(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モータとエンジンとを備え、前記モータを駆動して走行している際にドライバからの要求が所定の要求閾値以上となった場合に、前記モータと共に前記エンジンを駆動して走行するハイブリッド車両の制御装置であって、
前記エンジンで使用する燃料の単位通貨当たりの走行可能距離に基づいて、前記要求閾値を設定する閾値設定部を備え、
前記ハイブリッド車両は、前記モータを駆動し前記エンジンを停止して走行している際に、前記モータで使用する電力を蓄積するバッテリの充電率が所定の充電閾値以下となった場合に、前記エンジンにより発電機を駆動して電力を発生させ、
前記閾値設定部は、前記燃料の単位通貨当たりの走行可能距離が短いほど前記要求閾値が大きくなるよう設定し、かつ前記燃料の単位通貨当たりの走行可能距離が短いほど前記充電閾値が小さくなるよう設定する、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態にかかるハイブリッド車両10の構成を示す説明図である。
ハイブリッド車両10は、走行システム20と、発電システム30と、燃料タンク40と、バッテリ50と、ECU70とを備えている。
【0010】
走行システム20は、ハイブリッド車両10の駆動機構であり、前輪21および後輪22と、モータ23と、インバータ24と、エンジン25と、モータ23の出力軸23Aの回転とエンジン25の出力軸25Aの回転とを前輪21に伝達する伝達機構26とを備えている。
【0011】
前輪21および後輪22は、それぞれ車幅方向で対となった2つの車輪で構成されている。本実施の形態では、前輪21がモータ23およびエンジン25の駆動輪となっている。前輪21および後輪22には、各輪の回転量を検出する車輪速センサ21Aが設けられている。車輪速センサ21Aは、その検出値を後述するECU70へと送信する。なお、図示の便宜上、
図1には車輪速センサ21Aを1つのみ図示している。
【0012】
モータ23は、バッテリ50に蓄積された電力を用いて駆動し、出力軸23Aから回転力(トルク)を出力する。なお、モータ23は、ハイブリッド車両10の減速時の回生力を用いて回生発電することも可能である。回生発電により発生した電力はインバータ24を介してバッテリ50に供給され、バッテリ50を充電する。
【0013】
インバータ24は、バッテリ50から供給される電力を、ドライバの要求に合わせて調整してモータ23に供給する。ドライバの要求とは、一例として、アクセルペダルの踏力、ブレーキペダルの踏力から後述するECU70(より詳細には要求出力値算出部702、
図2参照)が算出する。ECU70(より詳細には駆動制御部710、
図2参照)は、算出した運転者からの要求出力値に基づいてインバータ24を制御する。
【0014】
エンジン25は、燃料タンク40から供給される燃料を燃焼室内で燃焼することによって駆動する。エンジン25は、一例として、ガソリンを燃料とするレシプロエンジンである。エンジン25の駆動は、後述するECU70(より詳細には駆動制御部710、
図2参照)によって制御される。
【0015】
伝達機構26は、モータ23の出力軸23Aの回転を前輪21に伝達するとともに、エンジン25の出力軸25Aの回転を前輪21に伝達する。伝達機構26は、クラッチ装置27を備えている。クラッチ装置27は、一対のクラッチ板27A,27Bと、クラッチ板27A,27Bを互いに接触可能であり、かつ、接触状態を解除可能な駆動部27Cを備えている。
【0016】
クラッチ板27Aは、エンジン25の出力軸25Aと一体に回転する。クラッチ板27Bは、モータ23の出力軸23Aと一体に回転する。駆動部27Cによってクラッチ板27A,27Bどうしが互いに接触すると、クラッチ板27A,27Bは互いに一体に回転する。このことによって、エンジン25の出力軸25Aの回転が前輪21に伝達される。駆動部27Cによってクラッチ板27A,27Bが互いに離れた状態になると、エンジン25の出力軸25Aの回転は前輪21に伝達されなくなる。駆動部27Cは、後述するECU70によって制御される。
【0017】
発電システム30は、バッテリ50を充電するための機構であり、エンジン25と、発電機31と、インバータ24とを備えている。
【0018】
発電機31の回転軸31Aは、第2の伝達機構32によってエンジン25の出力軸25Aの回転が伝達される。発電機31は、ECU70の制御によって発電可能な状態になると、エンジン25の出力軸25Aの回転を受けて回転軸31Aが回転し、発電する。発電機31は、インバータ24に接続されており、発電機31が発電した交流電力はインバータ24によって直流電力に変換されてバッテリ50に充電される。
【0019】
発電機31は、エンジン25を始動する際のスタータとしても機能する。ECU70は、エンジン25を始動するときは、インバータ24を制御して発電機31を駆動する。発電機31が駆動することによって回転軸31Aが回転する。回転軸31Aは第2の伝達機構32を介してエンジン25の出力軸25Aに連結されているので、発電機31が駆動されて回転軸31Aが回転すると、エンジン25の出力軸25Aを回転することができる。
【0020】
また、上述のように、モータ23の回生発電によって発生した電力によっても、バッテリ50を充電することが可能である。
【0021】
燃料タンク40は、エンジン25の動力源である燃料(例えばガソリン)を蓄積する。燃料タンク40内には、燃料の蓄積量を検出する燃料センサ40Aが設けられている。燃料センサ40Aは、その検出値をECU70に送信する。
【0022】
バッテリ50は、モータ23の動力源である電力を蓄積する。バッテリ50にはBMU(Battery Monitoring Unit)51が接続されている。BMU51は、バッテリ50の電圧や温度、入出力される電流等を検出し、充電率(SOC:State Of Charge)を含むバッテリ50の状態を検出する。BMU51は、バッテリ50の状態(少なくとも充電率)をECU70に送信する。
【0023】
また、ハイブリッド車両10は、
図1に図示した構成の他、アクセルセンサ61、表示部62、通信部63(
図2参照)を備えている。
アクセルセンサ61は、ドライバによるアクセルペダル(図示なし)の操作量を検出すえる。アクセルセンサ61の検出値は、アクセル開度値としてECU70に送信される。
表示部62は、例えばダッシュパネル等に設けられたディスプレイであり、ドライバに対してハイブリッド車両10の状態を表示する。表示部62はECU70によって制御されている。本実施の形態では、表示部62は、燃費や電費(単位燃料量または単位電力量当たりの走行距離)を表示するために用いられる。
通信部63は、通信回線を介してネットワーク上の情報機器と通信するためのインターフェースである。本実施の形態では、通信部63は、燃料や電力の単価(単位量当たりの価格)情報を取得するために用いられる。
【0024】
ECU70は、ハイブリッド車両10全体を制御する制御部であり、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置に対応する。
ECU70は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
【0025】
本実施の形態では、特にECU70によるハイブリッド車両10の走行モードの切り替えについて述べる。
まず、ハイブリッド車両10の走行モードについて説明する。本実施の形態では、ハイブリッド車両10は以下の3種類の走行モードを適宜切り替えて走行する。
1.EV(Electric Vehicle)走行モード
エンジン25は停止し、モータ23の駆動力で車軸を回転させて走行するモードである。
2.シリーズ走行モード
エンジン25で発電機31を駆動しながら、モータ23の駆動力で車軸を回転させて走行するモードである。
EV走行モードからシリーズ走行モードへの移行は、例えば以下のような場合に行われる。
<パターン1>
ドライバからの要求が所定の要求閾値以上である場合。
例えば、ドライバが加速したい時にアクセルを大きく踏み込んだ場合などである。この場合、発電機31で発電した電力は、バッテリ50から供給される電力とともにモータ23に供給される。これにより、EV走行モード時よりもモータ23の出力を大きくすることができる。
ドライバからの要求とは、例えば要求出力値や要求トルク値、要求出力値を発生させるために必要な電力量、アクセル開度などである。本実施の形態では、ドライバからの要求を要求出力値を用いて判断する。要求出力値は、例えばアクセル開度(アクセルペダルの操作量)を変数とした要求出力値算出用の関数によって算出される値である。
<パターン2>
バッテリ50の充電率が所定の充電閾値以下となった場合
バッテリ50の充電率が低下して、このまま走行すると電欠状態となる可能性がある場合である。この場合、発電機31で発電した電力は、モータ23に供給されるとともに余剰分がバッテリ50に供給され充電に用いられる。
3.パラレル走行モード
エンジン25の駆動力およびモータ23の駆動力で車軸を回転させて走行するモードである。
特に、高速走行時等、エンジン25による車軸駆動の効率が高い場合にパラレル走行モードに移行する。なお、パラレル走行モード時にも、エンジン25の駆動力を発電機31に伝達して発電を行う(すなわち、エンジン25の駆動力を走行と発電とに振り分ける)ことが可能である。
【0026】
ECU70は、上述したEV走行モードからシリーズ走行モードへの移行閾値(要求閾値および充電閾値)を、燃料の単位通貨当たりの走行可能距離に基づいて変更する。
図2は、ECU70の機能的構成を示す説明図である。
ECU70は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、要求出力値算出部702、燃費・電費算出部704、単価取得部706、閾値設定部708、駆動制御部710を実現する。
【0027】
要求出力値算出部702は、ドライバからの要求出力値を算出する。より詳細には、要求出力値算出部702は、アクセルセンサ61の検出値からアクセル開度を検知し、要求出力値算出用の関数にアクセル開度の値を代入して出力要求を算出する。
なお、上記要求出力値は請求項におけるドライバからの要求の一例である。ドライバからの要求として、アクセル開度や要求トルク、要求出力を発生させるために必要な電力量を用いてもよい。
【0028】
燃費・電費算出部704は、ハイブリッド車両10の燃費および電費、すなわち単位燃料量および単位電力量当たりの走行距離(km/Lおよびkm/kWh、以下単位は一例である)を算出する。
より詳細には、燃費・電費算出部704は、車輪速センサ21Aから送信された車輪の回転量に基づいてハイブリッド車両10の走行距離を算出する。また、燃費・電費算出部704は、燃料センサ40Aの検出値を受信し、走行中の燃料使用量を算出する。さらに、燃費・電費算出部704は、BMU51から送信されたバッテリ50の充電率を受信し、走行中の電力使用量を算出する。
そして、過去の所定期間における走行距離を、この間の燃料使用量または電力使用量で除して燃費または電費を算出する。所定期間の長さは任意である。
なお、本実施の形態では、燃費の算出にはシリーズ走行モード中の燃料使用量のみを用いるものとする。すなわち、エンジン25により駆動輪を回転させる場合の燃費ではなく、エンジン25より発電機31を駆動させ発生した電力で走行する際の燃費(発電電力に換算した燃費)を算出するものとする。
また、実施の形態1では以降の処理で使用するのは燃費のみのため、燃費・電費算出部704は少なくとも燃費を算出できればよい。
また、燃費・電費算出部704は、単位燃料量および単位電力量当たりの走行距離ではなく、単位距離を走行するのに必要な燃料量および電力量(L/kmおよびkWh/km)を算出するようにしてもよい。
また、燃費・電費算出部704は、算出した燃費や電費を表示部62に表示する。これにより、ハイブリッド車両10の燃費や電費をドライバが確認することが可能となる。
【0029】
単価取得部706は、燃料および電力の単位量当たりの価格(単価、円/Lおよび円/kWh)を取得する。
本実施の形態では、単価取得部706は、通信部63を介して外部の単価情報提供サーバに接続して単価情報を取得するものとする。
より詳細には、単価取得部706は、燃料を給油した日付および給油場所情報(例えばカーナビゲーション装置に搭載されたGPSシステムにより特定した給油地の緯度経度情報)を単価情報提供サーバに送信する。単価情報提供サーバは、各給油所における過去の燃料単価情報を記憶しており、単価取得部706から送信された情報に基づいて給油時の燃料単価を検索し、単価取得部706に送信する。
また、単価取得部706は、電力を充電した日付および時間帯、充電場所情報(充電地の緯度経度情報)、および充電の種類(急速充電または普通充電)を単価情報提供サーバに送信する。単価情報提供サーバは、各充電スタンドにおける過去の電力単価情報や家庭用電力の時間帯別価格を記憶しており、単価取得部706から送信された情報に基づいて充電時の電力単価を検索し、単価取得部706に送信する。
なお、実施の形態1では以降の処理で使用するのは燃料の単価情報のみのため、単価取得部706は少なくとも燃料の単価を取得できればよい。
また、単価取得部706は、ネットワークを介して単価情報を取得するのではなく、例えば給油時や充電時にドライバが入力した単価情報を記憶しておいてもよい。
また、単価取得部706は、給油時や充電時における単価情報を取得するのではなく、現在の単価情報または将来の予測単価情報を取得してもよい。これは、今回の走行で燃料または電力が消費された場合には給油や充電が必要となる可能性があり、次回の給油や充電時の単価に基づいて後述する閾値を設定することも有効と考えられるためである。
【0030】
閾値設定部708は、EV走行モードからシリーズ走行モードへの移行閾値(要求閾値および充電閾値)を、燃料の単位通貨当たりの走行可能距離(以下、「通貨換算走行距離」)に基づいて設定する。
ここで、通貨換算走行距離とは、燃費・電費算出部704で算出した燃費または電費(km/Lまたはkm/kWh)を、燃料または電力の単価(円/Lまたは円/kWh)で除した値であり、単位通貨(1円)で購入した燃料または電力で走行可能な距離(km/円)を示す。
【0031】
閾値設定部708は、燃料の通貨換算走行距離が短いほど、すなわち1円で購入できる燃料によって走行可能な距離が短いほど、要求閾値(エンジン25を始動する要求出力値の値)が大きくなるように設定する。
【0032】
図3は、EV走行モードからシリーズ走行モードへの移行閾値を模式的に示す説明図であり、
図3Aは要求閾値、
図3Bは充電閾値を示す。
図3Aの縦軸は要求出力値であり、横軸は時間である。グラフ中のカーブは、アクセルペダルの非踏み込み状態から最大踏み込み位置まで徐々に操作した場合の要求出力値の時間変化を示している。
例えば、燃料の通貨換算走行距離F=X0(基準値)である時を基準状態とし、この時の要求閾値をT0とする。この場合、EV走行モード中に要求出力値がT0以上となった際にエンジン25が始動し、シリーズ走行モードに移行する。
つぎに、燃料の通貨換算走行距離F=X1(<基準値X0)である場合、すなわち通貨換算走行距離が基準値X0よりも短い場合、閾値設定部708は要求閾値をT1(>T0)とする。よって、通貨換算走行距離F=X0の場合と比べて要求出力値が高くならないとエンジン25は始動しない。つまり、燃料を使用した走行のコスト効率が基準状態時よりも低い状態にあるため、閾値設定部708は基準状態時よりもエンジン25を始動しにくくして燃料の消費を抑えるようにしている。
つづいて、燃料の通貨換算走行距離F=X2(>基準値X0)である場合、すなわち通貨換算走行距離が基準値X0よりも長い場合、閾値設定部708は要求閾値をT2(<T0)とする。よって、通貨換算走行距離F=X0の場合と比べて要求出力値が低くてもエンジン25が始動する。つまり、燃料を使用した走行のコスト効率が基準状態時よりも高い状態にあるため、閾値設定部708は基準状態時よりもエンジン25を始動しやすくして燃料の消費を許容する。
【0033】
また、閾値設定部708は、燃料の通貨換算走行距離Fが短いほど、すなわち1円で購入できる燃料によって走行可能な距離が短いほど、充電閾値(エンジン25を始動するバッテリ50の充電率)が小さくなるよう設定する。
【0034】
図3Bの縦軸はバッテリ50の充電率であり、横軸は時間である。グラフ中の線分は、満充電状態であったバッテリ50の充電率が走行時間の経過とともに徐々に低下している様子を示している。
例えば、燃料の通貨換算走行距離F=X0(基準値)である時を基準状態とし、この時の充電閾値をS0とする。この場合、EV走行モード中に充電率がS0以下となった際にエンジン25が始動し、シリーズ走行モードに移行する。
つぎに、燃料の通貨換算走行距離F=X1(<基準値X0)である場合、すなわち通貨換算走行距離が基準値X0よりも短い場合、閾値設定部708は充電閾値をS1(<S0)とする。よって、通貨換算走行距離F=X0の場合と比べて充電率がより低くならないとエンジン25は始動しない。つまり、燃料を使用した走行のコスト効率が基準状態時よりも低い状態にあるため、閾値設定部708は基準状態時よりもエンジン25を始動しにくくして燃料の消費を抑えるようにしている。
つづいて、燃料の通貨換算走行距離F=X2(>基準値X0)である場合、すなわち通貨換算走行距離が基準値X0よりも長い場合、閾値設定部708は充電閾値をS2(>S0)とする。よって、通貨換算走行距離F=X0の場合と比べて充電率が高い段階でエンジン25が始動する。つまり、燃料を使用した走行のコスト効率が基準状態時よりも高い状態にあるため、閾値設定部708は基準状態時よりもエンジン25を始動しやすくして燃料の消費を許容する。
【0035】
なお、それぞれの閾値の基準状態からの変更量は、例えば通貨換算走行距離Fの基準値X0との差分に比例させる。すなわち、通貨換算走行距離Fの基準値X0との差分が大きいほど各閾値の基準状態からの変更量を大きくする。
この他、通貨換算走行距離Fを変数とした閾値算出用の関数を設定し、この関数を用いてそれぞれの閾値を算出してもよい。
【0036】
また、閾値設定部708は、単位通貨当たりの走行可能距離(通貨換算走行距離、km/円)ではなく、単位距離当たりの必要通貨額(円/km)に基づいて要求閾値および充電閾値を設定するようにしてもよい。
この場合、単位距離当たりの必要通貨額が大きいほど、すなわち1km走行するのに必要な燃料費が高いほど、要求閾値を大きく、充電閾値は小さく設定する。
【0037】
図2の説明に戻り、駆動制御部710は、閾値設定部708で設定された要求閾値および充電閾値を用いてエンジン25の駆動を制御する。
より詳細には、駆動制御部710は、モータ23を駆動してEV走行モードで走行している際に、ドライバからの要求出力値が要求閾値以上となった場合には、モータ23と共にエンジン25を駆動してシリーズ走行モードに移行する。
また、EV走行モードで走行している際にバッテリ50の充電率が充電閾値以下となった場合には、エンジン25を始動してシリーズ走行モードに移行する。
この他駆動制御部710は、要求出力値算出部702で算出した要求出力値に基づいてインバータ24に供給する電力を制御したり、エンジン25の点火機構や燃料系統などを制御してモータ23およびエンジン25の駆動を制御する。
【0038】
図4は、ECU70によるシリーズ走行モードへの移行閾値設定処理の手順を示すフローチャートである。
図4の処理は、例えばハイブリッド車両10の起動時や走行中の所定時間ごとに実施する。
ECU70は、まず単価取得部706によって燃料の単価を取得する(ステップS300)。なお、既に燃料タンク40に蓄積されている燃料の単価は変動しないため、ステップS300の処理は少なくとも給油後に1度行えばよい。
つぎに、燃費・電費算出部704によってハイブリッド車両10の燃費を算出する(ステップS302)。燃費は、その時々の走行状態によって変動するため、ステップS302以降の処理は走行中所定時間ごとに実施するのが好ましい。
つづいて、閾値設定部708は、ステップS302で算出した燃費(単位燃料量当たりの走行距離、km/L)を、燃料の単価(円/L)で除して、通貨換算走行距離(km/円)を算出する(ステップS304)。
そして、算出した通貨換算走行距離を用いて要求閾値および充電閾値を設定して(ステップS306)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0039】
図5は、ECU70による駆動制御処理(シリーズ走行モードへの切り替え処理)を示すフローチャートである。
ECU70は、現在の走行モードがEV走行モードであるか否かを判断する(ステップS400)。EV走行モードでない場合は(ステップS400:No)、本フローチャートの適用範囲外であるためリターンする。
EV走行モードである場合は(ステップS400:Yes)、要求出力値算出部702がドライバのアクセル操作等に基づく要求出力値を算出する(ステップS402)。駆動制御部710は、要求出力値が要求閾値以上であるか否かを判断し、要求閾値以上である場合は(ステップS404:Yes)、ステップS410に移行して、エンジン25を始動させてシリーズ走行モードに移行させる(ステップS410)。
また、要求出力値が要求閾値以上でない場合(ステップS404:No)、駆動制御部710はBMU50Aから送信されたバッテリ50の充電率を参照し、充電率が第2の所定値以下か否かを判断する(ステップS408)。
充電率が第2の所定値以下の場合(ステップS408:Yes)、駆動制御部710は、エンジン25を始動させてシリーズ走行モードに移行させる(ステップS410)。また、充電率が第2の所定値以下ではない場合は(ステップS408:No)、そのままEV走行モードを継続して、ステップS400に戻って以降の処理をくり返す。
【0040】
以上説明したように、実施の形態1にかかるハイブリッド車両10の制御装置は、燃料の単位通貨当たりの走行可能距離(通貨換算走行距離)に基づいてエンジン25の始動タイミングを決定する要求閾値および充電閾値を設定するので、燃料の価格および燃費を考慮してエンジン25の始動タイミングを設定することができ、ハイブリッド車両10のエネルギーコスト効率を向上させる上で有利となる。
また、ハイブリッド車両10の制御装置は、燃料の通貨換算走行距離が短いほど要求閾値は大きくなるように、充電閾値は小さくなるように設定するので、燃料を用いた走行のコスト効率が悪い場合にはエンジン25の始動タイミングを遅らせることができ、燃料を効率的に使用する上で有利となる。
特に、燃料は日々の価格変動が大きく、通貨換算走行距離もその時々で変化する。燃料の通貨換算走行距離に基づいてエンジン25の始動タイミングを決定することにより、ハイブリッド車両10の走行性能とコスト効率とのバランスを向上させることができる。
【0041】
(実施の形態2)
実施の形態1では、シリーズ走行モードへの移行閾値の設定に燃料の通貨換算走行距離を反映させた。実施の形態2では、燃料の通貨換算走行距離に加えて、電力の通貨換算走行距離を反映させてシリーズ走行モードへの移行閾値を設定する。
なお、実施の形態2でもハイブリッド車両10の構成は実施の形態1と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0042】
図2に示すECU70の構成に関して、要求出力値算出部702および駆動制御部710の処理は実施の形態1と同様である。
一方、燃費・電費算出部704は、ハイブリッド車両10の燃費および電費、すなわち単位燃料量または単位電力量当たりの走行距離(km/Lまたはkm/kWh)の両方を算出する。詳細な処理は実施の形態1で説明した通りである。
また、単価取得部706は、燃料および電力の単位量当たりの価格(単価、円/Lまたは円/kWh)の両方を取得する。詳細な処理は実施の形態1で説明した通りである。
【0043】
閾値設定部708は、EV走行モードからシリーズ走行モードへの移行閾値(要求閾値および充電閾値)を、燃料の通貨換算走行距離Fに基づいて設定するとともに、燃料の通貨換算走行距離Fに基づいて設定された要求閾値および充電閾値を、電力の通貨換算走行距離Pに基づいて更に補正する。
なお、通貨換算走行距離の算出方法は実施の形態1と同様である。
本実施の形態では、燃料の通貨換算走行距離Fを基準値として、電力の通貨換算走行距離Pと燃料の通貨換算走行距離Fとの差分に基づいて要求閾値および充電閾値を補正する。
【0044】
より詳細には、電力の通貨換算走行距離Pが燃料の通貨換算走行距離Fよりも長い場合、すなわち1円で購入できる電力によって走行可能な距離の方が1円で購入できる燃料によって走行可能な距離よりも長い場合には、要求閾値をより大きい値へと補正する。
反対に、電力の通貨換算走行距離Pが燃料の通貨換算走行距離Fよりも短い場合、すなわち1円で購入できる電力によって走行可能な距離の方が1円で購入できる燃料によって走行可能な距離よりも短い場合には、要求閾値をより小さい値へと補正する。
【0045】
また、電力の通貨換算走行距離Pが燃料の通貨換算走行距離Fよりも長い場合、すなわち1円で購入できる電力によって走行可能な距離の方が1円で購入できる燃料によって走行可能な距離よりも長い場合には、充電閾値をより小さい値へと補正する。
反対に、電力の通貨換算走行距離Pが燃料の通貨換算走行距離Fよりも短い場合、すなわち1円で購入できる電力によって走行可能な距離の方が1円で購入できる燃料によって走行可能な距離よりも短い場合には、充電閾値をより大きい値へと補正する。
【0046】
図6は、実施の形態2におけるEV走行モードからシリーズ走行モードへの移行閾値を模式的に示す説明図であり、
図6Aは要求閾値、
図6Bは充電閾値を示す。
図6Aの縦軸は要求出力値であり、横軸は時間である。グラフ中のカーブは、アクセルペダルの非踏み込み状態から最大踏み込み位置まで徐々に操作した場合の要求出力値の時間変化を示している。
例えば、電力の通貨換算走行距離P=燃料の通貨換算走行距離Fである時を基準状態とし、この時の要求閾値をT0とする。この場合、EV走行モード中に要求出力値がT0以上となった際にエンジン25が始動し、シリーズ走行モードに移行する。
つぎに、電力の通貨換算走行距離P>燃料の通貨換算走行距離Fである場合、すなわち電力の通貨換算走行距離Pが燃料の通貨換算走行距離Fよりも長い場合、閾値設定部708は要求閾値をT1(>T0)とする。よって、基準状態の場合と比べて要求出力値が高くならないとエンジン25は始動しない。つまり、燃料を使用した走行のコスト効率が電力を使用した走行のコスト効率よりも低い状態にあるため、閾値設定部708は基準状態時よりもエンジン25を始動しにくくして燃料の消費を抑えるようにしている。
つづいて、電力の通貨換算走行距離P<燃料の通貨換算走行距離Fである場合、すなわち電力の通貨換算走行距離Pが燃料の通貨換算走行距離Fよりも短い場合、閾値設定部708は要求閾値をT2(<T0)とする。よって、基準状態と比べて要求出力値が低くてもエンジン25が始動する。つまり、燃料を使用した走行のコスト効率が電力を使用した走行のコスト効率よりも高い状態にあるため、閾値設定部708は基準状態時よりもエンジン25を始動しやすくして燃料の消費を許容する。
【0047】
また、
図6Bの縦軸はバッテリ50の充電率であり、横軸は時間である。グラフ中の線分は、満充電状態であったバッテリ50の充電率が走行時間の経過とともに徐々に低下している様子を示している。
例えば、電力の通貨換算走行距離P=燃料の通貨換算走行距離Fである時を基準状態とし、この時の充電閾値をS0とする。この場合、EV走行モード中に充電率がS0以下となった際にエンジン25が始動し、シリーズ走行モードに移行する。
つぎに、電力の通貨換算走行距離P>燃料の通貨換算走行距離Fである場合、すなわち電力の通貨換算走行距離Pが燃料の通貨換算走行距離Fよりも長い場合、閾値設定部708は充電閾値をS1(<S0)とする。よって、基準状態と比べて充電率がより低くならないとエンジン25は始動しない。つまり、燃料を使用した走行のコスト効率が電力を使用した走行のコスト効率よりも低い状態にあるため、閾値設定部708は基準状態時よりもエンジン25を始動しにくくして燃料の消費を抑えるようにしている。
つづいて、電力の通貨換算走行距離P<燃料の通貨換算走行距離Fである場合、すなわち電力の通貨換算走行距離Pが燃料の通貨換算走行距離Fよりも短い場合、閾値設定部708は充電閾値をS2(>S0)とする。よって、基準状態と比べて充電率が高い段階でエンジン25が始動する。つまり、燃料を使用した走行のコスト効率が電力を使用した走行のコスト効率よりも高い状態にあるため、閾値設定部708は基準状態時よりもエンジン25を始動しやすくして燃料の消費を許容する。
【0048】
なお、それぞれの閾値の基準状態からの補正量は、例えば電力の通貨換算走行距離Pと燃料の通貨換算走行距離Fとの差分に比例させる。すなわち、電力の通貨換算走行距離Pと燃料の通貨換算走行距離Fとの差分が大きいほど各閾値の基準状態からの補正量を大きくする。
この他、電力の通貨換算走行距離Pおよび燃料の通貨換算走行距離Fを変数とした閾値算出用の2変数関数を設定し、この関数を用いてそれぞれの閾値を算出してもよい。
【0049】
図7は、実施の形態2におけるシリーズ走行モードへの移行閾値設定処理の手順を示すフローチャートである。
図7の処理は、例えばハイブリッド車両10の起動時や走行中の所定時間ごとに実施する。
ECU70は、まず単価取得部706によって燃料および電力の単価を取得する(ステップS600)。なお、既に燃料タンク40やバッテリ50に蓄積されている燃料や電力の単価は変動しないため、ステップS600の処理は少なくとも給油後や充電後に1度行えばよい。
つぎに、燃費・電費算出部704によってハイブリッド車両10の燃費および電費を算出する(ステップS602)。燃費および電費は、その時々の走行状態によって変動するため、ステップS602以降の処理は走行中所定時間ごとに実施するのが好ましい。
つづいて、閾値設定部708は、ステップS602で算出した燃費(単位燃料量当たりの走行距離、km/L)を燃料の単価(円/L)で除して燃料の通貨換算走行距離F(km/円)を、電費(単位電力量当たりの走行距離、km/kWh)を電力の単価(円/kWh)で除して電力の通貨換算走行距離P(km/円)を、それぞれ算出する(ステップS604)。
そして、算出した燃料の通貨換算走行距離Fおよび電力の通貨換算走行距離Pを用いて要求閾値および充電閾値を設定して(ステップS606)、本フローチャートによる処理を終了する。
なお、その後の駆動制御処理については、実施の形態1(
図5)と同様である。
【0050】
以上説明したように、実施の形態2にかかるハイブリッド車両10の制御装置は、電力の単位通貨当たりの走行可能距離に基づいて要求閾値および充電閾値を補正するので、燃料に加えて電力の使用効率を考慮してエンジン25の始動タイミングを設定することができ、ハイブリッド車両10のエネルギーコスト効率を更に向上させる上で有利となる。
特に、ハイブリッド車両10は、燃料と電力の2種類のエネルギーを使い分けることができるが、これらを実際の単価に基づいて使い分けることにより、ハイブリッド車両10のエネルギーコスト効率を最大化することができる。
【0051】
なお、本実施の形態では要求閾値や充電閾値がシリーズ走行モードへの移行閾値であることとしたが、パラレル走行モードへの移行閾値であってもよい。
この場合、要求出力値が要求閾値以上となった場合には、モータ23とともにエンジン25の駆動力を車軸に伝達してより大きい出力を得られるようにする。
また、バッテリ50の充電率が充電閾値以下となった場合には、エンジン25の駆動力を車軸に伝達するとともに、エンジン25による駆動力の増加分モータ23の出力を低下させて電力の消費を抑える。また、エンジン25の駆動力の余剰分で発電機31を駆動させてバッテリ50を充電させるようにしてもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、エンジン25より発電機31を駆動させ発生した電力で走行する際の燃費(発電電力に換算した燃費)を算出するものとしたが、上述のように本発明をパラレル走行モードへの移行閾値に適用する場合には、エンジン25により駆動輪を回転させる場合の燃費を算出するようにしてもよい。