特許第6662210号(P6662210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6662210
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
   B23K20/12 310
   B23K20/12 330
   B23K20/12 364
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-121683(P2016-121683)
(22)【出願日】2016年6月20日
(65)【公開番号】特開2017-225981(P2017-225981A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2018年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 久司
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 伸城
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−131323(JP,A)
【文献】 特開2015−213928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、
前記第一金属部材の端面と前記第二金属部材の裏面とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、
前記第二金属部材の表面のうち前記第一金属部材に対応する位置に補助部材を配置する配置工程と、
回転する前記攪拌ピンを前記補助部材の表面側から挿入し、前記攪拌ピンのみを、前記第二金属部材及び前記補助部材、又は、前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材に接触させた状態で前記回転ツールを相対移動させて前記突合せ部を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌工程と、
バリが形成された補助部材を前記第二金属部材から除去する除去工程と、を含み、
前記摩擦攪拌工程の際に、前記回転ツールの回転中心軸が通る予定位置を接合基準線と設定した場合、
前記配置工程では、前記接合基準線に対して一方側にのみ前記補助部材を配置し、
前記摩擦攪拌工程では、前記補助部材に前記バリが発生するように接合条件を設定することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、
前記第一金属部材の端面と前記第二金属部材の裏面とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、
前記第二金属部材の表面のうち前記第一金属部材に対応する位置に補助部材を配置する配置工程と、
回転する前記攪拌ピンを前記補助部材の表面側から挿入し、前記攪拌ピンのみを、前記第二金属部材及び前記補助部材、又は、前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材に接触させた状態で前記回転ツールを相対移動させて前記突合せ部を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌工程と、
バリが形成された補助部材を前記第二金属部材から除去する除去工程と、を含み、
前記摩擦攪拌工程の際に、前記回転ツールの回転中心軸が通る予定位置を接合基準線と設定した場合、
前記配置工程及び摩擦攪拌工程では、前記接合基準線を跨ぐように前記補助部材を配置するとともに、
前記接合基準線に対して一方側の前記補助部材に前記バリを発生させ、かつ、前記摩擦攪拌工程後に他方側に前記補助部材が残存しないように補助部材の配置位置及び接合条件を設定することを特徴とする接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材同士を摩擦攪拌接合する接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、金属部材同士を正面視T字状に突き合わせ、突合せ部を摩擦攪拌接合する技術が開示されている。当該従来技術は、第一金属部材の端面と第二金属部材の裏面とを突き合わせた後、第二金属部材の表面側から回転ツールを挿入して突合せ部を摩擦攪拌接合するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3947271号公報
【特許文献2】特許第4056587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術であると、回転ツールのショルダ部を第二金属部材の表面に接触させて摩擦攪拌を行うため、摩擦攪拌装置にかかる負荷が大きくなるという問題がある。また、回転ツールのショルダ部を第二金部材の表面に接触させるため、塑性化領域の幅が大きくなる。第一金属部材と第二金属部材の内隅から塑性流動材が流出しないようにするためには第一金属部材の板厚を大きくしなければならない。
【0005】
このような観点から、本発明は、摩擦攪拌装置にかかる負荷を小さくすることができるとともに設計の自由度が高い接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、前記第一金属部材の端面と前記第二金属部材の裏面とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、前記第二金属部材の表面のうち前記第一金属部材に対応する位置に補助部材を配置する配置工程と、回転する前記攪拌ピンを前記補助部材の表面側から挿入し、前記攪拌ピンのみを、前記第二金属部材及び前記補助部材、又は、前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材に接触させた状態で前記回転ツールを相対移動させて前記突合せ部を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌工程と、バリが形成された補助部材を前記第二金属部材から除去する除去工程と、を含み、前記摩擦攪拌工程の際に、前記回転ツールの回転中心軸が通る予定位置を接合基準線と設定した場合、前記配置工程では、前記接合基準線に対して一方側にのみ前記補助部材を配置し、前記摩擦攪拌工程では、前記補助部材に前記バリが発生するように接合条件を設定することを特徴とする。
【0007】
かかる接合方法によれば、攪拌ピンのみを、第二金属部材及び補助部材、又は、第一金
属部材、第二金属部材及び補助部材に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行うため、従来技
術に比べて摩擦攪拌装置にかかる負荷を軽減することができる。また、攪拌ピンのみを挿
入するため、塑性化領域の幅を小さくすることができる。これにより、第一金属部材の板
厚も小さくすることができるため、設計の自由度を高めることができる。また、第一金属
部材及び第二金属部材に加えて、補助部材も摩擦攪拌接合することにより、接合部の金属
不足を防ぐことができる。また、バリが形成された補助部材を前記第二金属部材から除去する除去工程を含むことが好ましい。かかる接合方法によれば、バリを補助部材ごと容易に除去することができる。かかる接合方法によれば、接合基準線に対して一方側のみに配置された補助部材にバリを集約させることができるため、バリをより容易に除去することができる。
【0008】
また、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、前記第一金属部材の端面と前記第二金属部材の裏面とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、前記第二金属部材の表面のうち前記第一金属部材に対応する位置に補助部材を配置する配置工程と、回転する前記攪拌ピンを前記補助部材の表面側から挿入し、前記攪拌ピンのみを、前記第二金属部材及び前記補助部材、又は、前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材に接触させた状態で前記回転ツールを相対移動させて前記突合せ部を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌工程と、バリが形成された補助部材を前記第二金属部材から除去する除去工程と、を含み、前記摩擦攪拌工程の際に、前記回転ツールの回転中心軸が通る予定位置を接合基準線と設定した場合、前記配置工程及び摩擦攪拌工程では、前記接合基準線を跨ぐように前記補助部材を配置するとともに、前記接合基準線に対して一方側の前記補助部材に前記バリを発生させ、かつ、前記摩擦攪拌工程後に他方側に前記補助部材が残存しないように補助部材の配置位置及び接合条件を設定することを特徴とする
【0009】
かかる接合方法によれば、攪拌ピンのみを、第二金属部材及び補助部材、又は、第一金
属部材、第二金属部材及び補助部材に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行うため、従来技
術に比べて摩擦攪拌装置にかかる負荷を軽減することができる。また、攪拌ピンのみを挿
入するため、塑性化領域の幅を小さくすることができる。これにより、第一金属部材の板
厚も小さくすることができるため、設計の自由度を高めることができる。また、第一金属
部材及び第二金属部材に加えて、補助部材も摩擦攪拌接合することにより、接合部の金属
不足を防ぐことができる。また、バリが形成された補助部材を前記第二金属部材から除去する除去工程を含むことが好ましい。かかる接合方法によれば、バリを補助部材ごと容易に除去することができる。かかる接合方法によれば、接合部の金属不足をバランスよく防ぐことができる。また、摩擦攪拌工程後は、一方側にのみ残存した補助部材をバリとともに除去することで、バリをより容易に除去することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る接合方法によれば、摩擦攪拌装置にかかる負荷を小さくすることができるとともに、設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態に係る接合方法の突合せ工程及び配置工程を示す斜視図である。
図2】第一実施形態に係る接合方法の摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図3】第一実施形態に係る接合方法の除去工程を示す断面図である。
図4】第一実施形態に係る接合方法の除去工程後を示す断面図である。
図5】第二実施形態に係る接合方法の突合せ工程及び配置工程を示す断面図である。
図6】第二実施形態に係る接合方法の摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図7】第二実施形態に係る接合方法の除去工程を示す断面図である。
図8】第三実施形態に係る接合方法の突合せ工程及び配置工程を示す断面図である。
図9】第三実施形態に係る接合方法の摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図10】第三実施形態に係る接合方法の除去工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る接合方法について図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る接合方法では、第一金属部材1と第二金属部材2とを正面視T字状に突合せて摩擦攪拌により接合する。本実施形態に係る接合方法では、突合せ工程と、配置工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程とを行う。なお、説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面を意味する。
【0017】
第一金属部材1及び第二金属部材2は、いずれも板状を呈する。第一金属部材1及び第二金属部材2は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、 マグネシウム、マグネシウム合金等の摩擦攪拌可能な金属から適宜選択される。第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚寸法は適宜設定すればよい。
【0018】
突合せ工程は、図1に示すように、第一金属部材1の端面1aと第二金属部材2の裏面2cとを突き合わせて突合せ部J1を形成する工程である。
【0019】
配置工程は、図1に示すように、補助部材10を配置する工程である。補助部材10は、板状の金属部材である。補助部材10の板厚は、後記する摩擦攪拌工程の際に形成される接合部(塑性化領域W1)に金属不足が発生しない程度の厚さに設定する。補助部材10は、本実施形態では、第一金属部材1及び第二金属部材2と同じ材料で形成されている。配置工程では、第二金属部材2の表面2bにおいて、第一金属部材1と対応する位置に補助部材10を配置する。第二金属部材2の表面2bと補助部材10の裏面10bとは面接触する。本実施形態に係る配置工程では、補助部材10の中央部と第一金属部材1の板厚方向の中心とが概ね重なる位置に配置する。
【0020】
摩擦攪拌工程は、図2に示すように、補助部材10の表面10a側から回転する接合用回転ツールFを挿入し、突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。接合用回転ツールFは、特許請求の範囲の「回転ツール」に相当する。接合用回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。連結部F1は、図示しない摩擦攪拌装置に取り付けられる部位であって、円柱状を呈する。
【0021】
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、接合用回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。
【0022】
なお、接合用回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。
【0023】
摩擦攪拌工程では、補助部材10の表面10aから右回転させた攪拌ピンF2を挿入する。摩擦攪拌工程では、攪拌ピンF2と第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10を接触させた状態で、図2の手前側から奥側に向けて突合せ部J1に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。また、摩擦攪拌工程では、攪拌ピンF2の基端側は露出させた状態で摩擦攪拌を行う。接合用回転ツールFの回転中心軸Cは、第一金属部材1の板厚方向の中心を通る位置に設定している。接合用回転ツールFの移動軌跡には、塑性化領域W1が形成される。攪拌ピンF2の挿入深さは適宜設定すればよいが、本実施形態では、攪拌ピンF2が第一金属部材1と接触するように設定している。
【0024】
なお、摩擦攪拌工程では、攪拌ピンF2のみを第二金属部材2及び補助部材10のみに接触させて摩擦攪拌接合を行ってもよい。この場合は、第二金属部材2と攪拌ピンF2との摩擦熱によって突合せ部J1が塑性流動化して接合される。補助部材10の表面10aにはバリVが形成される。
【0025】
除去工程は、図3に示すように、第二金属部材2から補助部材10を除去する工程である。除去工程では、補助部材10の両端をめくり上げつつ、凹溝Dを境に折り曲げるようにして切除する。凹溝Dは、塑性化領域W1のうち深くえぐれている部位である。除去工程は、切削工具等を用いてよいが、本実施形態では手作業で除去している。以上の工程により、第一金属部材1と第二金属部材2とが正面視T字状に接合される。
【0026】
以上説明した本実施形態に係る接合方法によれば、攪拌ピンF2のみを、第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10、又は、第二金属部材2及び補助部材10に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行うため、従来技術に比べて摩擦攪拌装置にかかる負荷を軽減することができる。これにより、第二金属部材2の板厚が大きい場合であっても、摩擦攪拌装置に大きな負荷がかからない状態で深い位置にある突合せ部J1を接合することができる。
【0027】
また、攪拌ピンF2のみを挿入するため、塑性化領域W1の幅を小さくすることができる。これにより、第一金属部材1の板厚も小さくすることができるため、第一金属部材1の設計の自由度を高めることができる。また、第一金属部材1及び第二金属部材2に加えて、補助部材10も摩擦攪拌接合することにより、図4に示すように接合部(塑性化領域W1)の金属不足を防ぐことができる。
【0028】
また、除去工程によれば、補助部材10ごとバリVを除去することができるため、別途バリを除去する作業を行わなくても第二金属部材2の表面2bをきれいに仕上げることができる。また、本実施形態の摩擦攪拌工程では、補助部材10の表面10aの中央部から接合用回転ツールFを挿入するため、接合用回転ツールFの挿入作業を容易に行うことができる。
【0029】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る接合方法について説明する。第二実施形態に係る接合方法では、突合せ工程と、配置工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程とを行う。第二実施形態に係る接合方法は、補助部材10の配置位置が第一実施形態と相違する。第二実施形態に係る接合方法では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0030】
突合せ工程では、図5に示すように、第一実施形態と同様に第一金属部材1の端面1aと、第二金属部材2の裏面2cとを突き合わせて突合せ部J1を形成する。
【0031】
ここで、図5に示すように、摩擦攪拌工程の際に、接合用回転ツールFの回転中心軸C(図6参照)が通る予定位置を「接合基準線X」と設定する。接合基準線Xは、本実施形態では第一金属部材1の板厚方向の中心と重なるように設定している。配置工程では、補助部材10を接合基準線Xに対して一方側のみの第二金属部材2の表面2bに配置しつつ、補助部材10の側面10cが、接合基準線Xと重なる位置に補助部材10を配置する。なお、接合基準線Xは、後記する摩擦攪拌工程の際に、第一金属部材1の側面1b,1cと第二金属部材2の裏面2cとの各内隅から塑性流動材が流出しない位置で適宜設定すればよい。
【0032】
摩擦攪拌工程は、図6に示すように、右回転させた接合用回転ツールFの回転中心軸Cを接合基準線Xと重なる位置に挿入し、図6の手前側から奥側に向けて接合用回転ツールFを相対移動させて突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。摩擦攪拌工程では、第一実施形態と同様に、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2のみを第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10に接触させるか、又は、第二金属部材2及び補助部材10に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。
【0033】
本実施形態では、接合用回転ツールFのシアー側(advancing side:回転ツールの外周における接線速度に回転ツールの移動速度が加算される側)が第二金属部材2のうち補助部材10が配置されていない側となるように接合用回転ツールFの移動方向と回転方向を設定している。接合用回転ツールFの回転方向及び進行方向は前記したものに限定されるものではなく適宜設定すればよい。
【0034】
例えば、接合用回転ツールFの回転速度が遅い場合では、フロー側(retreating side:回転ツールの外周における接線速度から回転ツールの移動速度が減算される側)に比べてシアー側の方が塑性流動材の温度が上昇しやすくなるため、塑性化領域W1外のシアー側にバリVが多く発生する傾向にある。一方、例えば、接合用回転ツールFの回転速度が速い場合、シアー側の方が塑性流動材の温度が上昇するものの、回転速度が速い分、塑性化領域W1外のフロー側にバリVが多く発生する傾向にある。
【0035】
本実施形態では、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定しているため、図7にも示すように、塑性化領域W1外のフロー側にバリVが多く発生する傾向にある。また、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定することにより、接合用回転ツールFの移動速度(送り速度)を高めることができる。これにより、接合サイクルを短くすることができる。
【0036】
摩擦攪拌工程の際に、接合用回転ツールFの進行方向のどちら側にバリVが発生するかは接合条件によって異なる。当該接合条件とは、接合用回転ツールFの回転速度、回転方向、移動速度(送り速度)、攪拌ピンF2の傾斜角度(テーパー角度)、被接合金属部材(第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10)の材質、被接合金属部材の厚さ等の各要素とこれらの要素の組合せで決定される。接合条件に応じて、バリVが発生する側又はバリVが多く発生する側が補助部材10側となるように設定すれば、後記する除去工程を容易に行うことができるため好ましい。
【0037】
除去工程は、第二金属部材2から補助部材10を除去する工程である。除去工程では、第一実施形態と同様に、補助部材10を折り曲げるようにして除去する。以上の工程により、第一金属部材1と第二金属部材2とが接合される。
【0038】
以上説明した第二実施形態に係る接合方法によっても第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、第二実施形態に係る配置工程では補助部材10を接合基準線Xに対して一方側に配置し、摩擦攪拌工程では補助部材10側にバリVが発生するように接合条件を設定した。これにより、接合基準線Xに対して一方側に配置された補助部材10にバリVを集約することができる。これにより、バリVを補助部材10ごと除去できるため、バリVを容易に除去することができる。
【0039】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る接合方法について説明する。第三実施形態に係る接合方法では、突合せ工程と、配置工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程とを行う。第三実施形態に係る接合方法では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0040】
突合せ工程では、図8に示すように、第一実施形態と同様に第一金属部材1の端面1aと、第二金属部材2の裏面2cとを突き合わせて突合せ部J1を形成する。本実施形態でも、接合基準線Xは第一金属部材1の板厚方向の中心と重なる位置に設定している。配置工程では、補助部材10を接合基準線Xに対して他方側の第二金属部材2の表面2bに配置しつつ、補助部材10の側面10cが接合基準線Xに対して一方側にわずかに突出するように補助部材10を配置する。補助部材10の厚さ及び接合基準線Xから側面10cまでの距離は、後記する摩擦攪拌工程において、接合部(塑性化領域W1)に金属不足が発生せず、かつ、摩擦攪拌工程後に一方側に補助部材10が残存しないように適宜設定する。
【0041】
摩擦攪拌工程では、図9に示すように、左回転させた接合用回転ツールFの回転中心軸Cを接合基準線Xと重なる位置に挿入し、図9の手前側から奥側に向けて接合用回転ツールFを相対移動させて突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。摩擦攪拌工程では、第一実施形態と同様に、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2のみを第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10に接触させるか、又は、第二金属部材2及び補助部材10に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。
【0042】
本実施形態では、接合用回転ツールFを左回転させているため、補助部材10のフロー側にバリVが形成される傾向にある。
【0043】
除去工程では、図10に示すように、第二金属部材2から補助部材10を除去する工程である。除去工程では、補助部材10を折り曲げて第二金属部材2から補助部材10を除去する。
【0044】
以上説明した第三実施形態に係る接合法によれば、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、本実施形態によれば、配置工程において、接合基準線Xに対して他方側に補助部材10を配置しつつ、一方側に補助部材10の側面10cをわずかに突出させる。また、摩擦攪拌工程では、突合せ部J1を摩擦攪拌接合しつつ、第二金属部材2の表面2bの一方側に補助部材10及びバリVが残存せず、補助部材10側にバリVが発生するように接合条件を設定する。これにより、接合部(塑性化領域W1)の金属不足をバランスよく防ぐことができるとともに、他方側に配置された補助部材10にバリVを集約することができる。これにより、バリVを補助部材10ごと除去できるため、バリVを容易に除去することができる。
【0045】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 第一金属部材
2 第二金属部材
10 補助部材
F 回転ツール
F1 連結部
F2 攪拌ピン
J1 突合せ部
W1 塑性化領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10