(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、計画方法、及び/又はその計画方法の結果を用いた関連の手術方法を提供し、これは、患者の解剖学的構造を維持するアプローチと患者の人工膝関節の機械的機能を維持するアプローチという他の方法では拮抗するアプローチを組み合わせることによって、これらの他の方法では拮抗するアプローチのそれぞれの利点を活用する。
【0009】
本発明の第1の態様は、患者の下肢の膝関節に全人工膝関節置換術手術手順を行う方法を提供する。この方法は、患者の下肢の解剖学的データを取得することを含み得る。この解剖学的データにより、大腿骨機能軸、脛骨機能軸、及び膝関節の関節線を決定することが可能になり得る。計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度が決定され得る。この計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度によって、計画された近位側脛骨切断角度と計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られる、脛骨機能軸と大腿骨機能軸との間の長下肢角度が、第1の事前選択された値範囲内にあること、及び/又は、計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲内にあることが確実になる。全人工膝関節置換術手順は、患者の膝関節に対して行われ得る。遠位側大腿骨切断は、計画された遠位側大腿骨切断角度を用いて行うことができ、近位側脛骨切断は、計画された近位側脛骨切断角度を用いて行うことができる。
【0010】
長下肢角度及び近位側脛骨切断角度それぞれの第1及び第2の事前選択された値範囲によって、近位側脛骨切断角度(angel)及び遠位側大腿骨切断角度の位置決めの影響をチェックすることが可能になり、これによって、許容可能な長下肢角度及び近位側脛骨切断角度を確認し、必要に応じて調整することができる。ゆえに、解剖学的アプローチの利点と、患者の元の解剖学的構造を維持する利点とを、一緒に実現することができる。
【0011】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには、長下肢角度が、第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することが含まれ得る。
【0012】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、最初に計画された近位側脛骨切断角度を設定して関節線を再建することと、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度を設定して関節線を再建することとが含まれ得る。
【0013】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、最初に計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することが含まれ得る。
【0014】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、最初に計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していると判定された場合に、計画された遠位側大腿骨切断角度を、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定し、かつ計画された近位側脛骨切断角度を、最初に計画された近位側脛骨切断角度に設定することが含まれ得る。
【0015】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、最初に計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応していないと判定された場合に、計画された近位側脛骨切断角度を、調整角度により改変された最初に計画された近位側脛骨切断角度に設定し、これによって、計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するようにすることが含まれ得る。
【0016】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、最初に計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していないと判定された場合に、計画された遠位側大腿骨切断角度を、調整角度により改変された最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定することが含まれ得る。
【0017】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、最初に計画された近位側脛骨切断角度を設定して、第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するよう長下肢角度を調整すること、及び/又は、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度を設定して関節線を再建することが含まれ得る。
【0018】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、最初に計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することが含まれ得る。
【0019】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、最初に計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していると判定された場合に、計画された遠位側大腿骨切断角度を、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定し、かつ計画された近位側脛骨切断角度を、最初に計画された近位側脛骨切断角度に設定することが含まれ得る。
【0020】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、最初に計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応していないと判定された場合に、計画された近位側脛骨切断角度を、調整角度により改変された最初に計画された近位側脛骨切断角度に設定し、これによって、計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するようにすることが含まれ得る。
【0021】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、最初に計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していないと判定された場合に、計画された遠位側大腿骨切断角度を、調整角度により改変された最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定することが含まれ得る。
【0022】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには、脛骨機能軸に対する関節線の角度が、第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することが含まれ得る。
【0023】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、計画された近位側脛骨切断角度を設定して関節線を再建すること、及び/又は、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度を設定して関節線を再建することが含まれ得る。
【0024】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた長下肢角度が、第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することが含まれ得る。
【0025】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた長下肢角度が、第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していると判定された場合に、計画された遠位側大腿骨切断角度を、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定することが含まれ得る。
【0026】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた長下肢角度が、第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していないと判定された場合に、計画された遠位側大腿骨切断角度を、調整角度により改変された最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定し、これによって、結果として得られる長下肢角度が、第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するようにする、ことが含まれ得る。
【0027】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するよう、調整角度を用いて、計画された近位側脛骨切断角度を設定することと、その調整角度を用いて、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度を設定することとが含まれ得る。
【0028】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた長下肢角度が、第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することが含まれ得る。
【0029】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた長下肢角度が、第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していると判定された場合に、計画された遠位側大腿骨切断角度を、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定することが含まれ得る。
【0030】
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することには更に、計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた長下肢角度が、第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していないと判定された場合に、計画された遠位側大腿骨切断角度を、更なる調整角度により改変された最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定し、これによって、結果として得られる長下肢角度が、第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するようにする、ことが含まれ得る。
【0031】
第1の事前選択された範囲は、10°以下、6°以下、又は3°以下であり得る。
【0032】
第1の事前選択された範囲は、175°〜185°、又は177°〜183°、又は177°〜180°の範囲であり得る。
【0033】
第1の事前選択された範囲は、170°〜180°、又は175°〜180°、又は177°〜180°の範囲であり得る。ゆえに、第1の事前選択された範囲は、ニュートラル及び内反の長下肢アライメント角度にのみ対応し、外反の長下肢アライメントは含まない可能性がある。
【0034】
第2の事前選択された範囲は、6°以下、又は3°以下であり得る。
【0035】
第2の事前選択された範囲は、87°〜93°の範囲であり得る。
【0036】
第2の事前選択された範囲は、90°〜84°、又は90°〜87°の範囲であり得る。ゆえに、第2の事前選択された範囲は、ニュートラル及び内反の近位側脛骨切断角度に対応し、外反の近位側脛骨切断角度は含まない可能性がある。
【0037】
調整角度は、近位側脛骨切断角度を、第2の事前選択された範囲の最も近い値に対応させることができる。
【0038】
調整角度は、長下肢角度を、第1の事前選択された範囲の最も近い値に対応させることができる。
【0039】
更なる調整角度は、長下肢角度を、第1の事前選択された範囲の最も近い値に対応させることができる。
【0040】
この方法は更に、患者の下肢の1つ又は2つ以上の画像をキャプチャすることを含み得る。解剖学的データを取得することは、1つ又は2つ以上の画像から、あるいは1つ又は2つ以上の画像から誘導される画像データから、あるいは1つ又は2つ以上の画像を画定する画像データから、解剖学的データを取得することを含み得る。
【0041】
この1つ又は2つ以上の画像はX線像であり得る。
【0042】
この1つ又は2つ以上の画像は、ストレス下状態又は負荷状態又は立位状態での患者の下肢の画像であり得る。
【0043】
患者の下肢の解剖学的データを取得することは、患者の下肢の解剖学的標認点の位置を測定することを含み得る。
【0044】
解剖学的標認点の位置は、コンピュータ支援手術システムを用いて測定することができる。
【0045】
計画された切断角度の決定は、データ処理デバイスにより実行され得る。
【0046】
全人工膝関節置換術手順は、コンピュータ支援手術システムを用いて実行することができる。
【0047】
患者の膝関節に対して全人工膝関節置換術手順を実施することは、計画された遠位側大腿骨切断角度に対応するよう、遠位側大腿骨切断のための切断ブロックの角度を設定すること、及び/又は、計画された近位側脛骨切断に対応するよう、近位側脛骨切断のための切断ブロックの角度を設定することを含み得る。
【0048】
遠位側大腿骨切断のための切断ブロックの角度を設定することは、その切断ブロックの角度調整機構を操作することを含み得る。
【0049】
近位側脛骨切断のための切断ブロックの角度を設定することは、その切断ブロックの角度調整機構を操作することを含み得る。
【0050】
本発明の第2の態様は、患者の下肢の膝関節に対して実施する全人工膝関節置換術手術手順に使用するための、計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定する方法を提供する。この方法は、脛骨機能軸と大腿骨機能軸との間の長下肢角度について、第1の事前選択された値範囲を設定することを含み得る。この方法は更に、近位側脛骨切断角度について、第2の事前選択された値範囲を設定することを含み得る。計画された近位側脛骨切断角度、及び、計画された遠位側大腿骨切断角度は、患者の脛骨機能軸、大腿骨機能軸及び膝関節線を画定する、患者から取得した解剖学的データを用いて決定され得る。この計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度によって、計画された近位側脛骨切断角度と計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られる長下肢角度が、第1の事前選択された値範囲内にあること、及び、計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲内にあることが確実になる。
【0051】
また、本発明の第1の態様の決定部分の好ましい特徴が、本発明の第2の態様の好ましい特徴であってもよい。
【0052】
この方法は、コンピュータ実施方法であり得る。
【0053】
本発明の第3の態様は、非一過性形態でコンピュータプログラムコードを記録するコンピュータ可読媒体を提供し、このコンピュータ可読コードは、データプロセッサが、本発明の第2の態様の方法及びその中の任意の好ましい特徴を実行することにより、実行可能である。
【0054】
本発明の第4の態様は、データプロセッサと、本発明の第3の態様のコンピュータ可読媒体とを含む、データ処理デバイスを提供し、このコンピュータ可読コードは、このデータプロセッサにより実行可能である。
【0055】
本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様によるデータ処理デバイスを含む、コンピュータ支援手術システムを提供する。
【0056】
本発明の第6の態様は、本発明の第2の態様の方法をユーザが実行できるようにするための、ユーザが読むことのできる指示を掲載した媒体を提供する。この媒体は、本発明の第2の態様の好ましい特徴のいずれかを実行するための、ユーザが読むことのできる指示も掲載し得る。この媒体は、第1の事前選択された値範囲及び第2の事前選択された値範囲の指標も掲載し得る。この媒体は、ユーザがデータを記録できる、1つ又は2つ以上の第1フィールドを含み得る。このデータは、患者から得た解剖学的データであり得る。この解剖学的データは、大腿骨機能軸の角度、脛骨機能軸の角度、大腿骨機能軸と脛骨機能軸との間の角度、関節線の角度、関節線と大腿骨機能軸との間の角度、及び/又は、関節線と脛骨機能軸との間の角度を含み得る。この媒体は、ユーザが計算結果を記録できる、1つ又は2つ以上の第2フィールドを含み得る。この計算の結果は、角度の値であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0058】
下記の「発明を実施するための形態」では、本発明の完全な理解を提供するために、数多くの具体的な詳細を示す。しかしながら、当業者には、これらの具体的な詳細なしでも本発明が実施され得ることが理解されよう。他の例においては、周知の方法、手順、構成要素、機器、又はインプラントは、本発明を不明瞭にしないようにするため、詳細には記載されていない。
【0059】
図中、別途記載のない限り、又は文脈で別途必要な場合を除き、同様の要素に対しては同様の参照番号が使用される。
【0060】
図1を参照して、ここには、全人工膝関節置換術手術100の計画及び実施を行うための準備をする全体的な方法100の様々な段階を説明するハイレベルフローチャートが示されている。本発明の態様は、
図1に示されている全体的な方法100、その個々の段階、個々の段階の組み合わせ、及び段階の中のサブ段階の組み合わせに属し得る。
【0061】
全体的な方法の中の初期段階102は、患者の術前の解剖学的な下肢(legal)アライメント102を決定することを含む。これは、下記で詳しく述べるように、数多くの方法で実行することができ、本質的に、患者の下肢の股関節軸、膝関節軸、足関節軸、及び更に膝関節線を決定することを含む。患者の実際の下肢から得られた解剖学的情報が、この初期工程102で取得される。
【0062】
患者の解剖学的下肢アライメント情報を取得した後、工程104で、本発明の一態様による計画方法が実行される。工程104で実行される計画方法は、工程102で取得された患者の解剖学的下肢アライメント情報を使用して、大腿骨及び/又は脛骨切断に対して行う任意の角度調整を決定する。計画工程104の結果は、計画された脛骨及び/又は大腿骨切断角度であり、これを工程106で実施される実際の手術手順に使用することができる。
【0063】
ゆえに、工程106で、全人工膝関節置換術手術手順は、手術計画104で決定された脛骨及び大腿骨切断位置を用いて実行され、この手術計画には、従来の手順で使用されるものに比較して、脛骨及び/又は大腿骨切断角度に対する調整を含み得る。段階104で計画された脛骨及び/又は大腿骨切断角度は、大腿骨が膝関節の主要な運動学的主体であるという、手術方法工程106の基礎となる手術理念を実施する。ゆえに、患者の膝関節の改善された機能回復は、安全限度内で長下肢アライメント及び脛骨切断角度を維持する拘束の範囲内で、大腿骨のリサーフェシングを行うことにより、達成することができる。
【0064】
工程104で実行された術前手術計画方法により、脛骨切断の内反又は外反角度の事前定義された安全限度内で、自然な関節線を再建することができ、股関節−膝関節−足関節軸の事前定義された安全限度内で、患者の長下肢アライメントを再建することができ、更に、大腿骨回転の事前定義された限度内で、自然な大腿骨後顆も再建し得るような、術前手術計画を開発することが可能になる。
【0065】
工程104の計画方法は、患者の長下肢アライメントが、遠位側大腿骨切断角度及び脛骨切断角度に依存していることを認識している。この方法は、これらの変数のうち1つの計算を、他の2つの第2安全標的範囲に基づいて行うことを可能にする。遠位側大腿骨切断及び/又は脛骨切断の角度は、事前定義された範囲値内に確実に収まるよう変えることができる。脛骨切断角度に対する任意の調整を、屈曲時の膝関節の大腿骨回転にも適用することができる。
【0066】
計画された大腿骨及び脛骨切断角度は、これら両者のいずれも、計画方法104で生じる調整を含むことができ、次に、手術手順106へのインプットとして使用される。次の手術手順106は、概ね従来式の方法であり、全人工膝関節置換術手術を実行するために、概ね従来式器具を使用することができる。しかしながら、大腿骨及び/又は脛骨に対して配される脛骨及び/又は大腿骨切断ブロックの角度は、他の方法で使用されるものとは異なる。
【0067】
手術方法106は更に、解剖学的構造に基づく手術手順に使用するための大腿骨及び脛骨コンポーネントを含む、任意の人工膝関節インプラントシステムを使用することができる。
【0068】
例えば、好適な器具セットには、DePuySynthes(Johnson & Johnsonの子会社)から入手可能なAttune膝関節手術システムの外科的手技文書に記述されているIntuition器具が挙げられる(IntuitionはDePuySynthesの商標である)。使用する膝関節インプラントは、これもDePuySynthesから入手可能なAttune膝関節システムインプラントであってよく、DePuySynthesから更に入手可能なAttune膝関節手術システムの外科的手技文書に記述されている(AttuneはDePuySynthesの商標であり、一部の国で登録されている場合がある)。しかしながら、本発明は、Attune膝関節システムの具体的なインプラント又は具体的な器具に限定されるものではない。むしろ、大腿骨に対する遠位側大腿骨切断の角度を調整し、かつ脛骨に対する脛骨切断の角度を調整できるような任意の器具を使用することができる。
【0069】
工程106に対応する例示的な手術手順が、下記に詳しく記述される。
【0070】
図2A、2B及び2Cを参照して、ここには、ヒトにおいてあり得る異なる下肢アライメントが示されている。
【0071】
図2Aは、ニュートラルな下肢アライメント200である。ニュートラルな下肢アライメントは、大腿骨骨頭の中心202から足関節の中心204まで延在する、負荷軸(実線206で示す)が患者の膝関節の中心を通過していることによって特徴付けられる。また
図2Aで点線208として示されているのは、大腿骨の遠位端の髄管のおよその軸であり、遠位側大腿骨解剖軸を表す。
図2Aは、立位で、患者の体重が長下肢軸206に沿って通過する負荷状態での、患者の下肢アライメントを示す。更に
図2Aには、患者の膝関節の関節線209が示されている。関節線209は、患者が立っている床に対して概ね平行であり、長下肢軸206に対する垂直線から典型的に約3°オフセットしている。換言すれば、関節線209と長下肢軸206との間の内側で、関節線の下側にあり、
図2Aでδとして示されている角度は、典型的に約87°である。
【0072】
図2Aは、身体の前面に投影された患者の下肢の様々な軸を示す。
【0073】
図2Bは
図2Aと同様であるが、内反アライメントを有する下肢を示している。長下肢軸206は、大腿骨骨頭の中心202から足関節の中心204まで延在する。股関節−膝関節軸214は、大腿骨機能軸とも呼ばれ、大腿骨骨頭の中心202から膝関節の中心212へと通過する線によって画定される。膝関節−足関節軸216は、脛骨機能軸とも呼ばれ、膝関節の中心212から足関節の中心204へと延びる線によって画定される。この下肢は内反アライメントを有しているため、線214及び216で画定される股関節−膝関節−足関節軸は、
図2Aに示されるニュートラルアライメントの場合のような、長下肢軸206との共線ではなくなっている。
図2Bに示すように、股関節−膝関節軸214と膝関節−足関節軸216との間の内側の角度は、180°未満である。逆に、股関節−膝関節軸214と膝関節−足関節軸216との間の外側の角度は、180°超である。ここでも、線208は、大腿骨の遠位端の髄管のアライメントを示す。
【0074】
より具体的には、股関節−膝関節軸(大腿骨の機能軸)214は、大腿骨骨頭の中心から、膝関節の十字靱帯間の顆間点(mid-condylar point)まで延在すると見なすことができる。膝関節−足関節軸(脛骨の機能軸)216は、脛骨プラトーの中心から脛骨天蓋(plafond)までの線により画定することができる。
【0075】
図2Cは、外反下肢アライメント220を示す。ここでも、大腿骨機能軸214と脛骨機能軸216は、長下肢軸206との共線ではなくなっている。しかしながら、
図2Bに示すように、内反アライメントでは長下肢軸206が膝関節の内側になっているが、外反アライメントでは長下肢軸206が膝関節の外側になっている。大腿骨機能軸214と脛骨機能軸216との間の膝関節内側の角度は180°超であり、大腿骨機能軸214と脛骨機能軸216との間の外側の角度は180°未満である。
【0076】
膝関節の関節線209は、概ね、内側顆及び外側顆の最も遠位端に接する線として見なすことができる。一般に、
図2B及び2Cに示すように、関節線209は床に対して実質的に平行であるが、当業者には理解されるように、膝関節の脛骨及び大腿骨の機能軸に対する関節線の角度は、内反アライメントと外反アライメントとで異なっている。
【0077】
図1に戻ると、最初の解剖学的情報収集段階102で、大腿骨機能軸214、脛骨機能軸216及び関節線209を確立するのに十分な情報が、直接的又は間接的に患者の身体から取得される。
【0078】
間接的なアプローチは典型的に、患者の骨の画像をキャプチャすることと、その骨画像内の様々な解剖学的標認点の位置を決定することとを伴い、これにより、必要な解剖学的アライメント情報を決定する。
【0079】
例えば、患者が立位で負荷状態における長下肢X線を撮像することができる。このX線は、様々な解剖学的標認点位置を決定できるようにするのに十分な、重なり合う1つ又は複数のX線のキャプチャを伴い得る。このX線像から、大腿骨骨頭の中心202、並びに膝関節の中心、足関節の中心、更には関節線209(内側顆及び外側顆の最遠位部に接する線に対応する)を決定することができる。
【0080】
これは単に、X線像のマーキングを行うことと、線を描くことと、距離を測定することと、角度を計算又は測定することとを伴う。
【0081】
他のより複雑なアプローチにおいて、X線像のデジタル化画像又はデジタル撮影X線像自体に対する画像処理ルーチンを使用して、必要な角度情報を、手動的、自動的、又は半自動的に決定することができる。
【0082】
他の実施形態において、3次元モデリング及び/又はコンピュータシミュレーションソフトウェアを使用することができ、CTスキャンデータを処理して、必要な解剖学的情報を決定することができる。
【0083】
直接的アプローチでは、患者の様々な解剖学的標認点の位置が、患者自身の身体で直接決定される。これは、患者の触診を行い、様々な距離を測定することによって行うことができる。また、コンピュータ支援手術手技を使用することができ、この場合はトラッキング可能なマーカーを患者の骨及び/又は器具に取り付けて、様々な解剖学的標認点上にトラッキング可能なポインタを配置することによって、これらの標認点の位置をキャプチャする。このアプローチにおいて、患者の解剖学的情報の決定は、患者の膝関節の内部へのアクセスが必要な場合があるため、純粋な術前工程としてではなく、手術手順自体の一部として実行することができる。
【0084】
大腿骨骨頭の回転中心を決定するためのコンピュータ支援手術システムは、当該技術分野において一般に知られている。この例としては、トラッキング可能なマーカーを患者の膝関節に取り付けることと、股関節を中心に大腿骨を回転させることと、トラッキング可能なマーカーにより追跡された部位をキャプチャすることが含まれる。このことから、大腿骨骨頭の中心に対応する股関節の回転中心を決定することができる。
【0085】
患者が病的状態を有している場合、例えば、内側顆又は外側顆が摩耗している場合、ストレス下体位で下腿のX線像をキャプチャし、これにより患者の膝関節に、その病的状態がない場合と同様のアライメントを導入し、これによって、病的状態ではなく、患者の膝関節の元の解剖学的構造により正確に対応するよう考慮することができる。
【0086】
患者の膝関節の解剖学的配置及び形状を画定する情報又はデータを取得する他の方法を使用することができ、これらは当業者にとって、本明細書の記述から明らかであろう。
【0087】
図3は、本発明の一態様による全人工膝関節置換術計画方法300を説明するプロセスフローチャートを示し、これは
図1の工程104に概ね対応している。計画方法300は大腿骨による計画アプローチに対応しており、このアプローチは、可能であれば、必要に応じて脛骨切断角度を変えることによって、大腿骨切断角度を関節線に対して平行に維持し、これによって脛骨切断角度と下肢アライメントが両方とも安全限度内にあるようにすることを目的とする。これが脛骨切断角度を変えるだけでは達成できない場合、大腿骨切断角度も変えて、脛骨切断角度及び長下肢角度の安全限度に確実に準拠できるようにする。脛骨による計画アプローチも可能であり、これについては
図8を参照して後述される。
【0088】
方法300は、数多くの異なる方法で実施することができる。例えば、
図9を参照して、方法300は、より一般的な手術計画コンピュータプログラム940の一部としてソフトウェアで実施することができ、これは、例えばスマートフォン又はタブレット又はその他の一般用途コンピューティングデバイス上のアプリケーションとして、コンピュータ支援手術(CAS)システム950に関連していてよく、又はこの目的専用のスタンドアロンのコンピュータプログラムであってもよい。他の実施形態において、方法300は、印刷媒体上の規則セット(a set or rules)、又はガイドライン若しくはフローチャートとして実施することができ、これを外科医が参照して本方法を実行し、本方法に使用される様々な測定値、値、及び計算を入力することができる。方法300が実際にどのように実施されるかにかかわらず、そのアウトプット又は結果は、計画された脛骨切断角度、計画された大腿骨遠位切断角度、及び所望により計画された大腿骨後部切断角度である。計画方法300は更に、切断の高さの計画は行わない。これは本方法の利点を実現するにあたっては重要ではなく、切断の高さ又は深さは、使用されるインプラントのサイズ、膝関節の軟組織、及びその他の要因によって異なる可能性があり、更に、切断の高さ又は深さは、従来の全人工膝関節置換術手術手順と同様に決定することができるからである。
【0089】
計画方法300の初期工程302は、長下肢アライメント角度と近位側脛骨切断角度の限度を設定することを含む。
図2Aに示すように、ニュートラルアライメント(大腿骨機能軸214と脛骨機能軸216が共線でありかつ長下肢軸206に揃っている)の場合、大腿骨機能軸と脛骨機能軸との間の角度は実質的に180°である。ゆえに、工程302で、許容可能な下肢アライメント値の範囲が画定される。例えば、許容可能な角度範囲は3°であってよく、その限度値は177°及び180°であり得る。下記の実施例の目的のため、膝関節の内側の大腿骨機能軸と脛骨機能軸との間の角度の大きさが使用され、本明細書においてαとして参照される。ゆえに、180°超のαは外反アライメントに対応し、180°未満のαは内反アライメントに対応する。しかしながら、長下肢アライメントを定義するのに使用される角度の定義は、全般に恣意的に選択される。
【0090】
ニュートラルアライメントから最大で10°までの偏差の場合、依然として、人工膝関節の脛骨及び大腿骨コンポーネントの妥当な機械的機能を提供すると考えられる。しかしながら、他の実施形態において、3°以下の偏差を、患者の下肢の長下肢アライメントの限度又は制限として使用することができる。この実施例において、工程302で、長下肢アライメント限度は177°≦α≦180°に設定され、ゆえに、ニュートラルから内反アライメントの間に対応する。
【0091】
工程302で、脛骨切断角度の許容可能な値範囲の限度も設定される。
図4は、患者の術前膝関節400の模式図を示し、大腿骨402の遠位部分と脛骨404の近位部分とを含む。また、大腿骨の遠位部分に隣接する大腿骨解剖軸208も示されており、これは概ね大腿骨髄管に対応する。脛骨の解剖軸は、脛骨216の機能軸にほぼ一致している。この実施例で、上述の参照番号設定を用い、内側顆は406、外側顆は408、角度αは大腿骨機能軸214と脛骨機能軸216とによって定められる。関節線209は、内側顆406と外側顆408の最も遠位の部分に接している。関節線角度は、一般に、関節線209と脛骨機能軸216との間の内側で、関節線の下側の角度として定義することができる。
図4に示すように、脛骨切断角度は脛骨切断線410と脛骨機能軸216との間で関節線の下の角度として定義することができ、
図4でβとして示されている。脛骨切断角度の定義も、全般に恣意的であり、他の定義が可能であり、例えば、脛骨切断線と脛骨機能軸との間で脛骨切断線410の上の角度として定義可能である。
【0092】
遠位側大腿骨切断角度γは更に、遠位側大腿骨切断線412と大腿骨機能軸214との間の角度として定義することができる。遠位側大腿骨切断角度γの定義も全般に恣意的であり、他の定義が可能である。
【0093】
上述のように、
図2Aに示すニュートラルの下肢アライメントについて、関節線209は床に対して概ね平行であり、脛骨機能軸(これはニュートラルアライメントの場合、長下肢軸206に一致している)に対する垂直線から約3°オフセットしている。純粋に解剖学的な手術理念では、単に、患者の関節線209に対して平行に脛骨切断線410を形成し、これによってニュートラルアライメントの膝関節形状を複製する。しかしながら、計画方法300はそうではなく、脛骨切断角度の許容可能な値範囲を設定する。この実施例では、値範囲は脛骨機能軸に対して垂直な線から3°以下、すなわち87°≦β≦90°であり、ゆえに、ニュートラルから内反アライメントの間に対応する。下肢アライメント角度及び脛骨切断角度の値範囲の大きさが両方とも3°であるのは、全くの偶然である。他の実施形態において、この値範囲の大きさは、下肢アライメント角度と脛骨切断角度とで異なり得る。
【0094】
長下肢アライメント及び工程302で設定された近位側脛骨切断角度の許容可能な角度範囲は、数多くのアプローチの個別又は組み合わせに基づき得る。理論的及び/又は経験的アプローチを使用することができる。例えば、より経験的なアプローチは、異なる患者のインプラントの管理者データを分析し、その患者のインプラントから得られる術後長下肢アライメント角度及び/又は脛骨切断角度と関連付けることであり得る。より理論的なアプローチは、患者の下肢及び膝関節インプラントのコンピュータモデルのコンピュータ分析を使用して、様々な力の分配、方向及び大きさを決定することであり得る。別のより経験的なアプローチは、人工膝関節に生じる力を異なる長下肢アライメント角度について測定し、長下肢アライメント角度及び/又は近位脛骨角度が、人工膝関節における力及び/又は患者の切断された脛骨及び/又は大腿骨に対して人工膝関節が加える力に与える影響を決定することであり得る。理論的及び経験的アプローチの結果を組み合わせて、工程302で使用される事前選択された角度範囲の決定に役立てることができる。
【0095】
上述のように、様々な角度の定義は、ある程度恣意的である。長下肢角度及び脛骨切断角度の値範囲の限度は、工程302で設定される。これらの範囲が、長下肢角度及び脛骨切断角度(angel)の要件が満たされているかどうかを判定するのに使用される場合、その範囲及び角度が同じ方法で定義されている場合には、これは直接的比較となり得、その範囲及び角度が異なる方法で定義されている場合には、これは間接的比較となり得る。この直接的又は間接的比較は、様々な角度が、範囲内に収まっている角度に対応するのか又は範囲外にある角度に対応するのかどうかを判定することによってカバーされる。ゆえに、これは、定義が同じ場合又は異なる場合の状況を包含し、この場合、例えば180°又は90°を加えるか又は差し引くなど、その角度をその範囲に直接匹敵する角度にするための、変換を適用することが必要となり得る。
【0096】
下記の実施例において、その範囲に使用される角度及び値の定義は同じであり、よって、様々な角度が、302で設定された第1値範囲又は第2値範囲内の角度に対応しているかどうかを判定するとき、直接比較が可能になる。
図3に戻って、工程304で、前もって工程102で取得された患者の解剖学的データを使用して、患者の長下肢アライメントが、工程302で設定された限度の範囲内であるかどうかを判定する。この患者の大腿骨機能軸214と脛骨機能軸との間の角度αは、工程302で設定された許容可能な値範囲と比較される。第1の実施例において、α=178であり、すなわちわずかに内反しており、よってこれは177°より大きく、長下肢アライメントは工程304で許容可能であると判定される。この方法は工程306に進み、この工程で、初期計画された大腿骨切断及び脛骨切断の角度が設定される。最初に計画された脛骨切断角度は、患者の関節線209を再建し得る角度に設定される。ゆえに、最初に計画された脛骨切断角度(脛骨切断線410と脛骨機能軸216との間の角度)は、脛骨切断線410が関節線209に対して平行になるように設定され、この実施例では89°となる。同様に、最初に計画された大腿骨切断角度γは、遠位側大腿骨切断線412が関節線に対して(この場合では最初に計画された脛骨切断線410’に対しても)平行となるような値に設定される。ゆえに、この実施例において、最初に計画された大腿骨切断角度は89°となる。
【0097】
工程308で、脛骨切断角度の最初に計画された値が、工程302で設定された限度内であるかどうかが判定される。ゆえに、工程308は、最初に計画された脛骨切断角度値89°が、87°〜90°の間であるかどうかを判定し、実際にこの範囲にある。ゆえに、工程310で、最終的な計画された大腿骨切断角度値は、最初に計画された値89°に設定され、最終的な計画された脛骨切断値は、最初に計画された値89°に設定され、計画は完了する。ゆえに、最初に計画された脛骨及び遠位側大腿骨切断角度は、許容可能な最終的な計画された切断角度として、この計画方法により検証されたことになる。
【0098】
第2の実施例は、計画方法300を更に詳しく説明する。
図5は、別の患者の膝関節形状500を示す。この膝関節形状において、大腿骨機能軸214と脛骨機能軸216との間の角度αの値は、ここでも178°であり、よってこの方法は工程304で工程306へと進む。この膝関節形状において、関節線209と脛骨機能軸216との間の角度は86°である。ゆえに、工程306で、患者の関節線209を再建するために最初に計画された脛骨切断角度値は、86°となる(これにより脛骨切断線410は関節線209に平行となる)。また、最初に計画された大腿骨切断角度値は、大腿骨切断線412も関節線209に対して平行となるように設定される。この実施例において、最初に計画された大腿骨切断角度値は92°となる。工程308で、最初に計画された脛骨切断角度が、工程302で設定された限度内であるかどうかが判定され、この実施例では、86°は下限87°より小さいため、限度内ではないことになる。ゆえに、この方法は、工程312に進む。工程312で、最初に計画された脛骨切断角度値は、最初に計画された値(すなわち工程314で87°)に最も近い限度値に設定される。ゆえに、調整角度1°が、最初に計画された脛骨切断角度に適用され、最終的な計画された脛骨切断角度に達する。これは
図5に説明されており、対応する最終的な計画された脛骨切断線414は、関節線209に対してもはや平行ではない(これは
図5では説明を明瞭にするために誇張されている)。
【0099】
脛骨切断の計画された角度が変更されたため、最初に計画された大腿骨切断線412は、最終的な計画された脛骨切断線414に対してもはや平行ではない。ゆえに、下肢のアライメントも変化し得る。ゆえに、工程314で、最終的な計画された大腿骨切断角度は、最初に計画された大腿骨切断角度に設定されるが、脛骨切断調整角度1°によって調整される。ゆえに、この実施例において、最終的な計画された大腿骨切断角度の値は91°に設定され、対応する最終的な計画された大腿骨切断線416は関節線209に対してもはや平行でなくなるが、最終的な計画された脛骨切断線414に対しては平行であり、ゆえに、患者の下肢アライメントを変化させない。よってこの実施例において、結果として得られる関節線が、元の解剖学的関節線209に比較して1°回転することになるため、最終的な計画された脛骨切断角度及び遠位側大腿骨切断角度は、術前患者の解剖学的構造の正確な複製をもはや提供しなくなるが、これらは設定された限度の範囲内でできる限り近いものである。しかしながら、長下肢アライメントは変えられていないため、患者の解剖学的構造のこの態様は、これらの計画された切断角度によって保全される。ゆえに、この実施例において、最初に計画された大腿骨切断角度は、最初に計画された脛骨切断角度が許容可能範囲外であるときに限り、変更される。
【0100】
第3の実施例は、計画方法300を更に詳しく説明する。
図6は、別の患者の膝関節形状600を示す。この膝関節形状において、大腿骨機能軸214と脛骨機能軸216との間の角度αは176°である。ゆえに、工程304で、176°<177°であるため、長下肢アライメントが、工程302で設定された長下肢アライメント限度内ではないと判定される。ゆえに、方法300は、工程316に進む。工程316で、最初に計画された大腿骨切断角度は、関節線209を再建するよう設定される。この実施例において、最初に計画された大腿骨切断角度は値87°に設定され、これにより、対応する最初に計画された大腿骨切断線418は、関節線209に対して平行になる。また工程316で、最初に計画された脛骨切断角度は、長下肢アライメントを、工程302で設定された限度内に戻すように設定される。ゆえに、長下肢アライメント範囲の下限は177°であるため、
図6に示されるように、最初に計画された脛骨切断線420を、関節線209に対して平行な線422に対して1°回転させることにより、1°の回転が、最初に計画された脛骨切断角度に加えられる。最初に計画された脛骨切断角度値は、1°の調整を含めて、結果として90°となる。工程318で、最初に計画された脛骨切断角度が、工程302で設定された脛骨切断角度限度内であるかどうかが判定され、この実施例では、範囲内である。ゆえに、この方法は工程320に進み、この工程で、最終的な計画された大腿骨切断角度の値が、最初に計画された値87°に設定され、最終的な計画された脛骨切断角度の値が、最初に計画された値(1°の調整を含む)の91°に設定される。ゆえに、最終的な計画された切断線418、420は、もはや平行ではないため(この実施例において1°違う)、下肢アライメント角度αは1°増加され、ゆえに長下肢アライメントは、許容可能範囲内に戻される。
【0101】
第4の実施例は、計画方法300を更に詳しく説明する。
図7は、別の患者の膝関節形状700を示す。この膝関節形状において、大腿骨機能軸214と脛骨機能軸216との間の角度αは176°である。ゆえに、工程304で、176°<177°であるため、長下肢アライメントが、工程302で設定された長下肢アライメント限度内ではないと判定される。ゆえに、方法300は、工程316に進む。工程316で、最初に計画された大腿骨切断角度は、関節線209を再建するよう設定される。この実施例において、最初に計画された大腿骨切断角度は値91°に設定され、これにより、対応する最初に計画された大腿骨切断線424は、関節線209に対して平行になる。また工程316で、最初に計画された脛骨切断角度は、長下肢アライメントを、工程302で設定された限度内に戻すように設定される。ゆえに、長下肢アライメント範囲の下限は177°であるため、
図7に示されるように、最初に計画された脛骨切断線426を、関節線209に対して平行な線428に対して1°回転させることにより、1°の回転が、最初に計画された脛骨切断角度に加えられる。最初に計画された脛骨切断角度値は、1°の調整を含めて、結果として86°となる。工程318で、最初に計画された脛骨切断角度が、工程302で設定された脛骨切断角度限度内であるかどうかが判定され、この実施例では、86°<87°であるため範囲外である。ゆえに、この方法は工程322に進み、ここで最終的な計画された脛骨切断角度の値は、最も近い脛骨切断限度の87°となるよう設定され、よって、調整角度1°を含む。これは
図7に示されており、対応する最終的な計画された脛骨切断線430が、最初に計画された脛骨切断線426から、更に1°回転している。この方法は工程324に進み、ここで最終的な計画された大腿骨切断角度の値が、最初に計画された大腿骨切断角度(angel)に設定されるが、ただし、脛骨切断角度を許容可能範囲に戻すのに必要な脛骨切断角度調整1°の調整が行われる。ゆえに、最終的な計画された大腿骨切断角度は、値92°に設定される。これは
図7に示されており、対応する最終的な計画された大腿骨切断線432が、最初に計画された大腿骨切断線424から、更に調整角度1°回転している。ゆえに、最終的な計画された切断線430、432は、もはや平行ではないため(この実施例において1°違う)、下肢アライメント角度αは1°増加され、ゆえに長下肢アライメントは許容可能範囲内に戻され、更に脛骨切断角度も許容可能範囲内に戻される。しかしながら、大腿骨切断角度は、関節線を再生するであろう値からは離れて調整されている。
【0102】
図4〜7は単に、文中に記述されている具体的な角度及び形状の説明に役立てるためのものであり、これらの図は、上述の実施例と同じ実際の角度を必ずしも有しているわけではないことが、理解されよう。
【0103】
図3に示す計画方法の実施形態は、該方法が大腿骨切断線を関節線に対して平行に維持しようとしているため、遠位側大腿骨切断の角度を優先しており、脛骨切断の角度を優先的に改変している。例えば、長下肢アライメント軸が限度外にある場合、大腿骨切断角度ではなく脛骨切断角度を使用して、長下肢アライメント軸を改変している。大腿骨切断角度は、これを変えない限り脛骨切断角度が限度外になってしまう場合に限り改変され、この場合、大腿骨切断角度(angel)は、脛骨切断角度を限度内に戻すために調整する角度と同じ角度だけ調整される。
【0104】
あるいは、本発明は、同様のアプローチを用いて脛骨切断が優先される計画として実施することもできるが、ただしこの場合、脛骨切断角度を許容可能限度内に維持するために必要でない限り、近位側脛骨切断角度は、解剖学的切断として保全される(すなわち、関節線を再生するため)。脛骨による計画方法800が、
図8に示すフローチャートにより説明されている。
図8に示す計画方法800は、
図3に示す計画方法300と全体的に同じアプローチを用いており、下肢アライメント及び脛骨切断限度を設定し、次に脛骨切断角度及び長下肢アライメントがその限度内にあるかどうかをチェックし、限度内にない場合は、脛骨切断及び/又は大腿骨切断角度を調整し、これによって、最終的な計画された脛骨及び大腿骨切断角度が、これらの限度内に収まる膝関節形状をもたらす。しかしながら方法800は、最初に脛骨切断角度を最終的な計画された脛骨切断角度として設定し、次に、長下肢アライメントを許容可能限度内に収めるのに必要な場合に、大腿骨切断角度のみが後で調整される、という点で異なっている。
【0105】
工程802で、長下肢アライメントの限度は、例えば177°≦α≦180°に設定され、脛骨機能軸に対する脛骨切断角度の限度は、例えば87°≦β≦90°に設定される。工程804で、関節線と脛骨機能軸との間の角度を、脛骨切断角度限度と比較し、解剖学的アプローチ(すなわち患者の関節線を複製する脛骨切断)が許容可能かどうかを調べる。許容可能である場合は、工程806で、計画された脛骨切断角度が、関節線に対して平行な脛骨切断線をもたらすような角度に設定され、更に、最初に計画された大腿骨切断角度が、遠位側大腿骨切断線も関節線に対して平行となるように設定される。808で、大腿骨機能軸と脛骨機能軸との間の角度が、802で設定された限度内であるかどうかが判定される。808で、長下肢アライメントが限度内であると判定された場合、最終的な計画された大腿骨切断角度は、810で、最初に計画された大腿骨切断角度に設定され、計画が完了する。ゆえにその結果は、計画された遠位側大腿骨切断と計画された脛骨切断がそれぞれ、患者の関節線に対して平行になり、ゆえに患者の元の解剖学的構造を再生しながら、同時に、人工膝関節の適切な機能的動作を確実にする。
【0106】
工程808に戻って、808で、長下肢アライメントが限度内ではないと判定された場合、最終的な計画された大腿骨切断角度は、最初に計画された大腿骨切断角度に設定されるが、812で、長下肢アライメントを限度内に戻すよう調整される。例えば、患者の大腿骨機能軸と脛骨機能軸との間の角度が175°である場合、長下肢アライメントを限度内に戻すためには、少なくとも2°の調整が必要となる。ゆえに、工程812で、2°の調整が、最初に計画された大腿骨切断角度に対して行われ、その値が、最終的な計画された大腿骨切断角度として使用される。ゆえに、計画が完了し、解剖学的構造を保持する脛骨切断がもたらされるが、患者の長下肢アライメントは若干変化する。
【0107】
工程804に戻って、関節線と脛骨機能軸との間の角度が脛骨切断限度外で、例えば85°であると判定された場合、工程814で、脛骨切断角度は、最も近い限度値、すなわち87°として計画される。方法300でも行ったように、最も近い限度値を選択することにより、患者の解剖学的構造から離れるようになされる調整値が最小限に抑えられ、これによって、解剖学的構造に基づく手術理念から生じる利点を保全するのに役立つ。また814で、最初に計画された大腿骨切断角度は、関節線を再建するのに必要な値に設定されるが、脛骨切断調整角度も含む。ゆえに、最初に計画された大腿骨切断角度は、814で、2°の脛骨調整角度を含む値として設定される。ゆえに、計画された脛骨切断線と、最初に計画された大腿骨切断線とは、この方法のこの段階において平行である。しかしながら、長下肢アライメント角度は、この実施例において、2°調整されている。816で、計画された脛骨切断角度と最初に計画された大腿骨切断角度とから生じ得る、脛骨機能軸と大腿骨機能軸との間の角度が、許容可能限度内であるかどうかが判定される。元の長下肢角度が175°であった場合、この段階で調整された長下肢角度は177°となり、よって限度内となる。ゆえに、816で、この方法は818に進み、計画された大腿骨切断角度は、最初に計画された大腿骨切断角度に設定され、これは2°の調整を含む。ゆえに、計画された脛骨切断線は、限度が許す限り解剖学的切断線にできる限り近くなり、許容可能限度内とするための長下肢アライメントに対する最小限の調整が導入される。
【0108】
工程816に戻って、元の長下肢角度が174°であった場合、この段階で調整された長下肢角度は176°となり、よって限度外となる。ゆえに、816で、この方法は820に進み、計画された大腿骨切断角度は、最初に計画された大腿骨切断角度に設定されるが、長下肢アライメントを限度内に戻すための角度調整を含む。ゆえに、最初に計画された大腿骨切断角度に更に1°の調整が追加されて、対応する長下肢アライメント軸が177°となり、よって限度内となる。ゆえに、計画された脛骨切断線は、限度が許す限り解剖学的切断線にできる限り近くなり、許容可能限度内とするための長下肢アライメントに対する最小限の調整が導入されるが、これは前の実施例の調整よりも若干大きい。
【0109】
いくつかの実施形態において、計画方法300及び800は、ユーザが読むことのできる指示を掲載する印刷媒体において実現又は実施されてよく、これは、
図3及び8に示されている計画方法300及び800の工程を通して、あるいは、
図3及び8の具体的な方法により説明されているように、本発明の計画方法を最終的に実施する他の工程を通して、ユーザをガイドする。この指示は、文章の指示と共に、絵図形態での指示を含み得、例えば、計画方法300、800に使用される様々な軸及び角度を示した、1つ又は2つ以上の膝関節の図を含み得る。
【0110】
この印刷媒体は、第1の事前選択された値範囲(例えば177°≦α≦180°)、及び第2の事前選択された値範囲(87°≦β≦90°)の指標も掲載し得る。この媒体は更に、ユーザが第1のタイプのデータを記録できる、1つ又は2つ以上の第1フィールドを含み得る。この第1のタイプのデータは、患者から得た解剖学的データであってよく、大腿骨機能軸の角度、脛骨機能軸の角度、大腿骨機能軸と脛骨機能軸との間の角度、関節線の角度、関節線と大腿骨機能軸との間の角度、及び/又は、関節線と脛骨機能軸との間の角度を含み得る。解剖学的データは、少なくとも、脛骨機能軸に対する関節線の角度を決定可能とするために十分なデータを含み、更に、脛骨機能軸と大腿骨機能軸との間の角度を含む。この媒体は、ユーザが計算結果を記録できる、1つ又は2つ以上の第2フィールドを含み得る。この計算の結果は、角度の値であり得る。ゆえに、媒体の様々な場所で、計算結果を入力するために、様々な角度を加算又は減算する指示の近くにフィールドが提供されてよく、これによって、最初に計画された角度、計画方法に従うことによって適用された任意の角度調整、及び更に、結果として得られる最終的な計画された脛骨及び大腿骨切断角度の記録を維持することができる。
【0111】
図1に戻って、104で実施された手術計画が記述されており、工程101に対応して、計画された脛骨及び大腿骨切断角度を用いて全人工膝関節置換術を実施する方法が、ここで、
図9を参照して記述される。上述のように、計画方法104及び手術方法106は、機能軸アライメントに好適な任意の全人工膝関節置換術システムに使用することができる。更に、この手術方法は、計画された脛骨及び大腿骨切断角度に対する角度調整以外、概ね従来式の方法であり、よって、概ね従来式手術用器具を使用することができる。数多くの従来式工程は、よって、本発明を不明瞭にしないようにするため、記載されていない。単に例として、手術方法106は、DePuySynthesから供給されるAttune膝関節システム及びIntuition器具を用いて、DePuySynthesにより更に供給されるAttune膝関節システムの外科的手技文書の記述に従い、実施することができる(AttuneはDePuySynthesの商標であり、一部の国で登録されている場合がある。IntuitionはDePuySynthesの商標である)。
【0112】
いくつかの実施形態において、この手術方法は、例えば
図9に示されているようなコンピュータ支援手術(CAS)システム950を用いて実施することができる。CASシステムは一般に周知であり、典型的に、コンピュータシステム952、トラッキングシステム954及びディスプレイ956を含み、このディスプレイは、視覚的その他のガイダンスを外科医に提供して、この手術手順のワークフローの様々な工程を通して外科医をガイドし、更に、958、960、962で表されるツール、器具、インプラント及び身体部分の相対的位置に関するガイダンスを提供して、例えば器具の位置決め、切断、及び試行コンポーネントと補綴コンポーネントの配設など、様々な操作を実行する際に支援を行う(asset/assist?)。身体部分と、CASシステムに使用されるツール、器具及びインプラントは、1つ又は2つ以上のマーカー964を含み得、これは、トラッキングシステム954によりトラッキング可能であり、コンピュータシステム952に位置情報又はデータ966を提供する。例えば有線又は無線の、赤外線、光学、音波、又は磁力など、様々な異なるタイプのトラッキング技術を使用することができる。ゆえに、CASシステムはソフトウェア942を含み得、これは、
図9に示す手術工程を外科医が実行するのを支援するよう、CASシステムの設定を行う。CASシステムは更に、計画ソフトウェア940を含み得、これは、工程104で使用される計画方法を実施するよう、CASシステムの設定を行う。ゆえに、計画ソフトウェア940により生成された脛骨及び大腿骨切断計画データが、手術ワークフローソフトウェア942に渡され、手術ワークフローソフトウェア942がこれを使用することにより、大腿骨及び脛骨切断ブロック内で使用する脛骨及び大腿骨切断の計画位置並びに任意の角度調整又は設定の指標を提供することができ、これによって、計画された脛骨及び大腿骨切断の位置を、ディスプレイ956に再生することができる。説明のため、トラッキングシステム954は
図9において別個に示されているが、他の実施形態において、トラッキングシステム954は、コンピュータシステム952に統合され、一体型のCASシステム950を提供することができることが理解されるであろう。
【0113】
手術方法900は、902で、患者の下肢を概ね伸ばした状態で、患者の膝関節を切開することから始める。手術部位の準備を行った後、904で、大腿骨切断ブロックを患者の大腿骨に取り付けることができる。これには、大腿骨髄管(大腿骨の局所的解剖軸を画定する)にアクセスするため、大腿骨の遠位端にドリルで穴をあけることを伴い得る。角度調整可能ジグを備えた骨髄内ロッドを、髄管内に挿入した遠位側大腿骨切断ブロックに接続する。好適な配置は、Attune外科的手技文書に示されているような、遠位大腿骨ジグアセンブリである。
【0114】
上述の
図4〜7で述べたように、大腿骨208の解剖軸は、ある角度だけ大腿骨214の機能軸からオフセットしており、この角度は、患者の大腿骨の長さに主に依存し、患者によって異なる。大腿骨が短めの場合は、この角度は典型的に約3°〜4°、中程度の大腿骨の場合は典型的に約5°、長めの大腿骨の場合は典型的に約6°〜7°である。大腿骨切断角度が計画段階104において大腿骨機能軸214に対して定義されると、調整可能ジグを用いて設定する角度を決定する際に解剖軸208と機能軸との間の角度オフセットを考慮に入れて、適正な計画された遠位切断ブロック位置を設定する。これは、切断ブロックの角位置が典型的に、解剖軸に対して定義されるためであり(この解剖軸に沿って骨髄内ロッドが通過する)、これにより、調整ジグの角度0度が、大腿骨の解剖軸に対して垂直な遠位切断線に対応する。
【0115】
ゆえに、工程906で、ジグの角度を調整して遠位側大腿骨切断ブロックを配設し、これによって、遠位側大腿骨切断線は、大腿骨の機能軸と解剖軸との間のオフセットを考慮に入れて、計画された遠位側大腿骨切断角度に対応するようになる。大腿骨切断の深さは、使用するインプラントのサイズによって異なり、しばしば4〜16mmの範囲、典型的に8〜11mmである。遠位側大腿骨切断ブロックを次に、定位置に固定し、大腿骨ジグ及びIMロッドを除去し、908で遠位側大腿骨切断を行う。
【0116】
910で、脛骨切断ブロックを脛骨に取り付ける。脛骨機能軸と解剖軸は通常一致しているため、通常、脛骨切断ブロック調整のために考慮に入れるべき角度オフセットはない。脛骨アライメントガイドを使用して、脛骨切断ブロックの位置決めと取り付けを行うことができる。安定的な脛骨アライメントガイドは、Attune外科的手技文書に説明されている。脛骨アライメントガイドを、患者の下腿に取り付ける。これは、患者の足関節に第1端を取り付け、患者の足の第2指及び脛骨の機能軸に揃えることによって行われる。脛骨切断ブロックは、アライメントガイドの第2端に取り付けられ、かつ中心開口部を備えており、ここに骨ピンを通し、膝関節の中心又は中点に揃えて配置する。アライメントガイドの第1端の内側−外側位置は調整可能であり、これを変えると、脛骨切断ブロックが骨ピンを中心に枢軸旋回する。ゆえに、912で、脛骨切断ブロックの角度は、切断ブロック角度が、計画された脛骨切断線に対応するところまで、脛骨アライメントガイドの第1端の内側−外側位置を変えることによって調整可能である。脛骨切断ブロックは次に、ピンで定位置に固定され、914で近位側切断が行われる。
【0117】
他の実施形態において、遠位側大腿骨切断と近位側脛骨切断を行う順序は逆にすることができ、また、工程904〜908は工程910〜914の後に実行することができることが理解されよう。ただしこれらによって生じる手術工程に対する適切な改変を伴い、この改変は当業者には明らかであろう。
【0118】
ゆえに、遠位側大腿骨切断及び近位側脛骨切断がこれで行われたことになり、ただしこれは、従来式に計画された位置ではなく、計画工程104から取得された計画された切断方向を用いて行われる。計画された(planed)脛骨及び(an)大腿骨切断の方向は、人工膝関節の適正な機能的向きを確実にするのに役立ち、同時に、患者の長下肢アライメント及び解剖学的構造をできる限り維持する。
【0119】
916で、スペーサー器具を、切断した脛骨と大腿骨との間の伸展時隙間に挿入して、この隙間の評価を行い、任意で軟組織解放を実行して、伸展時の膝関節のバランスをとることができる。軟組織解放は、長下肢アライメントを改変した場合、必要になる可能性が高い。
【0120】
918で、膝関節を屈曲位置に曲げて、大腿骨のサイジング及び回転の評価を行うことができる。2つの異なるアプローチを使用することができる。工程920に示すように、測定大腿骨サイジング・回転アプローチを使用することができる。Attune外科的手技文書に記述されている測定大腿骨サイジング・回転ガイドを使用することができる。大腿骨のサイズを決定することができ、大腿骨切断の残り部分を行うのに使用する大腿骨切断ブロックの配設を決定することができる。このガイドに取り付けられたスタイラスを使用して、大腿骨のサイズを決定することができる。このガイドは角度調整可能であり、大腿骨切断ブロックの角位置を、切断された遠位側大腿骨表面に設定することができる。脛骨切断の角度が計画中に調整されず、関節角度に対応している場合、この段階では、大腿骨の回転に対する変更は導入されなくてよい。大腿骨の回転は、外側顆及び内側顆の最も後側部分に対する接線によって画定される。一般に、この線と切断された近位側脛骨面との間の角関係は、同じに保つことが望ましい。ゆえに、脛骨切断角度及び/又は長下肢アライメントをそれぞれの限度内に戻すために、脛骨切断の角度調整が計画中に導入された場合(例えば3°)、同じ角度調整が大腿骨回転に加えられる。ゆえに、切断された遠位側大腿骨をピンで固定する前に、大腿骨切断ブロックを更に3°余分に回転させて、顆突起の後側部分と、近位側脛骨の面との間の角関係を維持する。
【0121】
ゆえに、計画方法の特徴には、後側大腿骨切断の角度を計画して大腿骨回転を設定することが含まれ、これには、計画方法104の際に脛骨切断角度に対して行った角度調整が含まれる。
【0122】
工程920の別法は、工程922での大腿骨サイジング及び回転に対し、測定アプローチではなくバランスアプローチを使用することである。バランスデバイス(例えば一対のスプレッダー)を使用し、屈曲時隙間に導入して、内側顆及び外側顆の後側部分に均等な力を印加する。外科医は次に、ある角度で切断ブロックを配設し、これによって、後側顆突起に負荷がかかっているとき、後側切断は、切断された脛骨表面の面に対して概ね平行になる。ゆえに、このアプローチにおいて、軟組織構造は、後側大腿骨切断の角度ではなく、大腿骨の回転を定義する。
【0123】
大腿骨切断ブロックを配設した後、924で、測定アプローチ920(これは、角度調整を切断ブロック位置に適用することを含み得る)、又は922のバランスアプローチいずれかを使用して、後側大腿骨切断が924で行われる。
【0124】
後側後側大腿骨切断を924で行った後、スペーサーブロックを屈曲時隙間に挿入して、関節のバランスを評価し、任意で軟組織解放を行って、関節のバランスを改善することができる。
【0125】
手術手順の残りは、概ね従来通りである。残りの大腿骨切断を926で行って、大腿骨の準備を完了する。試行段階928中に試行インプラントを取り付け、関節の試行整復を実行することができる。理解されるように、試行により、外科医が満足するまで、切断及び/又は軟組織に変更を繰り返し行うことができる。最終的に、脛骨及び大腿骨の補綴コンポーネントを930で埋め込み、932で膝関節を閉じる。
【0126】
上述のように、本発明は、
図1の一般的な患者データ取得工程102、計画工程104及び手術方法工程106のそれぞれから、様々な操作を含み得る。更にこの計画方法は、ソフトウェアから印刷媒体まで様々な方法で実施することができ、これらは計画方法にわたってユーザをガイドする指示を提供し、かつ/又は、計画された脛骨及び大腿骨切断角度を決定するために、情報又はデータを入力する及び/又は計算を実行するためのフィールドを含む。
【0127】
一般に、本発明の態様の一部のいくつかの実施形態(例えば計画及び/又は手術方法のいくつかの実施形態)は、1つ又は2つ以上のコンピュータシステムによってデータを記録する又はデータを転送することを含む様々なプロセスを採用し得る。本発明の実施形態は更に、これらの操作を実施するための装置に関する。この装置は、必要な目的のために特別に構築されてもよく、あるいはコンピュータに記録されるコンピュータプログラム及び/又はデータ構造によって選択的に起動又は再構成される、汎用コンピュータであってもよい。本明細書に提示するプロセスは、本質的に、いかなる特定のコンピュータ又は他の装置にも関連しない。特に、様々な汎用機器が、本明細書の教示に従って書かれたプログラムと共に使用されてもよく、あるいは、必要な方法工程を行うため、より専門的な装置を構築するのが便利であり得る。様々なこれらの機器のための具体的な構造は、下記の記述から明らかとなるであろう。
【0128】
加えて、本発明の実施形態は、コンピュータ可読媒体又はコンピュータプログラム製品に関するものであり、これには、様々なコンピュータ実施操作を実行するためのプログラム指示及び/又はデータ(データ構造を含む)が含まれる。コンピュータ可読媒体の例としては、これらに限定されないが、磁気媒体(例えばハードディスク、フロッピーディスク、及び磁気テープ)、光学媒体(例えばCD−ROMディスク)、磁気光学媒体、半導体メモリデバイス、並びにプログラム指示を記録・実行するよう専用に構成されたハードウェアデバイス(例えばリードオンリーメモリデバイス(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM))が挙げられる。プログラム指示の例としては、機械語コード(例えばコンパイラにより生成されるもの)、及び、インタプリタを使用してコンピュータにより実行され得る高次レベルのコードを含むファイルの、両方が挙げられる。
【0129】
図11は、典型的なコンピュータシステムを示し、これは、適切に構成又は設計された場合、本発明による計画コンピュータ、又はCASコンピュータ、又はCASシステムの一部として機能し得る。コンピュータシステム970は、任意の数のプロセッサ972(中央処理装置、CPUとも呼ばれる)を含み、これは、主記憶装置976(典型的にランダムアクセスメモリ、RAM)、主記憶装置974(典型的にリードオンリーメモリ、ROM)を含む、記憶装置に接続されている。CPU 972は様々なタイプのものであってよく、マイクロコントローラ及びマイクロプロセッサを含み、これはプログラマブルデバイス(例えば、CPLD及びFPGA)、並びにゲートアレイASIC又は汎用マイクロプロセッサなどの非プログラマブルデバイスを含む。当該技術分野で周知のように、主記憶装置974はデータ及び指示を単方向的にCPUへと送信するよう機能し、主記憶装置976は典型的に、双方向的にデータ及び指示を送信するのに使用される。これらの主記憶装置は両方とも、上述のような任意の好適なコンピュータ可読媒体を含み得る。更に大容量記憶装置978は、双方向的にCPU 972に連結され、追加のデータ記録容量を提供し、上述のコンピュータ可読媒体のうち任意のものを含み得る。大容量記憶装置978は、プログラム、データなどを記録するのに使用することができ、典型的には、ハードディスクなどの二次的記録媒体である。大容量記憶装置978内に保持された情報は、適切な場合において、仮想メモリとして主記憶装置497の一部として標準的に組み込まれ得ることを理解されたい。具体的な大容量記憶装置(例えばCD−ROM 974)は、CPUに対し単方向的にデータを送信することができる。
【0130】
CPU 972は更に、1つ又は2つ以上の入力/出力デバイスに連結するインタフェース980に連結されており、この入力/出力デバイスには、例えば、ビデオモニター、トラックボール、マウス、キーボード、マイクロホン、タッチパネルディスプレイ、トランスデューサカードリーダー、磁気テープ又は紙テープリーダー、タブレット、スタイラス、音声認識又は手書き文字認識装置、あるいはその他の周知の入力デバイス(例えばもちろん他のコンピュータ)が挙げられる。最後に、CPU 972は所望により、982で概ね示されるように、外部接続を用いて、外部装置(例えばトラッキングシステム、データベース又はコンピュータ)、あるいは通信ネットワークに接続することができる。そのような接続を備えることで、CPUは、本明細書に記述される方法工程を実行する過程において、トラッキングシステム、ネットワークから情報を受け取ることができ、あるいは情報をトラッキングシステム、ネットワーク又はその他のデバイスに出力することができる。
【0131】
上記に、具体的な計画方法及び手術手順に従って、本発明が全般的に記述されているが、本発明はこれよりはるかに広い適用範囲を有する。当業者には、上記の記述に照らして、他の変形、改変及び代替例が認識されよう。
【0132】
〔実施の態様〕
(1) 患者の下肢の膝関節に対して実施する全人工膝関節置換術手術手順に使用するための、計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定する方法であって、
脛骨機能軸と大腿骨機能軸との間の長下肢角度について、第1の事前選択された値範囲を設定することと、
前記近位側脛骨切断角度について、第2の事前選択された値範囲を設定することと、
前記患者の脛骨機能軸、大腿骨機能軸及び膝関節線を画定する、前記患者から取得した解剖学的データを用いて、計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することと、を含み、前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度によって、前記計画された近位側脛骨切断角度と前記計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られる前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内の角度に対応し、かつ、前記計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲内の角度に対応することが確実になる、方法。
(2) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが、
前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
最初に計画された近位側脛骨切断角度を設定して前記関節線を再建すること、及び/又は、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度を設定して前記関節線を再建することを含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応しているかどうかを判定することを含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定し、かつ前記計画された近位側脛骨切断角度を、前記最初に計画された近位側脛骨切断角度に設定することを含む、実施態様4に記載の方法。
【0133】
(6) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された近位側脛骨切断角度を、調整角度により改変された前記最初に計画された近位側脛骨切断角度に設定し、これによって、前記計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するようにすることを含む、実施態様3に記載の方法。
(7) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、前記調整角度により改変された前記最初に計画された遠位側大腿骨脛骨切断角度に設定することを含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
最初に計画された近位側脛骨切断角度を設定して、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するよう前記長下肢角度を調整すること、及び/又は、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度を設定して前記関節線を再建することを含む、実施態様4に記載の方法。
(9) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応しているかどうかを判定することを含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応していると判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定し、かつ前記計画された近位側脛骨切断角度を、前記最初に計画された近位側脛骨切断角度に設定することを含む、実施態様9に記載の方法。
【0134】
(11) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された近位側脛骨切断角度を、調整角度により改変された前記最初に計画された近位側脛骨切断角度に設定し、これによって、前記計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するようにすることを含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、前記調整角度により改変された前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定することを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが、
前記関節線と前記脛骨機能軸との間の前記角度が、前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度を設定して前記関節線を再建すること、及び/又は、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度を設定して前記関節線を再建することを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することを含む、実施態様13に記載の方法。
【0135】
(16) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していると判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定することを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、調整角度により改変された前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定し、これによって、結果として得られる前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するようにすることを含む、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するよう、調整角度を用いて、前記計画された近位側脛骨切断角度を設定することと、前記調整角度を用いて、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度を設定することとを含む、実施態様13に記載の方法。
(19) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することを含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していると判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定することを含む、実施態様19に記載の方法。
【0136】
(21) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、更なる調整角度により改変された前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定し、これによって、結果として得られる前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するようにすることを含む、実施態様19に記載の方法。
(22) 前記第1の事前選択された値範囲が3°以下である、実施態様1に記載の方法。
(23) 前記第1の事前選択された値範囲が、177°〜180°の内側長下肢角度に対応する、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記第2の事前選択された値範囲が3°以下である、実施態様1に記載の方法。
(25) 前記第2の事前選択された値範囲が、87°〜90°の、前記脛骨切断線と脛骨機能軸との間の前記内側の角度に対応する、実施態様24に記載の方法。
【0137】
(26) 前記調整角度が、前記近位側脛骨切断角度を、前記第2の事前選択された範囲の最も近い値に対応させる、実施態様6、11又は18のいずれかに記載の方法。
(27) 前記調整角度が、前記長下肢角度を、前記第1の事前選択された範囲の最も近い値に対応させる、実施態様17に記載の方法。
(28) 前記更なる調整角度が、前記長下肢角度を、前記第1の事前選択された範囲の最も近い値に対応させる、実施態様21に記載の方法。
(29) 前記方法が、コンピュータ実施方法である、実施態様1〜28のいずれかに記載の方法。
(30) 非一過性形態でコンピュータプログラムコードを記録するコンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ可読コードは、実施態様1〜29のいずれかに記載の方法を実行するように、データプロセッサにより実行可能である、コンピュータ可読媒体。
【0138】
(31) データ処理デバイスであって、
データプロセッサと、
実施態様30に記載の前記コンピュータ可読媒体と、を含み、前記コンピュータプログラムコードが前記データプロセッサにより実行可能である、データ処理デバイス。
(32) 実施態様31に記載のデータ処理デバイスを含む、コンピュータ支援手術システム。
(33) 実施態様1〜28のいずれかに記載の前記方法を、ユーザが実行できるようにする、前記ユーザが読むことのできる指示を掲載した媒体。
(34) 患者の下肢の膝関節に全人工膝関節置換術手術手順を行う方法であって、
前記患者の前記下肢の解剖学的データを取得することであって、前記解剖学的データにより、大腿骨機能軸、脛骨機能軸、及び膝関節の関節線を決定することが可能になる、ことと、
計画された近位側脛骨切断角度及び計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することであって、前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度によって、前記計画された近位側脛骨切断角度と前記計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られる、前記脛骨機能軸と前記大腿骨機能軸との間の長下肢角度が、第1の事前選択された値範囲内の角度に対応すること、及び、前記計画された近位側脛骨切断角度が、第2の事前選択された値範囲内の角度に対応することが確実になる、ことと、
全人工膝関節置換術手順を前記患者の前記膝関節に実施することであって、遠位側大腿骨切断は、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を用いて行われ、近位側脛骨切断は、前記計画された近位側脛骨切断角度を用いて行われる、ことと、
を含む、方法。
(35) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが、
前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することを含む、実施態様34に記載の方法。
【0139】
(36) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
最初に計画された近位側脛骨切断角度を設定して前記関節線を再建すること、及び、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度を設定して前記関節線を再建することを含む、実施態様35に記載の方法。
(37) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応しているかどうかを判定することを含む、実施態様36に記載の方法。
(38) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応していると判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定し、かつ前記計画された近位側脛骨切断角度を、前記最初に計画された近位側脛骨切断角度に設定することを含む、実施態様37に記載の方法。
(39) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された近位側脛骨切断角度を、調整角度により改変された前記最初に計画された近位側脛骨切断角度に設定し、これによって、前記計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するようにすることを含む、実施態様37に記載の方法。
(40) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、前記調整角度により改変された前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定することを含む、実施態様39に記載の方法。
【0140】
(41) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
最初に計画された近位側脛骨切断角度を設定して、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するよう前記長下肢角度を調整すること、及び/又は、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度を設定して前記関節線を再建することを含む、実施態様35に記載の方法。
(42) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応しているかどうかを判定することを含む、実施態様41に記載の方法。
(43) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応していると判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定し、かつ前記計画された近位側脛骨切断角度を、前記最初に計画された近位側脛骨切断角度に設定することを含む、実施態様42に記載の方法。
(44) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された近位側脛骨切断角度を、調整角度により改変された前記最初に計画された近位側脛骨切断角度に設定し、これによって、前記計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するようにすることを含む、実施態様42に記載の方法。
(45) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記最初に計画された近位側脛骨切断角度が、前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、前記調整角度により改変された前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定することを含む、実施態様44に記載の方法。
【0141】
(46) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが、
前記脛骨機能軸に対する前記関節線の前記角度が、前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するかどうかを判定することを含む、実施態様34に記載の方法。
(47) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記脛骨機能軸に対する前記関節線の前記角度が、前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応すると判定された場合に、前記計画された近位側脛骨切断角度を設定して前記関節線を再建すること、及び/又は、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度を設定して前記関節線を再建することを含む、実施態様46に記載の方法。
(48) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することを含む、実施態様47に記載の方法。
(49) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していると判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定することを含む、実施態様48に記載の方法。
(50) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、調整角度により改変された前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定し、これによって、結果として得られる前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するようにすることを含む、実施態様48に記載の方法。
【0142】
(51) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記第2の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するよう、調整角度を用いて、前記計画された近位側脛骨切断角度を設定することと、前記調整角度を用いて、最初に計画された遠位側大腿骨切断角度を設定することとを含む、実施態様46に記載の方法。
(52) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応しているかどうかを判定することを含む、実施態様51に記載の方法。
(53) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していると判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定することを含む、実施態様52に記載の方法。
(54) 前記計画された近位側脛骨切断角度及び前記計画された遠位側大腿骨切断角度を決定することが更に、
前記計画された近位側脛骨切断角度と最初に計画された遠位側大腿骨切断角度とから得られた前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応していないと判定された場合に、前記計画された遠位側大腿骨切断角度を、更なる調整角度により改変された前記最初に計画された遠位側大腿骨切断角度に設定し、これによって、結果として得られる前記長下肢角度が、前記第1の事前選択された値範囲内に収まる角度に対応するようにすることを含む、実施態様52に記載の方法。
(55) 前記第1の事前選択された範囲が3°以下である、実施態様34に記載の方法。
【0143】
(56) 前記第1の事前選択された値範囲が、177°〜180°の内側長下肢角度である、実施態様55に記載の方法。
(57) 前記第2の事前選択された範囲が3°以下である、実施態様34に記載の方法。
(58) 前記第2の事前選択された値範囲が、90°〜87°の、前記脛骨切断線と脛骨機能軸との間の前記内側の角度である、実施態様57に記載の方法。
(59) 前記調整角度が、前記近位側脛骨切断角度を、前記第2の事前選択された範囲の最も近い値に対応させる、実施態様39、44、又は51のいずれかに記載の方法。
(60) 前記調整角度が、前記長下肢角度を、前記第1の事前選択された範囲の最も近い値に対応させる、実施態様50に記載の方法。
【0144】
(61) 前記更なる調整角度が、前記長下肢角度を、前記第1の事前選択された範囲の最も近い値に対応させる、実施態様54に記載の方法。
(62) 実施態様34に記載の方法であって、
前記患者の下肢の1つ又は2つ以上の画像をキャプチャすることを更に含み、解剖学的データを取得することは、前記1つ又は2つ以上の画像から、あるいは前記1つ又は2つ以上の画像から誘導される画像データから、あるいは前記1つ又は2つ以上の画像を画定する画像データから、解剖学的データを取得することを含む、方法。
(63) 前記1つ又は2つ以上の画像がX線像である、実施態様62に記載の方法。
(64) 前記1つ又は2つ以上の画像が、ストレス下状態又は負荷状態での前記患者の下肢の画像である、実施態様62又は63のいずれかに記載の方法。
(65) 前記患者の下肢の解剖学的データを取得することが、前記患者の下肢の解剖学的標認点の位置を測定することを含む、実施態様34に記載の方法。
【0145】
(66) 前記解剖学的標認点の位置が、コンピュータ支援手術システムを用いて測定される、実施態様65に記載の方法。
(67) 前記決定することが、データ処理デバイスによって実行される、実施態様34に記載の方法。
(68) 前記全人工膝関節置換術手順が、コンピュータ支援手術システムを用いて実行される、実施態様34に記載の方法。
(69) 前記患者の前記膝関節に対して前記全人工膝関節置換術手順を実施することが、前記計画された遠位側大腿骨切断角度に対応するよう、遠位側大腿骨切断のための切断ブロックの角度を設定すること、及び/又は、前記計画された近位側脛骨切断に対応するよう、近位側脛骨切断のための切断ブロックの角度を設定することを含む、実施態様34に記載の方法。
(70) 遠位側大腿骨切断のための前記切断ブロックの前記角度を設定することが、前記切断ブロックの角度調整機構を操作することを含む、実施態様69に記載の方法。
【0146】
(71) 近位側脛骨切断のための前記切断ブロックの前記角度を設定することが、前記切断ブロックの角度調整機構を操作することを含む、実施態様69又は70に記載の方法。