特許第6662694号(P6662694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日野自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6662694-電源制御装置 図000002
  • 特許6662694-電源制御装置 図000003
  • 特許6662694-電源制御装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6662694
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】電源制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20200227BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20200227BHJP
   B60L 53/00 20190101ALN20200227BHJP
【FI】
   H02J7/02 J
   H02J7/00 P
   H02J7/00 302C
   !B60L53/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-82292(P2016-82292)
(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公開番号】特開2017-192272(P2017-192272A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕介
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−282375(JP,A)
【文献】 特開2004−215459(JP,A)
【文献】 特開2008−118790(JP,A)
【文献】 特開2012−182915(JP,A)
【文献】 特開2015−006027(JP,A)
【文献】 特開2013−099167(JP,A)
【文献】 特開2015−133816(JP,A)
【文献】 特開2012−010562(JP,A)
【文献】 特開2013−038831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 −13/00
B60L 15/00 −58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池パックが並列に接続された並列回路における前記各電池パックに流れる電流を検出する電流検出部から、前記各電池パックの電流値を取得する処理を繰り返す電流値取得部と、
前記各電池パックの充電状態であるSOCを検出するSOC検出部から前記各電池パックのSOCを取得する処理を繰り返すSOC取得部と、
SOCの目標値を設定すると共に、前記SOC取得部が今回取得したSOCのなかの最小値が前記目標値よりも小さい場合に、前記電流値取得部が今回取得した放電電流値のなかの最大値がゼロに近づくように、前記各電池パックに対する充放電の制御を行い、前記SOC取得部が今回取得したSOCのなかの最小値が目標値以上である場合に、前記電流値取得部が今回取得した充電電流値のなかの最大値がゼロに近づくように、前記各電池パックに対する充放電の制御を行う充放電制御部と、を備える
電源制御装置。
【請求項2】
前記充放電制御部は、前記複数の電池パックのなかに異常な電池パックが存在するか否かを判断すると共に、前記異常な電池パックが存在すると判断した場合に、前記異常な電池パックが有するSOCを前記SOC取得部から取得し、当該取得されたSOCを前記目標値として設定する
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記充放電制御部は、前記異常な電池パックが存在しないと判断した場合に、予め設定された値を前記目標値として設定する
請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記充放電制御部は、前記SOC取得部が今回取得したSOCのなかの最小値と、前記SOC取得部が今回取得したSOCのなかの最大値との差が所定値以上となった場合に、予め設定されたSOCを前記目標値として設定する
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記充放電制御部は、前記異常な電池パックを検出した場合に、前記異常な電池パック以外の電池パックが有するSOCのなかから前記最小値を検出する
請求項2または3に記載の電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックの充放電を制御する電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される複数の電池パックは、モータージェネレーターを駆動させるための電源の他に、車両の運転に必要とされる補機やエアーコンディショナー装置などの各種の負荷を駆動させるための電源としても用いられる。そして、電池パックの充放電を制御する車載電源制御装置には、上述した各種の負荷を駆動するための電力を、走行中に確保し続けることが求められる。例えば、特許文献1に記載の車載電源制御装置は、電池パックの温度を検出するための温度センサーに異常が検出された場合であっても、異常の検出された電池パックと負荷との電気的な接続のみを遮断する一方で、正常であると判定された電池パックと負荷との電気的な接続を維持し、それによって、各種の負荷を駆動するための電力を確保し続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−6138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各電池パックにどの程度の電力が残っているかを示す指標である充電状態(SOC:State Of Charge)は、電池パックごとの充放電特性に基づく値であり、車両に搭載される複数の電池パック内におけるばらつきを有する。特に、異常が検出された電池パックと負荷との電気的な接続が遮断される一方で、正常であると判断された電池パックにおいて充放電が継続される技術では、異常が検出された電池パックの有するSOCと、正常であると判断された電池パックの有するSOCとの乖離が大きくなる可能性が高まる。結果として、電池パックと負荷との接続が行われるときに、電池パックの周辺回路や電池パックそのものに過大な負荷を生じさせるおそれがある。
本発明は、複数の電池パック内におけるSOCのばらつきを抑えることを可能とした電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための電源制御装置は、複数の電池パックが並列に接続された並列回路における前記各電池パックに流れる電流を検出する電流検出部から、前記各電池パックの電流値を取得する処理を繰り返す電流値取得部と、前記各電池パックの充電状態であるSOCを検出するSOC検出部から前記各電池パックのSOCを取得する処理を繰り返すSOC取得部とを備える。そして、この電源制御装置は、SOCの目標値を設定すると共に、前記SOC取得部が今回取得したSOCのなかの最小値が前記目標値よりも小さい場合に、前記電流値取得部が今回取得した放電電流値のなかの最大値がゼロに近づくように、前記各電池パックに対する充放電の制御を行い、前記SOC取得部が今回取得したSOCのなかの最小値が目標値以上である場合に、前記電流値取得部が今回取得した充電電流値のなかの最大値がゼロに近づくように、前記各電池パックに対する充放電の制御を行う充放電制御部を備える。
【0006】
上記電源制御装置によれば、SOC取得部が今回取得したSOCのなかの最小値が目標値よりも小さい場合に、放電電流値のなかの最大値がゼロに近づくような充放電の制御が行われる。この際、電池パックが有する放電内部抵抗が小さいほど、電池パックの放電電流値は大きいものと推定されるため、放電電流値のなかの最大値を有する電池パックは、複数の電池パックのなかで放電内部抵抗が最も小さい電池パックであると推定される。結果として、各電池パックにおけるSOCは、この制御が開始される前よりも、その電池パックが充電される状態に向けて遷移し、放電内部抵抗が小さい電池パックほど、その遷移の度合いは大きくなる。
【0007】
一方、SOC取得部が今回取得したSOCのなかの最小値が目標値以上である場合には、充電電流値のなかの最大値がゼロに近づくような充放電の制御が行われる。この際、電池パックが有する充電内部抵抗が小さいほど、電池パックの充電電流値は大きいものと推定されるため、充電電流値のなかの最大値を有する電池パックは、複数の電池パックのなかで充電内部抵抗が最も小さい電池パックであると推定される。結果として、各電池パックにおけるSOCは、この制御が開始される前よりも、その電池パックが放電される状態に向けて遷移し、充電内部抵抗が小さい電池パックほど、その遷移の度合いが大きくなる。
【0008】
すなわち、上述した電源制御装置は、放電電流値のなかの最大値をゼロに近づける充放電の制御と、充電電流値のなかの最大値をゼロに近づける充放電の制御とを、SOCの最小値が目標値よりも小さいか否かに基づき切り替える。したがって、上述した電源制御装置は、各電池パックのSOCが目標値に近づくように、各電池パックにおけるSOCの変動を、充放電量を抑えながら収束させ、それによって、複数の電池パック内におけるSOCのばらつきを抑えることが可能となる。
【0009】
上記電源制御装置において、前記充放電制御部は、前記複数の電池パックのなかに異常な電池パックが存在するか否かを判断すると共に、前記異常な電池パックが存在すると判断した場合に、前記異常な電池パックが有するSOCを前記SOC取得部から取得し、当該取得されたSOCを前記目標値として設定してもよい。
【0010】
上記電源制御装置によれば、各電池パックにおけるSOCの変動は、異常な電池パックが有するSOCに向けて各電池パックのSOCが近づくように収束する。そのため、異常な電池パックと負荷との接続が次回行われるときに、電池パックの周辺回路や電池パックそのものに過大な負荷が生じることを的確に抑えることが可能ともなる。
【0011】
上記電源制御装置において、前記充放電制御部は、前記異常な電池パックが存在しないと判断した場合に、予め設定された値を前記目標値として設定してもよい。
【0012】
上記電源制御装置によれば、複数の電池パックのなかに異常な電池パックが存在する場合であれ、複数の電池パックのなかに異常な電池パックが存在しない場合であれ、複数の電池パック内におけるSOCのばらつきを抑えることが可能ともなる。
【0013】
上記電源制御装置において、前記充放電制御部は、前記SOC取得部が今回取得したSOCのなかの最小値と、前記SOC取得部が今回取得したSOCのなかの最大値との差が所定値以上となった場合に、予め設定されたSOCを前記目標値として設定してもよい。
上記電源制御装置によれば、SOC取得部が今回取得したSOCのなかの最小値と最大値との差が所定値以上になることを抑えることが可能となる。
【0014】
上記電源制御装置において、前記充放電制御部は、前記異常な電池パックを検出した場合に、前記異常な電池パック以外の電池パックが有するSOCのなかから前記最小値を検出してもよい。
【0015】
異常な電池パックにおけるSOCの変動は、正常な電池パックにおけるSOCの変動に比べて、十分に小さい場合がある。上記電源制御装置によれば、異常な電池パックにおけるSOCが最小値の検出対象から省かれるため、電源制御装置が最小値の算出に要する負荷を軽減することが可能ともなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の電池パック内におけるSOCのばらつきを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態における電源制御装置の構成を示すブロック図。
図2】電源制御装置が行う処理の流れを示すフローチャート。
図3】電源制御装置が行う処理での各電池パックのSOCの推移を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から図3を参照して電源制御装置を車載電源制御装置に具体化した一実施形態を説明する。
【0019】
図1が示すように、複数の電池パック10が並列に接続された並列回路には、エアーコンディショナー装置21、DC‐DCコンバーター22、および、電力変換装置31が、各電池パック10に対して並列に接続される。
【0020】
電池パック10は、充電、および、放電可能な二次電池である電池スタック11、電圧検出部12、電流検出部13、温度検出部14、および、監視装置15を備える。電池スタック11は、互いに直列に接続された複数の二次電池を備える。電圧検出部12は、SOCを算出するための電池スタック11における開放電圧値の検出を行う。電流検出部13は、電池スタック11に流れる電流の値である充電電流値、および、放電電流値の検出を繰り返す。温度検出部14は、電池パック10に異常が生じているか否かを判定するための電池スタック11における温度の検出を繰り返す。
【0021】
監視装置15は、温度検出部14が検出した温度が所定範囲内である場合に、電池パック10が正常であると判定し、温度検出部14が検出した温度が所定範囲外である場合に、電池パック10が異常であると判定する。監視装置15は、SOC検出部の一例であって、電圧検出部12が検出した開放電圧値と、電流検出部13が検出した電流値の積算とを行い、電池パック10のSOCを車両の運転開始時から算出し続ける。監視装置15は、監視結果DATとして、電流検出部13が検出した電流値と、電池パック10が正常であるか否かの判定の結果と、算出されたSOCとを、電動発電機ECU30に出力する。
【0022】
エアーコンディショナー装置21は、電動駆動式のコンプレッサーと、インバーターとを備え、インバーターは、電池パック10が出力する直流電圧を、電動駆動式のコンプレッサーを駆動するための交流電圧に変換する。エアーコンディショナー装置21は、補機駆動ECU20から入力される駆動指令に従ってインバーターを駆動し、それによって、空調に利用する熱媒体をコンプレッサーに圧縮させる。
【0023】
DC‐DCコンバーター22は、電池パック10が出力する直流電圧を、補機23を駆動するための直流電圧に変換する。DC‐DCコンバーター22は、車両の運転に必要とされる補機23に接続され、負荷である補機23が消費する電流を補機23に供給する。DC‐DCコンバーター22は、補機駆動ECU20から入力される駆動指令に従って駆動し、それが出力する直流電圧によって補機23を駆動する。
【0024】
電力変換装置31は、電池パック10から供給される直流電力を交流電力に変換する。また、電力変換装置31は、モータージェネレーター32から供給される交流電力を直流電力に変換する。電力変換装置31は、モータージェネレーター32に接続され、電力変換装置31が変換した交流電力を、モータージェネレーター32に供給する。また、電力変換装置31は、各電池パック10に接続され、電力変換装置31が変換した直流電力を、電池パック10に供給する。電力変換装置31は、モータージェネレーター32への電力供給と、電池パック10への電力供給とを、電動発電機ECU30が出力するトルク指令Tcntに基づき切り替える。
【0025】
モータージェネレーター32は、電力変換装置31から供給される交流電力によって動力を生成し、モータージェネレーター32の軸出力に接続されたトランスミッション33に動力を伝達することによって、車両を走行させる。また、モータージェネレーター32は、トランスミッション33から供給される動力によって発電し、発電した交流電力を電力変換装置31に供給する。
【0026】
電動発電機ECU30は、車載電源制御装置の一例であり、CPUやDSPなどの演算部や、メモリなどの記憶部を備えるコンピューターである。電動発電機ECU30は、記憶部30Cに記憶された車載電源制御プログラムを実行することによって、取得処理部30A、および、充放電制御部30Bとして機能する。取得処理部30Aは、各種信号の入力処理を行う。充放電制御部30Bは、電力変換装置31による電力変換の制御を通じて、モータージェネレーター32の駆動を制御する。エンジンECU40は、ドライバーの操作に基づくドライバーの要求トルクに従って、エンジン41の駆動を制御する。
【0027】
補機駆動ECU20、電動発電機ECU30、および、エンジンECU40は、互いに連携し、エンジン41が出力するトルクとモータージェネレーター32が出力するトルクとの合計と、ドライバーの要求トルクとが等しくなるように、モータージェネレーター32の駆動とエンジン41の駆動とを制御する。
【0028】
取得処理部30Aは、電流値取得部30A1、SOC取得部30A2、および、判定結果取得部30A3を備える。電流値取得部30A1は、各電池パック10が出力した監視結果DATに含まれる電流値の入力処理を繰り返す。すなわち、電流値取得部30A1は、各電池パック10における充電電流値、あるいは、放電電流値を取得する処理を繰り返す。SOC取得部30A2は、各電池パック10が出力した監視結果DATに含まれるSOCの入力処理を繰り返す。すなわち、SOC取得部30A2は、各電池パック10の充電状態であるSOCを検出する監視装置15から各電池パックのSOCを取得する処理を繰り返す。判定結果取得部30A3は、各電池パック10が出力した監視結果DATに含まれる判定結果、すなわち、電池パック10が正常であるか否かの判定結果の入力処理を繰り返す。
【0029】
充放電制御部30Bは、目標値設定部30B1、および、トルク指令部30B2を備える。目標値設定部30B1は、判定結果取得部30A3が取得した判定結果に基づき、複数の電池パック10のなかに異常が検出された電池パック10が存在するか否かを判断する。目標値設定部30B1は、異常な電池パック10が存在すると判断した場合に、異常な電池パック10が有するSOCをSOC取得部30A2から取得して、異常な電池パック10が有するSOCを充放電制御部30Bに記憶し、それによって、異常な電池パック10が有するSOCを、SOCの目標値として設定する。一方、目標値設定部30B1は、異常な電池パック10が存在しないと判断した場合に、予め設定された基準SOCを記憶部30Cから取得し、この取得されたSOCを目標値として設定する。なお、予め設定された基準SOCは、例えば、電池パック10の劣化を軽減させるために、車両の運転状態などに応じた値として予め試験等に基づいて設定される。
【0030】
トルク指令部30B2は、SOC取得部30A2が今回の制御周期で取得したSOCのなかの最小値を検出する。トルク指令部30B2は、目標値設定部30B1が設定した目標値よりも、算出された最小値が小さい場合に、電流値取得部30A1が今回の制御周期で取得した放電電流値のなかの最大値を検出する。そして、トルク指令部30B2は、算出された放電電流値のなかの最大値がゼロに近づくように、各電池パック10に対する充放電の制御を行う。例えば、トルク指令部30B2は、放電電流値のなかの最大値が1[A]であり、かつ、電池パック10の並列回路における出力電圧が300Vであるとき、放電電流値のなかの最大値がゼロに近づくように、すなわち、300Wの電力をゼロにするためのモータージェネレーター32の指示トルクを算出する。そして、トルク指令部30B2は、算出された指示トルクを出力させるためのトルク指令Tcntを、電力変換装置31に出力し、それによって、放電電流値のなかの最大値をゼロに近づけるように、モータージェネレーター32に指示トルクをフィードバックする。
【0031】
一方、トルク指令部30B2は、算出された最小値が目標値以上である場合に、電流値取得部30A1が今回の制御周期で取得した充電電流値のなかの最大値を検出する。そして、トルク指令部30B2は、算出された充電電流値のなかの最大値がゼロに近づくように、各電池パック10に対する充放電の制御を行う。例えば、トルク指令部30B2は、充電電流値のなかの最大値が−1[A]であり、かつ、電池パック10の並列回路における出力電圧が300Vであるとき、充電電流値のなかの最大値がゼロに近づくように、すなわち、−300Wの電力をゼロにするためのモータージェネレーター32の指示トルクを算出する。そして、トルク指令部30B2は、算出された指示トルクを出力させるためのトルク指令Tcntを、電力変換装置31に出力し、それによって、充電電流値のなかの最大値をゼロに近づけるように、モータージェネレーター32に指示トルクをフィードバックする。
【0032】
次に、電動発電機ECU30が行う車載電源制御方法の処理の流れを説明する。
図2が示すように、電動発電機ECU30は、複数の電池パック10のなかに異常な電池パック10が存在するか否かを判断する(ステップS11)。電動発電機ECU30は、異常が検出された電池パック10が存在しない場合には(ステップS11でNO)、SOCの目標値として基準SOCを設定する(ステップS14)。一方、電動発電機ECU30は、異常な電池パック10が存在するとき、異常な電池パック10が有したSOCを記憶すると共に(ステップS12)、異常な電池パック10のSOCをSOCの目標値に設定する(ステップS13)。
【0033】
次いで、電動発電機ECU30は、今回の制御周期で取得された各電池パック10のSOCのなかの最小値が目標値よりも小さいか否かを判断する(ステップS21)。電動発電機ECU30は、各電池パック10のSOCのなかの最小値が目標値よりも小さい場合(ステップS21でNO)、複数の電池パック10のなかの放電電流値の最大値を検出する(ステップS23)。一方、電動発電機ECU30は、各電池パック10のSOCのなかの最小値が目標値以上である場合(ステップS21でYES)、複数の電池パック10のなかの充電電流値の最大値を検出する(ステップS22)。次いで、電動発電機ECU30は、先に検出された電流値の最大値をゼロに近づけるように、モータージェネレーター32に指示トルクをフィードバックする(ステップS24)。そして、電動発電機ECU30は、全ての電池パック10の有するSOCが目標値を含む所定範囲に収束するまで、ステップS21からステップS24の処理を繰り返す(ステップS25)。
【0034】
次に、電動発電機ECU30が行う車載電源制御方法の処理での各電池パック10におけるSOCの推移を説明する。なお、図3では、電池パック10の数量が4つであり、第4電池パックに異常が生じた例を示す。
【0035】
図3が示すように、電動発電機ECU30は、タイミングT1において、第4電池パックが異常な電池パック10であることを判断し、異常な電池パック10である第4電池パックのそのときのSOCをSOCの目標値に設定する。次いで、電動発電機ECU30は、図3の指標A1が示すように、今回の制御周期で取得された各電池パック10のSOCのなかの最小値が目標値以上であると判断し、複数の電池パック10のなかの充電電流値の最大値として、例えば、第1電池パックの充電電流値を検出する。そして、電動発電機ECU30は、検出された充電電流値の最大値をゼロに近づけるように、モータージェネレーター32に指示トルクをフィードバックする。
【0036】
この際、電池パック10が有する充電内部抵抗が小さいほど、電池パック10の充電電流値は大きいものと推定されるため、充電電流値のなかの最大値を有する第1電池パックは、複数の電池パック10のなかで充電内部抵抗が最も小さい電池パックであると推定される。結果として、各電池パック10におけるSOCは、この制御が開始される前よりも、その電池パック10が放電される状態に向けて遷移し、充電内部抵抗が小さい電池パックほど、その遷移の度合いが大きくなる。
【0037】
電動発電機ECU30は、タイミングT2において、図3の指標A2が示すように、今回の制御周期で取得された各電池パック10のSOCのなかの最小値が目標値よりも小さいと判断し、複数の電池パック10のなかの放電電流値の最大値として、例えば、第3電池パックの放電電流値を検出する。そして、電動発電機ECU30は、検出された充電電流値の最大値をゼロに近づけるように、モータージェネレーター32に指示トルクをフィードバックする。
【0038】
この際、電池パック10が有する放電内部抵抗が小さいほど、電池パック10の放電電流値は大きいものと推定されるため、放電電流値のなかの最大値を有する第3電池パックは、複数の電池パック10のなかで放電内部抵抗が最も小さい電池パック10であると推定される。結果として、各電池パック10におけるSOCは、この制御が開始される前よりも、その電池パック10が充電される状態に向けて遷移し、放電内部抵抗が小さい電池パック10ほど、その遷移の度合いは大きくなる。
【0039】
そして、タイミングT3からタイミングT4にわたり、SOCの最小値と目標値との比較、および、充電電流値の最大値をゼロに近づける、あるいは、放電電流値の最大値をゼロに近づけるような指示トルクのフィードバックが繰り返され、各電池パック10のSOCが目標値に収束する。
【0040】
以上、上記実施の形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)放電電流値のなかの最大値をゼロに近づける充放電の制御と、充電電流値のなかの最大値をゼロに近づける充放電の制御とを、SOCの最小値が目標値よりも小さいか否かに基づき切り替える。そのため、各電池パック10のSOCが目標値に近づくように、各電池パック10におけるSOCの変動を、充放電量を抑えながら収束させ、それによって、複数の電池パック10内におけるSOCのばらつきを抑えることが可能となる。
【0041】
(2)各電池パック10におけるSOCの変動は、異常な電池パックが有するSOCに向けて各電池パック10のSOCが近づくように収束する。そのため、異常な電池パック10と負荷との接続が次回行われるときに、電池パック10の周辺回路や電池パックそのものに過大な負荷が生じることを的確に抑えることが可能ともなる。
【0042】
(3)複数の電池パック10のなかに異常な電池パック10が存在する場合であれ、複数の電池パック10のなかに異常な電池パック10が存在しない場合であれ、複数の電池パック10内におけるSOCのばらつきを抑えることが可能ともなる。
【0043】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・電動発電機ECU30は、SOC取得部30A2が今回取得したSOCのなかの最小値と、SOC取得部30A2が今回取得したSOCのなかの最大値との差が所定値以上となった場合に、予め設定された基準SOCを目標値として設定してもよい。こうした車載電源制御装置によれば、SOC取得部30A2が今回取得したSOCのなかの最小値と最大値との差が所定値以上になることを抑えることが可能となる。この際、目標値設定部30B1は、ステップS11からステップS14の処理、すなわち、異常な電池パック10のSOCをSOCの目標値として設定するための処理を省いてもよい。
【0044】
・電動発電機ECU30は、異常な電池パック10が存在すると判断した場合に、異常な電池パック10以外の電池パック10が有するSOCのなかから、目標値と比較される最小値を検出してもよい。異常な電池パック10におけるSOCの変動は、正常な電池パック10におけるSOCの変動に比べて、十分に小さい場合がある。こうした構成を有する車載電源制御装置によれば、異常な電池パック10におけるSOCが最小値の検出対象から省かれるため、車載電源制御装置が最小値の算出に要する負荷を軽減することが可能ともなる。
【0045】
・電池パック10が正常であるか否かを検出する指標は、電池スタック11の温度に限らず、電圧検出部12の検出結果であってもよいし、電流検出部13の検出結果であってもよい。この際、電動発電機ECU30が目標値に設定するSOCは、異常な電池パック10が存在すると判断される直前に取得されたSOCであることが好ましい。また、異常な電池パック10以外の電池パック10が有するSOCのなかから、目標値と比較される最小値を検出することが好ましい。
【0046】
・SOC検出部が行うSOCの検出方法は、電流検出部13によって検出された電流値の積算に限らず、電解液比重センサー、セル電圧センサー、端子電圧センサーなどの検出結果に基づき検出する方法であってもよい。また、SOC検出部は、電池パック10に残存している電気量を検出する構成に限らず、例えば、充電可能量などの他のパラメータで充電状態を検出する構成であってもよい。
【0047】
・電池パック10の監視装置15からSOC検出部が割愛され、電流検出部13の検出結果を用いたSOCの検出を行うSOC検出部を、電動発電機ECU30が備える構成であってもよい。
・電源制御装置が適用される対象は、車両に限らず、航空機、建築機械、農業機械などのように、電池パックの出力を電源に用いる各種装置であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
T1,T2,T3,T4…タイミング、Tcnt…トルク指令、10…電池パック、11…電池スタック、12…電圧検出部、13…電流検出部、14…温度検出部、15…監視装置、20…補機駆動ECU、21…エアーコンディショナー装置、22…DC‐DCコンバーター、23…補機、30…電動発電機ECU、30A…取得処理部、30A1…電流値取得部、30A2…SOC取得部、30A3…判定結果取得部、30B…充放電制御部、30B1…目標値設定部、30B2…トルク指令部、30C…記憶部、31…電力変換装置、32…モータージェネレーター、33…トランスミッション、40…エンジンECU、41…エンジン。
図1
図2
図3