(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正面板、前記背面板及び前記内部板は、少なくともいずれかが少なくとも1つの前記内側面に対して垂直に配置され、残りが前記少なくとも1つの内側面に対して斜めに配置された別の傾斜部を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸音パネル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の吸音パネルのように、内部板4によって空間Vが複数の空気層V1〜V3に区画された構成においては、空気層V1〜V3のそれぞれがバネ、正面板1、背面板2及び内部板4のそれぞれが質量として、共鳴が生じ、各板1,2,4が振動することで、透過損失が低下する。一例として、
図2に、特許文献1に記載の吸音パネルのように多数の貫通孔4aを有する内部板4を空間Vに配置した吸音パネル(以下、「多孔吸音パネル」という。)及び繊維系吸音パネルの透過損失を示す。
図2で比較している多孔吸音パネル及び繊維系吸音パネルの面密度は略同じであり、質量則に従えば両パネルは同等の透過損失となるはずであるが、多孔吸音パネルでは、共鳴のために800Hz及び1000Hz帯域で透過損失が低くなっている。
【0006】
共鳴には、板1,2,4に垂直な方向に伝搬する音波による共鳴(以下、「垂直共鳴」という。)と、板1,2,4に水平な方向に伝搬する音波による共鳴(以下、「水平共鳴」という。)とがある。繊維系吸音パネルでは、空間Vに充填された繊維によってこれらの共鳴が抑制されるが、空間Vに繊維が存在しない多孔吸音パネルでは、共鳴が抑制されず、透過損失が低下してしまう。
【0007】
本発明の目的は、共鳴(特に、水平共鳴)を起因とした透過損失の低下を抑制可能な吸音パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明
の第1観点に係る吸音パネルは、多数の貫通孔を有する矩形状の正面板と、前記正面板と空間を介して対向する矩形状の背面板と、前記正面板と前記背面板とをこれらの外縁において接続する側部材であって、前記空間を介して互いに対向する一対の側部を2組含む側部材と、多数の貫通孔を有し、前記空間の内部において前記正面板及び前記背面板のそれぞれと対向し、前記空間を複数の空気層に区画する内部板と、を備えた、箱状の吸音パネルにおいて、前記複数の空気層のうち少なくともいずれかにおいて、前記2組のうち少なくとも1組の一対の側部における当該空気層を介して互いに対向する一対の内側面の一方が、他方に対して斜めに配置された傾斜部を有
し、前記側部材は、中空部と、前記中空部と連通し且つ前記内側面に開口した多数の貫通孔とを有することを特徴とする。
本発明の第2観点に係る吸音パネルは、多数の貫通孔を有する矩形状の正面板と、前記正面板と空間を介して対向する矩形状の背面板と、前記正面板と前記背面板とをこれらの外縁において接続する側部材であって、前記空間を介して互いに対向する一対の側部を2組含む側部材と、多数の貫通孔を有し、前記空間の内部において前記正面板及び前記背面板のそれぞれと対向し、前記空間を複数の空気層に区画する内部板と、を備えた、箱状の吸音パネルにおいて、前記複数の空気層のうち少なくともいずれかにおいて、前記2組のうち少なくとも1組の一対の側部における当該空気層を介して互いに対向する一対の内側面の一方が、他方に対して斜めに配置された傾斜部を有し、前記内側面に設けられた傾斜部は、互いに異なる方向を向く複数の平面から構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、箱状の吸音パネルにおいて、複数の空気層のうち少なくともいずれかにおいて、2組のうち少なくとも1組の一対の側部における当該空気層を介して互いに対向する一対の内側面の一方が、他方に対して斜めに配置された傾斜部を有する。そのため、側部の内側面で反射した音波が正面板、背面板及び内部板のいずれかに入射し、空間において定在波が形成され難くなる。これにより、水平共鳴が抑制され、共鳴(特に、水平共鳴)を起因とした透過損失の低下を抑制可能である。
【0010】
本発明の第1観点において、前記側部材は、中空部と、前記中空部と連通し且つ前記内側面に開口した多数の貫通孔とを有
する。この場合、側部材に設けられた傾斜部と貫通孔との相乗効果により、水平共鳴がさらに抑制され、共鳴(特に、水平共鳴)を起因とした透過損失の低下をより一層抑制可能である。
【0011】
前記正面板、前記背面板及び前記内部板は、少なくともいずれかが少なくとも1つの前記内側面に対して垂直に配置され、残りが前記少なくとも1つの内側面に対して斜めに配置された別の傾斜部を有してよい。この場合、側部材に設けられた傾斜部と、正面板、背面板及び内部板の少なくともいずれかに設けられた別の傾斜部との相乗効果により、水平共鳴がさらに抑制され、共鳴(特に、水平共鳴)を起因とした透過損失の低下をより一層抑制可能である。
【0012】
本発明の第2観点において、前記内側面に設けられた傾斜部は、互いに異なる方向を向く複数の平面から構成されて
いる。この場合、当該内側面で反射した音波の重畳を起因とした定在波の形成がより一層抑制される。これにより、水平共鳴がさらに抑制され、共鳴(特に、水平共鳴)を起因とした透過損失の低下をより一層抑制可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、箱状の吸音パネルにおいて、複数の空気層のうち少なくともいずれかにおいて、2組のうち少なくとも1組の一対の側部における当該空気層を介して互いに対向する一対の内側面の一方が、他方に対して斜めに配置された傾斜部を有する。そのため、側部の内側面で反射した音波が正面板、背面板及び内部板のいずれかに入射し、空間において定在波が形成され難くなる。これにより、水平共鳴が抑制され、共鳴(特に、水平共鳴)を起因とした透過損失の低下を抑制可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1〜
第8参考形態及び第1〜第6実施形態に係る吸音パネル100は、
図3〜
図16に示すように、多数の貫通孔1aを有する矩形状の正面板1と、正面板1と空間Vを介して対向する矩形状の背面板2と、正面板1と背面板2とをこれらの外縁において接続する側部材3であって、空間Vを介して互いに対向する一対の側部3aを2組含む側部材3と、多数の貫通孔4aを有し、空間Vの内部において正面板1及び背面板2のそれぞれと対向する1又は2枚の内部板4と、を備えている。空間Vは、第
5、第
6参考形態及び第
2〜第
5実施形態では、1枚の内部板4によって2つの空気層V1,V2に区画され、第1〜第
4参考形態及び
第1、第6実施形態では、2枚の内部板4によって3つの空気層V1〜V3に区画されている。
【0016】
第1〜
第8参考形態及び第1〜第6実施形態に係る吸音パネル100は、箱状であり、吸音方向(正面板1から背面板2に向かう方向)Aから見て矩形状である。具体的には、第1〜第
4、第
7、第8参考形態及び第1、第6実施形態に係る吸音パネル100は、直方体形状であり、第
5、第6参考形態及び第2〜第5実施形態に係る吸音パネル100は、直方体形状でない。
【0017】
正面板1、背面板2、側部材3及び内部板4は、任意の材料(例えば、アルミニウム、鉄、鋼等の金属、又は、樹脂)から構成されてよい。また、正面板1、背面板2、側部材3及び内部板4は、互いに異なる材料で構成されてよい。正面板1、背面板2、側部材3及び内部板4は、任意の固定手段(例えば、ネジ、接着剤、リベット接合、溶接、又は、超音波圧着)により互いに固定されてよい。
【0018】
正面板1に形成された貫通孔1aの直径は、例えば0.3〜3.0mmである。正面板1の開口率は、例えば10%以下である。内部板4に形成された貫通孔4aの直径は、正面板1に形成された貫通孔1aの直径よりも小さく、例えば0.05〜0.15mmである。内部板4の開口率は、正面板1の開口率よりも小さく、例えば0.2〜1.0%である。貫通孔1a,4aは、任意の加工(パンチング加工、エンボス加工等)により形成されてよい。
【0019】
音源からの音は、貫通孔1aを通過する際に減衰する。音の減衰原理(吸音原理)の詳細については、本技術分野(吸音パネル)に係る文献(例えば、特許第5308006号公報)を参照されたい。
【0020】
側部材3は、吸音方向Aから見て略矩形枠状である。第
5、第
6参考形態及び第
2〜第
5実施形態に係る側部材3は、平ら又は屈曲した板からなる4つの側部3aを連結して構成されているのに対し、第1〜第
4、第7、第8参考形態及び
第1、第6実施形態に係る側部材3は、その全周に亘って中空部を有する1又は複数の中空枠部材で構成されている。第1〜第
4参考形態及び
第1、第6実施形態では、側部材3が吸音方向Aに積層された3つの中空枠部材3x〜3zで構成されており、これら積層された中空枠部材3x〜3zの4辺のそれぞれが側部3aを構成している。第
1実施形態では、各中空枠部材3x〜3zの内側面に多数の貫通孔3pが形成されている。
【0021】
内部板4は、第
5、6参考形態及び第
2〜第
5実施形態では、折り曲げ加工がなされており、正面板1と側部材3との間に挟持されている。
【0022】
内部板4は、第1〜第
4参考形態及び第
1、第6実施形態では、平らである。第1〜第
4参考形態及び第
1、第6実施形態において、内部板4は、吸音方向Aに隣接する中空枠部材3x,3yの間及び中空枠部材3y,3zの間のそれぞれに挟持されている。
【0023】
第1〜
第8参考形態及び第1〜第6実施形態では、空気層V1〜V3のうち少なくともいずれかにおいて、2組のうち少なくとも1組の一対の側部3aにおける当該空気層V1〜V3を介して互いに対向する一対の内側面3a1〜3a3の一方が、他方に対して斜めに配置された傾斜部Yを有する。
【0024】
具体的には、第1
参考形態では、中空枠部材3xが、空気層V1を介して互いに対向する一対の内側面3a1を有する。一対の内側面3a1は、それぞれ、吸音方向Aに対して斜めに配置されており、吸音方向Aの下流に向かうにつれて互いに近づく方向に傾斜している。中空枠部材3yが、空気層V2を介して互いに対向する一対の内側面3a2を有する。一対の内側面3a2は、それぞれ、吸音方向Aに対して斜めに配置されており、吸音方向Aの下流に向かうにつれて互いに離れる方向に傾斜している。中空枠部材3zが、空気層V3を介して互いに対向する一対の内側面3a3を有する。一対の内側面3a3は、それぞれ、吸音方向Aに対して斜めに配置されており、吸音方向Aの下流に向かうにつれて互いに近づく方向に傾斜している。これにより、各空気層V1〜V3において、一対の側部3aにおける各空気層V1〜V3を介して互いに対向する一対の内側面3a1〜3a3の一方(
図3左方)が、他方(
図3右方)に対して斜めに配置された部分(傾斜部Y)を有する。
【0025】
第2
参考形態では、中空枠部材3xが、空気層V1を介して互いに対向する一対の内側面3a1を有する。一対の内側面3a1の一方(
図4左方)が、吸音方向Aに対して斜めに配置されており、吸音方向Aの下流に向かうにつれて他方(
図4右方)に近づく方向に傾斜している。中空枠部材3yが、空気層V2を介して互いに対向する一対の内側面3a2を有する。一対の内側面3a2の一方(
図4左方)が、吸音方向Aに対して斜めに配置されており、吸音方向Aの下流に向かうにつれて他方(
図4右方)から離れる方向に傾斜している。中空枠部材3zが、空気層V3を介して互いに対向する一対の内側面3a3を有する。一対の内側面3a3の一方(
図4左方)が、吸音方向Aに対して斜めに配置されており、吸音方向Aの下流に向かうにつれて他方(
図4右方)に近づく方向に傾斜している。一対の内側面3a1〜3a3の他方(
図4右方)は、吸音方向Aに沿って延在している。これにより、各空気層V1〜V3において、一対の側部3aにおける各空気層V1〜V3を介して互いに対向する一対の内側面3a1〜3a3の一方(
図4左方)が、他方(
図4右方)に対して斜めに配置された部分(傾斜部Y)を有する。
【0026】
第
1実施形態に係る吸音パネル100は、各中空枠部材3x〜3zの内側面に多数の貫通孔3pが形成されている点において第1
参考形態と異なり、上記の点以外は第1
参考形態と同様である。各貫通孔3pは、当該中空枠部材3x〜3zの中空部と連通し、且つ、当該中空枠部材3x〜3zの内側面に開口している。
【0027】
第
3参考形態では、各中空枠部材3x〜3yが、空気層V1〜V3を介して互いに対向する一対の内側面3a1〜3a3を有する。一対の内側面3a1〜3a3は、それぞれ、吸音方向Aに対して斜めに配置されており、吸音方向Aの下流に向かうにつれて互いに離れる方向に傾斜している。これにより、各空気層V1〜V3において、一対の側部3aにおける各空気層V1〜V3を介して互いに対向する一対の内側面3a1〜3a3の一方(
図6左方)が、他方(
図6右方)に対して斜めに配置された部分(傾斜部Y)を有する。
【0028】
第
4参考形態では、各中空枠部材3x〜3yが、空気層V1〜V3を介して互いに対向する一対の内側面3a1〜3a3を有する。一対の内側面3a1〜3a3は、それぞれ、吸音方向Aに対して斜めに配置されており、吸音方向Aの下流に向かうにつれて互いに近づく方向に傾斜している。これにより、各空気層V1〜V3において、一対の側部3aにおける各空気層V1〜V3を介して互いに対向する一対の内側面3a1〜3a3の一方(
図7左方)が、他方(
図7右方)に対して斜めに配置された部分(傾斜部Y)を有する。
【0029】
第
5参考形態では、平らな板からなる一対の側部3aが、空気層V2を介して互いに対向する一対の内側面3a2を有する。一対の内側面3a2は、それぞれ、吸音方向Aに対して斜めに配置されており、吸音方向Aの下流に向かうにつれて互いに近づく方向に傾斜している。これにより、空気層V2において、一対の側部3aにおける空気層V2を介して互いに対向する一対の内側面3a2の一方(
図8左方)が、他方(
図8右方)に対して斜めに配置された部分(傾斜部Y)を有する。
【0030】
第
6参考形態では、平らな板からなる一対の側部3aが、空気層V2を介して互いに対向する一対の内側面3a2を有する。一対の内側面3a2の一方(
図9左方)が、吸音方向Aに対して斜めに配置されており、吸音方向Aの下流に向かうにつれて他方(
図9右方)に近づく方向に傾斜している。一対の内側面3a2の他方(
図9右方)は、吸音方向Aに沿って延在している。これにより、空気層V2において、一対の側部3aにおける空気層V2を介して互いに対向する一対の内側面3a2の一方(
図9左方)が、他方(
図9右方)に対して斜めに配置された部分(傾斜部Y)を有する。
【0031】
さらに、第
6参考形態では、正面板1、背面板及び内部板4のうち、正面板1が
図9右方の内側面3a2に対して垂直に配置され、残り(背面板2及び内部板4)が
図9右方の内側面3a2に対して斜めに配置された別の傾斜部Xを有する。
【0032】
第
7参考形態では、中空枠部材3xが、空気層V1を介して互いに対向する一対の内側面3a1を2組有する。
図10左右方向に対向する一対の内側面3a1の一方(
図10左方)が、
図10上下方向に対して斜めに配置されており、
図10下方に向かうにつれて他方(
図10右方)から離れる方向に傾斜している。当該内側面の他方(
図10右方)は、
図10上下方向に沿って延在している。これにより、空気層V1において、
図10左右方向に対向する一対の側部3aにおける空気層V1を介して互いに対向する一対の内側面3a2の一方(
図10左方)が、他方(
図10右方)に対して斜めに配置された部分(傾斜部Y)を有する。
【0033】
第
8参考形態では、中空枠部材3xが、空気層V1を介して互いに対向する一対の内側面3a1を2組有する。
図11左右方向に対向する一対の内側面3a1の一方(
図11左方)が、
図11上下方向に対して斜めに配置されており、
図11下方に向かうにつれて他方(
図11右方)から離れる方向に傾斜している。さらに、
図11上下方向に対向する一対の内側面の一方(
図11上方)が、
図11左右方向に対して斜めに配置されており、
図11右方に向かうにつれて他方(
図11下方)に近づく方向に傾斜している。これにより、空気層V1において、
図11左右方向に対向する一対の側部3aにおける空気層V1を介して互いに対向する一対の内側面3a1の一方(
図11左方)が、他方(
図11右方)に対して斜めに配置された部分(傾斜部Y)を有し、且つ、
図11上下方向に対向する一対の側部3aにおける空気層V1を介して互いに対向する一対の内側面3a1の一方(
図11上方)が、他方(
図11下方)に対して斜めに配置された部分(傾斜部Y)を有する。
【0034】
第
2〜第
5実施形態では、平ら又は屈曲した板からなる一対の側部3aが、空気層V2を介して互いに対向する一対の内側面3a2を有する。第
2実施形態では、一対の側部3aがそれぞれ内側に屈曲している。第
3実施形態では、一対の側部3aがそれぞれ外側に屈曲している。第
4実施形態では、一対の側部3aのうち一方(
図14左方)が外側に屈曲し、他方(
図14右方)は平らであって吸音方向Aに沿って配置されている。第
5実施形態では、一対の側部3aがそれぞれ内側に屈曲し、且つ、一対の側部3aの一方と他方とで屈曲位置が吸音方向Aにおいて異なる。第
2及び第
5実施形態において、一対の内側面3a2は、それぞれ、吸音方向Aの下流に向かうにつれて互いに近づく方向に傾斜した第1平面と、第1平面の吸音方向Aの下流端部に接続し、吸音方向Aの下流に向かうにつれて互いに離れる方向に傾斜した第2平面とを有する。第
3及び第
4実施形態において、一対の内側面3a2のうち屈曲した面は、それぞれ、吸音方向Aの下流に向かうにつれて互いに離れる方向に傾斜した第2平面と、第2平面の吸音方向Aの下流端部に接続し、吸音方向Aの下流に向かうにつれて互いに離れる方向に傾斜した第1平面とを有する。これにより、空気層V2において、一対の側部3aにおける空気層V2を介して互いに対向する一対の内側面3a2の一方(
図12〜
図15の各図の左方)が、他方(
図12〜
図15の各図の右方)に対して斜めに配置された部分(傾斜部Y)を有する。当該傾斜部Yは、互いに異なる方向を向く2つの平面3a21,3a22(第1平面及び第2平面)から構成されている。
【0035】
第
6実施形態に係る吸音パネル100は、中空枠部材3zの構成が第
3参考形態と異なり、それ以外は第
3参考形態と同様である。第
6実施形態において、中空枠部材3zは、空気層V3を介して互いに対向する一対の内側面3a3を有する。一対の内側面3a3は、それぞれ、吸音方向Aの下流に向かうにつれて互いに近づく方向に傾斜した第1平面と、第1平面の吸音方向Aの下流端部に接続し、吸音方向Aの下流に向かうにつれて互いに離れる方向に傾斜した第2平面とを有する。これにより、空気層V3において、一対の側部3aにおける空気層V3を介して互いに対向する一対の内側面3a3の一方(
図16左方)が、他方(
図16右方)に対して斜めに配置された部分(傾斜部Y)を有する。当該傾斜部Yは、互いに異なる方向を向く2つの平面3a31,3a32(第1平面及び第2平面)から構成されている。
【0036】
以上に述べたように、第1〜
第8参考形態及び第1〜第6実施形態によれば、箱状の吸音パネル100において、複数の空気層V1〜V3のうち少なくともいずれかにおいて、2組のうち少なくとも1組の一対の側部3aにおける当該空気層V1〜V3を介して互いに対向する一対の内側面3a1〜3a3の一方が、他方に対して斜めに配置された傾斜部Yを有する。そのため、側部3aの内側面3a1〜3a3で反射した音波が正面板1、背面板2及び内部板4のいずれかに入射し、空間Vにおいて定在波が形成され難くなる。これにより、水平共鳴が抑制され、共鳴(特に、水平共鳴)を起因とした透過損失の低下を抑制可能である。
【0037】
第
1実施形態において、側部材3は、中空部と、中空部と連通し且つ内側面3a1〜3a3に開口した多数の貫通孔3pとを有する。この場合、側部材3に設けられた傾斜部Yと貫通孔3pとの相乗効果により、水平共鳴がさらに抑制され、共鳴(特に、水平共鳴)を起因とした透過損失の低下をより一層抑制可能である。
【0038】
第
6参考形態において、正面板1が
図9右方の内側面3a2に対して垂直に配置され、残り(背面板2及び内部板4)が
図9右方の内側面3a2に対して斜めに配置された別の傾斜部Xを有する。この場合、側部材3に設けられた傾斜部Yと、背面板2及び内部板4に設けられた別の傾斜部Xとの相乗効果により、水平共鳴がさらに抑制され、共鳴(特に、水平共鳴)を起因とした透過損失の低下をより一層抑制可能である。
【0039】
第
2〜第
6実施形態において、内側面3a1〜3a3に設けられた傾斜部Yは、互いに異なる方向を向く複数の平面3a21,3a22
;3a31,3a32(第1平面及び第2平面)から構成されている。この場合、当該内側面3a1〜3a3で反射した音波の重畳を起因とした定在波の形成がより一層抑制される。これにより、水平共鳴がさらに抑制され、共鳴(特に、水平共鳴)を起因とした透過損失の低下をより一層抑制可能である。
【0040】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、内部板の数は、1又は複数であり、3以上であってもよい。一対の内側面の一方は、他方に対して、全体的に斜めに配置されることに限定されず、部分的に斜めに配置されてよい(即ち、一部のみに傾斜部を有してよい)。内側面に設けられた傾斜部は、互いに異なる方向を向く3以上の平面から構成されてよい。第
1実施形態(側部材が中空部及び中空部と連通する多数の貫通孔を有する形態)以外
の形態(第1
〜第4、第7、第8参考形態及び第
6実施形態)において、側部材を中空ではなく中実の枠部材で構成してもよい。