(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記プレス機では、プレス工程の下死点でプレス圧力を一定にする圧力制御が行われる。
【0005】
しかしながら、上記プレス機では、プレス工程においてプレス圧力が一定に制御されても、プレス材料の厚さや材質のばらつきによりプレス後の成形品の仕上がり寸法がばらつくという問題がある。
【0006】
このような成形品の仕上がり寸法のばらつきを抑えるために、位置制御コントローラを使用すれば、その調整工数も含めてコストが高くなる。
【0007】
本開示では、成形品の仕上がり寸法のばらつきを小さくできるプレス機を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るプレス機は、
油圧ポンプと、
上記油圧ポンプを駆動するモータと、
上記油圧ポンプから作動油が供給され、主機の金型を駆動するアクチュエータと、
上記アクチュエータの位置を検出する位置センサと、
上記アクチュエータに供給される作動油の圧力を検出する圧力センサと、
上記位置センサおよび上記圧力センサの出力に基づいて、上記モータを制御する制御装置と
を備え、
上記制御装置は、上記モータを制御して、上記位置センサにより検出された上記アクチュエータの位置が
、プレス加工される成形品の厚さが設定寸法となるときの目標位置に達した時点で上記作動油の圧力を低下させることを特徴とする。
【0009】
上記本開示によれば、位置センサにより検出されたアクチュエータの位置が目標位置に達した時点で作動油の圧力を低下させるように制御装置によりモータを制御することによって、プレス機の成形品の仕上がり寸法のばらつきを小さくできる。
【0010】
また、一実施形態のプレス機では、
上記制御装置は、
上記位置センサの出力に基づいて、上記圧力指令と上記流量指令とを出力する主機コントローラである第1コントローラと、
上記第1コントローラからの上記圧力指令と上記流量指令および上記圧力センサの出力に基づいて、上記モータの回転速度を制御する第2コントローラと、
を有し、
上記第1コントローラは、上記位置センサにより検出された上記アクチュエータの位置が
上記目標位置に達した時点で上記圧力指令を下げることにより上記作動油の圧力を低下させる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示のプレス機を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1は第1実施形態の油圧装置を用いたプレス機の概略ブロック図である。
【0014】
この第1実施形態のプレス機は、
図1に示すように、上型11と下型12とを有する金型10と、金型10の上型11を駆動するアクチュエータの一例としての油圧シリンダ20とを備えている。この油圧シリンダ20は、片ロッド油圧シリンダである。
【0015】
また、上記プレス機は、位置センサ61により検出された上型11の位置を表す位置検出信号を受ける主機コントローラ30と、主機コントローラ30からの圧力指令Piと流量指令Qiを受けるサーボドライバ40を備えている。上記主機コントローラ30は、第1コントローラの一例であり、サーボドライバ40は、第2コントローラの一例である。
【0016】
上記主機コントローラ30とサーボドライバ40で制御装置を構成している。
【0017】
さらに、上記プレス機は、油圧ポンプPと、油圧ポンプPを駆動するモータMと、モータMの回転速度を検出するエンコーダ50と、金型10の上型11の位置を検出する位置センサ61と、油圧ポンプPの吐出ポート側の作動油の圧力を検出する圧力センサ62と、油圧ポンプPの吐出ポートにポンプポート73が接続された方向制御弁70(4ポート3位置)と、方向制御弁70の負荷ポート71に出口ポート82が接続されたリリーフ弁80と、リリーフ弁80と並列に接続された逆止弁90を備える。上記逆止弁90は、リリーフ弁80の出口ポート82側から入口ポート81側への作動油の流れのみを許容する。
【0018】
上記油圧シリンダ20のヘッド側ポート21に方向制御弁70の負荷ポート72を接続している。また、方向制御弁70のタンクポート74にタンク100を接続している。
【0019】
また、上記サーボドライバ40は、圧力センサ62により検出された圧力を表す信号とエンコーダ50により検出されたモータMの回転速度を表す信号が入力される。このサーボドライバ40は、圧力センサ62により検出された圧力を表す負荷圧力Poの信号を主機コントローラ30に出力する。また、サーボドライバ40は、エンコーダ50により検出されたモータMの回転速度に基づいて、油圧ポンプPの吐出された作動油の流量を算出し、算出された流量Qoの信号を主機コントローラ30に出力する。
【0020】
上記サーボドライバ40は、主機コントローラ30からの圧力指令Piと流量指令Qiに基づいて、モータMを駆動する駆動信号を出力する。
【0021】
上記油圧シリンダ20とサーボドライバ40とエンコーダ50と位置センサ61と圧力センサ62と方向制御弁70とリリーフ弁80と逆止弁90およびタンク100で油圧装置を構成している。
【0022】
上記位置センサ61は、検出した上型11の位置から油圧シリンダ20のロッド20aの位置(すなわちアクチュエータの位置)を表す位置検出信号を出力する。この位置センサ61からの位置検出信号を受けて、主機コントローラ30は、サーボドライバ40への圧力指令Piと流量指令Qi、さらに方向制御弁70への制御信号を順次出力することにより、金型10を備える主機を制御してプレス加工を行う。
【0023】
上記構成のプレス機では、主機コントローラ30からの圧力指令Piと流量指令Qiおよび圧力センサ62の出力を受けて、サーボドライバ40は、モータMの回転速度を制御する。そして、位置センサ61により検出された上型11の位置が目標位置に達した時点で主機コントローラ30から圧力低下の圧力指令Piが出力され、その圧力指令Piを受けたサーボドライバ40は、エンコーダ50により検出されたモータMの回転速度に基づいて、負荷圧力Poが低下するようにモータMの回転速度を制御する。
【0024】
次に、
図2に従ってプレス機の動作を説明する。
図2において、横軸は時間[任意目盛]を表し、上側からシリンダ位置、負荷圧力Po、流量指令Qi、圧力指令Pi、方向制御弁70の動作をそれぞれ表している。ここで、シリンダ位置とは、位置センサ61により上型11の位置から得られた油圧シリンダ20のロッド20aの位置である。また、負荷圧力Poは、圧力センサ62により検出された油圧ポンプPの吐出ポート側の作動油の圧力である。
【0025】
<高速下降のステップ>
上記構成のプレス機において、
図1に示す油圧シリンダ20のピストン20bが最もヘッド側ポート21の側に位置する状態(「上昇端」)で、主機コントローラ30は、方向制御弁70を中央のオフ位置から右側の切り換え位置(「下降」)に切り換える。これにより、油圧ポンプPの吐出ポートが油圧シリンダ20のヘッド側ポート21に接続され、油圧シリンダ20のロッド側ポート22がリリーフ弁80を介してタンク100に接続される。リリーフ弁80は、シリンダ20が上型11の重量により自重降下するのを防止するためのカウンタバランス弁として機能する。
【0026】
そして、主機コントローラ30からの流量指令Qi,圧力指令Piおよび圧力センサ62の出力に基づいて、サーボドライバ40によりモータMの回転速度を制御して、油圧シリンダ20のピストン20bを高速で下降させる。
【0027】
<低速下降のステップ>
次に、下降途中でシリンダ位置が低速切換位置になると、流量指令Qiを下げることによりサーボドライバ40はモータMの回転速度を低下させ、油圧シリンダ20のピストン20bを低速で下降させる。
【0028】
この低速下降の途中で上型11の先端がプレス材料に接触してプレス加工が始まると、負荷圧力Poが徐々に上昇する。
【0029】
このとき、モータMの回転速度を制御して、油圧ポンプPから油圧シリンダ20のヘッド側ポート21に供給される作動油の流量を一定に制御しており、また上昇する負荷圧力Poよりも圧力指令Piを高く設定してあるため、負荷圧力Poが上昇しても油圧シリンダ20は低速で下降し続ける。
【0030】
<圧抜きのステップ>
そうして、シリンダ位置が目標位置になった時点で、主機コントローラ30は、圧力指令Piをゼロにする。これにより、圧力センサ62により検出される負荷圧力Poが一気に低下してほぼゼロとなる。
【0031】
ここで、目標位置とは、金型10の上型11と下型12との間隔、すなわちプレス加工された成形品の厚さが設定寸法tとなるときのシリンダ位置である。
【0032】
<高速上昇のステップ>
次に、主機コントローラ30は、圧力センサ62により検出される負荷圧力Poがほぼゼロになると、主機コントローラ30は、方向制御弁70を左側の切り換え位置(「上昇」)に切り換える。
【0033】
そして、主機コントローラ30からの流量指令Qi,圧力指令Piおよび圧力センサ62の出力に基づいて、サーボドライバ40によりモータMの回転速度を制御して、油圧シリンダ20のピストン20bを高速で上昇させて、シリンダ位置を元の上昇端の位置に戻す。
【0034】
このようにして、上記プレス機では、油圧シリンダ20により金型10の上型11を高速下降させて、目標位置の直前の低速切換位置で低速下降に切り換えた後に目標位置で圧力指令Piをゼロにしてプレス圧力を抜くことによって、シリンダ位置の下死点が常に目標位置となって一定し、成形品の仕上がり寸法のばらつきを抑えることが可能となる。
【0035】
図3は先行技術(特開2015−68389号公報)のプレス機(
図4に示す)の動作を示すグラフである。この先行技術のプレス機は、従来の一般的なプレス機と同様、プレス工程の下死点で負荷圧力Poが目標圧力になるように圧力制御を行う。
【0036】
<保圧のステップ>
この先行技術では、高速下降から低速下降に切り換えた後、圧力センサ142により検出される負荷圧力Poが目標圧力になると、負荷圧力Poを目標圧力のまま保持する保圧を所定時間(例えば数秒〜数十秒)行う。成形品の仕上がり寸法はこの工程で決まる。
【0037】
<圧抜きのステップ>
次に、保圧の終了後に、主機コントローラ170は、圧力センサ142により検出される負荷圧力Poがゼロになるまで圧力指令Piをゼロにする。
【0038】
<高速上昇のステップ>
次に、主機コントローラ170は、圧力センサ142により検出される負荷圧力Poがゼロになると、方向制御弁130を左側の切り換え位置(「上昇」)に切り換える。
【0039】
そして、主機コントローラ170からの流量指令Qi,圧力指令Piおよび圧力センサ142の出力に基づいて、コントローラ160によりモータ150の回転速度を制御して、油圧シリンダ120のピストンを高速で上昇させて、シリンダ位置を元の上昇端の位置に戻す。
【0040】
上記先行技術では、目標圧力になるように油圧ポンプ140の吐出圧力である負荷圧力Poを制御することにより、ほぼ同じ寸法の成形品が得られるが、プレス材料の厚さや材質のばらつきがあると、プレス工程におけるシリンダ位置の下死点が一定せず、プレス後の成形品の仕上がり寸法がばらつく(例えば±100μm〜±200μm)。保圧工程では、圧力は一定に制御されるが、シリンダ位置が一定になる保証はない。材料や金型の温度、さらに保圧時間などの様々な要因により油圧シリンダ120の下死点位置は変化する。
【0041】
これに対して、プレス工程のシリンダ位置の下死点が目標位置となる時点で圧抜きを行う第1実施形態のプレス機では、シリンダ位置(アクチュエータの位置)が目標位置に達した時点で負荷圧力Poを低下させるように制御装置(主機コントローラ30,サーボドライバ40)によりモータMを制御することによって、簡単安価な構成で金型10の下死点位置を高精度に制御できる。また、金型10によりプレス加工される成形品の厚さが設定寸法tになる位置に目標位置を設定することで、成形品の仕上がり寸法のばらつきを極めて小さくできる。この第1実施形態のプレス機では、プレス材料の厚さや材質のばらつきによらず、±10μmオーダーの寸法精度の成形品を得ることができた。
【0042】
また、上記シリンダ位置が目標位置に達した時点で主機コントローラ30(第1コントローラ)から出力された圧力低下の圧力指令Piを受けて、サーボドライバ40(第2コントローラ)は、圧力センサ62により検出される作動油の圧力が低下するようにモータMの回転速度を制御する。これにより、シリンダ位置が目標位置に達した時点で、すぐに作動油の圧力が低下し、圧力がほぼゼロになった時点で圧抜きが完了して油圧シリンダが元の位置に復帰可能となる。
【0043】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の油圧装置を用いたプレス機は、アクチュエータとして両ロッド油圧シリンダを備えている点を除いて第1実施形態のプレス機と同一の構成をしている。
【0044】
この第2実施形態のプレス機は、第1実施形態のプレス機と同様の効果を有する。
【0045】
上記第1,第2実施形態では、主機コントローラ30とサーボドライバ40で制御装置を構成したが、主機コントローラとサーボドライバの機能を備えた制御装置を用いてもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。