(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0035】
A1.第1実施形態:
A1−1.半導体装置の構成:
図1は、第1実施形態における半導体装置100の構成を模式的に示す図である。
図1には、本実施形態における半導体装置100の断面の一部を簡略化して示している。なお、
図1は、半導体装置100の技術的特徴をわかりやすく示すための図であり、各部の寸法を正確に示すものではない。
【0036】
図1には、説明を容易にするために、相互に直交するXYZ軸が図示されている。
図1のXYZ軸のうち、X軸は、
図1の紙面左から紙面右に向かう軸であり、+X軸方向は、紙面右に向かう方向であり、−X軸方向は、紙面左に向かう方向である。
図1のXYZ軸のうち、Y軸は、
図1の紙面手前から紙面奥に向かう軸であり、+Y軸方向は、紙面奥に向かう方向であり、−Y軸方向は、紙面手前に向かう方向である。
図1のXYZ軸のうち、Z軸は、
図1の紙面下から紙面上に向かう軸であり、+Z軸方向は、紙面上に向かう方向であり、−Z軸方向は、紙面下に向かう方向である。
【0037】
本実施形態における半導体装置100は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置100は、縦型のPINダイオード(P-Intrinsic-N Diode)である。
【0038】
半導体装置100は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域31と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である第1の電極5と、カソード電極である第2の電極6と、段差部22と、を備える。なお、各半導体層又は半導体領域が積層される方向(+Z軸方向)を「上方」とも呼び、Z軸に沿った−Z軸方向を「下方」とも呼ぶ。各半導体層、半導体領域及び構造のそれぞれの表面のうち上方側の表面を「上面」とも呼び、下方側の表面を「下面」とも呼ぶ。X軸及びY軸に沿った方向を「面方向」とも呼び、Z軸方向を「基板の厚み方向」又は「厚み方向」とも呼ぶ。
【0039】
基板1は、上面である第1の面1uと、下面である第2の面1sと、を有し、面方向に広がる。本実施形態では、基板1は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。なお、本明細書において、「主に形成される」とは、モル分率において90%以上含有することを示す。本実施形態では、基板1は、n型不純物を含むn型半導体層である。本実施形態では、基板1は、シリコン(Si)をドナーとして含む。基板1に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、約1×10
18cm
-3である。
【0040】
第1のn型半導体層2は、基板1の厚み方向において、基板1と第1の電極5との間に位置する。本実施形態では、第1のn型半導体層2は、基板1の上面に接する。本実施形態では、第1のn型半導体層2は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本実施形態では、第1のn型半導体層2は、n型不純物を含むn型半導体層である。第1のn型半導体層2を、「ドリフト層」とも呼ぶ。本実施形態では、第1のn型半導体層2は、シリコン(Si)をドナーとして含む。第1のn型半導体層2に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、約1×10
16cm
-3であり、第1のn型半導体層2のZ軸方向に沿った厚さは、約10μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1のn型半導体層2は、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition、以下、MOCVD法とも呼ぶ)によるエピタキシャル成長によって形成されている。なお、基板1の面方向の格子定数と、第1のn型半導体層2の面方向の格子定数と、の差は、5%以下であることが好ましい。
【0041】
第1のp型半導体領域31は、基板1の厚み方向において、第1のn型半導体層2と第1の電極5との間に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域31は、第1のn型半導体層2の上面に接する。本実施形態では、第1のp型半導体領域31は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のp型半導体領域31は、p型不純物を含むp型半導体からなる領域である。本実施形態では、第1のp型半導体領域31は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域31に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約1×10
18cm
-3であり、第1のp型半導体領域31の下面までのZ軸方向に沿った厚さは、約0.6μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1のp型半導体領域31は、MOCVD法によって形成されている。
【0042】
第2のp型半導体領域42は、基板1の厚み方向において、第1のp型半導体領域31と第1の電極5との間に位置しており、かつ、第1のp型半導体領域31の上面に接する。本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、半導体装置100の面方向における中心部に位置し、かつ、第1の電極5の下面の全面に接する。なお、半導体装置100の中心部とは、半導体装置100の面方向において第1の電極5が位置する領域である。また、本実施形態では、中心部における第2のp型半導体領域42の面方向における幅は、第1の電極5の幅よりも大きい。本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第2のp型半導体領域42は、p型不純物と、n型不純物と、を含んでおり、p型の特性を有するp型半導体からなる領域である。第2のp型半導体領域42は、第1のp型半導体領域31にn型不純物をイオン注入することによって形成されている。本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域42に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、1×10
18cm
-3である。また、本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域42に含まれる酸素(O)の平均濃度は、1×10
18cm
-3である。本実施形態では、第2のp型半導体領域42の上面から下面までのZ軸方向に沿った厚さは、約0.1μm(マイクロメートル)である。
【0043】
なお、第2のp型半導体領域42のアクセプタ濃度を高める観点から、第2のp型半導体領域42に含まれるp型不純物の濃度に対する、第2のp型半導体領域42に含まれるn型不純物の濃度の比は、0.1以上かつ2.0以下であることが好ましく、0.5以上かつ1.5以下であることがより好ましく、0.8以上1.0以下であることがいっそう好ましい。
【0044】
段差部22は、第1のp型半導体領域31の+Z軸方向側から第1のn型半導体層2の内部へと厚み方向(Z軸方向)に落ち込んだ構造である。段差部22は、半導体装置100を他の半導体装置から分離する素子分離構造である。本実施形態では、段差部22は、基板1の上に形成された第1のn型半導体層2及び第1のp型半導体領域31の一部をドライエッチングすることによって形成されている。段差部22の構造を、「メサ構造」とも呼ぶ。
【0045】
第1の電極5は、基板1の第1の面1u側の上方に位置する。本実施形態では、第1の電極5は、第1の電極の下面の全面において、第2のp型半導体領域42に接する。第1の電極5は、第2のp型半導体領域42にオーミック接触するオーミック電極である。本実施形態では、第1の電極5は、パラジウム(Pd)から主に形成される層を積層した後に、熱処理を加えた電極である。
【0046】
第2の電極6は、基板1の第2の面1s側に接する。本実施形態では、第2の電極6は、基板1の第2の面1s(下面)にオーミック接触するオーミック電極である。本実施形態では、第2の電極6は、チタン(Ti)から主に成る層にアルミニウム(Al)から主に成る層を積層した後に熱処理を加えた電極である。
【0047】
図1には、pn接合界面23が示されている。pn接合界面23は、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域31及び第2のp型半導体領域42からなるp型半導体領域と、の接合部である。pn接合界面23は、n型半導体である第1のn型半導体層2とp型半導体である第1のp型半導体領域31との界面でもある。本実施形態において、pn接合界面23は、XY平面と平行である。
【0048】
半導体装置100において、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。シート濃度は、pn接合界面23に対してのアクセプタ濃度である。半導体装置100に順バイアス又は逆バイアスが印加された場合において、リーク電流が発生することをより抑制する観点から、シート濃度は、1.1×10
13cm
−2以上であることが好ましく、2.0×10
13cm
−2以上であることがより好ましく、3.0×10
13cm
−2以上であることがいっそう好ましい。
【0049】
また、半導体装置100に順バイアス又は逆バイアスが印加された場合において、リーク電流が発生することを抑制する観点から、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上であることが好ましく、0.11μm(マイクロメートル)以上であることがより好ましく、0.21μm(マイクロメートル)以上であることがいっそう好ましく、0.30μm(マイクロメートル)以上であることがよりいっそう好ましい。
【0050】
A1−2.半導体装置の製造方法:
図2は、本実施形態の半導体装置100の製造方法を示す工程図である。半導体装置100の製造では、まず、基板1と第1のn型半導体層2とが積層された積層体が用意される(ステップS100)。
【0051】
図3は、基板1と第1のn型半導体層2とが積層された積層体100aを示す図である。本実施形態では、第1のn型半導体層2は、MOCVD法によって第1のn型半導体層2上に形成される。積層体100aにおける第1のn型半導体層2の厚さは、約10μm(マイクロメートル)である。
【0052】
次に、第1のp型半導体領域31が形成される(
図2,ステップS110)。
図4は、第1のp型半導体領域31が形成された製造過程における半導体装置100bを示す図である。本実施形態では、MOCVD法によって、第1のn型半導体層2の上面に、Z軸方向に沿った厚さが約0.6μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均濃度が1×10
18cm
-3である第1のp型半導体領域31が形成される。
【0053】
次に、第2のp型半導体領域42が形成される(
図2、ステップS120)。
図5は、第2のp型半導体領域42が形成された製造過程における半導体装置100cを示す図である。本工程では、第2のp型半導体領域42が形成される領域上を除く領域の半導体装置100b上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンが形成された半導体装置100bに対し、パターンをマスクとして用いて、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、酸素(O)イオンが用いられる。本実施形態では、半導体装置100bにおける第1のp型半導体領域31の上面から−Z軸方向に0.1μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約1×10
18cm
-3となるように、イオン注入が行われる。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、半導体装置100bの第1のp型半導体領域31に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、1.3×10
13cm
-2である。イオン注入の後にパターンが除去されることによって、
図5に示す半導体装置100cが形成される。本工程を、「工程(a)」とも呼ぶ。
【0054】
ステップS120では、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるようにイオン注入を行うことによって、第2のp型半導体領域42が形成される。なお、ステップS110及びステップS120において、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるように、第1のp型半導体領域31及び第2のp型半導体領域42が形成されてもよい。
【0055】
また、ステップS120では、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第2のp型半導体領域42が形成されることが好ましい。なお、ステップS110及びステップS120において、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第1のp型半導体領域31及び第2のp型半導体領域42が形成されてもよい。
【0056】
また、ステップS110及びステップS120では、第2のp型半導体領域42に含まれるp型不純物の濃度に対する、第2のp型半導体領域42に含まれるn型不純物の濃度の比が、0.1以上かつ2.0以下となるように、p型不純物の濃度とn型不純物の濃度との少なくとも一方が調整されることが好ましい。
【0057】
ステップS120が行われた後、半導体装置100cに対し、イオン注入された不純物を活性化させるための熱処理が行われる。熱処理は、例えば、1150℃の温度において、アンモニア(NH
3)を含む雰囲気下で、2分間行われる。熱処理の温度は、不純物をより確実に活性化させる観点から、1000℃以上であることが好ましく、1050℃以上であることがより好ましい。また、熱処理温度は1200℃以下であることが好ましく、1150℃以下であることがより好ましい。熱処理の時間は、1分以上であることが好ましく、10分以下であることが好ましい。熱処理はアンモニア(NH
3)を含む雰囲気下で行われることが好ましい。なお、熱処理の前に、予め、半導体装置100cに保護膜を形成することが好ましい。このようにすることにより、熱処理時において半導体装置100cの上面が荒れることを抑制できる。保護膜の材料としては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)を用いることができる。保護膜が形成されている場合、保護膜は熱処理後に除去される。例えば、保護膜として窒化アルミニウム(AlN)が用いられる場合、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などを用いたウェットエッチングにより、保護膜が除去される。なお、熱処理は、アンモニアを含む雰囲気、水素を含む雰囲気、アンモニア及び水素を含む雰囲気、窒素を含む雰囲気で行われてもよい。
【0058】
ステップS120が行われた後、エッチングによって段差部22が形成される。段差部22は、段差部22が形成される領域において、第1のp型半導体領域31の上面から第1のn型半導体層2に到達するまで、半導体装置100cに対してドライエッチングが行われることによって形成される。なお、段差部22は、ステップS110において第1のp型半導体領域31が形成された後であって、ステップS120において第2のp型半導体領域42が形成される前に形成されてもよい。
【0059】
段差部22が形成された後、第1の電極5と、第2の電極6と、が形成される(
図2,ステップS130)。ステップS130では、電極が形成された後、各電極が接する半導体層又は半導体領域とのオーム性接触を得るための熱処理が行われる。なお、熱処理は、各電極に対して同時に行われてもよく、例えば各電極に対して別々に行われてもよい。これらの工程を経て、
図1に示す半導体装置100が完成する。なお、上記工程の順序は、半導体装置の構成によって、入れ替えることが可能である。また、上記工程の一部は、半導体装置の構成によって、繰り返されてもよい。例えば、半導体装置の構成によっては、ステップS120が行われた後、ステップS110が再度行われ、次に、ステップS120が行われて、最後にステップS130が行われてもよい。
【0060】
以下、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31におけるアクセプタのシート濃度を、0.8×10
13cm
−2以上とした根拠と、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸に沿った距離が0.08(μm)以上であることが好ましい根拠と、について説明する。
【0061】
図6は、定格電圧と、n層(ドリフト層)側の濃度と、p層側に広がる空乏層内部の電荷のシート濃度と、の関係を示す図である。上述の半導体装置100を用いて説明すると、n層側とは、pn接合界面23から第1のn型半導体層2側である。また、p層側とは、pn接合界面23から、第1のp型半導体領域31及び第2のp型半導体領域42からなるp型半導体領域側である。空乏層内部の電荷とは、p層側(p型半導体領域側)の空間電荷である。一般的に、半導体装置におけるpn接合部分に電圧が印加された場合、空乏層の広がりは、n層側(ドリフト層)の濃度と印加される電圧と、によって変化する。
【0062】
図6には、ドリフト層の濃度が、5×10
15cm
-3、1×10
16cm
-3及び2×10
16cm
-3であるそれぞれの半導体装置に、0.6(kV)、1.2(kV)、2(kV)及び3(kV)のそれぞれの定格電圧が印加された場合における、シート濃度が示されている。
図6より、ドリフト層の濃度が1×10
16cm
-3であり、定格電圧が0.6(kV)である場合には、シート濃度は0.8×10
13cm
−2である。また、ドリフト層の濃度が5×10
15cm
−3であり、定格電圧が1.2(kV)である場合には、シート濃度は0.8×10
13cm
−2である。すなわち、半導体装置におけるシート濃度が0.8×10
13cm
−3以上であれば、定格電圧が0.6(kV)〜1.2(kV)級のアプリケーションに半導体装置が用いられる場合において、pn接合界面23の空乏層が第2のp型半導体領域42まで広がることを抑制することができ、p型領域における空乏層内に深い準位を形成しうるドナー不純物となり得る元素が存在しないようにすることができる。
【0063】
p型領域における空乏層内に深い準位を形成しうるドナー不純物となり得る元素が存在すると、半導体装置に順バイアスが印加された場合には再結合電流が流れ、逆バイアスが印加された場合には生成電流が流れ、これらの電流がリーク電流として寄与する。しかし、本実施形態の半導体装置100では、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31におけるアクセプタのシート濃度が0.8×10
13cm
−2以上であるため、このようなリーク電流の発生が抑制される。
【0064】
また、
図6より、定格電圧が2(kV)である場合には、シート濃度は1.1×10
13cm
−2〜2.0×10
13cm
−2である。そのため、半導体装置におけるシート濃度が1.1×10
13cm
−2以上であれば、pn接合界面23の空乏層が第2のp型半導体領域42まで広がることをより抑制することができ、リーク電流の発生をより抑制することができる。また、
図6より、シート濃度が2.0×10
13cm
−2以上であれば、定格電圧がいずれの値であっても、pn接合界面23の空乏層が第2のp型半導体領域42まで広がることをいっそう抑制することができる。なお、シート濃度が3.0×10
13cm
−2以上であれば、定格電圧がいずれの値であっても、pn接合界面23の空乏層が第2のp型半導体領域42まで広がることをよりいっそう抑制することができる。
【0065】
図7は、定格電圧と、ドリフト層(n層)側の濃度と、p層側の空乏層の広がりと、の関係を示す図である。p層側の空乏層の広がりとは、pn接合界面23からp層側へ向かう、Z軸に沿った空乏層の距離(μm)である。
図7に示す空乏層の距離は、p層側のアクセプタ濃度が1×10
18cm
-3の場合における距離である。
【0066】
図7には、ドリフト層の濃度が、5×10
15cm
-3、1×10
16cm
-3及び2×10
16cm
-3であるそれぞれの半導体装置に、0.6(kV)、1.2(kV)、2(kV)及び3(kV)のそれぞれの定格電圧が印加された場合における、p層側の空乏層の距離が示されている。
図7より、ドリフト層の濃度が1×10
16cm
-3であり、定格電圧が0.6(kV)である場合には、空乏層の距離は0.08(μm)である。また、ドリフト層の濃度が5×10
15cm
-3であり、定格電圧が1.2(kV)である場合には、空乏層の距離は0.08(μm)である。すなわち、半導体装置100では、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸に沿った距離が0.08(μm)以上であれば、空乏層が、n型不純物を含む第2のp型半導体領域42まで広がることを抑制することができ、p型領域における空乏層内に深い準位を形成しうるドナー不純物となり得る元素が存在しないようにすることができる。
【0067】
また、
図7より、ドリフト層の濃度が5×10
15cm
-3であり、定格電圧が2(kV)である場合には、空乏層の距離は0.11(μm)である。すなわち、半導体装置100では、第2のp型半導体領域42と第1のn型半導体層2とのZ軸に沿った距離が、0.11(μm)以上であれば、pn接合界面23の空乏層が第2のp型半導体領域42まで広がることをより抑制することができ、リーク電流の発生をより抑制することができる。また、第2のp型半導体領域42と第1のn型半導体層2とのZ軸に沿った距離が、0.21(μm)以上であれば、定格電圧がいずれの値であっても、pn接合界面23の空乏層が第2のp型半導体領域42まで広がることを抑制することができる。なお、シート濃度が3.0×10
13cm
−2以上であれば、定格電圧がいずれの値であっても、pn接合界面23の空乏層が第2のp型半導体領域42まで広がることをよりいっそう抑制することができる。
【0068】
なお、本実施形態の半導体装置100のpn接合界面23の空乏層におけるドナー不純物(O)を、二次イオン質量分析計(SIMS:Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer)により測定したところ、p型領域においてドナー不純物となる酸素(O)は検出されなかった。
【0069】
A1−3.効果:
効果1:
以上で説明した第1実施形態の半導体装置100によれば、第2のp型半導体領域42はn型不純物を含むため、第2のp型半導体領域42のホール濃度を高めることができる。また、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。そのため、本実施形態の第1のp型半導体領域31と同程度のアクセプタ濃度が得られるように、上述の製造方法の第1のp型半導体領域31を形成する工程(
図2,ステップS110)及び第2のp型半導体領域42を形成する工程(
図2、ステップS120)に代えて、第1のn型半導体層2の上面に、p型不純物であるマグネシウム(Mg)とn型不純物である酸素(O)とをイオン注入することによって、n型不純物を含むp型半導体層を形成した半導体装置と異なり、半導体装置に順バイアス又は逆バイアスが印加された場合において、第1のn型半導体層2と第1のp型半導体領域31とのpn接合界面23の空乏層が第2のp型半導体領域42まで広がることを抑制することができ、p型半導体からなるp型領域における空乏層内にn型不純物が存在することによってリーク電流が発生することを抑制することができる。そのため、電力用半導体に適した半導体装置を提供することができる。
【0070】
効果2:
また、第2のp型半導体領域42には第1の電極5が接するため、コンタクト形成領域において高いアクセプタ濃度を実現することができ、第2のp型半導体領域42と第1の電極5との接触抵抗を低減させることができる。
【0071】
効果3:
本実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるように、第1のp型半導体領域31の少なくとも一部にn型不純物(O)をイオン注入することによって、第2のp型半導体領域42を形成することができる。そのため、p型領域における空乏層内にn型不純物が存在しないようにすることができるので、p型領域における空乏層内にn型不純物が存在することによってリーク電流が発生することを抑制することができる。そのため、電力用半導体に適した半導体装置を提供することができる。
【0072】
効果4:
また、本実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、結晶成長によって第1のp型半導体領域31を成長させるので、p型領域における空乏層内にドナー不純物となり得る元素をより存在しないようにすることができ、リーク電流が発生することをより抑制することができる。
【0073】
効果5:
また、本実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、結晶成長によって形成された第1のp型半導体領域31に対して、n型不純物(O)を注入することによって第2のp型半導体領域42を形成することができるので、第1のp型半導体領域31をイオン注入によって形成する場合と比較して、半導体装置100の製造におけるイオン注入の工程数を削減することができる。
【0074】
効果6:
また、第1のp型半導体領域31は結晶成長によって形成され、その後、第1のp型半導体領域31の第2のp型半導体領域42が形成される領域に対してn型不純物を注入することによって第2のp型半導体領域42が形成される。そのため、イオン注入によって注入された不純物を活性化するための熱処理において、p型不純物(マグネシウム(Mg))の影響を考慮しなくともよいため、熱処理における自由度を高めることができ、より適切な熱処理を行うことができる。
【0075】
A2.第1実施形態の変形例1:
図8は、第1実施形態の変形例1における半導体装置101を示す図である。半導体装置101は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域31、32と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である第1の電極5と、カソード電極である第2の電極6と、段差部22と、を備える。
【0076】
第1のp型半導体領域31は第1のn型半導体層2の上面に接する。第1のp型半導体領域32は、第1のp型半導体領域31の上面に接する。第1のp型半導体領域31、32は、MOCVD法によって形成されている。第1のp型半導体領域31、32は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域31に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は約1×10
18cm
-3であり、第1のp型半導体領域32に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は約1×10
19cm
-3である。第1のp型半導体領域32のZ軸方向に沿った厚さは、約0.45μm(マイクロメートル)であり、第2のp型半導体領域42の上面から第1のp型半導体領域32の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.15μm(マイクロメートル)である。
【0077】
第2のp型半導体領域42は、第1のp型半導体領域32の上面に接する。第2のp型半導体領域42は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域42に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、1×10
19cm
-3である。また、第2のp型半導体領域42は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域42に含まれる酸素(O)の平均濃度は、1×10
19cm
-3である。第2のp型半導体領域42の上面から下面までのZ軸方向に沿った厚さは、約0.1μm(マイクロメートル)である。
【0078】
図8には、pn接合界面23が示されている。pn接合界面23は、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域31、32及び第2のp型半導体領域42からなるp型半導体領域と、の接合部である。pn接合界面23は、n型半導体である第1のn型半導体層2とp型半導体である第1のp型半導体領域31との界面でもある。本変形例においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31、32におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。本変形例における半導体装置101のその他の構成は、上述の第1実施形態における半導体装置100と同様であるため説明を省略する。
【0079】
半導体装置101の製造では、上述の半導体装置100の製造方法における第1のp型半導体領域31を形成する工程(
図2,ステップS110)においてMOCVD法によって1層からなる第1のp型半導体領域31が形成されたのに代えて、MOCVD法によって第1のp型半導体領域31と、第1のp型半導体領域31よりもアクセプタ濃度の高い第1のp型半導体領域32との2層が積層される。具体的には、第1のn型半導体層2の上面に、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約0.45μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均能度が1×10
18cm
-3である第1のp型半導体領域31が形成される。続いて、第1のp型半導体領域31の上面の全面にわたって、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約0.15μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均能度が1×10
19cm
-3である第1のp型半導体領域32が形成される。
【0080】
本変形例における第2のp型半導体領域42は、第1のp型半導体領域32の上面から−Z軸方向に0.1μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約1×10
19cm
-3となるように、第1実施形態と同様にイオン注入が行われることによって形成される。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域32に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、1.3×10
14cm
-2である(
図2、ステップS120)。なお、ステップS110及びステップS120では、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるようにイオン注入を行うことによって、第2のp型半導体領域42が形成される。また、ステップS110及びステップS120では、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第2のp型半導体領域42が形成される。本変形例における半導体装置101のその他の製造方法は、上述の第1の実施形態における半導体装置100の製造方法と同様であるため説明を省略する。
【0081】
以上のような半導体装置101によれば、上述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0082】
また、本変形例によれば、第2のp型半導体領域42は、比較的アクセプタ濃度が高い第1のp型半導体領域32にn型不純物がイオン注入されることによって形成されるため、第2のp型半導体領域42におけるアクセプタ濃度をより高めることができる。
【0083】
A3.第1実施形態の変形例2:
図9は、第1実施形態の変形例2における半導体装置102を示す図である。半導体装置102は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域31、32と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である第1の電極5と、カソード電極である第2の電極6と、段差部22と、を備える。本変形例の半導体装置102と、上述の第1実施形態の変形例2における半導体装置101とが異なる主な点は、第2のp型半導体領域42の下面が、第1のp型半導体領域32の下面よりも−Z方向に位置している点である。
【0084】
本変形例では、第2のp型半導体領域42の上面から下面までのZ軸方向に沿った厚さは、0.15μm(マイクロメートル)よりも大きい。本変形例において、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。本変形例における半導体装置102のその他の構成は、上述の第1実施形態の変形例1における半導体装置101と同様であるため説明を省略する。
【0085】
半導体装置102の製造では、第2のp型半導体領域42は、第1のp型半導体領域32の上面から−Z軸方向に0.15μm(マイクロメートル)を超え、かつ、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm(マイクロメートル)以上となる深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約1×10
19cm
-3となるように、イオン注入が行われることによって形成される(
図2、ステップS120)。すなわち、第1のp型半導体領域32の上面から、第1のp型半導体領域31に至るまで、n型不純物が注入される。なお、本変形例においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるようにイオン注入を行うことによって、第2のp型半導体領域42が形成される。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第2のp型半導体領域42が形成される。本変形例における半導体装置102のその他の製造方法は、上述の第1実施形態の変形例1における半導体装置101と同様であるため説明を省略する。
【0086】
以上のような半導体装置102によれば、上述の第1実施形態の変形例1と同様の効果を奏する。
【0087】
A4.第1実施形態の変形例3:
図10は、第1実施形態の変形例3における半導体装置103を示す図である。半導体装置102は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域31、41と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である第1の電極5と、カソード電極である第2の電極6と、段差部22と、を備える。
【0088】
第1のp型半導体領域41は、第1のp型半導体領域31の上面に接する。第1のp型半導体領域41は、p型不純物がイオン注入されることによって形成されている。本変形例では、第1のp型半導体領域41は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本変形例では第1のp型半導体領域41は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域41に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約1×10
19cm
-3であり、第2のp型半導体領域42の上面から第1のp型半導体領域41の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.15μm(マイクロメートル)である。
【0089】
本変形例における第2のp型半導体領域42は、第1のp型半導体領域41の上面に接する。本変形例では、第2のp型半導体領域42に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、1×10
19cm
-3である。また、第2のp型半導体領域42に含まれる酸素(O)の平均濃度は、1×10
19cm
-3である。
【0090】
本変形例においても、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31、41におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。本変形例における半導体装置103のその他の構成は、上述の第1実施形態における半導体装置100と同様であるため説明を省略する。
【0091】
本変形例では、第1のp型半導体領域を形成する工程(
図2、ステップS110)において、上述の第1実施形態と同様に、MOCVD法によって第1のp型半導体領域31が形成されるのに加え、さらにイオン注入法によって第1のp型半導体領域41が形成される。具体的には、第1のp型半導体領域41が形成される領域を除く第1のp型半導体領域31上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンが形成された第1のp型半導体領域31の上面から−Z軸方向に0.15μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約1×10
19cm
-3となるように、イオン注入が行われる。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域31に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、2.0×10
14cm
-2である。以上のようにして、第1のp型半導体領域41が形成される。
【0092】
次に、第2のp型半導体領域42が形成される領域を除く第1のp型半導体領域41上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。なお、第2のp型半導体領域42を形成するためのパターンとして、第1のp型半導体領域41を形成するために用いられたパターンが用いられてもよい。第1のp型半導体領域41の上面から−Z軸方向に0.10μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約1×10
19cm
-3となるように、第1実施形態と同様にイオン注入が行われることによって、第2のp型半導体領域42が形成される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、1.3×10
14cm
-2である(
図2、ステップS120)。なお、本変形例においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるようにイオン注入を行うことによって、第2のp型半導体領域42が形成される。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第2のp型半導体領域42が形成される。本変形例における半導体装置103のその他の製造方法は、上述の第1実施形態における半導体装置100と同様であるため説明を省略する。
【0093】
以上のような半導体装置103によれば、上述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0094】
また、本変形例によれば、第2のp型半導体領域42は、比較的アクセプタ濃度が高い第1のp型半導体領域41にn型不純物がイオン注入されることによって形成されるため、第2のp型半導体領域42におけるアクセプタ濃度をより高めることができる。
【0095】
A5.第1実施形態の変形例4:
図11は、第1実施形態の変形例4における半導体装置104を示す図である。半導体装置104は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域3と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である第1の電極5と、カソード電極である第2の電極6と、段差部22と、を備える。本変形例における第1のp型半導体領域3は、イオン注入によって形成されている。本変形例においても、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域3におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。本変形例における半導体装置104のその他の構成は、上述の第1実施形態における半導体装置100と同様であるため説明を省略する。
【0096】
半導体装置104の製造では、上述の半導体装置100の製造方法における、基板1と第1のn型半導体層2とが積層された積層体100aが用意される工程(
図2、ステップS100)において、MOCVD法によって、基板1上に、約10.6μm(マイクロメートル)の厚さの第1のn型半導体層2が形成される。
【0097】
次に、第1のn型半導体層2の上面から−Z軸方向に0.6μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約1×10
18cm
-3となるように、第1のn型半導体層2の上面の全面に対してマグネシウム(Mg)イオンが注入される。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のn型半導体層2に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、8.0×10
13cm
-2である。このようにして、第1のn型半導体層2の上面の全面に第1のp型半導体領域3が形成される。本変形例における半導体装置104のその他の製造方法は、上述の第1実施形態における半導体装置100の製造方法と同様であるため説明を省略する。
【0098】
なお、本変形例の半導体装置104においても、pn接合界面23の空乏層におけるドナー不純物(O)をSIMSによって測定したところ、ドナー不純物(O)は検出されなかった。本変形例における第1のp型半導体領域3は、n型不純物を含む第1のn型半導体層2にイオン注入することによって形成されるものの、第1のn型半導体層2に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、1×10
16cm
−3であり、形成された第1のp型半導体領域3に含まれるシリコン(Si)の濃度が、マグネシウム(Mg)の濃度に比べて非常に低いため、このドナー不純物(Si)は、チャネル移動度には影響を与えない。
【0099】
以上のような半導体装置104によれば、上述の第1実施形態の効果1〜3と同様の効果を奏する。
【0100】
A6.第1実施形態の変形例5:
図12は、第1実施形態の変形例5における半導体装置105を示す図である。半導体装置105は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域3、41と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である第1の電極5と、カソード電極である第2の電極6と、段差部22と、を備える。本変形例における第1のp型半導体領域41は、イオン注入によって形成されている。本変形例においても、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域3、41におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。本変形例における半導体装置105のその他の構成は、上述の第1実施形態の変形例4における半導体装置104と同様であるため説明を省略する。
【0101】
半導体装置105の製造では、上述の第1実施形態の変形例4における半導体装置104と同様に、基板1上に、約10.6μm(マイクロメートル)の厚さの第1のn型半導体層2が形成される(
図2、ステップS100)。
【0102】
次に、第1のp型半導体領域3、41を形成する工程(
図2、ステップS110)において、上述の第1実施形態の変形例4と同様に、イオン注入によって第1のp型半導体領域3が形成されるのに加え、さらに第1のp型半導体領域41が形成される。具体的には、上述の第1実施形態の変形例3と同様に、第1のp型半導体領域41が形成される領域を除く第1のp型半導体領域3上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンが形成された第1のp型半導体領域3の上面から−Z軸方向に0.15μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約1×10
19cm
-3となるように、イオン注入が行われる。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域3に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、2.0×10
14cm
-2である。以上のようにして、第1のp型半導体領域41が形成される。本変形例における半導体装置105のその他の製造方法は、上述の第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0103】
以上のような半導体装置105によれば、上述の第1実施形態の効果1〜3と同様の効果を奏する。
【0104】
また、本変形例によれば、第2のp型半導体領域42は、比較的アクセプタ濃度が高い第1のp型半導体領域41にn型不純物がイオン注入されることによって形成されるため、第2のp型半導体領域42におけるアクセプタ濃度をより高めることができる。
【0105】
B1.第2実施形態:
B1―1.半導体装置の構成:
図13は、第2実施形態における半導体装置106を示す図である。半導体装置106は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置106は、縦型のPINダイオード(P-Intrinsic-N Diode)である。
【0106】
半導体装置106は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域3、41と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である第1の電極5と、カソード電極である第2の電極6と、を備える。本実施形態の半導体装置106と、第1実施形態の半導体装置100とが異なる主な点は、半導体装置100が段差部22を備えていたのに対し、本実施形態の半導体装置106は段差部22を備えていない点である。また、半導体装置100では、第2のp型半導体領域42が、半導体装置100の面方向における中心部に位置していたのに対し、本実施形態における半導体装置106では、第2のp型半導体領域42が、半導体装置106の中心部に加えて周辺部Sに位置する点である。なお、周辺部Sとは、第1の電極5から離れた領域であり、第1の電極5の外側の領域である。具体的には、
図13に示す半導体装置106においては、第1の電極5の−X軸方向における端部5tからさらに−X軸方向へ離れた領域と、第1の電極5の+X軸方向における端部5tからさらに+X軸方向へ離れた領域である。
【0107】
第1のn型半導体層2は、基板1の厚み方向において、基板1と第1の電極5との間に位置する。第1のn型半導体層2のZ軸方向に沿った厚さは、約10.6μm(マイクロメートル)である。
【0108】
第1のp型半導体領域3は、基板1の厚み方向において、第1のn型半導体層2と第1の電極5との間に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域3は、第1のn型半導体層2の上面に接する。また、第1のp型半導体領域3は、面方向において、半導体装置106の中心部と、周辺部Sと、に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域3は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のp型半導体領域3は、p型不純物を含むp型半導体からなる領域である。本実施形態では、第1のp型半導体領域3は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域3に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約1×10
18cm
-3であり、第1のp型半導体領域31の下面までのZ軸方向に沿った厚さは、約0.6μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1のp型半導体領域3は、イオン注入によって形成されている。
【0109】
第1のp型半導体領域41は、基板1の厚み方向において、第1のn型半導体層2と第1の電極5との間に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、第1のp型半導体領域3の上面に接する。また、第1のp型半導体領域41は、面方向において、半導体装置106の中心部と、周辺部Sと、に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のp型半導体領域41は、p型不純物を含むp型半導体からなる領域である。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域41、41pに含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約1×10
19cm
-3であり、第2のp型半導体領域42の上面から第1のp型半導体領域41の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.15μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、イオン注入によって形成されている。
【0110】
第2のp型半導体領域42は、基板1の厚み方向において、第1のp型半導体領域41と第1の電極5との間に位置する。本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、第1のp型半導体領域41の上面に接する。また、本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、面方向において、第1のn型半導体層2内に位置する。第2のp型半導体領域42は、面方向において、半導体装置106の中心部と、周辺部Sと、に位置する。中心部における第2のp型半導体領域42は、第1の電極5の下面の全面に接している。中心部における第2のp型半導体領域42の面方向における幅は、第1の電極5の幅よりも大きい。本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第2のp型半導体領域42は、p型不純物と、n型不純物と、を含んでおり、p型の特性を有するp型半導体からなる領域である。第2のp型半導体領域42は、第1のp型半導体領域41にn型不純物をイオン注入することによって形成されている。本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域42に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、1×10
19cm
-3である。また、本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域42に含まれる酸素(O)の平均濃度は、1×10
19cm
-3である。本実施形態では、第2のp型半導体領域42の上面から下面までのZ軸方向に沿った厚さは、約0.1μm(マイクロメートル)である。
【0111】
周辺部Sに位置する第1のp型半導体領域41と第2のp型半導体領域42とは、半導体装置106を他の半導体装置から分離する素子分離構造でもある。なお、
図13に示す半導体装置106では、各周辺部Sには、第1のp型半導体領域41と第2のp型半導体領域42と、からなる1つのp型半導体領域が位置しているが、他の実施形態では、このp型半導体領域は、周辺部Sに複数位置していてもよい。周辺部Sに位置する第1のp型半導体領域41と第2のp型半導体領域42とを、「電界緩和領域」とも呼ぶ。
【0112】
図13には、pn接合界面23が示されている。pn接合界面23は、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域3、41及び第2のp型半導体領域42とからなるp型半導体領域と、の接合部である。pn接合界面23は、n型半導体である第1のn型半導体層2とp型半導体である第1のp型半導体領域3との界面でもある。本実施形態において、pn接合界面23は、XY平面と平行である。本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域3、41におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。本実施形態における半導体装置106のその他の構成は、上述の第1実施形態における半導体装置100と同様であるため説明を省略する。
【0113】
B1−2.半導体装置の製造方法:
半導体装置106の製造では、上述の第1実施形態と同様に、基板1と第1のn型半導体層2とが積層された積層体100aが用意される(
図2、ステップS100)。第1のn型半導体層2は、MOCVD法によって基板1上に形成される。第1のn型半導体層2の厚さは、約10.6μm(マイクロメートル)である。
【0114】
次に、第1のp型半導体領域3が形成される。第1のp型半導体領域3が形成される領域を除く第1のn型半導体層2上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンが形成された第1のn型半導体層2の上面から−Z軸方向に0.6μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約1×10
18cm
-3となるように、イオン注入が行われる。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のn型半導体層2に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、8.0×10
13cm
-2である。以上のようにして、第1のp型半導体領域3が形成される(
図2、ステップS110)。
【0115】
次に、第1のp型半導体領域41が形成される(
図2、ステップS110)。本工程では、第1のp型半導体領域41が形成される領域上を除く領域の第1のp型半導体領域3上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンとして、半導体装置106における周辺部Sと、半導体装置106の中心部と、に第1のp型半導体領域41及び第2のp型半導体領域42が位置するように形成されたパターンが用いられる。なお、パターンとして、第1のp型半導体領域3を形成する際に用いたパターンが用いられてもよい。次に、パターンをマスクとして用いて、第1のp型半導体領域3上にp型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるp型不純物として、マグネシウム(Mg)イオンが用いられる。本実施形態では、第1のp型半導体領域3の上面から−Z軸方向に0.15μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約1×10
19cm
-3となるように、イオン注入が行われる。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域3に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、2.0×10
14cm
-2である。
【0116】
次に、第2のp型半導体領域42が形成される(
図2、ステップS120)。本工程においても、上述の第1実施形態において第2のp型半導体領域42が形成されたのと同様の方法により、第2のp型半導体領域42が形成される。具体的には、第2のp型半導体領域42が形成される領域上を除く領域上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、酸素(O)イオンが用いられる。本実施形態では、第1のp型半導体領域41の上面から−Z軸方向に0.1μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約1×10
19cm
-3となるように、第1実施形態と同様にイオン注入が行われることによって、第2のp型半導体領域42が形成される。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域41に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、1.3×10
14cm
-2である。イオン注入の後には、パターンが除去される。第1のp型半導体領域3、41及び第2のp型半導体領域42が形成された後に、不純物を活性化させるための熱処理が行われる。なお、不純物を活性化させるための熱処理は、各不純物(マグネシウム(Mg)、酸素(O))に対して別々に行われてもよく、マグネシウム(Mg)と酸素(O)と、に分けて行われてもよい。本実施形態では、以上のようにして、半導体装置106の中心部における第2のp型半導体領域42に加え、周辺部Sにおける第2のp型半導体領域42が形成される。なお、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域3,41におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるようにイオン注入を行うことによって、第2のp型半導体領域42が形成される。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第2のp型半導体領域42が形成される。本実施形態における半導体装置106のその他の製造方法は、上述の第1の実施形態における半導体装置100の製造方法と同様であるため説明を省略する。
【0117】
B1−3.効果:
以上のような半導体装置106によれば、第1実施形態の効果1〜3と同様の効果を奏する。
【0118】
また、本実施形態の半導体装置106によれば、周辺部Sにおける第1のp型半導体領域41及び第2のp型半導体領域42を素子分離構造として用いることができる。周辺部Sにおける第1のp型半導体領域41及び第2のp型半導体領域42は、中心部における第1のp型半導体領域41及び第2のp型半導体領域42と同時に形成される(
図2ステップS110、ステップS120)。そのため、上述の第1実施形態の半導体装置106における段差部22のような、素子分離構造を形成する工程を、削減することができる。
【0119】
さらに、半導体装置106は、周辺部Sにおいて、ホール濃度の高い第2のp型半導体領域42を備えるため、半導体装置106の周辺部S、すなわち、終端部における電界の集中を緩和することができる。そのため、例えば、フィールドプレート構造などの他の電界緩和構造を用いることなく、終端部の電界の集中を緩和することができる。なお、他の実施形態では、周辺部Sにおける第1のp型半導体領域41及び第2のp型半導体領域42に加えて、他の電界緩和構造が用いられてもよい。例えば、半導体装置106は、段差部22を備えることとし、段差部22に第1のp型半導体領域41及び第2のp型半導体領域42を備えることとしてもよいし、フィールドプレート構造をさらに備えることとしてもよい。
【0120】
B2.第2実施形態の変形例1:
図14は、第2実施形態の変形例1における半導体装置107を示す図である。半導体装置107は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域41と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である第1の電極5と、カソード電極である第2の電極6と、を備える。本実施形態の半導体装置107と第2実施形態の半導体装置106とが異なる点は、半導体装置107が第1のp型半導体領域3を備えていない点である。
【0121】
第1のp型半導体領域41は、基板1の厚み方向において、第1のn型半導体層2と第1の電極5との間に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、第1のn型半導体層2の上面に接する。また、第1のp型半導体領域41は、面方向において、半導体装置106の中心部と、周辺部Sと、に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のp型半導体領域41は、p型不純物を含むp型半導体からなる領域である。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域41に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約1×10
19cm
-3であり、第2のp型半導体領域42の上面から第1のp型半導体領域41の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.15μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、イオン注入によって形成されている。
【0122】
第2のp型半導体領域42は、第1のp型半導体領域41にn型不純物をイオン注入することによって形成されている。本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域42に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、1×10
19cm
-3である。また、本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域42に含まれる酸素(O)の平均濃度は、1×10
19cm
-3である。本実施形態では、第2のp型半導体領域42の上面から下面までのZ軸方向に沿った厚さは、約0.1μm(マイクロメートル)である。
【0123】
本実施形態の半導体装置107においても、上述の第2実施形態の半導体装置106と同様に、第2のp型半導体領域42は、中心部に加えて周辺部Sに位置している。周辺部Sに位置する第1のp型半導体領域41及び第2のp型半導体領域42は、半導体装置107を他の半導体装置から分離する素子分離構造であり、電界緩和領域でもある。なお、
図14に示す半導体装置107では、上述の第2実施形態の半導体装置107と同様に、各周辺部Sには、第1のp型半導体領域41と第2のp型半導体領域42と、からなるp型半導体領域が1つ位置しているが、このp型半導体領域は、周辺部Sに複数位置していてもよい。
【0124】
本変形例においても、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域41におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)である。本変形例における半導体装置107のその他の構成は、上述の第2実施形態における半導体装置106と同様であるため説明を省略する。
【0125】
半導体装置107の製造では、第1のp型半導体領域41が形成される(
図2、ステップS110)。本工程では、第1のp型半導体領域41が形成される領域上を除く領域の第1のn型半導体層2上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンとして、第1のp型半導体領域41が、半導体装置106における周辺部Sと、中心部と、に位置するように形成されたパターンが用いられる。次に、パターンをマスクとして用いて、第1のn型半導体層2上にp型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるp型不純物として、マグネシウム(Mg)イオンが用いられる。本実施形態では、第1のp型半導体領域3の上面から−Z軸方向に0.15μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約1×10
19cm
-3となるように、イオン注入が行われる。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域3に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、2.0×10
14cm
-2である。なお、本実変形例においても、上述の第2実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域41におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるようにイオン注入を行うことによって、第2のp型半導体領域42が形成される。なお、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第2のp型半導体領域42が形成されてもよい。本変形例における半導体装置107のその他の製造方法は、上述の第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0126】
以上のような半導体装置107によれば、上述の第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0127】
また、本変形例によれば、半導体装置107は、第1のn型半導体層2にp型不純物がイオン注入されることによって形成された第1のp型半導体領域3を備えていないので、半導体装置107を製造するためのイオン注入の回数を削減することができる。
【0128】
C1.第3実施形態:
C1−1.半導体装置の構成:
図15は、第3実施形態における半導体装置108を示す図である。半導体装置108は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置108は、縦型のショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode:SBD)である。
【0129】
半導体装置108は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域41と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である第1の電極15と、カソード電極である第2の電極6と、を備える。本実施形態の半導体装置108と、第2実施形態の半導体装置106とが異なる主な点は、第2実施形態の半導体装置106では、第2のp型半導体領域42が、中心部と、周辺部Sと、に位置していたのに対し、本実施形態の半導体装置108では、第2のp型半導体領域42が、第1の電極15の端部15tが位置する箇所およびその近傍と、周辺部Sと、に位置する点である。いいかえると、第2のp型半導体領域42が、第1の電極15の端部15t及びその近傍と、第1の電極15の外側の領域と、に位置する点である。
【0130】
第1のn型半導体層2は、基板1の厚み方向において、基板1と第1の電極5との間に位置する。第1のn型半導体層2のZ軸方向に沿った厚さは、約10μm(マイクロメートル)である。
【0131】
第1のp型半導体領域41は、基板1の厚み方向において、第1のn型半導体層2と第1の電極5との間に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、第1のn型半導体層2の上面に接する。また、第1のp型半導体領域41は、第1の電極15の端部15tが位置する箇所およびその近傍と、周辺部Sと、に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域41に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約5×10
19cm
-3であり、第2のp型半導体領域42の上面から第1のp型半導体領域41の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.6μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、イオン注入によって形成されている。
【0132】
第2のp型半導体領域42は、第1のp型半導体領域41の上面に接する。本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、面方向において、第1のn型半導体層2内に位置する。また、第2のp型半導体領域42は、面方向において、第1の電極15の端部15tが位置する箇所およびその近傍と、周辺部Sと、に位置する。第1の電極15の端部15tが位置する箇所及びその近傍における第2のp型半導体領域42は、第1の電極5の下面に接している。第2のp型半導体領域42は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域42に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、5×10
19cm
-3である。また、第2のp型半導体領域42は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域42に含まれる酸素(O)の平均濃度は、5×10
19cm
-3である。第2のp型半導体領域42の上面から下面までのZ軸方向に沿った厚さは、0.3μm(マイクロメートル)である。なお、
図15に示す半導体装置108では、各周辺部Sには、第1のp型半導体領域41と第2のp型半導体領域42と、からなるp型半導体領域が2つ位置しているが、他の実施形態では、このp型半導体領域は、周辺部Sに1つ位置していてもよいし、2つより多く位置していてもよい。
【0133】
本実施形態においても、上述の実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域41におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。
【0134】
第1の電極15は、第2のp型半導体領域42の少なくとも一部に接している。本実施形態では、第1の電極15は、第1のn型半導体層2と、第2のp型半導体領域42と、に接する。本実施形態では、第1の電極15は、第1の電極15の端部15tおよびその近傍において、第2のp型半導体領域42に接している。本実施形態では、第1の電極15は、ニッケル(Ni)から主に形成される層を積層した電極である。第1の電極15は、第1のn型半導体層2及び第2のp型半導体領域にショットキー接触する。第1の電極15を、「ショットキー電極」とも呼ぶ。第1の電極15の端部15tは、ショットキー接合の端部でもある。本実施形態における半導体装置108のその他の構成は、上述の第2実施形態の変形例1における半導体装置107と同様であるため説明を省略する。
【0135】
C1−2.半導体装置の製造方法:
半導体装置108の製造では、上述の第2実施形態と同様に、基板1と第1のn型半導体層2とが積層された積層体100aが用意される(
図2、ステップS100)。第1のn型半導体層2は、MOCVD法によって基板1上に形成される。第1のn型半導体層2の厚さは、約10.6μm(マイクロメートル)である。
【0136】
次に、第1のp型半導体領域41が形成される(
図2、ステップS110)。本工程では、第1のp型半導体領域41が形成される領域上を除く領域の第1のn型半導体層2上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンは、半導体装置108における周辺部Sと、後に形成される第1の電極15の端部15t及びその近傍と、第1のp型半導体領域41が位置するように形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、第1のn型半導体層2上にp型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるp型不純物として、マグネシウム(Mg)イオンが用いられる。本実施形態では、第1のn型半導体層2の上面から−Z軸方向に0.6μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約5×10
19cm
-3となるように、イオン注入が行われる。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、2に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、3.9×10
15cm
-2である。
【0137】
次に、第2のp型半導体領域42が形成される(
図2、ステップS120)。本工程では、第2のp型半導体領域42が形成される領域上を除く領域上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。なお、パターンとして、第1のp型半導体領域41を形成する際に用いたパターンが用いられてもよい。次に、パターンをマスクとして用いて、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、酸素(O)イオンが用いられる。本実施形態では、第1のp型半導体領域41の上面から−Z軸方向に0.3μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約5×10
19cm
-3となるように、第1実施形態と同様にイオン注入が行われることによって、第2のp型半導体領域42が形成される。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域41に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、2.0×10
15cm
-2である。イオン注入の後には、パターンが除去される。第1のp型半導体領域41及び第2のp型半導体領域42が形成された後に、不純物を活性化させるための熱処理が行われる。なお、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域41におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるようにイオン注入を行うことによって、第2のp型半導体領域42が形成される。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第2のp型半導体領域42が形成される。
【0138】
第2のp型半導体領域42が形成された後、第1の電極15と、第2の電極6と、が形成される(
図2、ステップS130)。本実施形態では、第2の電極6が形成された後、オーム性接触を得るための熱処理が行われる。次に、第1の電極15が形成される。なお、第1の電極15は、端部15t及びその近傍において、第2のp型半導体領域42に接するように形成される。以上のようにして半導体装置108が製造される。
【0139】
C1−3.効果:
以上のような半導体装置108によれば、第2実施形態と同様の効果を奏するショットキーバリアダイオードを提供することができる。
【0140】
また、本実施形態の半導体装置108によれば、第1の電極15の端部15tにn型不純物を含む第2のp型半導体領域42が接するため、第2のp型半導体領域42(及び第1のp型半導体領域41)によって、第1の電極15の端部15tに発生する電界の集中を緩和することができ、第1の電極15の端部15t周辺に流れるリーク電流を抑制することができる。
【0141】
D.第4実施形態:
D1−1.半導体装置の構成:
図16は、第4実施形態における半導体装置109を示す図である。半導体装置109は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成された縦型のGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置109は、ジャンクションバリアーショットキー(Junction Barrier Schottky:JBS)構造を有するダイオードである。
【0142】
半導体装置109は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域41と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である第1の電極15と、カソード電極である第2の電極6と、を備える。本実施形態の半導体装置109と、第3実施形態の半導体装置108とが異なる主な点は、第1の電極15に、面方向において所定の間隔で配置された第2のp型半導体領域42が接している点である。いいかえると、第3実施形態の半導体装置108では、第2のp型半導体領域42が、第1の電極15の端部15t及びその近傍と、周辺部Sと、である第1の電極15の外側となる領域に位置していたのに対し、本実施形態の半導体装置109では、第2のp型半導体領域42が、第1の電極15の外側の領域に加え、さらに、第1の電極15の内側となる領域に、面方向において所定の間隔で配置されている点である。なお、
図16に示す半導体装置109では、各周辺部Sには、第1のp型半導体領域41と第2のp型半導体領域42と、からなるp型半導体領域が2つ位置しているが、他の実施形態では、このp型半導体領域は、周辺部Sに1つ位置していてもよいし、2つより多く位置していてもよい。
【0143】
半導体装置109においては、pn接合界面23は、第1の電極15の端部15t及びその近傍だけでなく、第1の電極15の内側となる領域にも位置している。本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域41におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。本実施形態における半導体装置109のその他の構成は、上述の第3実施形態における半導体装置108と同様であるため説明を省略する。
【0144】
D1−2.半導体装置の製造方法:
半導体装置109の製造では、第1のp型半導体領域41が形成される工程(
図2、ステップS110)において、半導体装置109における周辺部Sと、後に形成される第1の電極15の端部15t及びその近傍と、第1の電極15の下面と、に第1のp型半導体領域41が接するように形成される。第1の電極15の下面に接する第1のp型半導体領域41は、面方向において所定の間隔で配置するように形成される。第1のp型半導体領域41が形成されると、上述の第3実施形態と同様に、第1のp型半導体領域41に対してイオン注入が行われることによって、第2のp型半導体領域42が形成される(
図2、ステップS120)。なお、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域41におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるようにイオン注入を行うことによって、第2のp型半導体領域42が形成される。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第2のp型半導体領域42が形成される。本実施形態における半導体装置109のその他の製造方法は、上述の第3実施形態における半導体装置108の製造方法と同様であるため説明を省略する。
【0145】
D1−3.効果:
以上のような半導体装置109によれば、上述の第3実施形態の効果と同様の効果を奏するJBS構造を有する半導体装置を提供することができる。
【0146】
また、本実施形態の半導体装置109によれば、第2のp型半導体領域42は、第1の電極15の端部15t及びその近傍だけでなく、第1の電極15の内側となる領域にも位置している。そのため、半導体装置109に逆バイアスが印加された場合において、第1の電極15と半導体層(第1のn型半導体層2)との界面を空乏化させることができる。その結果、半導体層の表面に発生する電界集中を十分に緩和でき、逆バイアスが印加された場合におけるリーク電流を十分に抑制することができる。
【0147】
D2.第4実施形態の変形例1:
図17は、第4実施形態の変形例1における半導体装置110を示す図である。半導体装置110は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域41と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である電極5及びアノード電極である電極15から構成された第1の電極19と、カソード電極である第2の電極6と、を備える。
【0148】
本変形例においては、第2のp型半導体領域42は、第1の電極19の備える電極15の端部15t及びその近傍と、半導体装置110の周辺部Sと、第1の電極19の備える電極5の下面に接する箇所と、に位置している。
【0149】
第1の電極19は、基板1の第1の面1u側の上方に位置する。第1の電極は、複数の電極5と、電極15と、を備える。電極5は、第2のp型半導体領域42にオーミック接触するオーミック電極である。本実施形態では、電極5は、パラジウム(Pd)から主に形成される層を積層した後に、熱処理を加えた電極である。各電極5の下面には、それぞれ、第2のp型半導体領域42が接している。電極15は、複数の電極5の上面から第1のn型半導体層2の上面にわたって形成されている。電極15は、第1のn型半導体層2及び第2のp型半導体領域42に接している。本実施形態では、電極15は、電極15の端部15tおよびその近傍において、第2のp型半導体領域42に接している。本実施形態では、電極15は、ニッケル(Ni)から主に形成される層を積層した電極である。電極15は、第1のn型半導体層2及び第2のp型半導体領域にショットキー接触する。電極15は、ショットキー電極でもある。電極15の端部15tは、ショットキー接合の端部でもある。
【0150】
本変形例においても、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域41におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、本変形例においても、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。本変形例における半導体装置110のその他の構成は、上述の第4実施形態における半導体装置109と同様であるため説明を省略する。
【0151】
半導体装置110の製造では、各電極が形成される工程(
図2,ステップS130)において、半導体装置110の中心部における複数の第2のp型半導体領域42上に電極5が形成された後、オーム性接触を得るための熱処理が行われる。次に、基板1の下面1sに第2の電極6が形成される。第2の電極6が形成された後、オーム性接触を得るための熱処理が行われる。なお、電極5と第2の電極6との熱処理は、同時に行われてもよい。次に、複数の電極5の上面から第1のn型半導体層2の上面にわたって、電極15が形成される。電極15は、端部15t及びその近傍において、第2のp型半導体領域42に接するように形成される。なお、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域41におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるようにイオン注入を行うことによって、第2のp型半導体領域42が形成される。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第2のp型半導体領域42が形成される。本変形例における半導体装置110のその他の製造方法は、上述の第4実施形態における半導体装置109の製造方法と同様であるため説明を省略する。
【0152】
以上のような半導体装置110によれば、上述の第4実施形態と同様の効果を奏する。
【0153】
また、本変形例の半導体装置110によれば、複数の電極5は、それぞれ、第2のp型半導体領域42の上面に接している。そのため、半導体装置110に順バイアスが印加された場合において、半導体装置110(pn接合部分)に電流が流れやすくなり、半導体装置110におけるサージ耐性を向上させることができる。
【0154】
また、半導体装置110は、第1のn型半導体層2に接する電極15と、第2のp型半導体領域42に接する電極5と、が積層された第1の電極19を備えるため、半導体装置110において、電極5と電極15とに同じ電位の電圧を印加することができる。
【0155】
E.第5実施形態:
図18は、第5実施形態における半導体装置111を示す図である。半導体装置111は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。半導体装置111は、縦型のPINダイオード(P-Intrinsic-N Diode)である第1の半導体装置107aと、ジャンクションバリアーショットキー(Junction Barrier Schottky:JBS)構造を有するダイオードである第2の半導体装置109aと、を備え、同一チップ内に集積化した半導体装置である。
【0156】
第1の半導体装置107aは、上述の第2実施形態の変形例1における半導体装置107(
図14)と同様の構成を備える。第1の半導体装置107aは、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域41と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である第1の電極5及びアノード電極である第1の電極15と、カソード電極である第2の電極6と、を備える。第1の半導体装置107aでは、第2のp型半導体領域42は、面方向において、半導体装置107の中心部と、周辺部Sと、に位置する。中心部における第2のp型半導体領域42は、第1の電極5の下面の全面に接している。
【0157】
第2の半導体装置109aは、第4実施形態における半導体装置109(
図16)と同様の構成を備える。第2の半導体装置109aは、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域41と、第2のp型半導体領域42と、アノード電極である第1の電極15と、カソード電極である第2の電極6と、を備える。第2の半導体装置109aでは、第2のp型半導体領域42は、第1の電極15の端部15t及びその近傍と、周辺部Sとに配置されている。さらに、第2の半導体装置109aでは、第2のp型半導体領域42は、第1の電極15の内側となる領域に、面方向において所定の間隔で配置されている。
【0158】
半導体装置111において、第1の半導体装置107aの備える基板1と、第2の半導体装置109aの備える基板1と、は、同一の基板である。本実施形態では、半導体装置111において、第1の半導体装置107aの備える第1のn型半導体層2と、第2の半導体装置109aの備える第1のn型半導体層2と、は、同一のn型半導体層である。また、本実施形態では、半導体装置111において、第1の半導体装置107aの備える第2の電極6と、第2の半導体装置109aの備える第2の電極6と、は、同一の電極である。
【0159】
以上のような半導体装置111によれば、同一の基板1を用いて、上述の第2実施形態の変形例1及び上述の第4実施形態と同様の効果を奏する半導体装置を提供することができる。すなわち、本実施形態によれば、上述の第2実施形態の変形例1と同様の効果を奏する縦型のPINダイオード(P-Intrinsic-N Diode)と、上述の第4実施形態の効果を奏するジャンクションバリアーショットキー(Junction Barrier Schottky:JBS)構造を有するダイオードと、を集積化させた半導体装置を提供することができる。
【0160】
F.第6実施形態:
F1−1.半導体装置の構成:
図19は、第6実施形態における半導体装置112を示す図である。本実施形態における半導体装置112は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置112は、縦型のバイポーラトランジスタ(Bipolar transistor)である。
【0161】
半導体装置112は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域31と、第2のp型半導体領域42と、第2のn型半導体領域14と、ベース電極である第1の電極5と、コレクタ電極である第2の電極6と、エミッタ電極である第3の電極7と、リセス12と、を備える。
【0162】
第1のn型半導体層2は、基板1の厚み方向において、基板1と第1の電極5との間に位置する。第1のn型半導体層2のZ軸方向に沿った厚さは、約10μm(マイクロメートル)である。
【0163】
第1のp型半導体領域31は、第1のn型半導体層2の上面に接する。本実施形態では、第1のp型半導体領域31は、MOCVD法によって形成されている。第1のp型半導体領域31は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域31に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は約1×10
18cm
-3である。第2のn型半導体領域14の下面から第1のp型半導体領域31の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.4μm(マイクロメートル)である。
【0164】
第2のn型半導体領域14は、第1のp型半導体領域31の上方に位置する。本実施形態では、第2のn型半導体領域14は、第1のp型半導体領域31の上面に接する。第2のn型半導体領域14は、MOCVD法によって形成されている。第2のn型半導体領域14に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は約1×10
18cm
-3である。第2のn型半導体領域14のZ軸方向に沿った厚さは、約0.2μm(マイクロメートル)である。
【0165】
リセス12は、第2のn型半導体領域14の上面から第2のn型半導体領域14を貫通し第1のp型半導体領域31に達する段差部である。リセス12は、ドライエッチングによって形成されている。
【0166】
第2のp型半導体領域42は、第1のp型半導体領域31の上面に接する。本実施形態では、第2のp型半導体領域42は、リセス12の領域内部に形成されている。第2のp型半導体領域42は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域42に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、1×10
18cm
-3である。また、第2のp型半導体領域42は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域42に含まれる酸素(O)の平均濃度は、1×10
18cm
-3である。第2のp型半導体領域42の上面から下面までのZ軸方向に沿った厚さは、約0.1μm(マイクロメートル)である。
【0167】
ベース電極である第1の電極5は、リセス12に位置している。本実施形態では、第1の電極5は、第1の電極5の下面の全面において、第2のp型半導体領域42に接する。本実施形態では、第1の電極5は、第2のp型半導体領域42にオーミック接触する。本実施形態では、第1の電極5は、パラジウム(Pd)から主に形成される層を積層した後に、熱処理を加えた電極である。
【0168】
コレクタ電極である第2の電極6は、上述の第1実施形態と同様に、基板1の第2の面1s側に接する。本実施形態では、第2の電極6は、基板1の第2の面1s(下面)にオーミック接触する。本実施形態では、第2の電極6は、チタン(Ti)から主に成る層にアルミニウム(Al)から主に成る層を積層した後に熱処理を加えた電極である。
【0169】
エミッタ電極である第3の電極7は、第2のn型半導体領域14に接する。本実施形態では、第3の電極7は、第2のn型半導体領域14の上面にオーミック接触する。第3の電極7は、第1の電極5と異なる材料により構成された電極である。本実施形態では、第3の電極7は、チタン(Ti)から主に成る層にアルミニウム(Al)から主に成る層を積層した後に熱処理を加えた電極である。
【0170】
図19には、pn接合界面23が示されている。pn接合界面23は、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域31及び第2のp型半導体領域42とからなるp型半導体領域と、の接合部である。pn接合界面23は、n型半導体である第1のn型半導体層2とp型半導体である第1のp型半導体領域31との界面でもある。上述の第1実施形態と同様に、本実施形態においても、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。
【0171】
F1−2.半導体装置の製造方法:
半導体装置112の製造では、上述の第1実施形態と同様に、基板1と第1のn型半導体層2とが積層された積層体100aが用意される(
図2、ステップS100)。第1のn型半導体層2は、MOCVD法によって基板1上に形成される。第1のn型半導体層2の厚さは、約10μm(マイクロメートル)である。
【0172】
次に、第1のp型半導体領域31が形成される(
図2,ステップS110)。本実施形態では、MOCVD法によって、第1のn型半導体層2の上面に、Z軸方向に沿った厚さが約0.4μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均濃度が1×10
18cm
-3である第1のp型半導体領域31が形成される。
【0173】
次に、第2のn型半導体領域14が形成される。なお、上述の第1実施形態において、半導体装置100の製造方法を示す際に用いた工程図(
図2)には示されていないが、第2のn型半導体領域14が形成される工程を、「ステップS115」とも呼ぶ。本実施形態では、MOCVD法によって、第1のp型半導体領域31の上面に、Z軸方向に沿った厚さが約0.3μm(マイクロメートル)であり、シリコン(Si)の平均濃度が6×10
18cm
-3である第2のn型半導体領域14が形成される。
【0174】
次に、リセス12が形成される。リセス12は、リセス12が形成される領域において、ステップS115において形成された第2のn型半導体領域14の上面から、第1のp型半導体領域31に到達するまで、ドライエッチングが行われることによって形成される。リセス12が形成された後、第1のp型半導体領域31における不純物(マグネシウム(Mg))を活性化させるための熱処理が行われる。
【0175】
熱処理が行われた後、第2のp型半導体領域42が形成される(
図2、ステップS120)。第2のp型半導体領域42が形成される領域上を除く領域上に、フォトレジストを用いてパターンが形成され、パターンをマスクとして用いて、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、酸素(O)イオンが用いられる。本実施形態では、リセス12の第2のp型半導体領域42が形成される領域において、第1のp型半導体領域31の上面から−Z軸方向に0.1μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約1×10
18cm
-3となるように、イオン注入が行われる。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域31(リセス12の領域内部)に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、1.3×10
13cm
-2である。イオン注入の後に、パターンが除去される。なお、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるようにイオン注入を行うことによって、第2のp型半導体領域42が形成される。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第2のp型半導体領域42が形成される。
【0176】
ステップS120が行われた後、第1の電極5と、第2の電極6と、第3の電極7と、が形成される(
図2,ステップS130)。ステップS130では、電極が形成された後、各電極が接する半導体層又は半導体領域とのオーム性接触を得るための熱処理が行われる。本実施形態における半導体装置112のその他の製造方法は、上述の第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0177】
F1−3.効果:
以上のような半導体装置112によれば、第1実施形態の効果と同様の効果を奏するバイポーラトランジスタを提供することができる。
【0178】
G.第7実施形態:
G1−1.半導体装置の構成:
図20は、第7実施形態における半導体装置113を示す図である。半導体装置113は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置113は、トレンチ型の縦型MOSFET(Metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)である。
【0179】
半導体装置113は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域32,33と、第2のn型半導体領域24と、トレンチ8と、絶縁膜9と、制御電極であるゲート電極10と、ボディ電極5及びソース電極7を備える第1の電極18と、ドレイン電極である第2の電極6と、を備える。
【0180】
基板1は、上面である第1の面1uと、下面である第2の面1sと、を有し、面方向に広がる。本実施形態では、基板1は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本実施形態では、基板1は、n型不純物を含むn型半導体層である。本実施形態では、基板1は、シリコン(Si)をドナーとして含む。基板1に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、約1×10
18cm
−3である。
【0181】
第1のn型半導体層2は、基板1の厚み方向において、基板1と、ボディ電極5及びソース電極7からなる第1の電極18との間に位置する。本実施形態では、第1のn型半導体層2は、基板1の上面に接する。本実施形態では、第1のn型半導体層2は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本実施形態では、第1のn型半導体層2は、シリコン(Si)をドナーとして含む。第1のn型半導体層2に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、約1×10
16cm
−3であり、第1のn型半導体層2のZ軸方向に沿った厚さは、約10μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1のn型半導体層2は、MOCVD法によって形成されている。
【0182】
第1のp型半導体領域32は第1のn型半導体層2の上面に接する。第1のp型半導体領域33は、第1のp型半導体領域32の上面に接する。第1のp型半導体領域32、33は、MOCVD法によって形成されている。第1のp型半導体領域32、33は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域32に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は約5×10
18cm
−3であり、第1のp型半導体領域33に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は約5×10
19cm
−3である。第1のp型半導体領域32のZ軸方向に沿った厚さは、約0.45μm(マイクロメートル)であり、第2のp型半導体領域42の上面から第1のp型半導体領域33の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.15μm(マイクロメートル)である。
【0183】
第2のp型半導体領域42は、第1のp型半導体領域33の上面に接する。第2のp型半導体領域42は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域42に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、5×10
19cm
−3である。また、第2のp型半導体領域42は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域42に含まれる酸素(O)の平均濃度は、5×10
19cm
−3である。
【0184】
第2のn型半導体領域24は、第1のp型半導体領域32の上面に形成されており、面方向における第2のp型半導体領域42と制御領域C(詳細は後述)との間に位置する。第2のn型半導体領域24は、第1のp型半導体領域32の上面であって、第2のp型半導体領域42とは異なる領域に位置する。本実施形態では、第2のp型半導体領域42と第2のn型半導体領域24とは面方向において接しているが、他の実施形態では、第2のp型半導体領域42と第2のn型半導体領域24とは面方向において離れていてもよい。すなわち、面方向において、第2のp型半導体領域42と第2のn型半導体領域24との間に、第1のp型半導体領域33が位置していてもよい。本実施形態では、第2のn型半導体領域24は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第2のn型半導体領域24は、n型不純物を含むn型半導体からなる領域である。第2のn型半導体領域24は、シリコン(Si)をドナーとして含む。第2のn型半導体領域24に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、約2×10
20cm
−3であり、第2のn型半導体領域24のZ軸方向に沿った厚さは、約0.2μm(マイクロメートル)である。第2のn型半導体領域24は、第1のp型半導体領域33、32の一部にn型不純物をイオン注入することによって形成されている。第2のn型半導体領域24に含まれるn型不純物の平均濃度は、第1のp型半導体領域33に含まれるp型不純物の平均濃度よりも高い。第2のn型半導体領域24に含まれるn型不純物の平均濃度は、第1のp型半導体領域33に含まれるp型不純物の平均濃度の2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。また、第2のn型半導体領域24の良好な結晶性を確保する観点から、第2のn型半導体領域24に含まれるn型不純物の平均濃度は、1×10
22cm
−3以下であることが好ましい。
【0185】
トレンチ8は、第2のn型半導体領域24の上面から第2のn型半導体領域24及び第1のp型半導体領域33、32を貫通し、第1のn型半導体層2にまで落ち込んだ溝部である。本実施形態では、トレンチ8は、ドライエッチングによって形成されている。
【0186】
絶縁膜9は、トレンチ8と、トレンチ8周縁の第2のn型半導体領域24の上面と、を連続的に覆うように形成された膜である。本実施形態では、絶縁膜9は、二酸化シリコン(SiO
2)により形成されている。
【0187】
ゲート電極10は、絶縁膜9を介してトレンチ8の内側に形成された電極である。本実施形態では、ゲート電極10は、トレンチ8の内側に加え、トレンチ8の外側にわたって形成されている。本実施形態では、ゲート電極10は、アルミニウム(Al)から主に形成されている。ゲート電極を、「制御電極」とも呼ぶ。
【0188】
ボディ電極5は、第2のp型半導体領域24の少なくとも一部に接する。ボディ電極5は、第2のp型半導体領域42にオーミック接触する電極である。本実施形態では、ボディ電極5は、パラジウム(Pd)から主に形成される層を積層した後に、熱処理を加えた電極である。
【0189】
ソース電極7は、第2のn型半導体領域24にオーミック接触する電極である。ソース電極7を、「第3の電極」とも呼ぶ。本実施形態では、ソース電極7は、ボディ電極5の上面から第2のn型半導体領域24の上面にわたって形成されている。本実施形態では、ソース電極7は、チタン(Ti)から主に形成される層にアルミニウム(Al)から主に形成される層を積層した後に、熱処理を加えた電極である。ボディ電極5とソース電極7とは、互いに同電位で動作するように電気的に接続されている。ボディ電極5とソース電極7とを合わせた電極を、「第1の電極18」とも呼ぶ。
【0190】
ドレイン電極である第2の電極6は、基板1の下面にオーミック接触する電極である。本実施形態では、第2の電極6は、チタン(Ti)から主に成る層にアルミニウム(Al)から主に成る層を積層した後に熱処理を加えた電極である。
【0191】
図20には、pn接合界面23が示されている。pn接合界面23は、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域32、33及び第2のp型半導体領域42とからなるp型半導体領域と、の接合部である。pn接合界面23は、n型半導体である第1のn型半導体層2とp型半導体である第1のp型半導体領域32との界面でもある。本実施形態の半導体装置113においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域32,33におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。
【0192】
図20には、さらに、制御領域Cが示されている。制御領域Cは、第1の電極18と第2の電極6との間に流れる電流を制御するための領域である。制御領域Cは、基板1の第1の面1u側の上方に位置し、トレンチ8のX軸方向における幅と等しい幅を有する。制御領域Cは、絶縁膜9の一部とゲート電極10の一部とを含む。ゲート電極10に電圧が印加された場合、第1のp型半導体領域32に反転層が形成され、この反転層がチャネルとして機能することによって、第1の電極18と第2の電極6との間に導通経路が形成される。第1のp型半導体領域32を、「チャネル層」とも呼ぶ。制御領域Cと第2のp型半導体領域42とは、
図20に示すように、距離Lだけ離れている。なお、チャネル移動度を高める観点から、距離Lは0.1μm(マイクロメートル)以上であることが好ましい。半導体装置を微細化させる観点から、距離Lは10μm(マイクロメートル)以下であることが好ましい。
【0193】
G1−2.半導体装置の製造方法:
半導体装置113の製造では、上述の第1実施形態の変形例1における半導体装置101の製造方法と同様に、基板1と、第1のn型半導体層2とが積層された積層体が用意される(
図2,ステップS100)。第1のn型半導体層2は、MOCVD法によって基板1上に形成される。第1のn型半導体層2の厚さは、約10μm(マイクロメートル)である。
【0194】
次に、MOCVD法によって第1のp型半導体領域32と、第1のp型半導体領域32よりもアクセプタ濃度の高い第1のp型半導体領域33との2層が積層される(
図2,ステップS110)。具体的には、第1のn型半導体層2の上面に、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約0.45μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均能度が5×10
18cm
-3である第1のp型半導体領域32が形成される。続いて、第1のp型半導体領域32の上面の全面にわたって、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約0.15μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均能度が5×10
19cm
-3である第1のp型半導体領域33が形成される。
【0195】
次に、第2のn型半導体領域24が形成される(ステップS115)。本実施形態では、まず、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、ステップS110で形成された第1のp型半導体領域33の上面に、二酸化シリコン(SiO
2)からなる膜が積層される。積層された二酸化シリコン(SiO
2)からなる膜は、不純物分布を調整するための膜である。次に、第2のn型半導体領域24が形成される領域上を除く領域の二酸化シリコン(SiO
2)上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンが形成されると、パターンをマスクとして用いて、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、シリコン(Si)イオンが用いられる。本実施形態では、第1のp型半導体領域33の上面から−Z軸方向に0.2μm(マイクロメートル)の深さまでのシリコン(Si)の平均濃度が、約2×10
20cm
−3となるように、イオン注入が行われる。シリコン(Si)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域33,32に対し、複数回にわけて注入される。シリコン(Si)イオンの全ドーズ量は、5.2×10
15cm
−2である。イオン注入の後にパターンが除去される。
【0196】
次に、第2のp型半導体領域42が形成される(
図2,ステップS120)。本実施形態では、第2のn型半導体領域24が形成された製造過程における半導体装置に対して、第2のp型半導体領域42が形成される領域上を除く領域上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンは、後に形成される制御領域Cと第2のp型半導体領域42とが離れるように形成される。パターンが形成された後、パターンをマスクとして用いて、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、酸素(O)イオンが用いられる。本実施形態では、第1のp型半導体領域33の上面から−Z軸方向に0.1μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約5×10
19cm
−3となるように、イオン注入が行われる。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域33,32に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、6.5×10
14cm
−2である。イオン注入の後にパターンが除去されることによって、第2のp型半導体領域42が形成される。ステップS120が行われた後、第1実施形態と同様に、イオン注入された不純物を活性化させるための熱処理が行われる。なお、不純物を活性化させるための熱処理は、各不純物(シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、酸素(O))に対して別々に行われてもよく、シリコン(Si)と、マグネシウム(Mg)及び酸素(O)と、に分けて行われてもよい。本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域32,33におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるようにイオン注入を行うことによって、第2のp型半導体領域42が形成される。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第2のp型半導体領域42が形成される。
【0197】
ステップS120が行われた後、エッチングによってトレンチ8が形成される。トレンチ8は、
図20に示す制御領域Cが形成される領域において、第2のn型半導体領域24の上面から、第2のn型半導体領域24、第1のp型半導体領域33、32を貫通して第1のn型半導体層2に到達するまで、ドライエッチングが行われることによって形成される。その後、絶縁膜9が形成される。絶縁膜9は、例えば原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)により形成される。
【0198】
絶縁膜9が形成された後、ゲート電極10と、ボディ電極5と、ソース電極7と、ドレイン電極6と、が形成される(
図2,ステップS130)。ステップS130では、電極が形成された後、各電極が接する半導体層又は半導体領域とのオーム性接触を得るための熱処理が行われる。これらの工程を経て、
図20に示す半導体装置113が完成する。
【0199】
G1−3.効果:
以上のような半導体装置113によれば、上述の第1実施形態と同様の効果を奏するトレンチ型の縦型MOSFETを提供することができる。
【0200】
また、本実施形態の半導体装置113によれば、第2のp型半導体領域42と、第1の電極18と第2の電極6との間に流れる電流を制御するための制御領域Cと、は離れているため、チャネル形成領域にn型不純物が存在することによってチャネル移動度が低下することを抑制することができ、良好なチャネル移動度を有する半導体装置を提供することができる。そのため、電力用半導体に適した半導体装置を提供することができる。
【0201】
また、半導体装置113は、第2のn型半導体領域24に接するソース電極7と、第2のp型半導体領域42に接するボディ電極5と、が積層された第1の電極18を備えるため、半導体装置113において、ボディ電極5とソース電極7とに同じ電位の電圧を印加することができる。
【0202】
G2.第7実施形態の変形例1:
上述の第7実施形態において、第2のn型半導体領域24は、イオン注入によって形成されている。これに対し、第2のn型半導体領域24は、第1のp型半導体領域32上にMOCVD法によって形成されてもよい。このようにすれば、半導体装置113の製造において、イオン注入の工程数を削減することができる。
【0203】
G3.第7実施形態の変形例2:
上述の第7実施形態において第1の電極18は、ボディ電極5とソース電極7とが積層されて形成されている。これに対し、第1の電極18は、第2のp型半導体領域42と、第2のn型半導体領域24とに接して一連に形成されていてもよい。例えば、第1の電極18は、パラジウム(Pd)から主に形成される層と、チタン(Ti)から主に形成される層と、アルミニウム(Al)から主に形成される層と、を積層した後に、熱処理を加えた電極であってもよい。このようにすれば、第2のp型半導体領域42に接するボディ電極5と、第2のn型半導体領域24に接するソース電極7と、を別々に形成する場合と比較して、電極を形成するための工程数を削減することができる。
【0204】
H.第8実施形態:
H1−1.半導体装置の構成:
図21は、第8実施形態における半導体装置114を示す図である。半導体装置114は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置114は、トレンチ型の縦型MOSFET(Metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)である。
【0205】
半導体装置114は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域32、33と、第2のp型半導体領域42と、第2のn型半導体領域24と、トレンチ8と、絶縁膜9と、制御電極であるゲート電極10と、ボディ電極とソース電極とを兼ねる第1の電極17と、ドレイン電極である第2の電極6と、第1のp型半導体領域61と、第2のp型半導体領域62と、を備える。本実施形態の半導体装置114と、第7実施形態の半導体装置113とが異なる主な点は、第1のn型半導体層2内に第2のp型半導体領域62が位置する点である。また、第1のn型半導体層2内に、第1のp型半導体領域61が位置する点である。また、本実施形態の半導体装置114と、第7実施形態の半導体装置113とが異なる他の点は、第1の電極17が、第2のp型半導体領域42と、第2のn型半導体領域24とに接して一連に形成されている点である。
【0206】
第1のp型半導体領域61は、基板1の厚み方向において、基板1と第1の電極17との間に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域61は、第1のn型半導体層2の上に形成されている。本実施形態では、第1のp型半導体領域61は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のp型半導体領域61は、p型不純物を含むp型半導体からなる領域である。本実施形態では、第1のp型半導体領域61は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域61に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約5×10
19cm
-3であり、第1のp型半導体領域32の下面から第1のp型半導体領域61の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.4μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1のp型半導体領域61は、第1のn型半導体層2にp型不純物がイオン注入されることによって形成されている。
【0207】
第2のp型半導体領域62は、基板1の厚み方向において、基板1と第1の電極17との間に位置する。本実施形態では、第2のp型半導体領域62は第1のp型半導体領域61の上に形成されている。本実施形態では、第2のp型半導体領域62は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第2のp型半導体領域62は、p型不純物と、n型不純物と、を含んでおり、p型の特性を有するp型半導体からなる領域である。本実施形態では、第2のp型半導体領域62は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域62に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、5×10
19cm
-3である。また、本実施形態では、第2のp型半導体領域62は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域62に含まれる酸素(O)の平均濃度は、5×10
19cm
-3である。本実施形態では、第2のp型半導体領域62のZ軸方向に沿った距離は、約0.2μm(マイクロメートル)である。第2のp型半導体領域62の位置する第1のn型半導体層2内には、制御領域Cの備えるトレンチ8(絶縁膜9)の下面が位置する。
図12に示すように、制御領域Cと第2のp型半導体領域62とは離れている。第1のp型半導体領域61及び第2のp型半導体領域62を、「電界緩和領域」とも呼ぶ。
【0208】
第1の電極17は、第2のp型半導体領域42と第2のn型半導体領域24とに接しており、一連に形成されている。第1の電極17は、パラジウム(Pd)から主に形成される層と、チタン(Ti)から主に形成される層と、アルミニウム(Al)から主に形成される層と、を積層した後に、熱処理を加えた電極である。
【0209】
本実施形態の半導体装置114においても、上述の第7実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域32,33におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域62と、の間に位置する第1のp型半導体領域61におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。さらに、上述の第7実施形態と同様に、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。本実施形態におけるその他の半導体装置114の構成は、上述の第7実施形態における半導体装置113と同様であるため説明を省略する。
【0210】
H1−2.半導体装置の製造方法:
半導体装置114の製造では、上述の第7実施形態と同様に、基板1と第1のn型半導体層2とが積層された積層体が用意される(
図2、ステップS100)。第1のn型半導体層2は、MOCVD法によって基板1上に形成される。第1のn型半導体層2の厚さは、約10μm(マイクロメートル)である。
【0211】
次に、第1のp型半導体領域61が形成される(
図2、ステップS110)。本工程では、第1のp型半導体領域61が形成される領域上を除く領域の第1のn型半導体層2上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、第1のn型半導体層2上にp型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるp型不純物として、マグネシウム(Mg)イオンが用いられる。本実施形態では、第1のn型半導体層2の上面から−Z軸方向に0.4μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約5×10
19cm
−3となるように、イオン注入が行われる。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のn型半導体層2に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、2.6×10
15cm
−2である。イオン注入の後には、パターンが除去される。
【0212】
次に、第2のp型半導体領域62が形成される(
図2、ステップS120)。本工程においては、第2のp型半導体領域62が形成される領域上を除く領域上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンは、後に形成される制御領域Cと第2のp型半導体領域62との距離が離れるように、形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、酸素(O)イオンが用いられる。本実施形態では、第1のn型半導体層2の上面(イオン注入することによって形成された第1のp型半導体領域61の上面)から−Z軸方向に0.2μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約5×10
19cm
−3となるように、イオン注入が行われる。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域61に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、1.3×10
15cm
−2である。イオン注入の後には、パターンが除去される。第1のp型半導体領域61及び第2のp型半導体領域62が形成された後に、不純物を活性化させるための熱処理が行われる。
【0213】
次に、第1のp型半導体領域61及び第2のp型半導体領域62が形成された第1のn型半導体層2上に、上述の第7実施形態と同様に、第1のp型半導体領域32、33が形成され(
図2、ステップS110)、さらに、第7実施形態と同様の方法により、第1のp型半導体領域32の上面に第2のn型半導体領域24が形成される(ステップS115)。次に、上述の第7実施形態と同様に、第2のp型半導体領域42が形成され(
図2、ステップS120)、その後、各電極が形成される(
図2、ステップS130)。
【0214】
なお、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域32,33におけるアクセプタのシート濃度が、0.8×10
13cm
−2以上となるようにイオン注入を行うことによって、第2のp型半導体領域42が形成される。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離が、0.08μm以上となるように、第2のp型半導体領域42が形成される。
【0215】
H1−3.効果:
以上のような半導体装置114によれば、上述の第7実施形態と同様の効果を奏する。
【0216】
また、半導体装置114によれば、制御領域Cのトレンチ8の下面が存在する第1のn型半導体層2内に、n型不純物を含む第2のp型半導体領域62が位置するため、第2のp型半導体領域62によって、トレンチ8の下面に発生する電界集中を緩和することができる。
【0217】
さらに、半導体装置114によれば、第1の電極17は、第2のp型半導体領域42と、第2のn型半導体領域24とに接して一連に形成されているため、第2のp型半導体領域42に接するボディ電極5と、第2のn型半導体領域24に接するソース電極7と、を別々に形成する場合と比較して、電極を形成するための工程数を削減することができる。
【0218】
J.第9実施形態:
J1−1.半導体装置の構成:
図22は、第9実施形態における半導体装置115を示す図である。半導体装置115は、基板1と、第1のn型半導体層2と、第1のp型半導体領域31、41、61と、第2のp型半導体領域42、62と、第2のn型半導体領域14と、トレンチ8と、絶縁膜9と、ゲート電極10と、リセス12と、ボディ電極5及びソース電極7(第1の電極18)と、ドレイン電極である第2の電極6と、を備える。半導体装置115は、+X軸方向側における終端構造800として、段差部600を備える。本実施形態では、ソース電極7は、「第3の電極」でもある。本実施形態では、半導体装置115は、+X軸方向側と同様に、−X軸方向側に終端構造800を有する。半導体装置115は、さらに、配線電極120と、絶縁膜772と、を備える。
【0219】
第1のp型半導体領域41は、第1のp型半導体領域31の上面に接する。第1のp型半導体領域41は、p型不純物がイオン注入されることによって形成されている。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本実施形態では、第1のp型半導体領域41は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域41に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約1×10
19cm
-3であり、第2のp型半導体領域42の上面から第1のp型半導体領域41の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.15μm(マイクロメートル)である。
【0220】
第2のp型半導体領域42は、第1のp型半導体領域41の上面に接する。本実施形態では、第2のp型半導体領域42に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、1×10
19cm
-3である。また、第2のp型半導体領域42に含まれる酸素(O)の平均濃度は、1×10
19cm
-3である。
【0221】
本実施形態においても、上述の実施形態と同様に、第1のn型半導体層2と第2のp型半導体領域42と、の間に位置する第1のp型半導体領域31、41におけるアクセプタのシート濃度は、0.8×10
13cm
−2以上である。また、第2のp型半導体領域42と、第1のn型半導体層2とのZ軸方向に沿った距離(pn接合界面23から第2のp型半導体領域42の下面までのZ軸方向に沿った距離)は、0.08μm(マイクロメートル)以上である。
【0222】
第2のn型半導体領域14は、第1のp型半導体領域31の上面に形成されている。第2のn型半導体領域14に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、約1×10
18cm
−3であり、第2のn型半導体領域14のZ軸方向に沿った厚さは、約0.2μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第2のn型半導体領域14は、MOCVD法によって形成されている。
【0223】
リセス12は、第2のn型半導体領域14の上面から第2のn型半導体領域14を貫通し第1のp型半導体領域31に達する段差部である。リセス12は、ドライエッチングによって形成されている。
【0224】
半導体装置115の段差部600は、上面601と側面602と底面603とからなる。段差部600は、第2のn型半導体領域14から第1のp型半導体領域31を経て第1のn型半導体層2に至る段差を形成する。段差部600の箇所における第1のn型半導体層2内には、第2のp型半導体領域62が形成されている。具体的には、第2のp型半導体領域62は、第1のn型半導体層2内に位置しており、第2のp型半導体領域62の上面は、段差部の底面603に位置している。いいかえると、段差部600の箇所における第2のp型半導体領域62の上面は、段差部600の底面603と同一平面上に位置する。また、段差部600の箇所における第1のn型半導体層2内には、第1のp型半導体領域61が形成されている。段差部600の箇所における第1のp型半導体領域61の上面は、段差部600の底面603と同一平面上に位置する。
【0225】
第1のp型半導体領域61及び第2のp型半導体領域62の構成は、段差部600の箇所における第1のn型半導体層2内に形成されている点を除き、上述の第8実施形態における第1のp型半導体領域61及び第2のp型半導体領域62と同様である。
【0226】
半導体装置115は、複数のトレンチ8を備えており、それぞれのトレンチ8には、ゲート電極10が形成されている。半導体装置115では、ゲート電極10及び配線電極120は複数であり、ゲート電極10と配線電極120とは、X軸方向において交互に配置されている。本実施形態では、ゲート電極10及び配線電極120は、Y軸方向に沿って延びている。本実施形態では、半導体装置115における複数のゲート電極10は、図示しない部位で並列に接続されている。半導体装置115における複数の制御領域Cは、絶縁膜9の一部とゲート電極10の一部とを含む。各制御領域Cは、第2のp型半導体領域42、62と離れている。
【0227】
絶縁膜772は、電気絶縁性を有し、段差部600、絶縁膜9及びゲート電極10を覆う。本実施形態では、絶縁膜772は、二酸化シリコン(SiO
2)から形成されている。
【0228】
配線電極120は、導電性を有し、絶縁膜9に積層されている。配線電極120は、複数のソース電極7のそれぞれに接続する複数の接続部121eを有するソース配線電極である。これによって、複数のゲート電極10に対応する複数の素子が並列に接続される。本実施形態では、配線電極120は、アルミニウム(Al)から主に形成されている。
【0229】
段差部600に接する箇所における配線電極120と、段差部600に接する絶縁膜772とは、フィールドプレート構造を構成する。
【0230】
J1−2.半導体装置の製造方法:
半導体装置115の製造では、上述の第7実施形態と同様に第1のp型半導体領域31が形成される(
図2、ステップS110)。その後、上述の第7実施形態と同様に第2のn型半導体領域4が形成される(ステップS115)。次に、トレンチ8及び段差部600が形成される領域上を除く領域上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、形成された第2のn型半導体領域14の上面から、第2のn型半導体領域14及び第1のp型半導体領域31を貫通し第1のn型半導体層2に達するまでドライエッチングすることによって、トレンチ8及び段差部600が形成される。さらに、リセス12が形成される領域上を除く領域上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、形成された第2のn型半導体領域14の上面から、第2のn型半導体領域14を貫通し第1のp型半導体領域31に達するまでドライエッチングすることによって、リセス12が形成される。なお、トレンチ8を形成するためのドライエッチングと、段差部600を形成するためのドライエッチングとは、別々に行われてもよい。すなわち、トレンチ8と段差部600とは、別々に形成されてもよい。
【0231】
リセス12が形成された後、リセス12の領域内部と、段差部600の底面603の領域における第1のn型半導体層2とに、上述の第1実施形態における変形例1と同様にマグネシウム(Mg)イオンが注入されて、第1のp型半導体領域41、61が形成される(
図2、ステップS110)。その後、リセス12の領域内部に形成された第1のp型半導体領域41と、段差部600の底面603の領域に形成された第1のp型半導体領域61とに、酸素(O)イオンが注入されて、第2のp型半導体領域42が形成される(
図2、ステップS120)。次に、第2のp型半導体領域62が形成される(
図2、ステップS120)。その後、各種電極及び絶縁膜が形成される(
図2,ステップS130)。以上のようにして半導体装置115が製造される。
【0232】
J1−3.効果:
以上説明した第9実施形態によれば、リセス12を有する半導体装置115においても、第7実施形態と同様の効果を奏し、さらに、フィールドプレート構造により段差部600における電界集中を緩和することができる。その結果、多数の素子を並列で動作させる半導体装置150の電気的特性を向上させることができる。
【0233】
K.第10実施形態:
図23は、電力変換装置300の構成を示す説明図である。電力変換装置300は、交流電源Eから負荷Rに供給される電力を変換する装置である。電力変換装置300は、交流電源Eの力率を改善する力率改善回路の構成部品として、制御回路20と、トランジスタTRと、4つのダイオードD1と、コイルLcと、ダイオードD2と、キャパシタCpとを備える。本実施形態では、トランジスタTRは、第9実施形態の半導体装置115と同様である。また、本実施形態では、ダイオードD1は、第4実施形態の半導体装置109と同様である。
【0234】
電力変換装置300のダイオードD1,D2は、ショットキーバリアダイオードである。電力変換装置300において、4つのダイオードD1は、交流電源Eの交流電圧を整流するダイオードブリッジDBを構成する。ダイオードブリッジDBは、直流側の端子として、正極出力端Tpと、負極出力端Tnとを有する。コイルLcは、ダイオードブリッジDBの正極出力端Tpに接続されている。ダイオードD2のアノード側は、コイルLcを介して正極出力端Tpに接続されている。ダイオードD2のカソード側は、キャパシタCpを介して負極出力端Tnに接続されている。負荷Rは、キャパシタCpと並列に接続されている。
【0235】
電力変換装置300のトランジスタTRは、FET(Field-Effect Transistor)である。トランジスタTRのソース側は、負極出力端Tnに接続されている。トランジスタTRのドレイン側は、コイルLcを介して正極出力端Tpに接続されている。トランジスタTRのゲート側は、制御回路20に接続されている。電力変換装置300の制御回路20は、交流電源Eの力率が改善されるように、負荷Rに出力される電圧、および、ダイオードブリッジDBにおける電流に基づいて、トランジスタTRのソース−ドレイン間の電流を制御する。
【0236】
以上説明した第10実施形態によれば、トランジスタTRのデバイス特性を向上させることができる。その結果、電力変換装置300による電力変換効率を向上させることができる。
【0237】
なお、トランジスタTRは、第9実施形態の半導体装置115と同様であってもよいし、上述の他の実施形態及び変形例における半導体装置が用いられてもよい。また、ダイオードD1,D2は、第4実施形態の半導体装置109と同様であってもよいし、上述の他の実施形態及び変形例における半導体装置が用いられてもよい。
【0238】
L.他の変形例:
本発明は、上述した実施形態、実施例および変形例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、実施形態、実施例および変形例における技術的特徴のうち、発明の概要の欄に記載した各形態における技術的特徴に対応するものは、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えおよび組み合わせを行うことが可能である。また、本明細書中に必須なものとして説明されていない技術的特徴については、適宜、削除することが可能である。
【0239】
本発明が適用される半導体装置は、上述した構造に限られず、pn接合を有する半導体装置で適用可能である。例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などであってもよい。
【0240】
上述の実施形態及び変形例において、基板の材質は、上述した窒化ガリウム(GaN)やシリコン(Si)に限らず、サファイア(Al
2O
3)、炭化シリコン(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)などのいずれであってもよい。なお、上述したように、半導体装置に含まれるn型不純物及びp型不純物を活性化させる観点から、面方向の格子定数と、第1のn型半導体層2の面方向の格子定数と、の差は、5%以下とするであることが好ましい。このような基板の材質は、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化シリコン(SiC)であることが好ましく、窒化ガリウム(GaN)であることがより好ましい。
【0241】
上述の実施形態及び変形例において、各半導体層及び半導体領域の材質は、上述した窒化ガリウム(GaN)に限らず、シリコン(Si)、SiC(窒化シリコン)、またはIII族窒化物(例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)など)などの他の半導体材料であってもよい。
【0242】
上述の実施形態及び変形例において、n型不純物は、シリコン(Si)、酸素(O)、ゲルマニウム(Ge)などのいずれであってもよい。
【0243】
上述の実施形態及び変形例において、p型不純物は、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)、亜鉛(Zn)および炭素(C)などのいずれであってもよい。
【0244】
上述の実施形態及び変形例において、絶縁膜の材質は、電気絶縁性を有する材質であればよく、二酸化シリコン(SiO
2)の他、窒化シリコン(SiNx)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸窒化シリコン(SiON)、酸窒化アルミニウム(AlON)、酸窒化ジルコニウム(ZrON)、酸窒化ハフニウム(HfON)などの少なくとも1つであってもよい。絶縁膜は、単層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0245】
上述の実施形態及び変形例において、各電極の材質は、上述の実施形態の材質に限らず、他の材質であってもよい。第1の電極は、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、プラチナ(Pt)のいずれかを含んでいてもよい。
【0246】
上述の実施形態及び変形例において、結晶成長によって形成された半導体層は、イオン注入によって形成されてもよく、イオン注入によって形成された半導体層は、結晶成長によって形成されてもよい。例えば、半導体装置における第1のp型半導体領域の一部がイオン注入によって形成され、一部が結晶成長によって形成されてもよい。
【0247】
上述の実施形態及び変形例において、第1のp型半導体領域41、61を備える半導体装置は、第1のp型半導体領域41、61を備えていなくてもよい。また、第1のp型半導体領域41、61を備えていない半導体装置は、第1のp型半導体領域41、61を備えていてもよい。
【0248】
上述の実施形態及び変形例において、第1のn型半導体層2内に第2のp型半導体領域62を備えていない半導体装置は、第1のn型半導体層2内に第2のp型半導体領域62を備えていてもよい。さらに、第1のn型半導体層2内に、第1のp型半導体領域61を備えていてもよい。
【0249】
上述の実施形態及び変形例において、第2のp型半導体領域のアクセプタ濃度は、第1のp型半導体領域のアクセプタ濃度よりも高くなくともよい。第2のp型半導体領域のアクセプタ濃度は、第1のp型半導体領域のアクセプタ濃度と同じであってもよいし、低くてもよい。
【0250】
上述の実施形態及び変形例において、第2のp型半導体領域と、第1のn型半導体層との距離は、0.08μm以上でなくともよい。第2のp型半導体領域と、第1のn型半導体層との距離は、0.08μm未満であってもよく、例えば、0.07μm、0.05μm、であってもよいし、他の数値であってもよい。