【実施例】
【0045】
<実施例1>
正極活物質としてLiNi
0.88Co
0.09Al
0.03O
2で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を100重量部と、アセチレンブラック(AB)を1重量部と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を1重量部とを混合し、さらにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合材スラリーを調製した。次に、当該正極合材スラリーをアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、乾燥させた。これを所定の電極サイズに切り取り、ローラーを用いて圧延し、正極集電体の両面に正極合材層が形成された正極を作製した。なお、LiNi
0.88Co
0.09Al
0.03O
2の結晶構造は、層状岩塩構造(六方晶、空間群R3−m)である。端部に活物質が形成されていない無地部を形成し、アルミニウムの正極タブを超音波溶接で固定した。
【0046】
他方、負極集電体を薄板の銅箔とし、黒鉛端末と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、結着剤としてのスチレンーブタジエンゴム(SBR)とを、それぞれの質量比で98:1:1の割合で水に分散させて負極合剤スラリーを作成して集電体の両面に塗布し、乾燥させてロールプレスにより所定厚さとなるように圧縮した。端部に活物質が形成されていない無地部を形成してニッケルの負極タブを超音波溶接で固定した。
【0047】
正極タブと極板(正極集電体)との溶接部、及び負極タブと極板(負極集電体)との溶接部を絶縁テープで被覆し、作製した正極板及び負極板を、セパレータを介して渦巻き状に巻回することにより巻回型の電極体を作製した。セパレータにはポリエチレン製の微多孔膜の片面にポリアミドとアルミナのフィラーを分散させた耐熱層を形成したものを用いた。
【0048】
当該電極体を、外径18mm、高さ65mmの有底円筒形状の電池ケース本体に収容し、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で3:3:4となるように混合した混合溶媒に、LiPF
6を1mol/Lとなるように添加して非水電解液を注入した後、ガスケット及び封口体により電池ケース本体の開口部を封口して18650型の円筒形非水電解質二次電池を作製した。
【0049】
絶縁テープは、有機材料層50の厚さを25μm、有機材料の重量組成比を100とし、複合材料層52の厚さを1.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=25:75とした。有機材料層50としてポリイミド(PI)、複合材料層52の有機材料としてアクリル、無機材料としてシリカゾルを用いた。
【0050】
接着剤層を除く総重量に対して、無機材料重量を0.8%とした。
【0051】
<実施例2>
絶縁テープを、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=35:65とした以外は、実施例1と同様とした。
【0052】
接着剤層を除く総重量に対して、無機材料重量を5%とした。
【0053】
<実施例3>
絶縁テープを、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=70:30とした以外は、実施例1と同様とした。接着剤層を除く総重量に対して、無機材料重量を10%とした。
【0054】
<実施例4>
絶縁テープを、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを1.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=35:65とした以外は、実施例1と同様とした。
【0055】
接着剤層を除く総重量に対して、無機材料重量を1%とした。
【0056】
<比較例1>
絶縁テープを、有機材料層50の厚さを25μmとし、複合材料層52を形成していないこと以外は、実施例1と同様とした。
【0057】
<比較例2>
絶縁テープを、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=10:90とした以外は、実施例1と同様とした。
【0058】
接着剤層を除く総重量に対して、無機材料重量を1.5%とした。
【0059】
<比較例3>
絶縁テープを、有機材料層50が存在せず、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=50:50とした以外は、実施例1と同様とした。
【0060】
接着剤層を除く総重量に対して、無機材料重量を50%とした。
【0061】
以上のようにして得られた非水電解質二次電池について、突き刺し強度及び異物短絡時電池温度を測定した。突き刺し強度は、絶縁テープ表面を針で突き刺し、外観観察で貫通したときの押圧力(N)を測定した。異物短絡時電池温度は、絶縁テープで被覆された、端部の活物質が形成されていない無地部に異物を仕込み、JIS C 8714に従い、強制的に短絡させた時の電池の側部の温度を熱電対で測定した。
【0062】
表1に、その結果を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例1は、有機材料層50の厚さを25μm、有機材料の重量組成比を100とし、複合材料層52の厚さを1.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=25:75とした場合であり、突き刺し強度は11.0N、異物短絡時電池温度は86℃が得られた。
【0065】
実施例2は、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=35:65とした場合であり、突き刺し強度は11.3N、異物短絡時電池温度は48℃が得られた。実施例2は、実施例1に対して複合材料層52の厚さが増大しており、これに起因して耐熱性が向上したものと推定される。実施例2と実施例1は有機材料層50が同一であり、これに起因して突き刺し強度はほとんど変化していない。
【0066】
実施例3は、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=70:30とした場合であり、突き刺し強度は11.0N、異物短絡時電池温度は35℃が得られた。実施例3は、実施例2に対して無機材料の重量組成比が増大しており、これに起因して耐熱性がさらに向上したものと推定される。実施例3と実施例2は有機材料層50が同一であり、これに起因して突き刺し強度はほとんど変化していない。
【0067】
実施例4は、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを1.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=35:65とした場合であり、突き刺し強度は11.1N、異物短絡時電池温度は55℃が得られた。実施例4は、実施例1に対して無機材料の重量組成比が増大しており、これに起因して耐熱性がさらに向上したものと推定される。
【0068】
比較例1は、有機材料層50の厚さを25μmとし、複合材料層52を形成しない場合であり、突き刺し強度は10.8N、異物短絡時電池温度は100℃を超えるものであった。比較例1では、複合材料層52が存在せず、有機材料層50と接着剤層54のみであるため、耐熱性が確保されないことが分かる。
【0069】
比較例2は、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=10:90とした場合であり、突き刺し強度は11.6N、異物短絡時電池温度は100℃を超えるものであった。比較例2は、実施例1に対して無機材料の重量組成比が減少しており、これに起因して耐熱性が低下したものと推定される。
【0070】
比較例3は、有機材料層50が存在せず、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=50:50とした場合であり、突き刺し強度は7.3N、異物短絡時電池温度は74℃が得られた。比較例3は、実施例1に対して有機材料層50が存在しないため、突き刺し強度が低下したものと推定される。また、複合材料層52における無機材料の重量組成比は増大しており、これに起因して耐熱性は向上したものと推定される。
【0071】
以上の結果より、有機材料層50/複合材料層52/接着剤層54の3層構造からなる絶縁テープとすることで、耐熱性と突き刺し強度(機械的強度)を両立させることができ、耐熱性を確保する観点からは複合材料層52における無機材料の重量組成比を20%以上、好ましくは35%〜80%とし、複合材料層52の厚さは1μm〜5μmとするのが好適である。
【0072】
本実施形態では、
図1に示すように、有機材料層50/複合材料層52/接着剤層54の順に積層して絶縁テープ1を構成しているが、積層順序を変更し、複合材料層52/有機材料層50/接着剤層54としてもよい。
【0073】
図2は、この場合の絶縁テープ1の断面図を示す。複合材料層52/有機材料層50/接着剤層54の順に積層して構成される。要するに、有機材料層50と、複合材料層52と、接着剤層54を含んで絶縁テープ1を構成すればよい。
【0074】
また、本実施形態では、有機材料層50と、複合材料層52と、接着剤層54を含んで絶縁テープ1を構成しているが、これらの層に加えてさらに補助的な層を含んでいてもよい。例えば、複合材料層52自体を多層構造とし、各層における有機材料と無機材料の重量比を変化させてもよい。
【0075】
図3は、この場合の絶縁テープ1の断面図を示す。
図1と同様に有機材料層50/複合材料層52/接着剤層54の順に積層しているが、複合材料層52が、複合材料層52aと複合材料層52bの2層から構成される。複合材料層52aと複合材料層52bは、互いに有機材料と無機材料の重量組成比が異なっている。但し、複合材料層52aと複合材料層52bのいずれも、無機材料は複合材料層の重量の20%以上とすることが好適である。なお、
図3において、複合材料層52aと複合材料層52bにおける有機材料と無機材料の少なくともいずれかが異なっていてもよい。