(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、インストルメントパネルの内部は構造的に熱が籠もり易く、HUD装置の前記放熱部による放熱効果が減殺されてしまう懸念がある。また、冷却ファンのような冷却機能部品を付設することも考えられるが、大サイズのHUD装置をインストルメントパネルに組み付けた場合、狭小なインストルメントパネル内にそのような冷却機能部品を追加配置することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、インストルメントパネルに組み付けられるヘッドアップディスプレイ装置の放熱性を、冷却機能部品を追加することなく良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る車両の内装構造は、フロントウィンドゥの下方に配置されるインストルメントパネルと、前記インストルメントパネルの内部に配設される空調ダクトと、筐体構造を備え、前記インストルメントパネルに組み付けられ、前記フロントウィンドゥに情報を投影するヘッドアップディスプレイ装置と、を備え、前記ヘッドアップディスプレイ装置は、前記筐体の外周面に放熱部を備え、前記空調ダクトは、前記放熱部と熱交換可能に対向する対面部を備える
車両の内装構造において、前記空調ダクトと前記ヘッドアップディスプレイ装置の前記筐体とは互いに離間して配設されるものであって、前記対面部は、前記放熱部に対して所定のギャップを隔てて対向している。
【0009】
この内装構造によれば、ヘッドアップディスプレイ装置の放熱部と空調ダクトの対面部とで熱交換が為される。このため、ヘッドアップディスプレイ装置の筐体内の熱を、空調ダクト内を流通する熱媒(空調エア)によって良好に放熱させることができる。また、空調ダクトは、インストルメントパネルから車室内に向けて空調エアを吹き出すためのインパネダクト等として、一般的な車両のインストルメントパネル内に組み込まれている。従って、新たに冷却機能部品を追加する必要もない。
【0010】
また、前記空調ダクトと前記ヘッドアップディスプレイ装置の前記筐体とは互いに離間して配設されるものであって、前記対面部は、前記放熱部に対して所定のギャップを隔てて対向してい
る。
【0011】
この内装構造によれば、前記対面部と前記放熱部との対向部分において両者が当接していないので、車両に振動が発生しても、当該対向部分でノイズが発生しないようにすることができる。
【0012】
上記の内装構造において、前記筐体は側面を備え、前記放熱部は前記側面に配置され、前記対面部は、前記放熱部が備えられた前記側面に並設されていることが望ましい。
【0013】
この内装構造によれば、前記対面部が、前記放熱部の側方に並設される。従って、空調ダクトに結露が発生したとしても、その結露水がヘッドアップディスプレイ装置の筐体に滴下することはない。
【0014】
上記の内装構造において、前記筐体は、前記車両の車幅方向において互いに対向する第1側面及び第2側面を含み、前記放熱部が配置される側面が前記第1側面であり、前記空調ダクトは、前記対面部を有し前記第1側面に沿う上流部と、前記第2側面の付近を通る下流部と、前記下流部の終端に設けられた吹き出し口とを備える。
【0015】
この内装構造によれば、空調ダクトの吹き出し口が配置される下流部においてヘッドアップディスプレイ装置の放熱部と熱交換するのではなく、前記下流部からは離間した上流部において前記熱交換が為される。従って、制御された空調エアに、前記熱交換の影響が及ぶことを回避することができる。例えば、前記吹き出し口から吹き出される直前の冷房風に、前記熱交換の暖気が混合されてしまうようなことを防止できる。
【0016】
上記の内装構造において、前記インストルメントパネルに組み込まれ、前記ヘッドアップディスプレイ装置を収容した状態で固定的に支持する支持部材を備え、前記支持部材は、
互いに離間している前記空調ダクトと前記ヘッドアップディスプレイ装置の前記筐体との間に挟まれて配設される部分を含み、前記放熱部と前記対面部とが対向する部分において切り欠き部を有することが望ましい。
【0017】
この内装構造によれば、大重量のヘッドアップディスプレイ装置であっても、これを支持部材によって強固に支持させることができる。また、前記支持部材は切り欠き部を有するので、前記放熱部と前記対面部との間の熱交換を阻害することはない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷却機能部品を追加することなく、インストルメントパネルに組み付けられるヘッドアップディスプレイ装置の放熱性を良好にした、車両の内装構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[車両の内装構造の概略]
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両1の内装構造の前方部分を示す正面図、
図2は、前記内装構造の斜視図である。これらの図では、内装構造における、フロントウィンドゥ10及びインストルメントパネル11の部分を抜き出して図示している。
図3は、インストルメントパネル11の分解斜視図である。なお、これらの図中には、車両1の前後方向における「前」及び「後」の矢印、車幅方向における「左」及び「右」の矢印、並びに、車高方向における「上」及び「下」の矢印を付記している。以下の図に付している「前」「後」「上」「下」「左」「右」の矢印は、
図1〜
図3の方向表示に従っている。
【0021】
インストルメントパネル11は、フロントウィンドゥ10の下方に配置され、概ね車幅方向(左右方向)全幅に亘って延びている。インストルメントパネル11は、インパネ本体12、対面カバー13及び上面カバー14を含む。インパネ本体12は、車幅に対応する左右幅を有し、車両1に装備される計器類、空調関連部品、ナビゲーションシステム、オーディオ類などを収容する複数の枠部分を備えた、硬質樹脂の成型品からなる部材である。インパネ本体12の左右方向中央からは、運転席と助手席とを区画するコンソール部121が、下方に垂下している。
【0022】
対面カバー13及び上面カバー14は、ウレタン発泡材等からなり、インストルメントパネル11の表層部を形成する部材である。対面カバー13は、インストルメントパネル11の座席に対向する面を覆っている。上面カバー14は、インストルメントパネル11の上面、つまり、フロントウィンドゥ10と対向する面を覆っている。
【0023】
インストルメントパネル11の下方には、左右方向に水平に延びるインパネレインフォース3が配置されている。インパネレインフォース3は、高剛性の金属製円筒体からなり、その左右両端において車体フレーム(図示せず)に固定されている。インストルメントパネル11の下面が、このインパネレインフォース3によって支持されている。
【0024】
図3に示されているように、インストルメントパネル11の左方側(運転席側)には、メーターパネル2及びヘッドアップディスプレイ装置4(以下、HUD装置4)が組み付けられている。メーターパネル2は、運転席に対向するようにインストルメントパネル11に組み付けられ、車速メーターや燃料計などのアナログ又はデジタル表示部を備えたパネルユニットである。後記で詳述するが、HUD装置4は、インストルメントパネル11内において支持部材5によって支持されている。
【0025】
HUD装置4は、筐体構造を備えたユニットであり、フロントウィンドゥ10に多種多様な情報を投影する。前記情報は、例えば自車の走行速度、走行区間の速度制限情報、警告標識、ナビゲーション用の指示矢印などの、運転支援情報である。HUD装置4は、これら情報の投影画像を生成し、フロントウィンドゥ10に向けて投影する。運転者の視線前方には、フロントウィンドゥ10で反射された投影画像の虚像が作られる。
【0026】
HUD装置4の筐体内部には、例えばLEDマトリックス及びTFTカラーディスプレイを含む投影光源4A(
図11参照)と、この投影光源4Aが発する光線を反射するミラーとが内蔵されている。通常、インストルメントパネル11とフロントウィンドゥ10とは近接しており、両者間では所定サイズの投影画像を作るための十分な光路長を稼げない。このため、前記筐体内部には複数のミラーが配置され、投影光線を多段反射させることによって、必要な光路長を確保している。フロントウィンドゥ10に多種多様な情報を投影させようとすると、自ずとHUD装置4による光線の投影範囲が拡張する。表示サイズの大きい投影画像を作るには光路長を長く取る必要があることから、HUD装置4の筐体サイズが大きくなり、その重量も大きくなる。
【0027】
インパネ本体12(インストルメントパネル11)は、その上面にHUD装置4の投影用の上方開口122と、座席に対向する面(車両1の後方側に向いた面)にメーターパネル2の取り付け用の側方開口123とを備えている。上方開口122は、フロントウィンドゥ10に対向した矩形の開口であり、HUD装置4の投影光線はこの上方開口122を通過してフロントウィンドゥ10に向かう。なお、上方開口122のサイズは、HUD装置4の筐体40(
図7、
図8参照)のサイズよりも小さいサイズである。つまり、車両1の完成状態では、インストルメントパネル11からHUD装置4を、上方開口122を通して取り出すことはできない。
【0028】
側方開口123は、左右方向に長いメーターパネル2を嵌め込むことが可能なサイズを有する。メーターパネル2は、HUD装置4よりも大サイズであるため、側方開口123はHUD装置4の筐体を通過させ得るサイズを有する。すなわち、車両1の完成状態において、インストルメントパネル11からHUD装置4を、側方開口123を通して取り出すことができる。
【0029】
側方開口123にはメーターカバー15が、上方開口122には開口カバー16が各々嵌め込まれる。メーターカバー15は、メーターパネル2の表示面を露出させる開口151を備え、メーターパネル2が側方開口123に嵌め込まれた状態で、メーターパネル2の周縁部分を覆うように、インパネ本体12の座席対向面に取り付けられている。開口カバー16は、矩形の投射開口161を備え、HUD装置4の上面を覆うように、インパネ本体12の上面に取り付けられている。
【0030】
インストルメントパネル11の内部には、後述する空調ダクト7(
図11〜
図13参照)が配設されている。空調ダクト7を流通する空調エアは、インストルメントパネル11の表面を通して車室内に吹き出される。前記空調エアの吹き出し口としてインストルメントパネル11には、運転席側に配置された左吹き出し口171、コンソール部121の上方に配置された中吹き出し口172、及び助手席側に配置された右吹き出し口173が備えられている。
【0031】
[HUD装置の支持構造]
続いて、インストルメントパネル11内におけるHUD装置4の支持構造について詳述する。
図4〜
図6は、HUD装置4が組み付けられた部分における、インストルメントパネル11の前後方向の断面構造を示している。
図4、
図5及び
図6は、それぞれ
図1のIV−IV線、V−V線及びVI−VI線の概略的な断面図である。
【0032】
図4に示されている通り、フロントウィンドゥ10の下方にインストルメントパネル11が配置され、このインストルメントパネル11をインパネレインフォース3が下方から支えている。HUD装置4は、フロントウィンドゥ10とインパネレインフォース3との間において、支持部材5で支持された状態でインストルメントパネル11に組み付けられている。
【0033】
HUD装置4の前後方向のサイズは、上方開口122の前縁122Fと後縁122Rとの間の間隔よりも大きい。HUD装置4の左右方向のサイズも同様である。このため、開口カバー16を取り外しても、既述の通りHUD装置4をインストルメントパネル11から上方へ取り出すことはできない。なお、本実施形態では、たとえ上方開口122がHUD装置4よりも大きなサイズを有していても、フロントウィンドゥ10に阻害されてHUD装置4を上方から取り出すことができない。
【0034】
<HUD装置の筐体>
図7は、HUD装置4の斜視図、
図8は、視線方向を変えた、HUD装置4の斜視図である。HUD装置4は、投影光源4A及びミラーなどの光学系を収容する筐体40を備える。筐体40は、投影光源A及び前記光学系が据え付けられる上面開口の本体401と、この本体401の開口を塞ぐ蓋体402とからなる。蓋体402の天面には、投影光線を通過させる透光性の窓部が備えられている。
【0035】
筐体40は、大略的に扁平な直方体の形状を有し、前面41、下面42、後面43、上面44、右面45及び左面46を備えている。前面41の上端縁の左右端部からは、それぞれ右上ブラケット411及び左上ブラケット412が上方に延出している。これらブラケット411、412は、それぞれ固定孔413、414を有しており、筐体40の支持部材5への固定部となる。下面42の後端縁(後面43の下端縁)の左右端部からは、それぞれ右下ブラケット421及び左下ブラケット422が下方に延出している。これらブラケット421、422は、それぞれ固定孔423、424を有しており、筐体40のインパネ本体12への固定部となる。右下ブラケット421は、左下ブラケット422よりも長く下方へ突出している。
【0036】
右面45の後方部分には、筐体40内の熱を放熱する放熱部47が配置されている。ここで、
図1のXI−XI線の概略的な断面図である
図11を参照する。筐体40の右面45の後方付近には、投影光源4Aとヒートシンク4Bとが収容されている。投影光源4Aは、図略のドライバによって発光動作を行うよう駆動され、当該発光動作を行うことによって発熱する。ヒートシンク4Bは、投影光源4Aが発する熱を放散させる。
【0037】
ヒートシンク4Bに隣接する筐体40の外周面が、放熱部47である。投影光源4Aとの熱交換によってヒートシンク4Bが受け取った熱は、放熱部47を通して筐体40の外部に放散される。放熱部47の壁面の下方領域には複数のスリット471が形成され、上方領域には複数の気孔472が穿孔されている。スリット471及び気孔472は、放熱部47における放熱効果を高めることに寄与する。
【0038】
<支持部材>
支持部材5は、上方開口122の下方においてインストルメントパネル11に組み込まれ、HUD装置4を収容した状態で固定的に支持する。
図9は、支持部材5の斜視図である。
図9及び
図5を主に参照して、支持部材5は、前壁51及び下壁52を有する、前後方向の断面でL字型の部材である。前壁51の上端には、左右方向に長い帯状の平面部からなる上フランジ部53が、上方に突設されている。下壁52の後端には、同様に左右方向に長い帯状の平面部からなる下フランジ部54が、下方に突設されている。
【0039】
前壁51は、筐体40の前面41に対向する壁であり、下壁52は下面42に対向する壁である。上フランジ部53は、支持部材5にHUD装置4が支持された状態で、筐体40の前面41の上端(上面44の前端)よりも高い位置に存在するように、その高さ位置が設定されている。従って、スクリュードライバー等の工具を扱う作業者は、開口カバー16を取り外すことによって、上方開口122を通して上フランジ部53にアクセス可能である。
【0040】
上フランジ部53には、インパネ本体12の上方部分との固定部となる左右一対の固定孔531と、HUD装置4に対する固定部となる左右一対の支持孔532とが配置されている。下フランジ部54には、インパネレインフォース3に対する固定部となる左右一対の固定孔541が配置されている。下壁52の一対の固定孔541の前方の位置には、それぞれ矩形の窓部521が設けられている。窓部521の前縁には、フック形状を備えた係止片522が下方に突設されている。また、下フランジ部54の左端付近には、HUD装置4に対する固定部となる支持孔542が配置されている。
【0041】
支持部材5は、さらに左壁55及び右壁56を含む。左壁55及び右壁56は、各々前壁51及び下壁52の左面及び右面を塞ぐ壁である。左壁55と右壁56との間の間隔は、HUD装置4の左右幅よりも広い。一方、支持部材5の上面及び後面には壁が存在していない。HUD装置4の筐体40は、前壁51、下壁52、左壁55及び右壁56によって区画される空間内に大半が収容される形態で、また、上面44及び後面43については支持部材5と干渉しない態様で、支持部材5上に載置されている。
【0042】
右壁56には、当該右壁56の後方部分を切り欠いてなる切り欠き部561が設けられている。
図11に示す通り、インストルメントパネル11内において、空調ダクト7が支持部材5の側方を取り囲むように配設されており、右壁56の外方にも空調ダクト7の一部(対面部75)が配設される。切り欠き部561は、HUD装置4の放熱部47と、空調ダクト7の前記一部との熱交換を阻害しないようにするための開口である。
【0043】
前壁51の下端部には、左右一対の係止部57が配置されている。係止部57は、前壁51の一部を浅く凹没させた矩形状の平板部である。係止部57には、インパネレインフォース3に対する固定部となるネジ孔571が穿孔されている。
【0044】
下フランジ部54の下縁からは、中延在部581、左延在部582及び右延在部583が下方に延びている。中延在部581は、下フランジ部54の左右方向中央から下方に延びる左右方向に長い平板部であり、左右一対の固定孔584が穿孔されている。この固定孔584は、支持部材5のインパネ本体12の下方部分への固定部となる。左延在部582は、下フランジ部54の左端から下方に延びる平板部であり、同様にインパネ本体12の下方部分への固定部となる固定孔585を有している。右延在部583は、下フランジ部54の右端から下方に延びる小さな平板部であり、同じくインパネ本体12に対する固定部となる支持孔586を有している。
【0045】
<インパネレインフォース>
図10は、インパネレインフォース3の要部の斜視図である。インパネレインフォース3の外周面には、インパネ支持金具31及び支持片32が取り付けられている。インパネ支持金具31は、インストルメントパネル11の下面とインパネレインフォース3とを連結するための金具である。この連結によって、インストルメントパネル11は、図略の車体フレームで強固に支持された高剛性のインパネレインフォース3によって支持される。
【0046】
支持片32は、インパネ支持金具31の左右に一対で、インパネレインフォース3の外周面に取り付けられている。支持片32は、HUD装置4を支持する支持部材5をインパネレインフォース3で支持させるために、支持部材5とインパネレインフォース3とを連結させる金具である。各支持片32には、支持孔321が穿孔されている。本実施形態では、支持部材5は、次述の支持ブラケット6を介してインパネレインフォース3で支持される。
【0047】
<支持ブラケット>
図5を参照して、支持ブラケット6は、HUD装置4の下方において車両1の前後方向に延びる板状部材である。支持ブラケット6は、支持部材5の下壁52の下面に沿う水平部61と、車両前方側の前端部62と、車両後方側の後端部63とを含む。支持ブラケット6の介在によって、HUD装置4の支持剛性を一層高めることができる。支持部材5の左右一対の係止部57に対応する位置に、左右一対で組み込まれている。
【0048】
前端部62は、支持部材5の前壁51に対する固定される部分である。前端部62は、水平部61の前端から上方に折り曲げられた立ち上がり部分であり、前壁51に沿って係止部57と重なるように上方に延びている。すなわち、支持ブラケット6は、支持部材5の下壁52の下方から前壁51の前方へ回り込むような形状を備える。後端部63は、下フランジ部54と共にインパネレインフォース3に固定される部分である。後端部63は、水平部61の後端から下方に折り曲げられた部分であり、インパネレインフォース3の支持片32と支持部材5の下フランジ部54との間に挟まれている。
【0049】
図5、
図9、
図10、
図12を参照して、支持部材5の支持構造を説明する。
図12は、インパネレインフォース3の左側部分と支持部材5、及び空調ダクト7を示す斜視図である。空調ダクト7については後述する。支持ブラケット6の前端部62は、支持部材5の係止部57の外面に前後方向に重ね合わされている。前端部62には貫通孔が備えられており、この貫通孔と係止部57のネジ孔571とが重なるように、係止部57と前端部62とが位置合わせされる。前記貫通孔及びネジ孔571に第1固定ネジS1が挿通され、支持部材5と支持ブラケット6とが固定されている。
【0050】
支持ブラケット6の後端部63にも、貫通孔が備えられている。この貫通孔が、インパネレインフォース3の支持片32が有する支持孔321、並びに、支持部材5の下フランジ部54が有する固定孔541と重なるように、支持片32、後端部63及び下フランジ部54が前後方向に重ね合わされている。前記貫通孔、支持孔321及び固定孔541に第2固定ネジS2が挿通され、インパネレインフォース3に対して支持部材5及び支持ブラケット6が固定されている。さらに、
図5に示されているように、水平部61には窓部611が備えられている。この窓部611の前縁に対し、支持部材5の係止片522が嵌め込まれている。
【0051】
[空調ダクト]
空調ダクト7は、車両1が備える空調装置(図略)が発生する暖房、冷房或いは除湿の空調エアを車室内へ供給するためのダクトである。
図13は、空調ダクト7と、HUD装置4及び支持部材5との配置関係を示す斜視図である。
図11〜
図13を参照して、空調ダクト7はインストルメントパネル11の内部に配設される部分を含み、支持部材5の周辺において、上流部71と下流部72とを備える。
【0052】
上流部71及び下流部72は、左ダクトエンド73に空調エアを導くためのダクト部分である。左ダクトエンド73は、下流部72の終端に設けられ、インストルメントパネル11の左端付近に設けられた左吹き出し口171に連通している。なお、
図12及び
図13には、他のダクト部分によって空調エアが導かれる中ダクトエンド74も示されている。中ダクトエンド74は、コンソール部121に設けられた中吹き出し口172に連通している。
【0053】
空調ダクト7の上流部71及び下流部72は、
図11に示すように、支持部材5の側面、つまりHUD装置4の筐体40の側面を迂回するように、水平方向に延びている。詳しくは、上流部71は筐体40の右面45(第1側面)と、支持部材5の右壁56を挟んで左右方向に対向している。下流部72は、右面45と車幅方向において互いに対向する左面46(第2側面)と、左壁55を挟んで左右方向に対向している。また、上流部71と下流部72とを繋ぐダクトである迂回部711は、前面41と前壁51を挟んで前後方向に対向している。上流部71は、右面45に比較的近接して沿っている。一方、下流部72は、左面46の付近を通ってはいるが、比較的左面46に対して離間している。
【0054】
筐体40の右面45に沿う上流部71は、右面45の後方側に配置されている放熱部47と熱交換可能に対向する対面部75を備える。上流部71は、対面部75が放熱部47に対して所定のギャップGを隔てて対向するよう、右面45に並設されている。支持部材5の右壁56の切り欠き部561は、対面部75と放熱部47との間の熱交換を阻害しないようにするために設けられている。
【0055】
空調ダクト7内を流通する熱媒(空調エア)の温度は、暖房運転の場合でもせいぜい30℃以下の温度である。この空調エアの温度は、投影光源4Aが発生する熱の温度に比べて十分に低い。従って、投影光源4Aの熱がヒートシンク4Bを通して放熱部47から放散されると、この熱は、対面部75を通過して左ダクトエンド73に向かう空調エアに吸熱される。従って、HUD装置4を良好に放熱させることができる。
【0056】
対面部75は、空調ダクト7において最もHUD装置4(筐体40)に接近している平板状の部分である。上記のギャップGは、数mm〜20mm程度とすることができる。ギャップGが小さすぎる場合若しくは対面部75が放熱部47に当接している場合、熱交換の観点からは好ましいものの、車両1に振動が発生した場合に当該振動がHUD装置4に伝達されてしまい、当該対向部分で振動ノイズが発生したり、投影画像が揺動したりする懸念がある。一方、ギャップGが大きすぎると、対面部75と放熱部47との間の熱交換効率が低下するので、HUD装置4の放熱を十分に行えない傾向が出る。
【0057】
[HUD装置の着脱]
図13に示すように、HUD装置4がインパネ本体12(支持部材5)の所定位置に装着された状態において、その上方側では、右上ブラケット411及び左上ブラケット412が支持部材5の上フランジ部53と前後方向に重なっている。この際、両ブラケット411、412の固定孔413、414と上フランジ部53の支持孔532(
図9)とが各々位置合わせされる。第4固定ネジS4は、両ブラケット411、412と上フランジ部53とを固定している。
【0058】
HUD装置4の下方側では、右下ブラケット421が右延在部583の前方位置においてインパネ本体12の支持板部124と、また、左下ブラケット422が下フランジ部54の左方部分と、各々前後方向に重なっている。右下ブラケット421の固定孔423と支持板部124のネジ孔とが位置合わせされ、第3固定ネジS3によって両者が締結されている。
図6は、この右下ブラケット421の第3固定ネジS3による固定部分の断面図である。また、左下ブラケット422の固定孔424と下フランジ部54の支持孔542とが位置合わせされ、第3固定ネジS3によって両者が締結されている。
【0059】
図3に示すように、HUD装置4は、側方開口123からインパネ本体12に対して着脱される。既述の通り、上フランジ部53は、筐体40の前面41における上端より高く上方に延びている。また、右上及び左上ブラケット411、412も筐体40から上方に突出した部分である。従って、開口カバー16が取り外された状態においては、作業者は上方開口122を通して第4固定ネジS4の締結作業を行うことができる。また、メーターパネル2及びメーターカバー15が取り外された状態においては、作業者は側方開口123を通して第3固定ネジS3の締結作業を行うことができる。
【0060】
HUD装置4をインストルメントパネル11から取り外す場合は、作業者は、先ず開口カバー16と、メーターパネル2及びメーターカバー15とをインパネ本体12から取り外す。その後、作業者は、上方開口122からアクセスして第4固定ネジS4を取り外し、また、側方開口123からアクセスして第3固定ネジS3を取り外す。しかる後、HUD装置4が側方開口123を通して取り出される。
【0061】
[作用効果]
以上説明した車両1の内装構造によれば、インストルメントパネル11の内部に配設される空調ダクト7を利用して、HUD装置4の良好な放熱を達成することができる。すなわち、HUD装置4は筐体40の右面45に放熱部47を備え、空調ダクト7は、放熱部47と熱交換可能に対向する対面部75を備える。このため、放熱部47が発する熱を、空調ダクト7内を流通する熱媒に吸熱させることが可能となり、HUD装置4の熱を良好に放熱させることができる。空調ダクト7は、インストルメントパネル11から車室内に向けて空調エアを吹き出すためのインパネダクト等として、一般的な車両1のインストルメントパネル11内に組み込まれている。従って、HUD装置4の冷却のために新たに冷却機能部品を追加する必要もない。
【0062】
対面部75は、放熱部47に対して所定のギャップGを隔てて対向している。つまり、対面部75と放熱部47との対向部分において両者が当接しない構成としている。このため、車両1に振動が発生しても、当該対向部分で振動ノイズが発生しないようにすることができる。
【0063】
また、対面部75は、放熱部47が備えられた右面45に並設されている。すなわち、対面部75が、放熱部47の側方に横並びになるように配置されている。従って、空調ダクト7に結露が発生したとしても、その結露水がHUD装置4の筐体40に滴下することはない。
【0064】
HUD装置4の筐体40は、車幅方向において互いに対向する右面45(第1側面)と左面46(第2側面)とを含み、放熱部47は右面45に配置されている。空調ダクト7は、対面部75を有し右面45に沿う上流部71と、左面46の付近を通る下流部72と、下流部72の終端に設けられた左ダクトエンド73(吹き出し口)とを備える。このため、左ダクトエンド73が配置される下流部72において放熱部47と対面部75との熱交換が為されるのではなく、下流部72から空調エアの流通方向上流に離間した上流部71において前記熱交換が為される。従って、制御された空調エアに、前記熱交換の影響が及ぶことを回避することができる。例えば、左ダクトエンド73から吹き出される直前の冷房風に、前記熱交換の暖気が混合されてしまうようなことを防止できる。
【0065】
上記の内装構造は、インストルメントパネル11に組み込まれ、HUD装置4を収容した状態で固定的に支持する支持部材5を備える。これにより、大重量のHUD装置4であっても、支持部材5によって強固に支持させることができる。また、支持部材5は、放熱部47と対面部75とが対向する部分において切り欠き部561を有する。このため、放熱部47と対面部75との間の熱交換を阻害することはない。
【0066】
[変形実施形態の説明]
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、次のような変形実施形態を取ることができる。
【0067】
(1)上記実施形態では、対面部75が放熱部47に対して所定のギャップGを隔てて対向する例を示した。熱交換効率を向上させるため、対面部75と放熱部47とが当接する態様としても良い。この場合、振動ノイズが発生しないよう、HUD装置4の筐体40と空調ダクト7とを強固に固定することが望ましい。
【0068】
(2)熱交換効率を向上させる他の手段として、ギャップGに伝熱性に優れたクッション性のスペーサ部材を介在させるようにしても良い。若しくは、放熱部47からの輻射熱を吸熱し易いよう、対面部75に金属シート等の受熱部材を貼付乃至は巻回するようにしても良い。
【0069】
(3)上記実施形態では、対面部75が、空調ダクト7に設けられた平板状の部分である例を示した。対面部75の形状は放熱部47の外表面の形状に合わせることが望ましい。例えば、放熱部47が凸形状の部分であれば、対面部75は凹形状とすることが望ましい。
【0070】
(4)上記実施形態では、HUD装置4を収容した状態で固定的に支持する支持部材5が適用される例を示した。支持部材5を用いず、HUD装置4の筐体40をインパネ本体12に直接取り付けるようにしても良い。