特許第6662662号(P6662662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6662662
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20200227BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20200227BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20200227BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20200227BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20200227BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20200227BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   A61K8/92
   A61K8/37
   A61K8/39
   A61K8/34
   A61K8/06
   A61K8/81
   A61Q19/00
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-40716(P2016-40716)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-166187(P2016-166187A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2018年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-41305(P2015-41305)
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】端 晃一
(72)【発明者】
【氏名】北村 三矢子
(72)【発明者】
【氏名】平野 芳和
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−43027(JP,A)
【文献】 特開2007−8840(JP,A)
【文献】 特表2009−530365(JP,A)
【文献】 特開2001−97825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(d);
(a)25℃で固体又はペースト状の植物性油脂
(b)炭素数8〜22の脂肪酸と、炭素数2〜22の一価アルコールとのエステルであって、該エステルを構成する脂肪酸又は一価アルコールの少なくとも一方が分岐又は二重結合を有している25℃で液状のモノエステル
(c)ソルビタン、グリセリン、ジグリセリンから選ばれる一種と、炭素数12〜18の脂肪酸とのモノエステル又はジエステル
(d)多価アルコール
を含有する水中油型乳化化粧料であって、
前記成分(a)、(b)を含む水中油型乳化化粧料中の全油量に対する成分(a)の割合が、30〜80質量%であり、
前記成分(b)が、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシルである、水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記成分(a)、(b)の含有質量比(a)/(b)が、3〜5である請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記成分(a)が、シアバター、カカオバターから選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記成分(c)がソルビタンと炭素数12〜18の脂肪酸とのモノエステル又はジエステルである請求項1〜3のいずれかの項記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
さらに成分(e)としてアクリルアミド系増粘剤を含有する請求項1〜4のいずれかの項記載の水中油型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関し、さらに詳細には25℃で固体又はペースト状の植物性油脂と、特定の脂肪酸と一価アルコールのエステルと、ソルビタン、グリセリン、ジグリセリンから選ばれる一種と特定の脂肪酸とのエステルと、多価アルコールを含有する水中油型乳化化粧料であって、全油量に対して、25℃で固体又はペースト状の植物性油脂の割合が、30〜80質量%である水中油型乳化化粧料に関し、油脂等の析出がなく経時安定性に優れ、みずみずしい使用感を有し、さらに保湿感に優れる水中油型乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料には、さまざまな剤型が存在するが、その一つである水中油型乳化化粧料は、油性成分と水性成分を両方含有させることができ、高付加価値が得られるものである。特に油性成分は、バリエーションが豊富であり種々の効果が期待できる。例えば、室温にて固体又はペースト状の植物性油脂は、高い保湿効果が得られる素材の一つである。しかしながら、これらの室温で固体又はペースト状の植物性油脂は、長期間低温で保管することにより、固体状油性成分の結晶化が進行し、化粧料としての品質を維持することが出来ない場合があった。
【0003】
そのため、このような室温で固体又はペースト状の植物性油脂を有効に含有するための技術開発として、例えば、乳化剤として乳化能を有する水溶性高分子を用いた技術(例えば、特許文献1参照)が報告されている。またグリセリン誘導体を併用することで保湿感を更に付与するという技術(例えば、特許文献2参照)が報告されている。またイソステアリン酸を併用することにより、みずみずしさや伸びを改善するという技術(例えば、特許文献3参照)が報告されている。また、特定のオルガノポリシロキサンを併用することにより経時安定性を向上させるという技術(例えば、特許文献4参照)が報告されている。また、キサンタンガムと寒天を併用することにより使用時のみずみずしさと経時安定性を向上させている技術(例えば、特許文献5参照)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−255529号公報
【特許文献2】特開2001−97825号公報
【特許文献3】特開2011−136963号公報
【特許文献4】特表2012−531395号公報
【特許文献5】特開2014−31328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、みずみずしさは向上するものの、使用後に水溶性高分子特有の皮膜が形成されることで、保湿感において十分でない場合があった。
特許文献2の技術ではグリセリン誘導体により保湿感は確保されるものの、一方該成分特有のべたつきが生じることで、使用時のみずみずしさにおいて十分でない場合があった。
特許文献3の技術では使用時のみずみずしさが向上するものの、それに伴い経時安定性に満足いくものではなかった。
特許文献4の技術では経時安定性は向上するもののオルガポリシロキサンを用いるため、使用時のみずみずしさや仕上がりの保湿感に満足いくものではなかった。
特許文献5の技術では使用時のみずみずしさと経時安定性に優れるものの、保湿感という観点では満足いくものではなかった。
従って室温で固体又はペースト状の植物油脂を含有しながら、油脂等の析出がなく経時安定性に優れ、みずみずしい使用感を有し、さらに保湿感に優れる水中油型乳化化粧料が求められていた。
本発明は、固体又はペースト状の油脂等の析出がなく経時安定性に優れ、みずみずしい使用感を有し、さらに保湿感に優れる水中油型乳化化粧料を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、25℃で固体又はペースト状の植物性油脂を油系中に安定に含有することがまず重要と考え、共存させる油性成分を検討したところ、炭素数8〜22の脂肪酸と、炭素数2〜22の一価アルコールとのエステルであって、該エステルを構成する脂肪酸又は一価アルコールの少なくとも一方が分岐又は二重結合を有している25℃液状のモノエステルが有用であるとの知見を得た。さらにこれらの油性成分を乳化し、水中油型乳化化粧料とした際に、特定の成分を含有させることが、温度変化等の影響を受けにくく、経時での安定性に寄与できることがわかった。具体的にはソルビタン、グリセリン、ジグリセリンから選ばれる一種と炭素数12〜18の脂肪酸とのエステルが特に好ましいものであった。さらに、水系成分としても多価アルコールを組み合わせて用いることにより、固体又はペースト状の植物性油脂を含有しながらも、油脂等の析出がなく経時安定性に優れ、みずみずしい使用感を有し、さらに保湿感に優れる水中油型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、次の成分(a)〜(d);
(a)25℃で固体又はペースト状の植物性油脂
(b)炭素数8〜22の脂肪酸と、炭素数2〜22の一価アルコールとのエステルであって、該エステルを構成する脂肪酸又は一価アルコールの少なくとも一方が分岐又は二重結合を有している25℃で液状のモノエステル
(c)ソルビタン、グリセリン、ジグリセリンから選ばれる一種と、炭素数12〜18の脂肪酸とのモノエステル又はジエステル
(d)多価アルコール
を含有する水中油型乳化化粧料であって、成分(a)、(b)を含む全油量に対して、成分(a)の割合が、30〜80質量%である水中油型乳化化粧料に関するものである。
【0008】
また本発明は、特に(a)、(b)の含有質量比(a)/(b)が、3〜5である水中油型乳化化粧料に関するものである。
【0009】
また本発明は、更に成分(a)がシアバター、カカオバターから選ばれる少なくとも一種である水中油型乳化化粧料に関するものである。
【0010】
また本発明は、更に成分(b)イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルである水中油型乳化化粧料に関するものである。
【0011】
また本発明は、成分(c)がソルビタンと炭素数12〜18の脂肪酸とのモノエステル又はジエステルである水中油型乳化化粧料に関するものである。
【0012】
また本発明は、成分(e)としてアクリルアミド系増粘剤を含有する水中油型乳化化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、固体又はペースト状の油脂等の析出がなく経時安定性に優れ、みずみずしい使用感を有し、さらに保湿感に優れる水中油型乳化化粧料を提供することができる
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳述する。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0015】
本発明に用いられる成分(a)は25℃で固体又はペースト状の植物性油脂であり、高い保湿効果を得るために特に有用である。なお、本発明におけるペースト状とは、30℃の粘度が5000〜100000mPa・sのものを示す。本発明において、前記粘度は、試料を30℃で一日放置後、単一円筒型回転粘度計ビスメトロン型式VS−A1(芝浦システム社製)を用いて測定したものを指す。また、25℃で固体のものは、特に限定されるものではないが、好ましくは、融点が35〜100℃のものが好ましい。さらには、35〜90℃のものがより好ましい。このような成分(a)は、通常化粧料に用いられるものであれば特にて限定されるものではないが、具体的には、シアバター、カカオバター、マンゴバター、コクムバター、ヤシ油、パーム油、パーム核油、硬化油、硬化ヒマシ油、カルナウバロウ、ホホバロウなどが挙げられ、これらから、一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0016】
成分(a)として更に好ましくは、シアバター、カカオバターであり、これらを選択する事が保湿感として好ましい。
【0017】
成分(a)の含有量として、好ましくは1〜50質量%(以下、単に「%」と略す)であることが好ましく、さらには3〜20%が好ましい。この範囲であれば、使用後の保湿感も向上する。
【0018】
成分(a)の含有量は、特に限定されるものではないが、水中油型乳化化粧料の成分(a)、(b)を含む全油量に対して、成分(a)の割合が、30〜80%であり、さらには40〜60%が好ましい。この範囲であれば、保湿感がさらに向上する。
【0019】
本発明に用いられる成分(b)は、炭素数8〜22の脂肪酸と、炭素数2〜22の一価アルコールとのエステルであって、該エステルを構成する脂肪酸又は一価アルコールの少なくとも一方が分岐又は二重結合を有している25℃で液状のモノエステルであり、使用時のみずみずしさ、経時安定性に優れるものを得るために有用である。なお、分岐又は二重結合している位置や数は、特に限定されるものではないが、該脂肪酸、該一価アルコールの少なくとも一方が分岐又は二重結合を有していることが必要であり、好ましくは、両方共に分岐又は二重結合を有しているものが好ましい。該脂肪酸は、炭素数8〜22であるが、炭素数9〜18であれば、より好ましい。具体的には、直鎖のものでは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸等であり、分岐を有しているものでは、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸等であり、二重結合を有しているものでは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が好ましいものとして例示される。該一価アルコールは、炭素数2〜22であるが、炭素数8〜18であれば、より好ましい。具体的には、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、イソトリデカノール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等が好ましいものとして例示される。そしてこのような成分(b)としては、特に限定されないが、具体的には、成分(b)として、2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソトリデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0020】
上記の中でも、さらにイソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルなどがより好ましい。
【0021】
成分(b)の含有量は、特に限定されるものではないが、5〜50%であることが好ましく、さらには10〜30%が好ましい。この範囲であれば、使用時のみずみずしい使用感、経時安定性に優れるものを得るために有用である。
【0022】
本発明に用いられる成分(a)、(b)の含有量は、上記したとおり適宜用いることができるが、特定の含有質量比とすることにより、優れた効果を得るものである。すなわち、含有質量比(a)/(b)が、3〜5であることが好ましく、さらには3.5〜4.5が好ましい。この範囲での含有であれば、使用時のみずみずしさ、経時安定性に更に優れたものが得られる。
【0023】
本発明に用いられる成分(c)は、ソルビタン、グリセリン、ジグリセリンから選ばれる一種と、炭素数12〜18の脂肪酸とのモノエステル又はジエステルであり、使用時のみずみずしさ、経時安定性を得るために有用である。ここで脂肪酸の炭素数が、12未満では、成分(a)の結晶析出防止効果が十分でない場合があり、一方、18を超える場合では、成分(b)との相溶性において優れない場合があり、これらのことからも、炭素数は、12〜18の範囲にあるものがよい。このような成分(c)としては、特に限定されないが、具体的には、ソルビタン型モノエステル及びジエステルとしては、オレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンなどが挙げられる。市販品としては、オレイン酸ソルビタンとしてコスモール182V(日清オイリオグループ社製)、セスキオレイン酸ソルビタンとしてはレオドールAO−15(花王社製)等を挙げることが出来る。
【0024】
本発明に用いられる成分(c)としては、具体的にはイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリルなどが挙げられる。市販品としては、イソステアリン酸ポリグリセリルとしてコスモール41V(日清オイリオグループ社製)、ジイソステアリン酸ポリグリセリルとしてはコスモール42V(日清オイリオグループ社製)等を挙げることができる。
【0025】
本発明における成分(c)の含有量は、特に限定されるものではないが、0.1〜10%であることが好ましい。さらには0.5〜5%が好ましい。この範囲であれば、使用時のみずみずしさ、経時安定性に優れるものが得られる。
【0026】
本発明に用いられる成分(d)は、多価アルコールは、炭素数3〜6の骨格にヒドロキシル基を2つ以上有する構造であり、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されるものではない。成分(d)を含有することにより、使用時のみずみずしさ、使用後の高い保湿感を得るために有用である。
【0027】
本発明に用いられる成分(d)の多価アルコールとしては、1、3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,2−ペンタンジオールなどが挙げられ、これらから、一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。なかでも、1,3−ブチレングリコールが含有されることにより、成分(a)の析出抑制効果が期待できる。これは油水界面の安定化を向上させ、温度変化等による影響を受けにくくなるためと考えられる。そのため、1,3−ブチレングリコールは多価アルコール全量に対して、10%以上であることが好ましく、20%以上がより好ましく、さらには、40%以上であることがより好ましい。
【0028】
本発明における成分(d)の含有量は0.1〜50%が好ましく、より好ましくは5〜30%である。この範囲内であれば使用時のみずみずしさ、使用後の高い保湿感に優れたものが得られる。
【0029】
本発明に用いられる成分(e)のアクリルアミド系増粘剤は、アクリルアミドおよびその誘導体の中から選ばれる1種又は2種以上を構成単位として含むホモポリマー、コポリマー、クロスポリマー、若しくは混合物である。本発明にこれを含有することにより、使用時のみずみずしさ、経時安定性をより向上させることが出来る。
【0030】
アクリルアミド系増粘剤としては具体例として好ましくはビニルピロリドン/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ジメチルアクリルアミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリルアミド/アクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ポリアクリルアミドとポリアクリル酸の混合物、アクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリルアミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のホモポリマー、およびビニルホルムアミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0031】
また特に好ましくは、アクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、又はアクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体であり、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の架橋ポリマーはコポリマー40%を含む分散物がセピゲル305の名でSEPPIC社から発売されている。またアクリル酸・アクロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマーは、コポリマー37.5%を含む分散物がSIMULGEL−EGの名でSEPPIC社から発売されている。本発明においてはこれらの市販品を用いることが出来る。
【0032】
本発明における成分(e)の含有量は、特に限定されるものではないが、0.01〜10%が好ましく、より好ましくは0.05〜5%である。この範囲であれば十分な粘度が獲得され、使用時のみずみずしさと経時安定性により優れたものとなる。
【0033】
また本発明の水中油型乳化化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、成分(a)〜(e)の他に、通常化粧料に含有される成分として、成分(a)、(b)以外の油剤、成分(c)以外の界面活性剤、成分(d)以外の多価アルコール、低級アルコール、成分(e)以外の水溶性高分子、それ以外にも粉体、保湿剤、糖類、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防腐剤、薬効成分、安定化剤、色素、香料等を各種の効果の付与のために適宜含有することができる。
【0034】
例えば、油剤としては、成分(a)、(b)以外に、動物油、植物油、合成油等の起源の固形油、半固形油、液状油、揮発性油の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類等が挙げられる。
【0035】
本発明の水中油型乳化化粧料の製造方法は特に限定されるものではないが、成分(a)、(b)、(c)および必要に応じて他の任意成分(界面活性剤、油溶性成分等)を混合したものと、(d)、(e)と水およびその他の任意成分(界面活性剤、水溶性成分等)を混合したものを調製し、一方に他方を添加混合することで乳化を行う。
【0036】
本発明の水中油型乳化化粧料は、特に限定されないが、形状として液状、ゲル状、乳液状、クリーム状のものが挙げられる。また、製品形態としては、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ料、パックなどの皮膚用化粧料を例示することができる。
【実施例1】
【0037】
以下に製造例及び実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
本発明品1〜19及び比較品1〜10:水中油型乳化化粧料
表1〜表3に示す組成の水中油型乳化化粧料を下記の製造方法により調製し、各試料について、「使用時のみずみずしさ」、「保湿感」、「経時安定性」について下記の評価方法によって評価を行い、その結果も併せて表1〜表3に示した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
<製造方法>
A.成分(1)〜(22)を均一に混合分散し、70℃に加熱する。
B.成分(23)〜(29)を70℃にて均一に混合溶解する。
C.BにAを均一に混合分散し70℃にて乳化する。
D.Cを冷却し(30)を添加し水中油系乳化化粧料を得た。
【0042】
(評価方法1)「使用時のみずみずしさ」、「保湿感」、
水中油型乳化化粧料について化粧品評価専門パネル20名による使用テストを行った。パネル各人に各試料5gを手に取り、左右の顔に塗布してもらい、下記絶対評価基準にて5段階に評価し評点を付け、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
5点:良好
4点:やや良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
<4段階判定基準>
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超える
○ :3点を超える4点未満
△ :2点を超える3点未満
× :1点を超える2点未満
【0043】
(評価方法2)「経時安定性」
経時安定性の評価については、5℃恒温下にて1ヶ月保管したものを、室温に戻した各試料を顕微鏡観察にて行った。結晶析出状態は、サンプルをプレパラートではさみ、光学顕微鏡観察400倍にて偏光フィルターで観察した。
<判定基準>
(判定):(評価)
◎ :結晶の析出が全く見られない。
○ :結晶の析出がわずかに見られるが、使用性上は問題ない。
△ :結晶の析出がわずかに見られ、使用性上問題である。
× :結晶の析出があきらかに見られ使用性上問題である。
【0044】
表1〜表3に示したように、本発明品1〜19は使用時のみずみずしさ、保湿感及び経時安定性の全ての項目において優れていた。一方、比較品1は植物性油脂が含有されていないため使用後の保湿感に劣るものであった。また比較品2は(b)成分の含有がないため、結晶の析出が見られ、またみずみずしい使用感に劣るものであった。比較品3〜8は(c)成分の含有がないため、結晶の析出が見られ、みずみずしい使用感に劣るものであった。比較品9は(a)/(b)比率が低いため、使用後の保湿感に劣ったものであった。また比較品10は(a)/(b)比率が高いため、結晶の析出が見られみずみずしい使用感に劣るものであった。
【0045】
実施例2:水中油型乳化化粧料(乳液)
(成分) (%)
1.ステアリン酸 1
2.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
3.モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 0.5
4.ベヘニルアルコール 2
5.セトステアリルアルコール 2
6.モノステアリン酸グリセリル 1
7.ダイマージリノール酸
ジ(イソステアリル/フィトステリル) (注2) 1
8.シアバター 5
9.ミリスチン酸イソプロピル 2
10.トリ2−エチルヘキサン酸セチル 1
11.オレイン酸エチル 1
12.セラミド2 0.01
13.アスタキサンチン (注3) 0.01
14.ジグリセリン 3
15.プロピレングリコール 10
16.1,3−ブチレングリコール 10
17.精製水 残量
18.トリエタノールアミン 0.1
19.アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.1
20.アクリルアミド/2−アクリルアミド−2−メチル
プロパンスルホン酸共重合体(注4) 0.5
21.L−セリン 0.1
22.グリシン 0.1
23.N−アセチル−L−グルタミン 0.1
(注2)LUSPLAN PI−DA(日本精化株式会社製)
(注3)アスタキサンチン−5c(オリザ油化社製)
(注4)セピゲル305(SEPPIC社製)
【0046】
(製造方法)
A:成分(1)〜(13)を70℃に加熱し、混合溶解する。
B:成分(14)〜(20)を70℃に加熱し、混合溶解する。
C:AにBに添加し、乳化する。
D:Cを40℃まで冷却した後に成分(21)〜(23)を添加し乳液を得た。
【0047】
実施例2の乳液は、植物油脂等の析出がなく、経時安定性に優れ、みずみずしい使用感を有し、さらには保湿感に優れるものであった。
【0048】
実施例3:水中油型乳化化粧料(目元用クリーム)
(成分) (%)
1.水添レシチン 2
2.濃グリセリン 10
3.ベヘニルアルコール 1
4.シアバター 7
5.オレイン酸エチル 3
6.モノオレイン酸脂肪酸エステル 0.5
7.精製水 残量
8.(PEG−240/デシルテトラデセス−20/
HDI)コポリマー(注5) 1
9.フェノキシエタノール 0.1
10.1,2−ペンタンジオール 2
11.加水分解ヒアルロン酸 0.01
12.加水分解コラーゲン 0.01
(注5)アデカノールGT−700(ADEKA社製)
【0049】
(製造方法)
A:成分(1)〜(2)を室温にて均一に混合し、70℃に加熱する。
B:成分(3)〜(6)を70℃に加熱し、Aに添加しゲル形成する。
C:成分(7)〜(10)を70℃に加熱し、Bに添加し乳化する。
D:Cを40℃まで冷却した後に成分(11)、(12)を添加し目元用クリームを得た。
【0050】
実施例3の目元用クリームは、植物油脂等の析出がなく、経時安定性に優れ、みずみずしい使用感を有し、さらには保湿感に優れるものであった。
【0051】
実施例4:水中油型乳化化粧料(マッサージクリーム)
(成分) (%)
1.水添レシチン 2
2.ジグリセリン 10
3.シアバター 2
4.天然ビタミンE 0.5
5.モノイソステアリン酸ジグリセリル 5
6.イソノナン酸イソトリデシル 0.5
7.流動パラフィン 2
8.精製水 残量
9.(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン
ナトリウム)共重合体(注1) 1
10.L−テアニン 0.1
11.1,3−ブチレングリコール 15
12.ヒアルロン酸 0.1
13.コメヌカエキス 0.1
14.ローヤルゼリーエキス 0.1
【0052】
(製造方法)
A:成分(1)〜(2)を室温にて均一に混合し、70℃に加熱する。
B:成分(3)〜(7)を70℃に加熱し、Aに添加しゲル形成する。
C:成分(8)〜(11)を70℃に加熱し、Bに添加し乳化する。
D:Cを40℃まで冷却した後に成分(12)〜(14)を添加しマッサージクリームを得た。
【0053】
実施例4のマッサージクリームは、植物油脂等の析出がなく、経時安定性に優れ、みずみずしい使用感を有し、さらには保湿感に優れるものであった。