(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧電基材の先端には紐状の弾性物が接続されており、前記弾性物は前記圧電基材と共に前記保持部材に配置されている請求項1〜7の何れか1項に記載のセンサモジュール。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、長尺平板状の圧電体(第1の圧電体及び第2の圧電体)の「主面」とは、長尺平板状の圧電体の厚さ方向に直交する面(言い換えれば、長さ方向及び幅方向を含む面)を意味する。
本明細書中において、部材の「面」は、特に断りが無い限り、部材の「主面」を意味する。
本明細書において、厚さ、幅、及び長さは、通常の定義どおり、厚さ<幅<長さの関係を満たす。
本明細書において、「接着」は、「粘着」を包含する概念である。また、「接着層」は、「粘着層」を包含する概念である。
本明細書において、2つの線分のなす角度は、0°以上90°以下の範囲で表す。
本明細書において、「フィルム」は、一般的に「フィルム」と呼ばれているものだけでなく、一般的に「シート」と呼ばれているものをも包含する概念である。
【0009】
<第1の実施形態>
図1〜
図4を基に、第1の実施形態として、センサモジュール10について説明する。
〔センサモジュール〕
図1に示されるように、本実施形態に係るセンサモジュール10は、円柱状の弾性体からなる保持部材20と、長尺状の圧電基材12と、を含んで構成されている。
保持部材20は、例えば、床面に設置して上方から圧力を受ける場合、上面が圧力を受ける受圧面22として、下面が設置面26として、受圧面22及び設置面26に隣接する側面(円柱面)が隣接面24として構成される。上述のように、保持部材20は弾性体であって、隣接面24は、受圧面22で受けた圧力に対応して変形が生じる。なお、本実施形態の受圧面22は平面であるが、これに限らず、曲面を有していてもよい。例えば、受圧面22は、加圧する対象物の形状に合わせた面を備えるとよい。
隣接面24には、長尺状、つまりケーブル状に形成された圧電基材12が配置されている。詳しくは、圧電基材12は円柱面である隣接面24上に巻き付けられた状態で接着固定されている。換言すると、圧電基材12は、隣接面24において、圧力の受圧方向(
図1の矢印P)周りに保持部材20を囲むように設けられている。なお、本実施形態では圧電基材12は、隣接面24との接触部の全てにおいて接着固定されている。本実施形態の圧電基材12は長さ方向に張力が印加されたときに、電圧が発生する。圧電基材12の詳細については後述する。
【0010】
ここで、保持部材20としては、以下の材料を採用することができる。
シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマー、フッ素系エラストマー、パーフルオロエラストマー、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエステル、環状ポリオレフィン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、メタクリル・スチレン共重合体、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの共重合体やアロイ、変性体、発泡体(フォーム)といった高分子材料などを使用することができる。
【0011】
本実施形態のセンサモジュール10は次の作用を有している。すなわち、保持部材20において受圧面22が受圧方向(
図1の矢印P)から圧力を受けると、受圧面22と設置面26との間で圧縮が生じる結果、隣接面24は保持部材20の外方(
図1の矢印S)に向けて膨張変形する。上述のとおり、隣接面24には圧電基材12が設けられており、隣接面24が膨張変形することで圧電基材12には張力が発生し、電圧が発生する。
また、保持部材20において受圧面22が受圧方向(
図1の矢印P)と反対方向の圧力を受けると、受圧面22が設置面26から引き離される結果、隣接面24は保持部材20の内方(
図1の矢印Sと逆方向)に向けて収縮変形する。上述のとおり、隣接面24には圧電基材12が設けられており、隣接面24が収縮変形することで圧電基材12には圧縮力が発生し、圧電基材12では張力が付与された時と逆向きの電圧が発生する。
なお、本実施形態では、圧力を受ける部位(受圧部位)は必ずしも受圧面22の中央部である必要はなく、また、圧力を受ける方向(受圧方向)は、受圧面22に垂直である必要はない。すなわち、圧力を受けた際に隣接面24が変形する態様であれば、受圧部位及び受圧方向は特定されない。
本実施形態の保持部材20は、受圧面22を直径10mmの金属製の円柱で押し込んだ際の単位荷重当たりの凹み量が0.01mm〜1.0mmの範囲となる硬さが望ましく、凹み量が0.03mm〜0.5mmの範囲となる硬さがより望ましい。上記範囲に設定することにより、受圧面22に対して加えられた圧力を高い感度で検出することができる。
【0012】
〔圧電基材〕
本実施形態のセンサモジュール10において圧力検出に用いられる圧電基材の概要について説明する。
本実施形態の圧電基材は、長尺状の導体と、前記導体に対して一方向に螺旋状に巻回された長尺状の第1の圧電体と、を備える。
第1の圧電体としては、有機圧電材料を用いることができ、有機圧電材料としては低分子材料、高分子材料を問わず採用でき、例えば、ポリフッ化ビニリデン、あるいはポリフッ化ビニリデン系共重合体、ポリシアン化ビニリデンあるいはシアン化ビニリデン系共重合体あるはナイロン9、ナイロン11などの奇数ナイロンや、芳香族ナイロン、脂環族ナイロン、あるいはポリ乳酸などのヘリカルキラル高分子や、ポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシカルボン酸、セルロース系誘導体、ポリウレアなどが挙げられる。
第1の圧電体としては、良好な圧電特性、加工性、入手容易性等の観点から、高分子の有機圧電材料、特に光学活性を有するヘリカルキラル高分子であることが好ましい。
前記本実施形態の圧電基材は、
前記第1の圧電体が、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)(以下、単に「ヘリカルキラル高分子(A)」ともいう)を含み、
前記第1の圧電体の長さ方向と、前記第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であり、
X線回折測定から下記式(a)によって求められる前記第1の圧電体の配向度Fが0.5以上1.0未満の範囲である圧電基材。
配向度F=(180°―α)/180°・・(a)
ただし、αは配向由来のピークの半値幅を表す。αの単位は、°である。
【0013】
以下、本実施形態の圧電基材の説明において、「長尺状の導体」を、単に「導体」と称して説明することがあり、「長尺状の第1の圧電体」を、単に「第1の圧電体」と称して説明することがある。なお、「一方向」とは、本実施形態の圧電基材を導体の軸方向の一端側から見たときに、第1の圧電体が導体の手前側から奥側に向かって巻回されている方向をいう。具体的には、右方向(右巻き、即ち時計周り)又は左方向(左巻き、即ち反時計周り)をいう。
【0014】
ここで、第1の圧電体の配向度Fは、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の配向の度合いを示す指標であり、例えば、広角X線回折装置(リガク社製 RINT2550、付属装置:回転試料台、X線源:CuKα、出力:40kV 370mA、検出器:シンチレーションカウンター)により測定されるc軸配向度である。
配向度Fは、上記広角X線解析装置を用いて、サンプル(リボン状圧電体、糸状圧電体)をホルダーに固定し、結晶面ピーク[(110)面/(200)面]の方位角分布強度を測定した。
得られた方位角分布曲線(X線干渉図)において、結晶化度、及びピークの半値幅(α)から上記式(b)よりヘリカルキラル高分子(A)の配向度F(C軸配向度)を算出して評価した。
【0015】
本実施形態の圧電基材は、上記構成を備えることにより、圧電感度に優れ、圧電出力の安定性にも優れる。
より詳細には、本実施形態の圧電基材では、第1の圧電体がヘリカルキラル高分子(A)を含むこと、第1の圧電体の長さ方向とヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向とが略平行であること、及び、第1の圧電体の配向度Fが0.5以上1.0未満であることにより圧電性が発現される。
その上で、本実施形態の圧電基材は、上記第1の圧電体が、導体に対して一方向に螺旋状に巻回された構成をなす。
本実施形態の圧電基材では、第1の圧電体を上記のように配置することにより、圧電基材の長さ方向に張力(応力)が印加されたときに、ヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わり、圧電基材の径方向にヘリカルキラル高分子(A)の分極が生じる。その分極方向は、螺旋状に巻回された第1の圧電体を、その長さ方向に対して平面と見做せる程度の微小領域の集合体とみなした場合、その構成する微小領域の平面に、張力(応力)に起因したずり力がヘリカルキラル高分子に印加された場合、圧電応力定数d
14に起因して発生する電界の方向と略一致する。
具体的には、例えばポリ乳酸においては、分子構造が左巻き螺旋構造からなるL−乳酸のホモポリマー(PLLA)の場合、PLLAの主配向方向と長さ方向が略平行な第1の圧電体を、導体に対して、左巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加されると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の中心から外側方向への電界(分極)が発生する。また、これとは逆にPLLAの主配向方向と長さ方向が略平行な第1の圧電体を、導体に対して、右巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加された場合、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の外側から中心方向への電界(分極)が発生する。
【0016】
また、例えば分子構造が右巻き螺旋構造からなるD−乳酸のホモポリマー(PDLA)の場合、PDLAの主配向方向と長さ方向が略平行な第1の圧電体を、導体に対して、左巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加されると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の外側から中心方向への電界(分極)が発生する。また、これとは逆にPDLAの主配向方向と長さ方向が略平行な第1の圧電体を、導体に対して、右巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加されると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の中心から外側方向への電界(分極)が発生する。
これにより、圧電基材の長さ方向に張力が印加された際、螺旋状に配置された第1の圧電体の各部位において、張力に比例した電位差が位相の揃った状態で発生するため、効果的に張力に比例した電圧信号が検出されると考えられる。
従って、本実施形態の圧電基材によれば、圧電感度に優れ、圧電出力の安定性にも優れた圧電基材が得られる。
【0017】
特に、ヘリカルキラル高分子(A)として、非焦電性のポリ乳酸系高分子を用いた圧電基材は、焦電性のPVDFを用いた圧電基材に比べ、圧電感度の安定性、及び圧電出力の安定性(経時又は温度変化に対する安定性)がより向上する。
また、前述の特許文献4(特開2008−146528号公報)に記載の圧電性繊維を備える圧電単位では、導電性繊維に対する圧電性繊維の巻回方向が限定されていない上、ずり力を構成する力の起点も力の方向も、本実施形態の圧電基材とは異なる。このため、特許文献4に記載の圧電単位に張力を印加しても、圧電単位の径方向に分極が生じないため、即ち、圧電応力定数d
14に起因して発生する電界の方向に分極が生じないため、圧電感度が不足すると考えられる。
【0018】
ここで、第1の圧電体の長さ方向と、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であることは、第1の圧電体が長さ方向への引張に強い(即ち、長さ方向の引張強度に優れる)という利点を有する。従って、第1の圧電体を、導体に対して一方向に螺旋状に巻回しても破断しにくくなる。
更に、第1の圧電体の長さ方向と、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であることは、例えば、延伸された圧電フィルムをスリットして第1の圧電体(例えばスリットリボン)を得る際の生産性の面でも有利である。
本明細書中において、「略平行」とは、2つの線分のなす角度が、0°以上30°未満(好ましくは0°以上22.5°以下、より好ましくは0°以上10°以下、更に好ましくは0°以上5°以下、特に好ましくは0°以上3°以下)であることを指す。
また、本明細書中において、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向とは、ヘリカルキラル高分子(A)の主たる配向方向を意味する。ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、第1の圧電体の配向度Fを測定することによって確認できる。
また、原料を溶融紡糸した後にこれを延伸して、第1の圧電体を製造する場合、製造された第1の圧電体におけるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、主延伸方向を意味する。主延伸方向とは、延伸方向を指す。
同様に、フィルムの延伸及び延伸されたフィルムのスリットを形成して第1の圧電体を製造する場合、製造された第1の圧電体におけるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、主延伸方向を意味する。ここで、主延伸方向とは、一軸延伸の場合には延伸方向を指し、二軸延伸の場合には、延伸倍率が高い方の延伸方向を指す。
【0019】
以下、本発明に係る圧電基材の第1の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
〔第1の実施形態の圧電基材〕
第1の実施形態の圧電基材は、長尺状の導体が内部導体であり、長尺状の第1の圧電体が、内部導体の外周面に沿って一方向に螺旋状に巻回されていることが好ましい。
導体として、内部導体を用いることにより、内部導体の軸方向に対して、第1の圧電体が螺旋角度βを保持して一方向に螺旋状に配置されやすくなる。
ここで、「螺旋角度β」とは、導体の軸方向と、導体の軸方向に対して第1の圧電体が配置される方向(第1の圧電体の長さ方向)とがなす角度を意味する。
これにより、例えば、圧電基材の長さ方向に張力が印加されたときに、ヘリカルキラル高分子(A)の分極が、圧電基材の径方向に発生しやすくなる。この結果、電気的特性として効果的に張力に比例した電圧信号(電荷信号)が検出される。
さらに、上記構成の圧電基材は、同軸ケーブルに備えられる内部構造(内部導体及び誘電体)と同一の構造となるため、例えば、上記圧電基材を同軸ケーブルに適用した場合、電磁シールド性が高く、ノイズに強い構造となり得る。
【0021】
第1の実施形態の圧電基材は、さらに、前記一方向とは異なる方向に螺旋状に巻回された長尺状の第2の圧電体を備えることが好ましい。
さらに、第2の圧電体が、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、
第2の圧電体の長さ方向と、第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であり、
X線回折測定から前記式(a)によって求められる第2の圧電体の配向度Fが0.5以上1.0未満の範囲であり、
第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、が互いに異なることが好ましい。
これにより、例えば、圧電基材の長さ方向に張力が印加されたときに、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)、及び第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の両方に分極が生じる。分極方向はいずれも圧電基材の径方向である。
この結果、より効果的に張力に比例した電圧信号(電荷信号)が検出される。従って、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。
特に、第1の実施形態の圧電基材が、第1の外部導体を備え、かつ圧電体が第1の圧電体及び第2の圧電体を備える二層構造をなす場合、内部導体や第1の外部導体に対して、第1の圧電体及び第2の圧電体の空隙が少なく密着させることが可能となり、張力によって発生した電界が効率よく電極に伝達されやすい。従って、より高感度なセンサを実現するのに好適な形態である。
【0022】
第1の実施形態の圧電基材は、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、さらに、内部導体の外周面に沿って螺旋状に巻回された第1の絶縁体を備え、
第1の絶縁体が、第1の圧電体から見て、内部導体とは反対側に配置されていることが好ましい。
例えば、第1の実施形態の圧電基材が第1の外部導体を備える場合には、圧電基材を繰り返し屈曲したり、小さい曲率半径で屈曲させると、巻回した第1の圧電体に隙間ができやすく、内部導体と第1の外部導体とが電気的に短絡する可能性がある。その場合、第1の絶縁体を配置することにより、内部導体と第1の外部導体を電気的により確実に遮蔽することが可能となる。また、屈曲して使用される用途においても高い信頼性を確保することが可能となる。
【0023】
第1の実施形態の圧電基材は、さらに、一方向とは異なる方向に巻回された長尺状の第2の圧電体を備え、
第2の圧電体が、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、
第2の圧電体の長さ方向と、第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であり、
X線回折測定から前記式(a)によって求められる第2の圧電体の配向度Fが0.5以上1.0未満の範囲であり、
第1の圧電体と第2の圧電体とは交互に交差された組紐構造をなし、
第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、が互いに異なることが好ましい。
これにより、例えば、圧電基材の長さ方向に張力が印加されたときに、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)、及び第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の両方に分極が生じる。分極方向はいずれも圧電基材の径方向である。
これにより、より効果的に張力に比例した電圧信号が検出される。この結果、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。
特に、第1の実施形態の圧電基材が、第1の外部導体を備え、かつ圧電体が第1の圧電体及び第2の圧電体を備える組紐構造をなす場合、第1の圧電体及び第2の圧電体間に適度な空隙があるため、圧電基材が屈曲変形させるような力が働いた際にも、空隙が変形を吸収し、しなやかに屈曲変形し易くなる。そのため、第1の実施形態の圧電基材は3次元平面に沿わすような、例えばウェアラブル製品の一構成部材として好適に使用できる。
【0024】
第1の実施形態の圧電基材は、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、さらに、内部導体の外周面に沿って巻回された第1の絶縁体を備え、
第1の圧電体と第1の絶縁体とは交互に交差された組紐構造をなすことが好ましい。
これにより、圧電基材の屈曲変形時において、第1の圧電体が内部導体に対して一方向に巻回した状態が保持されやすくなる。この態様の組紐構造においては、第1の圧電体に張力がかかりやすくなる観点から、第1の圧電体と第1の絶縁体との隙間が無い方が好ましい。
【0025】
第1の実施形態の圧電基材において、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、第1の圧電体は、内部導体の軸方向に対して、15°〜75°(45°±30°)の角度を保持して巻回されていることが好ましく、35°〜55°(45°±10°)の角度を保持して巻回されていることがより好ましい。
【0026】
第1の実施形態の圧電基材において、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、第1の圧電体は、単数又は複数の束からなる繊維形状を有し、第1の圧電体の断面の長軸径は、0.0001mm〜10mmであることが好ましく、0.001mm〜5mmであることがより好ましく、0.002mm〜1mmであることが更に好ましい。
ここで、「断面の長軸径」は、第1の圧電体(好ましくは繊維状圧電体)の断面が円形状である場合、「直径」に相当する。
第1の圧電体の断面が異形状である場合、「断面の長軸径」とは、断面の幅の中で、最も長い幅とする。
第1の圧電体が複数の束からなる圧電体の場合、「断面の長軸径」とは、複数の束からなる圧電体の断面の長軸径とする。
【0027】
本実施形態の圧電基材(例えば、第1の実施形態の圧電基材)において、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、第1の圧電体は長尺平板形状を有することが好ましい。第1の圧電体の厚さは0.001mm〜0.2mmであり、第1の圧電体の幅は0.1mm〜30mmであり、第1の圧電体の厚さに対する第1の圧電体の幅の比は2以上である。
以下、長尺平板形状を有する第1の圧電体(以下、「長尺平板状圧電体」ともいう)の寸法(厚さ、幅、比(幅/厚さ、長さ/幅))に関し、より詳細に説明する。
第1の圧電体の厚さは0.001mm〜0.2mmであることが好ましい。
厚さが0.001mm以上であることにより、長尺平板状圧電体の強度が確保される。更に、長尺平板状圧電体の製造適性にも優れる。
一方、厚さが0.2mm以下であることにより、長尺平板状圧電体の厚さ方向の変形の自由度(柔軟性)が向上する。
【0028】
また、第1の圧電体の幅は0.1mm〜30mmであることが好ましい。
幅が0.1mm以上であることにより、第1の圧電体(長尺平板状圧電体)の強度が確保される。更に、長尺平板状圧電体の製造適性(例えば、後述するスリット工程における製造適性)にも優れる。
一方、幅が30mm以下であることにより、長尺平板状圧電体の変形の自由度(柔軟性)が向上する。
【0029】
また、第1の圧電体の厚さに対する第1の圧電体の幅の比(以下、「比〔幅/厚さ〕」ともいう)は2以上であることが好ましい。
比〔幅/厚さ〕が2以上であることにより、主面が明確となるので、第1の圧電体(長尺平板状圧電体)の長さ方向に渡って向きを揃えて電極層(例えば外部導体)を形成し易い。例えば、主面の少なくとも一方に外部導体を形成し易い。このため、圧電感度に優れ、また、圧電感度の安定性にも優れる。
【0030】
第1の圧電体の幅は、0.5mm〜15mmであることがより好ましい。
幅が0.5mm以上であると、第1の圧電体(長尺平板状圧電体)の強度がより向上する。更に、長尺平板状圧電体のねじれをより抑制できるので、圧電感度及びその安定性がより向上する。
幅が15mm以下であると、長尺平板状圧電体の変形の自由度(柔軟性)がより向上する。
【0031】
第1の圧電体は、幅に対する長さの比(以下、比〔長さ/幅〕ともいう)が、10以上であることが好ましい。
比〔長さ/幅〕が10以上であると、第1の圧電体(長尺平板状圧電体)の変形の自由度(柔軟性)がより向上する。更に、長尺平板状圧電体が適用される圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)において、より広範囲に渡り、圧電性を付与できる。
【0032】
本実施形態の圧電基材において、第1の圧電体が長尺平板形状を有する場合、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、第1の圧電体の少なくとも一方の主面の側に機能層が配置されていることが好ましい。
【0033】
前記機能層は、易接着層、ハードコート層、帯電防止層、アンチブロック層、保護層、及び電極層のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。
これにより、例えば、圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサ、アクチュエータ、生体情報取得デバイスへの適用がより容易になる。
【0034】
前記機能層は、電極層を含むことが好ましい。
これにより、圧電基材を、例えば、圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサ、アクチュエータ、生体情報取得デバイスの構成要素の一つとして用いた場合に、第1の外部導体と導体(好ましくは内部導体)との接続をより簡易に行うことができるので、本実施形態の圧電基材に張力が印加されたときに、張力に応じた電圧信号が検出されやすくなる。
【0035】
本実施形態の圧電基材において、第1の圧電体と、前記機能層と、を含む積層体の表面層の少なくとも一方は、電極層であることが好ましい。
これにより、圧電基材を、例えば、圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサ、アクチュエータ、生体情報取得デバイスの構成要素の一つとして用いた場合に、第1の外部導体又は導体(好ましくは内部導体)と、積層体との接続をより簡易に行うことができるので、本実施形態の圧電基材に張力が印加されたときに、張力に応じた電圧信号が検出されやすくなる。
【0036】
本実施形態の圧電基材は、導体が錦糸線であることが好ましい。
錦糸線の形態は、繊維に対して、圧延銅箔がらせん状に巻回された構造を有するが、電気伝導度の高い銅が用いられていることにより出力インピーダンスを低下することが可能となる。従って、本実施形態の圧電基材に張力が印加されたときに、張力に応じた電圧信号が、検出されやすくなる。この結果、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。
【0037】
本実施形態の圧電基材は、導体及び第1の圧電体の間に接着層を備えることが好ましい。
これにより、導体と第1の圧電体との相対位置がずれにくくなるため、第1の圧電体に張力がかかりやすくなり、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)にずり応力が印加されやすくなる。従って、効果的に張力に比例した電圧出力を導体(好ましくは信号線導体)から検出することが可能となる。また、接着層を備えることで、単位引張力当たりの発生電荷量の絶対値がより増加する。
【0038】
本実施形態の圧電基材において、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)は、圧電性をより向上させる観点から、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有するポリ乳酸系高分子であることが好ましい。
【化1】
【0039】
本実施形態の圧電基材において、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)は、圧電性をより向上させる観点から、光学純度が95.00%ee以上であることが好ましい。
【0040】
本実施形態の圧電基材において、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)は、圧電性をより向上させる観点から、D体又はL体からなることが好ましい。
【0041】
本実施形態の圧電基材において、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の含有量は、圧電性をより向上させる観点から、第1の圧電体の全量に対し、80質量%以上であることが好ましい。
【0042】
本実施形態の圧電基材において、さらに、外周に第1の外部導体を備えることが好ましい。
ここで、「外周」とは、圧電基材の外周部分を意味する。
これにより、静電シールドすることが可能となり、外部の静電気の影響による、導体(好ましくは内部導体)の電圧変化が抑制される。
【0043】
本実施形態の圧電基材において、さらに、前記第1の外部導体の外周に第2の絶縁体を備えることが好ましい。
本実施形態の圧電基材が第2の絶縁体を備えることにより、外部からの水や汗等の液体の浸入、ほこりの浸入等を抑制できる。そのため、水、汗、ほこりなどに起因する導体(好ましくは内部導体)と外部導体間の漏れ電流の発生を抑制することが可能となる。その結果、圧電基材を、例えば、圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサ、アクチュエータ、生体情報取得デバイスの構成要素の一つとして用いた場合に、様々な環境の変動に対しても頑強な、感度が変動しにくい、安定な出力を可能にする。
【0044】
以下、第1の実施形態に係る圧電基材の具体的態様Aについて、図面を参照しながら説明する。
【0045】
〔具体的態様A〕
図2Aは、第1の実施形態に係る圧電基材の具体的態様Aを示す側面図である。
図2Bは、
図2AのX−X’線断面図である。
具体的態様Aの圧電基材12は、導体としての長尺状の内部導体16Aと、長尺状の第1の圧電体18Aと、内部導体16Aと第1の圧電体18Aとの間に配置された接着層(不図示)と、を備えている。
図2Aに示すように、第1の圧電体18Aは、内部導体16Aの外周面に沿って、螺旋角度β1で一端から他端にかけて、隙間がないように一方向に螺旋状に巻回されている。
「螺旋角度β1」とは、内部導体16Aの軸方向G1と、内部導体16Aの軸方向に対する第1の圧電体18Aの配置方向とがなす角度を意味する。
また、具体的態様Aでは、第1の圧電体18Aは、内部導体16Aに対して左巻きで巻回している。具体的には、圧電基材12を内部導体16Aの軸方向の一端側(
図2Aの場合、右端側)から見たときに、第1の圧電体18Aは、内部導体16Aの手前側から奥側に向かって左巻きで巻回している。
また、
図2A中、第1の圧電体18Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、両矢印E1で示されている。即ち、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、第1の圧電体18Aの配置方向(第1の圧電体18Aの長さ方向)とは、略平行となっている。
さらに、内部導体16Aと第1の圧電体18Aとの間には、接着層(不図示)が配置されている。これにより、具体的態様Aの圧電基材12では、圧電基材12の長さ方向に張力が印加されても、第1の圧電体18Aと内部導体16Aとの相対位置がずれないように構成されている。
【0046】
以下、具体的態様Aの圧電基材12の作用について説明する。
例えば、圧電基材12の長さ方向に張力が印加されると、第1の圧電体18Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わり、ヘリカルキラル高分子(A)は分極する。このヘリカルキラル高分子(A)の分極は、
図2B中、矢印で示されるように、圧電基材12の径方向に生じ、その分極方向は位相が揃えられて生じると考えられる。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される。
さらに、具体的態様Aの圧電基材12では、内部導体16Aと第1の圧電体18Aとの間に接着層が配置されているため、第1の圧電体18Aに張力がより印加されやすくなっている。
以上のことから、具体的態様Aの圧電基材12によれば、圧電感度に優れ、圧電出力の安定性が優れたものとなる。
【0047】
次に、第1の実施形態に係る圧電基材の具体的態様Bについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、具体的態様Aと同一のものには同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0048】
〔具体的態様B〕
図3は、第1の実施形態に係る圧電基材の具体的態様Bを示す側面図である。
具体的態様Bの圧電基材12Aは、長尺状の第2の圧電体18Bを備えている点が第1の態様の圧電基材12と異なる。
なお、第1の圧電体18Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、第2の圧電体18Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティとは、互いに異なっている。
第1の圧電体18Aは、具体的態様Aと同様に、内部導体16Aの外周面に沿って、螺旋角度β1で一端から他端にかけて、隙間がないように一方向に螺旋状に巻回されている。
一方、第2の圧電体18Bは、
図3に示すように、第1の圧電体18Aの外周面に沿って、螺旋角度β1と略同一角度である螺旋角度β2で第1の圧電体18Aの巻回方向とは逆の方向で螺旋状に巻回されている。
「螺旋角度β2」とは、前述の螺旋角度β1と同義である。
ここで、具体的態様Bにおける「第1の圧電体18Aの巻回方向と逆の方向」とは、右巻きのことである。即ち、圧電基材12Aを内部導体16Aの軸方向G2の一端側(
図3の場合、右端側)から見たときに、第2の圧電体18Bは、内部導体16Aの手前側から奥側に向かって右巻きで巻回している。
また、
図3中、第2の圧電体18Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、両矢印E2で示されている。即ち、第2の圧電体18Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、第2の圧電体18Bの配置方向(第2の圧電体18Bの長さ方向)とは、略平行となっている。
【0049】
以下、具体的態様Bの圧電基材12Aの作用について説明する。
例えば、圧電基材12Aの長さ方向に張力が印加されると、第1の圧電体18Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)、及び第2の圧電体18Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)両方にずり応力が印加され、分極が生じる。分極方向はいずれも圧電基材12Aの径方向である。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される
以上のことから、具体的態様Bの圧電基材12Aによれば、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。
特に、具体的態様Bの圧電基材12Aが外部導体を備える場合には、圧電体が第1の圧電体及び第2の圧電体を備え、かつ二層構造をなすため、内部導体や外部導体に対して、第1の圧電体及び第2の圧電体の空隙が少なく密着させることが可能となり、張力によって発生した電界が効率よく電極に伝達されやすい。従って、より高感度なセンサを実現するのに好適な形態である。
【0050】
次に、第1の実施形態に係る圧電基材の具体的態様Cについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、具体的態様A及び具体的態様Bと同一のものには同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0051】
〔具体的態様C〕
図4は、第1の実施形態に係る圧電基材の具体的態様Cを示す側面図である。
具体的態様Cの圧電基材12Bは、第1の圧電体18A及び第2の圧電体18Bが交互に交差されており組紐構造をなしている点が具体的態様Bの圧電基材12Aと異なる。
なお、第1の圧電体18Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、第2の圧電体18Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティとは、互いに異なっている。
図4に示すように、具体的態様Cの圧電基材12Bでは、第1の圧電体18Aが、内部導体16Aの軸方向G3に対し、螺旋角度β1で左巻きで螺旋状に巻回され、第2の圧電体18Bが、螺旋角度β2で右巻きで螺旋状に巻回されると共に、第1の圧電体18A及び第2の圧電体が交互に交差されている。
また、
図4に示す組紐構造において、第1の圧電体18Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向(両矢印E1)と、第1の圧電体18Aの配置方向とは、略平行となっている。同様に、第2の圧電体18Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向(両矢印E2)と、第2の圧電体18Bの配置方向とは、略平行となっている。
【0052】
以下、具体的態様Cの圧電基材12Bの作用について説明する。
具体的態様Bと同様に、例えば、圧電基材12Bの長さ方向に張力が印加されると、第1の圧電体18Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)、及び第2の圧電体18Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)両方に分極が生じる。分極方向はいずれも圧電基材12Bの径方向である。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される
以上のことから、具体的態様Cの圧電基材12Bによれば、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。
特に、具体的態様Cの圧電基材12Bが外部導体を備える場合には、圧電基材12Bの長さ方向に張力が印加されたときに、組紐構造を形成する左巻きの第1の圧電体と右巻きの第2の圧電体にずり応力が印加され、その分極の方向は一致し、内部導体と外部導体の間の絶縁体(即ち、第1の圧電体及び第2の圧電体)における圧電性能に寄与する体積分率が増えるため、圧電性能がより向上する。そのため、具体的態様Cの圧電基材12Bは3次元平面に沿わすような、例えばウェアラブル製品の一構成部材として好適に使用できる。
【0053】
次に、本実施形態の圧電基材に含まれる導体、第1の圧電体などについて説明する。
【0054】
<導体>
本実施形態の圧電基材は、長尺状の導体を備える。
本実施形態における導体(例えば内部導体)は、信号線導体であることが好ましい。
信号線導体とは、第1の圧電体或いは第2の圧電体から効率的に電気的信号を検出するための導体をいう。具体的には、本実施形態の圧電基材に張力が印加されたときに、印加された張力に応じた電圧信号(電荷信号)を検出するための導体である。
導体としては、電気的な良導体であることが好ましく、例えば、銅線、アルミ線、SUS線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、錦糸線、有機導電材料等を用いることが可能である。錦糸線とは、繊維に銅箔がスパイラルに巻回されたものをいう。導体の中でも、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上し、高い屈曲性を付与する観点から、錦糸線、カーボンファイバーが好ましい。
特に、電気的抵抗が低く、かつ屈曲性、可とう性が要求される用途(例えば衣服に内装するようなウェアラブルセンサ等の用途)においては、錦糸線を用いることが好ましい。
また、非常に高い屈曲性、しなやかさが求められる、織物や、編物などへの加工用途(例えば圧電織物、圧電編物、圧電センサ(織物状圧電センサ、編物状圧電センサ))においては、カーボンファイバーを用いることが好ましい。
また、本実施形態の圧電基材を繊維として用いて、圧電織物や圧電編物に加工する場合は、しなやかさ、高屈曲性が求められる。そのような用途においては、糸状、又は繊維状の信号線導体が好ましい。糸状、繊維状の信号線導体を備える圧電基材は、高い屈曲性を有するため、織機や編機での加工が好適である。
【0055】
<第1の圧電体>
本実施形態の圧電基材は、長尺状の第1の圧電体を備える。
第1の圧電体は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含む圧電体である。
【0056】
(ヘリカルキラル高分子(A))
本実施形態における第1の圧電体は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含む。
ここで、「光学活性を有するヘリカルキラル高分子」とは、分子構造が螺旋構造であり分子光学活性を有する高分子を指す。
【0057】
上記ヘリカルキラル高分子(A)としては、例えば、ポリペプチド、セルロース誘導体、ポリ乳酸系高分子、ポリプロピレンオキシド、ポリ(β―ヒドロキシ酪酸)等を挙げることができる。
上記ポリペプチドとしては、例えば、ポリ(グルタル酸γ−ベンジル)、ポリ(グルタル酸γ−メチル)等が挙げられる。
上記セルロース誘導体としては、例えば、酢酸セルロース、シアノエチルセルロース等が挙げられる。
【0058】
ヘリカルキラル高分子(A)は、第1の圧電体の圧電性を向上する観点から、光学純度が95.00%ee以上であることが好ましく、96.00%ee以上であることがより好ましく、99.00%ee以上であることがさらに好ましく、99.99%ee以上であることがさらにより好ましい。望ましくは100.00%eeである。ヘリカルキラル高分子(A)の光学純度を上記範囲とすることで、圧電性を発現する高分子結晶のパッキング性が高くなり、その結果、圧電性が高くなるものと考えられる。
【0059】
ここで、ヘリカルキラル高分子(A)の光学純度は、下記式にて算出した値である。
光学純度(%ee)=100×|L体量−D体量|/(L体量+D体量)
即ち、ヘリカルキラル高分子(A)の光学純度は、
『「ヘリカルキラル高分子(A)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A)のD体の量〔質量%〕との量差(絶対値)」を「ヘリカルキラル高分子(A)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A)のD体の量〔質量%〕との合計量」で割った(除した)数値』に、『100』をかけた(乗じた)値である。
【0060】
なお、ヘリカルキラル高分子(A)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A)のD体の量〔質量%〕は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法により得られる値を用いる。具体的な測定の詳細については後述する。
【0061】
上記ヘリカルキラル高分子(A)としては、光学純度を上げ、圧電性を向上させる観点から、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有する高分子が好ましい。
【0063】
上記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖とする高分子としては、ポリ乳酸系高分子が挙げられる。
ここで、ポリ乳酸系高分子とは、「ポリ乳酸(L−乳酸及びD−乳酸から選ばれるモノマー由来の繰り返し単位のみからなる高分子)」、「L−乳酸又はD−乳酸と、該L−乳酸又はD−乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」、又は、両者の混合物をいう。
ポリ乳酸系高分子の中でも、ポリ乳酸が好ましく、L−乳酸のホモポリマー(PLLA、単に「L体」ともいう)又はD−乳酸のホモポリマー(PDLA、単に「D体」ともいう)が最も好ましい。
【0064】
ポリ乳酸は、乳酸がエステル結合によって重合し、長く繋がった高分子である。
ポリ乳酸は、ラクチドを経由するラクチド法;溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させる直接重合法;などによって製造できることが知られている。
ポリ乳酸としては、L−乳酸のホモポリマー、D−乳酸のホモポリマー、L−乳酸及びD−乳酸の少なくとも一方の重合体を含むブロックコポリマー、及び、L−乳酸及びD−乳酸の少なくとも一方の重合体を含むグラフトコポリマーが挙げられる。
【0065】
上記「L−乳酸又はD−乳酸と共重合可能な化合物」としては、グリコール酸、ジメチルグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、4−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシメチルカプロン酸、マンデル酸等のヒドロキシカルボン酸;グリコリド、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状エステル;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸等の多価カルボン酸及びこれらの無水物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−ヘキサンジメタノール等の多価アルコール;セルロース等の多糖類;α−アミノ酸等のアミノカルボン酸;等を挙げることができる。
【0066】
上記「L−乳酸又はD−乳酸と、該L−乳酸又はD−乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」としては、らせん結晶を生成可能なポリ乳酸シーケンスを有する、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーが挙げられる。
【0067】
また、ヘリカルキラル高分子(A)中におけるコポリマー成分に由来する構造の濃度は20mol%以下であることが好ましい。
例えば、ヘリカルキラル高分子(A)が、ポリ乳酸系高分子である場合、ポリ乳酸系高分子中における、乳酸に由来する構造と、乳酸と共重合可能な化合物(コポリマー成分)に由来する構造と、のモル数の合計に対して、コポリマー成分に由来する構造の濃度が20mol%以下であることが好ましい。
【0068】
ポリ乳酸系高分子は、例えば、特開昭59−096123号公報、及び特開平7−033861号公報に記載されている乳酸を直接脱水縮合して得る方法;米国特許2,668,182
号等に記載されている乳酸の環状二量体であるラクチドを用いて開環重合させる方法;などにより製造することができる。
【0069】
さらに、上記各製造方法により得られたポリ乳酸系高分子は、光学純度を95.00%ee以上とするために、例えば、ポリ乳酸をラクチド法で製造する場合、晶析操作により光学純度を95.00%ee以上の光学純度に向上させたラクチドを、重合することが好ましい。
【0070】
−重量平均分子量−
ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)は、5万〜100万であることが好ましい。
ヘリカルキラル高分子(A)のMwが5万以上であることにより、第1の圧電体の機械的強度が向上する。上記Mwは、10万以上であることが好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。
一方、ヘリカルキラル高分子(A)のMwが100万以下であることにより、成形(例えば押出成形、溶融紡糸)によって第1の圧電体を得る際の成形性が向上する。上記Mwは、80万以下であることが好ましく、30万以下であることがさらに好ましい。
【0071】
また、ヘリカルキラル高分子(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、第1の圧電体の強度の観点から、1.1〜5であることが好ましく、1.2〜4であることがより好ましい。さらに1.4〜3であることが好ましい。
【0072】
なお、ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて測定された値を指す。ここで、Mnは、ヘリカルキラル高分子(A)の数平均分子量である。
以下、GPCによるヘリカルキラル高分子(A)のMw及びMw/Mnの測定方法の一例を示す。
【0073】
−GPC測定装置−
Waters社製GPC−100
−カラム−
昭和電工社製、Shodex LF−804
−サンプルの調製−
第1の圧電体を40℃で溶媒(例えば、クロロホルム)へ溶解させ、濃度1mg/mlのサンプル溶液を準備する。
−測定条件−
サンプル溶液0.1mlを溶媒〔クロロホルム〕、温度40℃、1ml/分の流速でカラムに導入する。
【0074】
カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を示差屈折計で測定する。
ポリスチレン標準試料にてユニバーサル検量線を作成し、ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
【0075】
ヘリカルキラル高分子(A)の例であるポリ乳酸系高分子としては、市販のポリ乳酸を用いることができる。
市販品としては、例えば、PURAC社製のPURASORB(PD、PL)、三井化学社製のLACEA(H−100、H−400)、NatureWorks LLC社製のIngeo
TM biopolymer、等が挙げられる。
ヘリカルキラル高分子(A)としてポリ乳酸系高分子を用いるときに、ポリ乳酸系高分子の重量平均分子量(Mw)を5万以上とするためには、ラクチド法、又は直接重合法によりポリ乳酸系高分子を製造することが好ましい。
【0076】
本実施形態における第1の圧電体は、上述したヘリカルキラル高分子(A)を、1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
本実施形態における第1の圧電体中におけるヘリカルキラル高分子(A)の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、第1の圧電体の全量に対し、80質量%以上が好ましい。
【0077】
<安定化剤>
第1の圧電体は、更に、一分子中に、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200〜60000の安定化剤(B)を含有することが好ましい。これにより、耐湿熱性をより向上させることができる。
【0078】
安定化剤(B)としては、国際公開第2013/054918号の段落0039〜0055に記載された「安定化剤(B)」を用いることができる。
【0079】
安定化剤(B)として用い得る、一分子中にカルボジイミド基を含む化合物(カルボジイミド化合物)としては、モノカルボジイミド化合物、ポリカルボジイミド化合物、環状カルボジイミド化合物が挙げられる。
モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、等が好適である。
また、ポリカルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができる。従来のポリカルボジイミドの製造方法(例えば、米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.0rg.Chem.28,2069−2075(1963)、Chemical Review 1981,Vol.81 No.4、p619−621)により、製造されたものを用いることができる。具体的には特許4084953号公報に記載のカルボジイミド化合物を用いることもできる。
ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド、等が挙げられる。
環状カルボジイミド化合物は、特開2011−256337号公報に記載の方法などに基づいて合成することができる。
カルボジイミド化合物としては、市販品を用いてもよく、例えば、東京化成社製、B2756(商品名)、日清紡ケミカル社製、カルボジライトLA−1(商品名)、ラインケミー社製、Stabaxol P、Stabaxol P400、Stabaxol I(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0080】
安定化剤(B)として用い得る、一分子中にイソシアネート基を含む化合物(イソシアネート化合物)としては、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0081】
安定化剤(B)として用い得る、一分子中にエポキシ基を含む化合物(エポキシ化合物)としては、フェニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0082】
安定化剤(B)の重量平均分子量は、上述のとおり200〜60000であるが、200〜30000がより好ましく、300〜18000がさらに好ましい。
分子量が上記範囲内ならば、安定化剤(B)がより移動しやすくなり、耐湿熱性改良効果がより効果的に奏される。
安定化剤(B)の重量平均分子量は、200〜900であることが特に好ましい。なお、重量平均分子量200〜900は、数平均分子量200〜900とほぼ一致する。また、重量平均分子量200〜900の場合、分子量分布が1.0である場合があり、この場合には、「重量平均分子量200〜900」を、単に「分子量200〜900」と言い換えることもできる。
【0083】
第1の圧電体が安定化剤(B)を含有する場合、上記第1の圧電体は、安定化剤を1種のみ含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
第1の圧電体が安定化剤(B)を含む場合、安定化剤(B)の含有量は、ヘリカルキラル高分子(A)100質量部に対し、0.01質量部〜10質量部であることが好ましく、0.01質量部〜5質量部であることがより好ましく、0.1質量部〜3質量部であることがさらに好ましく、0.5質量部〜2質量部であることが特に好ましい。
上記含有量が0.01質量部以上であると、耐湿熱性がより向上する。
また、上記含有量が10質量部以下であると、透明性の低下がより抑制される。
【0084】
安定化剤(B)の好ましい態様としては、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有し、且つ、数平均分子量が200〜900の安定化剤(B1)と、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を1分子内に2以上有し、且つ、重量平均分子量が1000〜60000の安定化剤(B2)とを併用するという態様が挙げられる。なお、数平均分子量が200〜900の安定化剤(B1)の重量平均分子量は、大凡200〜900であり、安定化剤(B1)の数平均分子量と重量平均分子量とはほぼ同じ値となる。
安定化剤として安定化剤(B1)と安定化剤(B2)とを併用する場合、安定化剤(B1)を多く含むことが透明性向上の観点から好ましい。
具体的には、安定化剤(B1)100質量部に対して、安定化剤(B2)が10質量部〜150質量部の範囲であることが、透明性と耐湿熱性の両立という観点から好ましく、50質量部〜100質量部の範囲であることがより好ましい。
【0085】
以下、安定化剤(B)の具体例(安定化剤B−1〜B−3)を示す。
【0087】
以下、上記安定化剤B−1〜B−3について、化合物名、市販品等を示す。
・安定化剤B−1 … 化合物名は、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドである。重量平均分子量(この例では、単なる「分子量」に等しい)は、363である。市販品としては、ラインケミー社製「Stabaxol I」、東京化成社製「B2756」が挙げられる。
・安定化剤B−2 … 化合物名は、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約2000のものとして、日清紡ケミカル社製「カルボジライトLA−1」が挙げられる。
・安定化剤B−3 … 化合物名は、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約3000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P」が挙げられる。また、重量平均分子量20000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P400」が挙げられる。
【0088】
<その他の成分>
第1の圧電体は、必要に応じ、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の公知の樹脂;シリカ、ヒドロキシアパタイト、モンモリロナイト等の公知の無機フィラー;フタロシアニン等の公知の結晶核剤;安定化剤(B)以外の安定化剤;等が挙げられる。
無機フィラー及び結晶核剤としては、国際公開第2013/054918号の段落0057〜0058に記載された成分を挙げることもできる。
【0089】
(配向度F)
本実施形態における第1の圧電体の配向度Fは、上述したとおり、0.5以上1.0未満であるが、0.7以上1.0未満であることが好ましく、0.8以上1.0未満であることがより好ましい。
第1の圧電体の配向度Fが0.5以上であれば、延伸方向に配列するヘリカルキラル高分子(A)の分子鎖(例えばポリ乳酸分子鎖)が多く、その結果、配向結晶の生成する率が高くなり、より高い圧電性を発現することが可能となる。
第1の圧電体の配向度Fが1.0未満であれば、縦裂強度が更に向上する。
【0090】
(結晶化度)
本実施形態における第1の圧電体の結晶化度は、上述のX線回折測定(広角X線回折測定)によって測定される値である。
本実施形態における第1の圧電体の結晶化度は、好ましくは20%〜80%であり、より好ましくは25%〜70%であり、更に好ましくは30%〜60%である。
結晶化度が20%以上であることにより、圧電性が高く維持される。結晶化度が80%以下であることにより、第1の圧電体の透明性が高く維持される。
結晶化度が80%以下であることにより、例えば、第1の圧電体の原料となる圧電フィルムを延伸によって製造する際に白化や破断がおきにくいので、第1の圧電体を製造しやすい。また、結晶化度が80%以下であることにより、例えば、第1の圧電体の原料(例えばポリ乳酸)を溶融紡糸後に延伸によって製造する際に屈曲性が高く、しなやかな性質を有する繊維となり、第1の圧電体を製造しやすい。
【0091】
(透明性(内部ヘイズ))
本実施形態における第1の圧電体において、透明性は特に要求されないが、透明性を有していてももちろん構わない。
第1の圧電体の透明性は、内部ヘイズを測定することにより評価することができる。ここで、第1の圧電体の内部ヘイズとは、第1の圧電体の外表面の形状によるヘイズを除外したヘイズを指す。
第1の圧電体は、透明性が要求される場合には、可視光線に対する内部ヘイズが5%以下であることが好ましく、透明性及び縦裂強度をより向上させる観点からは、2.0%以下がより好ましく、1.0%以下が更に好ましい。第1の圧電体の前記内部ヘイズの下限値は特に限定はないが、下限値としては、例えば0.01%が挙げられる。
第1の圧電体の内部ヘイズは、厚さ0.03mm〜0.05mmの第1の圧電体に対して、JIS−K7105に準拠して、ヘイズ測定機〔(有)東京電色社製、TC−HIII DPK〕を用いて25℃で測定したときの値である。
以下、第1の圧電体の内部ヘイズの測定方法の例を示す。
まず、ガラス板2枚の間に、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製信越シリコーン(商標)、型番:KF96−100CS)のみを挟んだサンプル1を準備し、このサンプル1の厚さ方向のヘイズ(以下、ヘイズ(H2)とする)を測定する。
次に、上記のガラス板2枚の間に、シリコーンオイルで表面を均一に塗らした複数の第1の圧電体を隙間なく並べて挟んだサンプル2を準備し、このサンプル2の厚さ方向のヘイズ(以下、ヘイズ(H3)とする)を測定する。
次に、下記式のようにこれらの差をとることにより、第1の圧電体の内部ヘイズ(H1)を得る。
内部ヘイズ(H1)=ヘイズ(H3)−ヘイズ(H2)
ここで、ヘイズ(H2)及びヘイズ(H3)の測定は、それぞれ、下記測定条件下で下記装置を用いて行う。
測定装置:東京電色社製、HAZE METER TC−HIIIDPK
試料サイズ:幅30mm×長さ30mm
測定条件:JIS−K7105に準拠
測定温度:室温(25℃)
【0092】
(第1の圧電体の形状、寸法)
本実施形態の圧電基材は、長尺状の第1の圧電体を備える。
長尺状の第1の圧電体としては、単数若しくは複数の束からなる繊維形状(糸形状)を有する圧電体、又は長尺平板形状を有する圧電体であることが好ましい。
以下、繊維形状を有する圧電体(以下、繊維状圧電体ともいう)、長尺平板形状を有する圧電体(以下、長尺平板状圧電体ともいう)について順に説明する。
【0093】
−繊維状圧電体−
繊維状圧電体としては、例えば、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸が挙げられる。
【0094】
・モノフィラメント糸
モノフィラメント糸の単糸繊度は、好ましくは3dtex〜30dtexであり、より好ましくは5dtex〜20dtexである。
単糸繊度が3dtex未満になると、織物準備工程や製織工程において糸を取り扱うことが困難となる。一方、単糸繊度が30dtexを超えると、糸間で融着が発生し易くなる。
モノフィラメント糸は、コストの点を考慮すれば直接的に紡糸、延伸して得ることが好ましい。なお、モノフィラメント糸は入手したものであってもよい。
【0095】
・マルチフィラメント糸
マルチフィラメント糸の総繊度は、好ましくは30dtex〜600dtexであり、より好ましくは100dtex〜400dtexである。
マルチフィラメント糸は、例えば、スピンドロー糸などの一工程糸の他、UDY(未延伸糸)やPOY(高配向未延伸糸)などを延伸して得る二工程糸のいずれもが採用可能である。なお、マルチフィラメント糸は入手したものであってもよい。
ポリ乳酸系モノフィラメント糸、ポリ乳酸系マルチフィラメント糸の市販品としては、東レ製のエコディア
(R)PLA、ユニチカ製のテラマック
(R)、クラレ製プラスターチ
(R)が使用可能である。
【0096】
繊維状圧電体の製造方法には特に限定はなく、公知の方法により製造することができる。
例えば、第1の圧電体としてのフィラメント糸(モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸)は、原料(例えばポリ乳酸)を溶融紡糸した後、これを延伸することにより得ることができる(溶融紡糸延伸法)。なお、紡出後において、冷却固化するまでの糸条近傍の雰囲気温度を一定温度範囲に保つことが好ましい。
また、第1の圧電体としてのフィラメント糸は、例えば、上記溶融紡糸延伸法で得られたフィラメント糸をさらに分繊することにより得てもよい。
【0097】
・断面形状
繊維状圧電体の断面形状としては、繊維状圧電体の長手方向に垂直な方向の断面において、円形状、楕円形状、矩形状、繭形状、リボン形状、4つ葉形状、星形状、異形状など様々な断面形状を適用することが可能である。
【0098】
−長尺平板状圧電体−
長尺平板状圧電体としては、例えば、公知の方法で作製した圧電フィルム、又は入手した圧電フィルムをスリットすることにより得た長尺平板状圧電体(例えばスリットリボン)などが挙げられる。
第1の圧電体として、長尺平板状圧電体を用いることにより、導体に対して、面で密着することが可能となるため、効率的に圧電効果により発生した電荷を電圧信号として検出することが可能となる。
【0099】
本実施形態における長尺平板状圧電体(第1の圧電体)は、第1の圧電体の少なくとも一方の主面の側に配置された機能層を備えることが好ましい。
機能層は、単層構造であっても二層以上からなる構造であってもよい。
例えば、長尺平板状圧電体の両方の主面の側に機能層が配置される場合、一方の主面(以下、便宜上、「オモテ面」ともいう)の側に配置される機能層、及び、他方の面(以下、便宜上、「ウラ面」ともいう)の側に配置される機能層は、それぞれ独立に、単層構造であっても二層以上からなる構造であってもよい。
【0100】
機能層としては、様々な機能層が挙げられる。
機能層として、例えば、易接着層、ハードコート層、屈折率調整層、アンチリフレクション層、アンチグレア層、易滑層、アンチブロック層、保護層、接着層、帯電防止層、放熱層、紫外線吸収層、アンチニュートンリング層、光散乱層、偏光層、ガスバリア層、色相調整層、電極層などが挙げられる。
機能層は、これらの層のうちの二層以上からなる層であってもよい。
また、機能層としては、これらの機能のうちの2つ以上を兼ね備えた層であってもよい。
長尺平板状圧電体の両方の主面に機能層が設けられている場合は、オモテ面側に配置される機能層及びウラ面側に配置される機能層は、同じ機能層であっても、異なる機能層であってもよい。
【0101】
また、機能層の効果には、長尺平板状圧電体表面のダイラインや打痕などの欠陥が埋められ、外観が向上するという効果もある。この場合は長尺平板状圧電体と機能層との屈折率差が小さいほど長尺平板状圧電体と機能層と界面の反射が低減し、より外観が向上する。
【0102】
前記機能層は、易接着層、ハードコート層、帯電防止層、アンチブロック層、保護層、及び電極層のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。これにより、例えば圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサ、アクチュエータ、生体情報取得デバイスへの適用がより容易となる。
【0103】
前記機能層は、電極層を含むことがより好ましい。
電極層は、長尺平板状圧電体に接して設けられていてもよいし、電極層以外の機能層を介して設けられていてもよい。
【0104】
本実施形態における長尺平板状圧電体(第1の圧電体)の特に好ましい態様は、長尺平板状圧電体の両方の主面の側に機能層を備え、かつ、両面の機能層がいずれも電極層を含む態様である。
【0105】
本実施形態における長尺平板状圧電体(第1の圧電体)において、第1の圧電体と、機能層と、を含む積層体の表面層の少なくとも一方が、電極層であることが好ましい。即ち、本実施形態における長尺平板状圧電体(第1の圧電体)において、オモテ面側の表面層及びウラ面側の表面層の少なくとも一方が、電極層であること(言い換えれば、電極層が露出していること)が好ましい。
これにより、長尺平板状圧電体を、例えば圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサ、アクチュエータ、生体情報取得デバイスの構成要素の一つとして用いた場合に、導体(好ましくは内部導体)又は第1の外部導体と、積層体との接続をより簡易に行うことができるので、圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサ、アクチュエータ、生体情報取得デバイスの生産性が向上する。
【0106】
機能層の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば金属や金属酸化物等の無機物;樹脂等の有機物;樹脂と微粒子とを含む複合組成物;などが挙げられる。樹脂としては、例えば、温度や活性エネルギー線で硬化させることで得られる硬化物を利用することもできる。つまり、樹脂としては、硬化性樹脂を利用することもできる。
【0107】
硬化性樹脂としては、例えばアクリル系化合物、メタクリル系化合物、ビニル系化合物、アリル系化合物、ウレタン系化合物、エポキシ系化合物、エポキシド系化合物、グリシジル系化合物、オキセタン系化合物、メラミン系化合物、セルロース系化合物、エステル系化合物、シラン系化合物、シリコーン系化合物、シロキサン系化合物、シリカ−アクリルハイブリット化合物、及びシリカ−エポキシハイブリット化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料(硬化性樹脂)が挙げられる。
これらの中でも、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、シラン系化合物がより好ましい。
金属としては、例えば、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、In、Sn、W、Ag、Au、Pd、Pt、Sb、Ta及びZrから選ばれる少なくとも一つ、又は、これらの合金が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、及び酸化タンタル、またこれらの複合酸化物の少なくとも1つが挙げられる。
微粒子としては上述したような金属酸化物の微粒子や、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂などの樹脂微粒子などが挙げられる。さらにこれらの微粒子の内部に空孔を有する中空微粒子も挙げられる。
微粒子の平均一次粒径としては、透明性の観点から1nm以上500nm以下が好ましく、5nm以上300nm以下がより好ましく、10nm以上200nm以下が更に好ましい。500nm以下であることで可視光の散乱が抑制され、1nm以上であることで微粒子の二次凝集が抑制され、透明性の維持の観点から望ましい。
【0108】
機能層の膜厚は、特に限定されるものではないが、0.01μm〜10μmの範囲が好ましい。
【0109】
上記厚さの上限値は、より好ましくは6μm以下であり、更に好ましくは3μm以下である。また、下限値はより好ましくは0.01μm以上であり、更に好ましくは0.02μm以上である。
【0110】
機能層が複数の機能層からなる多層膜の場合には、上記厚さは多層膜全体における厚さを表す。また、機能層は長尺平板状圧電体の両面にあってもよい。また、機能層の屈折率は、それぞれが異なる値であってもよい。
【0111】
長尺平板状圧電体の製造方法には特に限定はなく、公知の方法により製造することができる。
また、例えば、圧電フィルムから第1の圧電体を製造方法としては、原料(例えばポリ乳酸)をフィルム状に成形して未延伸フィルムを得、得られた未延伸フィルムに対し、延伸及び結晶化を施し、得られた圧電フィルムをスリットすることにより得ることができる。
ここで、「スリットする」とは、上記圧電フィルムを長尺状にカットすることを意味する。
なお、上記延伸及び結晶化は、いずれが先であってもよい。また、未延伸フィルムに対し、予備結晶化、延伸、及び結晶化(アニール)を順次施す方法であってもよい。延伸は、一軸延伸であっても二軸延伸であってもよい。二軸延伸の場合には、好ましくは一方(主延伸方向)の延伸倍率を高くする。
圧電フィルムの製造方法については、特許第4934235号公報、国際公開第2010/104196号、国際公開第2013/054918号、国際公開第2013/089148号、等の公知文献を適宜参照できる。
【0112】
<第2の圧電体>
第1の実施形態の圧電基材は、長尺状の第2の圧電体を備えることがある。
第2の圧電体は、第1の圧電体と同様の特性を有していることが好ましい。
即ち、第2の圧電体は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、
第2の圧電体の長さ方向と、第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であり、
X線回折測定から前記式(a)によって求められる第2の圧電体の配向度Fは0.5以上1.0未満の範囲であることが好ましい。
第2の圧電体は、上記以外の特性においても、第1の圧電体と同様の特性を有していることが好ましい。
但し、第1の圧電体及び第2の圧電体の巻回方向、並びに、第1の圧電体及び第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティについては、本実施形態の効果がより奏される観点から、圧電基材の態様に応じて適宜選択すればよい。
なお、第1の圧電体及び第2の圧電体の巻回方向、並びに、第1の圧電体及び第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティの好ましい組み合わせの一例については、前述の具体的態様で説明した通りである。
また、第2の圧電体は、第1の圧電体と異なる特性を有していてもよい。
【0113】
<第1の絶縁体>
第1の実施形態の圧電基材は、さらに、第1の絶縁体を備えていてもよい。
第1の絶縁体は、内部導体の外周面に沿って螺旋状に巻回されることが好ましい。
この場合、第1の絶縁体は、第1の圧電体から見て、内部導体とは反対側に配置されていてもよく、内部導体と第1の圧電体との間に配置されていてもよい。
また、第1の絶縁体の巻回方向は、第1の圧電体の巻回方向と同じ方向であってもよく、異なる方向であってもよい。
特に、第1の実施形態の圧電基材が第1の外部導体を備える場合においては、第1の実施形態に係る圧電基材が、さらに、第1の絶縁体を備えることにより、圧電基材が屈曲変形する時に、内部導体と外部導体の電気的短絡の発生を抑制しやすくなるという利点がある。
【0114】
第1の絶縁体としては、特に限定はないが、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロプロピルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ素ゴム、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ゴム(エラストマーを含む)等が挙げられる。
第1の絶縁体の形状は、導体に対する巻回の観点から、長尺形状であることが好ましい。
<第2の絶縁体>
本実施形態の圧電基材において、外周に第1の外部導体を備える場合、さらに、第1の外部導体の外周に第2の絶縁体を備えていてもよい。
これにより、圧電センサとして機能させる場合、信号線となる内部導体を静電シールドすることが可能となり、外部の静電気の影響による、導体(好ましくは内部導体)の電圧変化が抑制される。
【0115】
第2の絶縁体には特に限定はないが、例えば、第1の絶縁体として例示した材料が挙げられる。
また、第2の絶縁体の形状は特に限定はなく、第1の外部導体の少なくとも一部を被覆できる形状であればよい。
【0116】
(第1の外部導体)
本実施形態の圧電基材は、さらに、外周に第1の外部導体を備えることが好ましい。
本実施形態における第1の外部導体は、圧電センサとして機能させる場合、グラウンド導体であることが好ましい。
グラウンド導体とは、信号を検出する際、例えば、導体(好ましくは信号線導体)の対となる導体を指す。
【0117】
グラウンド導体の材料には特に限定はないが、断面形状によって、主に以下のものが挙げられる。
例えば、矩形断面を有するグラウンド導体の材料としては、円形断面の銅線を圧延して平板状に加工した銅箔リボンや、Al箔リボンなどを用いることが可能である。
例えば、円形断面を有するグラウンド導体の材料としては、銅線、アルミ線、SUS線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、繊維に銅箔がスパイラルに巻回された錦糸線を用いることが可能である。
また、グラウンド導体の材料として、有機導電材料を絶縁材料でコーティングしたものを用いてもよい。
【0118】
グラウンド導体は、信号線導体と短絡しないように、導体(好ましくは信号線導体)及び第1の圧電体を包むように配置されていることが好ましい。
このような信号線導体の包み方としては、銅箔などを螺旋状に巻回して包む方法や、銅線などを筒状の組紐にして、その中に包みこむ方法などを選択することが可能である。
なお、信号線導体の包み方は、これら方法に限定されない。信号線導体を包み込むことにより、静電シールドすることが可能となり、外部の静電気の影響による、信号線導体の電圧変化を防ぐことが可能となる。
また、グラウンド導体の配置は、本実施形態の圧電基材の最小基本構成単位(即ち、導体及び第1の圧電体)を円筒状に包接するように配置することも好ましい形態の一つである。
【0119】
グラウンド導体の断面形状は、円形状、楕円形状、矩形状、異形状など様々な断面形状を適用することが可能である。特に、矩形断面は、導体(好ましくは信号線導体)、第1の圧電体、必要に応じて第1の絶縁体、第2の圧電体などに対して、平面で密着することが可能となるため、効率的に圧電効果により発生した電荷を電圧信号として検出することが可能となる。
【0120】
<接着層を形成する接着剤>
本実施形態の圧電基材は、導体及び第1の圧電体の間に接着層を備えることが好ましい。
接着層を形成する接着剤は、前記導体と前記第1の圧電体との間を機械的に一体化するため、又は、圧電基材が外部導体を備える場合は電極間(導体及び外部導体間)の距離を保持するために用いる。
導体及び第1の圧電体の間に接着層を備えることにより、本実施形態の圧電基材に張力が印加されたときに、導体と第1の圧電体との相対位置がずれにくくなるため、第1の圧電体に張力がかかりやすくなる。従って、効果的に張力に比例した電圧出力を導体(好ましくは信号線導体)から検出することが可能となる。この結果、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。また、接着層を備えることで、単位引張力当たりの発生電荷量の絶対値がより増加する。
一方、導体及び第1の圧電体の間に接着層を備えない圧電基材では、圧電繊維などに加工した後もしなやかな性質が保たれるため、ウェアラブルセンサ等にしたときに装着感が良好となる。
【0121】
接着層を形成する接着剤の材料としては、以下の材料を用いることが可能である。
エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤、(EVA)系エマルション形接着剤、アクリル樹脂系エマルション形接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系ラテックス形接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、α−オレフィン(イソブテン−無水マレイン酸樹脂)系接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤、ゴム系接着剤、弾性接着剤、クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、ニトリルゴム系溶剤形接着剤等、シアノアクリレート系接着剤等を用いることが可能となる。
【0122】
−弾性率−
本実施形態における接着剤は、接合後の弾性率が第1の圧電体と同程度以上であることが好ましい。第1の圧電体の弾性率に対して、弾性率が低い材料を用いると、本実施形態の圧電基材に印加された張力による歪(圧電歪)が接着剤部分で緩和され、第1の圧電体への歪の伝達効率が小さくなるため、本実施形態の圧電基材を、例えばセンサに適用した場合、センサの感度が低くなりやすい。
【0123】
−厚さ−
本実施形態における接着剤の接合部位の厚さは、接合する対象間に空隙ができず、接合強度が低下しない範囲であれば薄ければ薄い程良い。接合部位の厚さを小さくすることで、圧電基材に印加された張力による歪が接着剤部分で緩和されにくくなり、第1の圧電体への歪が効率的に小さくなるため、本実施形態の圧電基材を、例えばセンサに適用した場合、センサの感度が向上する。
【0124】
−接着剤の塗布方法−
接着剤の塗布方法は特に限定されないが、主に以下の2つの方法を用いることが可能である。
【0125】
・加工後に接着剤を配置し接合する方法
例えば、導体(好ましくは信号線導体)及び第1の圧電体の配置;信号線導体及びグラウンド導体の加工、配置;が完了した後に、ディップコートや、含浸等の方法で、導体及び第1の圧電体の界面に接着剤を配置し接着する方法が挙げられる。
また、上記方法により、導体及び第1の圧電体を接合する他、必要に応じて、本実施形態の圧電基材に備えられる各部材間を接合してもよい。
【0126】
・加工前に未硬化の接着剤を配置し、加工後に接合する方法
例えば、予め第1の圧電体の表面に光硬化性の接着剤、熱硬化性の接着剤、熱可塑性の接着剤などを、グラビアコーターやディップコーター等でコーティングし乾燥させ、導体及び第1の圧電体の配置が完了した後に、紫外線照射や加熱により接着剤を硬化させ、導体及び第1の圧電体の界面を接合する方法が挙げられる。
また、上記方法により、導体及び第1の圧電体を接合する他、必要に応じて、本実施形態の圧電基材に備えられる各部材間を接合してもよい。
上記方法を用いれば、接着剤をコーティング乾燥後はドライプロセスでの加工が可能となり加工が容易となる、また均一な塗膜厚が形成しやすいためセンサ感度等のバラツキが少ないといった特徴がある。
【0127】
<圧電基材の製造方法>
本実施形態の圧電基材の製造方法には特に限定はないが、例えば、第1の圧電体を準備して、別途準備した導体(好ましくは信号線導体)に対して、第1の圧電体を一方向に螺旋状に巻回することにより製造することができる。
第1の圧電体は、公知の方法で製造したものであっても、入手したものであってもよい。
また、本実施形態の圧電基材が、必要に応じて第2の圧電体、第1の絶縁体を備える場合、かかる圧電基材は、第1の圧電体を螺旋状に巻回する方法に準じて、製造することができる。
但し、第1の圧電体及び第2の圧電体の巻回方向、並びに、第1の圧電体及び第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティについては、前述の通り、圧電基材の態様に応じて適宜選択することが好ましい。
【0128】
また、本実施形態の圧電基材が、第1の外部導体(例えばグラウンド導体)を備える場合、かかる圧電基材は、前述の方法又は公知の方法により、第1の外部導体を配置することにより製造することができる。
なお、導体及び第1の圧電体の間、必要に応じて、本実施形態の圧電基材に備えられる各部材間を、例えば前述の方法により接着剤を介して貼り合わせてもよい。
本実施形態の圧電基材は、引張力を印加することで、引張力に比例したずり歪が、ヘリカルキラル(A)に印加され、導体(内部導体16A)側では正電荷が発生する。また、圧電基材は、圧縮力を印加することで、圧縮力に比例したずり歪が、ヘリカルキラル(A)に印加され、導体(内部導体16A)側では負電荷が発生する。以上、圧電基材では、加えられた力に応じた正又は負の電荷信号が導体(内部導体16A)から検出される。
【0129】
(第1の実施形態のまとめ)
第1の実施形態においては、弾性体からなる保持部材20に圧力を受ける受圧面22を設け、受圧面22で受けた圧力に対応して変形が生ずる隣接面24に対し、張力を検知可能な圧電基材12を設置した点に特徴がある。例えば、平板状の保持部材20において、受圧面22に物体等が接触することにより加圧される(衝撃や振動による加圧を含む)と、隣接面24が膨張変形することにより、圧電基材12に張力が働く。そして、圧電基材12が張力を受けると、圧電基材12は張力に応じた信号を出力する。また、受圧面22が設置面26から引き離されることにより、受圧方向と逆方向に加圧される(衝撃や振動による加圧を含む)と、隣接面24が収縮変形することにより、圧電基材12に圧縮力が働く。そして、圧電基材12が圧縮力を受けると、圧電基材12は圧縮力に応じた信号を出力する。
【0130】
ここで、圧電基材12の配置を変更した比較例との対比において本実施形態の効果を説明する。
図16Aは、弾性体である保持部材20の受圧面22の表面に圧電基材12を設置し固定した例(比較例1)である。比較例1では、受圧面22に物体等が接触することで圧電基材12に圧力が発生するが、圧電基材12の上から加圧された場合、圧電基材12により保持部材20は弾性体としてのクッション性を失う。また、圧電基材12に直接負荷が掛かるので機械的負荷が大きい。したがって、尖ったものなどが接触すると断線が生ずるなど破損のおそれがある。
また、
図16Bは、弾性体である保持部材20の受圧面22の裏面、すなわち設置面26に圧電基材12を設置し固定した例(比較例2)である。比較例2において、圧電基材12は、必ず保持部材20を介して加圧される。つまり、圧電基材12は直接加圧されることがないため、断線の可能性は低いものの、比較例1よりも電圧感度が低い。
【0131】
そして、比較例1及び2、並びに従来技術(特許文献3及び4)のように圧電基材を受圧部位の直下に設置する構成の場合、圧電基材の設置場所から離れた場所で受圧した場合、電圧が出力されなかったり、電圧感度が低い場合がある。
これに対して、本実施形態では、保持部材20において、上方側の受圧面22で受けた圧力に対して顕著な変形が生ずる隣接面24に圧電基材12が巻き付けられている。つまり、本実施形態は、弾性体のクッション性を活かした構造が採用されている。そして、本実施形態では、受圧面22における受圧部位や受圧方向がずれていても弾性体である保持部材20が変形さえすれば圧電基材12に電圧が発生する。したがって、本実施形態のセンサモジュール10によれば、圧力の検知に際し、圧電基材を用いた簡易な構造でありながら、検知範囲を確保することができ、検知感度を向上させることができる。また、本実施形態では弾性体を介して圧電基材12が変形するため、圧電基材12に対する機械的負担は軽減される。
【0132】
<第2の実施形態>
図5を基に、第2の実施形態のセンサモジュール10Aについて説明する。
第2の実施形態は、保持部材の形状が第1の実施形態と相違する。なお、圧電基材12の構造については、第1の実施形態と同じであり、説明は割愛する。また、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付すものとする。
図5に示されるように、本実施形態に係るセンサモジュール10Aは、直方体状の弾性体からなる保持部材20Aと、長尺状の圧電基材12と、を含んで構成されている。ここで、本実施形態の保持部材20Aは、第1の実施形態の保持部材20と同じ材料が選択される。そして、硬さについても、受圧面22を直径10mmの金属製の円柱で押し込んだ際の単位荷重当たりの凹み量が0.03mm〜0.5mmの範囲とするのが望ましい。
【0133】
本実施形態の保持部材20Aは、直方体状であるため、受圧面22及び設置面26に隣接する側面である隣接面24は4面ある。すなわち、圧力の受圧方向(
図5の矢印P)周りに第1隣接面24A、第2隣接面24B、第3隣接面24C及び第4隣接面24Dの順に形成されている。
そして、隣接面24上には、ケーブル状の圧電基材12が配置されている。詳しくは、圧電基材12は第1隣接面24Aから第4隣接面24Dにかけて配置されている。つまり隣接面24上に巻き付けられた状態で接着固定されている。換言すると、圧電基材12は、隣接面24において、圧力の受圧方向(
図5の矢印P)周りに保持部材20Aを囲むように設けられている。
【0134】
本実施形態のセンサモジュール10Aは第1の実施形態と同様の作用を有している。すなわち、保持部材20Aにおいて受圧面22が受圧方向(
図5の矢印P)から圧力を受けると、受圧面22と設置面26との間で圧縮が生じる結果、隣接面24は保持部材20Aの外方(
図5の矢印S)に向けて膨張変形する。隣接面24が膨張変形することで隣接面24に設けられた圧電基材12には張力が発生し、電圧が発生する。また、受圧面22が設置面26から引き離される場合については、隣接面24が収縮変形することで隣接面24に設けられた圧電基材12には圧縮力が発生し、圧電基材12では張力が付与された時と逆向きの電圧が発生する。これにより第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0135】
<第3の実施形態>
図6を基に、第3の実施形態のセンサモジュール10Bについて説明する。
第3の実施形態は、保持部材の形状が第1及び第2の実施形態と相違する。なお、圧電基材12の構造については、第1及び第2の実施形態と同じであり、説明は割愛する。また、第1及び第2の実施形態と同一の構成については同一の符号を付すものとする。
図6に示されるように、本実施形態に係るセンサモジュール10Bは、球体状の弾性体からなる保持部材30と、長尺状の圧電基材12と、を含んで構成されている。
【0136】
保持部材30は、例えば、床面に設置して上方から圧力を受ける場合、上端部が圧力を受ける受圧部32として、下端部が設置部36として、受圧部32と設置部36とを結ぶ線の中心で直交する面が交差面34として構成される。上述のように、保持部材30は弾性体であって、受圧部32で圧力を受けると、受圧方向と交わる交差面34では、受圧部32で受けた圧力に対応して変形が生じる。ここで、交差面34の外縁部を外周部34Aとすると、交差面34の変形に伴い外周部34Aも変形する。
ここで、本実施形態の保持部材30は、第1の実施形態の保持部材20と同じ材料が選択される。そして、硬さについても、受圧面22を直径10mmの金属製の円柱で押し込んだ際の単位荷重当たりの凹み量が0.03mm〜0.5mmの範囲とするのが望ましい。
【0137】
外周部34Aには、ケーブル状に形成された圧電基材12が配置されている。詳しくは、圧電基材12は円周状の外周部34Aに沿って巻き付けられた状態で接着固定されている。換言すると、圧電基材12は、保持部材30において、圧力の受圧方向(
図6の矢印P)周りに保持部材30を囲むように設けられている。なお、本実施形態では圧電基材12は、外周部34Aとの接触部の全てにおいて接着固定されている。
本実施形態のセンサモジュール10Bは第1及び第2の実施形態と同様の作用を有している。すなわち、保持部材30において受圧部32が受圧方向(
図6の矢印P)から圧力を受けると、受圧部32と設置部36との間で圧縮が生じる結果、保持部材30は側部が外方(
図6の矢印S)に向けて膨張することで扁平状に変形する。そして、交差面34は拡径する、すなわち外周部34Aの周長が延長する。外周部34Aが延長することで当該外周部34Aに設けられた圧電基材12には張力が発生し、電圧が発生する。また、受圧部32が設置部36から引き離される場合については、外周部34Aの周長が短縮する結果、圧電基材12には圧縮力が発生し、圧電基材12では張力が付与された時と逆向きの電圧が発生する。
【0138】
なお、本実施形態では、上端部が圧力を受ける受圧部32として定義したが、圧力を受ける部位(受圧部位)は必ずしも受圧部32である必要はなく、また、圧力を受ける方向(受圧方向)は、球体の保持部材30の中心部に向かう向きに限らない。すなわち、圧力を受けた際に交差面34が拡径し、外周部34Aの周長が延長する態様であれば、受圧部位及び受圧方向は特定されない。つまり、本実施形態の場合、交差面34より上方で受圧すれば、圧力を検知することができる。
【0139】
第3の実施形態においては、弾性体からなる保持部材30に圧力を受ける受圧部32を設け、受圧部32で受けた圧力に対応して変形が生ずる交差面34の外周部34Aに対し、張力を検知可能な圧電基材12を設置した点に特徴がある。例えば、球体状の保持部材30において、受圧部32に物体等が接触することにより加圧される(衝撃や振動による加圧を含む)と、外周部34Aの周長が延長することにより、圧電基材12に張力が働く。そして、圧電基材12が張力を受けると、圧電基材12は張力に応じた信号を出力する。つまり、本実施形態は、弾性体のクッション性を活かした構造が採用されている。
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、受圧部32における受圧部位や受圧方向がずれていても弾性体である保持部材30が変形さえすれば圧電基材12に電圧が発生する。したがって、本実施形態のセンサモジュール10Bによれば、圧力の検知に際し、圧電基材を用いた簡易な構造でありながら、検知範囲を確保することができ、検知感度を向上させることができる。また、本実施形態では弾性体を介して圧電基材12が変形するため、圧電基材12に対する機械的負担は軽減される。
【0140】
<第4の実施形態>
図7を基に、第4の実施形態のセンサモジュール10Cについて説明する。
第4の実施形態は、圧電基材12の配設方法が第1の実施形態と相違する。なお、圧電基材12の構造については、第1の実施形態と同じであり、説明は割愛する。また、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付すものとする。
図7に示されるように、本実施形態に係るセンサモジュール10Cでは、圧電基材12の先端に紐状の弾性物であるゴム紐14が接続されている。そして、本実施形態では、ゴム紐14が圧電基材12と共に円柱面である隣接面24上に巻き付けられている。ただし、本実施形態では、圧電基材12と隣接面24との接触部、及びゴム紐14と隣接面24との接触部の全てが接着固定されている訳ではない。圧電基材12に接続されたゴム紐14の先端部Aと、隣接面24と接触する圧電基材12の後端部Bにおいてのみ接着固定されている。
【0141】
本実施形態のセンサモジュール10Cは第1の実施形態と同様の作用を有している。すなわち、保持部材20において受圧面22が受圧方向(
図7の矢印P)から圧力を受けると、受圧面22と設置面26との間で圧縮が生じる結果、隣接面24は保持部材20の外方(
図7の矢印S)に向けて膨張変形する。隣接面24が膨張変形することで隣接面24に設けられた圧電基材12及びゴム紐14には張力が発生し、圧電基材12では電圧が発生する。これにより第1の実施形態と同様の効果を奏する。
ところで、圧電基材12は、内部導体16Aの太さや第1の圧電体18Aの厚さにより、対応できる張力には限界がある。そのため、受圧面22が受けた圧力に対して隣接面24の変形量が大きい材質の場合、圧電基材12が過大な張力を受けることで断線する場合がある。そこで、本実施形態では、圧電基材12に対して弾性変形可能なゴム紐14を接続させた。これにより、隣接面24の変形量が大きく圧電基材12に過大な張力が掛かっても場合であっても、ゴム紐14が延伸することで圧電基材12の断線を抑制することができる。なお、ゴム紐14に代えて、コイルスプリングを接続してもよい。
【0142】
<第5の実施形態>
図8A及び
図8Bを基に、第5の実施形態のセンサモジュール10Dについて説明する。
第5の実施形態では、第1の実施形態のセンサモジュール10を基に、保持部材20の外周部に弾性体からなる保護部材28を設けたものである。具体的には、隣接面24及び隣接面24に配置された圧電基材12が保護部材28で覆われている。なお、保護部材28以外の構造については、第1の実施形態と同じであり、説明は割愛する。
図8Aに示されるように、本実施形態の保護部材28は円筒形状であって、内径が保持部材20の外径に等しい。また、
図8Bに示されるように、保護部材28の高さは保持部材20の高さに等しい。なお、保護部材28の高さはこれに限らず、圧電基材12を覆うことができれば、設置面26から受圧面22にかけて設ける必要ない。
【0143】
以上のように構成されるセンサモジュール10Dは、第1の実施形態のセンサモジュール10と同様の作用を有している。すなわち、受圧面22で圧力を受けることで、受圧面22と設置面26との間で圧縮が生じる結果、隣接面24が膨張変形する。そして、隣接面24が膨張変形することで隣接面24に設けられた圧電基材12には張力が発生し、電圧が発生する。また、受圧面22が設置面26から引き離される場合については、隣接面24が収縮変形することで隣接面24に設けられた圧電基材12には圧縮力が発生し、圧電基材12では張力が付与された時と逆向きの電圧が発生する。これにより第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態は、第1の実施形態の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。すなわち、本実施形態では、圧電基材12を保護部材28で保護することにより、センサモジュール10を露出状態で使用する場合における圧電基材12への障害物の接触を防止することができる。また、保護部材28を保持部材20の円柱面に設けた「たが」として機能させることにより、受圧面22に過大な圧力が加わった場合に、隣接面24の変形を抑えて圧電基材12の断線を抑制することができる。
【0144】
なお、本実施形態の保護部材28は、隣接面24の変形を過度に抑制させない観点でみれば、保持部材20よりも軟質材料で形成するのが望ましい。他方、保護部材28を保持部材20と同じ材料で形成してもよい。この場合、保護部材28と保持部材20とを一体に形成してもよい。
【0145】
<第6の実施形態>
図9A及び
図9Bを基に、第6の実施形態のセンサモジュール10Eについて説明する。
第6の実施形態は、第5の実施形態のセンサモジュール10Dと比べ、保護部材28の形状が異なる以外は第5の実施形態と同様の構成を有している。なお、保護部材28以外の構造については、第1及び第5の実施形態と同じであり、説明は割愛する。
図9Aに示されるように、本実施形態の保護部材28の外観は直方体状であって、上面から下面にかけて、円形の孔が形成されている。この孔の内径は保持部材20の外径に等しい。また、
図9Bに示されるように、保護部材28の高さは保持部材20の高さに等しい。なお、保護部材28の高さはこれに限らず、圧電基材12を覆うことができれば、設置面26から受圧面22にかけて設ける必要ない。
【0146】
以上のように構成されるセンサモジュール10Eは、第5の実施形態のセンサモジュール10Dと同様の作用効果を奏する。
なお、本実施形態の保護部材28は、隣接面24の変形を過度に抑制させない観点でみれば、保持部材20よりも軟質材料で形成するのが望ましい。他方、保護部材28を保持部材20と同じ材料で形成してもよい。この場合、保護部材28と保持部材20とを一体に形成してもよい。
【0147】
また、第5及び第6の実施形態で示した保護部材28は一例であって、隣接面24における変形を妨げず、かつ圧電基材12を覆うことができれば、その形状は自由に設計することが可能である。また、第2の実施形態のように直方体状の保持部材20Aを有するセンサモジュール10Aに対して、第5及び第6の実施形態で示した外観の保護部材28を設けてもよい。
【0148】
<第7の実施形態>
図10A及び
図10Bを基に、第7の実施形態のセンサモジュール10Fについて説明する。
第7の実施形態では、第3の実施形態のセンサモジュール10Bを基に、保持部材30の外周部に弾性体からなる保護部材38を設けたものである。具体的には、保持部材30の受圧部32及び設置部36付近を除く球面部分、並びに外周部34Aに配置された圧電基材12が保護部材38で覆われている。なお、保護部材38以外の構造については、第3の実施形態と同じであり、説明は割愛する。
図10Aに示されるように、本実施形態の保護部材38は外観が円柱形状であって、内部に球状の空間が形成されている。この空間の内径は保持部材30の外径に等しい。また、
図10Bに示されるように、保護部材38の高さは保持部材20の高さよりも若干低く受圧部32は露出している。なお、保護部材38の高さはこれに限らず、圧電基材12を覆うことができれば、設置部36から受圧部32にかけて設ける必要ない。
【0149】
以上のように構成されるセンサモジュール10Fは、第3の実施形態のセンサモジュール10Bと同様の作用を有している。すなわち、受圧部32で圧力を受けることで、受圧部32と設置部36との間で圧縮が生じる結果、外周部34Aの周長が延長する。そして、外周部34Aの周長が延長することで外周部34Aに設けられた圧電基材12には張力が発生し、電圧が発生する。また、受圧部32が設置部36から引き離される場合については、外周部34Aの周長が短縮する結果、圧電基材12には圧縮力が発生し、圧電基材12では張力が付与された時と逆向きの電圧が発生する。これにより第3の実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態は、第3の実施形態の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。すなわち、本実施形態では、圧電基材12を保護部材38で保護することにより、センサモジュール10Bを露出状態で使用する場合における圧電基材12への障害物の接触を防止することができる。また、保護部材38を保持部材30の円柱面に設けた「たが」として機能させることにより、受圧部32に過大な圧力が加わった場合に、交差面34及び外周部34Aの変形を抑えて圧電基材12の断線を抑制することができる。
【0150】
なお、本実施形態の保護部材38は、交差面34及び外周部34Aの変形を過度に抑制させない観点でみれば、保持部材30よりも軟質材料で形成するのが望ましい。他方、保護部材38を保持部材30と同じ材料で形成してもよい。この場合、保護部材38と保持部材20とを一体に形成してもよい。
【0151】
<第8の実施形態>
図11A及び
図11Bを基に、第8の実施形態のセンサモジュール10Gについて説明する。
第8の実施形態は、第7の実施形態のセンサモジュール10Fと比べ、保護部材38の形状が異なる以外は第7の実施形態と同様の構成を有している。なお、保護部材38以外の構造については、第3及び第7の実施形態と同じであり、説明は割愛する。
図11Aに示されるように、本実施形態の保護部材38の外観は正方体状であって、内部に球状の空間が形成されている。この空間の内径は保持部材30の外径に等しい。また、
図11Bに示されるように、保護部材38の高さは保持部材20の高さよりも若干低い。なお、保護部材38の高さはこれに限らず、圧電基材12を覆うことができれば、設置部36から受圧部32にかけて設ける必要ない。
【0152】
以上のように構成されるセンサモジュール10Gは、第7の実施形態のセンサモジュール10Fと同様の作用効果を奏する。
なお、本実施形態の保護部材38は、交差面34及び外周部34Aの変形を過度に抑制させない観点でみれば、保持部材30よりも軟質材料で形成するのが望ましい。他方、保護部材38を保持部材30と同じ材料で形成してもよい。この場合、保護部材38と保持部材20とを一体に形成してもよい。
また、第7及び第8の実施形態で示した保護部材38は一例であって、交差面34及び外周部34Aの変形を妨げず、かつ圧電基材12を覆うことができれば、その形状は自由に設計することが可能である。
【0153】
(各実施形態の変形例)
なお、各実施形態では、保持部材20、20A、30の外周部(つまり、隣接面24、外周部34A)に対して圧電基材12を1周程巻き付けているが、圧電基材12の配置はこれに限らない。具体的に、以下の変形例のように配置することができる。
【0154】
変形例1として、圧電基材12は、保持部材20、20A、30に対して数周巻き付けてもよい。この場合、圧電基材12は、保持部材20、20A、30の上方から下方に向けて螺旋状に巻き付けることができる。例えば、第1の実施形態の保持部材20に対して、圧電基材12を受圧面22から設置面26にかけて螺旋状に巻き付けてもよい。変形例1によれば、受圧に対する隣接面24の変形の誤差を平準化することができるため、圧力を受ける部位や方向の違いによる検知誤差を低減することができる。
【0155】
変形例2として、圧電基材12は、保持部材20、20A、30の一部に設置することができる。例えば、第2の実施形態の保持部材20Aにおいて、圧電基材12を第1隣接面24Aに対してのみ設置してもよい。この場合、受圧面22と平行に圧電基材12を設置する必要はなく、受圧面22に対して、垂直を含む交差方向に沿って圧電基材12を設置することができる。変形例2によれば、圧電基材12を設置する際の長さを短くすることができる。
【0156】
変形例3として、圧電基材12は、保持部材20、20A、30に複数個設置することができる。例えば、第1の実施形態の保持部材20に対して、複数の圧電基材12を繋ぎ合わせた上で、隣接面24を周回させて設置することができる。また例えば、第2の実施形態の保持部材20Aにおいて、各隣接面24ごとに圧電基材12を設置してもよい。変形例3によれば、保持部材20、20A、30に対して複数の圧電基材12を設置することで、保持部材20、20A、30が軟質で変形量が大き過ぎる場合であっても圧電基材12の断線を抑制することができる。
【0157】
なお、各実施形態及び変形例については、それぞれ組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施することができる。
【0158】
〔圧力分布センサ〕
各実施形態のセンサモジュールは、圧力分布センサ50に適用することができる。ここで、第1の実施形態のセンサモジュール10を圧力分布センサ50に適用した場合を例に説明する。
図12A及び
図12Bに示されるように、一の実施形態の圧力分布センサ50はセンサモジュール10が格子状に複数配置されている。具体的に圧力分布センサ50には、
図12Aに示されるように、保持部材20と同じ、又は軟質の材料からなる基材58に対して、5行×5列の計25個のセンサモジュール10が配置されている。ここで、
図12A及び
図12Bでは、保持部材20の周囲に設けられた圧電基材12及び保持部材20から延出する圧電基材12の図示は省略されている。なお、センサモジュール10の個数及び配置態様はこの限りではない。
【0159】
図12Bに示されるように、基材58の上面52は各センサモジュール10の受圧面22と同一面を形成し、基材58の下面56は各センサモジュール10の設置面26と同一面を形成している。なお、基材58の上面52及び下面56の位置はこれに限らず、各センサモジュールを固定することができれば、必ずしも設置面26から受圧面22にかけて設ける必要ない。
本実施形態の圧力分布センサ50によれば、上面52に対して圧力が加えられた場合、各センサモジュール10では、圧力に対応した電圧が出力されることにより、上面52に対して加えられた圧力の分布を知ることができる。
本実施形態の圧力分布センサ50は、例えば、椅子の座面に設置することにより、人が着座した際の座面分布を測定することができる。また例えば、ベットマットの上に設置することにより、人が寝た際の体圧分布を測定することができる。
【0160】
(補足)
以上、各実施形態のセンサモジュールは、上記のような圧力分布センサに適用できる他、タッチセンサなどの圧力検知センサ、圧力検知接触センサ、舌圧測定、心拍、呼吸検出などの生体測定用センサに応用することができる。その他、各実施形態のセンサモジュールは、次のセンサに採用することができる。例えば、センサとしては、衝撃センサ、振動センサ等がある。
また、上記のセンサが装着される、又はこれらのセンサと一体化された構造体に採用することができる。例えば、自動車(例えば、四輪自動車、二輪自動車等)、列車、荷車、船舶、航空機、自転車、台車、キャスター付トランク、ロボット、アクチュエータなどの移動する構造体に採用することができる。また、プロテクター、サポーター、靴、衣服、帽子、ヘルメットなどの人を保護する構造体に採用することができる。さらに、壁材、窓枠、床材、カーペット、座布団、ベッド、椅子、乗物用シートなどの固定物にも採用することができる。床材としては例えば木材やプラスチック、畳、樹脂製の模擬畳、金属、ガラス等が挙げられる。
【実施例】
【0161】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例として、ケーブル状の圧電基材12を配設したセンサモジュール10を複数製造した。
【0162】
(実施例1)
実施例1のセンサモジュール10は、
図1に示されるように、円柱状の保持部材20と、保持部材20の側面である隣接面24に巻き付けられた圧電基材12を備えている。ここで、実施例1では、圧電基材12は隣接面24との接触部の全てにおいて接着剤により固定されている。すなわち、圧電基材12と隣接面24との接触部分においては、図示しない接着剤層が存在している。
【0163】
<圧電基材の製法>
圧電フィルム(PLAフィルム)から、厚さ50μm、幅0.6mmのマイクロスリットリボンを作製した。次に株式会社明清産業製の錦糸線(型番:u24)に対してマイクロスリットリボンを、錦糸線の長手方向に対して、斜め45°の方向に、S巻(反時計周り)方向にラッピング加工した。さらに外側に、外部導体として、幅0.3mm、厚さ30μmの圧延銅箔をマイクロスリットリボンが外側から露出しないように密にZ巻方向にラッピングし、圧電基材12とした。
さらに、実際に圧力を検出するために、圧電基材12を70mmにカットし、60mmは実際に歪を測定する領域とし、残りの10mmの部分は接続電極部としてA/D変換器(National Instruments社:USB−6210)(
図14参照)に接続して評価した。
【0164】
<センサモジュールの製造>
各実施例のセンサモジュール10は、
図1に示されるように、円柱状であって、直径が20mm、高さが5mmとされている。ここで、実施例1のセンサモジュール10は、圧電基材12が設置される保持部材20は、ポリオールと二塩基酸エステルから成るA液と4−4´−MDIと二塩基酸エステルから成るB液とを10:1で混合して作ったウレタンを円柱状に成形することで得た。そして成形された保持部材20において、圧電基材12は受圧面22と平行で、かつ隣接面24の上下中央を1周させるように配置した(
図1参照)。このとき、圧電基材12を接着剤(セメダイン社:スーパーX_No.8008)で隣接面24に対して固定した。
【0165】
(実施例2)
実施例2のセンサモジュール10において、保持部材20は、ポリオールと二塩基酸エステルから成るA液と4−4´−MDIと二塩基酸エステルから成るB液とを4:1で混合して作ったウレタンを円柱状に成形することで得た。そして成形された保持部材20において、圧電基材12は受圧面22と平行で、かつ隣接面24の上下中央を1周させるように配置した(
図1参照)。このとき、圧電基材12を接着剤(セメダイン社:スーパーX_No.8008)で隣接面24に対して固定した。
【0166】
(実施例3)
実施例3のセンサモジュール10において、保持部材20は、シリコーンエラストマーを円柱状に成形することで得た。そして成形された保持部材20において、圧電基材12は受圧面22と平行で、かつ隣接面24の上下中央を1周させるように配置した(
図1参照)。このとき、圧電基材12を接着剤(セメダイン社:スーパーX_No.8008)で隣接面24に対して固定した。
【0167】
(実施例4)
実施例4のセンサモジュール10において、保持部材20は、イソプレンゴムを円柱状に成形することで得た。そして成形された保持部材20において、圧電基材12は受圧面22と平行で、かつ隣接面24の上下中央を1周させるように配置した(
図1参照)。このとき、圧電基材12を接着剤(セメダイン社:スーパーX_No.8008)で隣接面24に対して固定した。
【0168】
(実施例5)
実施例5のセンサモジュール10において、保持部材20は、アクリル樹脂を円柱状に成形することで得た。そして成形された保持部材20において、圧電基材12は受圧面22と平行で、かつ隣接面24の上下中央を1周させるように配置した(
図1参照)。このとき、圧電基材12を接着剤(セメダイン社:スーパーX_No.8008)で隣接面24に対して固定した。
【0169】
(比較例1)
比較例1のセンサモジュール100において、保持部材20は実施例2と同じものを使用した。そして、
図16Aに示されるように、圧電基材12を保持部材20の表面(上面)である受圧面22に配置し、接着剤(セメダイン社:スーパーX_No.8008)で固定した。
【0170】
(比較例2)
比較例2のセンサモジュール110において、保持部材20は実施例2及び比較例1と同じものを使用した。そして、
図16Bに示されるように、圧電基材12を保持部材20の裏面(下面)である設置面26に配置し、接着剤(セメダイン社:スーパーX_No.8008)で固定した。
【0171】
<凹み量測定>
上述のように製造した各実施例及び各比較例の保持部材20の物性を把握すべく単位荷重当たりの凹み量(mm)を測定した。具体的には、引張試験機(エーアンドディ社:テンシロンRTG1250)を用い、保持部材20の受圧面22に対し直径10mmの金属製の円柱を1Nの荷重で押し込んだ際の凹み量(mm)を測定した。
図13に示されるように、引張試験機200は、上下に移動するクロスヘッド210と、クロスヘッド210に固定されたロードセル220と、ロードセル220の先端に装着された押出棒225と、測定物を設置する架台230とを有している。ここで、押出棒225は、先端部が直径10mmの円柱状に形成されている。センサモジュール10は、受圧面22の中心に押出棒225が接触するよう架台230に対して固定した。
【0172】
一方、AD変換器240では、ロードセル220で検出された荷重、及びクロスヘッド210の移動量である歪値がそれぞれ入力される。そして、AD変換器240でデジタル化された情報が解析用PC250に出力され、解析用PC250において各検出値が算出される。
以上、各実施例及び各比較例のセンサモジュール10について、引張試験機200により、保持部材20の単位荷重当たりの凹み量を求めた。
【0173】
<電圧感度測定>
上述のように製造した各実施例及び各比較例のセンサモジュール10の電圧感度を把握すべく、単位荷重当たりの発生電圧を求めた。電圧感度は、
図14に示されるように、フォースゲージ310(SHIMPO社:FGP−10)と、AD変換器320(National Instruments社:USB−6210)と、解析用PC330とを用いて測定した。フォースゲージ310には、直径12mmの円盤状の押圧部を有する押圧棒315が設けられている。また、測定対象となるセンサモジュール10では圧電基材12がAD変換器320に接続されている。
【0174】
そして、センサモジュール10を定盤等の平面上にセットし、センサモジュール10の受圧面22の中心部に対して押圧棒315を垂直に接触させて押圧する。すると、保持部材20の変形に伴い、隣接面24に配置した圧電基材12に張力が印加され、圧電効果により電荷が発生する。この電荷の発生によって生じた電圧を、AD変換器320を通して解析用PC330で測定した。
次に、電圧感度は次のようにして算出した。まず、受圧面22に対して、5N、10N、15N、20Nの荷重を与えたときに解析用PC330において測定された発生電圧の最大値(Vp−p)を読み取り、縦軸に発生電圧(Vp−p)、横軸に荷重(N)をプロットした。そして、最小二乗法による直線近似を行い、単位荷重(N)当たりの発生電圧(Vp−p)を示す直線の傾きを電圧感度とした。
【0175】
以下、各実施例及び各比較例についての凹み量の測定結果と電圧感度の算出結果を示す。
表1は実施例1〜5の凹み量の測定結果と電圧感度の算出結果である。
図15に表1における凹み量を横軸に、電圧感度を縦軸にプロットしたグラフを示す。表1に示されるように、各実施例は凹み量が大きいほど、電圧感度が大きくなることが分かる。また、
図15に示されるように、凹み量と電圧感度との相関を見ると、比例関係にあることが分かる。特に、単位荷重当たりの凹み量が0.01mm〜1.0mmの範囲であれば、凹み量と電圧感度との間で比例関係が成立する。
以上、実施例においては、凹み量で表される保持部材20の硬さと、電圧感度は比例関係にあるといえる。そして、凹み量が0.01mm〜1.0mmの範囲、より望ましくは0.03mm〜0.5mmの範囲となる保持部材20を使用することにより、受圧面22に対して加えられた圧力を高い感度で検出することができる。
なお、参考までに、寒天を保持部材20とした場合、単位荷重当たりの凹み量は2.097mm/Nと各実施例と比較して大きいものの、電圧感度は0.0258V/Nと実施例5に次いで低い。これは、寒天の保持部材20は、各実施例における保持部材20の材質と比べて軟質すぎて受圧面22で受けた圧力が隣接面24に波及されないからである。すなわち、受圧面22にのみ変形が生じ、隣接面24ではほとんど変形が生じないため、圧電基材12に張力が印加されず電圧が発生しないのである。
【0176】
【表1】
【0177】
なお、アクリル製の保持部材20を有する実施例5の電圧感度は、他の実施例に比べて低いが、大きな圧力(例えば、電圧感度を測定した際の荷重20Nよりも大きい荷重)を測定する場合のセンサモジュールとしては、十分に実用範囲内にある。以上を踏まえると、測定荷重の小さい場合には柔らかい保持部材20を有するセンサモジュール10を採用し、測定荷重の大きい場合には硬い保持部材20を有するセンサモジュール10を採用することで、測定荷重に適したセンサモジュールを提供することができる。
【0178】
表2は実施例2と比較例1及び2の電圧感度の算出結果である。表2に示されるように、同じ材質の保持部材20を有する実施例2と比較例1及び2を比較した場合、保持部材20の側面である隣接面24に圧電基材12を設置した方が電圧感度が大きいことが分かる。一方、保持部材20の表面である受圧面22に圧電基材12を設置した比較例1、及び保持部材20の裏面である設置面26に圧電基材12を設置した比較例2は、実施例2よりも電圧感度が低い。また、比較例1と比較例2とでは電圧感度に差が生じている。すなわち、比較例1及び2では、弾性体である保持部材20に対して圧電基材12を表面と裏面のどちらに設けるかで、電圧感度が異なるため、使用に際して表裏を区別して使用する必要がある。そして、比較例1の場合、圧電基材12に対して直接負荷が掛かるので、機械的な負荷が大きいといえる。そのため、比較例1のセンサモジュール100は、尖った物体などが接触すると圧電基材12が断線するなど、破損しやすいといえる。
以上を踏まえると、実施例2は、比較例1及び2に比べて表裏を区別して使用する必要がない上、高負荷に対応可能であり、さらに高感度のセンサモジュールといえる。
【0179】
【表2】
【0180】
受圧面22が設置面26から引き離される場合について、実施例6により検証した。
(実施例6)
実施例6のセンサモジュール10は、
図1に示されるように、円柱状であって、直径が50mm、高さが20mmとされている。ここで、実施例6の圧電基材12は、上述した各実施形態の圧電基材と同じである。また、実施例6の保持部材20は、天然ゴムスポンジ製である。保持部材20において、圧電基材12は受圧面22と平行で、かつ隣接面24の上下中央を1周させるように配置した(
図1参照)。このとき、圧電基材12を接着剤(セメダイン社:スーパーX_No.8008)で隣接面24に対して固定した。また、受圧面22及び設置面26にはそれぞれフック(具体的には、ミツヤ製:吊り金具BX1−16)を設けた。
【0181】
製造した実施例6のセンサモジュール10は、引張試験により電荷量と変形量の測定が行われた。変形量は、引張試験機(エーアンドディ社:テンシロンRTG1250)を用い、受圧面22と設置面26との間に5Nの引張荷重を加えた際の変位量を測定して求めた。また、電荷量は、圧電基材12にエレクトロメータ(ケースレー社製:Model617)を接続して測定した。
測定の結果、単位荷重当たりの変形量は、0.205mm/Nであり、単位荷重当たりの電荷量は、−30.26pC/Nであった。なお、電荷量は受圧面22が圧縮されて圧電基材12に張力が加わる場合を正としているため、受圧面22が引っ張られて電基材12に圧縮力が加わる実施例6の場合、電荷量は負となる。
以上のように、受圧面22が設置面26から引き離される場合、隣接面24が収縮変形することで隣接面24に設けられた圧電基材12には圧縮力が発生し、圧電基材12では張力が付与された時と逆向きの電荷(つまり、電圧)が発生することを確認した。
【0182】
2017年8月9日に出願された日本国特許出願2017−153933の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。