特許第6662899号(P6662899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6662899
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】人工デスメ膜
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/14 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
   A61F2/14
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-549655(P2017-549655)
(86)(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公表番号】特表2018-512930(P2018-512930A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】EP2016054101
(87)【国際公開番号】WO2016150652
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年1月23日
(31)【優先権主張番号】102015205534.5
(32)【優先日】2015年3月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グタームート,アンジェラ
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−78723(JP,A)
【文献】 特開2004−24852(JP,A)
【文献】 特開2005−229869(JP,A)
【文献】 特開2006−187281(JP,A)
【文献】 特表2009−511197(JP,A)
【文献】 特開2012−125207(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/097120(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0215717(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/021706(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/104366(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/14
A61F 9/00 ― 9/013
C12N 5/00 ― 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体細胞を新生角膜内皮組織に機械的シグナル伝達により分化させるための人工デスメ構築物であって、ドーム型基材(10)の凹面(12)に形成したハニカム構造を有する基材(10)から形成されている人工デスメ構築物。
【請求項2】
ハニカム構造が、中央の凹み(22)及び側方の張出し(24)を有する繰り返し基本要素(20)から形成されており、張出し高さが0.3〜1μmであり、張出し幅が1〜8μmであり、張出しで囲まれた中央の凹みの幅がそれぞれ10〜20μmである、請求項1に記載の構築物。
【請求項3】
ハニカム構造が、本質的に同じサイズの繰り返し基本要素(20)から形成されている、請求項2に記載の構築物。
【請求項4】
ニカム構造が、異なるサイズの繰り返し基本要素(20)から形成されている、請求項2に記載の構築物。
【請求項5】
基本要素(20)が、それぞれ6角形の基本形を有する、請求項2から4のいずれか1項に記載の構築物。
【請求項6】
生体ポリマー又は生体適合性ポリマーからなる、請求項1から5のいずれか1項に記載の構築物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のデスメ構築物、及び分離された細胞から新たに形成された角膜内皮組織を含む、インビトロ移植片。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の人工デスメ構築物を製造するための方法であって、
- ポリマー基材を用意するステップ、
- フォトリソグラフィーによる構造化、光分解アブレーション、マイクロメカニカルアブレーション、注型成形及びプレス成形から選択される微細構造化法を用いて、基材の表面に立体的ハニカム構造を形成させるステップ
を含む方法。
【請求項9】
立体的ハニカム構造を形成させるステップが、
- 微細構造化法の1つを用いてハニカム構造のネガ型を作るステップ、及び続いて
- 作られたネガ型を用いて注型又はプレスにより生体適合性ポリマー又は生体ポリマーのハニカム構造を形成させるステップ
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
間葉系幹細胞を角膜内皮組織に機械的シグナル伝達により分化させるための、請求項1から6のいずれか1項に記載の人工デスメ構築物の使用。
【請求項11】
分離された生体細胞から新生インビトロ角膜内皮移植片を製造するための方法であって、
- 分離された生体細胞を、請求項1から6のいずれか1項に記載の人工デスメ構築物と接触させるステップ、
- デスメ構築物上で細胞を培養するステップであって、角膜内皮の内皮細胞への細胞分化が行われるステップ、及び
- 新生角膜内皮に分化した組織をデスメ構築物と共にインビトロ角膜内皮移植片として得るステップ
を含む、方法。
【請求項12】
- 新生角膜内皮に分化した組織をデスメ構築物から剥離し、分離された角膜内皮をインビトロ角膜内皮移植片として得る
さらなるステップを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
分離された生体細胞が間葉系幹細胞である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか1項に記載の方法により製造された、インビトロ角膜内皮移植片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類の眼の角膜内皮組織を製造するための方法及び手段に関し、角膜内皮が、分離された細胞から体外で新生できるようにする、構造化された人工構築物を提供する。
【背景技術】
【0002】
眼の角膜(cornea)の透明性は、視力に不可欠である。とりわけ角膜は、無傷の内皮組織(角膜内皮)を必要とする。角膜裏側にあるこの単層内皮は、無細胞性基底膜、いわゆる角膜の後境界板又はデスメ膜と直接接触しており、デスメ膜は、この内皮と角膜の主層である実質との境界を定めている。健康な角膜において、デスメ膜は、本質的にコラーゲンVIII型及びラミニンからなる。デスメ膜は、内皮細胞の構造に対応する規則的な立体構造を有する。内皮は、デスメ膜を通して水を実質から能動的に排出し、そこで水分貯留及び浮腫形成を防止し、それによって角膜の混濁を防止する。
【0003】
ヒト角膜内皮細胞は、G1期で停止し、限られたインビボ増殖能だけしか示さない。分裂不能である結果、炎症過程又は機械的外傷によってだけでなく、自然老化過程のせいでも引き起こされる角膜損傷の際に、内皮の不可逆的な破壊及び最悪な場合は角膜混濁による完全失明がもたらされるおそれがある。確かに、死滅した内皮細胞は、稠密性及びそれによる内皮の機能を続いて保証するために、拡大し、間隙に移動する隣接細胞によって置き換わる。しかし、この修復メカニズムは非常に限られている。
【0004】
今日まで医学的措置によって対処することができる角膜の内皮細胞喪失は、わずかに限られている。しばしば利用される手法は、罹患した角膜全体をドナー角膜によって置換すること、いわゆる全層角膜移植術である。しかし、これはしばしば眼の臨床合併症を発症し、臨床合併症は、慢性ドライアイ、角膜血管新生(血管形成)、及び最悪の場合、ドナー異物の拒絶反応のような、眼のリハビリテーションの欠如又は低下を引き起こす。
【0005】
その間に、全置換以外に、罹患した内皮だけをそのデスメ膜(デスメ瘤)と一緒に局所的に除去した後、続いて角強膜-角膜トンネルを通して、角膜内皮及び付随するデスメ膜並びにさらにわずかな割合の後部実質からなる、ドナー角膜からの層状移植片をレシピエントの前眼房に挿入する方法が確立されている。この特異的移植により、確かに移植の通常のリスク及び全移植片と比べた手術の副作用が減少する。それにもかかわらず、まだ克服されていないさらなる技術的問題もここに存在する。
【0006】
全てのこの角膜組織同種移植において、発生する内皮細胞喪失が問題である。ドナーの眼の調製技法、保存の種類及び方法、並びに使用される培地、輸送及び最後にドナー組織の周術期取扱いは、多かれ少なかれ常に移植片における大きな内皮細胞喪失を伴う。外来組織の免疫拒絶反応以外に、これらの要因により、移植された内皮組織が無機能になり、リハビリテーションが始まらない一次性移植不全(primaerer Transplantatversagen)に至るおそれもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、角膜内皮組織を臨床修復する場合にこれらの欠点を克服するという課題に取り組んだ。同種移植片の公知の欠点だけでなく、特に、外植されたドナー組織における内皮細胞の破壊の問題も軽減されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その解決のために、本発明は、公知の移植片の前記欠点を克服する、新規な生体内皮移植片を製造するための方法及び手段、すなわち分離された細胞から組織培養で新たに製造可能な、新規な人工デスメ膜上の角膜内皮組織を提供する。
【0009】
本発明者らは、驚くことに、健康な角膜に存在するデスメ膜を特異的に複製した特異的人工構築物によって、機能的な角膜内皮組織を高い細胞密度で新たに形成するように、分離された全能性又は多能性幹細胞を刺激することができ、失われた角膜内皮の機能を完全に代替するために、その細胞を本発明の人工デスメ構築物自体と一緒に患者の眼に移植することができることを発見した。
【0010】
そのために、本発明は、インビトロ角膜内皮組織への生体細胞、特に多能性又は全能性細胞の機械的シグナル伝達による分化を支援又は可能にするために特に適切な、人工デスメ構築物を提供する。
【0011】
理論に縛られることを望むわけではないが、分離された細胞を本発明のデスメ構築物上に播種した後に、細胞の機械的シグナル伝達による分化が生じ、それによって機能性角膜内皮組織の形成が生じる。その際、レシピエントの自己細胞、特に多能性又は全能性細胞自体を使用することができる。したがって、レシピエント自身の細胞からなる人工角膜移植片を生み出すことができ、その際、周術期又は術後に起こり得る細胞死を埋め合わせることができるように、インビトロ組織培養の際の適切な培養手段によって、細胞数及び細胞密度を選択することができる。移植が成功した後にも移植された内皮組織の機能が持続的に維持されたまま保たれ、完全な持続的リハビリテーションを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のドーム型デスメ構築物の凹面側12における上面図である。
図2図1によるデスメ構築物の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によるとデスメ構築物は、本質的に球形のドーム型の基材からなり、この基材の凹面(凹部)の表面上にハニカム構造が形成されている。基材表面の立体的ハニカム構造化(patterning)は、適切な微細構造化法を用いて製造可能である。
【0014】
本発明に関連して、本発明者らは、「ドーム」又は「ドーム型」を、より狭い意味の球冠だけでなく、回転楕円体、回転放物面の断片又はキャップ及びその移行形のような半深皿形又は半ドーム形も含まれる、本質的にこの形に対応する形及び形状を含むと理解する。本発明によると、人工デスメ構築物は、特に構築物により又は構築物を用いて形成された移植片が使用されるべき角膜の形に対応する形を有する。
【0015】
特に、ハニカム構造は、ハニカム形で好ましくは隙間なく互いに接して配列している幾何学的な繰り返し基本要素又はハニカムから構成されたものを意図しており、意図する各基本要素は、中央の凹み及びこれを隣接する基本要素と区切る側部張出しを有する。好ましくは、張出し高さ、したがって中央の凹みの深さは、0.3〜1μmである。好ましくは、張出し幅は1〜8μmである。好ましくは、張出しで囲まれた中央凹みの幅は10〜20μmである。
【0016】
好ましくは、基本要素は、それぞれ6角形の基本形を有し、それゆえに古典的ハニカム構造を形成する。代替的な実施形態では、繰り返し基本要素の基本形は、円形又は本質的に円形である。代替的な変形形態では、基本形は、本質的に長方形又は正方形である。代替的な変形形態では、基本形は、全般的に多角形である。好ましくは、異なる数の頂点、好ましくは5〜9つの頂点を有する多角形が交互に現れ、特に好ましくは、これらのハニカム構造は、6角形及び5角形から構築されている。
【0017】
特別な変形形態では、ハニカム構造は厳密に規則的であり、すなわち本質的に同一形状の、好ましくは本質的に同じサイズの基本要素から構築されている。代替的な好ましい変形形態では、ハニカム構造は不規則に造形されている。すなわち、考えられている基本要素は、それぞれ異なるサイズ及び/又は異なる個別形状を有し、その際、ハニカム構造における基本要素のサイズは、好ましくは(準)確率的に分布しており、その際、6〜約24個の互いに接する基本要素の群の平均サイズは、一定に保たれる。その際、前記の好ましいサイズ範囲を超過することはない。
【0018】
好ましくは、張出し、すなわち基本要素の側壁は、それぞれ構造化された基材表面の基準面に対して好ましくは垂直に配置されている。代替的な変形形態では、基本要素の側壁は、その凹みの底に近づくほど円錐形になっている。そのために、特に、側壁の厚さは、凹みの底に近づくほど増加するようにされている。したがって、凹みは、多角錐台、又は本質的に円形の横断面の場合は円錐台の形を含む。
【0019】
変形形態では、環状で、半深皿から突出した縁部が提供される。この縁部は、構造化されている必要がない。縁部は、一方で微細構造化の間の、他方で細胞培養にデスメ構築物を使用する間の、デスメ構築物の容易な取扱いに役立つ。場合により、縁部は、細胞培養期の終了後に、又は移植片の構成要素としてデスメ構築物を使用する前に、取外すことができる。
【0020】
好ましい形態では、本発明のデスメ構築物は、生体又は生体適合性ポリマーを含み、好ましくは完全にそれからなる。生体又は生体適合性ポリマーは、好ましくは機械弾性であり、柔軟である。代替的な変形形態では、ポリマーは、本質的に非弾性であるが柔軟である。
【0021】
デスメ構築物がインビトロ移植片の構成要素として眼に移植される場合に、この構築物が術後に生来のデスメ膜の物理化学的機能を代替できることが、生体又は生体適合性ポリマーを選択するために重要である。これに、特に、実質から、能動輸送している内皮組織への水(眼房水)の透過(受動拡散)能が含まれる。その際、特にこの拡散を、材料成分の極性の選択及び/又は多孔質若しくは穿孔性構造(分子ふるい)により可能にするようにされる。
【0022】
さらにまた、人工デスメ構築物は移植後に部分的又は完全に吸収されるようにされる。好ましくはその際、生来の基底膜の機能を引き継ぐ残留構造が残り、それに反して、特に移植片の機械的安定化のために、デスメ構築物中に存在する材料が移植の直後に吸収される。術後に人工デスメ構築物から基底膜が形成するようにもされる。
【0023】
さらに、生来のデスメ膜の機械的特性に到達するように生体又は生体適合性ポリマーの機械的特性を選択するようにされる。特に、一方で分離された細胞からインビトロ組織培養で新生角膜内皮組織の機械的シグナル伝達による形成を可能にし、他方でレシピエントの眼に移植した際の周術期又は術後の十分な安定性を保証するために、デスメ構築物の機械的剛性が要求される。変形形態では、インビトロ培養及び/又は術後の間に構築物の機械的特性が変化するようにされる。このために、異なる吸収を示す、又は内皮細胞と相互作用する複数の成分から組成物が選択される。
【0024】
構築物中の1種以上の生体適合性ポリマーは、全体又は部分が合成起源でもよい。ポリマーは、公知の方法で官能化されている場合があり、特に接着促進性のタンパク質又はペプチドと結合している場合もある。
【0025】
ポリマーは、好ましくはコラーゲン若しくはコラーゲン混合物を含み、又は好ましくはそれからなる。好ましいコラーゲンは、コラーゲンI型及び/又はII型である。コラーゲンVIII型及び/又はIV型が特に好ましい。あるいは、その混合物が好ましい。好ましくはさらにラミニンが含まれる。好ましくはさらにフィブロネクチンが含まれる。生化学的には、生来のデスメ膜は、眼において主にコラーゲンIV型及びVIII型、フィブロネクチン並びにラミニンから構成される。好ましくは、これらの細胞外マトリックス成分を、好ましくは標準化された方法で、好ましくは組換え生産するようにする。人工構築物における孔サイズ及びそれに伴う生来のデスメ膜の拡散ポテンシャルに到達するように、成分の混合割合が調整される。好ましくは、天然ナノ構造化を有するコラーゲン又はコラーゲン混合物が使用される。これは、本発明によるデスメ構築物の微細構造化の機械的シグナル伝達作用を強化し、分離された細胞が内皮組織に分化するのを促進及び安定化する。
【0026】
追加又は代替として、生体材料は、動物又はヒト身体の生来の乳児又は成体デスメ膜から公知の、組換え生産されたタンパク質を含む、又はそれからなる。これらのタンパク質は、異種又は同種起源でもよい。組換え製造されたヒトコラーゲン又はそれからのコラーゲン混合物が好ましい。代替又は追加として、デスメ構築物は、絹タンパク質を含む又はそれからなる。変形形態では、構築物は、非生物起源の生体適合性ポリマーを含む、又はそれのみからなる。
【0027】
代替的な変形形態では、デスメ構築物の原材料は、合成ポリマー及びエラストマー、例えばシリコーンエラストマー又はPMMA、ポリエチレン、ポリアミド、PVA並びに官能化ポリマー、混合ポリマー及びコポリマーである。感熱性又は熱応答性ポリマー、特にN-イソプロピルアクリルアミド、同様にその修飾物又は誘導体、並びにN,N-ジエチルアクリルアミド(PDEAAm)、N-ビニルカプロラクタム(PVCL)及び同等物も特に好ましい。
【0028】
好ましくは、そのような合成ポリマーの少なくとも表面は、その上で培養された生体細胞との適合性を公知の方法で獲得するために、例えばポリマーの塗布又は化学若しくは物理処理により官能化されている。ポリマーは、プラズマ滅菌プロセスによりラミニン及び/若しくはフィブロネクチン又は他の細胞接着タンパク質とも水素結合により結合していてもよい。ポリマーは、化学的カップリング(例えばEDC/NHS反応)により接着促進タンパク質(上記参照)と共有結合していてもよい。
【0029】
本発明により、微細構造化法を用いてデスメ構築物が製造される。これは、好ましくはフォトリソグラフィーによる構造化法、光分解アブレーション、マイクロメカニカルアブレーション並びに注型成形及びプレス成形から選択される。
【0030】
その際、微細構造化は、好ましくは、原材料から材料除去により所望のハニカム構造を作り出すいわゆるアブレーションプロセスにより行われる。レーザに基づく方法(光分解アブレーション)が好ましい。レーザ直接構造化の場合、集束レーザビームが構成部品表面に向けられ、その際、周辺帯近くの表面(縁近く)への吸収により、入射しているレーザ放射のエネルギーが熱エネルギーに変換される。この変換の効率は、使用されるレーザ波長、表面粗さ、入射角及び温度に依存して原材料の吸光係数により決定される。これと異なり、放射エネルギーは、化学結合を直接切断することができる。代替に又は追加として、材料除去は、固体から液体、続いて気体への原材料の相変化を含む。どのような場合にも集束レーザビームの範囲内で原材料が粒子及び/又は物質融液の形で除去される。パルスレーザの場合、これは、特にレーザパルスあたり個別の形状を主に回転放物面(「ウエル」)の形で製造する。
【0031】
関連する構造の製造は、加工物表面上方のレーザビームの適切な動きにより起こる。これは、好ましくはいわゆるレーザスキャナを使って実現される。レーザスキャナは、高速モータにより作動される1つ以上の可動鏡を含む。その際、到達可能な構造サイズ、構造の精度及び厳密さに関する除去品質は、レーザ源の適切な選択により選択することができる。その場合に、レーザ光の波長、出力(パルスレーザの場合は、個別のパルスエネルギー)及び光源のビーム品質が決定的に重要である。
【0032】
好ましい代替的な微細構造化法は、機械的切削による除去プロセス、特に微結晶工具を用いたマイクロダイヤモンドフライスである。その際、マイクロメートル未満の範囲の構造サイズは、特別な機械技術及び極めて鋭い工具の組合せによってのみ製造される。この範囲の構造サイズには、いわゆる超精密技法が使用される。この場合、好ましくは、その硬度及び鋭さ並びにその正確な切断により所望の構造を製造可能にする単結晶ダイヤモンド工具が使用される。回転プロセスでの超精密部品の製作は、好ましくは回転対称性表面の製造に限られる。あるいは、いわゆる非円形機械加工への拡張により、回転軸に対して非対称の表面及び構造も製造することができる。
【0033】
デスメ構築物の微細構造化のための代替的に好ましいアプローチは、材料除去を受けた基材での局所的材料構築又は材料硬化によって本発明のハニカム構造が形成する、いわゆる形成プロセスである。好ましい方法は、2光子リソグラフィー、干渉リソグラフィー及びグレイスケールリソグラフィーである。
【0034】
2光子リソグラフィー(2PL)は、2光子吸収(2PA)の物理的作用を基本とし、横分解能150nm及び軸分解能400nmで三次元構造を製造することを可能にする。波長780nmを有する拡大されたフェムト秒ファイバレーザのビームは、倒立顕微鏡の対物レンズに結合され、これによって液状の感光性ポリマーに集光される。レーザが集光され、パルス状であるので、焦点での強度は、焦点内で2光子吸収が可能になるほど十分高い。対応する範囲において、赤外線ではなく波長390nmの紫外線が放射される。構築物の基材の成分としての液状の光ポリマーは、高エネルギーUV線により露光された場合にのみ架橋し、その結果2光子吸収が起こる範囲では、液状ポリマーが基材に硬化し、ハニカム構造が形成する。
【0035】
干渉リソグラフィーの場合、適切な干渉パターンを感光面に結像させ、記録するために2ビーム又はマルチビーム干渉法が利用される。そのために、レーザビーム(アルゴンイオンレーザ)が拡大され、(例えばキューブ型ビームスプリッタにより)2つの部分ビームに分割される。鏡(平面鏡又は凹面鏡)を用いてこれらを特定の角度で交差させる(重ね合わせる)ことにより、この角度及び使用する波長に依存して一定の格子定数を有する縞模様が生じる。特に基材の回転後に反復使用することにより、ハニカム構造を形成させることができる。
【0036】
グレイスケールリソグラフィーは、マスクの露光に基づき、マスクのパターンは、露光により感光性ポリマーに記録される。その際、異なるグレイスケールにより異なる構造深さがマスク上に実現される。マスクの裏側にマスク上のグレイスケール分布に対応する強度分布が形成する。ポジ型レジストを使用した場合、強度が最高の位置の構造が最も深い。ネガ型レジストについて、この関係は逆になる。
【0037】
生体用又は生体適合性で移植可能なデスメ構築物を製造するために、プレス成形又は注型成形法及びその組合せが特に好ましく、その際まず第一に、前記のアブレーションプロセス又は形成プロセスを用いて好ましくはポリマー原材料に所望のデスメ構築物のネガ型(鋳型)が製造され、続いて生体又は生体適合性ポリマーからデスメ構築物自体がポジ型として予め製造された型に、注型及び/又はプレスを用いて生産される。この好ましくは2段階の方法により、それ自体は物理的微細構造化法に直接利用することができない生体又は生体適合性ポリマーの微細構造化も行うことができる。特に成形は、全ての生体材料が硬化又は重合プロセスに供される、すなわち液状の注型可能な凝集状態から硬化によりゲル状又は固体の状態に至るようにされる。成形のために、材料はネガ型に接して硬化する(注型)、又はネガ型が材料の中に押し込まれる(プレス)。生物起源の純粋な生体材料以外に、本明細書記載の合成ポリマーも成形のために提供される。
【0038】
したがって、本発明のさらなる主題は、少なくとも、1.ポリマー基材を用意するステップ及び2.微細構造化法を用いて基材表面に立体的ハニカム構造を形成させるステップを含む、人工デスメ構築物を製造するための方法である。この方法は、好ましくは、フォトリソグラフィーによる構造化、光分解的アブレーション、マイクロメカニカルアブレーション、注型成形及びプレス成形から選択される。
【0039】
好ましくは、立体的ハニカム構造を形成させるステップは、2.1.微細構造化法を用いてハニカム構造のネガ型(型)を作るステップ、及び続いて2.2.作られたネガ型を用いて注型又はプレスにより生体適合性又は生体ポリマーの最終的なハニカム構造を形成させるステップを含む。
【0040】
本発明によると、本明細書記載の人工デスメ構築物は、「組織工学」のアプローチにおいてヒト又は動物の体外で個別の細胞から内皮組織を創出するために使用される。それゆえに本発明の主題は、また、特に間葉、前駆細胞又は幹細胞がインビトロで角膜内皮組織に機械的シグナル伝達性分化するための人工デスメ構築物の使用である。
【0041】
本発明により、デスメ構築物に接して新たに形成されるべき角膜内皮組織の起源となる細胞は、好ましくは真核生物前駆細胞、特に成体幹細胞、胚性幹細胞及び人工多能性幹細胞である。間葉系細胞が好ましく、間葉系幹細胞が特に好ましい。これらは、好ましくはレシピエントの組織から分離されている。それに関して、好ましくは成体幹細胞が患者の自己脂肪組織から最小限の侵襲性で取り出される。
【0042】
インビトロ分化のために、本発明のデスメ構築物の構造化表面上に細胞が播種され、そこで培養される。播種時の細胞密度は、好ましくは少なくとも5×105/cm2である。インビトロ細胞分化を支援するために、最終的に追加として公知の化学因子を使用することができ、該化学因子は、本発明の微細構造化デスメ構築物上の細胞の機械的シグナル伝達を支援する。しかし特に、細胞分化は、本発明の人工デスメ構築物の微細構造化に対して機械的シグナル伝達経路によってのみ行われるようにされる。それゆえに、それによって得られる新生角膜内皮組織は、本質的に化学的又は他の物理的分化因子により影響を受けず、これは、一方で分化を安定化し、他方でまた、術後のこれらの細胞の死亡率又はその脱分化も減少させる。
【0043】
したがって本発明の主題は、また、分離された生体細胞から新生角膜内皮移植片を製造するための方法であって、1.分離された生体細胞を人工デスメ構築物と接触させるステップ、2.デスメ構築物上で細胞を培養するステップであって、角膜内皮の内皮細胞への細胞分化が行われるステップ、及び3.新生角膜内皮に分化した組織を人工デスメ膜としての本発明のデスメ構築物と一緒にインビトロ角膜内皮移植片として得るステップを含む方法である。
【0044】
それゆえに、この変形形態では、人工デスメ構築物を、内皮に分化した細胞と一緒に、移植片として患者の角膜の内皮欠損を修復するために使用するようにされる。この変形形態では、前記生体材料が、デスメ構築物のための原材料として好ましい。
【0045】
本発明のさらなる主題として、人工デスメ構築物は、その上に形成した角膜内皮組織と一緒にインビトロ組織移植片として提供される。これは、破壊された角膜内皮組織の機能をレシピエントの眼、脊椎動物の眼、特に哺乳動物の眼、特にヒトの眼で代替するために、そこに移植可能である。それゆえに本発明の主題は、また、分離された細胞から新たに構築された角膜内皮組織及び人工デスメ構築物を含むインビトロ移植片である。本発明のデスメ構築物と接着する、分化した新生角膜内皮組織は、オーダーメイドのインビトロ移植片として使用し、公知の手術技法、特にDMEK(デスメ膜内皮角膜移植術)又はDMAEK(デスメ膜自動内皮角膜移植術)によりレシピエントの眼に挿入することができる。
【0046】
本発明の主題は、また、分離された生体細胞から新生角膜内皮移植片を製造するための方法であって、1.分離された生体細胞を人工デスメ構築物と接触させるステップ、2.デスメ構築物上で細胞を培養するステップであって、角膜内皮の内皮細胞への細胞分化が行われるステップ、3.本発明のデスメ構築物上の、角膜内皮に分化した新生組織を得るステップ、4.角膜内皮組織をデスメ構築物から剥離し、分離された角膜内皮組織をインビトロ角膜内皮移植片として得るステップを含む方法である。
【0047】
したがって、この代替的な変形形態では、上に播種された細胞が内皮組織に分化した後にこれをそこから再び剥離し、分離した内皮組織を患者の角膜での内皮欠損を修復するための移植片として使用するようにされる。
【0048】
人工デスメ構築物からの内皮組織の剥離は、インビトロ組織培養から公知の方法により行うことができる。これに、可溶性酵素、洗剤及び類似物の使用が当てはまる。アクターゼ(Akkutase)のような穏やかな酵素を用いて細胞を処理するようにされる。その際、基板への内皮細胞の付着を仲介する接着タンパク質の破壊以外に、内皮細胞同士の「タイトジャンクション」が破壊されることも防がなければならない。タイトジャンクションが破壊されると、組織の機能的完全性が損なわれる。
【0049】
代替又は追加として、接着因子の形成を減少させ、剥離を容易にするために、好ましくはデスメ構築物の表面は、少なくとも内皮細胞と接触している側が特異的にコーティング又は官能化されている。
【0050】
代替又は追加として、特に好ましい変形形態では、デスメ構築物の合成ポリマーは、本明細書記載の感熱性又は熱応答性ポリマー、好ましくはN-イソプロピルアクリルアミドである。そのような原材料では、温度に基づいて基板、すなわちデスメ構築物への内皮細胞の接着又はその剥離を制御することができる。好ましくは、内皮細胞を剥離させるために、培養/分化期の終わりにデスメ構築物が内皮細胞と共に約20℃以下の低温にされる。それにより、感熱性基板は状態変化を受け、そのことは、内皮組織が全体として剥離することに繋がり、又はこれが広く促進される。
【0051】
したがって本発明のさらなる主題として、インビトロで形成した角膜内皮組織は、それ自体でインビトロ組織移植片として提供される。これは、破壊された角膜内皮組織の機能をレシピエントの眼、脊椎動物の眼、特に哺乳動物の眼、特にヒトの眼で代替するために、そこに移植可能である。それゆえに本発明の主題は、また、分離された細胞から新たに構築された角膜内皮組織からなるインビトロ移植片である。分離された新生角膜内皮組織は、公知の手術技法、特にDMEK(デスメ膜内皮角膜移植術)又はDMAEK(デスメ膜自動内皮角膜移植術)によりレシピエントの眼に挿入することができる。
【0052】
以下の図面及び特定の実施形態の実施例に基づき、本発明をより詳細に説明する。
【0053】
図面に、デスメ構築物の構造を図式的及び例示的に示す。図1及び図2の表示にサイズ目盛を付けていない。むしろ、構築物の全体サイズに対してハニカム構造を何倍にも拡大して示している。図1に、本発明のドーム型デスメ構築物の凹面側12における上面図を示す。図2に、図1によるデスメ構築物の横断面図を示す。構造の立体性を示すために、図1のハニカム構造は、縁に近づくほど透視画法的に歪んでいる。デスメ構築物は、ドーム又は半深皿形の基材10を有し、その際、ドームの対応する球の半径は、レシピエントの眼における角膜の半径と適合している。微細構造化のハニカム構造は、考えられる繰り返し基本要素20から構成され、この基本要素は、それぞれ、中央の凹み22及び側方の凸型の張出し24として形成された境界を有する。示されたデスメ構築物の形態において、これは、縁側に環状の突き出た縁14を有する。ドーム型構築物10の凹型の凹み12の表面では、それぞれ凹み22及び側方の張出し24を有する繰り返し基本要素20からなるハニカム構造が提供される。示された実施形態では、ドーム型基材10の上縁に、環状で本質的に滑らかな縁14が形成されている。
【0054】
[実施例1]
人工デスメ構築物の製造
1. リソグラフィーによる型の製造
1.1 2光子リソグラフィー
2光子リソグラフィー(2PL)は、2光子吸収(2PA)の物理的作用を基本とし、横分解能150nm及び軸分解能400nmで三次元構造を製造することを可能にする。波長780nmを有する拡大されたフェムト秒ファイバレーザのビームは、倒立顕微鏡の対物レンズに結合され、これによって液体の感光性ポリマーに集光される。レーザが集光され、パルス状であるので、焦点での強度は、焦点内で2光子吸収が可能になるほど十分高い。対応する範囲において、赤外線ではなく波長390nmの紫外線が放射される。液状の光ポリマーは、高エネルギーUV線により露光された場合にのみ架橋し、その結果2光子吸収が起こる範囲では、液状ポリマーが硬化する。
【0055】
焦点に対して感光性ポリマーを移動させることにより、使用するポリマー、例えばIP-Dip、IP-L、IP-G、OrmoComp、AR-P3120、SU8から所望の構造を製造することができる。最終的な現像ステップは、構造体を得るために、溶媒中で露光された材料から未露光の材料を溶解する。
【0056】
2光子リソグラフィーには4つの変形があるが、関連する構造を製造するためにそれらをそれぞれ使用することができる:
a) 従来法の場合、レーザビームがガラス板を通して感光性ポリマーに集光される。加えて、できるだけ多くのレーザ光をポリマー内に結合させ、それにより最大の解像度を可能にするために、顕微鏡対物レンズとガラス板の間に液浸油がある。本方法のこの変形形態の場合、対物レンズの作動距離は、最大の構造高さを限定する。構造体は、基板の上側から上方に向かって構築される。
b) ディップインレーザリソグラフィー(DiLL)は、金属又はシリコンのような不透明基板の使用も可能にする。この場合、レーザビームは基板の下面に集光され、感光性ポリマーは、顕微鏡対物レンズと基板の間にあり、同時に液浸媒として役立つ。構造体は基板の下面から下向きに構築される。最大の構造高さは、ピエゾ駆動に基づき300μmであるが、顕微鏡対物レンズのzドライブの使用によりずっと高い構造体も実現することができる。
c) 第3の変形は、空気対物レンズの使用にその本質がある。原理は、従来の方法の原理に該当するが、しかしながら液浸油を使用しない。
d) ガルバノスキャナに基づくアドオンを通じて、多焦点を用いたマーキングにより同時にマーキング速度が最高200倍に高められる。
【0057】
2PLを用いて製造されるべき構造は、まず第一にプログラムされなければならない。このために、プログラミング言語GWLで記述されたソフトウェアDescribeを(他のシステム用にMatlabも)利用することができるか、又は適切な構造をstlファイルとしてプログラムし、次にプログラムNanoslicerに引き継ぐことができるかのいずれかである。感光性ポリマーは細胞分化用の材料として適切ではないので、デスメ膜の反転構造が製造され、適切な材料で成形される。シリコーンゴム又はヒト若しくは動物性コラーゲンが使用される。それに応じて、直径及び高さに差異を有し、ランダムに配置されている6角形の突起が実現される。
【0058】
構造体を製造するための手順は、以下のとおりである:
- 接着剤(Fixogum)で基板を試料ホルダーに固定する
- 基板の上面(従来法及び空気対物レンズについて)又は下面(DiLL法について)に適切なフォトポリマーを滴下する
- 従来法について、さらに基板の下面に液浸油を適用する
- 試料を備える試料ホルダーを2PL機器に固定する
- 構造の適切なプログラミングによりマーキングプロセスを開始する。プログラムされた構造に応じてレーザの焦点に対して試料を移動させる。
【0059】
1.2. 干渉リソグラフィー
干渉リソグラフィーの場合、適切な干渉パターンを感光面に結像させ、記録するために2ビーム又はマルチビーム干渉法が利用される。そのために、レーザビーム(アルゴンイオンレーザ)が拡大され、(例えばキューブ型ビームスプリッタにより)2つの部分ビームに分割される。鏡(平面鏡又は凹面鏡)を用いてこれらを特定の角度で交差させる(重ね合わせる)ことにより、この角度及び使用する波長に依存して一定の格子定数を有する縞模様が生じる。
【0060】
干渉パターン中に配置された感光性試料は、基板(金属、シリコン、ガラス)からなり、その基板の上にフォトポリマーの滑らかな層がスピンコートされる(層厚、スピンプログラム)。これに関して、ポジ型又はネガ型レジストを利用することができ、その際、ネガ型レジストは露光した場所で架橋し、ポジ型レジストの場合、ポリマーの未露光部分が構造を形成する。
【0061】
縞形成干渉パターンをポリマー層に記録するために、試料(レジスト層を有する基板)に干渉パターンが露光される。次の現像ステップで、(ポジ型レジストの場合)露光されたポリマーが層から溶解除去される。この方法で6角形の突起を形成できるようにするために、同じ試料に干渉パターンを3回露光し、各露光の後に試料を60°回転させなければならない。現像ステップの後に、プラスチックからなる6角形の突起が存在し、他の材料でデスメ構造を成形するためにそれらを同様に使用することができる。その際、手順は以下のとおりである。基板にフォトポリマーを塗布し、ポリマーに応じて場合により「ホットプレート」上で試料を焼成する。光学的構造における干渉パターンの場所に試料を配置し、試料に干渉パターンを3回露光し、その際、各露光後に試料を同じ方向に60°回転させ、適切な現像液中で試料を現像する。
【0062】
1.3 グレイスケールリソグラフィー
グレイスケールリソグラフィーは、マスクの露光に基づき、マスクのパターンは、露光により感光性ポリマー中に記録される。その際、異なるグレイスケールにより異なる構造深さがマスク上に実現される。マスクの裏側にマスク上のグレイスケール分布に対応する強度分布が形成する。ポジ型レジストを使用した場合、強度が最高の位置の構造が最も深い。ネガ型レジスト材料について、この関係は逆になる。
【0063】
グレイスケールリソグラフィーを用いて反転したデスメ構造を製造するために、構造をグレイスケールで結像するマスクを設計しなければならない。ポジ型レジスト材料を使用した場合、6角形の輪郭は白味がかり、中央に近づくほど黒くなる。ネガ型レジスト材料が使用される場合、マスク上の6角形は中央が白味がかり、外側に近づくほど黒くなる。マスクの面照明を保証するために、これは、拡大及び集束されたレーザビームの光軸に対して垂直に配置される。構造の寸法が原寸大となるように、集束によりマスクは試料上に縮小されて結像する。ここで、手順は以下のとおりである。基板にフォトポリマーを塗布し、ポリマーに応じて場合により「ホットプレート」上で試料を焼成する。光学的構造における干渉パターンの場所に試料を配置し、試料に拡大及び集束したレーザビームを露光し(レーザビームは拡大の直後にグレイスケールマスクを透過する)、適切な現像液中で試料を現像する。
【0064】
2. 最終的な生体用デスメ構築物の形成
細胞分化のために材料特性が極めて重要であるので、そのようにリソグラフィーにより製造された構造体は、シリコーンゴム又は動物若しくはヒトのコラーゲンのような、より柔らかな材料で成形されることにより、その材料の模擬デスメ構造体が形成する。生体適合性材料から移植可能なデスメ構築物を製造するために、注型可能なコラーゲン組成物が使用され、まず第一にプラスチックから構造化された型が製造される。
【0065】
[実施例2]
インビトロ角膜内皮組織の製造
予め脂肪組織から採取及び分離された間葉系幹細胞を、実施例1により製造された人工デスメ構築物上に少なくとも5×105細胞/cm2の細胞密度で播種する。均等な分布及び接着のために構築物を軌道振盪する。
【0066】
完全に接着後、膜をバイオリアクターに取付け(37℃、5%CO2、相対湿度100%)、幹細胞が完全に分化し、角膜内皮細胞の機能的強さが獲得されるまで培養する(内皮細胞特異的マーカー又は機能検査により検査可能)。培養時間は、具体的な幹細胞の分化速度により個別に調整される。培養のために血清を10%及び抗生物質を1%含む基本培地が使用される。
【0067】
培養の終了後、分化した、完全に機能性の新生角膜内皮組織がデスメ構築物上に得られる。この組織は、デスメ構築物上に付着しており、レシピエントの眼における角膜内皮欠損を修復するためのインビトロ移植片をデスメ構築物と一緒に形成している。
図1
図2