距離L1は2.5mm以上特に2.7mm以上が好ましく、3.8mm以下特に3.6mm以下が好ましい。この実施の形態では3.3mmである。フェース面垂直状態における第2凹部26全体としてのフェース・バック方向の距離L2は1.5mm以上特に2.0mm以上が好ましく、4.0mm以下特に3.5mm以下が好ましい。この実施の形態では3.2mmである。
【0035】
このゴルフクラブヘッド1でゴルフボールを打撃したとき、フェース本体20のソール側エッジ20dに沿って第2凹部26が設けられているため、ゴルフクラブヘッド1のソール側の剛性が下がり、フェース部21のソール側がより撓みやすくなり、ゴルフボールを打撃したときの反発性が向上する。
【0036】
また、フェース部21においてオフセンターでボールを打撃しても、フェース本体20のトウ側エッジ20a、トップ側エッジ20b、及びヒール側エッジ20cに沿って第1凹部23〜25が設けられているため、フェース部21が撓みやすくなり、飛距離減少を抑えることができる。
【0037】
この実施の形態では、第1凹部23〜25、及び第2凹部26が連続的に設けられているが、1又は複数箇所にて途切れていてもよい。
【0038】
この実施の形態では、第1凹部23〜25、及び第2凹部26の断面形状を円弧形状としていたが、三角形や四角形等の多角形状、V字形、非対称形状等の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 ゴルフクラブヘッド
10 ヘッド本体
11 フェース本体装着部
12 ホゼル部
13 ソール部
14 キャビティ部
15 トウ側凸部
16 トップ側凸部
17 ヒール側凸部
20 フェース本体
21 フェース部
22 底部
23〜25 第1凹部
26 第2凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6