(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のTCOCXOは、図
9に示すように、TCXO及びヒータを備える恒温槽ブロックアセンブリ50を搭載した支持基板51を、密封ケース52内に封入し、ヒータにより加熱することで密封ケース52内を恒温としてTCXOの周囲温度を一定に保つ構造になっている。
【0009】
このTCOCXOでは、TCXO及びヒータを備える恒温槽ブロックアセンブリ50は、密封ケース52の底部を構成するベース53ではなく、ベース53から離間した状態で支持された支持基板51に搭載されている。これは、ベース53に直接TCXO及びヒータを搭載すると、ヒータからの熱がベース53に伝わることで外部へ放熱しやすくなるので、そのような放熱を抑えて密封ケース52内の温度を維持するためである。
【0010】
近年、例えば、上記フェムトセルといった小型通信システムの発振器などでは、更なる小型化が求められている。
【0011】
上記TCOCXOにおいては、支持基板51をベース53から離間させて支持する金属リード54は、熱伝導率が高く、密封ケース52を挿通して密封ケース52外へ延びているので、この金属リード54を介して伝熱する熱量が大きく、周囲温度の影響を受け易く、小型化を図ろうとすると、TCOCXO自体の熱容量も小さくなるために、一層周囲温度の影響を受け易くなる。
【0012】
また、金属リード54は、支持基板51を安定に支持するために、支持基板51の周縁部に配置され、このように支持基板51の周縁部に金属リード54を配置するためのスペースが必要となって平面積が大きくなり、その分、小型化を阻害することになる。
【0013】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであって、周囲温度の影響を受けにくく、TCXOよりも周波数安定度が高く、OCXOよりも小型の圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0015】
すなわち、本発明の圧電発振器は、ベース基板と、前記ベース基板上に配置される複数のスペーサと、前記複数のスペーサによって、前記ベース基板との間に空間を形成した状態で前記スペーサに支持されるパッケージ体と、前記ベース基板に接合されて、前記複数のスペーサ及び前記パッケージ体を収納する収納空間を、前記ベース基板と共に構成するカバーケースとを備え、前記パッケージ体は、温度補償型圧電発振器の圧電振動子及び集積回路素子を収容すると共に、ヒータ部を収容しており、前記ベース基板、前記複数のスペーサ及び前記カバーケースが、前記パッケージ体よりも熱伝導率の低い材料で構成され、前記パッケージ体が、セラミック材料で構成され、前記ベース基板がガラスエポキシ樹脂基板であり、前記スペーサが、ガラスエポキシ樹脂で構成され、前記カバーケースが、樹脂材料で構成さ
れ、前記パッケージ体は、前記ヒータ部を収容した外形が直方体状のヒータパッケージ上に、前記圧電振動子及び前記集積回路素子を収容した温度補償型圧電発振器の外形が直方体状のパッケージが、配置されて構成され、前記ヒータパッケージが、前記複数のスペーサを介して前記ベース基板上に配置されている。
【0016】
前記温度補償型圧電発振器は、温度補償型水晶発振器であるのが好ましい。
【0017】
本発明によれば、温度補償型圧電発振器の圧電振動子及び集積回路素子を収容すると共に、ヒータ部を収容するパッケージ体を、該パッケージ体よりも熱伝導率の低い材料からなる複数のスペーサによって、ベース基板との間に空間を形成した状態で支持するので、パッケージ体を、ベース基板から熱的に絶縁した状態にすることができる。更に、パッケージ体を収納する収納空間を区画形成するベース基板及びカバーケースは、パッケージ体よりも熱伝導率の低い材料で構成されるので、パッケージ体のヒータ部の熱が、ベース基板及びカバーケースを介して放熱するのを抑制することができると共に、周囲温度の変動よる収納空間の温度の変動を抑制することができる。また、パッケージ体は、ベース基板等に比べて熱伝導率の高い材料で構成されるので、ヒータ部によって温度補償型圧電発振器を効率的に加熱することができる。
【0018】
このように温度補償型圧電発振器及びヒータ部を収容したパッケージ体を、収納空間内に熱的に絶縁された状態で配置することができるので、ヒータ部で加熱される高温の温度補償型圧電発振器の温度が、周囲温度の影響を受けて変動するのを抑制することができ、温度補償型圧電発振器単体に比べて、周波数温度特性を向上させることができる。
【0019】
また、上記特許文献1のように、密封ケースを挿通して該密封ケース外へ延びる熱伝導率が高い金属リードによって、TCXO及びヒータを、ベースから離間させた状態で支持する従来例に比べて、金属リードが不要となって周囲温度の影響を受けにくくなるので、小型化が容易となる。
更に、パッケージ体が、セラミック材料で構成され、該パッケージ体を、ベース基板との間に空間を形成した状態で支持するスペーサ、及び、前記ベース基板が、セラミック材料よりも熱伝導率が低いガラスエポキシ樹脂で構成されるので、パッケージ体のヒータ部の熱が、スペーサ及びベース基板を介して放熱するのを抑制することができると共に、周囲の温度変動によるパッケージ体の温度変動を抑制することができる。
また、パッケージ体を収納する収納空間を、ベース基板と共に区画形成するカバーケースは、パッケージ体よりも熱伝導率の低い樹脂材料で構成されるので、収納空間を外部から熱的に絶縁した状態として温度変動を抑制することができる。
更に、ヒータパッケージ上に、温度補償型圧電発振器のパッケージが配置されるので、ヒータパッケージのヒータ部によって、温度補償型圧電発振器を効率的に加熱することができる。
【0020】
本発明の他の実施態様では、前記ヒータ部が、ヒータ及び温度センサを有し、前記温度センサの検出温度に基づいて、前記ヒータの発熱を制御する。
【0021】
この実施態様によれば、温度センサによってパッケージ体の温度を検出し、該パッケージ体の温度補償型圧電発振器が一定温度になるようにヒータ部のヒータによって加熱することができる。また、上記のようにパッケージ体のヒータ部の熱が、ベース基板及びカバーケースを介して放熱するのを抑制することができるので、温度補償型圧電発振器を一定温度に維持するためのヒータの発熱量、すなわち、ヒータに供給する電力を低減することができ、省電力を図ることができる。
【0024】
本発明の他の実施態様では、前記ヒータパッケージと、前記温度補償型圧電発振器のパッケージの金属製のリッドとの間に、前記ヒータパッケージ側の熱を前記リッドへ伝導させる伝熱経路を有する。
【0025】
この実施態様によれば、温度補償型圧電発振器のパッケージの上面側のリッドは、伝熱経路を介して伝達されるヒータパッケージのヒータ部の熱によって加熱される。したがって、ヒータパッケージ上に搭載される温度補償型圧電発振器のパッケージは、ヒータパッケージのヒータ部によって、その下面側から加熱される一方、上面側のリッドも加熱される。このように温度補償型圧電発振器のパッケージを、その上下両面側から加熱することによって、温度補償型圧電発振器のパッケージの温度の均一化を図ることができる。これによって、該パッケージに収容されている温度補償型圧電発振器の圧電振動子と、該圧電振動子の温度を検出して発振周波数の温度補償を行う集積回路素子との温度の均一化を図ることができる。
【0026】
本発明の一つの実施態様では、前記スペーサは、前記パッケージ体と前記ベース基板とを電気的に接続する導電路を有し、前記ベース基板は、その上面に前記スペーサの前記導電路に接続される搭載用電極を有すると共に、その下面に前記搭載用電極に接続される表面実装用の外部接続端子を有する。
【0027】
この実施態様によれば、ベース基板と、スペーサに支持されるパッケージ体とが、スペーサの導電路を介して電気的に接続され、ベース基板は、表面実装用の外部接続端子を有しているので、当該圧電発振器を、配線基板等に表面実装することができ、金属リードを有して挿入実装される従来例に比べて、薄型化を図ることができる。
【0028】
本発明の他の実施態様では、前記複数のスペーサが、前記パッケー
ジ体の直下に配置されている。
【0029】
この実施態様によれば、複数の各スペーサ3を、パッケージ体の真下に配置することができるので、金属リードで支持基板を支持する従来例のように、支持基板の周縁部に金属リードを配置するための水平方向のスペースを必要とせず、小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように本発明によれば、パッケージ体が収納される収納空間は、該パッケージ体よりも熱伝導率の低い材料からなるベース基板及びカバーケースによって区画形成されるので、収納空間の温度が、周囲温度の影響を受けて変動するのを抑制することができる。更に、前記パッケージ体は、該パッケージ体よりも熱伝導率の低い材料からなる複数のスペーサによって、前記ベース基板との間に空間を形成した状態で支持されるので、パッケージ体を、ベース基板から熱的に絶縁した状態とすることができる。
【0035】
このように温度補償型圧電発振器の圧電振動子及び集積回路素子を収容すると共に、ヒータ部を収容する前記パッケージ体を、収納空間内に熱的に絶縁された状態で配置することができるので、ヒータ部で加熱される高温の温度補償型圧電発振器の温度が、周囲温度の影響を受けて変動するのを抑制することができ、温度補償型圧電発振器単体に比べて、周波数温度特性を向上させることができる。
【0036】
また、密封ケースを挿通して該密封ケース外へ延びる熱伝導率の高い金属リードによって、TCXO及びヒータを、ベースから離間させた状態で支持する従来例に比べて、金属リードが不要となって周囲温度の影響を受けにくくなるので、容易に小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、圧電発振器として水晶発振器に適用して説明する。
【0039】
図1は、本発明の一実施形態に係る水晶発振器の概略断面図である。
【0040】
この実施形態の水晶発振器1は、ベース基板2と、このベース基板2上に配置される複数、この例では、2個のスペーサ3と、これらスペーサ3によってベース基板2との間に空間31を形成した状態で支持されるパッケージ体4と、前記ベース基板2と共に、前記スペーサ3及び前記パッケージ体4を収納する収納空間5を区画形成するカバーケース6とを備えている。
【0041】
パッケージ体4は、ヒータ部としてのヒータIC7を収容したヒータパッケージ8上に、温度補償型水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)のパッケージ9が配置されて構成される。
【0042】
すなわち、パッケージ体4は、ヒータパッケージ8とTCXOのパッケージ9とを二段に重ねた構成となっている。
【0043】
この水晶発振器1は、配線基板等へ表面実装する表面実装型の水晶発振器であり、ベース基板2の底面には、後述のように実装用端子(図示せず)が設けられている。このベース基板2の上面の外周部に、凹部を有するカバーケース6の開口端が接合されて、密閉された上記収納空間5が構成され、ベース基板2とカバーケース6とによって、絶縁性の容器が形成される。
【0044】
カバーケース6は、収納空間5が、周囲温度の影響を受けないように、熱伝導率の低い絶縁性材料、例えば、樹脂材料から構成される。
【0045】
ベース基板2、各スペーサ3、ヒータパッケージ8及びTCXOのパッケージ9は、導電性接合材、例えば、半田(図示せず)によって接合されて積層される。
【0046】
ヒータパッケージ8は、内部に矩形の凹部が形成されており、その凹部の開口部が下側になるように配置される。ヒータパッケージ8の凹部の上面には、ヒータ及び温度センサ等を内蔵したヒータIC7が搭載される。このヒータIC7のIC端子は、ボンディングワイヤ13によってヒータパッケージ8の素子用電極に接続される。ヒータパッケージ8の凹部には、ヒータIC7を覆うように、エポキシ樹脂等のモールド樹脂14が充填される。ヒータパッケージ8のヒータIC7は、後述のように、ヒータパッケージ8上に搭載されるTCXOのパッケージ9の温度が一定温度になるように加熱する。
【0047】
TCXOは、基本的に従来例と同様であって、そのパッケージ9は、水晶振動子10及び集積回路素子としてのTCXOIC11が収容される凹部12を有するパッケージ本体9
1と、前記凹部12を気密に封止するリッド9
2とを備えている。TCXOIC11は、温度センサ、水晶振動子10に接続される発振回路、及び、前記温度センサの検出温度に基づいて、発振周波数の温度補償を行う温度補償回路等を内蔵している。
【0048】
TCXOのパッケージ9内の水晶振動子10は、例えば、略矩形のATカットの水晶片からなり、その両方の主面に励振電極をそれぞれ有し、水晶片の一端部両側に向けて励振電極から引出電極が延出している。引出電極が延出した水晶片の一端部両側は、パッケージ9の底面に設けられた保持電極に導電性接着剤によって固着される。
【0049】
パッケージ9の凹部12の底面には、TCXOIC11のIC端子に対応して、素子用電極が設けられており、TCXOIC11のIC端子は、フリップチップボンディングによって凹部12の底面の素子用電極に接続される。なお、TCXOIC11とパッケージ9との電気的接続は、フリップチップボンディングに限らず、ワイヤボンディングなどであってもよい。
【0050】
以下、水晶発振器1の各構成部材について更に詳細に説明する。
【0051】
図2は、ベース基板2を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。(a)の平面図には、ベース基板2上に搭載される2個のスペーサ3の搭載位置を仮想線で示している。
【0052】
ベース基板2は、略矩形の平板状であり、当該ベース基板2を介して収納空間5外への放熱を抑制するために、熱伝導率の低い絶縁性材料からなる基板、例えば、ガラスエポキシ樹脂基板などの樹脂基板である。ベース基板2は、ガラスエポキシ樹脂基板以外の他の樹脂基板、例えば、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板などであってもよい。
【0053】
このベース基板2の底面の4隅には、
図2(c)に示すように、当該水晶発振器1を配線基板等へ表面実装するための複数、この例では4個の略矩形の外部接続端子としての実装用端子15が設けられている。この実施形態では、実装用端子15として、電源用の端子(Vcc)と、接地用の端子(GND)と、発振出力用の端子(OUT)と、周波数制御用の端子(Vcont)とを備えている。
【0054】
ベース基板2の両側面には、上下に延びる内方へ窪んだ2個のキャスタレーション電極16が、それぞれ形成されている。各側面にそれぞれ2個ずつ形成された合計4個の各キャスタレーション電極16は、
図2(c)に示すように、ベース基板2の底面の4個の各実装用端子15に個別に接続される。
【0055】
ベース基板2の上面には、該上面に搭載される2個のスペーサ3の底面と半田接合するための矩形の搭載用電極17が、
図2(a)に示すように、4個形成されており、2個の搭載用電極17が、1個のスペーサ3にそれぞれ対応する。4個の矩形の搭載用電極17は、導電パターン18を介してベース基板2の両側面の上記各キャスタレーション電極16に個別に接続される。
【0056】
これによって、ベース基板2の底面の4個の各実装用端子15は、各キャスタレーション電極16を介して、ベース基板2の上面の4個の搭載用電極17に電気的に接続される。なお、上述した実装用端子15、キャスタレーション電極16、搭載用電極17、導電パターン18は、銅等のメッキにより形成され、例えば、銅メッキの上に、ニッケルメッキ及び金メッキが形成される。
【0057】
図3は、ベース基板2上に搭載されるスペーサ3を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の左方から見た正面図、(c)は底面図である。
【0058】
スペーサ3は、直方体状であって、2個のスペーサ3によってパッケージ体4をベース基板2から離間させて空間31を形成した状態で支持すると共に、ベース基板2とパッケージ体4とを電気的に接続する。
【0059】
スペーサ3は、パッケージ体4をベース基板2から熱的に絶縁するために、ヒータパッケージ8よりも熱伝導率の低い絶縁性材料、例えば、ガラスエポキシ樹脂などの樹脂材料から構成される。
【0060】
スペーサ3の底面には、
図3(c)に示すように、上記ベース基板2の2個の搭載用電極17にそれぞれ半田接合するための2個の矩形のランド19が形成される。各ランド19は、底面の外周縁から間隔を空けた内方位置に比較的小さく形成されており、銅等のメッキが施されており、例えば、銅メッキの上に、ニッケルメッキ及び金メッキが形成される。
【0061】
スペーサ3の上面には、該上面に搭載されるヒータパッケージ8の底面と半田接合するための2個の矩形のランド20が、
図3(a)に示すように形成される。各ランド20は、上面の外周縁から間隔を空けた内方位置に形成されており、底面の各ランド19と同様に銅等のメッキが施されている。
【0062】
この実施形態のスペーサ3は、底面の各ランド19と上面の各ランド20とをそれぞれ電気的に接続するための導電路としての2個のスルーホール21が、スペーサ3の周壁である正面側の端面に平面視半円形の円弧状に形成される。
【0063】
各スルーホール21は、スペーサ3を構成するガラスエポキシ樹脂に比べて熱伝導率が高い銅などの金属メッキ層が、内面に形成されたメッキスルーホールである。かかるメッキスルーホールでは、熱伝導率の高い金属メッキ層を介してスペーサ3上に搭載されるヒータパッケージ8からの熱が放熱される。
【0064】
この実施形態のスルーホール21は、スペーサ3の内部を上下に貫通する平面視円形のスルーホールではなく、上記のように、スペーサ3の端面に形成した上下方向に延びる平面視半円形の円弧状のスルーホール21としている。これによって、放熱面となる金属メッキ層の面積を、平面視円形のスルーホールに比べて1/2として放熱を抑制するようにしている。
【0065】
各スルーホール21は、
図3(c)に示すように、導電パターン22を介して底面の各ランド19に接続される一方、
図3(a)に示すように、導電パターン23を介して上面の各ランド20に接続される。
【0066】
2個の各スペーサ3は、
図2(a)の仮想線で示すように、ベース基板2の各搭載用電極17と、底面の各ランド19とが対応するようにベース基板2上に、互いに平行に間隔をあけて配置され、半田によってそれぞれ接合される。
【0067】
一般に半田による接合では、接合強度を確保するなどの理由から、側面に半田が這い上がってフィレットを形成するように接合する。
【0068】
この実施形態では、各スペーサ3の底面の各ランド19は、上記のように各スペーサ3の外周縁の内方に位置するように形成されているので、各スペーサ3を、
図2(a)に示すように、ベース基板2の各搭載用電極17が各スペーサ3の各ランド19に対応するように配置したときに、半田接合部分となる搭載用電極17とランド19とは、スペーサ3の底面の外周縁の内方、すなわち、スペーサ3の外周縁から離間した位置となる。
【0069】
これによって、各スペーサ3の各ランド19を、ベース基板2の各搭載用電極17に対応するように配置して比較的少量の半田によって、各搭載用電極17と各ランド19とを接合すると、ベース基板2の各搭載用電極17と各スペーサ3の各ランド19との間のみに半田が存在し、スペーサ3の底面からはみ出してスペーサ3の外周面に半田が這い上がってフィレットを形成することがない。
【0070】
このようにベース基板2の各搭載用電極17と、各スペーサ3の各ランド19との半田接合においては、各搭載用電極17と各ランド19との間のみに半田が存在し、スペーサ3の外周面に半田が這い上がってフィレットを形成しないようにしているので、ヒータパッケージ8からの熱が、スペーサ3の外周面の半田フィレットを介して放熱するといったことがない。
【0071】
また、各スペーサ3の各ランド19を、ベース基板2の各搭載用電極17に対応するように配置した状態では、ベース基板2の各搭載用電極17の各導電パターン18と、各スペーサ3の各ランド19の各導電パターン22の引出し方向が逆向きとなるようにしている。すなわち、ベース基板2の各搭載用電極17の各導電パターン18は、
図2(a)に示すように、搭載される各スペーサ3の底面の2つの短辺の内、近接する短辺に近づくように上方(または下方)へ引出されるのに対して、各スペーサ3の各ランド19の導電パターン22は、各スペーサ3の底面の近接する前記短辺から離間するように下方(または上方)へ引出されている。
【0072】
このように、導電パターンを互いに逆方向へ引出すことによって、同一方向へ引出すのに比べて、半田が導電パターンに沿って広がるのを抑制している。
【0073】
本実施形態では、平面視半円形の円弧状のスルーホール21を、スペーサ3の端面に形成しているが、本発明の他の実施形態として、例えば、
図4の平面図に示されるように、平面視矩形のスペーサ3aの角部に、上下方向に延びる平面視が1/4円の円弧状のスルーホール21aを形成して、金属メッキ層の面積を更に少なくして放熱を一層低減するようにしてもよい。本実施形態ではスルーホール21aに導電パターン23aを介してランド20に接続している。
【0074】
図5は、2個のスペーサ3によって支持されるヒータパッケージ8を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【0075】
ヒータパッケージ8は、
図1及び
図2(a)に示される2個のスペーサ3に跨るように、両スペーサ3上及びその間の領域に位置する大きさ、すなわち、ベース基板2に比べて小さな平面積を有する略直方体状に形成される。ヒータパッケージ8は、その上に搭載されるTCXOのパッケージ9を効率的に加熱できるように、スペーサ3に比べて熱伝導率の高い絶縁性材料、例えば、アルミナ等のセラミック材料によって構成される。
【0076】
ヒータパッケージ8の底面の4隅には、2個の各スペーサ3の上面の各ランド20にそれぞれ半田接合される4個の接続用電極23が、
図5(c)に示されるようにそれぞれ形成されている。
【0077】
4個の各接続用電極23は、各スペーサ3を介して
図2(c)に示される電源用(Vcc)、接地用(GND)、発振出力用(OUT)、及び、周波数制御用(Vcont)の各実装用端子15に個別に接続される。この内、電源用(Vcc)と接地用(GND)の各接続用電極23は、ヒータパッケージ8の内部配線を介して、
図1に示されるヒータIC7のIC端子に対応する素子用電極(図示せず)に接続される。
【0078】
ヒータパッケージ8の長手方向(
図5の左右方向)の両端部は、ベース基板2上の2個の各スペーサ3上に納まるサイズであり、各スペーサ3上に、ヒータパッケージ8を跨るように配置した状態では、
図3(a)に示される各スペーサ3の各ランド20は、各スペーサ3の上面及びヒータパッケージ8の底面の外周縁から間隔を空けた内方に位置する。
【0079】
各スペーサ3の各ランド20とヒータパッケージ8の接続用電極23との間の半田接合は、上記ベース基板2の各搭載用電極17と、スペーサ3の底面の各ランド19との半田接合と同様に、比較的少量の半田によって接合し、各スペーサ3の各ランド20とヒータパッケージ8の接続用電極23との間のみに半田が存在し、スペーサ3とヒータパッケージ8の間からはみ出してスペーサ3やヒータパッケージ8の外周面に半田が這い上がってフィレットを形成しないようにしている。
【0080】
これによって、ヒータパッケージ8からの熱が、半田フィレットを介して放熱するといったことがない。
【0081】
ヒータパッケージ8は、
図1及び
図5(c)に示すように、ヒータIC7を収容する底面側に開口した凹部24を有している。この凹部24は、ヒータIC7が搭載される矩形の第1凹部24
1と、その両側の第1凹部24
1よりも浅い第2凹部24
2とを備えており、第2凹部24
2には、図示しない前記素子用電極が形成されている。
【0082】
ヒータIC7は、少なくとも外部から電源が供給される電源用(Vcc)のIC端子と、接地用(GND)のIC端子とを備えている。ヒータIC7は、第1凹部24
1に搭載されて、各IC端子が第2凹部24
2の対応する素子用電極にワイヤボンディングされ、ヒータIC7を覆うようにモールド樹脂14で封止される。
【0083】
なお、ヒータIC7とヒータパッケージ8との電気的接続は、ワイヤボンディングに限らず、フリップチップボンディングなどでもよい。
【0084】
ヒータIC7は、ヒータと温度センサ等を内蔵し、温度センサの検出温度に基づいて、ヒータの発熱を制御する。すなわち、ヒータIC7は、ヒータパッケージ8上に配置されるTCXOのパッケージ9の温度を温度センサで検出し、TCXOのパッケージ9の温度が一定温度になるように制御する。温度センサの検出温度に基づいて、ヒータの発熱を制御するヒータIC7の構成は、基本的に従来と同様であり、例えば、次のように構成される。
【0085】
すなわち、ヒータIC7のヒータは、例えば、パワートランジスタであり、温度センサは、例えば、ダイオードである。
【0086】
ヒータIC7のヒータとして機能するパワートランジスタは、当該パワートランジスタを流れる電流量に応じて、発熱量が変化する。ヒータIC7の温度センサとして機能するダイオードは、温度に応じて電圧値が変化し、具体的には、温度の上昇に対して電圧値が減少する。
【0087】
ヒータIC7では、ダイオードの電圧値に基づいてパワートランジスタの発熱量を制御することができる。
【0088】
この実施形態のヒータIC7では、温度センサで検出される検出温度が、設定温度、例えば、85℃よりも低い場合は、パワートランジスタがオンして発熱し、検出温度が上昇すると、パワートランジスタの発熱量が減少し、検出温度が設定温度よりも高くなると、パワートランジスタがオフして発熱を停止する。
【0089】
すなわち、周囲の温度が変化しても、ヒータパッケージ8のヒータを制御することによって、TCXOのパッケージ9の温度を一定の設定温度にして、周波数の安定度を向上させる。
【0090】
ヒータパッケージ8の上面の4隅には、
図5(a)に示すように、上面に搭載されるTCXOのパッケージ9の底面と半田接合するための4個の搭載用電極25がそれぞれ形成される。
【0091】
ヒータパッケージ8の平面視矩形の4つの角部には、上下に延びる内方に窪んだキャスタレーション電極26がそれぞれ形成される。各キャスタレーション電極26の下端は、ヒータパッケージ8の底面の各接続用電極23に個別に接続される一方、各キャスタレーション電極26の上端は、ヒータパッケージ8の上面の各搭載用電極25に個別に接続される。
【0092】
すなわち、ヒータパッケージ8の底面の電源用(Vcc)、接地用(GND)、発振出力用(OUT)、及び、周波数制御用(Vcont)に対応する4個の各接続用電極23は、ヒータパッケージ8の上面の4個の各搭載用電極25にそれぞれ電気的に接続される。
【0093】
図6は、ヒータパッケージ8上に搭載されるTCXOのパッケージ9を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【0094】
TCXOのパッケージ9は、ヒータパッケージ8と略同じ平面積の直方体状に形成される。このパッケージ9は、
図1に示すように、水晶振動子10及びTCXOIC11が収容される凹部12を有するパッケージ本体9
1とリッド9
2とを備えており、リッド9
2が、該リッド9
2の外周縁に沿った環状の接合材9
3を用いてパッケージ本体9
1に接合される。
【0095】
TCXOのパッケージ9は、ヒータパッケージ8によって効率的に加熱されるように、ヒータパッケージ8と同様に熱伝導率の高い絶縁性材料で構成される。具体的には、パッケージ9のパッケージ本体9
1は、アルミナ等のセラミック材料から構成され、リッド9
2及び接合材9
3は、コバール等の金属材料からなる。
【0096】
TCXOのパッケージ9の底面の4隅には、
図6(c)に示すように、ヒータパッケージ8の上面の4個の搭載用電極25にそれぞれ半田接合するための4個の接続用電極27がそれぞれ形成される。すなわち、TCXOのパッケージ9の底面の4個の接続用電極27は、ヒータパッケージ8及び各スペーサ3を介して
図2(c)に示されるベース基板2底面の電源用(Vcc)、接地用(GND)、発振出力用(OUT)、及び、周波数制御用(Vcont)の各実装用端子15にそれぞれ電気的に接続される。
【0097】
平面視矩形状のパッケージ9の4つの角部の下部には、上下に延びる内方へ窪んだキャスタレーション電極28がそれぞれ形成され、各キャスタレーション電極28は、
図6(c)に示すように、パッケージ9の底面の4個の各接続用電極27に個別に接続される。
【0098】
パッケージ9の底面の4個の各接続用電極27は、各キャスタレーション電極28を介して、パッケージ9の内部配線に接続される。内部配線は、上記
図1に示されるTCXOIC11のIC端子に対応する素子用電極及び水晶振動子10が保持される保持電極に接続される。
【0099】
以上の構成を有する水晶発振器1では、ヒータパッケージ8とTCXOパッケージ9との間では、熱伝導を効率的に行えるように、両パッケージ8,9は、熱伝導率が比較的高いセラミック材料によって構成される一方、ヒータパッケージ8の熱が、TCXOのパッケージ9以外へ放熱するのを抑制し、ヒータパッケージ8及びTCXOのパッケージ9が、周囲の温度の影響を受けないように、スペーサ3、ベース基板2、及び、カバーケース6は、熱伝導率の低いガラスエポキシ樹脂等の樹脂材料によって構成される。
【0100】
これによって、ヒータパッケージ8によってTCXOのパッケージ9を効率的に加熱することができる一方、ヒータパッケージ8の熱が、スペーサ3やベース基板2等を介して放熱するのが抑制される。特に、収納空間5を区画形成する樹脂材料からなるベース基板2及びカバーケース6によって、収納空間5を、外部から熱的に絶縁された状態にすることができ、放熱を防ぎ、周囲温度の変動による収納空間5内の温度の変動を小さくすることができる。すなわち、TCXOの温度変動を小さくすることができ、TCXO単体に比べて周波数温度特性を向上させることができる。更に、TCXOを一定温度に加熱するヒータパッケージ8の熱が、スペーサ3やベース基板2等を介して放熱するのが抑制されるので、TCXOを一定温度に維持するためにヒータへ供給する電力を低減して省電力を図ることができる。
【0101】
また、TCXOのパッケージ9を搭載したヒータパッケージ8は、熱伝導率が低いガラスエポキシ樹脂からなるスペーサ3によってベース基板2から離間した状態で支持されるので、上記特許文献1のように、密封ケースを挿通して該密封ケース外へ延びる熱伝導率の高い金属リードによって、TCXO及びヒータを、ベースから離間させた状態で支持する従来例に比べて、金属リードが不要となって周囲温度の影響を受けにくくなるので、ベース基板2とヒータパッケージ8との離間距離を短くして小型化を図ることができる。
【0102】
更に、水晶発振器1は、表面実装されるので、金属リードを挿入して実装する従来例に比べて薄型化を図ることができる。
【0103】
また、各スペーサ3は、ヒータパッケージ8の真下に配置することができるので、上記特許文献1の金属リードのように支持基板の周縁部に金属リードを配置する必要がなく、その分、水平方向のスペースを小さくして小型化することができる。
【0104】
また、TCXO及びヒータパッケージ8では、それぞれTXOCIC11及びヒータIC7のように、1つのチップに集積しているので、水晶発振器1の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0105】
また、特許文献1のように、金属リードを、支持基板や実装基板と半田付けする必要がなく、製造コストの低減を図ることができる。
【0106】
以上にように本実施形態では、TCXOの温度変動を小さくして、TCXO単体に比べて周波数温度特性を向上させることができると共に、小型化を図ることができる。
【0107】
図7は、本発明の他の実施形態の
図1に対応する概略断面図であり、対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0108】
上記実施形態では、TCXOのパッケージ9は、その下面側は、ヒータパッケージ8のヒータIC7によって加熱される一方、その上面側は、カバーケース6に臨んでいるために、上面側は外気の影響を受け易い。このため、TCXOのパッケージ9の下面側であるパッケージ本体9
1の底面に搭載されるTCXOIC11と、パッケージ9の上面側であるリッド9
2の下方で片持ち支持される水晶振動子10との間で温度差が生じ易い。TCXOでは、水晶振動子10の温度を、TCXOIC11内蔵の温度センサで検出し、温度による周波数変化を補正するので、水晶振動子10とTCXOIC11との温度差は、可及的に小さくする必要がある。
【0109】
そこで、この実施形態では、TCXOIC11と水晶振動子10との間の温度差が生じないようにするために、次のように構成している。
【0110】
すなわち、ヒータパッケージ8aの凹部のヒータIC7が搭載される搭載面の配線パターンが存在しない部分に、熱伝導率の高い材料、例えば、タングステンやモリブデン等のメタライズ層などからなる熱伝導層の平板状パターンであるベタパターン29が形成されると共に、該ベタパターン29に一端側に連続して上方へ延びる複数のビアホール30が形成される。各ビアホール30は、熱伝導率の高い材料、例えば、タングステンやモリブデン等のメタライズなどのビアホールである。
【0111】
ヒータパッケージ8a上に搭載されるTCXOのパッケージ9aのパッケージ本体9
1aには、ヒータパッケージ8aの前記各ビアホール30にそれぞれ連なるように、複数のビアホール31が、上下方向に貫通してそれぞれ形成される。ビアホール31もビアホール30と同様に、タングステンやモリブデン等のメタライズなどのビアホールである。
【0112】
パッケージ本体9
1aの各ビアホール31は、凹部12を気密封止する金属材料からなるリッド9
2の一端側に連続している。
【0113】
このようにヒータパッケージ8aのヒータIC7のヒータからの発熱を、ヒータIC7の周辺のベタパターン29、ビアホール30、両パッケージ8a,9aを接合する半田、及び、パッケージ本体9
1aのビアホール31を伝熱経路として、金属製のリッド9
2に伝達させることができる。
【0114】
これによって、TCXOのパッケージ9aの下面側を、ヒータパッケージ8aのヒータによって加熱することができる一方、TCXOのパッケージ9aの上面側のリッド9
2を、ヒータパッケージ8aのヒータによって加熱することができる。すなわち、TCXOのパッケージ9aをその上下両面から加熱することができ、該パッケージ9a内の上方の水晶振動子10と、下方のTCXOIC11との間の温度差を抑制して温度の均一化を図ることができる。
【0115】
なお、ビアホール30,31の数は、複数に限らず、単数であってもよい。また、パッケージ体4aにおけるベタパターン29の形状は、任意である。
【0116】
その他の構成は、
図1の実施形態と同様である。
【0117】
上記各実施形態では、ヒータパッケージ8,8aは、ヒータIC7を収容する凹部の開口部が下側になるように構成したが、本発明の他の実施形態として、
図8の概略断面図に示すように、パッケージ体4bのヒータパッケージ8bの凹部の開口部が上側になるように構成してもよい。
【0121】
上記各実施形態では、スペーサ3のスルーホール21は、端面に形成された平面視円弧状であったが、本発明の他の実施形態として、スペーサ3の内部を上下に貫通する平面視円形のスルーホールとしてもよく、このスルーホール内には、熱伝導率の低い充填材を充填してもよい。
【0122】
上記各実施形態では、端子は、電源用(Vcc)、接地用(GND)、発振出力用(OUT)、及び、周波数制御用(Vcont)の4端子であったが、4端子に限らず、例えば、複数系統の電源用の端子を備える4端子以上の構成としてもよい。