特許第6662743号(P6662743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6662743
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】食品搬送車および保護カバー
(51)【国際特許分類】
   A47B 31/00 20060101AFI20200227BHJP
   A47B 31/02 20060101ALN20200227BHJP
【FI】
   A47B31/00 H
   !A47B31/02 B
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-189177(P2016-189177)
(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公開番号】特開2018-50870(P2018-50870A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦司
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−034152(JP,U)
【文献】 特開2011−067398(JP,A)
【文献】 特開2002−282057(JP,A)
【文献】 特開平08−033523(JP,A)
【文献】 実開平06−085644(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3159284(JP,U)
【文献】 特開2002−096733(JP,A)
【文献】 特開平09−037854(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3109222(JP,U)
【文献】 特開平09−287362(JP,A)
【文献】 実開平04−052134(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 31/00
A47B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に食品を収納し、搬送路上を走行して食品を搬送する食品搬送車であって、
内部に前記内部空間を形成する本体部と、
前記本体部の下部に配置され、前記搬送路上を走行するための走行輪と、
前記本体部内に形成される前記内部空間と外部空間とを遮蔽または開放するために開閉可能であって、窓部と、前記窓部の四方を取り囲むように配置されたフレーム部材と、を有する開閉扉と、
前記フレーム部材の少なくとも一部を覆うように装着される平面部と、前記平面部に連結されており前記フレーム部材における側面に対して取り付けられる固定部と、を有する保護カバーと、
を備えている食品搬送車。
【請求項2】
前記本体部の側面に複数の前記開閉扉を備えており、
互いに隣接する前記フレーム部材の間には、前記保護カバーが固定される隙間が形成されている、
請求項1に記載の食品搬送車。
【請求項3】
前記保護カバーは、前記搬送路の側方に設置された手摺りの高さ位置に対応する高さ位置に取り付けられている、
請求項1または2に記載の食品搬送車。
【請求項4】
前記保護カバーは、長手方向における中心位置を、前記手摺りの高さ位置に合わせて取り付けられている、
請求項3に記載の食品搬送車。
【請求項5】
前記保護カバーの取付位置を調整する調整機構を、さらに備えている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の食品搬送車。
【請求項6】
前記調整機構は、前記フレーム部材に対して前記保護カバーを固定するための固定具と、前記保護カバーに形成され前記固定具が挿入される長穴または複数の穴とを含む、
請求項5に記載の食品搬送車。
【請求項7】
前記保護カバーは、長手方向に交差する方向の断面視において、前記平面部と、前記平面部における第1端部側を前記内部空間側に屈曲させた第1屈曲部と、前記第1端部とは反対側の第2端部側を前記内部空間側に屈曲させた第2屈曲部と、を有している、
請求項1から6のいずれか1項に記載の食品搬送車。
【請求項8】
前記第1屈曲部は、前記断面視において前記平面部に対して略直角に屈曲しているとともに、
前記第2屈曲部は、前記断面視において前記平面部に対して90度より大きく180度未満の角度で屈曲している、
請求項7に記載の食品搬送車。
【請求項9】
前記第2屈曲部は、前記窓部側に配置されている、
請求項8に記載の食品搬送車。
【請求項10】
前記窓部は、耐衝撃性を有する樹脂によって形成されている、
請求項1から9のいずれか1項に記載の食品搬送車。
【請求項11】
前記フレーム部材は、前記開閉扉を開閉する際に使用者の手が挿入される凹部を有しており、
前記保護カバーは、前記凹部を覆うように取り付けられている、
請求項1から10のいずれか1項に記載の食品搬送車。
【請求項12】
前記開閉扉は、略鉛直方向に沿って配置された回転軸を有しており、前記回転軸を中心にして180度以上開閉可能である、
請求項1から11のいずれか1項に記載の食品搬送車。
【請求項13】
前記本体部の側面に設けられており、前記搬送路上を走行する際に使用者によって把持されて走行操作される操作ハンドルを、さらに備えており、
前記保護カバーは、長手方向において、前記操作ハンドルが設置された高さ位置を含む高さ位置に配置されている、
請求項1から12のいずれか1項に記載の食品搬送車。
【請求項14】
前記保護カバーは、表面に滑り加工が施されている、
請求項1から13のいずれか1項に記載の食品搬送車。
【請求項15】
前記保護カバーは、表面が弾性体によって覆われている、
請求項1から14のいずれか1項に記載の食品搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、病院内において食事の提供の際に用いられる食品搬送車およびこれに取り付けられる保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
病院、老人保健施設、ホテル、学校等の施設において、患者や入居者等に対して食事を提供するための配膳車や再加熱カート等の食品搬送車が用いられている。
食品搬送車は、開閉扉の扉フレームに窓パッキンを介して二重に窓材(庫外側窓材、庫内側窓材)が取り付けられている。そして、扉フレームには、手動開閉用の凹部が鉛直方向に亘って形成されている。これにより、この凹部に手(指先)を入れて引っ掛けて扉を開閉することができる。
【0003】
一般的に、このような食品搬送車が使用される病院内の廊下・エレベータには、患者の歩行を補助するための手摺りが設置されている。このため、食品搬送車が廊下等の角を曲がる際に、前後の走行用車輪の内輪差等に起因して、壁面から突出している手摺りに対して食品搬送車の開閉扉を接触させてしまい、開閉扉の扉フレームを傷つけてしまうおそれがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、各開閉扉の窓材取付フレームの所定の位置に開閉扉を開閉する際に使用される扉取手が取り付けられた移動配膳車について開示されている。
また、特許文献2には、配膳車の高さ方向における開閉扉をカバーしうる範囲において、その直進方向における側面の前後方向に障害物センサ(赤外線センサ含む)を配置して、視覚的または聴覚的手段を用いて警報を出力する配膳車について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−85644号公報
【特許文献2】特開2011−67398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の食品搬送車では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記特許文献1に開示された移動配膳車では、開閉扉に取り付けられた扉取手が開閉扉を保護するカバーとして機能する余地はあるものの、廊下等に設置された手摺りとの接触に関して一切考慮されていない。
また、特許文献2に開示された配膳車では、センサを用いて手摺り等の障害物に接触する前に警報を発することができるものの、センサ等を設置するためのコストが増大するおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、簡易な構成により、廊下に設置された手摺り等の障害物との衝突時における開閉扉の変形・破損を効果的に抑制することが可能な食品搬送車およびこれに取り付けられる保護カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る食品搬送車は、内部空間に食品を収納し、搬送路上を走行して食品を搬送する食品搬送車であって、本体部と、走行輪と、開閉扉と、保護カバーと、を備えている。本体部は、内部に内部空間を形成する。走行輪は、本体部の下部に配置され、搬送路上を走行するために設けられている。開閉扉は、本体部内に形成される内部空間と外部空間とを遮蔽または開放するために開閉可能であって、窓部と、窓部の四方を取り囲むように配置されたフレーム部材と、を有する。保護カバーは、フレーム部材の少なくとも一部を覆うように装着される平面部と、平面部に連結されておりフレーム部材における側面に対して取り付けられる固定部と、を有する。
【0009】
ここでは、例えば、病院や高齢者介護施設等において搬送路上を走行して内部空間に収納した食品を搬送する食品搬送車において、フレーム部材の少なくとも一部を覆うための保護カバーが、固定部においてフレーム部材の側面に対して固定されている。
ここで、保護カバーが取り付けられるフレーム部材の側面とは、開閉扉の正面視におけるフレーム部材の側面(開閉扉の側面視における上面または左右の面)を意味している。すなわち、保護カバーは、開閉扉における走行時における手摺り等の障害物に接触する外部空間に面するフレーム部材の表面ではなく、その側面に対して固定されている。
【0010】
なお、フレーム部材に対する保護カバーの固定方法としては、例えば、ネジ、ボルト、弾性変形を利用した固定具等、各種方法を用いることができる。
また、搬送路上を走行中の障害物として廊下等に設置された手摺りを想定する場合には、設置された手摺りの高さ位置に対応する位置に、保護カバーが取り付けられていることが望ましい。
【0011】
これにより、食品搬送車が搬送路上を走行中に手摺り等の障害物と接触した場合でも、保護カバーはフレーム部材の側面に固定されているため、開閉扉の表面にはネジ等の固定具は設けられていない。よって、保護カバーに衝突した障害物がネジ等の固定具に接触することを防止して、保護カバーの平面部によって覆われた開閉扉の部分を保護することができる。
【0012】
この結果、廊下等に設置された障害物との衝突時における開閉扉の変形・破損を効果的に抑制することができる。
第2の発明に係る食品搬送車は、第1の発明に係る食品搬送車であって、本体部の側面に複数の開閉扉を備えており、互いに隣接するフレーム部材の間には、保護カバーが固定される隙間が形成されている。
【0013】
ここでは、本体部の少なくとも一方の側面に複数の開閉扉が設けられた食品搬送車において、隣接配置されたフレーム部材同士の間には、隙間が形成されている。
ここで、フレーム部材同士の間に形成された隙間は、開閉扉を閉じた状態、開けた状態の双方において形成されている。
これにより、開閉扉のフレーム部材に対して保護カバーを固定するための空間を確保することができる。よって、保護カバーを固定する際には、フレーム部材間に形成された隙間からネジやボルト、その他の固定具等を挿入して、フレーム部材に対して保護カバーを固定することができる。
【0014】
また、開閉扉の開閉状態に関わらず常に隙間が形成されていることで、保護カバーの装着、位置調整等を行うことができる。
第3の発明に係る食品搬送車は、第1または第2の発明に係る食品搬送車であって、保護カバーは、搬送路の側方に設置された手摺りの高さ位置に対応する高さ位置に取り付けられている。
【0015】
ここでは、保護カバーの高さ方向における設置位置を、食品搬送車が走行する搬送路の側方に設置された手摺りの高さ位置を基準にして設定している。
ここで、搬送路の側方に設置された手摺りは、搬送路の側方の壁面に設置されていてもよいし、搬送路の側方における端部に設置されていてもよい。
これにより、例えば、搬送路を走行中の食品搬送車がコーナーを曲がろうとした際に、搬送路の側方に設置された手摺りに開閉扉が接触した場合でも、手摺りの高さ位置には保護カバーが設置されているため、保護カバーによって開閉扉を保護することができる。
【0016】
第4の発明に係る食品搬送車は、第3の発明に係る食品搬送車であって、保護カバーは、長手方向における中心位置を、手摺りの高さ位置に合わせて取り付けられている。
ここでは、保護カバーの高さ方向における設置位置を、食品搬送車が走行する搬送路の側方に設置された手摺りの高さ位置が中心となるように設定している。
これにより、例えば、搬送路を走行中の食品搬送車がコーナーを曲がろうとした際に、搬送路の側方に設置された手摺りに開閉扉が接触した場合でも、保護カバーは手摺りの高さ位置を中心にして設置されているため、保護カバーによって開閉扉を確実に保護することができる。
【0017】
第5の発明に係る食品搬送車は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る食品搬送車であって、保護カバーの取付位置を調整する調整機構を、さらに備えている。
ここでは、開閉扉のフレーム部材を保護する保護カバーのフレーム部材に対する取付位置を調整するための調整機構を設けている。
これにより、例えば、食品搬送車が設置される施設ごとに異なる手摺りの位置等に対応して、保護カバーの取付位置を調整することができる。
【0018】
第6の発明に係る食品搬送車は、第5の発明に係る食品搬送車であって、調整機構は、フレーム部材に対して保護カバーを固定するための固定具と、保護カバーに形成され固定具が挿入される長穴または複数の穴とを含む。
ここでは、調整機構が、例えば、ネジ等の固定具と、保護カバーにおいて調整方向に沿って形成された長穴、あるいは複数の穴と、を有している。
【0019】
ここで、調整機構による調整方向は、食品搬送車が接触するおそれがある障害物の態様等に応じて、例えば、略鉛直方向、略水平方向、あるいは、鉛直方向に交差する方向のいずれかに設定されていてもよい。
これにより、例えば、保護カバー側に調整方向に沿って形成された長穴、あるいは複数の穴を介して、フレーム部材に形成されたネジ穴にネジを挿嵌することで、フレーム部材に対する保護カバーの取付位置を調整することができる。
【0020】
第7の発明に係る食品搬送車は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る食品搬送車であって、保護カバーは、長手方向に交差する方向の断面視において、フレーム部材の表面部分を覆う平面部と、平面部における第1端部側を内部空間側に屈曲させた第1屈曲部と、第1端部とは反対側の第2端部側を内部空間側に屈曲させた第2屈曲部と、を有している。
【0021】
ここでは、保護カバーが、長手方向に交差する断面視において、中央に配置された平面部と、平面部における一方の端部(第1端部)側に形成された第1屈曲部と、平面部における他方の端部(第2端部)側に形成された第2屈曲部と、を有している。そして、第1・第2屈曲部は、平面部に対して、食品搬送車の本体部の内部空間側へ屈曲されている。
これにより、窓部の四方を取り囲むように配置されたフレーム部材の少なくとも一部を、平面部および第1・第2屈曲部を含む保護カバーによって覆うことができる。よって、食品搬送車が走行中に手摺り等に接触した場合でも、保護カバーによって、開閉扉のフレーム部材を効果的に保護することができる。
【0022】
第8の発明に係る食品搬送車は、第7の発明に係る食品搬送車であって、第1屈曲部は、断面視において平面部に対して略直角に屈曲している。第2屈曲部は、断面視において平面部に対して90度より大きく180度未満の角度で屈曲している。
ここでは、上述した保護カバーの構造において、第1屈曲部を平面部に対して略直角に屈曲させるとともに、第2屈曲部を平面部に対して鈍角になる角度で屈曲させる。
【0023】
これにより、例えば、互いに隣接する複数の開閉扉において、間隔が小さい側に第1屈曲部を、間隔が大きい側に第2屈曲部を配置することができる。よって、手摺り等が接触しやすい間隔が広い側に手摺り等の障害物が接触した場合でも、鈍角に屈曲された第2屈曲部が接触時に付与される外力を受けることで、内側のフレーム部材が変形等することを効果的に防止することができる。
【0024】
第9の発明に係る食品搬送車は、第8の発明に係る食品搬送車であって、第2屈曲部は、窓部側に配置されている。
ここでは、平面部に対して鈍角に屈曲された第2屈曲部を、隣接するフレーム部材との間隔が広い窓部側に配置している。
これにより、フレーム部材間の間隔が大きい側に第2屈曲部を配置することができる。よって、手摺り等が接触しやすい間隔が広い側に手摺り等の障害物が接触した場合でも、鈍角に屈曲された第2屈曲部が接触時に付与される外力を受けることで、内側のフレーム部材が変形等することを効果的に防止することができる。
【0025】
第10の発明に係る食品搬送車は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る食品搬送車であって、窓部は、耐衝撃性を有する樹脂によって形成されている。
ここでは、例えば、ポリカーボネート等の耐衝撃性を有する樹脂によって窓部を形成している。
ここで、窓部は、耐衝撃性に加えて、半透明あるいは透明性の高い樹脂によって形成されていてもよい。
【0026】
これにより、食品搬送車の走行中に手摺り等の障害物が開閉扉に接触した場合でも、窓部が耐衝撃性に優れた樹脂によって形成されているため、窓部の変形や破損等を考慮する必要がない。この結果、窓部の四方を囲むように配置されたフレーム部材を保護カバーによって保護することで、手摺り等との接触に伴うフレーム部材の変形等を効果的に防止することができる。
【0027】
第11の発明に係る食品搬送車は、第1から第10の発明のいずれか1つに係る食品搬送車であって、フレーム部材は、開閉扉を開閉する際に使用者の手が挿入される凹部を有している。保護カバーは、凹部を覆うように取り付けられている。
ここでは、保護カバーによって、フレーム部材における使用者の手が挿入される凹部が覆われている。
【0028】
これにより、開閉扉を開閉する際に手が挿入される凹部は、手摺り等の障害物と接触する可能性がある位置において、保護カバーによって覆うことができる。
この結果、手摺り等の障害物が接触した際に、凹部内に手を入れた状態で障害物等に挟まれてしまうリスクを低減することができる。
第12の発明に係る食品搬送車は、第1から第11の発明のいずれか1つに係る食品搬送車であって、開閉扉は、略鉛直方向に沿って配置された回転軸を有しており、回転軸を中心にして180度以上開閉可能である。
【0029】
ここでは、食品搬送車が、略鉛直方向に沿って配置された回転軸を中心にして180度以上の開度まで開閉可能な開閉扉を備えている。
これにより、例えば、トレイに載せた状態で収納された食品を内部空間から取り出す際に、開閉扉を180度以上開いた状態にできるため、食品を取り出しやすくすることができる。
【0030】
また、例えば、複数の開閉窓を備えた食品搬送車において、互いに隣接するフレーム部材の間に隙間が設けられている場合には、180度の開度まで開く開閉扉の側面(フレーム部材の側面)に、保護カバーを容易に固定することができる。
第13の発明に係る食品搬送車は、第1から第12の発明のいずれか1つに係る食品搬送車であって、本体部の側面に設けられており、搬送路を走行する際に使用者によって把持されて走行操作される操作ハンドルを、さらに備えている。保護カバーは、長手方向において、操作ハンドルが設置された高さ位置を含む高さ位置に配置されている。
【0031】
ここでは、保護カバーを、食品搬送車の走行操作を行う操作ハンドルの設置位置を基準にして設けている。
これにより、操作ハンドルが設置された高さ位置と同じ高さにおいて、食品搬送車が手摺り等の障害物と接触した場合でも、保護カバーによってフレーム部材を保護することができる。
【0032】
第14の発明に係る食品搬送車は、第1から第13の発明のいずれか1つに係る食品搬送車であって、保護カバーは、表面に滑り加工が施されている。
ここでは、保護カバーの表面に、例えば、テフロン(登録商標)加工等の滑り加工を施している。
これにより、食品搬送車が走行中に手摺り等の障害物と接触した場合でも、保護カバーの表面加工によって滑り抵抗が小さくなっているため、手摺り等の障害物が保護カバーの表面を滑りやすくすることができる。この結果、手摺り等の障害物によって、保護カバーによって覆われたフレーム部材が変形等することを効果的に抑制することができる。
【0033】
第15の発明に係る食品搬送車は、第1から第14の発明のいずれか1つに係る食品搬送車であって、保護カバーは、表面が弾性体によって覆われている。
ここでは、保護カバーの表面を、例えば、ゴム等の弾性体によって被覆している。
これにより、食品搬送車が走行中に手摺り等の障害物と接触した場合でも、保護カバーの表面が弾性体によって被覆されているため、手摺り等の障害物との接触によって保護カバーに対して付与される外力を吸収することができる。この結果、保護カバーによって覆われたフレーム部材が変形等することを効果的に抑制することができる。
【0034】
第16の発明に係る保護カバーは、内部空間に食品を収納し搬送路上において移動して食品を搬送する食品搬送車に装着される保護カバーである。食品搬送車は、本体部と、走行輪と、開閉扉と、を備えている。本体部は、内部に内部空間を形成する。走行輪は、本体部の下部に配置され、搬送路上を走行するために設けられている。開閉扉は、本体部内に形成される内部空間と外部空間とを遮蔽または開放するために開閉可能であって、窓部と、窓部の四方を取り囲むように配置されたフレーム部材と、を有する。そして、保護カバーは、平面部と、固定部と、を備えている。平面部は、フレーム部材の少なくとも一部を覆うように装着される。固定部は、平面部に連結されておりフレーム部材における側面に対して取り付けられる。
【0035】
ここでは、例えば、病院や高齢者介護施設等において搬送路上を走行して内部空間に収納した食品を搬送する食品搬送車に装着される保護カバーが、固定部においてフレーム部材の側面に対して固定されている。
ここで、保護カバーが取り付けられるフレーム部材の側面とは、開閉扉の正面視におけるフレーム部材の側面を意味している。すなわち、保護カバーは、開閉扉における走行時における手摺り等の障害物に接触する外部空間に面するフレーム部材の表面ではなく、その側面に対して固定されている。
【0036】
なお、フレーム部材に対する保護カバーの固定方法としては、例えば、ネジ、ボルト、弾性変形を利用した固定具等、各種方法を用いることができる。
また、搬送路上を走行中の障害物として廊下等に設置された手摺りを想定する場合には、設置された手摺りの高さ位置に対応する位置に、保護カバーが取り付けられていることが望ましい。
【0037】
これにより、食品搬送車が搬送路上を走行中に手摺り等の障害物と接触した場合でも、保護カバーはフレーム部材の側面に固定されているため、開閉扉の表面にはネジ等の固定具は設けられていない。よって、保護カバーに衝突した障害物がネジ等の固定具に接触することを防止して、保護カバーの平面部によって覆われた開閉扉の部分を保護することができる。
【0038】
この結果、廊下等に設置された障害物との衝突時における開閉扉の変形・破損を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る食品搬送車によれば、廊下等に設置された障害物との衝突時における開閉扉の変形・破損を効果的に抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施形態に係る配膳車の全体構成を示す斜視図。
図2図1の配膳車の開閉扉を開けた状態を示す斜視図。
図3図1の配膳車の右側の開閉扉を開けた状態を示す正面図。
図4図1の配膳車の開閉扉を閉状態から180度の全開状態へ移行する過程を示す上面図。
図5図1の配膳車の左吊り手側の開閉扉の構成を示す斜視図。
図6図5の開閉扉の構成を示す断面図。
図7図1の配膳車の右吊り手側の開閉扉の構成を示す斜視図。
図8図7の開閉扉の構成を示す断面図。
図9】(a)は、図5および図7の開閉扉に取り付けられる保護カバーの構成を示す平面図。(b)はその側面図。(c)はその断面図。
図10】(a)は、図5および図7の開閉扉の凹部側のフレーム部材に取り付けられる保護カバーの構成を示す平面図。(b)はその側面図。(c)はその断面図。
図11】本発明の他の実施形態に係る食品搬送車の開閉扉に取り付けられる保護カバーの調整機構の構成を示す斜視図。
図12】(a),(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係る食品搬送車の開閉扉に取り付けられる保護カバーの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の一実施形態に係る配膳車(食品搬送車)10について、図1図10(c)を用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態の配膳車10は、例えば、病院等の施設においてトレイに載せられた食事を保温しながら搬送して患者等に提供するための食品搬送車であって、病院等の廊下(搬送面31)の側方の壁面30に設置された手摺り(障害物)32(図3参照)との接触時に、非接触部位の変形や破損等が生じさせない構成を備えている。
【0042】
具体的には、配膳車10は、図1および図2に示すように、本体部11と、4つの走行輪12と、開閉扉13と、保護カバー14,15と、操作ハンドル16と、を備えている。
本体部11は、配膳車10の筐体部分を構成しており、内部に食品を乗せたトレイT(図3参照)が収納される内部空間11aを有している。内部空間11aは、開閉扉13を閉じた状態では外部空間から遮断された状態となり、収納された食品を保温する。そして、内部空間11aは、開閉扉13を開けた状態では、外部空間と連通して食品をトレイTごと取り出すことができる。
【0043】
走行輪12は、水平方向に沿って配置された回転軸を中心に回転するタイヤであって、本体部11の下部に4つ設けられており、操作ハンドル16を把持した使用者が押し引きした際に、例えば、病院等の廊下(搬送路)上を搬送する。走行輪12のうち、配膳車10の前進後退方向における前方または後方の一対の2輪は、それぞれが本体部11の底面に鉛直方向に沿って設けられた回転軸を中心に回転可能な状態で取り付けられており、進行方向を自由に変えられる自在輪となっている。これにより、曲がり角等で走行輪12が水平方向において回転して操舵輪となることで、配膳車10を右折、左折させることができる。
【0044】
なお、4つの走行輪12のうち、配膳車10の前進後退方向における前方または後方の一対の走行輪をモータによって駆動される駆動輪とし、残り2つの走行輪を操舵輪としてもよい。この場合には、例えば、使用者が操作ハンドル16を握ると駆動輪側の一対の走行輪12が回転駆動され、配膳車10を走行させるようにしてもよい。
ここで、配膳車10は、操作ハンドル16を操作する使用者から見て、正面に長い構造物となっている。このため、配膳車10を曲がり角等で右折、左折させると、前輪側よりも後輪側が内側へ入り込む、いわゆる内輪差が生じる。よって、配膳車10は、曲がり角の内側に配置された手摺り32等の障害物へ接触してしまうおそれがある。
【0045】
本実施形態の配膳車10では、例えば、配膳車10を曲がり角で右折、左折させる際に生じる内輪差に起因する手摺り32等への接触時におけるダメージを最小限に抑制するために、後述する保護カバー14,15を設けている。なお、保護カバー14,15の詳細な構成については、後段にて詳述する。
開閉扉13は、左右の2枚で一組の扉を構成しており、それぞれ後述する鉛直方向に沿って両端に配置されたそれぞれの回転軸13aを中心にして回転することで、観音開き方式で開閉される。本実施形態の配膳車10では、正面視において、一方の面において、開閉扉13を2枚一組として二組計4枚を配置している。つまり、配膳車10では、反対側の面にも同様に、2枚一組として二組計4枚の開閉扉13が配置されている。
【0046】
ここで、計4枚の開閉扉13を全て閉じた状態において、互いに隣接する開閉扉13の間には、図4に示すように、隙間S1,S2が形成されている。具体的には、観音開き方式の開閉扉13を構成する左右一組の開閉扉13の間には隙間S1が、左右一組の開閉扉13同士の間には隙間S2がそれぞれ形成されている。
これにより、後述する保護カバー14,15を取り付ける際には、この隙間S1,S2を利用して固定ネジ21(図5図7参照)を取り付け、開閉扉13(フレーム部材13c)に対して保護カバー14,15を固定することができる。
【0047】
また、開閉扉13は、図4に示すように、鉛直方向に沿って配置された回転軸13aを中心にして回転することで開閉される。ここで、開閉扉13の回転軸13aは、開閉扉13の開閉空間側(内部空間11aとは反対側)寄りの位置に配置されている。これにより、開閉扉13は、図4に示すように、全開位置P1から全閉位置P2まで、最大開度180度まで開くことができる。
【0048】
なお、図4に示す4枚の開閉扉13のうち、中央に配置された2枚の開閉扉13については、90度までしか開いていないが、一方の開閉扉13を閉じた全閉位置P2では、他方の開閉扉13は最大開度180度まで開くことができる。
図5および図6は、左吊り手側の開閉扉13の構成、図7および図8は、右吊り手側の開閉扉13の構成をそれぞれ示している。
【0049】
さらに、開閉扉13は、図5および図7に示すように、回転軸13aと、窓部13bと、フレーム部材13cと、ネジ穴13dと、凹部13eとを有している。
回転軸13aは、フレーム部材13cの上下の端面にそれぞれ取り付けられた金具13fを介して鉛直方向に沿って配置されている。
窓部13bは、例えば、ポリカーボネート等の耐衝撃性の高い樹脂によって形成された半透明または透明な板状の部材であって、開閉扉13の中央部分に配置されている。これにより、半透明または透明な窓部13bを通して、内部空間11a内に収納されたトレイT上の食品を目視で確認することができる。
【0050】
また、本実施形態では、開閉扉13の窓部13bが、耐衝撃性に優れたポリカーボネート(PC)等の樹脂によって形成されている。このため、図3に示すように、病院の廊下等の搬送面31を走行中の配膳車10が、曲がり角等において壁面30に設置された手摺り(障害物)32に接触した場合でも、窓部13bの部分において変形、破損等してしまうリスクを軽減することができる。
【0051】
さらに、開閉扉13は、図6および図8に示すように、空気層を介して2枚を重ねるように配置されている。これにより、開閉扉13における断熱性能を向上させることができる。
フレーム部材13cは、アルミニウムを用いた押し出し成形によって形成されており、窓部13bの四方をより囲むように配置された4つの部材によって構成されている。具体的には、フレーム部材13cは、鉛直方向に沿って配置された2本の部材と、水平方向に沿って配置された2本の部材とによって構成されている。そして、これらの4本の部材によって窓部13bを取り囲むように配置することで、窓部13bを支持している。
【0052】
ネジ穴13dは、図5および図7に示すように、フレーム部材13cの側面に複数形成されており、固定ネジ21が螺合することで、保護カバー14,15をフレーム部材13cに固定することができる。
ここで、フレーム部材13cの側面とは、図3に示す開閉扉13の正面視における左右の側面を意味するものとする。
【0053】
なお、図5および図7では、フレーム部材13cの右側の端面に形成された複数のネジ穴13dが示されているが、左側の端面にも同様に、複数のネジ穴13dが形成されている。
これにより、例えば、図3に示す手摺り32等の障害物の高さH1の位置に合わせて、固定ネジ21を螺合させるネジ穴13dを選択することで、鉛直方向における所望の位置に保護カバー14,15を取り付けることができる。
【0054】
また、鉛直方向(長手方向)における大きさが異なる保護カバー14,15を取り付ける場合でも、固定ネジ21を螺合させるネジ穴13dを選択することで、どのような大きさの保護カバー14,15でも取り付けることができる。
凹部13eは、図5および図7に示すように、フレーム部材13cを構成する部材のうち、鉛直方向に沿って配置された部材に鉛直方向に沿って設けられており、開閉扉13を開く際に使用者の手が挿入される取手部分として機能する。そして、凹部13eは、図6および図8に示すように、手摺り32(図3参照)等の障害物に対応する高さ位置の部分が、保護カバー14によって覆われている。
【0055】
これにより、使用者は、凹部13eにおける手摺り32(図3参照)等の障害物に対応する高さ位置の部分には、手を入れることができない。この結果、使用者が凹部13eに手を入れた状態で、手摺り32等の障害物と本体部11との間に挟まれてしまうことを回避することができる。
保護カバー14は、手摺り32(図3参照)等の障害物と開閉扉13との接触時における変形や破損等の損傷を抑制するために、開閉扉13のフレーム部材13cを構成する部材のうち、鉛直方向に沿って配置された部材に取り付けられている。そして、保護カバー14は、鉛直方向に沿って配置されたフレーム部材13cの2本の部材のうち、凹部13eが設けられた吊り手側とは反対側の部材に取り付けられている。また、保護カバー14は、図9(a)〜図9(c)に示すように、アルミニウム等の平板状の板材の一部を曲げ加工して形成されており、平面部14a、第1屈曲部(固定部)14b、第2屈曲部14c、および固定穴(固定部)14dを有している。
【0056】
ここで、保護カバー14は、保護すべきフレーム部材13cと同じアルミニウムを用いて形成されている。しかし、保護カバー14は、基本的に、フレーム部材13cよりも厚く形成されている。さらに、保護カバー14は、アルミニウムの板材を曲げ加工することで形成されているため、押し出し成形されたフレーム部材13cよりも強度が大きいという特性を有している。
【0057】
平面部14aは、図6および図8に示すように、水平方向に沿った断面視において、フレーム部材13cの凹部13eを覆うように配置された平面部分であって、フレーム部材13cの正面部分の一部に対して密着するように固定されている。
第1屈曲部(固定部)14bは、図9(a)〜図9(c)に示すように、水平方向に沿った断面視において、平面部14aの端部の角度α1を略90度に屈曲するように曲げ加工されている。そして、第1屈曲部14bは、図6および図8に示すように、開閉扉13を構成するフレーム部材13cの外側の側面に対して密着するように配置されている。さらに、第1屈曲部14bには、図9(b)に示すように、鉛直方向に沿って配置された複数(4つ)の固定穴14dが形成されている。
【0058】
第2屈曲部14cは、図9(a)〜図9(c)に示すように、水平方向に沿った断面視において、平面部14aの端部の角度β1を約120度に屈曲するように曲げ加工されている。この角度β1は、90度より大きく180度未満とすることが可能である。そして、第2屈曲部14cは、図6および図8に示すように、フレーム部材13cの内側の側面に対して隙間を開けた状態で配置されている。
【0059】
ここで、第2屈曲部14cは、第1屈曲部14b側と比較して、開けた空間に配置されている。つまり、第1屈曲部14bは、図3等に示すように、隣接する部材が近接配置されている。よって、配膳車10が手摺り32等の障害物と接触した場合において、手摺り32等が第1屈曲部14b側に接触することはほとんどなく、窓部13b、あるいは第2屈曲部14c側へ接触することが想定される。
【0060】
そこで、本実施形態の配膳車10では、手摺り32等の障害物が接触する可能性がある第2屈曲部14cを、保護カバー14による保護対象であるフレーム部材13cと隙間を空けた状態で配置している。
これにより、手摺り32等の障害物が、直接的にあるいは窓部13bに接触し窓部13bの表面を滑って、第2屈曲部14cに接触した場合でも、第2屈曲部14cが受けた外力が内側のフレーム部材13cに直接伝わることを防いだり、第2屈曲部14cが撓んだり変形することによって衝突のエネルギーを吸収したりして、フレーム部材13cへのダメージを軽減することができる。また、第2屈曲部14cの傾斜面によって、手摺り32等の障害物から付与された外力は、傾斜面に垂直な方向と傾斜面に沿った方向とに分散され、第2屈曲部14cを撓ませたり変形させたりする力を小さくすることができる。
【0061】
なお、窓部13bについては、上述したように、耐衝撃性に優れたポリカーボネート等の樹脂素材によって形成されているため、手摺り32等の障害物との接触による損傷は考慮する必要がないものとする。
固定穴(固定部)14dは、図9(b)に示すように、第1屈曲部14bの面に対して垂直に形成された貫通穴であって、固定ネジ21が挿入される。そして、固定ネジ21が、図5および図7に示すように、固定穴14dに挿入された状態で、フレーム部材13cの側面に形成されたネジ穴13dに螺合することで、保護カバー14がフレーム部材13cに対して固定される。
【0062】
保護カバー15は、保護カバー14と同様に、手摺り32(図3参照)等の障害物と開閉扉13との接触時における損傷を抑制するために、開閉扉13のフレーム部材13cを構成する部材のうち、鉛直方向に沿って配置された部材に取り付けられている。そして、保護カバー15は、鉛直方向に沿って配置されたフレーム部材13cの2本の部材のうち、回転軸13aが設けられた吊り手側の部材に取り付けられている。また、保護カバー15は、図10(a)〜図10(c)に示すように、アルミニウム等の平板状の板材の一部を曲げ加工して形成されており、平面部15a、第1屈曲部(固定部)15b、第2屈曲部15c、および固定穴(固定部)15dを有している。
【0063】
なお、開閉扉13の吊り手側に設けられた保護カバー15は、持ち手側(凹部13e側)に設けられた保護カバー14と比較して、基本的な構成は共通している。しかし、水平方向における寸法(幅寸法)が小さく、平面部15aの部分が平面部14aよりも小さい面積となっている点で、両者は異なっている。
ここで、保護カバー15は、保護カバー14と同様に、保護すべきフレーム部材13cと同じアルミニウムを用いて形成されており、基本的に、フレーム部材13cよりも厚く形成されている。さらに、保護カバー15は、アルミニウムの板材を曲げ加工することで形成されている。このため、保護カバー15についても、保護カバー14と同様に、押し出し成形されたフレーム部材13cよりも強度が大きいという特性を有している。
【0064】
平面部15aは、図6および図8に示すように、水平方向に沿った断面視において、フレーム部材13cの正面部分を覆うように配置されている。そして、平面部14aと同様に、フレーム部材13cの正面部分の一部に対して密着するように固定されている。
第1屈曲部(固定部)15bは、図10(c)に示すように、水平方向に沿った断面視において、第1屈曲部14bと同様に、平面部15aの端部の角度α2を略90度に屈曲するように曲げ加工されている。そして、第1屈曲部15bは、図6および図8に示すように、開閉扉13を構成するフレーム部材13cの外側の側面に対して密着するように配置されている。さらに、第1屈曲部15bには、図10(b)に示すように、鉛直方向に沿って配置された複数(4つ)の固定穴15dが形成されている。
【0065】
第2屈曲部15cは、図10(c)に示すように、水平方向に沿った断面視において、平面部15aの端部の角度β2を約120度に屈曲するように曲げ加工されている。この角度β2は、90度より大きく180度未満とすることができる。そして、第2屈曲部15cは、第2屈曲部14cと同様に、図6および図8に示すように、フレーム部材13cの内側の側面に対して隙間を開けた状態で配置されている。
【0066】
ここで、第2屈曲部15cは、第1屈曲部15b側と比較して、開けた空間に配置されている。つまり、第1屈曲部15bは、図3等に示すように、隣接する部材が近接配置されている。よって、配膳車10が手摺り32等の障害物と接触した場合において、手摺り32等が第1屈曲部15b側に接触することはほとんどなく、窓部13b、あるいは第2屈曲部15c側へ接触することが想定される。
【0067】
そこで、本実施形態の配膳車10では、手摺り32等の障害物が接触する可能性がある第2屈曲部15cを、保護カバー15による保護対象であるフレーム部材13cと隙間を空けた状態で配置している。
これにより、手摺り32等の障害物が、直接的にあるいは窓部13bに接触し窓部13bの表面を滑って、第2屈曲部15cに接触した場合でも、第2屈曲部15cが受けた外力が内側のフレーム部材13cに直接伝わることを大幅に軽減することができる。
【0068】
なお、窓部13bについては、上述したように、手摺り32等の障害物との接触による損傷は考慮する必要がないものとする。
固定穴(固定部)15dは、図10(b)に示すように、第1屈曲部15bの面に対して垂直に形成された貫通穴であって、固定ネジ21が挿入される。そして、図6および図8に示すように、固定ネジ21が、固定穴15dに挿入された状態で、フレーム部材13cの側面に形成されたネジ穴13dに螺合することで、保護カバー15がフレーム部材13cに対して固定される。
【0069】
操作ハンドル16は、上述したように、配膳車10を移動させる際に使用者によって把持されるハンドル部分であって、図1等に示すように、本体部11の側面に略水平方向に沿って取り付けられている。なお、操作ハンドル16が取り付けられる高さは、使用者が配膳車10を押し引きする際に力を入れやすい900mm〜1000mmの範囲であることが好ましい。
【0070】
また、操作ハンドル16は、図3に示すように、高さ方向において、上述した保護カバー14,15が取り付けられた範囲R1の範囲内に取り付けられている。
これにより、使用者からの力が加わる操作ハンドル16の高さ位置に対応するように、保護カバー14,15を配置したことで、操作ハンドル16が設置された高さ位置において、配膳車10が手摺り32等の障害物と接触した場合でも、保護カバー14,15によってフレーム部材13cを保護することができる。
【0071】
本実施形態の配膳車10では、上述したように、保護カバー14,15は、開閉扉13の側面に固定されているため、固定ネジ21等の固定具が、手摺り32等の障害物が接触する部分に露出しない。
これにより、例えば、病院の廊下に設置された手摺り32等の障害物との衝突時における開閉扉13のフレーム部材13cにおける変形・破損を効果的に抑制することができる。
【0072】
また、保護カバー14,15は、図3に示すように、高さ方向における略中心位置が、手摺り32等の障害物と略同じ高さになるように取り付けられている。なお、病院等に設置される手摺り32の高さ位置は、一般的に、750mm〜850mmの範囲と言われている。
そこで、本実施形態の配膳車10では、保護カバー14,15を、手摺り32の設置高さ(750mm〜850mm)を中心とする位置に取り付けている。
【0073】
これにより、手摺り32等の障害物と接触する可能性がある部分を、保護カバー14,15を用いて効率的に保護することができる。
また、本実施形態の配膳車10は、保護カバー14,15の鉛直方向(高さ方向)における取付位置を調整するための調整機構20をさらに備えている。
調整機構20は、図5および図7に示すように、フレーム部材13cの側面に形成されたネジ穴13dと、保護カバー14,15の第1屈曲部14b,15bに形成された複数の固定穴14d、15dと、固定ネジ21とを含むように構成されている。
【0074】
これにより、フレーム部材13c側に形成されたネジ穴13dに固定ネジ21を螺合させる際に、どの固定穴14d,15dに固定ネジ21を挿入するかによって、フレーム部材13cに対する保護カバー14,15が取り付けられる高さ位置を調整することができる。
この結果、例えば、配膳車10が病院等に搬入された後、病院等の廊下に設置された手摺り32の高さ位置を確認した上で、保護カバー14,15を適切な高さ位置に取り付けることができる。
【0075】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、保護カバー14,15の高さ方向における取付位置の調整を行う調整機構20として、保護カバー14,15の側面(第1屈曲部14b,15b)に形成された複数の固定穴14d,15dと、フレーム部材13cの側面に形成されたネジ穴13dと、固定ネジ21とを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
例えば、図11に示すように、複数の固定穴14dの代わりに、側面(第1屈曲部114b)に調整方向(高さ方向)に沿って形成された長穴(固定部)114dを有する保護カバー114を用いてもよい。
この場合には、平面部114aの端部を略直角に屈曲させた第1屈曲部114bを備えた保護カバー114において、フレーム部材13cのネジ穴13dに固定ネジ21を螺合させる際に、長穴114dの方向に沿って保護カバー114の位置を調整することができる。
【0077】
(B)
上記実施形態では、表面にテフロン(登録商標)加工(滑り加工)が施された保護カバー14,15を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図12(a)および図12(b)に示すように、手摺り等の障害物に接触するおそれがある表面に、弾性体214a,215aを設けた保護カバー214,215を用いてもよい。
【0078】
この場合には、食品搬送車の走行中に手摺り等が接触した場合でも、保護カバー214,215の表面に設けられた弾性体214a,215aによって、衝撃を吸収することができる。
この結果、保護カバー214,215によって覆われたフレーム部材が変形、損傷等してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0079】
(C)
上記実施形態では、表面にテフロン(登録商標)加工(滑り加工)が施された保護カバー14,15を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、テフロン(登録商標)加工に限らず、他の滑り加工が施された保護カバーを用いてもよい。
あるいは、滑り加工が施されていない保護カバーを用いてもよい。
【0080】
(D)
上記実施形態では、調整機構20によって、鉛直方向における保護カバー14,15の取付位置の調整を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、調整機構による保護カバーの取付位置の調整方向としては、鉛直方向に限らず、鉛直方向に交差する方向(例えば、水平方向)であってもよい。
【0081】
(E)
上記実施形態では、フレーム部材13cにおける鉛直方向に沿って配置された部分の一部が保護カバー14,15によって覆われている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、保護カバーによって覆われる範囲としては、フレーム部材の鉛直方向の部分に限らず、水平方向に沿って配置された部分を含んでいてもよいし、フレーム部材の一部ではなく全体であってもよい。
【0082】
(F)
上記実施形態では、保護カバー14,15が、病院の壁面等に設置された手摺り32の高さ位置に合わせて、開閉扉13のフレーム部材13cに対して取り付けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、保護カバーによって保護される障害物との接触は、手摺りに限らず、食品搬送車が走行する施設に設置された設備等であってもよい。
【0083】
(G)
上記実施形態では、フレーム部材13cを保護するために取り付けられる保護カバー14,15について、高さ方向における寸法が同じものを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、取り付け相手となるフレーム部材の形状等に応じて、高さ方向における寸法が異なる2つの保護カバーを取り付けてもよい。
【0084】
(H)
上記実施形態では、フレーム部材13cを保護するために取り付けられる保護カバー14,15について、水平方向(幅方向)における寸法が異なるものを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、取り付け相手となるフレーム部材の形状が左右対称の場合には、水平方向(幅方向)における寸法が同じ保護カバーをそれぞれ取り付けてもよい。
【0085】
(I)
上記実施形態では、左右一対の開閉扉13を含む2組の開閉扉13が図3に示す正面とその背面に設けられた配膳車10を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、1つの面に1組の開閉扉13が設けられた構成であってもよい。あるいは、1つの面に3組以上の開閉扉が設けられた構成であってもよい。
【0086】
(J)
上記実施形態では、開閉扉13が鉛直方向に沿って配置された回転軸13aを中心に回転して開閉される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、開閉扉の回転方向としては、鉛直方向に沿って配置された回転軸を中心にして回転する方式に限らず、鉛直方向に交差する方向(例えば、水平方向)に沿って配置された回転軸を中心にして回転する方式を採用してもよい。
また、開閉扉の開閉方式は、回転方式ではなく、スライド方式を採用してもよい。
【0087】
(K)
上記実施形態では、開閉扉13の窓部13bが、耐衝撃性を備えたポリカーボネート等の樹脂によって形成されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ガラスや、他の樹脂素材等によって窓部を形成してもよい。
なお、耐衝撃性を備えた樹脂以外の素材によって窓部を構成する場合には、手摺り等の障害物との接触時における損傷を考慮して、耐衝撃性を備えた素材、あるいは耐衝撃性の表面処理が施された素材を用いることが好ましい。
【0088】
(L)
上記実施形態では、本発明の食品搬送車を配膳車10に適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0089】
例えば、本発明は、内部に収納された食品の保温機能を有する配膳車に限らず、保温機能を有しない配膳車に適用してもよい。あるいは、調理された食品(食材も含む)を一旦冷蔵保存しておき食事前に食品を安全温度まで加熱してから搬送する再加熱カート等の他の食品搬送車に対して、本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の食品搬送車は、廊下等に設置された障害物との衝突時における開閉扉の変形・破損を効果的に抑制することができるという効果を奏することから、食品を搬送する車両に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 配膳車(食品搬送車)
11 本体部
11a 内部空間
12 走行輪
13 開閉扉
13a 回転軸
13b 窓部
13c フレーム部材
13d ネジ穴
13e 凹部
13f 金具
14 保護カバー
14a 平面部
14b 第1屈曲部(固定部)
14c 第2屈曲部
14d 固定穴(固定部)
15 保護カバー
15a 平面部
15b 第1屈曲部(固定部)
15c 第2屈曲部
15d 固定穴(固定部)
16 操作ハンドル
20 調整機構
21 固定ネジ(固定具)
30 壁面
31 搬送面
32 手摺り
114 保護カバー
114a 平面部
114b 第1屈曲部
114d 長穴(固定部)
120 調整機構
214 保護カバー
214a 弾性体
215 保護カバー
215a 弾性体
P1 全閉位置
P2 全開位置
S1,S2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12