特許第6662854号(P6662854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セレクシス エス.エー.の特許一覧

特許6662854細胞分離のためのマイクロ流体法およびカートリッジ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6662854
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】細胞分離のためのマイクロ流体法およびカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20200227BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20200227BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20200227BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20200227BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20200227BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20200227BHJP
   G01N 33/553 20060101ALI20200227BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20200227BHJP
   A61K 38/16 20060101ALN20200227BHJP
【FI】
   G01N33/53 Y
   C12Q1/06
   C12M1/34 B
   C12M1/34 D
   C12N5/10
   G01N33/48 P
   G01N33/574 D
   G01N33/553
   G01N37/00 101
   !A61K38/16
【請求項の数】22
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2017-511937(P2017-511937)
(86)(22)【出願日】2015年9月1日
(65)【公表番号】特表2017-529530(P2017-529530A)
(43)【公表日】2017年10月5日
(86)【国際出願番号】EP2015069907
(87)【国際公開番号】WO2016034564
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2018年7月11日
(31)【優先権主張番号】62/046,979
(32)【優先日】2014年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512051918
【氏名又は名称】セレクシス エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】メルモッド,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ハラギー,ニアム
(72)【発明者】
【氏名】ドローツ,シュアン
(72)【発明者】
【氏名】リダ,アマール
(72)【発明者】
【氏名】ジロッド,ピエーレ‐アライン
(72)【発明者】
【氏名】レガミー,アレクサンドレ
(72)【発明者】
【氏名】コロンベット,シェリー
(72)【発明者】
【氏名】ランコン,エティエネ
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0024049(US,A1)
【文献】 米国特許第05972721(US,A)
【文献】 特開2013−015517(JP,A)
【文献】 特表2007−500346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
C12M 1/34
C12N 5/10
C12Q 1/06
G01N 33/48
G01N 33/553
G01N 33/574
G01N 37/00
A61K 38/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上に目的のタンパク質をディスプレイしている細胞を識別および選択する方法であって、
(a)前記細胞を含む試料を用意すること;
(b)1つまたは複数の親和性基で官能化された超常磁性のキャプチャービーズおよび非官能化かつ強磁性のキャリアビーズを用意すること;
(c)前記細胞を、反応チャンバー中に存在する前記キャプチャービーズおよび前記キャリアビーズの混合物と混合すること;
(d)少なくとも1つの洗浄ステップにおいて、磁気標識を有する磁気標識細胞(MLC)から非磁気標識細胞を分離すること;および
(e)前記細胞を識別および選択すること;
を含み、
前記(c)〜前記(e)が、反応チャンバー内で実施され、前記反応チャンバーに振幅と極性を有する磁界を印加し、
前記(c)が、前記磁界中で、前記キャプチャービーズの前記親和性基が、前記細胞に結合し、前記MLCを生成し、前記キャリアビーズが、前記キャプチャービーズに結合する、方法。
【請求項2】
前記目的のタンパク質が、マーカータンパク質または導入遺伝子発現産物(TEP)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目的のタンパク質が、幹細胞を識別するマーカータンパク質である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記キャプチャービーズの前記親和性基(単一または複数)が前記目的のタンパク質に直接結合する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの結合分子を用意することをさらに含み、前記少なくとも1つの結合分子が前記親和性基および前記目的のタンパク質に結合して、前記キャプチャービーズが前記目的のタンパク質に結合する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記結合分子が抗体またはこれらの断片である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が、20度を超える温度で混合される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記磁界中で、前記キャリアビーズが、前記MLCを引き付けて前記キャプチャービーズとの結合を促進させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記キャプチャービーズの、前記キャリアビーズに対する比が、2:1〜50:1である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記振幅および/または前記極性を変化させることをさらに含み、前記(c)中の混合が混合モードで実施され、前記混合モードでは、磁界強度および周波数を調節して前記磁界を印加することで、前記反応チャンバー中の前記キャプチャービーズおよび前記キャリアビーズが時計方向または半時計方向に回転する(循環モード)か、時計方向と半時計方向の交互に回転し(交互モード)、前記(d)中の分離がビーズ分離モードで実施され、前記ビーズ分離モードでは、混合モードと同等の磁界強度および周波数を用いて前記磁界を前記循環モードまたは前記交互モードで印加する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合モードおよび前記ビーズ分離モードにおいて、1Hz〜1000Hzおよび0.1〜10000mAで前記磁界が前記循環モードまたは前記交互モードで印加される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合モードおよび/またはビーズ分離モードが、それぞれ60秒未満の時間継続される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記(c)中の混合と、前記(e)中の識別および選択との間の時間間隔が、1時間未満である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が組換え型細胞であり、前記試料が遺伝子を導入された前記組換え型細胞を含み、前記目的のタンパク質が導入遺伝子発現産物(TEP)であり、また、前記MLCが前記親和性基(単一または複数)に結合後に、一定の時間間隔を過ぎてその磁気標識を失い、前記MLCが、前記時間間隔を基準にして、前記(e)中で識別および選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記時間間隔を基準にして、TEP分泌組換え型細胞を、TEPをディスプレイしているが、分泌していない組換え型細胞から分離する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記時間間隔が、結合後の48時間未満である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
カートリッジと、官能化かつ超常磁性であるキャプチャービーズと、非官能化かつ強磁性であるキャリアビーズとを含み、細胞を識別および選択するために使用されるキットであって、
前記カートリッジが、
a.マイクロ流体チャネル、
b.懸濁液中で前記キャプチャービーズおよび前記キャリアビーズを混合するための反応チャンバーであって、前記反応チャンバーへおよび前記反応チャンバーから流体を導入および取り出すための、少なくとも1つの入口チャネルおよび少なくとも1つの出口チャネルを有する反応チャンバー、
c.前記入口チャネルを介して前記反応チャンバーと流体連通している細胞試料容器、
d.前記入口チャネルを介して前記反応チャンバーと流体連通している少なくとも1つの洗浄試薬容器、
e.前記出口チャネルを介して前記反応チャンバーと流体連通している廃棄物容器、を含み、
前記cにおける前記細胞試料容器および前記dにおける前記洗浄試薬容器が、マイクロ流体チャネルの1つを介して空気濾過要素を含むベント孔と連通する、キット。
【請求項18】
前記カートリッジが、磁気標識細胞(MLC)を前記反応チャンバーから受け取るための回収容器をさらに含む、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記カートリッジが、前記反応チャンバーと流体連通している少なくとも1つの第2の入口チャネルおよび少なくとも1つの第2の出口チャネルをさらに含み、前記第2の入口チャネルが少なくとも1つの第1の出口チャネルから分岐し、前記第2の出口チャネルが少なくとも1つの第1の入口チャネルから分岐し、前記回収容器が、前記第2の入口チャネルを介して前記反応チャンバーと流体連通し、前記第2の出口チャネルが、空気濾過要素を含むさらなるベント孔に連結されている、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記反応チャンバーの容積が10μl〜500μlである、請求項17〜19いずれか1項に記載のキット。
【請求項21】
前記カートリッジが自己完結型かつ使い捨て型である、請求項17〜20のいずれか1項に記載のキット。
【請求項22】
前記キャプチャービーズの、前記キャリアビーズに対する比が、2:1〜50:1である、請求項17〜21のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一に発現している細胞集団から、目的のタンパク質の発現レベル、好ましくはディスプレイレベル、より好ましくは分泌のレベルに応じて、磁気ビーズを使って細胞を選択する方法に関する。さらに、本発明はまた、目的のタンパク質の発現、好ましくはディスプレイ、より好ましくは分泌レベルに応じた細胞の選択用の、マイクロ流体に基づく、好ましくは使い捨て型の、無菌カートリッジおよびマイクロ流体反応チャンバー内の磁気ビーズの取り扱い方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
治療用タンパク質の効率的産生のための哺乳動物細胞株の構築は、より効率的なDNAベクターおよび組み換え細胞株の作製により大きく改善された(Girod et al.,2007,Galbete et al.,2009,Ley et al.,2013;LeFourn et al.,2014)。それにもかかわらず、最良の特性、例えば、最高の生産性を有する細胞株を識別するために、いまだ、時間と労力のかかる細胞株のマニュアル選別が行われることが多い。したがって、当該技術分野において、安定に遺伝子導入された細胞の大きな集団から、最良産生細胞株、すなわち、最高レベルの導入遺伝子を産生する細胞株を選別するための、自動化された手順を開発する必要性が存在する。特に、高レベルの、例えば、治療用タンパク質を発現、および好ましくはディスプレイ、さらにより好ましくは分泌するCHOおよびその他の組換え型細胞を迅速に識別選択および/または選別する方法を開発する必要性が存在する。
【0003】
大学の研究所において、磁気ビーズ/粒子を使って細胞を選別する実現性を実証しているいくつかの論文が存在する(例えば、マニュアル操作によるチューブと磁石を使って)。ほとんどの記載されている方法は、遅く、厄介であり、また、処理能力と効果が限られている。さらに、マニュアル手順は、GMP(適正製造規範)またはGLP(優良試験所基準)施設への適応が困難であり、そのため、通常、バイオテクノロジーまたは医薬品企業では使用されていない。本明細書で提示されるのは、所定の導入遺伝子発現産物の異なる発現レベルに基づいて、好ましくは完全自動化哺乳動物細胞分離を実現するための、マイクロ流体設定内での磁気ビーズの使用である。
【0004】
Miltenyi Biotec(登録商標)により販売されているMACS装置は、強力な永久磁石下で使用される磁気材料カラムと組み合わせた磁気ビーズを使って哺乳動物細胞株の培養液から死細胞の除去を可能とするが、MACSは、磁気ビーズの選択的選別が可能ではなく、また、望まれる高産生細胞の識別と選択をするための高および低産生細胞の選別が可能ではない。高産生細胞を抗体で標識する別の方法および装置が開示されている。高産生細胞の迅速単離は、軟寒天中で増殖する細胞コロニーの撮像と、高蛍光コロニーのロボットによる採集とを組み合わせた蛍光カメラの使用を含めてもよい。例は、幹細胞採集用のTAPのCellCelector(登録商標)である(Caron et al.,2009)。また、GenetixのClonePix(登録商標)は、同様にカメラおよび細胞採集アームと組み合わせた、半固形培地中の分泌タンパク質からの免疫沈降物の形成に依存している。これらの手法では、細胞は遊離懸濁物としては増殖しないが、凝集塊として増殖し、クローニング中の初期、特に、安定発現が確立されるより前に、採取される。必要な装置は、100,000個以上の遺伝子導入した細胞を分析できないと言う点で、比較的低い処理能力である。この量は通常、最も生産的なクローンを見つけ出すのに必要である。さらに、この手法は比較的遅く、実施に数日間を要する。本発明のマイクロ流体ベース手法は、先行技術の欠点を軽減および/または欠点に対処するように設計される。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、本発明は、目的のタンパク質をディスプレイし、特定の実施形態では、好ましくは高いレベルで、また、任意選択で複雑なポリクローナル集団から、治療用タンパク質などの目的の導入遺伝子を産生する細胞を選別する方法に関する。
【0006】
特定の実施形態では、本発明は、使いやすいマイクロ流体系中で磁気ビーズを使って、比較的短時間(例えば、36または24時間未満)に高産生細胞株を識別することができる。他の実施形態では、GMPに適合する細胞選別を達成するのに必要な、一貫した無菌の環境下で、単回使用(使い捨て)カートリッジを使って生存細胞(例えば、高産生細胞)が選別される。
【0007】
本発明はまた、不均一に発現している細胞集団から、目的のタンパク質の発現レベルに応じて、磁気ビーズを使って細胞を選択する方法にも関する。
【0008】
本発明はまた、表面上に目的のタンパク質をディスプレイしている細胞を識別し、好ましくは選択する方法に関し、該方法は下記を含む。
(a)前記細胞を含む試料を用意すること;
(b)1つまたは複数の親和性基を含む官能化磁気ビーズ、および任意でキャリアビーズを用意することであって、前記親和性基(単一または複数)が表面にタンパク質をディスプレイしている細胞に結合するように構成されている、こと;
(c)細胞を前記官能化磁気ビーズおよび任意で前記キャリアビーズと混合することであって、ビーズの前記親和性基が表面上に前記タンパク質をディスプレイしている細胞に結合し、磁気標識を有する磁気標識細胞(MLC)を生成する、こと;
(d)例えば、少なくとも1つの洗浄ステップにおいて、前記MLCから非磁気標識細胞を分離すること;および
(e)表面にタンパク質をディスプレイしている細胞を識別、および好ましくは選択すること。
【0009】
目的のタンパク質は、マーカータンパク質または導入遺伝子発現産物(TEP)であってよい。
【0010】
細胞は、組換え型細胞であってよく、試料は遺伝子を導入された組換え型細胞を含んでよく、目的のタンパク質は導入遺伝子発現産物(TEP)であってよい。また、MLCは親和性基に結合後に、一定の時間間隔を過ぎてその磁気標識を失ってもよく、MLCは、その時間間隔を基準にして、識別され、好ましくは選択されてもよい。
【0011】
前記時間間隔を基準にして、TEP分泌組換え型細胞を、TEPをディスプレイしているが、分泌していない組換え型細胞から分離してもよい。
【0012】
結合後の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23時間未満で、結合後の24時間未満で、36時間未満で、48時間未満で、36時間未満で、60時間未満で、72時間未満で、84時間未満でまたは96時間未満で、磁気標識を失うMLCを選択してよい。
【0013】
目的のタンパク質は、幹細胞、特に、癌幹細胞(CSC)または循環性腫瘍細胞を識別するマーカータンパク質であってもよい。
【0014】
磁気ビーズの親和性基は、タンパク質に直接結合してよい。
【0015】
少なくとも1つの結合分子が親和性基およびタンパク質に結合して、磁気ビーズをタンパク質に結合し得る。結合分子は、抗体またはこれらの断片でよく、これらはビオチン化されてもよい。
【0016】
細胞は、20、24、26、28、30、32、34または36℃を超える温度で混合してよい。
【0017】
混合物は、官能化ビーズ(キャプチャービーズ)とキャリアビーズの混合物であってよく、また、反応チャンバー中にあってよい。
【0018】
上記方法は、振幅および極性を有する外部磁界を前記反応チャンバーに印加することをさらに含んでよく、前記外部磁界中で、キャプチャービーズと、タンパク質をディスプレイしている細胞の混合が、前記キャリアビーズにより促進されてもよい。
【0019】
磁気ビーズは、時間と共に変化する極性と振幅を有する磁界を使って操作され得る。前記磁界の変化は、0.1〜1000サイクル/秒の範囲の周波数変化を伴ってよい。細胞選択は、印加する磁界の周波数および振幅を制御することにより実施し得る。細胞選択はまた、磁気ビーズおよび細胞混合時間を制御することにより行ってもよい。細胞選択を、洗浄ステップの数、磁気ビーズの性質、および洗浄ステップ中の細胞混合時間の内の1つまたは複数のパラメータによりさらに制御してもよい。
【0020】
選択された細胞は、元の集団中に存在する細胞より少なくとも10%高いタンパク質の発現、ディスプレイまたは分泌レベルを有していてもよく、選択された細胞は、元の集団中に存在する細胞より、好ましくは20%、40%、60%、80%、またはより好ましくは90%超高いタンパク質発現、ディスプレイまたは分泌レベルを有していてもよい。細胞はまた、それらのより低いタンパク質発現に基づいて選択されてよく、選択された細胞が、元の集団中に存在する細胞より少なくとも10%低いタンパク質発現レベルであってよい。選択された細胞は、元の集団中に存在する細胞より、好ましくは20%、40%、60%、80%、またはより好ましくは90%超低いタンパク質発現レベルであってよい。
【0021】
キャプチャービーズは、超常磁性ビーズであってよく、キャリアビーズは、強磁性ビーズであってよい。
【0022】
キャプチャービーズの、前記キャリアビーズに対する比は、2:1〜50:1、5:1〜25:1、好ましくは8:1〜12:1または約10:1であってよい。
【0023】
振幅および/または極性は、連続操作モードを決定するために変化してよく、前記(c)中の混合は、混合モードで実施してよく、前記(d)中の分離は、ビーズ分離モードで実施してよい。
【0024】
細胞は、組換え型細胞でよく、表面上に発現したタンパク質は、TEPでよく、(e)中の識別は、結合後の48時間未満、好ましくは36または24時間未満の時間に、反応チャンバーから、磁気標識を失っている(従って、磁気ビーズから離れた)細胞を溶出することにより実施される。
【0025】
混合およびビーズ分離モードでは、磁気装置(単一または複数)は、循環モードまたは交互モードで、1Hz〜1000Hzおよび0.1〜10000mA、好ましくは40〜500Hzおよび200〜500mAで操作してよい。
【0026】
混合モードおよび/またはビーズ分離モードは、それぞれ60秒未満の時間継続してよい。
【0027】
本発明はまた、TEPなどのタンパク質のディスプレイ、および好ましくは分泌(細胞の表面からの放出;脱落)のレベルに応じて、前記タンパク質をディスプレイしている、好ましくは分泌している細胞を含む細胞集団から細胞を選択するためのカートリッジであって、
a.マイクロ流体チャネル、
b.懸濁液中で磁気ビーズを混合するための反応チャンバーであって、前記反応チャンバーへおよび前記反応チャンバーから流体をそれぞれ導入および取り出すための、少なくとも1つの入口チャネルおよび少なくとも1つの出口チャネルを有する反応チャンバー、
c.入口チャネルを介して反応チャンバーと流体連通している細胞試料容器、
d.入口チャネルを介して反応チャンバーと流体連通している少なくとも1つの洗浄試薬容器、
e.出口チャネルを介して反応チャンバーと流体連通している廃棄物容器を含み、cからdまでのそれぞれの容器が、マイクロ流体チャネルの1つを介して空気濾過要素を含むベント孔とさらに連通しているカートリッジに関する。
【0028】
本発明はまた、細胞の表面に発現している、例えば、TEPなどのタンパク質のディスプレイ、および好ましくは分泌(細胞の表面からの放出;脱落)のレベルに応じて、前記タンパク質をディスプレイしている、好ましくは分泌している細胞を含む細胞集団から、細胞、例えば、組換え型細胞を選択するための統合システムに関し、
該システムは、
a.マイクロ流体チャネル、
b.懸濁液中で磁気ビーズを混合するための反応チャンバーであって、前記反応チャンバーへおよび前記反応チャンバーから流体を導入および取り出すための、少なくとも第1の入口チャネルおよび少なくとも第2の出口チャネルを有する反応チャンバー、
c.入口チャネルを介して反応チャンバーと流体連通している細胞試料容器、
d.入口チャネルを介して反応チャンバーと流体連通している少なくとも1つの洗浄試薬容器、
e.出口チャネルを介して反応チャンバーと流体連通している廃棄物容器、
カートリッジ、
f.反応チャンバーのまわりにまたは反応チャンバーに配置される制御可能な磁界を作り出す1つまたは複数の装置(磁界装置=MFD)、特に、1つまたは複数の電磁石、
g.周波数および/または振幅調節によって、MTD(単一または複数)により反応チャンバー内に作り出された磁界を調節するように構成されたデータ処理装置(例えば、コンピュータ)であって、周波数および/または振幅それぞれの調節により、反応チャンバー内の操作モードが決定される、データ処理装置、
を含み、cからdまでのそれぞれの容器が、マイクロ流体チャネルの1つを介して空気濾過要素を含むベント孔とさらに連通している。
【0029】
データ処理装置は、混合モード、キャプチャーモード、固定化モード、ビーズ分離モードおよび/または回収モードを含む一連の前記操作モードを設定するように構成してもよい。データ処理装置は、MFDを下記モードで動作するように構成してよい。
−混合およびビーズ分離モードでは、1〜1000Hz、好ましくは40〜500Hzおよび0.1〜10,000mA、好ましくは200〜500mAの循環モードまたは交互モードであって、例えば、循環モードは、時計回りおよび反時計回りの間で切り替えてもよい、循環モードまたは交互モード、
−キャプチャーモードでは、混合モードより低い、0.5〜40Hzおよび300〜600mAなどの周波数および振幅の循環モードまたは交互モード、
−固定化モードでは、0Hzおよび300〜600mAなどの振幅のモード、および
−回収モードでは、固定化モードに対して、40Hz〜500Hzなどの上昇した周波数および30〜300mAなどの低下した振幅のモード。
【0030】
システムまたはカートリッジの反応チャンバーは、キャリアおよびキャプチャービーズの混合物を含んでよい。
【0031】
カートリッジは、磁気標識細胞、好ましくは磁気標識組換え型細胞を反応チャンバーから受け取る回収容器をさらに含んでもよい。
【0032】
カートリッジまたはシステムは、前記反応チャンバーと流体連通している少なくとも1つの第2の入口チャネルおよび少なくとも1つの第2の出口チャネルをさらに含んでよく、第2の入口チャネルは、少なくとも1つの第1の出口チャネルから分岐し、第2の出口チャネルは少なくとも1つの第1の入口チャネルから分岐し、回収容器は、第2の入口チャネルを介して反応チャンバーと流体連通し、第2の出口チャネルは、さらなる空気濾過要素を含むベント孔に連結されている。
【0033】
入口チャネルを介して反応チャンバーの内容物を回収容器中に流すように、回収容器の空気ベント孔が、回収容器のベント孔を通して空気を圧送することにより反応チャンバー内の磁気標識細胞を回収するためのポンプに連結されてもよい。
【0034】
反応チャンバーの体積は、10μL〜500μLであってよい。
【0035】
カートリッジは、自己完結型および/または使い捨て型であってよい。
【0036】
本発明はまた、反応チャンバーが、キャプチャービーズおよびキャリアビーズ(別の選択肢として、これは、追加の容器に入れてもよい)を含み得る本明細書に記載のカートリッジを1つの容器に含み、さらに、別の容器に、カートリッジ中のキャプチャービーズおよびキャリアビーズの使用説明書を含むキットに関する。
【0037】
キャプチャービーズは、超常磁性ビーズであってよく、キャリアビーズは、強磁性ビーズであってよく、超常磁性ビーズの強磁性ビーズに対する比は、2:1〜50:1である。
【0038】
本発明はまた、本明細書で記載の方法、システムおよび/またはカートリッジにより識別および好ましくは選択された細胞に関する。
【0039】
本発明はまた、好ましくは、導入遺伝子発現産物を分泌する組換え型細胞を、20、40、60、80pcdを超えるレベルで含む、単離された細胞集団に関し、請求項の単離集団は、単離細胞集団が単離された元の細胞集団を40%を超えて含まない。
【0040】
本発明はまた、限定されないが遺伝子治療または再生医療用途への治療用細胞としての本明細書で開示の哺乳動物細胞の使用を含む。
【0041】
分泌された導入遺伝子は治療用タンパク質であってもよい。
【0042】
前記官能化磁気ビーズおよび任意で前記キャリアビーズと細胞の混合と、表面上にタンパク質をディスプレイしている細胞の識別および好ましくは選択との間の時間間隔は、1時間未満、30分未満、20分未満、15分未満または10分未満であってよい。
【0043】
請求項および請求した全ての組み合わせの主題は、参照によってこの記載中に組み込まれ、たとえ請求項が放棄された場合でも、本開示の一部として残る。
【0044】
本発明の目的および特徴は、添付の請求項において詳細に記述される。さらなる目的および利点と共に、その操作の構成および方法の両方に関して、添付図面に関連付けて以下の説明を参照することにより、本発明が最もよく理解されるであろう。
【0045】
図7は、混合細胞集団からの発現細胞の自動濃縮に使われる磁気微小粒子のタイプを示す略図である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、種々の免疫グロブリン産生レベルの細胞の生成を示す略図である。免疫グロブリンガンマ(IgG)および抗生物質選択マーカーのための発現ベクター、ならびにeBFP2コードプラスミドをCHO−M細胞に同時遺伝子導入した。種々のレベルのIgGを安定に発現しているポリクローナル集団をBFPおよび表面IgGディスプレイに基づいてFACSにより選別した。選択された細胞クローンのIgG分泌をELISAにより確認した。
図2図2は、種々のIgGディスプレイレベルおよび分泌レベルを提示するGFPまたはBFP標識参照細胞の図を示す。種々のレベルの細胞表面IgGをディスプレイしているが、種々のレベルのIgG分泌を有するCHO−M−由来細胞クローンを、参照細胞集団として、FACSにより選択した。BFPに標識された中程度のディスプレイヤーのBS2細胞、高ディスプレイヤーのBLC細胞および非常に高いディスプレイヤーのBHB細胞がGFP標識したF206の極高産生細胞クローンに比較される。細胞表面でディスプレイしたIgGは、フローサイトメトリー分析(A)の前に、APC標識抗IgG抗体で標識された。示した細胞クローンのパラレル培養により産生されたIgG力価(B)、またはピコグラム/細胞/日のそれらの比生産性(C)は、細胞培地中に分泌されたIgGのELISAアッセイにより決定された。
図3図3は、混合細胞集団のマニュアルキャプチャーの原理を示す略図である。1x10細胞/mLのIgG発現細胞集団および非発現細胞集団の混合物を、KPLビオチン標識抗ヒトIgG抗体と共に、5μg/mLの最終濃度になるよう20分間インキュベートした。1xPBSによる5分の洗浄後、続いて1000rpmで細胞の遠心分離を行った後、事前標識細胞をストレプトアビジンコート超常磁性ビーズと共に30分間インキュベートした。手持ち式磁石により、ビーズをキャプチャーしたIgGディスプレイ細胞の非発現細胞からの分離が可能となった。全プロセスを室温で行った。
図4図4は、非発現細胞混合集団からの発現細胞のマニュアル濃縮の実例による説明を示す略図である。それぞれの洗浄後のマニュアルキャプチャー回収細胞を細胞培養液中に入れ、IgGディスプレイ評価の前に、選択せずに10日間増殖させた。3回の洗浄は、ほとんどの非発現細胞を除去するのに効果的であり、従って、IgG陽性細胞のみが維持された。
図5図5は、MagPhase(登録商標)装置を使った、混合細胞集団からの高発現細胞の自動濃縮のためのカートリッジ設計の略図である。いくつかの要素の配置を示すために、カートリッジの概略図(A)、ならびに実際の写真(B)が示されている。
図6図6は、混合細胞集団からの発現細胞の自動濃縮用の磁気微小粒子の選択を示す略図である。
図7図7は、2.8μmの超常磁性ビーズを使ったマニュアル細胞キャプチャーの説明図である。30μLの超常磁性ビーズとの30分のインキュベーションに供する前に、IgG発現F206細胞(1x10細胞/mL)の懸濁液をKPLビオチン化抗ヒトIgG抗体と共に、20分間インキュベートした。超常磁性ビーズに結合したCHO細胞は、示されている通りである。
図8図8は、2.0μmの強磁性ビーズを使ったマニュアル細胞キャプチャーの説明図である。30μLの超常磁性ビーズとの30分のインキュベーションに供する前に、IgG発現F206細胞(1x10細胞/mL)の懸濁液をKPLビオチン化抗ヒトIgG抗体と共に、20分間インキュベートした。超常磁性ビーズに結合したCHO細胞は、示されている通りである。強磁性ビーズに結合したCHO細胞は、凝集体を形成しているために、細胞培養液中に放出され得ない。
図9図9は、超常磁性および強磁性ビーズの組み合わせを使った、MagPhase(登録商標)自動細胞キャプチャー:混合モードの略図である。高周波数混合モードが細胞キャプチャーまたは洗浄ステップで使用される。2種のタイプのビーズが下記の条件により別々に溶解および混合される。使用するマイクロビーズのタイプに応じて、100〜150Hzおよび200〜300mAで10秒間。電磁石は、1秒間の時計方向回転(1−2−3−4)、1秒間の反時計方向回転(4−3−2−1)、続けて、10秒間の時計方向回転によって、循環方式で連続的に励起され、最適混合が達成される。細胞との結合のためのインキュベーションをするために、または洗浄緩衝液中で混合するために、強磁性ビーズ(黒色)は、チャンバーの壁の近くを回転し、同時に、超常磁性ビーズ(灰色)は、チャンバー全体にわたり分散される。
図10図10は、超常磁性ビーズおよび強磁性ビーズの組み合わせを使ったMagPhase(登録商標)自動細胞固定化:キャプチャーモードの略図である。極高磁力(400mA)および低周波数(1Hz)が、半時計方向循環モードで10秒間使われ、強磁性ビーズがチャンバー全体をゆっくり循環し、超常磁性ビーズおよび結合した細胞も可能な限りキャプチャーする。
図11図11は、超常磁性ビーズおよび強磁性ビーズの組み合わせを使ったMagPhase(登録商標)自動細胞固定化:固定化モードの略図である。結合超常磁性および強磁性マイクロビーズがチャンバー壁上に極高磁力(400mA)およびゼロ周波数(0Hz)で10秒間固定され、懸濁液中の細胞または種々の洗浄緩衝液を注入することを可能とする。この操作では、電磁石が固定モード(例えば、1と4がS極、2と3がN極)で運転される。
図12図12は、超常磁性ビーズおよび強磁性ビーズの組み合わせを使ったMagPhase(登録商標)自動細胞溶出および回収:ビーズ分離モードの略図である。超常磁性および強磁性ビーズは、最初に混転により分離され(100〜150Hzおよび200〜300mA)、その後、電磁石が混合モードの場合と同様に稼働される(図9の説明を参照されたい)。
図13図13は、超常磁性および強磁性ビーズの組み合わせを使ったMagPhase(登録商標)自動細胞溶出:回収モードの略図である。前ステップ(図12)でビーズ分離後、中間的周波数および磁力ステップ(100Hzおよび100mA)が3秒間加えられ、この場合には、S極およびN極が100Hzの周波数(要確認)で切り替えられること以外は、電磁石は「ビーズ固定化」モード(図11を参照)で稼働される。この磁力は強磁性ビーズを素早く隅に押し込めるが、チャンバー壁上にある超常磁性ビーズは、そうされない。中間的周波数は、超常磁性ビーズをチャンバーの中央に保持し、結合細胞を収集するために超常磁性ビーズを圧送するのを可能とする。超常磁性ビーズは、4.5秒の間の30μL/秒の速度のチャンバー中の圧送空気により溶出される。
図14図14は、超常磁性および強磁性ビーズを使って、高(F206)および中(BS2、BLC)産生細胞を分離するための、MagPhase(登録商標)最適磁界強度および磁界振動周波数を特定する説明図である。マイクロビーズおよびMagPhase(登録商標)の操作条件は、回収モードの前に、示した条件により種々の周波数および磁界強度で3回の洗浄ステップが行われるのを除いて、図9〜13に記載されているとおりである。これにより、最適条件の特定が可能となり、一方で、高くなった周波数および/または磁界(それぞれ、「高速」および「強力」)は高発現F206細胞のより低い濃縮をもたらした。投入集団中の高対中発現体細胞の比は、F206:BS2細胞の約50:50(A)またはF206:BLC細胞の30:70(B)に設定した。回収した細胞を蛍光顕微鏡で定量化した。
図15図15は、細胞インキュベーション時間に対するMagPhase(登録商標)最適設定を特定する説明図である。120Hz、300mAでの異なる時間(2秒〜5分)の細胞キャプチャー用のビーズの細胞との混合および3回の洗浄ステップを、120Hz、300mAで10秒間行った。1μLのChemicell SiMAG 1.0μmビーズおよび20μLのDynabeads MyOne T1ビーズを混合チャンバー中にプリロードした。MagPhase(登録商標)操作の前に、F206およびCHO−M細胞を10:90の比で混合し、細胞混合物をビオチン化抗IgG KPL抗体で標識した。回収した細胞を蛍光顕微鏡下で分析した。
図16図16は、強磁性と超常磁性ビーズの比に対するMagPhase(登録商標)最適設定を特定する説明図である。1または2μLのChemicell SiMAG 1.0μm、ならびに5μL、10μL、20μLまたは30μLのMyOne T1 Dynabeadsを混合チャンバー中にプリロードした。F206およびCHO−M細胞を10:90の比で混合し、ビオチン化抗体で標識した。回収した細胞を蛍光顕微鏡下で分析した。
図17図17は、MagPhase(登録商標)最適自動設定を使った超常磁性および強磁性ビーズの組み合わせによるIgG発現細胞濃縮の説明図である。示した細胞集団混合物をKPLビオチン化抗ヒトIgG抗体と共に5μg/mLの最終濃度になるようプレインキュベートした。混合チャンバー中にプリロードした、20μLの超常磁性ビーズ(MyOne T1 Dynabeads、ストレプトアビジンコート、1.0μm)および2μLの強磁性ビーズ(Chemicell FluidMAG/MP−D、5.0μm、デンプンコート)を使って、MagPhaseベース細胞分離を行った。最適化されたMagPhase(登録商標)ステップおよびパラメータは、下記の通り。1)120Hz、300mAで10秒間の細胞キャプチャー用混合、2)1Hz、400mAで10秒間のビーズキャプチャー、3)0Hz、400mAで10秒間のビーズ固定化、4)3回の洗浄の実施、および5)100Hz、100mAでの回収。洗浄サイクルは、100μLのPBS緩衝液の投入と、それに続く上記の混合モード、ビーズキャプチャーおよびビーズ固定化ステップで構成される。回収した細胞を蛍光顕微鏡下で分析した。
図18図18は、超常磁性ビーズおよび強磁性ビーズを用いた、中(BS2)、高(BLC)および極高(BHB)IgGディスプレイヤーから高(F206)IgGディスプレイヤーのMagPhase(登録商標)自動分離の説明図である。マイクロビーズ、細胞調製およびMagPhase(登録商標)操作条件は、図17に記載の場合と同じとした。回収した細胞を蛍光顕微鏡下で分析した。
図19図19は、MagPhase(登録商標)自動キャプチャーとマニュアルキャプチャーの比較の説明図である。示した細胞集団(F206とCHO−M細胞の10/90比率混合物(A);F206とBS2細胞の40/60比率混合物(B))をKPLビオチン化抗ヒトIgG抗体と共に5μg/mLの最終濃度になるようプレインキュベートした。混合チャンバー中にプリロードした、20μLの超常磁性ビーズ(MyOne T1 Dynabeads、ストレプトアビジンコート、1.0μm)および2μLの強磁性ビーズ(Chemicell FluidMAG/MP−D、5.0μm、デンプンコート)を使って、MagPhaseベース細胞分離を行った。MagPhase(登録商標)手順およびマニュアルキャプチャー手順を、それぞれ図17および図3に記載のように実施した。回収した細胞を蛍光顕微鏡下で分析した。
図20図20は、第1世代MagPhase(登録商標)を使った、IgG発現細胞の無菌キャプチャーおよび濃縮を示す。F206およびCHO−M投入細胞を10:90〜20:80の比に混合し、滅菌MagPhase(登録商標)カートリッジを使って、MagPhase(登録商標)キャプチャープロセスを図17に記載のように行った。(A)キャプチャー後1日目に、MagPhase(登録商標)キャプチャー細胞を溶出ビーズから分離し、IgGディスプレイ分析の前に、それらを抗生物質選択なしに16日間培養した。同時に、一定分量の投入細胞を対照として培養した。(B)MagPhase(登録商標)で選別の前に、細胞をCB5フィードの存在下で培養したこと以外は、細胞をパネルAとして処理し、1日目にビーズから溶出しなかった細胞を、選別後3日目に回収した。キャプチャーされた細胞および対照細胞をAPC標識抗IgG抗体で標識し、IgGを発現およびディスプレイしているF206細胞を染色し、その後、フローサイトメトリーで分析した。(C)選別を行う前にCB5の存在下で培養したまたは培養していない細胞を並行して、マニュアルおよびMagPhase(登録商標)媒介選別を行った。回収した細胞を蛍光顕微鏡下で分析した。これらの結果は、3回の独立した実験から得られたF206細胞の平均濃縮倍率を表す。
図21図21は、MagPhase(登録商標)分離後の1日目の磁気ビーズから溶出した、高レベルのIgGの発現および分泌の両方をしている細胞の無菌MagPhase(登録商標)キャプチャーおよび濃縮を示す。IgG分泌分析の前に、キャプチャー後1日目または3日目に分離された、図20BのMagPhase(登録商標)キャプチャー細胞、ならびに対照としての一定分量の投入細胞を、抗生物質選択なしに10日間培養した。比生産性を、細胞当たり、1日当たり分泌されたIgGのpg(pg/細胞/日)で表した。
図22図22は、ポリクローナル集団から、高レベルのIgGの発現および分泌の両方をしている細胞の無菌MagPhase(登録商標)キャプチャーおよび濃縮の説明図である。CB5フィードの非存在下で培養したポリクローナル細胞集団を、図21に記載のように、MagPhase(登録商標)を使って選別した。細胞表面のIgGディスプレイおよび細胞上清中のIgG分泌をELISAアッセイで評価する前に、選別後1日目および4日目に磁気ビーズから溶出したキャプチャーされた細胞、ならびに対照としての一定分量の投入細胞をCB5と共に、抗生物質選択なしに、14日間培養した。(A)低、中および高ディスプレイヤー細胞を区別したIgG陽性細胞のパーセンテージ。(B)選別後1日目または4日目に溶出した細胞の上清中のIgG分泌の比生産性(pg/細胞/日)。
図23図23は、異なるモノクローナル抗体(mAb)を使って、ポリクローナル集団から治療用IgGを高度に発現および分泌している細胞を濃縮するための、無菌MagPhase(登録商標)選別の説明図である。MabtechまたはAcris mAb標識C_MFポリクローナル細胞を投入として使って、図17に記載のように、MagPhase(登録商標)キャプチャーを行った。キャプチャーの1日目に分離したMagPhase(登録商標)キャプチャー細胞ならびに対照細胞としての一定分量の投入細胞をそれぞれ半分に分割した。IgGディスプレイ分析の前に、各半分の細胞をCB5を含有または非含有で、および抗生物質選択なしで14日間培養した。IgGディスプレイ分析と同じ日に細胞培養上清をサンプリングした。比生産性のさらなる計算のために、上清試料中のIgG力価をELISAにより分析した。(A)CB5なしで培養した場合の、IgG陽性細胞のパーセンテージ。(B)CB5と共に培養した場合の、IgG陽性細胞のパーセンテージ。(C)IgGの比生産性(pg/細胞/日)。
図24図24は、第二世代および最適化MagPhase(登録商標)装置ならびに単回使用無菌カートリッジを使った、非発現細胞からの発現F206細胞の濃縮の説明図である。F206およびCHO−Mを投入として20:80の比で混合した。古いMagPhase(登録商標)キャプチャーを図17に記載のように行った。160μLのビオチン化抗体標識細胞および1360μLの1xPBS溶液を、それぞれ新しいMagPhase(登録商標)カートリッジの試料チューブおよび洗浄溶液チューブに加えた。圧送液体容量が新しいMagPhase(登録商標)に適合され、電流量が古いMagPhase(登録商標)のスクリプトの場合の半分であること以外は、新しいMagPhase(登録商標)上のスクリプト実行は、古いMagPhase(登録商標)スクリプトと同じステップを有していた。キャプチャーの1日目および6日目に分離した、両方のMagPhase(登録商標)キャプチャー細胞、ならびに対照細胞としての一定量の投入細胞を抗生物質選択なしで6日間培養した。回収した細胞および対照細胞を蛍光顕微鏡下で分析した。これらの結果は、3回の独立した実験で得られた平均値である。(A)KPL抗血清を使ったキャプチャー物中のIgG陽性細胞のパーセンテージ。(B)Mabtech mAbを使ったキャプチャー物中のIgG陽性細胞のパーセンテージ。
図25図25は、図24で使われるような本発明の好ましい実施形態による流体カートリッジの略図である。カートリッジ(1)、反応チャンバー(2)、反応チャンバーは入口(3in)および出口(3out)チャネル(液体培地を前記反応チャンバーへおよび反応チャンバーから導入または取り出すための)、細胞試料容器(4)、洗浄試薬容器(5)、空気ベント孔(7)、空気濾過要素、回収容器(9)(反応チャンバー(2)から選択された細胞を受け取るために)、第2の入口および出口チャネル(10in、10out)(これは第1の出口および入口チャネル(3out、3in)それぞれの多分岐部である);回収容器(9)は第2の入口チャネル(10in)および空気濾過要素(8)を含むベント孔(7回収)に連結されている第2の出口チャネル(10out)を介して反応チャンバーと流体連通している。
図26図26は、MagPhase(登録商標)装置で選別した細胞集団の分析を示す。分析は、それぞれの分析されたCHO細胞コロニー(=クローン)により放出されたトラスツズマブ抗体の量を示すClonePix(登録商標)画像撮像装置を使って行った。極めて高い生産性を有するクローンの特定が可能であった。
図27図27は、マイクロ流体装置の連続操作モードを示すフローチャートである。この図では、マイクロ流体装置は、本発明のデータ処理装置により実行される、カートリッジを有するMagPhase(登録商標)装置である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の各種実施形態では、磁気感受性ビーズ(本明細書においては、「磁気ビーズ」、「磁気粒子」、「磁気マイクロビーズ」または単に「マイクロビーズ」としてもまた参照される)が使用される。磁気ビーズは、磁石(例えば、永久磁石、しかし、好ましくは電磁石)による動きに感受性の強い、当該技術分野において既知の任意の材料から作製されてよい。それらは、外部磁界により磁化されると、高磁界勾配を生成することができる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、ビーズは完全にまたは部分的にコーティングされており、従って、親和性基で官能化されている。このような親和性基は、細胞の表面上のタンパク質(受容体/マーカータンパク、例えば、幹細胞用のマーカータンパク質)または導入遺伝子産物、例えば、治療用タンパク質などの別の表面発現部分に直接結合するリガンドであってよい。親和性基はまた、抗体の標識としてよく使われるビタミンビオチンなどのその他の分子に高親和性を有する、高分子材料、無機材料またはストレプトアビジンなどのタンパク質であってもよい。
【0049】
ビーズは、強磁性材料、常磁性材料もしくは超常磁性材料またはこれらの材料の組み合わせを含んでよい。磁気ビーズはフェライトコアおよびコーティングを含んでもよい。しかし、磁気ビーズは、1種または複数種のFe、Co、Mn、Ni、1種または複数種のこれらの元素を含む金属、これらの元素の規則合金、これらの元素から作られた結晶、フェライトなどの磁気酸化物構体、およびこれらの組み合わせを含んでもよい。他の実施形態では、ビーズは、マグネタイト(Fe)、マグヘマイト(γ−Fe)、または二価の金属フェライトから作製されてもよい。
【0050】
本発明の特定の実施形態では、磁気ビーズは、例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸およびデキストランからなる群より選択される非磁性コアを含み、この上に磁気コーティングが配置される。異なるタイプのビーズが存在し、ビーズの「タイプ」は、それらの磁気挙動に基づいて識別される。
【0051】
「常磁性」ビーズは、磁界中に存在しなれば、磁化を急速に失う低磁化率を特徴とする。
【0052】
「強磁性」ビーズは、高磁化率を有し、磁界の非存在下でも磁気特性を保存することができる(永久磁性)。強磁性は、例えば、材料の不対電子が結晶格子中に含まれ、それにより不対電子のカップリングが可能となる場合に生じる。好ましい強磁性材料には、限定されないが、鉄、コバルト、ニッケル、これらの合金、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0053】
いわゆる「超常磁性」ビーズは、高磁化率(すなわち、磁界中に置かれると、強力な磁性物質になる)であるが、常磁性材料と同様に、磁界の非存在下では急速にその磁化を失うことを特徴とする。超常磁性は、結晶の大きさが臨界値より小さい場合の強磁性材料で得ることができる。超常磁性ビーズは、磁石による強力な引力を受けることができることと、磁界の非存在下で凝集しないことの、二重の利点を提供する。特に、凝集しないという性質は、好ましいことに、ビーズに結合した細胞が生き残ることを可能にするであろう。
【0054】
周辺条件に応じて、異なるタイプ(例えば、強磁性および超常磁性)として挙動するビーズは、別に、例えば、米国特許第8,142,892号(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されており、本発明においては、磁気ビーズの1つの「タイプ」として使用することができる。他のタイプのビーズは、例えば、米国特許出願公開第2004/0018611号に開示されている。この特許はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
好ましい実施形態では、磁気ビーズは極めて小さく、通常は約0.1〜500μm、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.2〜50μm、0.2〜20μm、0.2〜10μmおよび0.2〜5μmである。粒径と、外部磁界に応答して粒子により生成される磁力密度との関係は、式:f=BI grad HI=BM/aにより与えられる。
【0056】
式中、fは磁力密度、Bは外部磁界であり、I grad HIは磁気ビーズの表面での局所的勾配に関する式であり、Mはマトリックス要素の磁化であり、aはビーズの直径である。従って、磁気ビーズが小さくなるほど、磁気勾配が大きくなる。より小さいビーズは、より強い勾配を生成するが、それらの効果は、より局所的になるであろう。
【0057】
一実施形態では、磁気ビーズは、不均一なサイズであり、他の実施形態では、均一なサイズである。一般に、任意の形状のビーズを使用してよく、すなわち、角度または湾曲を有する任意の形状が勾配を形成するであろう。より小さい磁気ビーズはより高い磁力密度を生成するが、より大きなビーズは、それらの表面からより遠くに到達する磁界勾配を生成する。これは通常、より小さいビーズのより大きい曲率半径に起因する。このより小さい曲率半径のために、より小さいビーズは、その表面で、より大きなビーズより強力な勾配を有する。より小さいビーズはまた、一般に、勾配が距離と共により急速に低下する。さらに、一定の距離での磁束は、一般に、より小さいビーズでより小さいであろう。小さい磁気ビーズと大きい磁気ビーズの混合物は、弱く磁化した材料(すなわち、より小さいビーズにより)と、ビーズから離れて強く磁化した材料(すなわち、より大きなビーズによる)の両方をキャプチャーするであろう。
【0058】
本発明のほとんどの実施形態では、磁気ビーズは、マイクロ流体装置中で操作できるように、十分に小さい。
【0059】
1つの有利な実施形態では、異なるタイプのビーズの組み合わせ、例えば、2つ、3つ、4つまたは5つのタイプのビーズの組み合わせが好ましい。
【0060】
特定の実施形態では、マイクロ流体装置中での1つのタイプの磁気ビーズ、例えば、強磁性ビーズ単独の使用は、例えば、細胞の凝集により、組換え型細胞の細胞死に繋がる場合がある。本発明の一実施形態では、強磁性ビーズがキャリアビーズとして使用され、すなわち、その機能は、細胞のキャプチャービーズとの混合、および特定の実施形態では、細胞、特に、生存細胞の回収、を最適化することである。一実施形態では、キャリアビーズは非官能化ビーズである。キャリアビーズの直径は、0.1〜500μm、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.2〜50μm、0.2〜20μm、0.2〜10μmおよび0.2〜5μmであってよい。好ましい実施形態では、直径は1〜6μmである。
【0061】
キャプチャービーズは実際に、目的の細胞をキャプチャーする。キャプチャービーズは通常、官能化されている。キャプチャービーズは、好ましくは超常磁性ビーズであり、これは、上述のように、一緒に凝集せず(またはほんのわずかに凝集し)、したがって、ビーズに結合した細胞が生存可能なままでいるのを可能とする。キャリアビーズの直径は、0.1〜500μm、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.2〜50μm、0.2〜20μm、0.2〜10μmおよび0.2〜5μmであってよい。好ましい実施形態では、直径は0.5〜2.5μmである。
【0062】
キャリアビーズの、キャプチャービーズに対する比は、1:1〜1:50、好ましくは1:5〜1:40、1:5〜1:20、1:8〜1:12、1:9〜1:11または約1:10であってよい。当業者なら容易に理解すると思われるように、強磁性ビーズおよび/または非強磁性ビーズの絶対量は、反応チャンバーの体積、磁気ビーズのタイプ、組成およびサイズに依存し、当業者により実験的に決定することができる。反応チャンバーの体積当たりのキャリアビーズの体積は、100μl当たり1μl〜100μl当たり10μlの範囲であってよい。50μlの反応チャンバーに対しては、キャリアビーズの体積は、例えば、1μl〜5μlの範囲であってよい。
【0063】
目的のタンパク質は、幹細胞、特に、白血病幹細胞などの組織特異的癌幹細胞を含む癌幹細胞(CSC)、または循環腫瘍/癌細胞もしくは前癌細胞を識別するマーカータンパク質であってよい。
【0064】
一実施形態では、マーカータンパク質は、1種または複数種(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23種)の下記からなる群由来の幹細胞マーカーであってよい。Lgr5、LGR4、epcam、Cd24a、Cdca7、Axin、CK19、Nestin、ソマトスタチン、DCAMKL−1、CD44、Sord、Sox9、CD44、Prss23、Sp5、Hnf1α、Hnf4a、Sox9、KRT7およびKRT19、Tnfrsf19。幹細胞マーカーは組織特異的であってよい。例えば、膵臓幹細胞またはオルガノイドは、CK19、ネスチン、ソマトスタチン、インスリン、グルカゴン、Ngn3、Pdx1、NeuroD、Nkx2.2、Nkx6.1、Pax6、Mafa、Hnf1b、任意選択でTnfrsf19の内の1種または複数種(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15種、例えば、1、2、3または4種)の天然発現を特徴としてよく;胃中オルガノイドは、DCAMKL−1、CD44、任意選択でTnfrsf19の内の1種または複数種(例えば、1、2、3または4種)の天然発現を特徴としてよく;および陰窩−絨毛オルガノイドは、Sordおよび/またはPrss23の内の1種または複数種または全種(例えば、1または2種)の発現を特徴としてよい。CSCマーカーは、CD19、CD34、CD44、CD90、ALDH1、PL2L、SOX−2およびN−カドヘリンを含み、一方、それらは、枯渇していてもよく、または小量のその他のマーカー、例えば、CD21、CD24、CD38もしくはCD133をディスプレイしていてもよい。白血病幹細胞は、CD34/CD38/CD19細胞として特定でき、乳癌幹細胞は、CD44/CD24low細胞として特定でき、脳CSCはCD133細胞として、卵巣CSCはCD44細胞、CD117および/またはCD133細胞として、多発性骨髄腫CSCはCD19細胞として、黒色腫CSCは、CD20細胞として、脳室上衣腫CSCはCD133細胞として、前立腺CSCはCD44細胞として特定できる。さらに、癌幹細胞により発現されるとわかっている既知のその他のマーカータンパク質を表面に分泌またはディスプレイしている細胞を特定できる。追加のCSCマーカーには、限定されないが、CD123、CLL−1、SLAM(信号伝達リンパ球活性化分子ファミリー受容体)の組み合わせおよびこれらの組み合わせが含まれる。さらなる例示マーカーは、米国特許出願公開第2008/0118518号で見つけることができる。この特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。限定されないが、固形腫瘍由来の細胞を含む循環性腫瘍細胞は、原発腫瘍または転移由来であってよく、それらは、その腫瘍に特異的な任意のマーカーまたはマーカーの組み合わせにより特定できる。
【0065】
「目的の遺伝子」または「導入遺伝子」は、タンパク質(構造または調節タンパク質)をコードするのが好ましい。本明細書で使用される場合、「タンパク質」は通常、約10より多いアミノ酸、好ましくは100より多いアミノ酸を含むペプチドおよびポリペプチドを意味し、抗体またはその断片などの複雑なタンパク質を含む。タンパク質は宿主に「同種」(すなわち、用いられる宿主細胞の内在性)であっても、または「異種」(用いられる宿主細胞の外来性)であってもよい。タンパク質は非置換であってもよいが、それらはまた、処理されてもよく、また、糖類などの非タンパク質部分を含んでもよい。
【0066】
哺乳動物細胞には、本発明においては、本発明による未修飾または組換え型細胞を含み、限定されないが、CSC、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、HEK(ヒト胎児腎臓)293細胞、幹細胞または前駆細胞が含まれる。
【0067】
表面上に高レベルの導入遺伝子の発現産物、例えば、治療用タンパク質、または治療用分子の標的タンパク質を発現および好ましくはディスプレイもし、さらに特定の実施形態では、分泌(脱落)する哺乳動物組換え型細胞、従って、導入遺伝子を含む細胞は、本発明の範囲内に入る。特定の実施形態では、導入遺伝子を分泌(脱落)する(その発現およびディスプレイに加えて)組換え型細胞は、発現とディスプレイをしている、発現しているがディスプレイしていない、または目的の導入遺伝子産物の発現さえしていない細胞から、識別/分離される(米国特許出願公開第2012/0231449号を参照されたい。この出願公開は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。産生細胞は、細胞から導入遺伝子産物のディスプレイのみでなく、分泌も行う細胞、すなわち、導入遺伝子産物をその周囲に放出する細胞を意味する。それらの細胞のみが実際に導入遺伝子産物を「産生する」が、多くのその他の細胞は、導入遺伝子産物を単に発現またはディスプレイし得るのみであり、効率的にタンパク質を分泌し得ない。したがって、それらの細胞は、導入遺伝子タンパク質産物を放出することなく、その表面に長期間(2日より長く)ディスプレイし得るのみであり、したがって、「産生細胞」または「高分泌細胞」として分類されない。導入遺伝子産物を、10ピコグラム超で20ピコグラム未満のタンパク質を1日当たり(例えば、ピコグラム/細胞/日(pcd))の量で分泌する組換え型細胞(「産生細胞」)は中産生細胞と見なされ、20超、40超または60pcd超で導入遺伝子産物を分泌する組換え型細胞は高産細胞と見なされ、80pcd超で導入遺伝子産物を分泌する組換え型細胞は極高産生細胞と見なされる。極高産生細胞は、好ましくは、導入遺伝子産物を100pcd超で分泌し得る。どの発現産物もほとんど産生しない細胞(低産生細胞)は、10pcd未満で分泌する。マニュアル手順では、導入遺伝子を分泌する極高を含む高産生細胞を識別するために、分泌、従って、放出は、多くの場合、例えば、温度調節(CHO細胞では、例えば、周囲温度を20℃未満、または4℃未満の温度に保持する)を介して妨害され、分泌されたタンパク質が、十分な時間にわたりそのタンパク質を分泌した細胞の表面上でディスプレイされることが可能となる。好都合にも、多量の導入遺伝子産物をディスプレイする細胞の急速キャプチャーおよび放出に起因して、このような温度調節は通常、本発明においては必要ではなく、18〜40℃、または20〜37℃の操作温度が可能となる。
【0068】
本発明の方法および装置は、10万個を超える、好ましくは100万個を超える、より好ましくは200、300、400、500、600、700、800、900、1000万個の組換え型細胞を、1時間未満、好ましくは20分未満、さらにより好ましくは5分未満以内に選別することができる。産生細胞、特に高および極高産生細胞、従って、導入遺伝子産物を発現し、放出する細胞で、本発明により識別および/または分離される細胞は、識別および/または選別後に、90%超、より好ましくは、95、96、97、98、99%超または100%生存可能である。好ましい実施形態では、導入遺伝子産物をディスプレイしている細胞は、前述で概略を述べた無菌マイクロ流体装置で選択される。
【0069】
本発明においては、高レベルの目的導入遺伝子を発現する哺乳動物細胞の小集団のみが存在する。遺伝子導入後、多様な細胞が導入遺伝子産物を発現し、さらにはディスプレイするが、小集団のみが実際の産生細胞でもある。下記のモデル細胞のリストからわかるように、1日以内に導入遺伝子産物を産生する、すなわち、導入遺伝子産物を放出する/導入遺伝子産物が脱落するという理由で、「F206細胞」のみが望ましい。表面上に同様に高発現あるいはディスプレイしているその他の細胞は望ましくない。理由は、それらは実際に産生細胞ではないかも知れないためである。
−CHO−M(チャイニーズハムスター卵巣細胞)懸濁細胞:これらの細胞はIgGおよびGFPを発現しない。
−F206細胞:これらの細胞は、IgG(IgG)およびGFP(GFP)を発現する。これらは、高IgGディスプレイヤーおよび高IgG産生細胞であり、非常に望ましい。
−BS2細胞:これらの細胞は、IgG(IgG)およびBFP(BFP)を発現する。これらは、中IgGディスプレイヤーおよび中IgG産生細胞であり、望ましくない。
−BLC細胞:これらの細胞は、IgG(IgG)およびBFP(BFP)を発現する。これらは、高IgGディスプレイヤーおよび中IgG産生細胞であり、望ましくない。
−BHB細胞:これらの細胞は、IgG(IgG)およびBFP(BFP)を発現する。これらは、極高IgGディスプレイヤーおよび中IgG産生細胞であり、望ましくない。
【0070】
当業者なら、ほとんどの価値のある細胞は、非常に高速度で導入遺伝子産物を発現し、脱落させる/放出する産生細胞であることを理解するであろう。一般に、高産生細胞は、所定の細胞試料、例えば、5000個〜1000万個の細胞試料、好ましくは100万個〜500万個の細胞試料中で、特定の産物を発現および脱落/放出している細胞の40%超、好ましくは30%超または25%(4分の1)超に相当する細胞である。絶対的には、これは、20pcd超、好ましくは、40、60、80pcd、またはそれ超、更により好ましくは100pcdの速度で導入遺伝子産物を分泌することを意味する。
【0071】
表面上にディスプレイしているが必ずしも分泌していない細胞を識別、および好ましくは選択する必要がある場合、高ディスプレイヤー細胞のみではなく、中および/または低ディスプレイヤー細胞も選択することを考慮した方がよいであろう。1つのタンパク質の高ディスプレイヤーであるが、別のタンパク質の低ディスプレイヤーである細胞を選択することが望ましい場合がある。蛍光抗体で標識する場合、典型的な例では、高ディスプレイヤー細胞は、100〜1000RLU(相対発光量)を示してよく、一方、中ディスプレイヤーは、10〜100RLUを示してよく、低ディスプレイヤーは1〜10RLUを示してよい。RLUは、48時間を超える期間にわたり維持されるのが好ましい。
【0072】
本明細書で使用される場合、「マイクロ流体装置」は、少なくとも1つの寸法(幅、長さ、高さ)が1mm未満であり得る構造体に幾何学的に制約される流体の精密制御および操作を可能とする任意の装置を意味する。マイクロ流体装置の典型的な例では、マイクロ流体チャネルおよびチャンバーが相互接続される。一般に、マイクロ流体チャネル(本明細書では単に「チャネル」)は、少なくとも1つのマイクロメートル(μm)、すなわち10−3メートル(mm)スケールの寸法を有する真のチャネル、溝、または導管である。本明細書で使用される場合、「反応チャンバー」は、細胞が装置を通過するのに伴い、マイクロ流体装置内の、1個または複数個の細胞が、通常は磁気ビーズを介してより大きな細胞集団からのキャプチャーおよび放出により分離され得る領域を意味する。本発明の一実施態様では、反応チャンバーは、10〜500μl、好ましくは20〜200μl、30〜100μl、または、50μlを含む、40〜80μlもしくは40〜60μlの大きさである。反応チャンバーは、丸形、正方形または菱形などの多くの異なる形を有することができる。
【0073】
マイクロ流体チャネルを通る流体の流れは、
Re=LVavgρ/μ
[式中、Lは関連長さ、μは流体粘度、ρは流体密度、およびVavgは流れの平均速度である]として定義されるレイノルズ数(Re)を特徴とすることができるが、これらの流れ特性は、反応チャンバー中で変動し、反応チャンバー内の流れは、1種または複数種の磁界などの外部源により操作することができる。チャネルの小さい寸法のために、Reは通常、100より遥かに小さく、多くの場合1.0未満である。このレイノルズ数の枠組みでは、流れは完全な層流であり、乱流は発生しない。乱流への移行は通常、レイノルズ数2,000の範囲で発生する。
【0074】
反応チャンバーは通常、流体導入および取り出し用の入口チャネルおよび出口チャネルを有する。本発明による流体は、細胞を含有する液体培地であるのが好ましい。マイクロ流体装置および反応チャンバーは、例えば、米国特許出願公開第2013/0217144号および同第2010/0159556号(これらの出願公開は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)で、特にその反応チャンバーの構成および反応チャンバー周辺の磁気装置の設置(4個の電磁石など)に関して開示されている、またはMagPhase(登録商標)(SPINOMIX)の登録商標で市販されている。本発明のマイクロ流体装置はまた、好ましくは、例えば、タンパク質産生能力を評価するための細胞が充填され、反応チャンバーの入口に連結されている少なくとも1つの試料容器;反応チャンバーの入口に同様に連結されている洗浄試薬容器;反応チャンバーの出口に連結されている廃棄物容器、またはこれらの組み合わせを含む、またはそれらに連結されている。
【0075】
本発明のマイクロ流体装置はまた、長さ1cmおよび幅0.5cm未満であり得るカートリッジまたはチップであってもよい。マイクロ流体装置はまた、装置内の流体の動きを制御する部品を含むことが可能で、また、下記の磁石、ポンプ、弁、フィルター、処理システム部品を含めてもよい。したがって、カートリッジを含む、MagPhase(登録商標)(SPINOMIX)装置は、マイクロ流体装置であると見なしてもよい。
【0076】
マイクロ流体装置中での流体の動きは、一部は、毛細管力などの受動的な力に基づいている。しかし、本発明においては、反応チャンバー内で磁気ビーズおよび組換え型細胞の懸濁液を動かすために、圧力、吸引および磁力などの外力が追加で加えられ、本発明の流体が輸送または混合される。外力は、計算処理ハードウェアを含む処理システムにより駆動されてもよい。
【0077】
標準的オペレーティングシステムを使った、容易に利用可能な計算処理ハードウェアリソース、例えば、Intel x86またはPentiumチップ適合可能なDOS(登録商標))、ウインドウズ、リナックス(登録商標)、マッキントッシュまたはSUNの、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)ように簡単なハードウェアを、本発明の統合システムで使用するために、本明細書で提供される教示に従って採用および改造することができる。ソフトウェアテクノロジーにおける最新の技術は、本明細書で教示の方法をコンピュータシステム上で実行可能とするのに適する。したがって、具体的実施形態では、本発明は、本明細書で教示された1つまたは複数の方法を実行するために、一組の論理命令(ソフトウェアまたはハードウェアコード化命令)を含むことができる。例えば、データおよび/または統計分析を提供するためのソフトウェアを、ビジュアルベーシック、フォートラン、ベーシック、ジャバなどの標準的なプログラミング言語を使って、当業者が構築することができる。このようなソフトウェアはまた、種々の統計プログラミング言語、ツールキット、またはライブラリーを利用して構築することができる。
【0078】
マイクロ流体装置内の異なるモードの操作、特に反応チャンバー内での操作は、当業者ならわかるように、データ処理システムにより決定され得る。特に、データ処理システムは、操作モードを決定する周波数および磁力を決定し得る。目的の細胞の選択に向けた一連の操作モードは、操作周期と呼ばれる。1つの操作周期は、20分未満、15分未満、10分未満または5分未満であってよい。当業者なら、反応チャンバーの寸法および形状、磁気ビーズの形および/または材料または磁気装置の設計などのパラメータに応じて、下記の異なる操作モードを調節する必要があり得ることを理解するであろう。
【0079】
混合モード:本発明においては、混合モードは、反応チャンバー中で、キャプチャービーズが導入遺伝子産物をディスプレイしている細胞をキャプチャーするように、流体内に含まれる粒子が最も適切に混合される反応チャンバー内の操作モードを表す。混合モードは、100、90、80、60、50または40秒未満の時間続いてよい。
【0080】
2種以上のビーズ、好ましくは、1種のキャリアビーズと、もう1種の官能化キャプチャービーズ(例えば、強磁性および超常磁性ビーズ)の2種のビーズを混合してよい。
【0081】
反応チャンバー中での均一混合のためには、制御可能な磁気装置(単一または複数)、例えば、MagPhase(登録商標)4装置中に配置されたマイクロ流体装置の反応チャンバーのまわりに配置した電磁石が、好ましくは、例えば、循環モードまたは別の交互モードで、0.1〜1000ヘルツ(Hz)の範囲の周波数および0.1〜10,000ミリアンペア(mA)の範囲の電流量下、しかし、好ましくは、中〜高周波数(40Hz〜500Hz、例えば、100〜150Hz)および高磁力(200〜500mA、例えば、より好ましくは300mA)下で操作され、それにより、例えば、キャリアビーズ、例えば、強磁性ビーズが、チャンバーの壁の近傍を回転し、同時に、キャプチャービーズ、例えば、超常磁性ビーズが分散されて、緩やかにチャンバーの中央で回転される。超常磁性ビーズの空間分布を最適化するために、例えば、電磁石は、好ましくは、例えば、時計方向回転および反時計方向回転で励起され、例えば、0.5秒〜30秒間、例えば、1秒間の時計方向回転に、続けて、0.5秒〜30秒間、例えば、1秒間の反時計方向に回転させ、その後、5〜100秒間、例えば、10秒間の時計方向回転により連続して励起される。この混合モードは、キャプチャービーズを細胞とインキュベートして、ディスプレイ細胞をキャプチャーするために使用される。
【0082】
キャプチャーモード:本発明においては、キャプチャーモードは、反応チャンバー中で、キャリアビーズがキャプチャービーズ(キャプチャービーズに結合しているディスプレイ細胞を有するのが好ましい)をキャプチャーする反応チャンバー内の操作モードを表す。1つの操作周期では、キャプチャーモードは、100、90、80、60、50または40秒未満の時間続いてよい。
【0083】
循環方式で操作を続けて、周波数を、例えば、0.5〜40Hz、例えば、1Hzに下げ、磁力を、例えば、300〜600mA、例えば、400mAに上げることにより、キャリアビーズは、チャンバー全体にゆっくり回転することになる。キャリアビーズは、チャンバー容積を「スキャン」して、キャプチャービーズをキャプチャーする。キャリアビーズの残留磁化は、キャリアビーズに小さい永久磁石としての役割をさせ、キャプチャービーズ、ならびに結合した細胞も可能な限り引き付け、キャリアビーズがそれらに結合するであろう。これは、次のステップに記載の、これらの複合体をチャンバーの隅にキャプチャーするための準備である。
【0084】
固定化モード:本発明においては、固定化モードは、例えば、洗浄ステップにおいて、キャリアビーズ、キャプチャービーズおよび細胞の複合体をチャンバーから移動させることなく、さらなる流体が反応チャンバーを通って移動可能となる位置に、反応チャンバー中のこれらの複合体を局在化させる操作モードを表す。1つの操作周期では、固定化モードは、100、90、80、60、50または40秒未満の時間続いてよい。
【0085】
マイクロ流体装置の磁気装置(単一または複数)は、ここでは、例えば、2x2の配置で0Hzおよび高磁力(例えば、300〜600mA、例えば、400mA)の永久磁石として動作する。結合したキャリアおよびキャプチャービーズは、チャンバーの隅に保持されて、新しい溶液(例えば、懸濁液中の細胞または洗浄緩衝液)がチャンバー中に送入され、チャンバー中に存在する溶液(例えば、望ましくない細胞)のチャンバーからの送出が可能となるであろう。
【0086】
ビーズ分離モード:洗浄ステップの後で、ステップ1の混合モードと同様にして、ビーズ分離が行われ、高周波数(例えば、40Hz〜500Hz、例えば、100〜150Hz)によりキャリアビーズをキャプチャービーズから引き離すのが可能となる。ビーズは、混合モードの場合と同じまたは類似の空間分布をとるのが好ましく、すなわち、キャリアビーズは壁の近くを回転し、キャプチャービーズはチャンバーの中央の周りをよりゆっくりと移動するのが好ましい。
【0087】
混合モードと同様に、1つの操作周期のビーズ操作モードは、100、90、80、60、50または40秒未満の時間続いてよい。
【0088】
回収モード:ビーズが分離された後で、「ビーズ固定化」モードが適用される。このモードでは、目的の細胞を含むキャプチャービーズ、または目的の細胞のみ(それらの磁気標識の消失後)が反応チャンバーから回収/溶出され、同時に、キャリアビーズはチャンバー内に固定される。1つの操作周期では、回収モードは、80、60、50、40、30、20、10、5、4、3、2秒未満の時間続いてよい。
【0089】
回収モードは、例えば、40Hz〜500Hz、例えば、100Hzの高周波数および30〜300mA、例えば、100mAの中程度の磁力で行ってよい。高周波数および中磁力は、短時間(1〜50秒、例えば、3秒)適用され、磁界に対するキャリアビーズの強力な応答に起因して、キャリアビーズのみがチャンバーの隅に移動するのに十分な時間を確実に有するようにする。例えば、磁界配向に応答して、キャプチャービーズの内部磁気モーメントが方向を切り替え、これによりキャプチャービーズのチャンバー隅への移動を防ぐように、100Hzの周波数が適用される。キャリアビーズはその後、チャンバーの中央部の懸濁液中にとどまり、チャンバー中に空気を圧送することにより、それらの溶出および結合細胞の溶出を可能とするであろう。
【0090】
キャプチャーされた細胞(例えば、磁気標識細胞(MLC))に結合した磁気ビーズをさらなる分離に供してもよい。この分離中、磁気ビーズに対する結合を媒介するタンパク質が細胞から放出される(分泌される)ために、そのタンパク質への結合を磁気ビーズが失う場合、細胞は磁気ビーズから分離する。48時間未満、好ましくは36時間未満、またはさらに好ましくは24時間未満で、磁気ビーズに対する結合を失う細胞は、さらにその後で磁気ビーズを失う細胞から分離される。48時間未満、36時間未満または24時間未満で、磁気ビーズを失う細胞は、高産生細胞/分泌細胞または極高産生細胞/分泌細胞として分類/それについて検査される。
【0091】
治療用タンパク質発現細胞を選別する試験研究
蛍光分子またはビオチン分子または磁気微小粒子に結合した抗体を使ったCHO分泌細胞の標識に基づいて、多量の組換え型治療薬を分泌する哺乳動物細胞の迅速で効率的なキャプチャーを可能とする方法の開発が、本発明を例示するために本明細書で詳細に記載される。
【0092】
CHO細胞を20℃または40℃に置くことが一時的に分泌を妨害し、分泌タンパク質が24時間まで細胞表面上にディスプレイされることは、以前に示した。分泌タンパク質に対する蛍光抗体を使って、細胞をそれらのタンパク質ディスプレイ能に比例して標識することができる(Sen,Hu et al.1990,Brezinsky,Chiang et al.2003,Pichler,Hesse et al.2009)。
【0093】
したがって、類似の手法を、ディスプレイのみでなく、実際に治療用タンパク質を分泌するCHO細胞を標識するために評価した。細胞をMagPhase(登録商標)選択カートリッジの反応チャンバー内で磁気粒子を使って標識した。この手法は、直径1〜10μmの磁気粒子に依存する。制御された磁界および磁気粒子の混合に与える効果は、MagPhase(登録商標)システムの基盤を形成し、該システムは、細胞と粒子を混合し、細胞と磁気粒子が結合して磁気標識細胞を形成し、最も高度に磁気標識された細胞を選別および固定化するように設計される。その他の細胞は、MagPhase(登録商標)ポンプ作働チャネルを通って洗い流された。その後、高度発現細胞および粒子が磁界から放出され、最終的に、高産生細胞が、MagPhase(登録商標)反応カートリッジから無菌のおよび使い捨て型の細胞培養皿中に溶出される。コンピュータ制御磁界およびカートリッジのマイクロ流体入口および出口を操作するポンプによって、100,000個を超える、好ましくは百万個またはそれを超える細胞集団の処理を、数分以内に、例えば、30分未満、20分未満、または10分未満で可能とするように、このプロセスに適合させ、そのプロセスを迅速な自動細胞処理のために最適化することが可能となった。
【0094】
1.参照用としての安定遺伝子導入CHO細胞株の生成
該方法の開発を容易にし、細胞選別の能力を評価するために、治療用タンパク質、すなわち、免疫グロブリン、ならびに、抗体を分泌する細胞をより容易に追跡するための蛍光レポータータンパク質の両方を発現する第1のレポーター細胞を設計した。治療用免疫グロブリンガンマ(IgG)および抗生物質選択マーカーのための発現ベクター、ならびに蛍光タンパク質、「高感度緑色蛍光タンパク質」または「高感度青色蛍光タンパク質2」(EGFPまたはeBFP2)コードプラスミドをCHO細胞に同時遺伝子導入した。種々のレベルの免疫グロブリンを安定に発現しているポリクローナル集団をBFPおよび表面IgGディスプレイに基づいてFACSにより選別し、その後、IgG産生をELISAにより評価した(図1)。同時に、GFPとIgGまたはBFPとIgGを発現しているモノクローナルCHO細胞集団(例えば、細胞クローン)を限界希釈法により選択した。IgG分泌をELISAアッセイにより評価した。種々のレベルの表面IgGを発現しているが、低/中レベルのIgG産生クローンを、参照細胞集団として選択した。
【0095】
以下の細胞株を生成し、参照細胞として使用した(図2)。
−CHO−M懸濁細胞(IgGなし、GFPなし)
−F206−IgG、GFP:高IgGディスプレイヤーおよび高産生細胞、望ましいクローン。
−BS2−IgG、BFP:中IgGディスプレイヤー、中IgG産生細胞、望ましくないクローン。
−BLC−IgG、BFP:中IgGディスプレイヤー、中IgG産生細胞、望ましくないクローン。
−BHB−IgG、BFP:極高IgGディスプレイヤー、中IgG産生細胞、望ましくないクローン。
【0096】
興味深いことに、これらのクローンの特性評価により、図2Aで評価したように、一時的なタンパク質のディスプレイは、細胞の力価および比生産性により示される実際の分泌比率と相関しないことが示された(図2Bおよび2C)。これは、選別方法では、組換え型細胞の表面のタンパク質の表面からの放出(「脱落」)のない単なるディスプレイから適正なタンパク質分泌を識別することができなければならないことを示している。
【0097】
2.磁気粒子を使ったマニュアル細胞キャプチャーアッセイの検証
IgGを発現しないか、または種々の既知のレベルのIgGを発現している細胞集団と、多量のトラスツズマブ治療用IgGおよび同時発現GFPを分泌するF206クローン由来の所定の数の細胞とを混合した。この細胞を、ヒトIgGの定常部分に結合するビオチン標識二次抗体とインキュベートし、その後、ストレプトアビジンに結合した磁気微小粒子(Dynabeads MyOne T1(登録商標)、Invitrogen(登録商標)、#65601)とインキュベートした(図3)。それぞれの洗浄後、細胞の試料を保持し(回収1〜3と表される)、細胞培地中に入れ、選択せずに細胞を10日間増殖させた。その後、発現細胞から非発現細胞を識別するために、表面IgGディスプレイに関し細胞を評価した。図4に示すように、続けて洗浄する毎に、陰性細胞の割合が減り、3回目の洗浄後、ほとんど100%の陽性細胞が回収された。
【0098】
3.MagPhaseマイクロ流体装置を使った抗体発現細胞キャプチャーの原理
マニュアルキャプチャープロセスが確立されると、MagPhase(登録商標)装置でそれを実行し、治療用ヒトIgGを発現しているCHO−M(Selexis(登録商標))細胞をキャプチャーすることが試みられた。
【0099】
MagPhase(登録商標)装置は、マイクロチャネルおよび磁気ビーズを充填された50μL反応チャンバーを収容するように設計された単回使用カートリッジでの使用に適する必要がある。図5は、採用された、生細胞の無菌選別および回収に特に最適化されたカートリッジ設計を示す。カートリッジは、異なる溶液(懸濁液中の細胞、洗浄緩衝液)の添加、ならびに磁気粒子の混合、非発現細胞の洗い流し、および最終的に、磁気ビーズに結合した細胞の溶出を可能とするように設計された。実験時間および汚染リスクを大きく減らすために、マニュアルキャプチャーの全プロセスが完全自動化方式で機能するように適合された。
【0100】
マニュアルキャプチャープロトコルでは、超常磁性ビーズを使用した。この超常磁性ビーズは、残留磁化を持たず、磁界が取り除かれると、非磁気粒子として振る舞う(図6)。したがって、超常磁性ビーズは、ビーズが溶液中に完全に再懸濁され、抗体が細胞表面から脱落する(これは、37℃で約24時間後に起こり得る)と、細胞がビーズから遊離されるために、本件の状況では、細胞選別用途にとって好ましい(図7)。
【0101】
しかし、マニュアル選別プロトコルのMagPhase(登録商標)装置への適合に関しては、いくつかの問題が生じた。MagPhase(登録商標)装置の電磁石は、手持ち式永久磁石と比較すると、磁界強度が低いために、マニュアルキャプチャープロトコルで使用された超常磁性ビーズは、この装置の電磁極で操作できなかった(図6)。強磁性ビーズは、その残留磁化および磁界に対する強い応答のために、MagPhase(登録商標)技術でうまく機能し、広範囲の操作モードにおけるカートリッジチャンバー中で強磁性ビーズを作働させることができる。
【0102】
IgG発現細胞をキャプチャーするために、MagPhase(登録商標)で機能することが知られているストレプトアビジンをコートした強磁性ビーズを、ビオチン化抗IgG抗体で標識されているIgGを発現し、分泌している細胞と混合した。しかし、強磁性マイクロビーズの残留磁化により相互に引き合い、細胞を捕集した凝集体を形成し、それらの細胞を死滅させるに至った(図8)。さらに、その凝集体を培養した後で、細胞がビーズから放出されなかった(データは示さず)。
【0103】
そのため、2種のタイプの磁気ビーズ混合物を採用した。下記に示すように、この方法により、非官能化強磁性ビーズの存在下で、MagPhase(登録商標)による官能化超常磁性ビーズの取り扱いが可能となった。
【0104】
初期の試みでは、最良の細胞が選別できず、むしろ、タンパク質発現レベルに関係なく、細胞の選別を媒介した。したがって、このプロセスを、高発現細胞のみを保持するように改善する必要が生じた。我々は、種々のMagPhase(登録商標)操作モードの周波数および磁気強度、細胞および粒子力価、高産生細胞の通常細胞集団に対する比率、二次抗体の選択、キャプチャー条件、磁気混合速度および期間、ならびに磁気標識細胞の溶出条件、などの種々のパラメータを変更し、評価した。
【0105】
4.MagPhase操作に適する磁気ビーズの特定
これらの調査の過程で、MagPhase(登録商標)による適切な取り扱いの観点、ならびにCHO細胞との特異的および非特異的相互作用の観点から、様々な種類の市販マイクロビーズおよびビーズ比率を試験し、最良の結果を与えると思われる条件を特定した。これには次のものを含めた。
強磁性マイクロビーズ:
−Chemicell(登録商標))FluidMAG(直径5.0μm)
−Chemicell(登録商標)SiMAG(直径1.0μmまたは2.0μm)
超常磁性マイクロビーズ:
−Dynabeads(登録商標)M280 2.8μm
−Dynabeads(登録商標)MyOne T1 1.0μm
−Ademtech(登録商標) 300nm
【0106】
カートリッジ中の様々な種類のマイクロビーズの目視識別が可能である。理由は、それらのビーズは、異なる色、すなわち、強磁性ビーズは黒色、超常磁性Dynabeads(登録商標)は淡褐色を呈するためである。MagPhase(登録商標)の操作中のマイクロビーズの目視検査により、1〜5μLの強磁性ビーズ体積の場合の、チャンバー内の超常磁性ビーズの均一で緩やかな混合において、設定条件下での強磁性対超常磁性マイクロビーズの最良の体積比は、約1:10であることが示唆された。より多くの強磁性ビーズを使用すると、超常磁性ビーズの混合時に、壁近傍に強磁性ビーズを維持するのが困難になった。より少ない強磁性ビーズを使用すると、超常磁性ビーズを効率的に捕捉し、洗浄中に超常磁性ビーズをカートリッジの壁上に固定するのが困難になり、超常磁性ビーズ結合CHO細胞の減少に繋がった。
【0107】
20〜30μLの体積の超常磁性ビーズの充填は、我々のマニュアル細胞単離用のプロトコルに基づいたものであった。細胞の適切な密度は、50μLのチャンバー体積に対し、約1.0x10個の細胞/mlであることが明らかになった。ビーズの細胞に対する比率は、製造者により推奨された通りで、例えば、2.8μmのDynabeads(登録商標)M−280(Invitrogen、#60210)を6.5x10個/mL、1.0μmのDynabeads(登録商標) MyOne T1(Invitrogen、#65601)を9x10個/mLとした。MagPhase(登録商標)チャンバーの体積は50μLで、1x10個の細胞/mLを含む試料が充填されているので、20μLの超常磁性ビーズにより、M−280ビーズで26:1、MyOne T1ビーズで360:1のビーズ:細胞の比率が得られる。ビーズの直径および数の差異を考慮して、我々は、等量のMyOne T1ビーズがM−280のほぼ2倍の表面を有し、したがって、M−280ビーズより優れた能力を有すると結論付けた。
【0108】
MagPhase(登録商標)の操作範囲0〜400Hzおよび0〜500mAを使ってビーズを試験した。しかし、MagPhase(登録商標)による磁気マイクロビーズの適切な取り扱いには、最適条件が必要であった。例えば、適切に決定された条件下で、強磁性ビーズはチャンバーの壁の周りを回転し、チャンバーの中央部分に局在化せず、一方、超常磁性ビーズは、全チャンバー体積をカバーする広い空間に分布して、緩やかにチャンバー全体で混合される。確立されると、下記の節5で定められるように、これらの最適化条件により、「ビーズ分離モード」の実現が可能となった。しかし、最適条件は、マイクロビーズのタイプとサイズに応じて変化することが明らかになり、また、MagPhase(登録商標)による適切な取り扱いは、次の節で記載のように、特定のタイプのマイクロビーズおよび操作条件を使った場合にのみ実現することができた。
【0109】
超常磁性ビーズ:
Dynabeads(登録商標)M−280およびMyOne T1:両方とも、MagPhase(登録商標)の種々の操作モード中、強磁性ビーズの存在下で操作することができた。しかし、より良好な空間配分が得られるという理由で、MyOne T1ビーズを選択した。M−280と比較して、それらのより弱い磁化は、プロセスの終わりでの強磁性ビーズからの分離および回収を容易にした。それらの1.0μmのサイズにより、2.8μmのマイクロビーズよりも、CHO細胞と結合するための特異的相互作用を可能とすることも明らかになった。
【0110】
Ademtech(登録商標)300nm:磁化が弱すぎて、強磁性ビーズにより捕捉されること、固定されることが困難になるので、これらのビーズは自動分離に適するものではなかった。
【0111】
強磁性ビーズ:
Chemicell(登録商標)FluidMAG 5.0μm:これらは、Chemicell(登録商標)SiMAGより磁気的に弱いが、一定の範囲の周波数および磁力、例えば、100〜200Hzおよび200〜300mA中で、効率的な混合を可能とした。下記で記載するように、これらの強磁性ビーズに対し、最適混合条件は150Hzおよび200mAであると定めることができた。下記の節で示すように、このような条件下で、混合または細胞キャプチャーモードにおいて、それらはチャンバー壁のまわりを回転し、均一で迅速な超常磁性ビーズの空間配分を可能とした。しかし、Chemicell FluidMAGは、このビーズのシリカ表面へ非特異的結合をする非発現CHO細胞との結合を減らすために、デンプン層でコートする必要があった。
【0112】
Chemicell(登録商標)SiMAG 1.0μmおよび2.0μmは、FluidMAGより強い磁性を有し、したがって、より広い範囲のMagPhase(登録商標)パラメータ、例えば、50〜300Hzおよび200〜400mAで、効率的混合が可能となる。それにもかかわらず、次の節で示すように、「ビーズ分離モード」および「回収モード」におけるこれらのマイクロビーズに関し、最適条件は、100Hzおよび300mAと設定することができた。このような条件では、これらのビーズは、混合チャンバー壁近傍を回転し、FluidMAGビーズより迅速にチャンバーの隅で再編成され、超常磁性ビーズを強磁性ビーズと共に捕集および固定する可能性も減らし、それにより、FluidMAGビーズに比べて、細胞回収が増加する。
【0113】
5.MagPhase操作パラメータの設定および最適化
高発現細胞を単離するために、MagPhase(登録商標)チャンバー中で強磁性および超常磁性粒子の両方を混合するというこの革新的手法のためのプロセスは、5つのステップで表すことができる。
【0114】
混合モード(図9):このモードでは、2種のタイプのビーズが別々に混合される。均一混合を行うために、4個のMagPhase(登録商標)電磁石を中から高周波数(例えば、100Hz)および高磁力(例えば、300mA)下、循環モードで操作する必要がある。これにより、強磁性ビーズがチャンバーの壁の周りを回転し、同時に、超常磁性ビーズが分散して、チャンバーの中央で緩やかに回転することが保証される。超常磁性ビーズの理想的な空間配分を実現するために、電磁石は、時計方向回転を1秒、続けて、反時計方向回転を1秒、その後時計方向回転を10秒の回転で連続的に励起された。この混合モードは、キャプチャービーズ、この場合は、超常磁性ビーズを細胞と共にインキュベートして発現細胞をキャプチャーするために使用され、また、洗浄ステップのためにも使用される。
【0115】
キャプチャーモード(図10):循環方式でのMagPhase(登録商標)の操作モードを維持するが、周波数を1Hzに減らし、磁力を高める(例えば、400mA)ことにより、強磁性ビーズがチャンバーの全体にわたりゆっくり回転した。強磁性ビーズは、チャンバー容積を「スキャン」して、超常磁性ビーズをキャプチャーする。強磁性ビーズの残留磁化は、強磁性ビーズに小さい永久磁石としての役割をさせ、超常磁性ビーズ、ならびに結合した細胞も可能な限り引き付け、強磁性ビーズがそれらに結合するであろう。これは、次のステップに記載の、これらの複合体をチャンバーの隅に保持するための準備である。
【0116】
固定化モード(図11):MagPhase(登録商標)の電磁極は、ここでは、0Hzおよび高磁力(例えば、400mA)の2x2の永久磁石として動作する。結合した強磁性および超常磁性ビーズは、チャンバーの隅に保持されて、新しい溶液(例えば、懸濁液中の細胞または洗浄緩衝液)をチャンバー中に送入し、チャンバー中に存在する溶液(例えば、望ましくない細胞)をチャンバーから送出することが可能となった。
【0117】
ビーズ分離モード(図12):洗浄ステップの後で、ステップ1の混合モードと同様にして、ビーズ分離が行われ、高周波数(例えば、100〜150Hz)により超常磁性ビーズを強磁性ビーズから引き離すのが可能となる。ビーズは、混合モードの場合と同じ空間分布をとる、すなわち、強磁性ビーズは壁の近くを回転し、超常磁性ビーズはチャンバーの中央の周りをよりゆっくりと移動する。
【0118】
回収モード(図13):ビーズが分離された後で、周波数100Hzおよび磁力100mAの「ビーズ固定化」モードが適用される。高周波数および中磁力が、短時間(3秒)適用され、磁界に対する強磁性ビーズの強力な応答に起因して、強磁性ビーズのみがチャンバーの隅に移動するのに十分な時間を確実に有するようにする。磁界配向に応答して、超常磁性ビーズの内部磁気モーメントが方向を切り替え、これにより超常磁性ビーズのチャンバー隅への移動を防ぐように、100Hzの周波数が適用される。超常磁性ビーズはその後、チャンバーの中央部の懸濁液中にとどまり、チャンバー中に空気を圧送することにより、超常磁性ビーズおよび結合細胞の溶出を可能とするであろう。
【0119】
IgG発現細胞の効率的濃縮は、MagPhase(登録商標)細胞キャプチャープロセスの各ステップおよびパラメータを最適化することにより、実験的に決定される特殊操作モードを必要とする。当業者ならわかるように、例えば、反応チャンバーのサイズまたは電磁石の構成が変更される場合には、一旦決定されたこれらの操作モードを容易に調節することができる。
【0120】
まず、洗浄モードが最適化された。F206細胞を、BS2細胞と50:50またはBLC細胞と30:70の比で混合した。細胞混合物をビオチン化抗IgG KPL抗体と共にインキュベートし、標識された混合物を異なる洗浄モード、すなわち、所定の全体の条件下で、特定の装置を使って見つけ出された「最適」モード(120Hz、300mA)、または「高速」モード(200Hz)、「強力」モード(400mA)または「高速+強力」モード(200Hz、400mA)を使って、MagPhase(登録商標)キャプチャーに供した。20μLの超常磁性ビーズ(MyOne T1 Dynabeads、ストレプトアビジンコート、1.0μm)および2μLの強磁性ビーズ(Chemicell FluidMAG/MP−D、5.0μm、デンプンコート)を混合チャンバー中にプリロードした。全ての他のパラメータを図9〜13のデフォルトパラメータとした。最適洗浄モードは、BS2細胞からのF206細胞の2倍濃縮、およびF206細胞のBLC細胞からの2.5倍濃縮を可能とした。両方の実験は、「高速」および/または「強力」洗浄モードは、目的のF206細胞の減少を引き起こし、したがって、より低い濃縮となった。これは、高レベルのIgGを分泌する細胞(F206)は、より低レベルで発現しているBS2細胞、および表面に高レベルのIgGをディスプレイしているがそれを効率的に分泌していないBLC細胞から分離することができるという第1の証拠が得られる(図2)。この最適洗浄モードを次のアッセイで使用した。
【0121】
次に、MagPhase(登録商標)選別プロセス中で、細胞キャプチャー時間を最適化した。1μLのChemicell(登録商標)SiMAG 1.0μmビーズおよび20μLのMyOne T1 Dynabeads(登録商標)を混合チャンバー中にプリロードした。F206細胞を、非発現CHO−M細胞と10:90の比で混合した。ビオチン化された抗IgG標識細胞を、2秒〜5分の範囲の異なる時間のインキュベーションによるMagPhase(登録商標)キャプチャーに供した。CHO−M細胞から回収したF206細胞のパーセンテージに換算して、2秒、5秒および10秒のインキュベーション時間では、全て5倍の濃縮が得られた(図15A)。回収したF206細胞の収率に関して、5秒のインキュベーションは、全ての試験条件中で最高の収率を示し、これは、例えば、2秒のインキュベーションで得られた収率より2倍大きい(図15B)。このアッセイはまた、図15Bに示すように、おそらくCHO−M細胞の非特異的結合の増加に起因して、より長いインキュベーション時間が、より低いF206濃縮比率を生じたことを示した。
【0122】
最後に、強磁性ビーズと超常磁性ビーズとの間の最適比率を決定した。F206およびCHO−M細胞を上記のように混合、事前標識した。混合チャンバー中で、1または2μLのChemicell(登録商標)SiMAG 1.0μm、ならびに5μL、10μL、20μLまたは30μLのMyOne T1 Dynabeads(登録商標)をプリロードした。図16Aに示すように、強磁性と超常磁性ビーズの1:30の比は、CHO−M細胞からのF206細胞の最高の濃縮(すなわち、5倍)を示した。強磁性ビーズが2μLに増やされると、1μLの強磁性ビーズの場合に得られた結果に比べて、F206細胞の濃縮が半分になった(図16B)。これは、おそらく、以前に検出された非発現CHO−M細胞の強磁性ビーズへの非特異的結合に起因したものであろう。
【0123】
6.MagPhaseを使ったタンパク質発現細胞の濃縮
最適化MagPhase(登録商標)細胞キャプチャー手順を使って、我々は、非発現細胞(CHO−M細胞)ならびに中、高、または極高IgGディスプレイヤー(すなわち、それぞれ、BS2、BLCおよびBHB細胞、図2参照)からの高産生細胞(すなわち、F206細胞)濃縮能を分析した。
【0124】
我々は最初に、8:92のF206:CHO−M比のF206およびCHO−M細胞混合物に対するMagPhase(登録商標)を試験した。混合チャンバー中にプリロードした20μLの超常磁性ビーズ(MyOne T1 Dynabeads(登録商標)、ストレプトアビジンコート、1.0μm)および2μLの強磁性ビーズ(Chemicell(登録商標)FluidMAG/MP−D、5.0μm、デンプンコート)の組み合わせを使用して、MagPhase(登録商標)では、投入細胞混合物に比べて、その回収物中で6倍のF206細胞を濃縮できた。投入で、高産生細胞F206細胞と非発現CHO−M細胞との間の比を40:60に設定した場合、MagPhase(登録商標)処理後のF206細胞の収率が73%に増加したが、F206細胞の増加倍率は、2倍に低下した(図17B)。この結果は、F206細胞による超常磁性ビーズの飽和により説明することができ、これらの条件下でのキャプチャーの上限値が高発現細胞の約70%に相当することを示唆している。
【0125】
同じ強磁性と超常磁性ビーズとの比およびMagPhase(登録商標)操作モードを使って、その後、我々は、高分泌/産生細胞のF206細胞を中および高ディスプレイBS2、BLCおよびBHB細胞から濃縮するMagPhase(登録商標)の能力を試験した。投入で、F206細胞をBS2細胞と40:60の比に混合した場合、MagPhase(登録商標)はF206細胞の2倍の濃縮を達成し(図18A)、これは、40:60の投入比の場合(図17B)のCHO−M細胞からのF206細胞の濃縮結果と類似であった。さらに、30/70の投入比率でBLC細胞と混合した場合、MagPhase(登録商標)により、BLC細胞からF206細胞が2倍濃縮され(図18B)、これはF206細胞で観察されたより高い分泌比率と強く相関している。高分泌/産生細胞のF206細胞を極高ディスプレイヤーのBHB細胞と40:60投入比で混合した場合、MagPhase(登録商標)は、F206細胞を濃縮しなかった(図18C)。これは、たとえBHB細胞がより高いIgG量を分泌せず、したがって、高ディスプレイヤーであるが高分泌細胞ではないで場合であっても、BHB細胞が、F206細胞より遥かに多い量のIgGをディスプレイするという事実とよく相関した(図2)。全体として、我々は、MagPhase(登録商標)により、中または低産生細胞中から選択的に高分泌細胞を濃縮することができると結論付け、このことがまた、細胞選別プロセスの選択性をさらに最適化するように我々を促すことになった。
【0126】
MagPhase(登録商標)自動キャプチャーにより得られた捕捉効率をマニュアルキャプチャーに対し比較するために、ビオチン化抗IgG抗体標識F206/CHO−M細胞(比率10/90)およびF206/BS2細胞(比率40/60)をMagPhase(登録商標)またはマニュアルキャプチャーに供した。産出物中のF206細胞パーセンテージの増加倍率の観点では、MagPhase(登録商標)は、マニュアルキャプチャーによるCHO−M細胞からF206細胞の9倍濃縮に比べて、5倍の濃縮であった(図19A)。しかし、高発現細胞の単離を目的とする安定な遺伝子導入から得られると思われる、より高い産生細胞と中産生細胞との混合物というより有用な状況では、BS2細胞からF206の選別に関し、MagPhase(登録商標)は、マニュアルキャプチャーより著しく高い性能をもたらした(図19B)。これは、MagPhase(登録商標)が、マニュアルプロセスよりも、必要とする時間が短いこと、実験者の取り扱いおよび労力が少ないことに加え、より高い産生細胞のより良好な選択的選別を可能にすることを示す。
【0127】
7.MagPhase無菌キャプチャーは、モノクローナル細胞集団からIgGディスプレイ細胞および高分泌細胞を濃縮する
7.1 MagPhase無菌キャプチャーおよびキャプチャーされた細胞/ビーズの分離タイミング最適化
MagPhase(登録商標)は非発現または中発現細胞から抗体高発現細胞を濃縮できることが確立されたので、我々は最初に、キャプチャーが無菌環境中で行い得るかどうかを試験した。この目的のために、層流フード中で、16mLの8%Javal溶液(Reactol(登録商標)lab、#99412)、16mLの10%Contrad90溶液(Socochim(登録商標)、#Decon90)および32mlの無菌Milli−Q水で洗浄することにより、元のMagPhase(登録商標)装置の内部液体処理マイクロ流体チャネルを最初に滅菌した。後の段階で、最適化プロセスおよび使い捨てカートリッジ設計が開発された際に、キャプチャーを行う前に、カートリッジをガンマ線照射(24Kグレイ)により滅菌した。
【0128】
F206およびCHO−M細胞の10:90〜20:80比の混合物の投入を使用した。図17のパラメータを使用して、これらの投入をMagPhase(登録商標)無菌キャプチャーに供した。MagPhase(登録商標)キャプチャーから回収した細胞およびビーズ、ならびに対照としての一定分量の投入細胞を、我々の以前の試験でMagPhase(登録商標)からの溶出細胞の生存率がCB5栄養素の混合により向上したので、5%のCell Boost5補充剤(CB5、Flyclone,Thermo Scientific(登録商標)、#SH30865.01)と共に、抗生物質選択なしに、培養した。キャプチャー後、手持ち式磁石を使って、MagPhase(登録商標)キャプチャー細胞を放出したビーズから分離し、MagPhase(登録商標)からの溶出の1日後に自然にビーズから解離していた細胞のみを回収した。回収した細胞を抗生物質選択なしで、CB5を含む培養液に戻し、16日間培養した後、回収した細胞の表面にディスプレイしたIgGの分析を行った(図20A)。この培養時間は、微生物の汚染の非存在を保証し、キャプチャーが無菌条件下で成功裏に行われたことを意味する。
【0129】
7.2 MagPhase無菌キャプチャーのための前培養条件の最適化
MagPhase(登録商標)を使った無菌キャプチャー後に、投入細胞をCB5フィードで処理した場合、1日目に回収された細胞は、MagPhase(登録商標)無菌キャプチャーに供さなかった細胞に比べて、F206細胞の5.6倍濃縮であった(図20A)。この濃縮は、類似の投入細胞混合物のMagPhase(登録商標)非無菌キャプチャーで得られた結果(図17A)と一致した。しかし、投入F206およびCHO−M細胞混合物を、MagPhase(登録商標)選別の前に、5%のCB5補充剤の存在下で前培養した場合、1日目に分離された細胞は、F206細胞の2倍濃縮に過ぎなかった(図20B)。ビーズから解離した細胞の回収前に、残存する細胞およびビーズ混合物をさらに3日目まで培養した場合、類似の結果が得られた。これは、細胞選別ステップの前にフィードが加えられた場合、フィードが細胞キャプチャーを妨害したことを示唆している。
【0130】
選別プロセスの前に、培地中へのCB5フィード添加の有りまたはなしの場合に培養されたF206細胞のマニュアルまたはMagPhase(登録商標)装置媒介キャプチャーを同時に行うことにより、この可能性を直接評価した。この場合も、CB5なしに行った前培養に比べて、両方のキャプチャー方法で、前培養液中のCB5の存在が、産出物中のF206細胞の増加倍率を有意に低下させた(p<0.01)(図20C)。これらの結果は、前培養液中のCB5の存在が、おそらく、F206細胞と磁気ビーズとの相互作用を大きく妨害し、したがって、細胞をMagPhase(登録商標)キャプチャーの前にCB5なしに培養する必要があることを示す。1つの考えられる説明は、フィードがビオチンを含み、これが細胞結合ビオチン化抗体とストレプトアビジンコート磁気ビーズとの相互作用を妨害するということであろう。別の結論は、細胞は10μMを超えないビオチン濃度の培地中で、好ましくは、本出願で評価されたCDM4CHOまたはカスタム細胞培地中に含まれるビオチン濃度の3μMまたは0.1μMより低いビオチン濃度の培地中で培養する必要があるということである。
【0131】
次に、MagPhase(登録商標)媒介細胞キャプチャーにより、溶出集団が多量の治療用IgGを分泌する細胞に濃縮されるかどうかが評価された。MagPhase(登録商標)選別手順は細胞表面のIgGの一時的なディスプレイに依存するが、これは高レベルのIgG分泌に必ずしも関連しないはずであることから、この評価が行われた。BHBおよびBLC細胞は、細胞表面染色により、高または極高レベルでIgGをディスプレイするが、実際に、F206細胞を比較した場合、図2のBHBおよびBLC細胞は、極高レベルのIgGを分泌しない。これは、選別後10日目に培養上清中の分泌IgGを定量化する前に、図20Bの1日目、または3日目に回収された細胞、ならびに非選別対照細胞を培養することにより評価された。
【0132】
IgG陽性F206細胞の割合は、選別後1日目または3日目に類似であり、それらは、MagPhase(登録商標)により処理されていない対照細胞に比べて2〜3倍高い(図21A)。しかし、1日目に溶出された細胞は、対照細胞より3倍多いIgGを分泌し、一方、3日目の細胞は、1日目の細胞の分泌の約半分の量のIgGのみを分泌した(図21)。これらの結果は、1日目に分離の細胞は、多量のIgGをディスプレイし、また、それを培地中に素早く放出するが、3日目に分離した細胞は、表面にIgGを大きくディスプレイするが、それを効率的に放出せず、したがって、非常に良好な分泌細胞ではない細胞に相当することを示唆する。したがって、現在の設定では、MagPhase(登録商標)キャプチャー後1日目の細胞の溶出は、IgG高分泌細胞を回収する最良のタイミングであった。したがって、磁気ビーズからの細胞放出のタイミングと組み合わせた、MagPhase(登録商標)を使った高ディスプレイヤー細胞の選別を使って、所望の特性、このケースでは、多量の治療用タンパク質の分泌特性を備えた細胞を選択することができる。さらに、MagPhase(登録商標)設定および操作モードを、中、低、または非発現細胞を優先的に回収するように適合させ得ることは、当業者には明らかであろう。
【0133】
8.MagPhase無菌キャプチャーは、ポリクローナル集団からIgG分泌細胞を濃縮する
上記MagPhase(登録商標)装置および方法により参照モノクローナル細胞の混合物をIgG発現細胞の濃縮効率に関し試験した。次に、我々は、MagPhase(登録商標)が、広範囲にわたる種々の多くの発現レベルのポリクローナル集団から高IgG分泌細胞の濃縮をも可能とするかどうかについて、決定することを必要とした。この目的のために、無菌MagPhase(登録商標)キャプチャーを行って、治療用トラスツズマブ抗体を安定に発現しているポリクローナル集団から高IgG分泌細胞をキャプチャーした。
【0134】
図22Aに示すように、キャプチャーされた細胞をCB5なしで培養した場合、対照細胞に比べて、1日目に溶出した細胞集団中の、中ならびに高IgGディスプレイヤー細胞の3倍の増加があった。しかし、4日目の溶出からの中または高ディスプレイヤー細胞の濃縮はなかった。すでに述べた比生産性の観点では、細胞前培養液中のCB5補充剤の好ましくない存在にもかかわらず、最良の分泌細胞は、対照細胞に比べて2.6倍多いIgGを分泌した1日目分離細胞で得られた(図22B)という類似の結論が得られた。
【0135】
全体的に見て、MagPhase(登録商標)は、使い捨て型の単回使用のカートリッジの無菌環境において、細胞を効率的に選別することができ、不均一ポリクローナル集団から治療用タンパク質を高レベルで分泌する細胞を濃縮することができるという結論となった。さらに、MagPhase(登録商標)細胞選別後に、キャプチャーされた細胞の培養液中へのCB5の添加は、キャプチャー後1日目の最良の分泌細胞の回収をさらに増加させた。
【0136】
9.モノクローナル抗IgG抗体を使ったMagPhase無菌キャプチャー
血清由来ポリクローナル二次抗体の使用は、医薬品環境には適切ではないので、我々は、MagPhase(登録商標)キャプチャープロセスにおける、ビオチン化抗IgGモノクローナル抗体(mAb)の実現性についてさらに調査した。図23Aに示すように、2つの異なるモノクローナル抗体をMagPhase(登録商標)細胞キャプチャープロセスで試験することができた。CB5なしでキャプチャーされた細胞を培養した場合、Mabtech(登録商標)モノクローナル抗体の使用により、中および高IgGディスプレイヤーの両方を、対照細胞に比べて、1日目に2倍に濃縮した(図23A)。Mabtech(登録商標)mAbを使ってキャプチャーした細胞をCB5含有培地中で培養した場合、細胞中の中および高ディスプレイヤーの、それぞれ、1.4倍および1.6倍の増加が1日目に得られた(図24B)。細胞キャプチャー中にAcris mAbを使って、中および高ディスプレイヤー細胞のより低い濃縮が得られた。それに対応して、キャプチャーされた細胞のIgG比生産性は、Mabtech(登録商標)mAbを使った場合により高く、CB5フィードの存在下で細胞を溶出した場合、対照細胞より2倍高い生産性が得られた(図24C)。まとめると、これらのアッセイは、モノクローナル抗体を、MagPhase(登録商標)ベース無菌キャプチャーおよびポリクローナル集団から高分泌細胞の濃縮のために使用することができることを示す。
【0137】
10.新規MagPhaseは抗体発現細胞を濃縮する
既知のバージョンのMagPhase(登録商標)選別プロセスは、汚染除去溶液を圧送することによるMagPhase(登録商標)の滅菌を必要とした。これらの既知のプロセスでは、マイクロ流体チャネルはいずれも使い捨てではなく、したがって、ボア汚染リスクがあり、薬理学的用途のための細胞選別に適合しないものにしている。本明細書で提示されるのは、特に、生細胞の無菌選別専用の新世代のMagPhase(登録商標)装置およびカートリッジであり、全ての液体および細胞取り扱い手順を、単回使用無菌カートリッジの閉ざされた一定の環境内で処理可能とする。
【0138】
カートリッジ構成材料および設計の観点からの種々試行と改善後に、我々は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)で作製され、ポリカーボネートPCカバーフィルムを備えたカートリッジが、無菌の細胞キャプチャープロセス用としてうまく機能することを見つけた。最終のカートリッジ設計を図5および図25に示す。
【0139】
KPLポリクローナル抗体を、投入細胞集団を標識するために使用した場合、改善したMagPhase(登録商標)装置は、元のMagPhase(登録商標)設計の場合に得られた2.4倍の濃縮に比較して、1日目にCHO−M細胞からF206細胞を有意に濃縮した(5.0増加倍率)(図24A)。6日目の分離細胞は、1日目に分離された細胞と類似の濃縮特性を有していた。さらに、改善したMagPhase(登録商標)はまた、Mabtech(登録商標)mAbを使って、CHO−M細胞からF206細胞の有意な濃縮を達成した。すなわち、1日目および6日目分離細胞で、それぞれ、2.8倍および3.6倍の濃縮を達成した(図24B)。これらの結果は、ポリクローナルKPL抗血清またはMabtech(登録商標)モノクローナル抗体の両方を使って、改善したMagPhase(登録商標)設計の向上した性能を示す。
【0140】
全体として、より多量の治療用タンパク質を発現し、分泌する細胞の濃縮を可能とする、対応するカートリッジおよび操作プロセスを含む新規マイクロ流体装置、および必要に応じヒトが使用する治療用タンパク質を産生する細胞を取り扱うための、無菌の細胞生存に適合した、使い捨ての閉ざされた容器内のマイクロ流体装置が提示される。従来から利用可能な手法を使って、より高産生細胞の特異的濃縮に前に失敗したことを考え合わせると、マニュアルまたは半自動化非マイクロ流体の以前に報告した方法が非発現細胞から発現細胞を単離することのみ可能であったので、この結果は予想外のものであった。最新のMagPhase(登録商標)設定の別の利点は、先行技術と比較した場合、それが完全自動化され、非常に迅速なプロセス(約5分の自動操作のMagPhaseに対して、手で操作する少なくとも45分の時間のマニュアル選別)であり、時間と操作者の労力の両方を節約し、当該技術分野において既知の閉ざされていない細胞選別環境に付随する汚染リスクを劇的に低減することである。
【0141】
本発明の方法および装置は、種々の実施形態の形で組み込むことができるが、その内のほんのわずかが本明細書で開示されていることは理解されよう。その他の実施形態が存在し、本発明の範囲から解離しないことは当業者には明らかであろう。したがって、記載実施形態は例示的なものであり、限定的なものと解釈されるべきではない。
【0142】
参考文献
[1].Brezinsky,S.C.,G.G.Chiang,A.Szilvasi,S.Mohan,R.I.Shapiro,A.MacLean,W.Sisk and G.Thill(2003).”A simple method for enriching populations of transfected CHO cells for cells of higher specific productivity.”J Immunol Methods 277(1−2):141− 155.
[2].Caron,A.W.,C.Nicolas,B.Gaillet,I.Ba,M.Pinard,A.Gamier,B.Massie and R.Gilbert(2009).”Fluorescent labeling in semi−solid medium for selection of mammalian cells secreting high−levels of recombinant proteins.”BMC Biotechnol 9:42.
[3].Galbete,J.L.,M.Buceta and N.Mermod(2009).”MAR elements regulate the probability of epigenetic switching between active and inactive gene expression.” Mol Biosvst 5(2):143−150.
[4].Girod,P.A.,D.Q.Nguyen,D.Calabrese,S.Puttini,M.Grandjean,D.Martinet,A.Regamey,D.Saugy,J.S.Beckmann,P.Bucher and N.Mermod(2007).”Genomewide prediction of matrix attachment regions that increase gene expression in mammalian cells.”Nat Methods 4(9):747−753.
[5].Le Fourn V,Girod PA,Buceta M,Regamey A,and Mermod N.(2014).CHO cell engineering to prevent polypeptide aggregation and improve therapeutic protein secretion.Metab.Eng.,21:91−102.
[6].Ley D,Harraghy N,Le Fourn V,Bire S,Girod P−A,Regamey A,Rouleux−Bonnin F,Bigot Y and Mermod N.(2013).MAR Elements and Transposons for Improved Transgene Integration and Expression.PLoS ONE,8:e62784.
[7].Pichler,J.,F.Hesse,M.Wieser,R.Kunert,S.S.Galosy,J.E.Mott and N.Borth(2009).”A study on the temperature dependency and time course of the cold capture antibody secretion assay.”J Biotechnol 141(1−2):80−83.
[8].Sen,S.,W.S.Hu and F.Srienc(1990).”Flow cytometric study of hybridoma cell culture:correlation between cell surface fluorescence and IgG production rate.”Enzyme Microb Technol 12(8):571−576.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27