特許第6662793号(P6662793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6662793
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/34 20060101AFI20200227BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   H01M2/34 B
   H01M2/26 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-571846(P2016-571846)
(86)(22)【出願日】2016年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2016000265
(87)【国際公開番号】WO2016121339
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2018年8月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-15986(P2015-15986)
(32)【優先日】2015年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 武志
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 朝樹
(72)【発明者】
【氏名】青戸 峰康
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−247489(JP,A)
【文献】 特開2000−138053(JP,A)
【文献】 特許第4065915(JP,B2)
【文献】 特開2006−093147(JP,A)
【文献】 特開2011−202013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/20−34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、前記正極集電体上に形成されたリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質層と、前記正極集電体露出面に溶接される正極タブとを有する正極と、
負極集電体と、前記負極集電体上に形成された負極活物質とを有する負極と、
前記正極と前記負極との間のセパレータと、
を有し、
前記正極は、前記正極タブと前記正極集電体露出面との溶接部を被覆する絶縁テープを備え、
前記絶縁テープは、有機材料を含む有機材料層と、有機材料と無機材料とを含む複合材料層とを含む多層構造であり、
前記有機材料層中の前記有機材料は前記有機材料層の重量の90%以上であり、
前記複合材料層中の前記無機材料は前記複合材料層の重量の20%以上である
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記複合材料層中の前記無機材料は前記複合材料層の重量の35%以上80%以下である
ことを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記複合材料層の厚さは、1μm以上5μm以下である
ことを特徴とする請求項1,2のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記有機材料層が、ポリイミドを主体とする層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記無機材料の重量が、前記複合材料層と前記有機材料層の総重量に対して20%未満であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記絶縁テープは、
前記有機材料層と、
前記有機材料層上に形成された前記複合材料層と、
前記複合材料層上に形成された接着剤層と、
から構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記絶縁テープは、
前記有機材料層と、
前記有機材料層下に形成された前記複合材料層と、
前記有機材料層上に形成された接着剤層と、
から構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、保護テープを用いて正極あるいは負極の絶縁性を向上させたリチウム二次電池が提案されている。
【0003】
特許文献1には、集電体とリードとが接触する部分での集電体の切れを抑制するリチウム二次電池が記載されている。
【0004】
図4は、特許文献1に記載されたリチウム二次電池の正極の構成図であり、図4(A)は集電体の一主面側から観察した部分上面図、図4(B)は図4(A)における線L1―L1に沿った断面図である。なお、図4で、21Aは集電体、21Bは活性層である。
【0005】
両面未塗布部21bに、平面外形が矩形状の保護層28が正極集電体露出面21a上に形成される。保護層28は、両面未塗布部21bの略中央に形成される。保護層28の一部がリード25の下端縁とリード25の両側端縁の一部と正極集電体露出面21aとの間に介在されるように、保護層28の中央の一部分は、リード25の下端部分と正極集電体露出面21aとの間に介在される。保護層28としては、例えば、樹脂層、無機材料層等が挙げられ、樹脂層としては、樹脂膜、樹脂テープ等が挙げられるとしている。樹脂膜としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜等の樹脂を塗布した樹脂塗布膜が挙げられる。樹脂テープとしては、PP(ポリプロピレン)テープ、PI(ポリイミド)テープ、PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ等が挙げられ、無機材料層等としては、無機テープ等が挙げられるとしている。保護テープ27は、正極集電体21Aの一主面側では、正極集電体露出面21a、リード25および保護層28を覆い、正極集電体21Aの他主面側では、正極集電体露出面21aを覆う。この保護テープ27は、例えば、電池の異常時にセパレータ等が裂け、正極21と負極22とが接触した場合の電池の発熱を防ぐためのものであり、保護テープ27は、例えば、樹脂テープ等としている。
【0006】
また、異なる場所にテープを用いるものとして、特許文献2には、絶縁テープを複合材料テープで形成し、複合材料テープが下地層をなす有機材料と、この有機材料に分散する無機材料を有し、無機材料が複合材料テープの全体重量に対して20%〜80%の含有率であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−89856号公報
【特許文献2】特開2010−192462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、箔切れによる異常モードしか想定されておらず、異物(導電性を有す)を介した短絡を防止することができない。特に、負極と対向する正極タブと極板の溶接部に異物が混入した場合、短絡を防止するためには、耐熱性のみならず突き刺し強度も同時に必要となる。ここで述べる耐熱性とは、熱によるテープの変形変質を抑制する特性を指し、その結果、短絡の継続による電池の発熱を抑制することができる。しかしながら、テープの基材の耐熱性を確保するためには、無機材料の含有率を上げる必要があるが、無機材料の含有率を上げると突き刺し強度が低下してしまう。逆に、基材の突き刺し強度を確保するためには無機材料の含有率を下げる必要があるが、耐熱性が低下してしまう。特許文献1では、保護テープ27により発熱を防止するもので、保護テープ27として樹脂テープを用いているものの、短絡による発熱防止、すなわちテープ自体の耐熱性及び突き刺し強度の両方については何ら検討されていない。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、耐熱性と突き刺し強度(機械強度)を両立させた非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の非水電解質二次電池は、正極集電体と、正極集電体上に形成されたリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質層と、正極集電体露出面に溶接される正極タブとを有する正極と、負極集電体と、負極集電体上に形成された負極活物質とを有する負極と、正極と負極との間のセパレータとを有する。そして、正極は、正極タブと正極集電体露出面との溶接部を被覆する絶縁テープを備え、絶縁テープは、有機材料を含む有機材料層と、有機材料と無機材料とを含む複合材料層とを含む多層構造であり、有機材料層中の有機材料は有機材料層の重量の90%以上であり、複合材料層中の無機材料は複合材料層の重量の20%以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明の1つの実施形態では、複合材料層中の無機材料は複合材料層の重量の35%以上80%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の他の実施形態では、複合材料層の厚さは、1μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態では、有機材料層が、ポリイミドを主体とする層であることが好ましい。
【0014】
本発明のさらに他の実施形態では、絶縁テープは、有機材料層と、有機材料層上に形成された複合材料層と、複合材料層上に形成された接着剤層とから構成されることが好ましい。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態では、絶縁テープは、有機材料層と、有機材料層下に形成された複合材料層と、有機材料層上に形成された接着剤層とから構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機材料層と複合材料層の多層構造により、絶縁テープの耐熱性と突き刺し強度(機械強度)をともに確保できる。従って、本発明によれば、短絡を抑制できるとともに、仮に短絡が生じても耐熱性を確保でき、電池温度上昇を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態の絶縁テープの部分断面図である。
図2図2は、他の実施形態の絶縁テープの部分断面図である。
図3図3は、さらに他の実施形態の絶縁テープの部分断面図である。
図4図4は従来技術の説明図であり、(A)は集電体の一主面側から観察した図、(B)は(A)における線L1―L1に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態における絶縁テープ1の部分断面図である。絶縁テープ1は、有機材料層50と、有機材料と無機材料からなる複合材料層52と、接着剤層54から構成される。
【0020】
有機材料層50は、有機材料を主体とした層であり、例えばPI(ポリイミド)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等も用い得る。特に、突き刺し強度が高いPIを用いることが好ましい。有機材料層50の厚さは任意であるが、例えば25μmとすることができる。
【0021】
なお、有機材料層の有機材料は、有機材料層の重量の90重量%以上であり、無機材料を含まないことが好ましい。
【0022】
複合材料層52は、有機材料を下地として、無機材料を下地層の内部に所定の粉末形状で分散させて構成される。有機材料としてはゴム系樹脂若しくはアクリル系樹脂を用いることができ、接着剤層と同じ樹脂系を用いることが好適である。無機材料としては例えばシリカゾルが好適である。
【0023】
接着剤層54は、室温で接着性を有する樹脂で構成され、例えばアクリル系樹脂で構成される。
【0024】
既述したように、テープの基材の耐熱性を確保するためには無機材料の含有率を上げる必要があるが、無機材料の含有率を上げると突き刺し強度が低下してしまう。逆に、基材の突き刺し強度を確保するためには無機材料の含有率を下げる必要があるが、耐熱性が低下してしまう。
【0025】
そこで、本実施形態では、従来技術のような複合材料層と接着剤層の2層構造とするのではなく、図1のように有機材料層50/複合材料層52/接着剤層54の3層構造とすることで、耐熱性と突き刺し強度の両立を図っている。
【0026】
すなわち、複合材料層52の無機材料の含有率を20%以上とすることで、複合材料層52の耐熱性を向上させる。これだけでは突き刺し強度が低下してしまうが、有機材料層50により突き刺し強度を確保し、絶縁テープ1全体として耐熱性と突き刺し強度をともに確保できる。
【0027】
複合材料中の無機材料の含有率は、複合材料重量の20%以上とすることが好適であり、35%〜80%が特に好適である。すなわち、無機材料の含有率が20%未満と少ないと、耐熱性を増大させる効果が低下し、無機材料の含有率が80%を超える程度に多いと、テープとして機能することが困難となる。
【0028】
なお、接着剤層54を除く層の全体重量(有機材料層50と複合材料層52の合計重量)に対して、無機材料重量が20%未満であることが好ましい。さらに好ましくは10%以下であり、特に5〜10%以下が好ましい。このように、複合材料層52の無機材料の重量割合を高めつつ、テープ全体に対して無機材料重量を低く抑えることによって、耐熱性を向上させつつテープの突き刺し強度を高めることが可能である。
【0029】
複合材料層52の厚さも任意であるが、1μm〜5μmが好適である。すなわち、厚さが1μm未満と薄いと、複合材料層52として耐熱性を増大させる効果が低下し、5μmを超える程度に厚いと、同様に絶縁テープとして機能することが困難となる。
【0030】
本実施形態の絶縁テープ1では、異物による短絡を想定した場合でも、機械的強度(突き刺し強度)が確保されているため、短絡の発生そのものを抑制することができる。
【0031】
また、仮に異物により短絡が発生したとしても、複合材料層52により耐熱性が確保されているため、短絡の継続を阻止し得る。
【0032】
本実施形態の絶縁テープ1は、図4に示す保護テープ27のように、正極集電体(極板)露出面21a、リード(電極タブ、正極タブ)25の接合面を全て覆うように付着することができる。すなわち、中間ブランク部のリード及び集電体の露出部を全て覆うように付着する。正極集電体及びリードをともにアルミニウムで構成した場合、アルミニウムが露出している部分を絶縁テープ1で覆うことになる。勿論、正極のみならず負極についても同様に絶縁テープ1で溶接部を全て被覆してもよい。
【0033】
なお、本実施形態における正極、負極、セパレータ、非水電解質は公知の材料を用いることができ、例えば以下の通りである。
【0034】
<正極>
正極は、例えば金属箔等の正極集電体(極板)と、正極集電体上に形成された正極合材層とで構成される。正極集電体には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、リチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質の他に、導電材及び結着材を含むことが好適である。正極は、例えば正極集電体上に正極活物質、結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して正極合材層を集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0035】
リチウム遷移金属複合酸化物としては、具体的にはコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物等を用いることができ、これらのリチウム遷移金属複合酸化物にAl、Ti、Zr、Nb、B、W、Mg、Mo等を添加してもよい。
【0036】
導電剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素粉末を単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
結着剤としては、フッ素系高分子、ゴム系高分子等が挙げられる。例えば、フッ素系高分子としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはこれらの変性体等、ゴム系高分子としてエチレンープロピレンーイソプレン共重合体、エチレンープロピレンーブタジエン共重合体等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
<負極>
黒鉛粉末の負極活物質と、増粘剤と、結着剤とを所定の重量比とし、水に分散させて負極合剤スラリーを作成し、銅箔の両面に塗布して形成する。
【0039】
負極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な炭素材料を用いることができ、黒鉛の他に、難黒鉛性炭素、易黒鉛性炭素、繊維状炭素、コークス及びカーボンブラック等を用いることができる。さらに、非炭素系材料として、シリコン、スズ及びこれらを主とする合金や酸化物を用いることができる。
【0040】
結着剤としては、正極の場合と同様にPTFE等を用いることもできるが、スチレンーブタジエン共重合体(SBR)又はこの変性体等を用いてもよい。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。
【0041】
<非水電解質>
非水電解質の非水溶媒(有機溶媒)としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を用いることができ、これらの溶媒の2種以上を混合して用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを用いることができる、環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒を用いてもよい。
【0042】
非水電解質の電解質塩としては、LiPF、LiBF、LICFSO等及びこれらの混合物を用いることができる。非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、例えば0.5〜2.0mol/Lとすることができる。
【0043】
<セパレータ>
セパレータには、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータは、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。また、ポリエチレン層及びポリプロピレン層を含む多層セパレータであってもよく、セパレータの表面にアラミド系樹脂等の樹脂が塗布されたものを用いてもよい。
【0044】
次に、実施例について説明する。
【実施例】
【0045】
<実施例1>
正極活物質としてLiNi0.88Co0.09Al0.03で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を100重量部と、アセチレンブラック(AB)を1重量部と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を1重量部とを混合し、さらにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合材スラリーを調製した。次に、当該正極合材スラリーをアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、乾燥させた。これを所定の電極サイズに切り取り、ローラーを用いて圧延し、正極集電体の両面に正極合材層が形成された正極を作製した。なお、LiNi0.88Co0.09Al0.03の結晶構造は、層状岩塩構造(六方晶、空間群R3−m)である。端部に活物質が形成されていない無地部を形成し、アルミニウムの正極タブを超音波溶接で固定した。
【0046】
他方、負極集電体を薄板の銅箔とし、黒鉛端末と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、結着剤としてのスチレンーブタジエンゴム(SBR)とを、それぞれの質量比で98:1:1の割合で水に分散させて負極合剤スラリーを作成して集電体の両面に塗布し、乾燥させてロールプレスにより所定厚さとなるように圧縮した。端部に活物質が形成されていない無地部を形成してニッケルの負極タブを超音波溶接で固定した。
【0047】
正極タブと極板(正極集電体)との溶接部、及び負極タブと極板(負極集電体)との溶接部を絶縁テープで被覆し、作製した正極板及び負極板を、セパレータを介して渦巻き状に巻回することにより巻回型の電極体を作製した。セパレータにはポリエチレン製の微多孔膜の片面にポリアミドとアルミナのフィラーを分散させた耐熱層を形成したものを用いた。
【0048】
当該電極体を、外径18mm、高さ65mmの有底円筒形状の電池ケース本体に収容し、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で3:3:4となるように混合した混合溶媒に、LiPFを1mol/Lとなるように添加して非水電解液を注入した後、ガスケット及び封口体により電池ケース本体の開口部を封口して18650型の円筒形非水電解質二次電池を作製した。
【0049】
絶縁テープは、有機材料層50の厚さを25μm、有機材料の重量組成比を100とし、複合材料層52の厚さを1.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=25:75とした。有機材料層50としてポリイミド(PI)、複合材料層52の有機材料としてアクリル、無機材料としてシリカゾルを用いた。
【0050】
接着剤層を除く総重量に対して、無機材料重量を0.8%とした。
【0051】
<実施例2>
絶縁テープを、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=35:65とした以外は、実施例1と同様とした。
【0052】
接着剤層を除く総重量に対して、無機材料重量を5%とした。
【0053】
<実施例3>
絶縁テープを、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=70:30とした以外は、実施例1と同様とした。接着剤層を除く総重量に対して、無機材料重量を10%とした。
【0054】
<実施例4>
絶縁テープを、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを1.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=35:65とした以外は、実施例1と同様とした。
【0055】
接着剤層を除く総重量に対して、無機材料重量を1%とした。
【0056】
<比較例1>
絶縁テープを、有機材料層50の厚さを25μmとし、複合材料層52を形成していないこと以外は、実施例1と同様とした。
【0057】
<比較例2>
絶縁テープを、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=10:90とした以外は、実施例1と同様とした。
【0058】
接着剤層を除く総重量に対して、無機材料重量を1.5%とした。
【0059】
<比較例3>
絶縁テープを、有機材料層50が存在せず、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=50:50とした以外は、実施例1と同様とした。
【0060】
接着剤層を除く総重量に対して、無機材料重量を50%とした。
【0061】
以上のようにして得られた非水電解質二次電池について、突き刺し強度及び異物短絡時電池温度を測定した。突き刺し強度は、絶縁テープ表面を針で突き刺し、外観観察で貫通したときの押圧力(N)を測定した。異物短絡時電池温度は、絶縁テープで被覆された、端部の活物質が形成されていない無地部に異物を仕込み、JIS C 8714に従い、強制的に短絡させた時の電池の側部の温度を熱電対で測定した。
【0062】
表1に、その結果を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例1は、有機材料層50の厚さを25μm、有機材料の重量組成比を100とし、複合材料層52の厚さを1.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=25:75とした場合であり、突き刺し強度は11.0N、異物短絡時電池温度は86℃が得られた。
【0065】
実施例2は、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=35:65とした場合であり、突き刺し強度は11.3N、異物短絡時電池温度は48℃が得られた。実施例2は、実施例1に対して複合材料層52の厚さが増大しており、これに起因して耐熱性が向上したものと推定される。実施例2と実施例1は有機材料層50が同一であり、これに起因して突き刺し強度はほとんど変化していない。
【0066】
実施例3は、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=70:30とした場合であり、突き刺し強度は11.0N、異物短絡時電池温度は35℃が得られた。実施例3は、実施例2に対して無機材料の重量組成比が増大しており、これに起因して耐熱性がさらに向上したものと推定される。実施例3と実施例2は有機材料層50が同一であり、これに起因して突き刺し強度はほとんど変化していない。
【0067】
実施例4は、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを1.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=35:65とした場合であり、突き刺し強度は11.1N、異物短絡時電池温度は55℃が得られた。実施例4は、実施例1に対して無機材料の重量組成比が増大しており、これに起因して耐熱性がさらに向上したものと推定される。
【0068】
比較例1は、有機材料層50の厚さを25μmとし、複合材料層52を形成しない場合であり、突き刺し強度は10.8N、異物短絡時電池温度は100℃を超えるものであった。比較例1では、複合材料層52が存在せず、有機材料層50と接着剤層54のみであるため、耐熱性が確保されないことが分かる。
【0069】
比較例2は、有機材料層50の厚さを25μm、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=10:90とした場合であり、突き刺し強度は11.6N、異物短絡時電池温度は100℃を超えるものであった。比較例2は、実施例1に対して無機材料の重量組成比が減少しており、これに起因して耐熱性が低下したものと推定される。
【0070】
比較例3は、有機材料層50が存在せず、複合材料層52の厚さを5.0μm、重量組成比を無機材料:有機材料=50:50とした場合であり、突き刺し強度は7.3N、異物短絡時電池温度は74℃が得られた。比較例3は、実施例1に対して有機材料層50が存在しないため、突き刺し強度が低下したものと推定される。また、複合材料層52における無機材料の重量組成比は増大しており、これに起因して耐熱性は向上したものと推定される。
【0071】
以上の結果より、有機材料層50/複合材料層52/接着剤層54の3層構造からなる絶縁テープとすることで、耐熱性と突き刺し強度(機械的強度)を両立させることができ、耐熱性を確保する観点からは複合材料層52における無機材料の重量組成比を20%以上、好ましくは35%〜80%とし、複合材料層52の厚さは1μm〜5μmとするのが好適である。
【0072】
本実施形態では、図1に示すように、有機材料層50/複合材料層52/接着剤層54の順に積層して絶縁テープ1を構成しているが、積層順序を変更し、複合材料層52/有機材料層50/接着剤層54としてもよい。
【0073】
図2は、この場合の絶縁テープ1の断面図を示す。複合材料層52/有機材料層50/接着剤層54の順に積層して構成される。要するに、有機材料層50と、複合材料層52と、接着剤層54を含んで絶縁テープ1を構成すればよい。
【0074】
また、本実施形態では、有機材料層50と、複合材料層52と、接着剤層54を含んで絶縁テープ1を構成しているが、これらの層に加えてさらに補助的な層を含んでいてもよい。例えば、複合材料層52自体を多層構造とし、各層における有機材料と無機材料の重量比を変化させてもよい。
【0075】
図3は、この場合の絶縁テープ1の断面図を示す。図1と同様に有機材料層50/複合材料層52/接着剤層54の順に積層しているが、複合材料層52が、複合材料層52aと複合材料層52bの2層から構成される。複合材料層52aと複合材料層52bは、互いに有機材料と無機材料の重量組成比が異なっている。但し、複合材料層52aと複合材料層52bのいずれも、無機材料は複合材料層の重量の20%以上とすることが好適である。なお、図3において、複合材料層52aと複合材料層52bにおける有機材料と無機材料の少なくともいずれかが異なっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本実施形態の非水電解質二次電池は、例えば、携帯電話、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末等の移動情報端末の駆動電源で、特に高エネルギー密度が必要とされる用途に適用することができる。さらに、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)や電動工具のような用途も可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 絶縁テープ
50 有機材料層
52 複合材料層
54 接着剤層
図1
図2
図3
図4