(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663045
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】レーザ機械加工中にプロセス監視するためのデバイスであって光学式間隔測定装置とプリズム偏光ユニットで構成されるデバイス、並びに、当該デバイスを搭載したレーザ加工ヘッド
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20200227BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20200227BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20200227BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/03
B23K26/21 A
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-563096(P2018-563096)
(86)(22)【出願日】2017年5月16日
(65)【公表番号】特表2019-517390(P2019-517390A)
(43)【公表日】2019年6月24日
(86)【国際出願番号】EP2017061673
(87)【国際公開番号】WO2017207261
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2019年1月29日
(31)【優先権主張番号】102016109909.0
(32)【優先日】2016年5月30日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516234100
【氏名又は名称】プレシテック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モーセル ルディガー
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/062636(WO,A1)
【文献】
特開平2−155589(JP,A)
【文献】
実開昭49−84789(JP,U)
【文献】
特表2016−538134(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/132503(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ機械加工、特にレーザ溶接およびレーザ深溶け込み溶接中に、プロセス監視するためのデバイスであって、
− 光学距離測定デバイスであって、
− 測定光スポットを形成するためにワーク表面上に集束される測定光ビーム(14)を生成するための、スペクトル的に広帯域の測定光源、および
− コヒーレンストモグラフィに従って距離測定を実行するように適合された評価ユニット(15)を有する、光学距離測定デバイスと、
− 少なくとも1つのプリズム(22)を有するプリズム偏向ユニット(24)であって、前記少なくとも1つのプリズム(22)は、前記測定光ビーム(14)に対して横断方向に延在する軸(28)周りで回転可能であるように取り付けられて、前記測定光ビーム(14)が、前記ワーク表面上で前記測定光スポットを位置決めするために前記プリズム(22)の傾斜角度によって光学軸に対して意図的に横方向にシフトされ得るようになっている、プリズム偏向ユニット(24)と、
− 前記測定光源から光導波路(20)によって案内され、前記光導波路(20)の端面から発散するように放射された測定光ビーム(14)を平行にするコリメータ光学部品(21)と、を備え、
前記測定光ビーム(14)は、前記少なくとも1つのプリズム(22)の屈折面上でのみ前記測定光ビーム(14)が偏向されるようなやり方で、前記少なくとも1つのプリズム(22)を通るように案内され、
前記プリズム偏向ユニット(24)が、前記コリメータ光学部品(21)と集束光学部品(26)との間に配置されること、
を特徴とする、デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、前記プリズム偏向ユニット(24)が、互いに対して90°の角度で配置された2つのプリズム(22、23)であって、両方ともが前記測定光ビーム(14)に対して横断方向に延在する軸周りに回転可能であるように取り付けられた、2つのプリズム(22、23)を備えることを特徴とする、デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデバイスであって、前記プリズム(22、23)が、作動駆動装置(22’、23’)によってそれぞれ回転され得、前記作動駆動装置(22’、23’)が、互いに独立して起動され得ることを特徴とする、デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスであって、ガルボモータが作動駆動装置(22’、23’)として提供されることを特徴とする、デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載のデバイスであって、前記コリメータ光学部品(21)が、前記集束光学部品(26)の前記光学軸に対して傾斜していることを特徴とする、デバイス。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のデバイスであって、前記プリズム偏向ユニット(24)の前記プリズム(22、23)に、1つまたは複数の反射防止層が設けられ、前記反射防止層の透過が、広い角度範囲になるように構成されることを特徴とする、デバイス。
【請求項7】
機械加工レーザビーム(11)がその中を通って案内され、前記機械加工レーザビーム(11)をワーク(12)上の加工焦点に集束させる集束光学部品(26)がその中に配置されたレーザ機械加工ヘッド(10)であって、レーザ機械加工、特にレーザ溶接およびレーザ深溶け込み溶接中に、プロセス監視するための、請求項1から6のいずれか1項に記載のデバイスを備え、前記測定光ビーム(14)が、前記機械加工レーザビーム(11)に重畳されることを特徴とする、レーザ機械加工ヘッド(10)。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザ機械加工ヘッド(10)であって、前記測定光ビームが、ビームスプリッタ(25)によって前記機械加工レーザビーム(11)にカップリングされること、および、前記プリズム偏向ユニット(24)が、コリメータ光学部品(21)と前記ビームスプリッタ(25)の間に配置されること、を特徴とする、レーザ機械加工ヘッド(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ機械加工、特にレーザ溶接およびレーザ深溶け込み溶接中に、光学距離測定によってプロセス監視するためのデバイスに関する。この場合、距離測定は、特に、光コヒーレンストモグラフィによって実行されてもよい。
【背景技術】
【0002】
プロセス監視のための距離測定では、通常、測定ビームは機械加工ビームと同軸上で重畳される。例えばキーホール開口の検出、溶接溶け込み深さ、すなわちキーホール穴深さの測定、シート表面上での基準測定、例えばシーム検出およびシーム追跡のための事前トポグラフィー測定、例えば不具合検出および品質保証のための上側溶接ビードを測定する事後トポグラフィー測定など、様々な測定タスクを実行するためには、ワーク上の光学測定ビームの衝突点、すなわち測定スポットを正確に位置決めできなくてはならない。この目的のために、レーザ機械加工ヘッドを通って、特にレーザ溶接ヘッドまたはレーザ溶接スキャナを通って案内される測定ビームは、横方向に精密に偏向されなくてはならない。
【0003】
前述した測定タスクの最大の課題は、溶接溶け込み深さの測定、すなわち、加工レーザビームとワークとの間の相互作用エリアで溶接中に形成される蒸気毛細管またはいわゆるキーホールの深さの測定である。加工レーザビームの焦点直径、レーザ出力、前進速度、材料などのプロセスパラメータに応じて、キーホールは数百マイクロメートルの典型的な開口直径を有し、特別な例ではかなり小さいこともあり得る。キーホール底部から最適な深さ信号を受信するために、測定ビームの焦点は、キーホール開口と位置合わせされなくてはならず、これは、以前は25μm未満の横方向確度で実験的に判定されていた。最適位置は、典型的には、加工レーザビームの後ろに位置しており、前進方向および前進速度に応じて異なる。特に、加工レーザビームに対して測定スポット位置を常に精密に迅速に適合させることは、加工焦点が機械加工ラインに対して周期的に横断方向に、例えば制御された発振ミラーによって偏向される、スキャナを用いた、すなわちレーザ機械加工ヘッドを用いたレーザ溶接で必要とされるが、また固定光学部品を用いた、方向に依存しない溶接においても必要とされる。
【0004】
それに加えて、距離測定をシート表面上で実行するために、測定スポットは周期的にシート表面上で偏向されなくてはならない。実際のキーホール深さ、したがって溶接溶け込み深さは、シート表面までの距離とキーホール底部までの距離との差から判定することができる。しかし測定スポットがキーホール開口、したがってキーホール底部に正しく位置合わせされていない場合、測定システムは誤った距離値を取得し、ユーザは溶接溶け込み深さについて誤った情報を受け取り、それにより当該の部品が典型的には欠陥とみなされ、したがって拒絶される。
【0005】
上述した事前および事後トポグラフィー測定を実行するために、測定ビームは、ワーク表面のトポグラフィーを走査するように、機械加工ラインに対して横断方向に迅速および正確に偏向されなくてはならない。測定タスクに応じて、横方向の偏向は、数ミリメートルから数十ミリメートルの範囲で行われる。
【0006】
したがって、前述した測定タスクを実現するためには、測定ビームのための偏向ユニットは、2つの相補的な要件を満たさなくてはならない。偏光ユニットは、測定ビームの高速で高度に動的な偏向とともに、事前定義された位置への測定スポットの精密に再現可能な位置決めを保証しなくてはならない。この文脈において精密に再現可能な位置決めは、長期間にわたって、すなわち数日間から数週間にわたっても、可能でなくてはならない。
【0007】
光ビームは通常ミラー光学部品によって偏向される。偏向ミラーの定義された回転運動を生じさせるガルボモータ(Galvo−motor)、圧電駆動装置、MEMS(微小電気機械システム)、または他のモータ駆動装置が、駆動装置として考えられ得る。
【0008】
反射の法則、すなわち入射角度=反射角度が、ミラー上での反射に適用される。これは、ミラー角度を角度Φだけ変えると、光ビームが2Φ偏向するということを意味する。したがって大きい偏向角度を実際に実現することができるが、駆動装置のドリフトおよび不正確さも、2倍に増幅される。潜在的な駆動装置の利点および欠点が、以下で簡単に説明される。
【0009】
ガルバノメトリック駆動装置(ガルボモータ)の利点は、大きい偏向角度(≒0.35rad)、非常に良好な再現性(≒2μrad)、高い動態性、すなわち高速の旋回および位置決め、ならびに大型のミラーが使用される場合の大きいアパーチャである。アナログの位置検出器には、特に、長期ドリフト値および温度ドリフト値が高いという欠点がある。アナログ位置検出器の場合には、典型的なガルボスキャナは、最大600μradの範囲の長期ドリフトを有する。このドリフトは、典型的には約15μrad/Kである温度依存性のドリフトに加えて発生する。通常、生産環境において温度を一定に維持することはできないので、ドリフト値はすぐに数百μradに到達し、光学光ビームの偏向は、反射の法則に起因して、2倍のドリフトを受ける。このドリフトは、キーホール深さの前述した測定を、信頼性の高い安定したやり方で、特にミラー光学部品と組み合わせて実行するにはすでに過剰である。
【0010】
一方で、様々な製造者はデジタル位置検出器も提供しており、その長期ドリフト値は約10分の1であるが、現状ではそれに対応するシステムのコストはなお著しく高い。デジタル位置検出器であっても、長期ドリフトに加えて温度依存性のドリフトが常に生じることから、向上した長期ドリフト値でも信頼性の高い安定した動作を保証することはできない。
【0011】
同様に、かなりコンパクトな圧電スキャナも非常に良好な角度分解能を有しているが、10mrad未満の小さい偏向角度しか可能にならないことが多い。より大きい偏向角度を有するモデルも、市場では入手可能であるが、そのような圧電スキャナのコストは非常に高い。さらに最大ミラーサイズ、したがって測定ビームのアパーチャは、コンパクトな構造形状に起因して制限される。長期ドリフト値および温度ドリフト値は、めったに示されない。
【0012】
MEMS(微小電気機械システム)の形態の偏向ユニットは、極めてコンパクトな構造形状を有しており、それにより最大アパーチャは、典型的には1〜4mmの範囲に非常に制限される。さらに、これらの部品は共振モードで動作することが多い、すなわち偏向ミラーはその共振周波数で発振する。いわゆる準静的なMEMSは、その製造者が精巧に作ったものであり、したがってこの場合も高価であるが、角度を静的に調整し維持することが必要である。
【0013】
前述した溶接溶け込み深さの測定、および/またはトポグラフィー測定を実現するために、測定ビームはレーザ機械加工ヘッドを通って、特にレーザ溶接ヘッドまたはレーザ溶接スキャナを通って案内されて、測定ビームが機械加工ビームに同軸に重畳されなくてはならない。これは、レーザ機械加工ヘッドの集束要素が、測定ビームを集束させるために使用されることを意味する。この集束要素は、典型的には150〜1000mmの範囲の集束焦点長さを有する。ワーク表面に測定光を位置決めするため、特に測定光をキーホール開口に集束させるため、および、トポグラフィー測定中に横方向の高い分解能を実現するためには、数十μmの範囲の小さい焦点サイズが必要とされる。所与の集束焦点長さが大きいことから、この目的のためには、コリメートされた測定ビームの十分に大きい直径が必要である。その結果、MEMSベースのミラーはこのタスクには不適切である。それとは対照的に、圧電スキャナは過度に小さい偏向角度を有することが多く、これは前述したトポグラフィー測定には特に不十分である。ガルボスキャナは、それらの角度範囲、位置決め確度、およびミラーサイズに関してはよく適している。しかしそれらは著しいドリフト値という上記で議論した問題を有している。
【0014】
特許文献1は、互いに独立して回転軸周りに回転することができる2つの偏向ミラーによって、光ビームを偏向するためのデバイスを開示している。この場合、レーザビームの偏向がミラーによって実現されることから、反射の法則が適用される。これは、角度Φだけミラーを回転させると、光ビームが2Φ偏向するということを意味する。その結果、それに対応するミラー駆動装置のドリフトおよび不正確さも、それぞれ2倍に増幅される。
【0015】
特許文献2は、ドラムスキャナを開示しており、それによれば、ビーム経路の光学軸に対して横断方向に焦点位置をシフトさせて精密な調整および予調整を行うために、コリメートされたビーム経路に傾斜可能なプリズムが配置される。実際の動的なビーム偏向は、回転モータ上のミラー光学部品を用いて実現される。
【0016】
特許文献3は、レーザ機械加工デバイスを開示しており、それによれば、ガルボスキャナの2つの偏向ミラー間の空間における点に、2つのコリメートされたレーザビームを精密に調整および位置合わせするために、2つのプリズムが、コリメートされたレーザビームにそれぞれ配置される。この二重スポットまたはマルチスポットレーザ機械加工プロセスに必要とされる動的な偏向は、ガルボスキャナのミラー光学部品によって実現される。
【0017】
特許文献4は、光ビームを案内するためのデバイスに関係しており、回転可能に駆動され傾斜角度に関して調整可能な平板を、収束ビーム経路において使用すること、および、互いに向かい合う相補的な球面とともに光学群を使用することについて記述している。しかし平板を収束ビーム経路において使用することによって、著しい収差がもたらされ、これは距離測定には不利である。
【0018】
特許文献5は、レーザビームスキャナに関係しており、円形経路を実現するために、回転可能に駆動されるプリズムを使用して、コリメートされたレーザビームを偏向することを記述している。プリズムの回転は、光学軸周りに行われる。レーザビームの偏向角度はこの場合一定である。
【0019】
特許文献6は、レーザビームを偏向するための方法に関係しており、互いに独立して光学軸周りに回転可能であるように配置された、同じくさび角度を有する2つのくさび板を使用することについて記述している。こうしてレーザビームを、くさび角度によって定義された円形エリア上の任意の点に意図的に調整することができる。この方法は、リズレープリズム走査としても知られている。線形走査パターンを実現するためには、両方のくさび板が所定の角速度で回転しなければならない。
【0020】
特許文献7は、機械加工中の蒸気毛細管の深さを高エネルギービームを用いて測定するためのデバイスを開示しており、それによれば、モータによって回転軸周りに回転することができるくさび板上に、コリメートされた測定光ビームが入射する。この場合回転軸は、第1の平坦面に対して垂直に、および測定光ビームに対して横断方向に延在している。したがって第1の平坦面は偏向ミラーとして作用し、第1の測定光ビームを作り出し、その方向は同じく変えられない。第2の平担面は、回転軸に対して90度以外の角度を含んでいる。くさび板のくさび角度に応じて第1の測定光ビームに対して傾斜する第2の測定光ビームが、それにより作り出される。この場合、第2の測定光ビームの伝播方向は、くさび板の向きに応じて異なる。こうして、ワークの表面上に2つの測定スポットを生成することができ、ここで前記測定スポットは、くさび板の回転角度に関わらず、常に同じ距離だけ互いに離間している。くさび板の回転角度によって、第2の測定光スポットを、円形経路に沿って第1の測定光スポット周りに移動させることが可能になる。
【0021】
特許文献8は、レーザビーム機械加工デバイスを開示しており、それによれば、加工レーザビームはレンズによって焦点に集束される。監視ビーム経路は、コリメータによってコリメートされ、くさび板上に入射し、その第1の面は、入射測定光ビームに対して垂直に延在している。平行平面板が、ビーム方向を指すくさび板の後ろに配置され、くさび板の両面に対して傾斜している。くさび板および平行平面板が光学軸周りにともに回転するとき、測定光スポットは、それに対応した円形経路に沿って光学軸周りに移動する。
特許文献9は、機械加工レーザビームを生成するためのレーザを有するレーザ機械加工デバイスに関係しており、機械加工レーザビームは、偏向ミラーおよび集光レンズによってワーク上に集束される。ワークの機械加工位置を判定するための光学測定システムが提供され、そのシステムは、測定光の形態のレーザビームを生成するための光源、コリメータレンズ、ハーフミラー、集束レンズ、およびフォトセンサを備える。この測定光は、ハーフミラーおよび偏向ミラーによって加工レーザビーム経路にカップリングされ、それにより測定光が、機械加工レーザビームとともにワーク上に集束される。測定光スポットは、ハーフミラーの傾斜角度を調整することによって、ワークの表面上の所望に位置に集束される。ハーフミラーは、画像回転プリズムと置き換えられてもよく、それに基づいて、測定光は全反射される。
特許文献10は、レーザ機械加工デバイスのためのビーム経路調整ユニットに関係しており、それによれば、レーザ発振器によって放射されたレーザビームは、くさび形状の偏向デバイスおよび収束レンズによってワーク上に集束される。くさび形状の偏向デバイスは、屈折エッジに対して平行に延在している回転軸周りにそれぞれ回転することができる2つのプリズムを備えている。2つのプリズムの回転軸は、この場合互いに垂直に配置される。レーザビームは、このくさび形状の偏向デバイスを用いて、収束レンズの光学軸に対して平行に位置合わせされ得る。この目的のために、ワーク上に反射されるレーザ光は、収束レンズ、偏向ミラー、および拡大レンズによって、くさび形状の偏向ユニットを通過することなくビデオカメラ上に偏向される。ワーク上のレーザ光スポットの位置は、加工レーザの焦点を位置決めするために、ビデオカメラを用いて監視することができる。
特許文献11は、物品をレーザ切断またはレーザマーキングするために使用することができるターゲティングデバイスに関係している。この場合、加工レーザビームは、開口部を通って走査ヘッドに入り、対向して配置された2つのブルースター板を備えている偏光制御デバイスを通過する。レーザビームの偏向は、ガルバノメトリックモータによって調整されるミラーによって実現される。
特許文献12は、ワーク内へのレーザビームの溶け込み深さを測定するための方法、およびレーザ機械加工デバイスに関係しており、機械加工プロセス中の蒸気毛細管の深さを、高エネルギービームを用いて測定するためのデバイスを記述している。この場合、コリメートされた測定光ビームは、走査ミラーおよび立方体ビームスプリッタによって、第2の測定光ビームと重畳される。次いで、両方の測定光ビームは、ダイクロイックミラーによってレーザ機械加工ビーム経路にカップリングされ、それにより測定光が、加工レーザビームとともにワーク上に集束される。走査ミラーは、ガルバノメトリックミラーであってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】独国特許第4026130C2号明細書
【特許文献2】独国特許第4441341C2号明細書
【特許文献3】独国特許公開第102008032751B3号明細書
【特許文献4】独国実用新案第202008017745U1号明細書
【特許文献5】独国特許第4391446C2号明細書
【特許文献6】独国特許第19817851C1号明細書
【特許文献7】独国特許第102016005021A1号明細書
【特許文献8】特開平10−034366号
【特許文献9】米国特許第5,763,853A号明細書
【特許文献10】独国特許DE3940694A1明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2004/0007563A1号明細書
【特許文献12】国際出願第2015/039741A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、レーザ機械加工中のプロセス監視のためのデバイスを入手可能にするという目的に基づいており、それによれば、ワーク表面上で測定スポットを位置決めするために、特にレーザ機械加工ヘッドを通って案内される光学測定ビームを、迅速に、精密に再現可能な態様で偏向させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的は、請求項1に記載のデバイスによって達成される。本発明の有利な実施形態および拡張形態は、従属請求項に記述されている。
【0025】
本発明によれば、レーザ機械加工、特にレーザ溶接およびレーザ深溶け込み溶接中に、プロセス監視するためのデバイスは、測定光スポットを形成するためにワーク表面上に集束される測定光ビームを生成するための
、スペクトル的に広帯域の測定光源を有する光学距離測定デバイスであって、前記光学距離測定デバイスが、コヒーレンストモグラフィにしたがって距離測定を実行する、光学距離測定デバイスと、測定光ビームに対して横断方向に延在する軸周りで回転可能であるように取り付けられ、ワーク表面上で測定光スポットを位置決めするために、測定光ビームを横方向に偏向させる、少なくとも1つのプリズムを有するプリズム偏向ユニットとを備える。
測定光ビーム(14)は、この場合、少なくとも1つのプリズム(22)の屈折面上でのみ測定光ビーム(14)が偏向されるようなやり方で、少なくとも1つのプリズム(22)を通るように案内される。このように、プリズムの大きい回転運動は、測定光ビームの比較的小さい偏向しかもたらさないので、プリズムの所望の位置からの逸脱は、測定光ビームの偏向確度に最小の影響しか及ぼさない。
【0026】
2次元測定または監視エリア上で測定光ビームを案内するために、プリズム偏向ユニットが、互いに対して90°の角度で配置された2つのプリズムであって、両方ともが測定光ビームに対して横断方向に延在する軸周りに回転可能であるように取り付けられた2つのプリズムを備えており、プリズムが、互いに独立して起動され得る作動駆動装置によってそれぞれ回転され得るならば、有利である。
【0027】
様々な測定タスクに対して高速で高度に動的な測定光ビームの偏向を保証するために、ガルボモータを作動駆動装置として提供することが有利である。ガルボモータは、信頼性が高く容易に制御可能な駆動装置であり、そのドリフトは、プリズムによる光学低減に起因して、位置確度にほとんど影響を及ぼさない。
【0028】
プリズム偏向ユニットは、測定光ビームの平行な区分に、特にコリメータ光学部品と集束光学部品との間に配置され、コリメータ光学部品は、集束光学部品の光学軸に対して傾斜していることが有利である。こうして、測定光ビームは、プリズムによる偏向の後には、集束光学部品の光学軸に本質的に平行に延在する。
【0029】
本発明の有利な実施形態では、プリズム偏向ユニットのプリズムに、1つまたは複数の反射防止層が設けられ、反射防止層の透過が、広い角度範囲になるように構成される。それにより、ほぼ100%の透過が実現され得ることから、測定光ビームは事実上損失を受けず、より大きい溶接溶け込み深さを測定することができる。さらに、測定システムに干渉信号をもたらし得る光学部品内の干渉は、生じない。
【0030】
レーザ機械加工、特にレーザ溶接およびレーザ深溶け込み溶接中に、プロセス監視するための本発明のデバイスは、機械加工レーザビームが中を通って案内され、集束光学部品が中に配置されたレーザ機械加工ヘッド、特にレーザ溶接ヘッドまたはレーザ溶接スキャナと関連して使用され得、前記集束光学部品が、機械加工レーザビームをワーク上の加工焦点に集束させる。この場合、ビームスプリッタによって測定光ビームが機械加工レーザビームにカップリングされることから、測定光ビームは機械加工レーザビームに重畳される。この場合、プリズム偏向ユニットは、コリメータ光学部品とビームスプリッタとの間に配置される。
【0031】
本発明の例は、図面を参照しながら以下でより詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明による、レーザ機械加工中にプロセス監視するための一体型デバイスとともにレーザ機械加工ヘッドを示す簡易概略図である。
【
図2a】レーザ機械加工中にプロセス監視するためのデバイスの測定ビーム経路を示す簡易概略図である。
【
図2b】レーザ機械加工中にプロセス監視するためのデバイスの測定ビーム経路を示す簡易概略図である。
【
図3】プリズム偏向ユニットの機能原理を明らかにするための、プリズムによる光ビームの偏向を示す図である。
【
図4】プリズム偏向ユニットのプリズムの傾斜角度に依存した、機械加工平面におけるビームオフセットを示す図である。
【
図5a】ミラー光学部品を有する偏向ユニットを示す概略図である。
【
図5b】プリズム偏向ユニットをミラー偏向ユニットと比較するための
図3に類似した図である。
【
図6】ミラーまたはプリズム駆動装置の回転角度に依存したビームオフセットを示す図である。
【
図7】プリズムがある場合とない場合の、測定ビームの焦点において測定およびシミュレートされたビームプロファイルを示す図である。
【
図8】2つの連続して配置されたプリズムによって偏向することができる測定ビームの焦点においてシミュレートされたビームプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
異なる図において、対応する要素は同じ参照符号によって特定される。
【0034】
図1はレーザ機械加工ヘッド10を概略的に示しており、それを通して、機械加工レーザビーム11が、ワーク12の表面上に案内される。特にレーザ機械加工ヘッド10は、レーザ溶接ヘッドまたはレーザ溶接スキャナであってもよい。
図2aおよび
図2bを参照してより詳細に記述される測定光ビーム14は、レーザ機械加工ヘッド10の機械加工レーザビーム11に重畳される。測定光は、プロセス監視デバイスの評価ユニット15に一体化されている図示されていない光源から、光導波路16、ビームスプリッタ17、および追加的な光導波路20を介してレーザ機械加工ヘッド10まで案内される。コヒーレンストモグラフィに従って距離測定が実行される場合、好ましくはファイバカプラを備えるビームスプリッタ17において、測定光はスプリットされ、参照アーム18および測定アーム19に供給され、測定アーム19は、光導波路20、およびレーザ機械加工ヘッド10における測定光のビーム経路を備えている。
【0035】
図2aによれば、光導波路20の端面から発散するように放射される測定光は、平行な測定光ビーム14’を形成するために、コリメータ光学部品21によってコリメートされる。平行な測定光ビーム14’は、プリズム偏向ユニット24のプリズム22によって偏向され、ビームスプリッタ25に入射し、それにより測定光ビーム14は、
図2aにおいて破線で示されているように、機械加工レーザビーム11に重畳される。次いで、機械加工レーザビーム11および平行な測定光ビーム14’は、共通の集束光学部品26によって、機械加工焦点および測定スポットにそれぞれ集束され、共通の集束光学部品26の前には、ビーム放射側に保護ガラス27が配置されている。この場合、プリズム22の屈折エッジ22”、すなわちプリズムのくさび角度または垂直方向に対向する角度δ(
図3を参照)を含む2つの屈折面の交差線は、回転軸28に対して平行に延在しており、それにより、プリズム22の傾斜角度、すなわち入射光ビーム(コリメータ光学部品21の光学軸)に対する2つの屈折面の角度を、プリズムを回転させることによって意図的に変化させることができる。測定スポットの位置は、機械加工ビーム経路の光学軸に対するプリズム22の傾斜角度によって、機械加工焦点に対して意図的にシフトすることができ、これは作動駆動装置22’によって調整することができる。
【0036】
機械加工焦点に対して、前進方向、およびそれに対して垂直方向に、測定スポットの位置決めを実現するため、測定光ビーム14のためのビーム制御光学部品は、プリズム22に加えて第2のプリズム23を備え、この第2のプリズムは、そのくさび角度、すなわちその屈折エッジ23”が、第1のプリズム22のくさび角度、すなわち屈折エッジ22”に対して垂直に延在するように、配置される。したがって、屈折エッジ22”、23”に平行に配置された2つのプリズム22、23の回転軸28も、互いに垂直に延在している。プリズム22、23は両方とも回転または傾斜することができ、それにより、互いに独立して起動され得る、関連付けられた作動駆動装置22’、23’によって所望通りに調整される。
【0037】
本発明によれば、使用されるビーム偏向要素は、ミラー光学部品の形態で実現されず、むしろ1つまたは複数のプリズム22、23、すなわち透過型プリズム光学部品の形態で実現される。したがって、反射の法則を受けるミラー光学部品とは対照的に、ミラーの機械的回転運動は、光透過率に対応することになる2倍の大きさの光学ビーム偏向には変換されない。実際には、機械的回転運動は少なくなり、小さい光偏向がもたらされる。
【0038】
前述した測定タスクに関する以下の利点は、迅速に位置決めすることができるロータリ駆動装置、例えばガルボモータとの組合せにおいて、実現することができる。
【0039】
プリズム22の作動要素としての役割を果たす(図示されていない)ガルボモータにおいて生じるドリフト運動は、測定スポット位置が蒸気毛細管から変動することが防止され得るように、光学的に低減される。事前および事後のトポグラフィー測定に必要な走査フィールドは、低減にも関わらず完全に走査することができる。光学低減によって、ガルボモータはその全角度範囲において動作し、最適に利用され得る。プリズム光学部品のプリズム22、23は、圧電駆動装置、ベルト駆動装置などの他の駆動コンセプトとも組み合わせることができる。
【0040】
図3は、1次元プリズム偏向ユニットの機能を明らかにするための、測定光ビーム経路の図示されていない光学軸に対して垂直に延在する回転軸28周りに(投射平面に対して垂直に)回転可能または傾斜可能であるように取り付けられたプリズム22、23を示している。プリズム22、23は、同じく図示されていないロータリ駆動装置によって回転され得る。
【0041】
反射の法則および形状関係に基づき、関連文献から知られているプリズムの全体的な偏向角度のための等式は以下の通りである。
【数1】
【0042】
この場合、α
1は表面法線に対する入射角度を指し、n
1およびn
2は、それぞれ周囲媒質とプリズム材料の屈折率を指し、δは、プリズムの垂直方向に対向する角度を指す。
【0043】
最小偏向角度は、対称な光透過で発生する。適用可能な等式は、以下の通りである。
【数2】
【0044】
対称な光透過から逸脱する場合には、偏向角度は、プリズム22、23の正の回転、および負の回転の間に増大する。この挙動は、1D(1次元)プリズム偏向ユニットに基づいて
図4に示されており、プリズム偏向ユニットは、コリメータ21と、45°ビームスプリッタ24の間に配置されている。プリズムは、プリズム角度に関わらず、常に同じ方向にビームを偏向するので、コリメータ21の光学軸は、機械加工平面、すなわちワーク表面の参照系内の選ばれたゼロ位置からビームが正の方向、および負の方向に偏向され得るように、集束光学部品25の光学軸に対して傾斜する。
図4および上の等式によれば、傾斜角度とビームオフセットの非線形の相関関係が、機械加工平面上にもたらされる。しかし、この挙動は、駆動装置の起動において補正関数を用いることによって補正することができる。
【0045】
図4は、機械加工平面におけるビームオフセットを、集束焦点長さf=300mmを有するレーザ機械加工ヘッドのためのビーム偏向ユニットのプリズム光学部品の回転角度または傾斜角度の関数として、シミュレーションした結果を示している。コリメーションユニット、すなわちコリメータ21は、集束光学部品25通る垂直な透過を可能にするように、5°傾斜された。プリズムの垂直方向に対向した角度は、7.68°になった。屈折特性に起因して、正の方向および負の方向へのビームオフセットを実現するためにはプリズム22を2つの角度範囲で使用することができる。
【0046】
図4の左半分は、プリズム22が対称な光透過の位置から時計回り方向に回転されたときの機械加工平面におけるビームオフセットを示しており、一方
図4の右半分は、プリズム22が反時計回り方向に回転されたときの機械加工平面におけるオフセットを示している。機械加工平面における測定スポットの位置に対してゼロ位置を表す角度位置を、両方の状況で見いだすことができる。この角度位置は、プリズム22が時計回り方向に回転したときには、対称な光透過の位置を指す約−58°にあり、プリズム22が反時計回り方向に回転したときには、約48°にある。
【0047】
図5aに示されているタイプのミラー偏向ユニットでは、駆動装置(ガルボモータ)の小さい回転角度によって、すでに大きいビーム偏向がもたらされるが、
図5bに示されているタイプのプリズム偏向ユニットでは、駆動装置、したがってプリズムの比較的大きい回転角度でも、比較的小さいビーム偏向しかもたらされない。
図6は、プリズムスキャナと従来型ミラースキャナの比較を示している。プリズム光学部品の光学低減によって、典型的なガルボモータの回転角度が、ほぼ完全に利用される。ミラー光学部品では、不正確さおよびドリフト運動が、典型的な生産環境においてキーホール開口上での安定した位置決めを許容しないように、駆動装置は非常に限られた角度範囲でのみ動作する。
【0048】
図6は特に、集束焦点長さf=300mmを有するレーザ機械加工ヘッドの機械加工平面における横方向ビームオフセットを、プリズム光学部品(点のある線)とミラー光学部品(十字のある線)の回転角度または傾斜角度の関数として示している。プリズムの垂直方向に対向した角度は、7.68°である。プリズムおよびミラーは、コリメートされたビーム内に配置される。
【0049】
波長依存性の屈折率に起因して、スペクトル的に広帯域の測定光の透過中に色分割が生じる。
図7は、測定ビームの焦点、すなわち測定スポットにおいて測定およびシミュレートされた強度分布を示しており、測定ビームは、機械加工光学部品、すなわち集束焦点長さf=300mmを有するレーザ機械加工ヘッドの集束光学部品を用いて集束された。使用された光源は、40nmのスペクトル幅を有していた。プリズム偏向ユニットまたはスキャナのない測定中には、測定においてもシミュレーションにおいても、丸い、ガウス的な、回折限界の強度プロファイルが焦点で形成される。コリメートされたビーム経路においてプリズムを使用することによって、すなわち
図2aに示されたタイプの配置によって、色分割の低減が実現される。ビームプロファイルはなお、測定スポットが蒸気毛細管の深さの測定に適したものであるように、回折限界の強度分布を近似している。
【0050】
図8は、互いに対して90°の角度で配置された2つのプリズム22、23(2D(2次元)プリズムスキャナまたは偏向ユニット)が、前述した測定タスクでは典型的である約10mm×10mmのサイズを有する機械加工平面の走査フィールド内で異なる位置で使用されたときの、シミュレートされた強度分布を示している。走査フィールドの位置に関わらず、ビームプロファイルは回折限界を近似するサイズを有しており、それにより、測定ビームは、たとえ2つの連続して配置されたプリズムを通過しても、キーホール開口に完全に集束することができる。測定スポットの直径が100μm未満の小さいサイズを有していることから、トポグラフィー測定において高い横方向分解能を実現することもできる。
図2bに示されているように、互いに対して90°の角度で配置された2つのプリズム22、23を使用していることに起因して、測定光ビーム14は、走査フィールド内で任意の位置に位置決めすることができる。それぞれのプリズムは、測定光ビームを一方行にしか偏向させない。
【0051】
キーホール深さを判定するための距離測定を実行するために、測定スポットは、プリズム偏光ユニットの2つのプリズム22、23を用いて再現可能な態様で、キーホール上と、溶接シームに隣接したワーク12上とに、交互に集束される。プリズム22、23は、それぞれの測定中にはそれらのそれぞれの位置に静止して保持される。
【0052】
事前および事後トポグラフィー測定では、一方のプリズム22(または23)が、所望の走査エリアにおいて測定スポットを位置決めするための役割を果たし、他方のプリズム23(または22)が、その回転中に走査エリア上で測定光スポットを案内する。
【0053】
本発明の、高速で高度に動的な駆動装置、例えばガルボモータと組み合わせてプリズムを使用することによって、レーザ溶接中のそれぞれのプロセス監視要件に適合したビーム偏向を実現することが可能になる。2次元偏向ユニットを実現するために、2つのプリズムが互いに対して90°の角度で配置される。光学距離測定システム、例えば光学コヒーレンストモグラフィシステムと組み合わされたこの偏向ユニットによって、最初に述べた測定タスクを確実に実行することが可能になる。本発明の有意な利点は、機械加工平面における測定ビームのドリフト運動を著しく低減させることができること、およびプリズム光学部品の光学低減に起因して駆動装置の回転角度全体を使用することができることから、理解され得る。