(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置の分野において、二層流式の車両用空調装置が知られている。この形式の空調装置は、互いに分離された2つの送風路すなわち第1送風路及び第2送風路と、これらの2つの送風路に空気を流す単一の遠心送風機とを備えている。遠心送風機は、スクロールハウジングと、スクロールハウジングに送られる空気を取り込むための空気取入ハウジングとを有している。
【0003】
遠心送風機は、スクロールハウジングの吸込口及び羽根車の翼列の径方向内側の空間に挿入された分離筒を有している(例えば特許文献1、2を参照)。羽根車の翼列の径方向外側とスクロールハウジングとの間の空間は分離壁により上下に分割され、これにより第1送風路に連通する第1空気流路及び第2送風路に連通する第2空気流路が形成されている。分離筒は、当該分離筒の外側の第1通路を流れる第1空気流が翼列の上半部に導入された後に第1空気流路に流入し、分離筒の内側の第2通路を流れる第2空気流が翼列の下半部に導入された後に第2空気流路に流入するように設けられている。空気取入ハウジングは、車室外の空気(外気)を取り込むための外気導入口と、車室内の空気(内気)を取り込むための内気導入口とを有する。特許文献2の遠心送風機では、外気導入口及び内気導入口が設けられている領域と、分離筒の入口側端部との間に、フィルタが設けられる。
【0004】
上記の形式の空調装置の運転モードとしては、空気取入ハウジング及びスクロールハウジングに外気のみが取り込まれる外気モードと、内気のみが取り込まれる内気モードと、内気及び外気の両方が取り込まれる内外気二層流モードがある。
【0005】
内外気二層流モードでは、内気導入口から空気取入ハウジングに導入された内気は、フィルタを通過した後に分離筒内に導入され、スクロールハウジング内を通って第2空気流路に流出する。一方、外気導入口から空気取入ハウジングに導入された外気は、フィルタを通過した後に分離筒の外側を通って、スクロールハウジング内に流入し、第1通路に流出する。このとき、内気の通過経路及び外気の通過経路の流路抵抗の関係が適正化されていないと、内気及び外気のうちの少なくとも一方の車室内への十分な吹出風量が得られないことがある。また、外気モード及び内気モードにおいても、吹出口への風量分配が不適切になることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、内気の通過経路及び外気の通過経路の流路抵抗の関係を適正化することにより、十分な吹出風量を達成することができる構成を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、車両用の片吸込型の遠心送風機であって、モータと、周方向翼列を形成する複数の翼を有し、モータによって回転軸線周りに回転駆動されて、軸方向の一端側から翼列の半径方向内側の空間に吸入した空気を、半径方向外側に向けて吹き出す羽根車と、羽根車を収容する内部空間と、軸方向の一端側に開口する吸込口と、周方向に開口する吐出口と、を有するスクロールハウジングと、スクロールハウジングの内部空間のうちのスクロールハウジングの内周面と羽根車の外周面との間の領域、並びに吐出口の内部空間を、軸方向に分割して第1空気流路及び第2空気流路を形成する仕切壁と、吸込口の半径方向内側及び羽根車の翼列の半径方向内側を通って軸方向に延びる分離筒であって、吸込口からスクロールハウジング内に吸入される空気の流れを、分離筒の外側を通る第1空気流と、分離筒の内側を通る第2空気流とに分割するように設けられ、かつ、第1空気流を半径方向外向きに転向して第1空気流路に案内するとともに、第2空気流を半径方向外向きに転向して第2空気流路に案内する出口側端部を有している、分離筒と、車両の外気を取り込むための少なくとも1つの外気導入口と、車両の内気を取り込むための少なくとも1つの内気導入口と、を有し、外気導入口から取り込んだ外気を分離筒の外側に流すとともに内気導入口から取り込んだ内気を分離筒の内側に流すことができるように構成された空気取入ハウジングと、を備えた遠心送風機が提供される。この遠心送風機は、任意選択的に、内気導入口及び外気導入口と、分離筒の入口側端部との間において、入口側端部に近接する位置で、空気取入ハウジング内でフィルタを収容するフィルタ収容部をさらに備える。
【0009】
好適な実施形態において、上記の遠心送風機は、下記の特徴(1)〜(6)のうちの少なくとも一つを有している。
(1)空気取入ハウジング内に、少なくとも1つの外気導入口から外気が導入されるとともに、少なくとも1つの内気導入口から内気が導入される二層流モードが実行されるときのフィルタ収容部に収容されるフィルタの下流側面の位置で測定した外気通過領域の断面積と内気通過領域の断面積との比が、スクロールハウジングの吐出口の位置で測定した第1空気流路の断面積と第2空気流路の断面積との比と略同じである。
(2)空気取入ハウジング内に、少なくとも1つの外気導入口から外気が導入されるとともに、少なくとも1つの内気導入口から内気が導入される二層流モードが実行されるときのフィルタ収容部に収容されるフィルタの下流側面の位置で測定した外気通過領域及び内気通過領域の断面積をそれぞれE1及びR1とし、かつ、スクロールハウジングの吐出口の位置で測定した第1空気流路及び第2空気流路の断面積をそれぞれE3及びR3としたときに、「E1>R1」かつ「E3>R3」、あるいは、「E1<R1」かつ「E3<R3」のいずれかの関係が成立している。
(3)スクロールハウジングの吸込口の位置で測定した分離筒の外側の吸込口の断面積と、分離筒の内部の断面積との比が、スクロールハウジングの吐出口の位置で測定した第1空気流路の断面積と第2空気流路の断面積との比と略同じである。
(4)スクロールハウジングの吸込口の位置で測定した分離筒の外側の吸込口の断面積をE2、分離筒の内部の断面積をR2とし、かつ、スクロールハウジングの吐出口の位置で測定した第1空気流路及び第2空気流路の断面積をそれぞれE3及びR3としたときに、「E2>R2」かつ「E3>R3」、あるいは、「E2<R2」かつ「E3<R3」のいずれかの関係が成立している。
(5)空気取入ハウジング内に、少なくとも1つの外気導入口から外気が導入されるとともに、少なくとも1つの内気導入口から内気が導入される二層流モードが実行されるときのフィルタ収容部に収容されるフィルタの下流側面の位置で測定した外気通過領域の断面積と内気通過領域
の断面積の比が、スクロールハウジングの吸込口の位置で測定した分離筒の外側の吸込口の断面積と分離筒の内部の断面積との比と略同じである。
(6)空気取入ハウジング内に、少なくとも1つの外気導入口から外気が導入されるとともに、少なくとも1つの内気導入口から内気が導入される二層流モードが実行されるときのフィルタ収容部に収容されるフィルタの下流側面の位置で測定した外気通過領域及び内気通過領域の断面積をそれぞれE1及びR1とし、かつ、スクロールハウジングの吸込口の位置で測定した分離筒の外側の吸込口の断面積をE2、分離筒の内部の断面積をR2としたときに、「E1>R1」かつ「E2>R2」、あるいは、「E1<R1」かつ「E2<R2」のいずれかの関係が成立している。
【発明の効果】
【0010】
上記実施形態によれば、内気の通過経路及び外気の通過経路の流路抵抗の関係が適正化されるので、内気と外気の流量比を所望の値に維持すうことが容易となり、また、送風機からの十分な吹出風量を得ることが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して本発明の車両用の遠心送風機の実施形態について説明する。各図では、Rが車両の右方、Lが車両の左方、Frが車両の前方、Rrが車両の後方をそれぞれ意味している。但し、車両に対する遠心送風機の設置方向は、図示例に限定されるものではない。
【0013】
図1に示す遠心送風機1は、片吸込型の遠心送風機である。遠心送風機1は、羽根車2を有する。羽根車2は、その外周部分に、周方向に並んだ翼列3Aを形成する複数の翼3を有している。羽根車2は、モータ13により回転軸線Ax周りに回転駆動され、軸方向上側(軸方向一端側)から羽根車2の翼列の半径方向内側の空間に吸入した空気を、半径方向外側に向けて吹き出す。
【0014】
なお、本明細書において、説明の便宜上、回転軸線Axの方向を軸方向または上下方向と呼び、
図1及び
図2の上側及び下側をそれぞれ「軸方向上側」及び「軸方向下側」と呼ぶ。しかしながら、このことによって、空調装置が実際に車両に組み込まれた場合に回転軸線Axの方向が鉛直方向に一致するものと限定されるわけではない。また、本明細書においては、特別な注記が無い限り、回転軸線Ax上の任意の点を中心として回転軸線Axと直交する平面上に描かれた円の半径の方向を半径方向と呼び、当該円の円周方向を周方向または円周方向と呼ぶ。
【0015】
羽根車2は、当該羽根車2と一体成形された内側偏向部材9を含む。内側偏向部材9は、コーン部と呼ばれることもある。この内側偏向部材9は、幾何学的な意味における回転体であり、側周部10と、中央部11とを有している。中央部11において、モータ13の回転軸12が羽根車2に連結される。この例では、側周部10は、この側周部10の外周面の子午断面における輪郭線が、中央部11に近づくに従って急勾配となるように湾曲している。図示しない他の例では、側周部10は、この側周部10の外周面の子午断面における輪郭線が、中央部11から翼列3Aに向けて湾曲しない(断面が直線状である)場合もある。
【0016】
羽根車2は、スクロールハウジング17の概ね円柱形の内部空間に収容される。スクロールハウジング17は、軸方向上側に開口する吸込口22と、吐出口170(
図3A及び
図3Bを参照)とを有している。
図3A及び
図3Bに示すように、スクロールハウジング17を軸方向から見た場合、吐出口170はスクロールハウジング17の外周面の概ね接線方向に延びている。吐出口170は
図1では見えない。
【0017】
スクロールハウジング17は、当該スクロールハウジング17の外周壁17Aから半径方向内側に向けて延びる仕切壁20を有している。この仕切壁20は、スクロールハウジング17の内部空間のうちのスクロールハウジング17の内周面と羽根車2の外周面との間の領域を軸方向に(上下に)分割して、スクロールハウジング17の外周壁17Aに沿って周方向に延びる上側の第1空気流路18及び下側の第2空気流路19を形成する。
【0018】
スクロールハウジング17内には、吸込口22を介して、分離筒14が挿入されている。分離筒14の中央部15から下部16は、吸込口22を通り、羽根車2の翼列3Aの半径方向内側の空間4まで軸方向に延びている。分離筒14の上部24は、スクロールハウジング17の外側(吸込口22よりも軸方向上側)に位置している。分離筒14の下端は、羽根車2の翼列3Aの半径方向内側の空間4内に位置している。
【0019】
図3Aより明らかなように、分離筒14の上部24の断面(回転軸線Axに直交する方向の断面を意味する)は概ね長方形である。分離筒14の中央部15の断面は円形(又は概ね円形)である。分離筒14の断面形状は、上部24から中央部15に近づくに連れて、長方形から円形に滑らかに推移する。分離筒14の中央部から上部の間は湾曲しており、分離筒14の断面中心の位置が上部24から中央部15に近づくに連れて滑らかに推移する。分離筒14の下部16(出口側端部)は、下端に近づくに従って拡径するフレア形状を有しているとともに、下端は円形である。
【0020】
図示された形状を有する分離筒14を、樹脂射出成形技術により一体成形することは不可能であるか、可能だとしても非常に困難である。従って、別々に射出成形された2つまたはそれ以上のピースを例えば接着または嵌め込み等の手法により連結することによって、分離筒14を製造することが好ましい。
【0021】
分離筒14は、スクロールハウジング17内に吸入される空気の流れを、分離筒14の外側の第1通路14Aを通る第1空気流と、分離筒14の内側の第2通路14Bを通る第2空気流とに分割する。第1空気流は、スクロールハウジング17の吸込口22のうちの分離筒14の外周面より外側のリング状領域を通り、羽根車2の翼列の上半部5(吸込口22に近い部分)に流入する。第2空気流は、分離筒14の上端から分離筒14の内側に入り、羽根車2の翼列の下半部6(吸込口22から遠い部分)に流入する。従って、スクロールハウジング17の吸込口22のうちの分離筒14の外周面より外側のリング状領域がスクロールハウジング17の第1吸入口、分離筒14の上端の開口がスクロールハウジング17の第2吸入口、と見なすこともできる。
【0022】
スクロールハウジング17には、空気取入ハウジング21が連結されている。スクロールハウジング17と空気取入ハウジング21とは、一体成形されていてもよいし、別々に作製された後にネジ止め、接着、嵌め込み等の手法により連結されてもよい。スクロールハウジング17及び空気取入ハウジング21は空調装置ケーシングの一部を成す。
【0023】
空気取入ハウジング21は、第1開口(外気導入口)25、第2開口(内気導入口)26及び第3開口(内気導入口)27を有している。第1開口25には、車両に設けられた外気導入路の出口(図示せず)と連結されているかあるいは当該出口の近傍にあり、第1開口25を介して外気(車両外部から取り入れた空気)を空気取入ハウジング21内に導入することができる。第2開口26及び第3開口27は車両に備えられた内気導入路の入り口出口(図示せず)と連結されているかあるいは当該出口の近傍にあり、第2及び/又は第3開口26,27を介して内気(車室内空気)を空気取入ハウジング21内に導入することができる。
【0024】
例示的かつ非限定的な実施形態においては、第1開口25、第2開口26及び第3開口27の各々は、車両の横方向(L−R方向)に延びる長方形の孔とすることができる。第2開口26及び第3開口27は、仕切部材(図示せず)により分割された2つの開口であるが、これに限定されるものではなく、仕切部材を設けずに連続した一つの開口に第2開口26及び第3開口27としての役割を持たせることができる。
【0025】
空気取入ハウジング21内には、ロータリ式ドアと呼ばれる形式の第1切換ドア33及び第2切換ドア34が設けられている。第1切換ドア33は、図示しないアクチュエータにより回転させられる回転軸33aと、この回転軸33aに結合された閉鎖体33bとを有する。閉鎖体33bは、回転軸33aの回転に伴い旋回して、第1開口25または第2開口26を閉鎖することができる。第2切換ドア34は、図示しないアクチュエータにより回転させられる回転軸34aと、この回転軸34aに結合された閉鎖体34bとを有する。閉鎖体34bは、回転軸34aの回転に伴い旋回して、第3開口27を閉鎖することができる。
【0026】
第1切換ドア33は、第1開口25を閉鎖しかつ第2開口26を開放する第1位置(
図2B)と、第1開口25を開放しかつ第2開口26を閉鎖する第2位置(
図2A)との間で移動することができる。第2切換ドア34は、第3開口27を閉鎖する第1位置(
図2A)と、第3開口27を開放する第2位置(
図2B)との間で移動することができる。
【0027】
空気取入ハウジング21内には、第1〜第3開口25〜27と、分離筒14の上部24の上端部に設けられる入口開口(
図3Aに示す開口領域240に対応)との間に、空気中に含まれるダスト、パーティクル等の汚染物質や異臭を除去するためのフィルタ35が設けられている。フィルタ35は、第1切換ドア33、第2切換ドア34の稼働範囲よりも、分離筒14の入口開口側に設けられる。フィルタ35は、例えば所定の通気性を有する不織布をひだ状に折り曲げて構成される。異臭を除去するために、活性炭等の臭気除去物質が取り付けられることもある。
【0028】
また、フィルタ35は、空気取入ハウジング21内に設けられたフィルタ収容部36としてのスロットまたはレール(
図1にはその一部のみを概略的に示した)に挿入されて、分離筒14の上部24すなわち入口側端部に近接する位置に保持されている。フィルタ35の形状寸法は、
図1のIIIA−IIIA断面における空気取入ハウジング21の形状寸法(
図3Aを参照)と概ね同じである。図示例では、フィルタ35は四角形(通常は、長方形または正方形)である。
【0029】
次に、
図1〜
図3に示す車両用空調装置の動作について説明する。
【0030】
車両用空調装置の第1の動作モードでは、
図2Aに示すように、第1切換ドア33が第2位置とされて第1開口25が開放され、第2開口26が閉鎖される。また、第2切換ドア34が第1位置とされて第3開口27が閉鎖される。この場合、第1開口25から空気取入ハウジング21内に導入された外気AEは、フィルタ35の第1領域35Aを通り、分離筒14の外側の第1通路14Aを通って羽根車2の翼列3Aの上半部5に流入する第1空気流と、フィルタ35の第2領域35Bを通り、分離筒14の内側の第2通路14Bを通って羽根車2の翼列の下半部6に流入する第2空気流を形成する。第1の動作モードは、外気モードと呼ばれることもある。
【0031】
第2の動作モードでは、
図1に示すように、第1切換ドア33が第2位置とされて第1開口25が開放され、第2開口26が閉鎖される。また、第2切換ドア34が第2位置とされて、第3開口27が開放される。この場合、第1開口25から空気取入ハウジング21内に導入された外気AEは、フィルタ35の第1領域35Aを通り、分離筒14の外側の第1通路14Aを通り、羽根車2の翼列3Aの上半部5に流入する第1空気流を形成する。また、第3開口27から導入された内気ARは、フィルタ35の第2領域35Bを通り、分離筒14の内側の第2通路14Bを通り、羽根車2の翼列3Aの下半部6に流入する第2空気流を形成する。なお、
図1より明らかなように、第2位置にある第2切換ドア34の閉鎖体34bは、フィルタ35の上方の空間を、第1開口25側の空間と第3開口27側の空間とに分割し、フィルタ35の上方で外気AEと内気ARとが混合されることを防止する。すなわち第2位置にある第2切換ドア34の閉鎖体34bは、第2の動作モードのときに、フィルタ35の上方で外気AEと内気ARとを分離する分離壁の機能を有している。第2の動作モードは、内外気二層流モードと呼ばれることもある
【0032】
第3の動作モードでは、
図2Bに示すように、第1切換ドア33が第1位置とされて第1開口25が閉鎖され、第2開口26が開放される。また、第2切換ドア34が第2位置とされて、第3開口27が開放される。この場合、第2開口26及び第3開口27から空気取入ハウジング21内に導入された内気ARは、フィルタ35の第1領域35Aを通り、分離筒14の外側の第1通路14Aを通って羽根車2の翼列3Aの上半部5に流入する第1空気流と、フィルタ35の第2領域35Bを通り、分離筒14の内側の第2通路14Bを通って羽根車2の翼列の下半部6に流入する第2空気流を形成する。第3の動作モードは、内気モードと呼ばれることもある
【0033】
第2の動作モード(内外気二層流モード)は、特に冬季または比較的気温が低い時期に、車室内が冷えている状態からフロントウインドウの曇りを防止しつつ速やかに車室内を暖める暖房運転を行う際に用いられる。あるいは、暖房運転の初期には第3の動作モード(内気モード)とされ、車室内の温度の上昇が開始されたら速やかに第2の動作モードに移行することも行われる。この暖房運転が自動制御により行われるときには、外気AEが車室のデフロスタ吹出口(図示せず)からフロントウインドウ(図示せず)に吹き付けられ、内気ARが車室のフット吹出口(図示せず)から乗客の足元に向けて吹き出される。
【0034】
次に、内気の通過経路及び外気の通過経路の流路抵抗の関係を適正化することにより、十分な吹出風量を達成するための構成について説明する。なお、以下の説明においては、車両用空調装置が第2の動作モード(内外気二層流モード)で動作している場合を例にとって説明する。
【0035】
図3Aは、
図1のIIIA−IIIA断面を示しており、この断面は、フィルタ35の下流側面(流出側の面)とほぼ同じ軸方向位置(実際にはそれよりも僅かに下方)にある空気取入ハウジング21の断面である。なお、軸方向位置とは、前述したように回転軸線Axの方向に関する位置である。
【0036】
図3Aに現れている断面には、分離筒14の上部24の上端部が含まれる。分離筒14の上端部は、分離筒14の入口開口240を有する。入口開口240は、長方形の4つの辺にそれぞれ対応する周縁部分241,242,243,244に囲まれている。入口開口240は、空気取入ハウジング21の前後方向(Fr−Rr方向)に関して中央に位置しているのではなく、後側に位置している。入口開口240の周縁部分241,243,244は、空気取入ハウジング21の壁体211,213,214に接続されている。
【0037】
羽根車2が回転すると、分離筒14の入口開口240には、当該入口開口240の近傍に存在する空気が吸い込まれる。従って、入口開口240の上方にあるフィルタ35の部分(フィルタ35の第2領域35B)を通って、分離筒14内に空気が吸い込まれる。二層流モードが実行されているときには、
図1に示すように、第2切換ドア34の閉鎖体34bの端縁34eが分離筒14の周縁部分242のほぼ真上に位置しているため、第2領域35Bにはほぼ内気のみが通過する。一方、フィルタ35の第1領域35A(第2領域35B以外の領域)には、ほぼ外気のみが通過する。
【0038】
分離筒14の入口開口240の面積を「R1」とすると、フィルタ35の第2領域35Bの面積もR1とみなすことができる。従って、R1は、二層流モードが実行されるときのフィルタ収容部36に収容されるフィルタ35の下流側面の位置で測定した内気通過領域(つまり第2領域35B)の断面積に相当すると言える。また、
図3Aに現れている空気取入ハウジング21の断面のうち、分離筒14を除いた部分(つまり
図3Aにおいて壁体242よりも左側の領域)の面積を「E1」とすると、このE1は、二層流モードが実行されるときのフィルタ収容部36に収容されるフィルタ35の下流側面の位置で測定した外気通過領域(つまり第1領域35A)の断面積に相当すると言える。
【0039】
図3Bは
図1のIIIB−IIIB断面を示しており、この断面は、スクロールハウジング17の吸込口22(ベルマウスなどとも呼ばれる)の軸線方向位置、詳細には、吸込口22の面積が最も小さくなる軸線方向位置におけるスクロールハウジング17及び分離筒14の断面である。
【0040】
図3Bに現れている断面において、スクロールハウジング17の吸込口22の位置で測定した分離筒14の内部の断面積、つまり分離筒14の内周面に囲まれた領域の面積)を「R2」とする。また、分離筒14の外側の吸込口22の断面積、つまり分離筒14の外周面と吸込口22の内周面22e(図示例では吸込口22の端縁の輪郭線)とに挟まれた領域の面積を「E2」とする。
【0041】
図3Cは、
図3BのIIIC−IIIC断面を示しており、この断面は、スクロールハウジング17の吐出口170の断面、具体的には、ハウジング17の舌部17tの下流側のうち最も断面積の小さな位置における吐出口170の断面である。舌部17tの下流側のうち最も断面積の小さな部分は、舌部17tのごく近傍(例えば、舌部17tから下流側に30mmまでの間)に存在することが多い。
【0042】
図3Cに現れている断面において、第1空気流路18の断面積(つまりスクロールハウジング17の吐出口170の位置で測定した第1空気流路18の断面積)を「E3」とし、第2空気流路19の断面積(つまりスクロールハウジング17の吐出口170の位置で測定した第2空気流路19の断面積)を「R3」とする。
【0043】
上記のように定義されたE1,R1,E2,R2,E3,R3に対して以下の関係1〜3のうちの少なくとも1つが成立していることが好ましく、複数の関係が成立していることがより好ましい。
E1:R1≒E3:R3・・・関係1
E2:R2≒E3:R3・・・関係2
E1:R1≒E2:R2・・・関係3
なお、「≒」は「略同じ」を意味しており、具体的には、両辺の値が全く同じであるか、あるいは、[(大きい方の値−小さい方の値)/大きい方の値]が0.05(5%)以下であることを意味している。
【0044】
第1空気流路18及び第2空気流路19の断面積(E3:R3)の比率は、第1空気流路18を流れる空気流量及び第2空気流路19を流れる空気流量の所望の比率に応じて設定されている。
【0045】
断面積E1の部分及び断面積R1の部分(つまりフィルタ35の下流側面)の直ぐ上流側には、通気の抵抗となるフィルタ35が存在しており、フィルタ35の流路抵抗は、フィルタ35の上流側部分及び下流側の部分と比較して大きい。また、断面積E2の部分及び断面積R2の部分は、各々の上流側部分または下流側の部分と比較して流路面積が小さいため、やはり各々の上流側部分または下流側の部分と比較して流路抵抗が大きくなっている。従って、二層流モードが実行されているとき、外気の通過経路を流れる外気の流量は断面積E1及び断面積E2に大きく影響を受け、内気の通過経路を流れる内気の流量は断面積R1及び断面積R2に大きく影響を受ける。
【0046】
断面積E3の部分に至るまでの外気の通過経路(断面積E1の部分に対応するフィルタ35の部分及び断面積E2の部分を通過する経路)の流路抵抗と、断面積R3の部分に至るまでの内気の通過経路(断面積R1の部分に対応するフィルタ35の部分及び断面積R2の部分を通過する経路)の流路抵抗とが、断面積E3と断面積R3との比率E3:R3と大きく異なっていると、第1空気流路18と第2空気流路の所望の流量比を達成することが困難となる。また、断面積E1が断面積R1より大きく、かつ、断面積E2が断面積R2より小さい(あるいは、断面積E1が断面積R1より小さく、かつ、断面積E2が断面積R2より大きい)場合には、外気の通過経路を流れる外気の流量及び内気の通過経路を流れる内気の流量がともに小さくなり、送風機の性能が低下する。
【0047】
これに対して上記関係1〜3のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つが成立していれば、内気と外気の流量比を所望の範囲に維持することができ、かつ、内気の流量及び外気の流量をともに十分に大きくすることができる。
【0048】
なお、上記関係1〜3に代えて、下記関係1’〜3’ のうちの少なくともいずれか1つが成立していることが好ましく、複数の関係が成立していることがより好ましい。
「E1>R1」かつ「E3>R3」、あるいは「E1<R1」かつ「E3<R3」・・・関係1’
「E2>R2」かつ「E3>R3」、あるいは「E2<R2」かつ「E3<R3」・・・関係2’
「E1>R1」かつ「E2>R2」、あるいは「E1<R1」かつ「E2<R2」・・・関係3’
【0049】
上記のように、E1とR1との大小関係、E2とR2との大小関係、E3とR3との大小関係のうちの少なくとも2つの大小関係を揃えることにより、関係1〜3について先に述べた理由と同様の理由により、第1空気流路18と第2空気流路の所望の流量比に近づけることができ、また、外気の通過経路を流れる外気の流量及び内気の通過経路を流れる内気の流量が減少することを防止することができる。
【0050】
上記実施形態では、6箇所の面積(断面積)E1,R1,E2,R2,E3,R3について言及したが、二層流モードが実行されているときの第1開口25の開口面積と第3開口27の開口面積との関係についても考慮してもよい。第1開口25の開口面積をE0とし、第3開口27の開口面積をR0としたとき、
E0:R0≒E1:R1・・・関係4
E0:R0≒E2:R3・・・関係5
E0:R0≒E3:R3・・・関係6
の少なくともいずれか一つが成立していることが好ましい。フィルタ35よりも、第1開口25、第2開口26、第3開口27における通気抵抗が大きい場合に、第1空気流路18と第2空気流路の所望の流量比に近づけることができ、また、外気の通過経路を流れる外気の流量及び内気の通過経路を流れる内気の流量が減少することを効果的に防止することができる。
【0051】
また、同様に、
「E0>R0」かつ「E1>R1」、あるいは「E0<R0」かつ「E1<R1」・・・関係4’
「E0>R0」かつ「E2>R2」、あるいは「E0<R0」かつ「E2<R2」・・・関係5’
「E0>R0」かつ「E3>R3」、あるいは「E0<R0」かつ「E3<R3」・・・関係6’
の少なくともいずれか1つが成立していることが好ましく、複数の関係が成立していることがより好ましい。