【課題を解決するための手段】
【0006】
本方法に関する目的を達成するために、本発明は、処理面に水噴流を放出する方法を提供する。放出は50〜200バールの水圧、好ましくは60〜130バールの水圧で行われる。この水圧はポンプ側で設定されることが多い。本発明に係る方法において、水噴流は、円筒状のノズル本体を有するノズル要素を通じて放出される。ノズル本体は水噴流の流路を形成する。また、ノズル要素は噴流ストリームを周辺領域に放出するノズル開口部を有する。上述した水圧は通常、ノズル本体の内部において流れ方向でノズル開口部の直前に背圧としても適用される。本方法を実施するために、比較的小さいノズル開口部を選択し、扱いやすい噴流衝撃圧で水噴流を処理面上に当てる。本発明に係る方法では、ノズル開口部の最小寸法は0.15mm以下、好ましくは0.13mm以下であって、少なくとも0.02mmである。この最小寸法は、ノズル開口部が円形の場合には直径、楕円形の場合には最小直径、長尺形の場合には最小幅であるとみなされる。ノズル開口部の開口面の寸法は、1.8×10
-2mm
2 以下、好ましくは4.6×10
-3〜1.3×10
-2mm
2 の間である。ノズル開口部の形状、また任意には該ノズル開口部の前段にある流路の形状は、ノズル開口部から80mmの距離にある処理面に扇形の噴流が形成されるように選択される。本発明に係る扇形噴流は、長さと幅との比が少なくとも2.5の噴流であるとされる。典型的な例では、扇形噴流の長さと幅との比は2.5〜15の間であり、4〜10の間であることが好ましい。この比は、処理を要する表面に衝撃を与える扇形噴流の噴流衝撃圧により実現される。表面効果により噴流の表面から滴又は霧が発生しても、上記作業距離では清浄処理面に十分な衝撃を与えないので、この比には考慮されない。
【0007】
本発明に係る方法によれば、水噴流で比較的敏感な表面を清浄処理することが可能である。水噴流は清浄添加剤を含んでもよい。このような清浄添加剤は、清浄処理面上の細菌を殺す抗菌性の添加剤であってもよい。任意で、消毒範囲内に光波を放射する光線を更に当ててもよい。この光線は水噴流と基本的に平行に放射されることが一般的であり、ノズル要素を収容し且つ光放射口を有するハンドピースから放射することが好ましい。光源はハンドピース内に設けることができる。代替例として、放射光は導光器を介してハンドピースに供給されてもよい。光源は紫外線領域の波長で光を放射することが好ましい。このような方法の手順は、不純物を取り除き、任意で殺菌するための皮膚の美容的処置に適している。
【0008】
本発明の好ましい態様によれば、1,000Pa以上で好ましくは60,000Pa以下の噴流衝撃圧が、表面積が少なくとも3mm
2 の処理面に80mmの前記作業距離で与えられる。噴流衝撃圧に対する前述の上限値を超えると、本発明に係る方法において許容できない損傷が処理面に生じる場合がある。また、前記噴流衝撃圧に満たなければ、この処理で達成すべき所望の効果が得られなくなる。ここに記載の表面積は、十分大きな面積にわたって清浄処理される表面の清浄要件に相当するものである。噴流衝撃圧は、直角のパルス力の成分により処理面に衝撃を与える圧力であって、測定される。表面積内に作用する圧力の下限は高くとも5,000Pa又は10,000Paであることが好ましい。表面積内に作用する圧力の上限は低くとも40,000Pa又は35,000Paであることが好ましい。処理面の扱いやすさを考慮すると、表面積は100mm
2 以下であることが好ましく、特に50mm
2 以下、20mm
2 以下、さらには12mm
2 以下であることが好ましい。
【0009】
出願人の実地試験によると、扇形噴流はノズル開口部から処理面までの途中で分割される場合があり、例えば2つ又は複数の比較的強い噴流衝撃圧の領域間に、処理面に十分な効果を与えないような弱い噴流衝撃圧の領域が介在することが分かった。このとき、弱い噴流衝撃圧の値を有する領域を含む処理面の噴流衝撃圧プロファイルの領域の外側を囲むように十分な効果を得るのに必要とされる噴流衝撃圧が存在すれば、いかなる場合にも処理面に対する噴流の効果に影響を及ぼさない。従って、本発明の好ましい態様によると、また処理面の効率的な処理を考慮すると、均質かつ連続的で長尺形及び好ましくは線形の形状を有する噴流衝撃プロファイルを作成することが提示される。
【0010】
実地試験により、更に、スプレー媒体を用いて20〜40℃の温度範囲の水と同様の粘性及び表面張力を有する扇形噴流を形成するためには、ノズル本体の内部、すなわち流路及びノズル開口部での流れに対して特定のレイノルズ数を観測すると有利であることが更に分かった。この点に関する特許請求の範囲での記載は、室温での水圧について50〜200バールの圧力範囲によって導かれたものである。
【0011】
この好ましい圧力及び温度範囲で、適切なスプレー媒体を用いて大気環境下で処理面の噴流処理を行うと、望ましく噴霧化された扇形噴流を高精度で生成することができる。したがって、本発明は、入口側の流路に450〜28,000のレイノルズ数を設定し、出口側の流路に約3,900〜46,000のレイノルズ数を設定することを提示する。対応するレイノルズ数は、形状及び対応する境界の状態を考慮して流体力学解析によって予め算出されてもよい。噴流を扇形に広げて扇形噴流を生成するには、ノズル出口の半径方向の速度成分が決め手となる。出願人は本発明に係る方法において作用する流動性を予め算出する際に数値流動解析を行って、特に開放噴流のシミュレーションにおいて乱流の異方性が重要であることを見いだした。これらの解析には、Ansys CFX 14.5によるレイノルズ応力乱流モデルBSLが有用であった。このようなモデルは例えば(ANSYS社のソルバー・モデリング・ガイド(Solver Modeling Guide)、ヘルプシステム(Help System)、ANSYS(登録商標)アカデミックリサーチ(Academic Research)、リリース14.5)に記載されている。ノズル本体及びノズル開口部の内部の流れに対しては、Ansys CFX 14.5によるSST乱流モデルを採用した。このモデルを用いると、噴流パターンの予測が可能な半径方向の速度成分が確実に決定される。適切なモデルを用いることにより、小さな噴流を解消して比較的短い80mmの作業距離でも所望の噴流衝撃圧を作り出す噴霧化処理も検出することができる。
【0012】
現在、ノズル本体の流れ方向上流において調整される流動状態も重要であると考えられている。典型的なノズル本体は1〜30mm、好ましくは1〜10mmの長さを有する。流路は一般的に円形の断面を有しており、その直径は0.15〜0.6mm、好ましくは0.25〜0.35mm、特に好ましくは0.3±0.05mmである。このノズル本体は、流路に至る中間通路を形成するハンドピースに収容されることが一般的である。
【0013】
流路とノズル開口部との間の移行は非定常であることが好ましい。出願人が行った試験によると、ノズル開口部が厳密な円筒形であることにより、扇形噴流としての噴流の好ましい効果が得られることが分かった。ノズル開口部の上流の流路もまた厳密な円筒形であることが好ましい。よって、ノズル開口部は流路の終わりの遮蔽部に設けられる。ノズル開口部は流路と同軸に設けられることが好ましい。このような実施形態により、本発明の方法を実施するために提示されるノズル要素を安価に製造することも可能になる。
【0014】
本方法の効果並びにノズル要素内の特定の条件及び扇形噴流の特性が上記のとおりであれば、これらの事項はノズル本体にも同等に当てはまる。本方法は上述の50〜200バールという圧力間隔の範囲内で実施されるが、本方法の実施には50〜130バールの圧力範囲が好ましい。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、噴流はシートノズルとして実現されるノズル開口部を通じて放出し、シートノズルの長手延在方向に対して略直角にずれた向きの扇形噴流として処理面上に当たる。そして、噴流はノズル開口部と処理面との間の空隙内へと向きを変える。
【0016】
但し、本発明のノズル要素の特徴を示すには130バールの水圧を考慮する。上述した噴流衝撃圧(最小及び最大)を示すノズル要素、及びこのようなシステムの圧力又は流路内部の圧力で作業距離80mmから処理面に当たる噴流衝撃圧のプロファイルが、本発明に係るノズル要素の改良点である。流体力学的な事前算出及び解析によって複数のノズル要素が作製される。よって、本発明は主に、上述の条件下(水圧130バール、作業距離80mm)で形成された扇形噴流を特徴付けるパラメータを用いて本発明に係るノズル要素を定義している。
【0017】
これに応じて、本発明のノズル要素は、水圧130バール及びノズル開口部と処理面との間の作業距離80mmで、扇形噴流を処理面上に形成する。本発明に係るノズル要素は、水圧130バールで、ノズル要素内の流動状態が所定のレイノルズ数(流れ入口側で450乃至28,000の間であり、流れ出口側で3,900乃至46,000の間)に応じて生じるように、更に好適に実施される。ノズル要素は創傷清拭に使用されることが好ましいので、本明細書に記載のノズル要素は創傷清拭に対しても使用される。本発明に係るノズルは、例えば特許文献1に記載の公知のノズルに比べて非常に容易に且つ安価に製造され得る。更に、この公知のノズルは扇形噴流を生成しない。これに関わらず、そのようなノズル要素についての態様はそれ自体が創傷清拭に対する本発明の本質的要件と考えられる。このため、処理面上に扇形噴流を生成するためにノズル要素を具体化及び好適化する必要がない。ノズル板をノズル本体に溶接することは、それ自体が既に本発明の本質的要素であり得る。
【0018】
ノズル開口部と流路との間の移行を非定常にすることは、ノズル本体を金属、特に鋼で作製することにより、またノズル板をノズル本体に溶接することにより、製造面においてかなり容易に達成され得る。ノズル本体とノズル板とは通常、同じ材料で作製される。ノズル開口部はレーザを用いて切断するか、フォトリソグラフィ又はエッチングにより形成してもよい。ノズル要素は一回の使用後に廃棄するような消耗部品であってもよい。これは、衛生面の境界条件が明確である場合、又はノズル要素及び/若しくはハンドピースが一回の使用で汚染されて再利用できない場合に、特に不可欠である。衛生面の条件はまた、生体表面を処理する際にも関係し得る。従って、基本的に円筒形のノズル本体とノズル板としてのピン開口とを前述のように溶接することにより、ノズル本体が確実に安価に製造される。この2つの構成要素は、ノズル板の表面に対してフロントサイドレーザ溶接によって溶接されることが一般的である。このように溶接することにより、ノズル板とノズル本体との間が流体密に結合される。
【0019】
既に述べたように、ノズル開口部はシートノズルとして構成されることが好ましい。シートノズルの幅に対するシートノズルの長さの比、すなわち長さ対幅比は、1〜7の範囲とし、3〜4の範囲であることが好ましい。ここで長さとは、シートノズルの最長の延びを指すものとする。幅とは、ノズル内の流れが直交して貫通する各面における前記長さに直角な一方向への延びを指す。つまり、この比はノズル断面の設計事項である。シートノズルの幅は0.035〜0.06mmであり、0.04〜0.055mmの範囲であることが好ましい。
【0020】
出願人は、様々なノズルの形状に関して体系的な調査を行った。これらの調査では、十字穴付きノズル及び断面が大きく非線形のノズルについて調べた。更に、複数のボアを例えば一列に並置して設けたノズル板及び楕円形のノズルについても調べた。その結果、上述の流動状態は、ノズルの形状設計と同様、所望の作業距離での比較的小さな扇形噴流の形成についても少なくとも関連性があるということが分かった。
【0021】
また、ノズル開口部が真っ直ぐな主側壁及び凹状に湾曲した側壁(曲率半径がノズル開口部の幅の半分以上0.15mm以下)を含むシートノズルによって非常に優れた扇形噴流が生成されることが分かった。本実施形態では、主側壁は互いに対して平行且つ真っ直ぐに延在する。主側壁の端部は凹状に湾曲している。曲率半径は最小でシートノズル幅の半分であり、最大で0.15mmである。好ましい流動状態を考慮すると、流路とノズル開口部との間に望ましい非定常性を与えるように、ノズル開口部は流路の内周に対して規則的にずらして設けるべきである。
【0022】
意外にも、直径0.09〜0.12mmの円形のノズル開口部によって扇形噴流が生成されることが更に分かった。また、これに相当する平均直径の楕円形の場合にも扇形噴流が生成される。この楕円の最小直径は0.08〜0.11mm、最大直径は最小直径の1.3倍以下であることが好ましい。ここで、扇形噴流は、流れ方向においてノズル板の上流に配置された少なくとも1つの遮蔽板によって形成されることが好ましい。このとき、遮蔽開口部はノズル開口部より大きい。但し、遮蔽開口部のノズル面積は、ノズル開口部のノズル面積の150%以下とする。回転対称のノズル開口部の場合、遮蔽開口部は回転非対称であるがノズル開口部の中心と同軸に構成及び配置される。更に、遮蔽開口部は、遮蔽開口部を画定する壁が遮蔽部を形成する遮蔽板の内面又は外面に対して直角に延びるように、厳密に円筒形であることが好ましい。円形のノズル開口部の場合、遮蔽開口部は例えば楕円形又は長尺形に形成され、長尺形の孔は遮蔽開口部の直径よりわずかに広いだけである。長尺形の孔の幅はノズル開口部の直径より200〜500分の一ミリメートルだけ大きくすべきである。
【0023】
本発明の更に好ましい実施形態によれば、ノズル板の流れ方向上流に2枚の遮蔽板が設けられる。上述した実施形態と同様、各遮蔽板はレーザ溶接によって下層に結合されることが好ましい。従って、流れ方向における最初の遮蔽板はノズル本体に溶接され、流れ方向における次の遮蔽板はその下の板に溶接される等である。遮蔽板は流れ方向の前後に並んで配置され、通常は異なる遮蔽開口部を有する。遮蔽開口部は、ノズル開口部の長手方向中心線、すなわち円形のノズル開口部の中心に対して回転非対称であるが、この点又はこの軸に対して点対称の形状又は配置となるように構成されることが好ましい。これにより、ノズル要素からのねじれが存在した場合、このねじれを流れに与えることができる。このように、流れ方向の第1の遮蔽板には2つ以上の遮蔽開口部が設けられ、これらの遮蔽開口部は互いに対向配置され、基本的に円弧状に設計される。これらの2つの遮蔽開口部に続いて第2の遮蔽板が設けられ、第2の遮蔽板は中央円形遮蔽開口部を有し、円弧状の遮蔽開口部と同一平面にスロットが設けられる。第1及び第2の遮蔽板は夫々0.06〜0.20mmの範囲の厚さを有するべきである。
【0024】
本発明は更に、流体ホースを備えたホース要素を提示し、流体ホースの一方の入口端部にはホース要素をポンプに結合するための結合部が設けられ、出口端部にはハンドピースが設けられる。ハンドピースは端部側で上述したノズル要素に結合される。このホース要素は交換可能なユニットとして事前に組み立てられていてもよく、これは特に、ノズル要素が小さいために扱いにくい場合に推奨される。ノズル要素は上述したハンドピースの上方に接着されてもよい。別の態様として、ノズル要素は1つのハンドピース本体と該ハンドピース本体に着脱可能に結合される端部キャップとの間に例えばバヨネット又はねじにより締結されてもよい。このとき、端部キャップはノズル本体を把持し、流出口の側で中間通路の境界を定める位置決めショルダにノズル本体を押し付けることが好ましい。
【0025】
本発明は更に、上記のようなホース要素のためのハンドピースを提示する。このハンドピースは、製造及び流通の時点でホース要素の流体ホースを備えずに、後で使用者が何らかのホース要素に結合することができるという特徴を有する。このため、本発明に係るハンドピースは、流体ホースを通すのに適した長尺形のボアを備えるハンドピース本体を含む。該ハンドピース本体は通常、手指の間に挟めるように人間工学に基づいた形状に形成されている。ハンドピース本体は通常細長い長尺形であり、回転対称の断面を有して構成される。ハンドピース本体は端部側に端部キャップを備える。該端部キャップはハンドピース本体に着脱可能に結合される。端部キャップはいかなる場合も端部キャップとハンドピース本体との間にアダプタピースを封入している。このアダプタピースは通常、プラスチックで形成されており、金属で形成されることが好ましい上述のノズル要素を保持する。このノズル要素は通常、アダプタピースに接着されている。アダプタピースはノズル要素を受けるためのボアを常に有する。更に、流体ホースとアダプタピースとを封止結合するための結合手段が常に設けられる。簡単な実施形態では、アダプタピースは、流体ホースがその自由端を挿入してアダプタピースに流体密の形態で結合され得るボアを有する。使い捨て製品としての簡単な実施形態では、流体ホースもアダプタピースに接着される。
【0026】
ここで、ノズル要素の自由端がアダプタピースを超えて突出するように、ノズル要素はアダプタピースで受けることが好ましい。これに応じて、ノズル要素も通常、ノズル要素を把持する端部キャップに対してわずかに突出するように、前側でこの端部キャップを超えて突出する。端部キャップは通常、ノズル要素が貫通するボアを有する。但し、ボアは通常、ノズル要素の前端までの半径方向距離を十分残して設けられる。主に、端部キャップをハンドピース本体に対して軸方向に締めることにより、端部キャップが端部側でアダプタピースを把持し、アダプタピースをハンドピースに軸方向に固定することが必須である。
【0027】
最後に、本発明はノズル本体の製造方法に関し、該製造方法において、少なくとも1つのノズル開口部がレーザ溶接によってノズル板に形成される。ノズル板はノズル板シートを切断したものであり、ノズル板間には結合ウェブが残され、レーザ溶接によってノズル本体及び板片に結合される。これにより、シート片の上に比較的小さなノズル板を置いて位置決めすることができる。その後、ノズル板はノズル本体に溶接される。この処理において、ノズル本体に結合されたノズル板を半完成品から離すために、残りの結合ウェブは分離される。溶接に用いられるビームは結合ウェブの切断にも同様に用いられる。