特許第6662094号(P6662094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6662094
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
   B23K20/12 310
   B23K20/12 330
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-32840(P2016-32840)
(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公開番号】特開2017-148832(P2017-148832A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 久司
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 伸城
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−193143(JP,A)
【文献】 特開2015−213928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、
前記第一金属部材と、前記第一金属部材よりも薄い前記第二金属部材とを用意する準備工程と、
前記第一金属部材及び前記第二金属部材の端面同士を突き合わせて突合せ部を形成するとともに第一の段差を形成する突合せ工程と、
前記第一の段差に補助部材を配置する配置工程と、
前記第一金属部材及び前記第二金属部材の表面側から回転する前記回転ツールを前記第一の段差に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第一金属部材、第二金属部材及び補助部材に接触させた状態で前記突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う摩擦攪拌工程と
バリが形成された前記補助部材を前記第一金属部材及び前記第二金属部材から除去する除去工程と、を含み、
前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが前記補助部材に形成されるように、接合条件を設定することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、
前記第一金属部材と、前記第一金属部材よりも薄い前記第二金属部材とを用意する準備工程と、
前記第一金属部材及び前記第二金属部材の端面同士を突き合わせて突合せ部を形成するとともに第一の段差を形成する突合せ工程と、
前記第一の段差に補助部材を配置する配置工程と、
前記第一金属部材及び前記第二金属部材の表面側から回転する前記回転ツールを前記第一の段差に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第一金属部材、第二金属部材及び補助部材に接触させた状態で前記突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う摩擦攪拌工程と、を含み、
前記摩擦攪拌工程において、前記回転ツールの回転中心軸を前記補助部材側に傾斜させた状態で、前記突合せ部に沿って摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする接合方法。
【請求項3】
前記配置工程において、前記第一金属部材の表面と前記補助部材の表面とが面一になるように前記補助部材を配置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記配置工程において、前記第一金属部材の表面よりも前記補助部材の表面が高い位置となるように前記補助部材を配置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合方法。
【請求項5】
前記配置工程において、前記第一金属部材の表面よりも前記補助部材の表面が低い位置となるように前記補助部材を配置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合方法。
【請求項6】
前記摩擦攪拌工程において、前記回転ツールの回転中心軸を前記突合せ部に対して前記補助部材側に偏移させた状態で、前記突合せ部に沿って摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材同士を摩擦攪拌で接合する接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、第一金属部材と第二金属部材とを摩擦攪拌で接合する接合方法が開示されている。当該接合方法では、第一金属部材と第二金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成した後、回転ツールの攪拌ピンのみを第一金属部材及び第二金属部材に接触させた状態で突合せ部に対して摩擦攪拌を行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−39613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の接合方法であると、塑性流動化した金属を回転ツールのショルダ部で押さえないため、塑性流動化した金属が外部に溢れ出し接合部が金属不足になるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、接合部の金属不足を防ぐことができる接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、前記第一金属部材と、前記第一金属部材よりも薄い前記第二金属部材とを用意する準備工程と、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の端面同士を突き合わせて突合せ部を形成するとともに第一の段差を形成する突合せ工程と、前記第一の段差に補助部材を配置する配置工程と、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の表面側から回転する前記回転ツールを前記第一の段差に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第一金属部材、第二金属部材及び補助部材に接触させた状態で前記突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う摩擦攪拌工程と、バリが形成された前記補助部材を前記第一金属部材及び前記第二金属部材から除去する除去工程を含み、前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが前記補助部材に形成されるように、接合条件を設定することを特徴とする
【0007】
かかる接合方法によれば、第一金属部材と第二金属部材とが接合されるとともに、第一金属部材及び第二金属部材に加え、補助部材も同時に摩擦攪拌接合することにより、接合部の金属不足を防ぐことができる。
また、かかる接合方法によれば、バリを補助部材ごと除去できるので除去工程が容易となる。
また、かかる接合方法によれば、バリを除去する作業をより容易に行うことができる。
【0010】
また、前記配置工程において、前記第一金属部材の表面と前記補助部材の表面とが面一になるように前記補助部材を配置することが好ましい。かかる接合方法によれば、回転ツールを容易に挿入することができる。
【0011】
また、前記配置工程において、前記第一金属部材の表面よりも前記補助部材の表面が高い位置となるように前記補助部材を配置することが好ましい。かかる接合方法によれば、接合部の金属不足を確実に防ぐことができる。
【0012】
また、前記配置工程において、前記第一金属部材の表面よりも前記補助部材の表面が低い位置となるように前記補助部材を配置することが好ましい。かかる接合方法によれば、補助部材を容易に除去することができる。
【0013】
また、前記摩擦攪拌工程において、前記回転ツールの回転中心軸を前記突合せ部に対して前記補助部材側に偏移させた状態で、前記突合せ部に沿って摩擦攪拌接合を行うことが好ましい
【0014】
かかる接合方法によれば、補助部材が多く摩擦攪拌されるため、接合部の金属不足を確実に防ぐことができる。
また、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、前記第一金属部材と、前記第一金属部材よりも薄い前記第二金属部材とを用意する準備工程と、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の端面同士を突き合わせて突合せ部を形成するとともに第一の段差を形成する突合せ工程と、前記第一の段差に補助部材を配置する配置工程と、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の表面側から回転する前記回転ツールを前記第一の段差に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第一金属部材、第二金属部材及び補助部材に接触させた状態で前記突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う摩擦攪拌工程と、を含み、前記摩擦攪拌工程において、前記回転ツールの回転中心軸を前記補助部材側に傾斜させた状態で、前記突合せ部に沿って摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る接合方法によれば、接合部の金属不足を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態に係る準備工程、突合せ工程及び配置工程を示す断面図である。
図2】第一実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図3】第一実施形態に係る摩擦攪拌工程後を示す断面図である。
図4】第一実施形態に係る除去工程を示す断面図である。
図5】第一変形例に係る配置工程を示す断面図である。
図6】第二変形例に係る配置工程を示す断面図である。
図7】第三変形例に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図8】第二実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図9】第二実施形態に係る摩擦攪拌工程後を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る接合方法について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係る接合方法では、準備工程と、突合せ工程と、配置工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程と、を行う。なお、以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面という意味である。
【0018】
準備工程は、図1に示すように、第一金属部材1及び第二金属部材2を用意する工程である。第一金属部材1及び第二金属部材2は板状を呈する。第一金属部材1は、第二金属部材2よりも厚くなっている。第一金属部材1及び第二金属部材2の材料は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等から適宜選択すればよい。
【0019】
突合せ工程は、図1に示すように第一金属部材1と第二金属部材2とを突き合わせる工程である。突合せ工程では、第一金属部材1の端面1aと、第二金属部材2の端面2aとを突き合わせて突合せ部J1を形成する。また、第一金属部材1の表面1b、端面1a及び第二金属部材2の表面2bで第一の段差が形成される。
【0020】
配置工程は、図1に示すように、第一の段差に補助部材10を配置する工程である。補助部材10は金属製の板状部材である。補助部材10は摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、本実施形態では第一金属部材1及び第二金属部材2と同じ材料になっている。補助部材10の板厚は、第一の段差の高さ(表面2bから表面1bまでの高さ)と同等になっている。したがって、第一金属部材1の表面1bと補助部材10の表面10bとは面一になっている。なお、第一の段差の高さ(補助部材10の厚さ)は、後記する摩擦攪拌工程後の塑性化領域Wが金属不足にならない程度に適宜設定する。
【0021】
配置工程では、補助部材10の裏面10cと第二金属部材2の表面2bとを面接触させつつ、補助部材10の端面10aと第一金属部材1の端面1aとを面接触させる。また、第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10を治具(図示省略)を用いて架台Tに移動不能に拘束する。
【0022】
摩擦攪拌工程は、図2に示すように、接合用回転ツールFを用いて第一金属部材1と第二金属部材2との突合せ部J1を摩擦攪拌によって接合する工程である。接合用回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。接合用回転ツールFは、特許請求の範囲の「回転ツール」に相当する。接合用回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、摩擦攪拌装置の回転軸(図示省略)に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈している。
【0023】
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、接合用回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。言い換えると、螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て左回りに形成されている。
【0024】
なお、接合用回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。言い換えると、この場合の螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て右回りに形成されている。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。螺旋溝は省略してもよい。
【0025】
接合用回転ツールFは、マシニングセンタ等の摩擦攪拌装置に取り付けてもよいが、例えば、先端にスピンドルユニット等の回転手段を備えたアームロボットに取り付けてもよい。アームロボットに接合用回転ツールFを取り付けることにより接合用回転ツールFの回転中心軸Fcの傾斜角度を容易に変更することができる。
【0026】
摩擦攪拌工程では、突合せ部J1に右回転させた攪拌ピンF2のみを挿入し、被接合金属部材と連結部F1とは離間させつつ相対移動させる。言い換えると、攪拌ピンF2の基端部は露出させた状態で摩擦攪拌接合を行う。そして、第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10と攪拌ピンF2とを接触させた状態で突合せ部J1に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。
【0027】
本実施形態では、接合用回転ツールFの進行方向右側に補助部材10が位置するように接合用回転ツールFの進行方向を設定する。接合用回転ツールFの回転方向及び進行方向は前記したものに限定されるものではなく適宜設定すればよい。例えば、接合用回転ツールFの進行方向右側に補助部材10を配置しつつ、接合用回転ツールFを左回転させてもよい。もしくは、接合用回転ツールFの進行方向左側に第一の段差を形成しつつ補助部材10を配置し、接合用回転ツールFを左右いずれかに回転させてもよい。接合用回転ツールFの回転方向等の条件と補助部材10との好ましい位置関係については後記する。
【0028】
攪拌ピンF2の挿入深さは、攪拌ピンF2と突合せ部J1とを接触させつつ、第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚等に応じて適宜設定すればよい。これにより突合せ部J1が摩擦攪拌接合される。接合用回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域Wが形成される。摩擦攪拌工程後は、図3に示すように、補助部材10に凹溝Pが形成されるとともに、補助部材10の端部にバリVが形成される。
【0029】
除去工程は、図3に示すように、補助部材10を第二金属部材2から除去する工程である。除去工程では、例えば手作業により、図4に示すように、凹溝Pを境にして補助部材10を第二金属部材2から離間する方向に折り曲げて第二金属部材2から除去する。
【0030】
以上説明した本実施形態に係る接合方法によれば、第一金属部材1と第二金属部材2とが接合されるとともに、第一金属部材1及び第二金属部材2に加え、補助部材10も同時に摩擦攪拌接合されることにより、接合部(塑性化領域W)の金属不足を防ぐことができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、摩擦攪拌工程によって補助部材10にバリVが形成されるが、除去工程において補助部材10ごと取り除くことができる。これにより、バリVを除去する作業を容易に行うことができる。図3に示すように、摩擦攪拌工程後は補助部材10の端面が突合せ部J1に向かうにつれて板厚が薄くなるように傾斜している。補助部材10は除去装置等を用いてもよいが、本実施形態では手作業で容易に補助部材10を取り除くことができる。また、本実施形態によれば、第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚が異なる場合であっても、補助部材10を用いているため接合部の金属不足を防ぐことができる。
【0032】
また、本実施形態では、補助部材10の表面10bと第一金属部材1の表面1bとを面一にしているため、摩擦攪拌工程の際に接合用回転ツールFを容易に挿入することができる。
【0033】
ここで、本実施形態に係る接合方法では、補助部材10を第一金属部材1及び第二金属部材2よりも薄く設定しているため、従来のように回転ツールのショルダ部を金属部材に押し込みながら摩擦攪拌を行うと、ショルダ部と補助部材10との接触により補助部材10が外部に飛ばされてしまい接合部の金属不足を補うことができない。しかし、本実施形態では、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2のみを第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10に接触させつつ摩擦攪拌を行うため、補助部材10が外部に飛ばされることなく接合部の金属不足を補うことができる。また、回転ツールのショルダ部を接触させる場合に比べて摩擦攪拌装置に作用する負荷を低減することができる。
【0034】
また、図2に示すように、本実施形態に係る摩擦攪拌工程では進行方向右側に補助部材10を配置するとともに接合用回転ツールFを右回転させるため、補助部材10側がRe側となる。Re側とは、接合用回転ツールFの外周における接線速度の大きさから送り速度の大きさが減算される側である。一方、Re側の反対側がAd側となる。Ad側とは、接合用回転ツールFの外周における接線速度の大きさから送り速度の大きさが加算される側である。
【0035】
例えば、接合用回転ツールFの回転速度が遅い場合では、塑性化領域WのRe側に比べてAd側の方が塑性流動材の温度が上昇しやすくなるため、Ad側にバリVが多く発生する傾向にある。一方、例えば、接合用回転ツールFの回転速度が速い場合、Ad側の方が塑性流動材の温度が上昇するものの、回転速度が速い分、Re側にバリVが発生する傾向にある。
【0036】
本実施形態では、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定しているため、Re側即ち補助部材10側にバリVが発生する。つまり、本実施形態ではバリVが補助部材10側に多く形成されるように接合用回転ツールFの回転速度、回転方向及び進行方向等を設定している。これにより、補助部材10に形成されたバリVは、補助部材10ごと除去されるため、バリ除去工程をより容易に行うことができる。また、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定することにより、接合用回転ツールFの移動速度(送り速度)を高めることができる。これにより、接合サイクルを短くすることができる。
【0037】
上記したように、摩擦攪拌工程の際に、接合用回転ツールFの進行方向のどちら側にバリVが発生するかは接合条件によって異なる。当該接合条件とは、接合用回転ツールFの回転速度、回転方向、移動速度(送り速度)、攪拌ピンF2の傾斜角度(テーパー角度)、第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10の材料、各部材の厚さ等の各要素とこれらの要素の組み合わせで決定される。接合条件に応じて、バリVが発生する側又はバリVが多く発生する側に補助部材10を配置するようにすれば、バリ除去工程を容易に行うことができるため好ましい。
【0038】
[第一変形例]
次に、第一実施形態の第一変形例について説明する。図5に示すように、第一変形例の配置工程では、第一金属部材1と補助部材10とで段差が生じている点で第一実施形態と相違する。つまり、第一の段差の高さよりも、補助部材10の板厚を薄く設定しているため、補助部材10の表面10bは、第一金属部材1の表面1bよりも低い位置に位置している。これにより、第一金属部材1の表面1bと、端面1aと、補助部材10の表面10bとで第二の段差が形成されている。その他の工程については、第一実施形態と同等であるため説明を省略する。
【0039】
第一変形例によれば、補助部材10を第一の段差の高さよりも薄く設定しているため、補助部材10が折れやすくなる。これにより、除去工程において補助部材10を容易に除去することができる。
【0040】
[第二変形例]
次に、第一実施形態の第二変形例について説明する。図6に示すように、第二変形例の配置工程では、第一金属部材1と補助部材10とで段差が生じている点で第一実施形態と相違する。つまり、第一の段差の高さよりも、補助部材10の板厚を厚く設定しているため、補助部材10の表面10bは、第一金属部材1の表面1bよりも高い位置に位置している。これにより、第一金属部材1の表面1bと、補助部材10の端面10aと、表面10bとで第二の段差が形成されている。その他の工程については、第一実施形態と同等であるため説明を省略する。
【0041】
第二変形例によれば、補助部材10を第一の段差の高さよりも厚く設定している。これにより、摩擦攪拌工程では、第一実施形態よりも補助部材10が多く摩擦攪拌されるため、金属不足をより確実に防ぐことができる。
【0042】
[第三変形例]
次に、第一実施形態の第三変形例について説明する。図7に示すように、第三変形例の摩擦攪拌工程では、接合用回転ツールFの回転中心軸Fcを、突合せ部J1を通る境界線Cに対して補助部材10側に傾斜させた状態で、突合せ部J1に沿って相対移動させて突合せ部J1を摩擦攪拌接合する。このように、接合用回転ツールFを補助部材10側に傾倒させることにより、第一実施形態よりも補助部材10が多く摩擦攪拌されるため、金属不足をより確実に防ぐことができる。
【0043】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る接合方法について説明する。第二実施形態に係る接合方法は、図8に示すように、接合用回転ツールFの回転中心軸Fcを突合せ部J1よりも補助部材10側に偏移させている点で主に相違する。本実施形態に係る接合方法では、準備工程と、突合せ工程と、配置工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程とを行う。第二実施形態に係る準備工程、突合せ工程及び配置工程は第一実施形態と略同等であるため説明を省略する。
【0044】
第二実施形態に係る摩擦攪拌工程では、図8,9に示すように、接合用回転ツールFを用いて突合せ部J1を摩擦攪拌接合する。本実施形態に係る摩擦攪拌工程では、接合用回転ツールFの進行方向左側に補助部材10を配置しつつ、接合用回転ツールFを左回転させる。これにより、進行方向右側がAd側となり、左側がRe側となる。また、本実施形態に係る摩擦攪拌工程では、接合用回転ツールFの回転中心軸Fcを、突合せ部J1(境界線C)よりも補助部材10側に位置するように偏移させ、偏移させた状態で突合せ部J1と平行に接合用回転ツールFを相対移動させる。
【0045】
除去工程では、第一実施形態と同じ要領で補助部材10を凹溝Pで折り曲げて、補助部材10をバリVごと除去する。
【0046】
以上説明した第二実施形態に係る摩擦攪拌工程では、接合用回転ツールFの回転中心軸Fcを偏移させた状態で摩擦攪拌を行うため、第一実施形態に比べて補助部材10を多く摩擦攪拌することができる。これにより、接合部(塑性化領域W)の金属不足を確実に防ぐことができる。また、本実施形態では、接合用回転ツールFを高速で回転させているため、バリVがRe側、つまり、補助部材10側に形成される。本実施形態に係る摩擦攪拌工程では、補助部材10側にバリVが発生するように接合条件を設定し、バリVごと補助部材10を除去することにより、バリVを容易に除去することができる。
【0047】
以上本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では第一金属部材1及び第二金属部材2を異なる板厚となるように設定したが、同じ板厚としてもよい。この場合の突合せ工程では、同じ板厚の第一金属部材1と第二金属部材2を段差ができるように端面同士をずらして突き合わせて突合せ部J1を形成するようにしてもよい。
【0048】
また、第一変形例〜第三変形例において、第二実施形態のように接合用回転ツールFを突合せ部J1(境界線C)から偏移させた状態で摩擦攪拌接合をしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 第一金属部材
2 第二金属部材
10 補助部材
F 接合用回転ツール(回転ツール)
F1 連結部
F2 攪拌ピン
J1 突合せ部
V バリ
W 塑性化領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9