(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年の葬儀等においては、故人を偲び尊ぶ想いを形として表し、また、会場を装飾することを目的として、多数本の生花等によって飾り付けられた花祭壇が広く用いられている。このような花祭壇においては、生花を使用して飾り付けられるのが一般的である。また、会場の大きさや喪主の趣味等にこたえるべく、大きさやデザイン等の異なる種々の花祭壇が適宜作成される。昨今は、会社葬だけでなく、個人の葬儀等においても花祭壇が広く用いられるようになったことで、低廉でありながら流麗で荘厳な外観を呈する花祭壇等、これまで以上に多くの要望が作成者に求められている。
【0003】
前記様々な要望に応じるべく、例えば、特許文献1には、作成コストを低く抑えるために造花を用いる一方、生花と比べても見劣りすることのない外観を作成することを可能にした花祭壇が開示されている。この花祭壇は、側面視において円弧状の形状を呈した支持面部(1)をもつフレーム(2)を備えることを特徴とし、支持面部(1)の表面に造花を配設することで、生花に見劣りしないだけのボリューム感のある花祭壇を作成することを可能にしている。
【0004】
また、特許文献2には、豪華・荘厳でありながら自然な風合いをもち、かつ日持ちのよい葬祭用祭壇が開示されている。この葬祭用祭壇は、後方から前方に向かって徐々に急になる下向きのスロープ状の表面を有する供花台を備え、さらにこの供花台に、プリザーブドフラワーの花冠に剛性が高い模造の茎と葉とを取り付けた供花を多数配設することを特徴としている。このような特徴を有することで、花弁の間から茎や葉が視認できることで生花を用いた場合と同等の自然な風合いを有しつつ、生花に比べて日持ちのよい葬祭用祭壇の作成を可能にしている。
【0005】
また、特許文献3には、廉価かつ簡易な構成でありながら、生花と同等の自然な外観および質感を有し、祭壇表面を所望の起伏形状になるように装飾して豪華で荘厳な印象を与える葬祭用祭壇が開示されている。この葬祭用祭壇は、プリザーブドフラワーの花冠とこの花冠に固着された模造の萼とこの萼に着脱自在に取り付けられた模造の茎とからなる加工花を用い、この加工花の茎の長さを変えて前記土台に複数設置することで、花祭壇の表面を所望の起伏形状に装飾できるように構成したことを特徴としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
葬儀等に用いられる花祭壇は、複数本の生花または造花を用いて整然と飾り付けることで、流麗かつ荘厳な印象を見る者に与える外表面(多数の花の部分によって形成される表面)が形作られる。このような意匠性に優れた外表面は、複数の稜線から構成された複雑な形状を呈しているのが通常である。しかし、この外表面形状の作成は、作成者の経験と勘とに基づいて行われているのが現状であり、このため、外表面形状の作成においては、作成者の技能の差が顕著に現れ、品質的に大きなばらつきが生じやすい。また、品質のばらつきを抑えようとすれば、全ての作成者が高い技能を習得するか、または、作成時に試作を繰り返すなどの手間を要することになるため、人件費の高騰や作成期間の長期化によって制作費用が高騰することになる。
【0008】
前記特許文献1に記載のフレーム(2)や前記特許文献2に記載の供花台(11,12,13)では、所定の形状に生花又は造花をデザインすることはできるが、そのデザインは画一化され、またその外表面形状もあまり複雑化できず、このため作成者の意図する各種デザインの花祭壇を、葬儀に応じて自由にデザインして作成することは困難であった。即ち、フレーム(2)や供花台(11,12,13)に生花や造花を挿す構成とすれば、花祭壇を所望の外形形状に作成し易いが、その一方で、デザインの多様化が阻害されて意匠性に優れた各種外表面を有する花祭壇を作成することが困難であった。また、フレーム(2)や供花台(11,12,13)は構造が複雑であり、また大きさがかさばって収納場所に大きなスペースを必要とするので、コストが高くなるという問題もあった。
一方、特許文献3に記載の花祭壇は、加工花(10)の茎の部分を1本ずつ土台(25,26)に差し込んでいくことで作成されるが、その作成は熟練者でなければ困難であった。例えば祭壇を正面から見てその中央を中心に左右に延びる稜線を同一形状(シンメトリー)にすることは、作成者に高い技能と経験を要し、簡単な作業ではなかった。即ち、1本ずつ花を挿していく方法を用いれば、意匠性に優れた各種外表面を有する花祭壇を作成することはできるが、その一方で、全体としてバランスの取れた外表面形状を有する花祭壇の作成が、一部の熟練者に限定されてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み創作されたものであり、その目的は、作成者の技能の程度に関わらず、花による意匠性に優れた祭壇を、容易且つ低コストに作成することができ
る祭壇とその作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
台座と、この台座上に載置される花保持ベースと、この花保持ベースに茎の部分が差し込まれる多数本の生花または造花と、を有する祭壇において、上辺の形状が、前記多数本の生花または造花の外表面の背面側の峰線形状を画定する形状を呈した板状の基体を備え、前記基体の上辺に、少なくとも1列に、花弁等からなる花部のみの造花を取り付けて構成される背面側輪郭花形成体を複数枚さらに有し、これら複数枚の背面側輪郭花形成体を組み合わせて所望のデザインを構成して、前記多数本の生花または造花の背面側に設置し、前記花保持ベースに茎の部分が差し込まれる多数本の生花または造花は、それらの花部が、前記複数枚組み合わされてデザインされた背面側輪郭花形成体の上辺の花部のみの造花の高さよりも手前側に向けて順次低い位置になるように配置されていることを特徴としている。
本発明に用いる背面側輪郭花形成体は、複数本の生花等を用いて祭壇を作成する際に、生花等の配置位置(特に高さ)を画定するための「型」として機能する。この背面側輪郭花形成体を祭壇作成ツールとして用いることで、経験の浅い者であっても、所望の稜線形状を呈する花による意匠性に優れた祭壇を、一定の品質を維持しながら比較的短期間で作成することが可能になる。
また背面側輪郭花形成体は、板状であってその上辺に造花を取り付けているだけの構造なので、各種形状のものを多数枚容易に製造でき、収納にも場所を取らない。
また、基体の上辺に少なくとも1列の造花を配置しているので、この造花が花による祭壇の稜線を形成することになり、背面側輪郭花形成体自体を祭壇の構成要素として活用することができる(換言すれば、祭壇完成後に、背面側輪郭花形成体を取外す手間を削減することができる)。
また、複数枚の背面側輪郭花形成体を用い、これらを様々に組み合わせるように構成すれば、種々のデザインの祭壇を、容易に形成することができる。
【0011】
このような背面側輪郭花形成体を備える祭壇にあっては、作成者の経験や技能の差によらず、所定の品質が保たれた多様なデザインの花を用いた祭壇を容易に作成することができる。
【0012】
また本発明にかかる祭壇の作成方法は、前記台座を配置する第1の工程と、この台座上に前記花保持ベースを載置する第2の工程と、前記
複数枚の背面側輪郭花形成体を
組み合わせて所望のデザインを構成して、前記台座上の前記花保持ベースの後方に設置する第3の工程と、前記台座上に載置された花保持ベースに前記多数本の生花または造花の茎の部分を差し込む第4の工程とを有し、前記第4の工程において、前記背面側輪郭花形成体の上辺の花部のみの造花の手前側に、前記生花または造花の茎を、それらの花部が、前記
複数枚組み合わされてデザインされた背面側輪郭花形成体の上辺の花部のみの造花の高さよりも手前側に向けて順次低い位置になって、前記背面側輪郭花形成体の上辺の花部のみの造花が背面側の峰部を形成するように、前記花保持ベースに差し込んで配置していくことで祭壇を作成することを特徴としている。
前記作成方法を実践することで、経験の浅い者であっても、所定の品質が保たれた多様なデザインの花を用いた祭壇を、短期間で作成することができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、作成者の技能に関わらず、花による意匠性に優れた祭壇を、所定の品質を保ちながら短期間で制作することができるようになる。これにより、高い品質の祭壇を低コストで提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】花祭壇1を構成する台座10の正面図である。
【
図4】花祭壇1を構成する台座10の右側面図である。
【
図5】花祭壇1を構成する背面側輪郭花形成体40の正面図である。
【
図6】花祭壇1を構成する花保持ベース20の斜視図である。
【
図7】台座10の上に花保持ベース20が載置された様子を示す正面図である。
【
図8】台座10の上に花保持ベース20が載置された様子を示す右側面図である。
【
図9】台座10の上に花保持ベース20と背面側輪郭花形成体40−3が載置された様子を示す正面図である。
【
図10】台座10の上に花保持ベース20と背面側輪郭花形成体40−3が載置された様子を示す右側面図である。
【
図11】台座10の上に花保持ベース20と背面側輪郭花形成体40−3と生花30が載置された様子を示す正面図である。
【
図12】台座10の上に花保持ベース20と背面側輪郭花形成体40−3と生花30が載置された様子を示す右側面図である。
【
図13】台座10の上に花保持ベース20と背面側輪郭花形成体40−1,2,3と生花30が載置された様子を示す正面図である。
【
図14】台座10の上に花保持ベース20と背面側輪郭花形成体40−1,2,3と生花30が載置された様子を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1ないし
図14を参照しながら、本発明を用いた祭壇とその作成方法、ならびに祭壇作成ツールである背面側輪郭花形成体の実施の形態について説明する。なお、説明文中の上下方向、左右方向および前後方向は、
図1に示された花祭壇の上下方向、左右方向および紙面手前奥方向としてそれぞれ定義する。
【0016】
[花祭壇の構成]
はじめに、
図1ないし
図6を参照しながら、本発明の実施の形態に係る花祭壇1の構成について説明する。花祭壇1は、
図1および
図2に示すように、台座10と、この台座10の上に載置される花保持ベース20と、この花保持ベース20に保持される生花30と、生花30が配置される位置を画定する際の基準となる背面側輪郭花形成体40とを具備して構成されている。
【0017】
台座10は、例えば、
図3および
図4に示すように、前列に配置される背の低い2つの前台座10−1および10−2と、後列に配置される背の高い後台座10−3とから構成されている。
【0018】
前台座10−1および10−2は、略同一の形状を呈し、かつ前方横一列に配置される。また、後台座10−3は、前台座10−1または10−2の略1.5倍の高さと略1.5倍の横幅を有し、前台座10−1および10−2の後方略中央に配置される。前台座10−1および10−2と後台座10−3は、長方形を呈した平面板によって上面が形成されており、これら上面の4隅には、それぞれ4本の脚が取り付けられている。
【0019】
花保持ベース20は、
図6に示すように、器部21と、この器部21の内側に収容される複数(本実施の形態では4個)のブロック部22とから構成されている。
【0020】
器部21は、長方形を呈した底面とこの底面の周縁に立設された4つの側壁とからなり、これら底面と4側壁とによって、ブロック部22が収容される収納凹部が形成されている。器部21は、例えばポリプロピレンなどの樹脂材料から形成されている。
【0021】
ブロック部22は、例えば、生花に水分を供給できるだけの吸水性と生花を保持するだけの強度・剛性とを併せ持つ発泡性の樹脂材料から形成されている。ブロック部22は、所定の面圧で押圧すると穴が開く程度の硬度を有する。このため、その上面を生花30の茎部30aの先で押圧すると容易に穴が開口し、この穴の側壁面によって茎部30aが保持される。これにより、生花30は、所定の姿勢を維持した状態で台座10上に配置される。なお
図6では、器部21からブロック部22の上部が露出するように記載しているが、他の図(
図2,7−14)では、ブロック部22が器部21から露出しないように記載している。
【0022】
花祭壇1の外表面2を形成する複数本の生花30は、
図2に示すように、各々が所定の長さの茎部30aと花部30bとを備えており、前述したように、茎部30aが花保持ベース20を構成するブロック部22の上面に差し込まれることで、生花30が台座10上に配置される。なお、本実施の形態では、花祭壇1の外表面2を形成する花が、全て生花30から構成されるとしているが、一部または全部を造花から構成されるようにしてもよい。
【0023】
背面側輪郭花形成体40(40−1,2,3)は、
図5に示すように、花祭壇1を作成する際に用いられるツールとして機能する部材、より詳細には、複数本の生花30を用いて花祭壇1を作成する際に、生花30の配置位置(特に高さ)を画定するための「型」として機能する部材であり、基体41(41−1,2,3)と、この基体の上辺41a(41−1a,2a,3a)に沿って1列に取付けられた造花(花の部分のみ)42とを具備して構成されている。
【0024】
基体41(41−1,2,3)は、例えば、木製の平板状の板材から構成され、その上辺41a(41−1a,2a,3a)の形状は、複数本の生花30によって形作られる花祭壇1の外表面2の背面側の輪郭形状に形成されている。即ち、背面側の輪郭形状とは、花保持ベース20を介して台座10の上に配設される複数本の生花30のうち台座10の背面側端部に位置する生花30によって形作られるべき輪郭形状(作成予定の輪郭形状、峰形状)を意味する。なお、基体41の材料については、木製以外の各種材料、例えば合成樹脂や金属等によって形成しても良い。
【0025】
なお、本実施の形態に係る花祭壇1においては、
図5に示すように、3枚の異なる形状を呈する背面側輪郭花形成体40−1、40−2および40−3が用いられている。背面側輪郭花形成体40−1は前台座10−1の上面に、背面側輪郭花形成体40−2は前台座10−2の上面に、背面側輪郭花形成体40−3は、後台座10−3の上面にそれぞれ載置される。
【0026】
背面側輪郭花形成体40−1,2の基体41−1,2は、その形状が正面視において線対称であり、基体41−1の上辺41−1aおよび基体41−2の上辺41−2aは、一対となって所定の形状をなすように構成されている。具体的には、上辺41−1aおよび41−2aが連接することで、なだらかな尾根を介して連なる2つの山を想起させる形状が形作られるように構成されている。
これに対し、基体41−3の上辺41−3aは、上辺41−1aおよび上辺41−2aによって形作られる前記形状の相似形に近い形状、具体的には、急峻な尾根を介して連なる2つの山を想起させる形状を呈している。
【0027】
基体41−1〜3の上辺41−1a〜3aには、
図5に示すように、1列に複数の花の部分のみの造花42が取付けられている。即ち、造花42は、茎部を有せず、花弁等からなる花部が直接上辺41−1a〜3aに接着剤等を用いて取付けられている。なお、当該接着剤による取付け方法に替えて、上辺41−1a〜3aに造花42の茎部を差し込むようにしてこれを取付けるなどしてもよい。要は、上辺41−1a〜3aに、花部のみが設置されるように構成すればよい。造花42の取付方法については、既存の他の方法を用いてもよい。
【0028】
[花祭壇の作成方法]
次に、
図7ないし
図14を参照しながら、花祭壇1の作成方法について説明する。
花祭壇1を作成するにあたり、先ずは所定の位置に台座10を配置する(本願特許請求の範囲に記載の「第1の工程」に相当)。この台座10の配置は、花祭壇1の基本形態に基づいて決定される。ここで、本実施の形態に係る花祭壇1の基本形態は、
図1に示すように、左右線対称であって、低くて長い稜線をもつ生花群によって形成される前側外表面2aと、高くて短い稜線をもつ生花群によって形成される後側外表面2bとから構成されている。このため、本実施の形態では、
図7および
図8に示すように、前方に背の低い前台座10−1および10−2を横一列に配置し、この後方略中央に背の高い後台座10−3を配置する。
【0029】
次に、これら台座10(前台座10−1、10−2および後台座10−3)の上面に、花保持ベース20を載置する(本願特許請求の範囲に記載の「第2の工程」に相当)。本実施の形態では、
図7および
図8に示すように、前台座10−1,2の上面に、5つの花保持ベース20を横一列に載置し、後台座10−3の上面に、3つの花保持ベース20を横一列に載置する。
【0030】
次に、背面側輪郭花形成体40−3を、
図9および
図10に示すように、後台座10−3上の花保持ベース20の後方、すなわち、後台座10−3の上面における背面側に載置する(本願特許請求の範囲に記載の「第3の工程」に相当)。
【0031】
ここで、本発明において、背面側輪郭花形成体40−3(40−1,2)を設置する理由を説明する。花祭壇1の生花30の花部30bによって形成される外表面2を円滑に作成していくためには、最初に、最も後側に配置される生花30の花部30bの左右に延びる輪郭形状を画定することが有用である。即ち、生花30を配置していく場合、最も後側の花部30bの左右に延びる輪郭形状(外周縁)をイメージし、イメージした最も後側の輪郭形状になるように生花30を一列又は数列挿して配置し、配置した生花30から前方に向かって順次別の生花30を挿していく作業方法が効率的である。しかし上述のように、最も後側の輪郭形状を形成するように生花30を一列又は数列左右に向かって挿していく作業は、熟練者でなければ困難であった。何故なら、例えば花祭壇1を正面から見て左右対称な湾曲形状に形成しようとしても、その長さや高さが微妙に異なってしまい、左右対象の湾曲形状に形成するのは未熟練者には何度もやり直しが強いられる作業だからである。そこで、本実施形態においては、後台座10−3の上面の背面側(花保持ベース20の後側)に、生花30の最も後側の輪郭形状を形成する背面側輪郭花形成体40−3を設置したのである。この点は、下記する背面側輪郭花形成体40−1,2においても同様である。
【0032】
次に、作成者は、背面側輪郭花形成体40−3の上辺41−3aおよびこれに沿って取付けられた造花42によって形作られる輪郭形状を基準にして、その手前側に生花30を挿していく。より具体的には、造花42の位置(高さ)よりもやや低い位置に生花30の花部30bが配置されるように生花30の高さを調整しながら、茎部30aを花保持ベース20のブロック部22に差し込んでいく。この作業を、背面側輪郭花形成体40−3に沿って左右方向へ移動しながら順次行ってゆき、これによって、複数本の生花30による1列目(複数列でもよい)の生花群30−1(
図12参照)を形成する。
【0033】
次に、作成者は、生花群30−1によって形作られる輪郭形状を基準にして、その前方へ生花30を配置していく。具体的には、生花群30−1の生花30の位置(高さ)よりもやや低い位置に花部30bが配置されるように生花30の高さを調整しながら、茎部30aを花保持ベース20のブロック部22に差し込んでいく。この作業を、左右横方向へ移動しながら順次行ってゆき、これによって、複数本の生花30による2列目(複数列でもよい)の生花群30−2(
図12参照)を形成する。
【0034】
前記作業を繰り返すことで、生花群30−2の前方に生花群30−3が、生花群30−3の前方に生花群30−4が、生花群30−4の前方に生花群30−5が、生花群30−5の前方に生花群30−6が、生花群30−6の前方に生花群30−7が、生花群30−7の前方に生花群30−8が形成されていく(
図12参照)。これにより、
図11および
図12に示すように、後台座10−3の上に、正面視において2つの山を連ねた輪郭形状を有し、側面視においては前方へ向かうにつれて次第に下方へ傾斜する略円弧状の外観を呈した後側外表面2bが形成される。
【0035】
後側外表面2bの作成作業が完了した後は、前台座10−1および10−2上に生花30を配置することで前側外表面2aを作成する作業へと進む。この作業手順は、後台座10−3上に生花30を配置する前記作業手順と同一である。
【0036】
すなわち、前台座10−1および10−2の上面の背面側端部に、背面側輪郭花形成体40−1および40−2を載置する(
図13および
図14参照)。次に、この背面側輪郭花形成体40−1および40−2の上辺41−1aおよび41−2aに取付けられた造花42によって形作られる輪郭形状を基準にして、背面側輪郭花形成体40−1および40−2の前方へ生花30を配置していく。これにより、
図1,
図2に示すように、花祭壇1の前側外表面2aが形成される。以上の作業手順により、花祭壇1の外表面2の作成が完了する。なお、本実施の形態では、背面側輪郭花形成体40−1〜3の上辺41−1a〜3aには造花42を取り付け、それ以外の花には生花30を用いているが、造花42はその輪郭部分だけなので、これを正面側から見る人は、造花42を生花30と混同して全てが生花30である印象を持つ。
【0037】
なお、上記作業例では、後台座10−3上に背面側輪郭花形成体40−3や生花30を設置する作業を完了した後に、前台座10−1、10−2上に背面側輪郭花形成体40−1,2や生花30を設置する作業を行う例を示したが、前記両作業は、同時に進行させても良いし、逆にしても良いなど、種々の変更が可能である。
【0038】
[本実施の形態の効果]
従来、花祭壇1を作成する際は、まず花祭壇1の最も背面側に設置する生花30を左右方向1列に設置することで花祭壇1の輪郭形状を作成した後、前記生花30の手前側に他の生花30を多数本挿して行くことで行っているが、前記花祭壇1の輪郭形成のための生花30の設置は、作成者の経験と勘とに頼った現物合わせによって行われていたので、その設置は困難であった。これに対し、本実施の形態においては、前述したように、背面側輪郭花形成体40により、具体的には背面側輪郭花形成体40の上辺41aおよびこれに沿って一列に取付けられた造花42が形作る輪郭形状によって、最も背面側に設置する造花32の位置が容易に画定される。このように、本実施の形態によれば、花祭壇1の輪郭の基準となる背面側の左右方向に向かう輪郭形状の画定作業を、作成者の経験と勘とに頼ることなく行うことができる。この結果、確定された輪郭形状を基準に形成していく花祭壇1の生花30による外表面2の形状にばらつきが無くなり、品質が安定する。また、経験の浅い者であっても、比較的容易に複雑な形状の花祭壇1を作成することが出来るようになる。これにより、人材の活用が広がり、人件費の削減を可能にする。さらに、複雑な形状の花祭壇1を作成する際、現物合わせによる試行錯誤の繰り返しを要しないため、作成期間を短縮することができる。このため、本実施の形態によれば、納期期限を短縮し作成費用を抑制することができる。また背面側輪郭花形成体40は板状なので、構造が簡単で薄く、多種類の形状のものを多数枚容易に製造でき、また収納場所もとらない。
【0039】
[本実施の形態の変形例]
前記実施の形態の変形例として、複数枚の形状の異なる(左右対称でもない)背面側輪郭花形成体40を様々に組み合わせることで、さまざまな形状の上辺41aをもつ背面側輪郭花形成体40(基体41)を構成してもよい。
【0040】
また上記実施形態では、花祭壇1を主として生花30で構成したが、そのかわりに造花やプリザーブドフラワーなどを用いても良い。
【0041】
また本発明にかかる背面側輪郭花形成体とこれを用いた祭壇は、花祭壇だけに適用されるものではなく、他の祭壇、例えば白木祭壇であっても適用できる。即ち例えば、白木祭壇の一部のスペースに多数本の花をデザインして配置するような場合に、その花の部分(即ち白木祭壇の一部の部分)に本発明を適用することができる。
【0042】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、明細書および図面に直接記載のない構成であっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。さらに、上記記載および各図で示した実施の形態は、その目的および構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることも可能である。
【課題】作成者の技能の程度に関わらず、花による意匠性に優れた祭壇を、容易且つ低コストに作成することができる背面側輪郭花形成体、及び祭壇とその作成方法を提供すること。
【解決手段】上辺の形状が、花祭壇1を構成する多数本の生花30の外表面2の背面側の輪郭形状を呈する板状の基体41を備え、基体41の上辺に少なくとも1列の造花42を取り付けて構成される背面側輪郭花形成体40である。背面側輪郭花形成体40の前面側に多数本の生花30を設置することで花祭壇1を構成する。