特許第6662600号(P6662600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6662600
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】室内機
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/20 20060101AFI20200227BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20200227BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20200227BHJP
   F24F 13/22 20060101ALI20200227BHJP
   F24F 13/26 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   F24F1/0007 401C
   F24F13/06 D
   F24F13/08 C
   F24F13/22 221
   F24F13/26
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-198840(P2015-198840)
(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公開番号】特開2017-72294(P2017-72294A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2016年9月21日
【審判番号】不服2019-1167(P2019-1167/J1)
【審判請求日】2019年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯野 峻也
(72)【発明者】
【氏名】北村 聖子
【合議体】
【審判長】 山崎 勝司
【審判官】 槙原 進
【審判官】 平城 俊雅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−237092(JP,A)
【文献】 特開2015−99009(JP,A)
【文献】 特開2003−232559(JP,A)
【文献】 特開2007−24345(JP,A)
【文献】 実開昭55−96323(JP,U)
【文献】 特開2013−148237(JP,A)
【文献】 特開2004−125313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0007
F24F 13/06
F24F 13/08
F24F 13/22
F24F 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調された気流を吹き出すための吹出口と、
前記吹出口の前方に配置されており、水平又は斜め上方に延びる第1面と、
前記第1面の上方に配置されており、後方へ行くほど上方になるように形成される面を有する第2面と、
前記吹出口から吹き出された吹出気流を前記第1面から剥離する第1剥離部と、
前記第2面に沿って下方に流れる室内空気を前記第2面から剥離する第2剥離部と、
前記第1剥離部と前記第2剥離部とを繋ぐ接続部とを備えており、
前記第1剥離部は、前記第1面の前端部に位置しており、
前記第2剥離部は、前記第2面における後方へ行くほど上方になるように形成される面の下端部に位置しており、
前記接続部は、前記第1剥離部において前記第1面から剥離した吹出気流と、前記第2剥離部において前記第2面から剥離した室内空気とが、前記接続部から離れた位置で混ざり合うように、前記第1面の延長面と前記第2面の延長面との内側に配置されていることを特徴とする室内機。
【請求項2】
前記接続部は、1つの平面又は後方に湾曲した1つの湾曲面により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の室内機。
【請求項3】
前記接続部における前記第1剥離部から前記第2剥離部までの距離Aは5mm以上、且つ、20mm以下であり、前記第1面の前記第1剥離部側端部における接平面と前記接続部の前記第1剥離部側端部における接平面とのなす角度θ1は、30°以上、且つ、90°以下であり、前記第2面の前記第2剥離部側端部における接平面と前記接続部の前記第2剥離部側端部における接平面とのなす角度θ2は、30°以上、且つ、90°以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の室内機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調された気流を吹き出すための吹出口を備えた室内機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸込口から吸い込んだ空気を空気調和して吹出口から吹き出す室内機であって、吹出口から吹き出される空気の上側を覆い、且つ、前方に行くほど上方になるように形成された案内面と、案内面の前端から後方に延びる面とを有する室内機が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる室内機では、吹出口から吹き出された空気がコアンダ効果により案内面に沿って上方に向かう。案内面の前端から後方に延びる面が形成されているので、案内面に沿って流れる空気が案内面の前端において室内機の前面から剥離し、室内の天井方向に向かって流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−232559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような室内機においては、案内面の前端において、吹出口からの吹出気流と、案内面よりも上方において室内機の前面に沿って上方から下方に向かって流れる室内空気とが混ざり合う。したがって、冷房運転時においては、吹出気流(冷気)と室内空気(暖気)とが混ざり合うことになり、案内面の前端部に結露が発生する。よって、結露水が滴下して家屋の床面や家財が汚れるという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、構造物の表面に結露が発生するのを抑制できる室内機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る室内機は、空調された気流を吹き出すための吹出口と、前記吹出口の前方に配置されており、水平又は斜め上方に延びる第1面と、前記第1面の上方に配置されており、後方へ行くほど上方になるように形成される面を有する第2面と、前記吹出口から吹き出された吹出気流を前記第1面から剥離する第1剥離部と、前記第2面に沿って下方に流れる室内空気を前記第2面から剥離する第2剥離部と、前記第1剥離部と前記第2剥離部とを繋ぐ接続部とを備えており、前記第1剥離部は、前記第1面の前端部に位置しており、前記第2剥離部は、前記第2面における後方へ行くほど上方になるように形成される面の下端部に位置しており、前記接続部は、前記第1剥離部において前記第1面から剥離した吹出気流と、前記第2剥離部において前記第2面から剥離した室内空気とが、前記接続部から離れた位置で混ざり合うように、前記第1面の延長面と前記第2面の延長面との内側に配置されていることを特徴とする。
【0007】
この室内機では、吹出気流と室内空気とは、第1面及び第2面からそれぞれ剥離した後に混ざり合う。よって、冷房運転時に吹出口から吹き出される冷気と室内空気の暖気とが混ざり合うことで、室内機の構造物に結露が発生するのを抑制できる。
【0008】
第2の発明に係る室内機は、第1の発明にかかる室内機において、前記第1剥離部は、前記第1面の前端部に位置しており、前記第2剥離部は、前記第2面における後方へ行くほど上方になるように形成される面の下端部に位置していることを特徴とする。の発明に係る室内機は、第1または第2の発明にかかる室内機において、前記接続部は、1つの平面又は後方に湾曲した1つの湾曲面により構成されていることを特徴とする。
【0009】
この室内機では、室内機の構造物に結露が発生するのを確実に抑制できる。
【0010】
の発明に係る室内機は、第1〜第3のいずれかの発明にかかる室内機において、前記接続部における前記第1剥離部から前記第2剥離部までの距離Aは5mm以上、且つ、20mm以下であり、前記第1面の前記第1剥離部側端部における接平面と前記接続部の前記第1剥離部側端部における接平面とのなす角度θ1は、30°以上、且つ、90°以下であり、前記第2面の前記第2剥離部側端部における接平面と前記接続部の前記第2剥離部側端部における接平面とのなす角度θ2は、30°以上、且つ、90°以下であることを特徴とする。
【0011】
この室内機では、吹出気流及び室内空気を第1剥離部及び第2剥離部において確実に剥離させ、また、剥離した吹出気流及び室内空気を確実に室内機の構造物から離れた位置で合流させることができる。よって、室内機の構造物に結露が発生するのをさらに確実に抑制できる。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【発明の効果】
【0016】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0017】
第1の発明では、吹出気流と室内空気とは、第1面及び第2面からそれぞれ剥離した後に混ざり合う。よって、冷房運転時に吹出口から吹き出される冷気と室内空気の暖気とが混ざり合うことで、室内機の構造物に結露が発生するのを抑制できる。
【0018】
の発明では、室内機の構造物に結露が発生するのを確実に抑制できる。
【0019】
の発明では、吹出気流及び室内空気を第1剥離部及び第2剥離部において確実に剥離させ、また、剥離した吹出気流及び室内空気を確実に室内機の構造物から離れた位置で合流させることができる。よって、室内機の構造物に結露が発生するのをさらに確実に抑制できる。
【0020】
【0021】
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態にかかる室内機の斜視図であり、(a)は斜め上方から見た図、(b)は斜め下方から見た図である。
図2図1の室内機の横断面図である。
図3図2に示す前面パネルの下端部の拡大図である。
図4】本発明の一変形例にかかる室内機における前面パネルの下端部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について、図1図3を参照しつつ説明する。
【0024】
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態の室内機1は、全体として一方向に細長い形状を有しており、その長手方向が水平となるように室内の壁面に据え付けられるものである。室内機1は、図示しない室外機と共に空気調和機を構成しており、室内の冷暖房を行う。なお、以下の説明において、室内機1が取り付けられる壁から突出する方向を「前方」と称し、その反対の方向を「後方」と称する。また、室内機1の長手方向を単に「長手方向」と称する。
【0025】
図2に示すように、室内機1は、ケーシング2、熱交換器3、室内ファン4、フィルタ5、及び2枚の水平羽根6a、6bを主に備えている。
【0026】
ケーシング2は、略直方体のグリル21と、グリル21の前面を覆う前面パネル22とを有する。ケーシング2の上面には、吸込口21aが形成されている。図1(a)に示すように、吸込口21aはグリル21と前面パネル22とに渡って形成されている。グリル21の下面には吹出口21bが形成されている。図1(b)に示すように、吹出口21bは、長手方向に長い矩形状の開口である。
【0027】
熱交換器3、室内ファン4、及びフィルタ5は、グリル21の内部に配置されている。室内ファン4は、長手方向に沿って延びており、吸込口21aを介してケーシング2内に空気を吸い込み、吹出口21bからケーシング2内の空気が吹き出されるように構成されている。熱交換器3は、側面視において両端が下方に向かって屈曲した逆V字状に形成され、室内ファン4の上方と前方とを取り囲むように配置されている。熱交換器3では、通過する空気との間で熱交換が行われる。また、熱交換器3の上方及び前方にはフィルタ5が配置されている。フィルタ5は、熱交換器3に向かって流入してくる空気に含まれる塵埃を除去する。
【0028】
2枚の水平羽根6a、6bは、吹出口21bに配置されている。水平羽根6a、6bは、吹出口21bから吹き出される空気流の上下方向の風向きを変更すると共に、吹出口21bの開閉を行うために設けられている。水平羽根6a、6bは、それぞれ長手方向に長い矩形状の板部材である。水平羽根6aは吹出口21b内の前側部分に配置され、水平羽根6bは吹出口21b内の後側部分に配置されている。
【0029】
前面パネル22は、上述のようにグリル21の前面を覆うものであり、その上端部が吸込口21aの一部を構成しており、下端部が吹出口21bの前端近傍に位置している。前面パネル22は、前方を向く面であり、吸込口21aの前端近傍から前面パネル22の下端部近傍まで下方に延びる正面22aを有している。前面パネル22の下端部には、吹出口21bの前方に配置されており、斜め上方に延びる第1面23と、第1面23の上方に配置されており、後方に行くほど上方になるように形成される第2面24と、第1面23と第2面24とを繋ぐ平面状の接続部25とが設けられている。第1面23及び第2面24は、下に凸の湾曲面である。
【0030】
図2において矢印で示すように、吹出口21bから吹き出された吹出気流は第1面23に沿って流れ、第1面23の前端部において第1面23から剥離する。すなわち、第1面23の前端部は吹出口21bからの吹出気流が前面パネル22から剥離する剥離部23aとして機能する。また、前面パネル22の正面22a及び第2面24に沿って下方に流れる室内空気は、第2面24の下端部において第2面24から剥離する。すなわち、第2面24の下端部は室内空気が前面パネル22から剥離する剥離部24aとして機能する。そして、接続部25は、吹出気流の剥離部23aと室内空気の剥離部24aとを繋いでいる。
【0031】
剥離部23aにおいて前面パネル22から剥離した吹出気流と、剥離部24aにおいて前面パネル22から剥離した室内空気とは、前面パネル22の前方の前面パネルから離れた位置で混ざり合う。なお、接続部25は、図2において破線で示す第1面23の延長面と第2面の延長面との内側に配置されている。
【0032】
接続部25における剥離部23aから剥離部24aまでの距離A(図3参照)は、10mmである。また、第1面23の剥離部23a側端部における接平面P1と接続部25の面とのなす角度θ1(図3参照)は、60°である。さらに、第2面24の剥離部24a側端部における接平面P2と接続部25の面とのなす角度θ2(図3参照)は、60°である。
【0033】
次に、室内機1の動作について説明する。
室内ファン4を駆動することにより、吸込口21aからケーシング2内に空気が吸い込まれる。ケーシング2内に吸い込まれた空気は、フィルタ5で塵埃の除去が行われた後、熱交換器3を通過して熱交換される。そして、室内ファン4を通過した後、水平羽根6a、6bに沿って流れて、空調された気流が吹出口21bから吹き出される。吹出口21bから吹き出された吹出気流は、コアンダ効果により斜め上方に延びる第1面23に沿って流れた後、第1面23の端部の剥離部23aで第1面23(前面パネル22)から剥離する。前面パネル22から剥離した吹出気流は、剥離部24aにおいて第2面24(前面パネル22)から剥離した室内空気と前面パネル22から離隔した位置で混ざり合った後、天井方向に向かう。
【0034】
以上のように、本実施形態の室内機1では、前面パネル22の下端部に、吹出口21bの前方に配置されており斜め上方に延びる第1面23と、第1面23の上方に配置されており後方に行くほど上方になるように形成される第2面24と、吹出口21bから吹き出された吹出気流を第1面23から剥離する剥離部23aと、第2面24に沿って流れる室内空気を第2面24から剥離する剥離部24aと、剥離部23aと剥離部24aとを繋ぐ接続部25とが設けられている。したがって、吹出気流と室内空気とは、第1面23及び第2面24からそれぞれ剥離した後に混ざり合う。よって、冷房運転時に吹出口21bから吹き出される冷気と室内空気の暖気とが混ざり合うことで、室内機1の構造物に結露が発生するのを抑制できる。
【0035】
また、本実施形態の室内機1では、接続部25は、第1面23の延長面と第2面の延長面との内側に配置されている。したがって、室内機1の構造物に結露が発生するのを確実に抑制できる。
【0036】
また、本実施形態の室内機1では、接続部25における剥離部23aから剥離部24aまでの距離Aは、10mmである。また、第1面23の剥離部23a側端部における接平面P1と接続部25の面とのなす角度θ1と、第2面24の剥離部24a側端部における接平面P2と接続部25の面とのなす角度θ2とは、いずれも60°である。したがって、剥離部23a、24aにおいて確実に吹出気流及び室内空気を前面パネル2から剥離させ、また、前面パネル2から剥離した吹出気流及び室内空気を確実に前面パネル2から離れた位置で合流させることができる。よって、室内機1の構造物に結露が発生するのをさらに確実に抑制できる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0038】
例えば、上述の実施形態では、接続部25は平面である場合について説明したが、接続部25の形状はこれに限定されるものではない。すなわち、図4に示すように、上述の実施形態の一変形例にかかる前面パネル122では、接続部125は、後方に湾曲した湾曲面である。この場合、角度θ1は、第1面123の剥離部123a側端部における接平面P1と、接続部125の剥離部123a側端部における接平面P3とのなす角となり、角度θ2は、第2面124の剥離部124a側端部における接平面P2と、接続部125の剥離部124a側端部における接平面P4とのなす角となる。
【0039】
加えて、上述の実施形態では、第1面23は、斜め上方に延び、且つ、下方に凸の湾曲面である場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、第1面23は水平に延びる面であってもよい。また、第1面23は平面であってもよい。
【0040】
さらに、上述の実施形態では、接続部25における剥離部23aから剥離部24aまでの距離Aが10mmであり、第1面23の剥離部23a側端部における接平面P1と接続部25の面とのなす角度θ1と、第2面24の剥離部24a側端部における接平面P2と接続部25の面とのなす角度θ2とが、いずれも60°である場合について説明したが、これには限定されない。距離Aは、5mm以上であればよく、より好ましくは、5mm以上、且つ、20mm以下であればよい。また、角度θ1、θ2はいずれも、90°以下であればよく、より好ましくは、30°以上、且つ、90°以下であればよい。
【0041】
加えて、上述の実施形態では、第1面23、第2面24、剥離部23a、24a、及び接続部25が前面パネル22に設けられている場合について説明したが、これには限定されない。これらは、前面パネル22以外の部材に設けられていてもよい。また、第1面23、第2面24、及び接続部25は、同一の部材に設けられておらず、互いに別の部材に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明を利用すれば、構造物の表面に結露が発生するのを抑制する。
【符号の説明】
【0043】
1 室内機
21b 吹出口
23、123 第1面
23a、123a 第1剥離部
24、124 第2面
24a、124a 第2剥離部
25 接続部
図1
図2
図3
図4