(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6662788
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】誘導電源式硬化LEDを備えた歯科用ウェッジ
(51)【国際特許分類】
A61C 5/88 20170101AFI20200227BHJP
【FI】
A61C5/88
【請求項の数】23
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-560743(P2016-560743)
(86)(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公表番号】特表2017-509443(P2017-509443A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】US2015023333
(87)【国際公開番号】WO2015153454
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年3月7日
(31)【優先権主張番号】623236
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】507348414
【氏名又は名称】デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【弁理士】
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド,サイモン,ポール
【審査官】
胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0171596(US,A1)
【文献】
特開2005−334024(JP,A)
【文献】
特開2013−070520(JP,A)
【文献】
米国特許第6257885(US,B1)
【文献】
特表2001−524347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯の修復中に使用される歯科用器具であって、
第1の側壁を有する歯科用ウェッジと、
前記歯の修復部位において第1の量の歯科用修復材を硬化させるために、前記歯科用ウェッジに関連して動作する第1の発光ダイオードとを備え、
前記第1の発光ダイオードが前記歯科用ウェッジの前記第1の側壁に設けられている、歯科用器具。
【請求項2】
前記第1の発光ダイオードは、該第1の側壁に埋め込まれている、請求項1に記載の歯科用器具。
【請求項3】
前記第1の発光ダイオードは、該第1の側壁の外面に配置されている、請求項1に記載の歯科用器具。
【請求項4】
前記第1の発光ダイオードは、該第1の側壁の内面に配置されている、請求項1に記載の歯科用器具。
【請求項5】
前記第1の発光ダイオードは、400nm〜500nmの範囲の周波数を有する光出力を生成する、請求項1に記載の歯科用器具。
【請求項6】
前記第1の発光ダイオードは誘導的に電力が供給される、請求項1に記載の歯科用器具。
【請求項7】
前記第1の発光ダイオード、少なくとも第1のコンデンサー及び二次誘導コイルを備える発光ダイオード回路を更に具備する、請求項1に記載の歯科用器具。
【請求項8】
前記発光ダイオード回路は、少なくとも第1の抵抗器を更に備える、請求項7に記載の歯科用器具。
【請求項9】
前記歯科用ウェッジは、前記修復部位に対する最大の光の透過を促進するように透明又は透光性材料から構成されている、請求項1に記載の歯科用器具。
【請求項10】
電源、少なくとも第1のコンデンサー及び一次誘導コイルを備える電源回路を更に具備し、前記電源は、前記第1の発光ダイオードに対して誘導的に電力を供給する、請求項1に記載の歯科用器具。
【請求項11】
前記第1の発光ダイオード、少なくとも第1のコンデンサー及び二次誘導コイルを備える発光ダイオード回路を更に具備し、前記一次誘導コイル及び前記二次誘導コイルは共振結合されている、請求項10に記載の歯科用器具。
【請求項12】
歯の修復中に使用される歯科用ウェッジ及び硬化ライトシステムであって、
第1の側壁を有する歯科用ウェッジと、
前記歯の修復部位において第1の量の歯科用修復材を硬化させるために、前記歯科用ウェッジに関連して動作し、前記歯科用ウェッジの前記第1の側壁に設けられている第1の発光ダイオードと、
前記第1の発光ダイオードに誘導結合された電源と、
を具備するシステム。
【請求項13】
前記第1の発光ダイオードは該第1の側壁に埋め込まれている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の発光ダイオードは、該第1の側壁の外面に配置されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の発光ダイオードは、該第1の側壁の内面に配置されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の発光ダイオードは、400nm〜500nmの範囲の周波数を有する光出力を生成する、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の発光ダイオード、少なくとも第1のコンデンサー及び二次誘導コイルを備える発光ダイオード回路を更に具備する、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記発光ダイオード回路は、少なくとも第1の抵抗器を更に備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記電源、第1のコンデンサー及び一次誘導コイルを備える電源回路を更に具備する、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
少なくとも第1の抵抗器を更に具備する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記電源は、共振誘導結合によって前記発光ダイオードに電力を送信する、請求項12に記載のシステム。
【請求項22】
前記電源、少なくとも第1のコンデンサー及び一次誘導コイルを備える電源回路を更に具備し、前記一次誘導コイル及び前記二次誘導コイルは共振結合されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
前記歯科用ウェッジは、前記修復部位に対する最大の光の透過を促進するように透明又は透光性材料から構成されている、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、修復歯科学の分野に関し、より詳細には、歯の修復及び歯科用修復材の硬化中に使用される歯科用ウェッジに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用ウェッジは、歯の修復中、通常は歯科用マトリックスバンド及び歯科用マトリックスバンドリテーナーとともに使用される装置である。歯科用ウェッジの主な目的は、修復されている歯に対して歯科用マトリックスを押圧することである。これにより、マトリックスは、歯を封止し、歯科用修復材を適所に維持することができる。歯科用ウェッジの他の目的は、歯を隔離し、歯科医が歯を修復するのに十分な空間を可能にすることである。歯科用ウェッジはまた、圧力を加えかつ出血を阻止するための歯肉縁シールとしての役割も果たす。
【0003】
当初、歯科用ウェッジは木材から作製されていたが、最近の歯科用ウェッジはプラスチックである。歯科用ウェッジは、種々の隣接歯間領域に適合するように様々なサイズで提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯科用コンポジットレジンを用いて直接修復を行う場合、歯肉縁及び隣接歯間領域等の領域は、硬化ライトが届くのが困難である。これにより、修復物内に未硬化コンポジットの領域が残る。これによって、修復物がゆがむことになる可能性があり得る。未硬化コンポジット材料の大部分は、隣接歯間領域に、かつ修復物の最深部分に見られる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求の範囲に記載された発明の歯科用器具は、直接修復処置中に歯科専門家により障害を克服しようとするものであり、他のタイプの歯の修復にも同様に適用可能である。本発明は、歯の修復中に使用される歯科用器具に係るものであり、歯科用器具は、歯科用ウェッジと、歯の修復部位において第1の量の歯科用修復材を硬化させる、歯科用ウェッジ内に又上に配置された第1の発光ダイオードとを備える。歯科用ウェッジは、第1の側壁及び第2の側壁を備えることができ、第1の側壁は、修復部位に隣接するか又は隣接部位に近接して位置合わせされる。発光ダイオードは、400nm〜500nmの周波数で光出力を提供するように選択され、別個の電源によって誘導的に電力が供給される。電源は一次回路の一部であり、一次回路はまた、少なくとも第1のコンデンサー及び一次誘導コイルを備えている。一次回路は、一次回路の過負荷を防止するために少なくとも第1の抵抗器を更に備えることができる。発光ダイオードは二次回路の一部であり、二次回路は、少なくとも第1のコンデンサー及び二次誘導コイルを更に備えている。二次回路は、二次回路の過負荷を防止するために少なくとも第1の抵抗器を更に備えることができる。二次回路は、歯科用ウェッジの第1の側壁に埋め込まれるか、又は歯科用ウェッジの内面若しくは外面に取り付けられることができる。歯科用ウェッジは、発光ダイオードから歯の修復部位への光出力の透過を容易にしかつ促進するように、透明な又は透明度の高い材料から構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】
図2に示す本発明の実施形態の斜視図である。
【
図8】
図2に示す本発明の実施形態の斜視図である。
【
図9】
図2に示す本発明の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1〜
図7は、本発明の歯科用器具及びシステムの第1の実施形態及び第2の実施形態を示す。
図8及び
図9は、歯の修復で使用されている本発明の歯科用器具を示す。可能な場合はいつでも、同じ参照番号を用いて複数の図を通して同一の又はこれに類する構成要素を特定する。
【0008】
まず
図1を参照すると、本体12及びハンドル14を備えた歯科用ウェッジ10が示されており、本体12は、先端16からハンドル14まで延在している。本体12は、発光ダイオード回路20が埋め込まれているか又は取り付けられている第1の側壁18を更に備えている。
図2〜
図4は、歯科用ウェッジ10の第2の変形を示し、それもまた発光ダイオード回路20を備えている。歯科用ウェッジ10は、本体12及びハンドル14を備え、本体は先端16からハンドル14まで延在している。本体12は、第1の側壁18及び第2の側壁22を更に備えている。第1の側壁18及び第2の側壁22は、尾根部又は背部24に向かって互いに近づき、尾根部又は背部24において結合している。
図3に見られるように、尾根部又は背部24は、ハンドル14と先端16との間で曲線を描くように伸張することができる。第1の側壁18及び第2の側壁22の底縁又は縁もまた曲線状にすることができる。
【0009】
図2及び
図4を参照すると、側壁18、22は、内部空隙又は空間26を間に形成するように間隔を空けて配置されている。第1の側壁18及び第2の側壁22は、各々、外側に面する外面18a、22aと、内側に面しかつ内部空隙26の境界を画定する内面18b、22bとを有している。
図1及び
図2両方に示される歯科用ウェッジ10は、発光ダイオード回路20から修復されている歯の修復部位までの硬化光出力の最大透過を促進するように、透明な又は実質的に透光性の材料から構成されている。この目的に対する好適なポリマー材料としては、ポリカーボネート(例えば、Lexan(登録商標)ポリカーボネート)、アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)及びポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)が挙げられる。歯科用ウェッジ10に対して、種々のウェッジサイズに対する色分けとして軽微な着色で全体的に又は部分的に色をつけることができる。
【0010】
図5を参照すると、発光ダイオード回路20はシステムにおける「二次」回路であり、システムは、発光ダイオード回路20及び「一次」電源回路28を備えている。この構成では、電源回路28は送信器であり、発光ダイオード回路20は受信器である。発光ダイオード回路20は、少なくとも第1の発光ダイオード30、少なくとも第1のコンデンサー32及び二次誘導コイル34を備えている。発光ダイオード回路20は、回路20の過負荷を防止する少なくとも第1の抵抗器等、更なる回路部品36もまた備えることができる。電源回路28は、電源36、少なくとも第1のコンデンサー38及び一次誘導コイル40を備えている。電源回路28は、回路の過負荷を防止する、少なくとも第1の抵抗器等、追加の回路部品42を備えることができる。
【0011】
この構成では、電源回路28は、共振誘導結合を介して発光ダイオード回路20に電力を提供する。共振結合は、システムの効率を向上させ、非共振結合における一次誘導コイル及び二次誘導コイルのオーバーラップする磁場があるという要件をなくす。共振結合では、電源回路28及び発光ダイオード回路20は、容量装荷型であり、「同調」LC(インダクター−コンデンサー)回路を形成している。一次誘導コイル40及び二次誘導コイル34が共通の周波数で共振する場合、電力は、コイル径の数倍の範囲でコイル間において効率的に送信される。
【0012】
誘導給電は、送信器、すなわち本発明では電源回路28から、受信器、すなわち本発明では発光ダイオード回路20まで無線で電力を提供して、発光ダイオード30を作動させる。発光ダイオード30は、その作動状態で、歯を修復するのに使用される第1の量の歯科用修復材を硬化させるのに必要な波長で、修復部位に光エネルギーを提供する。この無線接続は、従来の配線接続に対して多数の利点を提供する。電源回路28は、発光ダイオード30が作動するまで患者の口の外側にとどまり、感電の危険を低減させる。電源回路28と発光ダイオード回路20との間に、比較的高レベルの絶縁を達成することができる。
【0013】
図1及び
図2の歯科用ウェッジ、及び修復されている歯52と隣接する歯56との間の歯間空間54に関連するサイズの考慮事項に対応するために、発光ダイオード回路20は、歯科用ウェッジ10に埋め込まれるか又は取り付けられるようなサイズである。これは、歯科用ウェッジ10の機能を妨げ、及び/又は歯科専門家が作業しなければならない限られた歯間空間をふさぐのを回避するために必要である。薄膜LED及び回路部品を使用することにより、これらの考慮事項が満足される。好ましくは、発光ダイオード回路20は、修復されている歯に向いている側である歯科用ウェッジの第1の側壁18(
図1、
図2A)に埋め込まれる。電源回路28及び発光ダイオード回路20両方の部品は、発光ダイオード30をして、400nm〜500nm(ピーク波長は460nm)、すなわち歯科用修復材を硬化させる好ましい波長の範囲で、定常青色光出力を放出させるように選択されている。他の実施形態では、発光ダイオード回路は、第1の側壁18の外面18aに取り付けることができ(
図2B)、又は第1の側壁の内面18bに取り付けることもできる(
図4B)。他の実施形態では、2つ以上の第1の発光ダイオード回路20a、20b(
図6)を使用することができ、及び/又は各発光ダイオード回路20が、2つ以上の発光ダイオード30a、30bを備えることができる(
図7)。
【0014】
動作時、
図8及び
図9に示すように、歯科専門家は、修復されている歯52に修復部位50を準備し、修復されている歯52と隣接する歯56との間の歯間空間54に歯科用ウェッジ10を挿入する。LED回路20を含む歯科用ウェッジの第1の側壁18は、修復されている歯52に隣接し、好ましくは、修復部位50と位置合わせされるか又は修復部位50に近接している。歯科専門家は、直接修復処置を通常の方法で行う。歯科専門家が、第1の量の歯科用修復材を硬化させる用意ができると、電源回路28が患者の顎に近づけられて、発光ダイオード回路20に誘導的に電力を供給する。発光ダイオード30の両端に電圧を印加することにより、発光ダイオードが作動し、歯科用修復材を硬化させるために必要な光出力が発生する。これらの図に示すように、本発明による歯科用器具は、従来の硬化ライトの使用では歯科用修復材を完全にかつ迅速に硬化させるのには十分でない可能性がある歯肉及び隣接歯間領域の周囲で、歯科用修復材を硬化させるのに役立つ。
【0015】
本発明について、具体的な応用に関連して記載したが、この応用は本質的に例示的なものであり、本発明のあり得る応用に対して限定するようには意図されていない。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、変更及び変形を行うことができることが理解されよう。本開示は、本発明の例示として意図されており、図示し記載する具体的な実施形態に本発明を限定するようには意図されていないことが理解されよう。本開示は、添付の特許請求の範囲によって、特許請求の範囲内にある全てのこうした変更を包含するように意図されている。