特許第6663088号(P6663088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6663088
(24)【登録日】2020年2月17日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】発泡成形品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/12 20060101AFI20200227BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20200227BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20200227BHJP
   B29K 75/00 20060101ALN20200227BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20200227BHJP
【FI】
   B29C44/12
   B29C44/00 A
   B29C39/10
   B29K75:00
   B29L9:00
【請求項の数】14
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-560419(P2019-560419)
(86)(22)【出願日】2019年3月25日
(86)【国際出願番号】JP2019012309
【審査請求日】2019年11月1日
(31)【優先権主張番号】特願2018-98797(P2018-98797)
(32)【優先日】2018年5月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達朗
(72)【発明者】
【氏名】奥村 健治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 潤
(72)【発明者】
【氏名】濱 大地
(72)【発明者】
【氏名】寺下 勝
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−050833(JP,A)
【文献】 特表2009−527377(JP,A)
【文献】 特開平10−296757(JP,A)
【文献】 特表2015−525688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00−44/60;67/20
B29C 39/00−39/44
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体と、
前記発泡体に取り付けられた表示部および検知部の少なくとも1つを有するインサート材と、
少なくとも前記インサート材が取り付けられた面に貼り合わせられた表皮材と
前記インサート材と前記表皮材との間であって、少なくとも前記インサート材が取り付けられた面に形成された柔軟層とを備えた、発泡成形品。
【請求項2】
前記発泡体の前記インサート材が取り付けられた面と反対の面に形成された基材をさらに備えた、請求項1に記載の発泡成形品。
【請求項3】
前記インサート材は発泡成形品のパーティングラインから突出する長さの配線部材を有し、前記パーティングラインの周囲に形成された軟質シール材をさらに備えた、請求項1または2に記載の発泡成形品。
【請求項4】
前記インサート材は前記発泡体と前記基材とに形成された貫通穴を通って発泡成形品の裏側へ突出する長さの配線部材を有し、前記貫通穴の内側に形成された軟質シール材をさらに備えた、請求項2に記載の発泡成形品。
【請求項5】
前記インサート材は検知部を有し、前記検知部は、検知面が前記発泡体の表面側に露出するように取り付けられたタッチセンサ、または前記検知部は押圧面が前記発泡体の表面側に露出するように取り付けられたタクトスイッチである、請求項1から4のいずれかに記載の発泡成形品。
【請求項6】
前記表皮材は光透過性を有し、前記検知部は前記タッチセンサであり、前記表皮材または前記タッチセンサの背面に設置された光源をさらに備えた、請求項5に記載の発泡成形品。
【請求項7】
前記表皮材は光透過性を有し、前記インサート材が有する表示部は透過表示部を有するラベルと光源との積層物であり、前記ラベルが前記発泡体の表面側に露出するように取り付けられた、請求項1から4のいずれかに記載の発泡成形品。
【請求項8】
前記表皮材は光透過性を有し、前記インサート材が有する表示部はドットマトリクス表示装置であり、前記ドットマトリクス表示装置は表示面が前記発泡体の表面側に露出するように取り付けられた、請求項1から4のいずれかに記載の発泡成形品。
【請求項9】
第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、表示部および検知部の少なくとも1つを有するインサート材と表皮材とが貼り合わせられた貼合品を、前記表皮材が前記第1型の成形面に接するように配置する貼合品配置工程と、
前記一対の金型を型締めする型締工程と、
型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、
前記一対の金型を型開きする型開工程と、
前記貼合品と前記発泡体とが一体化した成形品を取り出す取出工程とを備え、
前記貼合品は、前記インサート材と前記表皮材との間に柔軟層が貼り合わせられたものである、発泡成形品の製造方法。
【請求項10】
第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、前記第1型の成形面に表皮材を配置する表皮材配置工程と、
前記表皮材の前記成形面に接している面と反対の面に、表示部および検知部の少なくとも1つを有するインサート材を配置するインサート材配置工程と、
前記一対の金型を型締めする型締工程と、
型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、
前記一対の金型を型開きする型開工程と、
前記表皮材、前記インサート材、および前記発泡体が一体化した成形品を取り出す取出工程とを備えた、発泡成形品の製造方法。
【請求項11】
前記表皮材と前記インサート材との間に柔軟層を配置する柔軟層配置工程をさらに備えた、請求項10に記載の発泡成形品の製造方法。
【請求項12】
前記型締め工程よりも前に、前記第2型の成形面に基材を配置する基材配置工程をさらに備えた、請求項9から11のいずれかに記載の発泡成形品の製造方法。
【請求項13】
第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、前記第1型の成形面に表示部および検知部の少なくとも1つを有するインサート材を配置するインサート材配置工程と、
前記第2型の成形面に基材を配置する基材配置工程と、
前記一対の金型を型締めする型締工程と、
型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、
前記一対の金型を型開きする型開工程と、
前記インサート材、前記基材、および前記発泡体が一体化した成形品を取り出す取出工程と、
前記インサート材を覆うように前記成形品に表皮材を貼り合わせる貼合工程とを備えた、発泡成形品の製造方法。
【請求項14】
平面視で表示部および検知部の少なくとも1つを有するインサート材と同じ大きさの凸部を成形面に有する第1型と、第2型とを含む一対の金型を準備し、前記第2型の成形面に基材を配置する基材配置工程と、
前記一対の金型を型締めする型締工程と、
型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ、前記第1型の前記凸部によって形成された凹部を有する発泡体を形成する成形工程と、
前記一対の金型を型開きする型開工程と、
前記基材と前記発泡体とが一体化した成形品を取り出す取出工程と、
前記成形品に表皮材を貼り合わせる貼合工程とを備え、
前記貼合工程は、
前記表示部の表示面、前記検知部の検知面または押圧面、の少なくとも1つが露出するように前記凹部に前記インサート材を取り付けるインサート材取付工程の後に前記表皮材を前記成形品に貼り合わせることを含み、
または、前記表皮材は前記インサート材が貼り合わせられており、前記インサート材を前記凹部にはめるようにして前記表皮材を前記成形品に貼り合わせることを含む、発泡成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品(たとえば、インストルメントパネル)や家電の操作パネルなどに、タッチセンサを組み込んだ樹脂成形品が用いられている。このような成形品は、たとえば特許文献1を参照して、一対の金型103,103の一方の成形面に表皮材101とタッチセンサ102をこの順に配置し(図32(a))、型締めをし(図32(b))、成形空間内に熱可塑性樹脂などの溶融樹脂を射出して一体成形することで得ることができる(図32(c)(d))。つまり、インサート材としてタッチセンサを用いた、いわゆるインサート成形により製造することができる。このような製造方法では、一度の射出成形で、表皮材101で加飾されたタッチセンサ付きの成形品100を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018−501135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の製造方法によって得られた成形品は、インサート材の裏側に硬い樹脂成形品があるため、インサート材部分を触った際、樹脂成形品の硬い感触がそのまま指に伝わってしまうという問題があった。また、従来の製造方法は射出成形であり、成形時の樹脂の圧力や温度によってインサート材が損傷してしまうほどの過大な負荷がかかってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、インサート材部分を含めて全体的に柔らかい感触を得られる発泡成形品と、そのような発泡成形品を得るための製造方法を提供することを目的とする。また、インサート材に過大な負荷がかからない製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0007】
本発明の発泡成形品は、
発泡体と、
発泡体に取り付けられた表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材と、
少なくともインサート材が取り付けられた面に貼り合わせられた表皮材とを備えたものである。
【0008】
インサート材と表皮材との間であって、少なくともインサート材が取り付けられた面に柔軟層をさらに備えたものであってもよい。
【0009】
発泡体のインサート材が取り付けられた面と反対の面に基材をさらに備えたものであってもよい。
【0010】
インサート材は発泡成形品のパーティングラインから突出する長さの配線部材を有し、パーティングラインの周囲に形成された軟質シール材をさらに備えたものであってもよい。
【0011】
インサート材は発泡体と基材とに形成された貫通穴を通って発泡成形品の裏側へ突出する長さの配線部材を有し、貫通穴の内側に形成された軟質シール材をさらに備えたものであってもよい。
【0012】
インサート材が有する検知部はタッチセンサであり、タッチセンサは検知面が発泡体の表面側に露出するように取り付けられたものであってもよい。
【0013】
表皮材は光透過性を有し、表皮材またはタッチセンサの背面に光源をさらに備えたものであってもよい。
【0014】
インサート材が有する検知部はタクトスイッチであり、タクトスイッチは押圧面が発泡体の表面側に露出するように取り付けられたものであってもよい。
【0015】
表皮材は光透過性を有し、インサート材が有する表示部は透過表示部を有するラベルと光源との積層物であり、ラベルが発泡体の表面側に露出するように取り付けられたものであってもよい。
【0016】
表皮材は光透過性を有し、インサート材が有する表示部はドットマトリクス表示装置であり、ドットマトリクス表示装置は表示面が発泡体の表面側に露出するように取り付けられたものであってもよい。
【0017】
本発明の発泡成形品の製造方法は、
第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材と表皮材とが貼り合わせられた貼合品を、表皮材が第1型の成形面に接するように配置する貼合品配置工程と、
一対の金型を型締めする型締工程と、
型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、
一対の金型を型開きする型開工程と、
貼合品と発泡体とが一体化した成形品を取り出す取出工程とを備えたものである。
【0018】
貼合品は、インサート材と表皮材との間に柔軟層が貼り合わせられたものであってもよい。
【0019】
本発明の発泡成形品の製造方法は、
第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、第1型の成形面に表皮材を配置する表皮材配置工程と、
表皮材の成形面に接している面と反対の面に、表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材を配置するインサート材配置工程と、
一対の金型を型締めする型締工程と、
型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、
一対の金型を型開きする型開工程と、
表皮材、インサート材、および発泡体が一体化した成形品を取り出す取出工程とを備えたものである。
【0020】
表皮材とインサート材との間に柔軟層を配置する柔軟層配置工程をさらに備えたものであってもよい。
【0021】
型締工程よりも前に、第2型の成形面に基材を配置する基材配置工程をさらに備えたものであってもよい。
【0022】
インサート材は第1型のパーティング面に突出する長さの配線部材を有し、
第1型および第2型の少なくとも一方のパーティング面に軟質シール材が形成されているものであってもよい。
【0023】
本発明の発泡成形品の製造方法は、
第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、第1型の成形面に表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材を配置するインサート材配置工程と、
一対の金型を型締めする型締工程と、
型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、
一対の金型を型開きする型開工程と、
インサート材と発泡体とが一体化した成形品を取り出す取出工程とを備えたものである。
【0024】
本発明の発泡成形品の製造方法は、
第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、第1型の成形面に表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材を配置するインサート材配置工程と、
第2型の成形面に基材を配置する基材配置工程と、
一対の金型を型締めする型締工程と、
型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、
一対の金型を型開きする型開工程と、
インサート材、基材、および発泡体が一体化した成形品を取り出す取出工程とを備えたものである。
【0025】
本発明の発泡成形品の製造方法は、
第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、第1型の成形面に表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材を配置するインサート材配置工程と、
第2型の成形面に基材を配置する基材配置工程と、
一対の金型を型締めする型締工程と、
型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、
一対の金型を型開きする型開工程と、
インサート材、基材、および発泡体が一体化した成形品を取り出す取出工程と、
インサート材を覆うように成形品に表皮材を貼り合わせる貼合工程とを備えたものである。
【0026】
本発明の発泡成形品の製造方法は、
平面視で表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材と同じ大きさの凸部を成形面に有する第1型と、第2型とを含む一対の金型を準備し、第2型の成形面に基材を配置する基材配置工程と、
一対の金型を型締めする型締工程と、
型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ、第1型の凸部によって形成された凹部を有する発泡体を形成する成形工程と、
一対の金型を型開きする型開工程と、
基材と発泡体とが一体化した成形品を取り出す取出工程と、
インサート材が貼り合わせられた表皮材を、インサート材を凹部にはめるようにして成形品に貼り合わせる貼合工程とを備えたものである。
【0027】
本発明の発泡成形品の製造方法は、
平面視で表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材と同じ大きさの凸部を成形面に有する第1型と、第2型とを含む一対の金型を準備し、第2型の成形面に基材を配置する基材配置工程と、
一対の金型を型締めする型締工程と、
型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ、第1型の凸部によって形成された凹部を有する発泡体を形成する成形工程と、
一対の金型を型開きする型開工程と、
基材と発泡体とが一体化した成形品を取り出す取出工程と、
表示部の表示面および検知部の検知面の少なくとも一方が露出するように凹部にインサート材を取り付けるインサート材取付工程と、
インサート材を覆うように成形品に表皮材を貼り合わせる貼合工程とを備えたものである。
【0028】
上記した製造方法の各形態において、インサート材が有する検知部はタッチセンサまたはタクトスイッチであってもよい。
【0029】
また、上記した製造方法の各形態において、表皮材は光透過性を有し、インサート材が有する表示部は透過表示部を有するラベルと光源との積層物、またはドットマトリクス表示装置であってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の発泡成形品は、発泡体と、発泡体に取り付けられた表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材と、少なくともインサート材が取り付けられた面に貼り合わせられた表皮材とを備えるように構成した。
【0031】
したがって、本発明の発泡成形品は、インサート材の裏側にも発泡体が形成されているため、インサート材部分を含めて全体的に柔らかい感触を得られるものである。
【0032】
本発明の発泡成形品の製造方法は、第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材と表皮材とが貼り合わせられた貼合品を、表皮材が第1型の成形面に接するように配置する貼合品配置工程と、一対の金型を型締めする型締工程と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、一対の金型を型開きする型開工程と、貼合品と発泡体とが一体化した成形品を取り出す取出工程とを備えるように構成した。
【0033】
また、本発明の発泡成形品の製造方法は、第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、第1型の成形面に表皮材を配置する表皮材配置工程と、表皮材の成形面に接している面と反対の面に、表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材を配置するインサート材配置工程と、一対の金型を型締めする型締工程と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、一対の金型を型開きする型開工程と、表皮材、インサート材、および発泡体が一体化した成形品を取り出す取出工程とを備えるように構成した。
【0034】
また、本発明の発泡成形品の製造方法は、第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、第1型の成形面に表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材を配置するインサート材配置工程と、一対の金型を型締めする型締工程と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、一対の金型を型開きする型開工程と、インサート材と発泡体とが一体化した成形品を取り出す取出工程とを備えるように構成した。
【0035】
また、本発明の発泡成形品の製造方法は、第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、第1型の成形面に表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材を配置するインサート材配置工程と、第2型の成形面に基材を配置する基材配置工程と、一対の金型を型締めする型締工程と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、一対の金型を型開きする型開工程と、インサート材、基材、および発泡体が一体化した成形品を取り出す取出工程とを備えるように構成した。
【0036】
また、本発明の発泡成形品の製造方法は、第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、第1型の成形面に表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材を配置するインサート材配置工程と、第2型の成形面に基材を配置する基材配置工程と、一対の金型を型締めする型締工程と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、一対の金型を型開きする型開工程と、インサート材、基材、および発泡体が一体化した成形品を取り出す取出工程と、インサート材を覆うように成形品に表皮材を貼り合わせる貼合工程とを備えるように構成した。
【0037】
したがって、上記2つの製造方法によれば、インサート材の裏側にも発泡体が形成されるため、インサート材部分を含めて全体的に柔らかい感触を得られる発泡成形品を製造することができる。また、発泡樹脂を注入して発泡成形するため、インサート材に過大な負荷がかからない。
【0038】
また、本発明の発泡成形品の製造方法は、平面視で表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材と同じ大きさの凸部を成形面に有する第1型と、第2型とを含む一対の金型を準備し、第2型の成形面に基材を配置する基材配置工程と、一対の金型を型締めする型締工程と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ、第1型の凸部によって形成された凹部を有する発泡体を形成する成形工程と、一対の金型を型開きする型開工程と、基材と発泡体とが一体化した成形品を取り出す取出工程と、インサート材が貼り合わせられた表皮材を、インサート材を凹部にはめるようにして成形品に貼り合わせる貼合工程とを備えるように構成した。
【0039】
また、本発明の発泡成形品の製造方法は、平面視で表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材と同じ大きさの凸部を成形面に有する第1型と、第2型とを含む一対の金型を準備し、第2型の成形面に基材を配置する基材配置工程と、一対の金型を型締めする型締工程と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ、第1型の凸部によって形成された凹部を有する発泡体を形成する成形工程と、一対の金型を型開きする型開工程と、基材と発泡体とが一体化した成形品を取り出す取出工程と、表示部の表示面および検知部の検知面の少なくとも一方が露出するように凹部にインサート材を取り付けるインサート材取付工程と、インサート材を覆うように成形品に表皮材を貼り合わせる貼合工程とを備えるように構成した。
【0040】
したがって、上記2つの製造方法によれば、インサート材の裏側にも発泡体が形成されるため、インサート材部分を含めて全体的に柔らかい感触を得られる発泡成形品を製造することができる。また、インサート材は、発泡体を成形した後に発泡体に取り付けるため、インサート材に過大な負荷がかからない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の発泡成形品の一実施形態を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の発泡成形品の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図3】本発明の発泡成形品の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図4】(a)本発明の発泡成形品の別の実施形態を示す模式的な斜視図である。(b)(a)のA−A断面図である。(c)本発明の発泡成形品の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図5】(a)本発明の発泡成形品の別の実施形態を示す模式的な斜視図である。(b)(a)のA−A断面図である。(c)本発明の発泡成形品の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図6】本発明の発泡成形品の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図7】本発明の発泡成形品の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図8】タッチセンサを用いた発泡成形品の一実施形態を示す模式的な断面図である。
図9】タッチセンサを用いた発泡成形品の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図10】タッチセンサと光源を用いた発泡成形品の実施形態の一例を示す模式的な断面図である。
図11】タクトスイッチを用いた発泡成形品の実施形態の一例を示す模式的な断面図である。
図12】ラベルと光源の積層物を用いた発泡成形品の一実施形態を示す模式的な断面図である。
図13】ラベルと光源の積層物を用いた発泡成形品の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図14】(a)ドットマトリクス表示装置を用いた発泡成形品の一実施形態を示す模式的な断面図である。(b)ドットマトリクス表示装置の模式的な平面図である。
図15】ドットマトリクス表示装置を用いた発泡成形品の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図16】本発明の発泡成形品の製造方法の一実施形態を示す模式的な断面図である。
図17】本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図18】本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図19】本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図20】本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図21】本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図22】本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図23】本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図24】本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図25】本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図26】本発明の発泡成形品の製造方法に用いる金型の一例を示す模式的な断面図である。
図27】タクトスイッチを用いた発泡成形品の製造方法の実施形態の一例を示す模式的な断面図である。
図28】タクトスイッチを用いた発泡成形品の製造方法の別の実施形態を示す模式的な断面図である。
図29】ラベルと光源の積層物を用いた発泡成形品の製造方法の実施形態の一例を示す模式的な断面図である。
図30】ドットマトリクス表示装置を用いた発泡成形品の製造方法の実施形態の一例を示す模式的な断面図である。
図31】ドットマトリクス表示装置を用いた発泡成形品の製造方法の実施形態の一例を示す模式的な断面図である。
図32】従来の発泡成形品の製造方法の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の発泡成形品とその製造方法について、図面を参照しながら実施形態の一例を説明する。
【0043】
本発明の発泡成形品1は、発泡体2と、発泡体2に取り付けられた表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材12と、少なくともインサート材12が取り付けられた面に貼り合わせられた表皮材5とを備えたものである(図1参照)。
【0044】
発泡体2は、樹脂と発泡剤とを材料とする成形体である。樹脂は特に限定されず、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いることができ、たとえば、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂などを用いる。中でも、ウレタン樹脂などの柔らかい樹脂を用いると、発泡体2により柔軟性を付与することができるため好ましい。発泡体2に含まれる気泡は、連続気泡であってもよいし、独立気泡であってもよい。上記のような樹脂を材料とする発泡体2は、インサート材12の裏側にも形成されている。したがって、インサート材12をユーザが触ったときに、ユーザはインサート材12を含めて全体的に柔らかい感触を指で感じ取ることができる。
【0045】
(インサート材)
インサート材12は、表示部と検知部の両方を有しているものでもよく、いずれかを有しているものであってもよい。表示部は表示面121を有し、検知部は検知面123を有する。表示面121には、たとえば、図形・数字・記号などのアイコン、静止画、動画などを表示する。検知部は、たとえば、力・距離・熱・光・音・香りなどを、検知面123を介して検知する。
【0046】
インサート材12は、表示面121と検知面123の少なくとも一方が発泡体2の表面に露出するように取り付ける。たとえば、発泡体2の表面と検知面123との間に段差がほぼない形態(図1(a)参照)、発泡体2の表面にインサート材12を積層した形態(図1(b)参照)、発泡体2の表面からインサート材12が少し突出した形態(図1(c)参照)などとすることができる。インサート材12は、たとえば、発泡体2の表面に貼り合わせる、発泡体2の表面に置く、発泡体2にはめ込むなどの方法で取り付けることができる。
【0047】
表皮材5は、少なくともインサート材12が取り付けられた面に貼り合わせられる。したがって、図1(a)のようにインサート材12が取り付けられた面だけでもよいし、図1(b)や(c)のように発泡体2の側面にかけて貼り合わせてもよい。表皮材5の材料としては、たとえば、塩化ビニル樹脂、エラストマー樹脂、ポリウレタン樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン系樹脂、天然皮革、合成皮革、人工皮革、不織布、各種ファブリックなどを用いることができる。表皮材5は、たとえばスラッシュ成形や真空成形など公知の方法により成形したものを用いる。表皮材5は、たとえば、接着剤や粘着テープなどを介して、貼り合わせる。
【0048】
発泡成形品1は、インサート材12と表皮材5との間であって、少なくともインサート材12が取り付けられた面に柔軟層11をさらに備えたものであってもよい(図2(a)〜(c)参照)。柔軟層11としては、たとえば、エラストマー樹脂などの柔軟な樹脂、ゲル、発泡体2と同じ樹脂を発泡させた発泡樹脂などを用いることができる。柔軟層11は、表皮材5と同じく、インサート材12が取り付けられた面だけに形成してもよいし(図2(a)(b)参照)、発泡体2の側面にかけて形成してもよい(図2(c)参照)。柔軟層11がインサート材12の表示面121側または検知面123側に形成されるため、インサート材12は発泡体2と柔軟層11といった柔らかい材料で囲まれる。したがって、インサート材12部分をユーザが触ったとき、ユーザはインサート材12部分を含めて全体的により一層柔らかい感触を指で感じ取ることができる。
【0049】
発泡成形品1は、発泡体2のインサート材12が取り付けられた面と反対の面に基材6をさらに備えたものであってもよい(図3参照)。基材6を備えていることにより、発泡成形品の剛性や強度、取付性が向上する。基材6としては、たとえば、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、シリコン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、繊維強化樹脂、金属(アルミやスチールなど)、天然木などを用いることができる。インサート材12が取り付けられた面は発泡体2の表側となるため、基材6は発泡体2の裏側に形成されることになる。基材6は発泡体2の裏側の一部に形成してもよいし(図3(a)(b)参照)、発泡体2の裏側を覆うように形成してもよい(図3(c)参照)。なお、図3(c)のように、表皮材5は発泡体2から基材6にかけて貼り合わせてもよい。
【0050】
また、インサート材12は発泡成形品1のパーティングラインPLから突出する長さの配線部材4を有し、パーティングラインPLの周囲に形成された軟質シール材7をさらに備えたものであってもよい(図4(b)(c)、図5(b)(c)参照)。
【0051】
インサート材12は、表示部および検知部の少なくとも一方が有する電極と電気的に接続された配線部材4を有する。配線部材としては、たとえば、プリント配線基板(FPC)を用いる。配線部材4は、発泡成形品1のパーティングラインPLから突出する長さであるため、突出部分の配線に外部の電子機器を接続することができる。発泡成形品1は、パーティングラインPLの周囲に形成された軟質シール材7を備えている。なお、パーティングラインPLの周囲とは、断面で見たときに、パーティングラインPLに接して軟質シール材7が形成されていること、およびパーティングラインPLの近傍に軟質シール材7が形成されていること(図4(b)(c)に示すように配線部材4の上にも軟質シール材7が形成されていること)を含む。軟質シール材7の材料としては、たとえば、ウレタン樹脂、エラストマー樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂などを用いることができる。
【0052】
なお、配線部材4は発泡体2の内部を通ってパーティングラインPLから突出してもよい(図6(a)(b)参照)。
【0053】
このような発泡成形品1では、パーティングラインPLから突出する配線部材4に接して軟質シール材7が形成されているため、発泡成形品1を取り付ける際に軟質シール材7がクッションとなり、配線の断線を防ぐことができる。
【0054】
また、インサート材12は発泡体2と基材6とに形成された貫通穴を通って発泡成形品1の裏側へ突出する長さの配線部材4を有し、貫通穴の内側に形成された軟質シール材7をさらに備えたものであってもよい(図7(a)(b)参照)。
【0055】
貫通穴は発泡体2と基材6とに形成されているが、軟質シール材7は基材6側の貫通穴の内側だけに形成してもよく(図7(a)参照)、発泡体2側と基材6側の両方の貫通穴の内側に形成してもよい(図7(b)参照)。
【0056】
この発泡成形品1は、たとえば、発泡体2と基材6とを一体化して貫通穴を形成し、インサート材12の配線部材4を貫通穴に通し、貫通穴の内側に軟質シール材7を形成し、表皮材5を貼り合わせることで得ることができる。
【0057】
このように構成した発泡成形品1では、配線部材4が発泡成形品1の裏側に隠れるため、発泡成形品1の外観を良くすることができる。また、配線部材4に接して軟質シール材7が形成されているため、発泡成形品1を取り付ける際に軟質シール材7がクッションとなり、配線の断線を防ぐことができる。
【0058】
(タッチセンサ)
発泡成形品1のインサート材12が有する検知部はタッチセンサ3であり、タッチセンサ3は検知面3aが発泡体2の表面側に露出するように取り付けられたものであってもよい(図8参照)。
【0059】
タッチセンサ3は、静電容量方式、感圧方式、抵抗膜方式など公知の検知方式で動作するものを用いることができる。タッチセンサ3は、フィルムやガラスなどを基材としたものを用いることができるが、フィルム基材で厚みの小さいタッチセンサ3とすれば、より柔らかい感触の発泡成形品を得ることができる。タッチセンサ3は、検知面3aが発泡体2の表面に露出するように取り付ける。検知面3aが発泡体2の表面に露出すればよいので、たとえば、発泡体2の表面と検知面3aとの間に段差がほぼない形態(図8(a)参照)、発泡体2の表面にタッチセンサ3を積層した形態(図8(b)参照)、発泡体2の表面からタッチセンサ3が少し突出した形態(図8(c)参照)などとすることができる。タッチセンサ3は、たとえば、発泡体2の表面に貼り合わせる、発泡体2の表面に置く、発泡体2にはめ込むなどの方法で取り付けることができる。表皮材5は、タッチセンサ3の光学特性を損なわないよう、たとえば光学粘着テープ(Optical Clear
Adhesive)を用いて貼り合わせることが好ましい。
【0060】
タッチセンサ3と表皮材5との間には、柔軟層11を備えていてもよい(図9参照)。
【0061】
表皮材5は光透過性を有し、表皮材5またはタッチセンサ3の背面に光源8をさらに備えたものであってもよい(図10参照)。光透過性を有する表皮材5の形態としては、たとえば、表皮材5が透明または半透明(着色されていてもよい)である形態、表皮材5に開口部がある形態、表皮材5の一部が薄肉である形態などが挙げられる。発泡成形品1が、たとえば自動車の操作パネル(内装部品)として用いられる場合、上記の透明部または半透明部、開口部、薄肉部の少なくとも1つを表皮材に形成することで、任意のパターン(たとえば、操作アイコン)を形成することができる。光源8がオンになることで、任意のパターンを照らすことができる。
【0062】
光源8としては、たとえば、LED、無機EL、有機ELなどを用いることができる。シート状の光源8を表皮材5やタッチセンサ3の背面に貼り合わせてもよいし、表皮材5やタッチセンサ3の背面に実装してもよい。実装する場合、光源8で任意のパターン(文字・図形・記号など)を形成することができ(図10(b)参照)、それら光源がオンになることで、任意のパターンを表示することができる。また、図10(e)のように、タッチセンサ3の背面であって、タッチセンサ3から離れた位置に光源8があってもよい。また、図10(f)のように、タッチセンサ3の背面であって発泡成形品1の裏側に光源8を設置してもよい。この場合、発泡体2も光透過性を有する形態とし、タッチセンサ3と光源8との間の発泡体2の厚みを小さくするとよい。
【0063】
このような発泡成形品1では、光源8によってタッチセンサ3およびその周辺が照らされるため、どこを触れば操作できるのかがユーザに分かりやすい。また、通常は光源がオフで操作アイコンを見えにくくし、タッチセンサ3を触ったときのみ光るように構成すれば、操作アイコンが操作パネルから浮き出るような視覚効果を得られる。
【0064】
なお、発泡成形品1は、タッチセンサ3を備えず、光源8と表皮材5を備えるものであってもよい。
【0065】
(タクトスイッチ)
発泡成形品1のインサート材12が有する検知部はタクトスイッチ13であり、タクトスイッチ13は押圧面13aが発泡体2の表面側に露出するように取り付けられたものであってもよい(図11(a)参照)。ここで、押圧面13aは、力を検知する検知面123の一例である。
【0066】
タクトスイッチ13は、一般的に電気回路(たとえばプリント配線基板)に実装され、押圧面13aに加えられた力を電気信号に変えて、その信号を回路に入力する部品である。つまり、人がタクトスイッチ13を押し込むことで、電気回路のオン・オフの切り換えが可能となる。タクトスイッチ13は、公知のものを用いることができる。
【0067】
タクトスイッチ13は、その内部に反転ばね130を有しているため、スイッチを押し込んだときにクリック感がある。スイッチを押したユーザは、「操作した」という実感を得ることができる。
【0068】
タクトスイッチ13と表皮材5との間には、柔軟層11を備えていてもよい(図11(b)参照)。柔軟層11は、図11(b)のようにタクトスイッチ13が取り付けられた面の一部に備えてもよいし、全面に備えてもよい。一部に備えた場合、図11(b)のようにタクトスイッチ13がある箇所とそれ以外の箇所との間に段差ができるため、ユーザは発泡成形品1を触るだけで、タクトスイッチ13のある箇所が判別できる。全面に柔軟層11を備えた場合は、ユーザは発泡成形品1のどの部分を触っても、より柔らかい感触が得られる。
【0069】
なお、特に柔軟層11を備えた発泡成形品は、押込量を0.5〜5mmとすることができる。また、成形品に対して指先から垂直方向に加える荷重は、押込量1mm当たり1〜10Nが好ましい。このようにすると、良好な押し込み感を得ることができる。また、表皮材5は、10%モジュラスで20N以下、30%モジュラスで60N以下とすることが好ましい。10%モジュラスの荷重および30%モジュラスの荷重の測定方法には、JIS−K7311引張試験方法を用いる。具体的には、試験片を10%伸長させたときの荷重を測定して10%モジュラスの値とし、試験片を30%伸長させたときの荷重を測定して30%モジュラスの値とする。このような特性の表皮材を用いると、タクトスイッチ13を押し込んだときに、表皮材5が追従しやすくなるため、より良好な操作感を得ることができる。
【0070】
(積層物)
発泡成形品1の表皮材5は光透過性を有し、インサート材12が有する表示部は透過表示部14aを有するラベル140と光源8との積層物14であり、ラベル140が発泡体2の表面側に露出するように取り付けられたものであってもよい(図12参照)。
【0071】
光透過性を有する表皮材5の形態としては、たとえば、表皮材5が透明または半透明(着色されていてもよい)である形態、表皮材5に開口部がある形態、表皮材5の一部が薄肉である形態などが挙げられる。ラベル140は、透過表示部14aを有する。透過表示部14aは、透光部14bと遮光部14cとで形成された任意のパターン(たとえば、図形、記号、文字、数字などを組み合わせた操作アイコン)を有し、光源8で照らすことによってそのパターンを表示できる。光源8としては、たとえば、LED、無機EL、有機ELなどを用いることができる。シート状の光源8をラベル140に貼り合わせてもよいし、ラベル140に実装してもよい。積層物14は、ラベル140が発泡体2の表面側に露出するように取り付ける。つまり、表皮材5の背面にラベル140が位置し、ラベル140の背面に光源8が位置する。
【0072】
柔軟層11は、表皮材5とラベル140との間に備えてもよく(図13(a)参照)、ラベル140と光源8との間に備えてもよい(図13(b)参照)。いずれの場合も、柔軟層11は光透過性を有するものを用いる。
【0073】
なお、表皮材5、ラベル140、光源8、および柔軟層11は、たとえば光学粘着シート(OCA)を介して貼り合わせてもよい。4層すべてが貼り合わされてもよいし、4層のうち一部が貼り合わされてもよい。粘着面は、貼り合わせ時のエア抜きがしやすいように、エンボス加工や溝加工がされていることが好ましい。
【0074】
(ドットマトリクス表示装置)
表皮材5は光透過性を有し、インサート材12が有する表示部はドットマトリクス表示装置15であり、ドットマトリクス表示装置15は表示面121が発泡体2の表面側に露出するように取り付けられたものであってもよい(図14(a)参照)。なお、図14(b)はドットマトリクス表示装置15の平面図であり、便宜上、LEDは省略している。
【0075】
光透過性を有する表皮材5の形態としては、たとえば、表皮材5が透明または半透明(着色されていてもよい)である形態、表皮材5に開口部がある形態、表皮材5の一部が薄肉である形態などが挙げられる。
【0076】
ドットマトリクス表示装置15は、回路基板150と、回路基板上に形成され回路基板をマトリクス状に区画する遮光壁151と、遮光壁によって区画された領域15aにそれぞれ実装されたLED152とを少なくとも備えたものである。ドットマトリクス表示装置15は、LED152を選択的に点灯することで、所望のパターン(図形、記号、文字、数字など)を表示することができる。
【0077】
遮光壁151の材料は特に限定されるものではないが、柔らかい材料で形成すると、ユーザがドットマトリクス表示装置部分に触ったとき、より柔らかい感触を得ることができる。柔らかい材料としては、たとえばゴム、柔軟性を有する樹脂などを用いることができる。柔軟性を有する樹脂としては、たとえば、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂などを用いることができる。また、完全な遮光性は得られないが、部分的に黒色に着色した不織布、ダブルラッセル、発泡樹脂シート、または全体的に黒色に着色した不織布、ダブルラッセル、発泡樹脂シートに穴を開けたものも用いることができる。また、表皮材5とドットマトリクス表示装置15との間には、柔軟層11を備えていてもよい(図15(a)(b)参照)。このようにすると、遮光壁151と柔軟層11とが柔らかさを有するため、ユーザがドットマトリクス表示装置部分を触ったとき、さらに柔らかい感触を得ることができる。柔軟層11は、光透過性を有するものを用いる。柔軟層11は、図15(a)(b)のようにドットマトリクス表示装置15が取り付けられた面の一部に備えてもよいし、全面に備えてもよい。また、柔軟層11は、図15(a)のように発泡成形品1の表面が凸になるように位置してもよく、図15(b)のように発泡成形品1の表面がフラットになるように位置してもよい。
【0078】
次に、本発明の発泡成形品の製造方法について、実施形態の一例を説明する。
【0079】
本発明の発泡成形品の製造方法は、第1型91と第2型92とを含む一対の金型9を準備し、表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材12と表皮材5とが貼り合わせられた貼合品10を、表皮材5が第1型91の成形面に接するように配置する貼合品配置工程と、一対の金型9を型締めする型締工程と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体2を形成する成形工程と、一対の金型9を型開きする型開工程と、貼合品10と発泡体2とが一体化した成形品を取り出す取出工程とを備えたものである(図16参照)。
【0080】
まず、貼合品10を第1型91の成形面に配置する(図16(a)参照)。貼合品10は、インサート材12の表示面121および検知面123の少なくとも一方と表皮材5とを貼り合わせたものである。表皮材5としては、たとえば、スラッシュ成形や真空成形といった公知の方法で成形したものを用いる。成形した表皮材5に、たとえば光学粘着テープ(OCA)を用いて、インサート材12を貼り合わせる。このようにして形成した貼合品10を、表皮材5が第1型91の成形面に接するように配置する。なお、貼合品10を成形面に配置する際、第1型の吸引孔(図示せず)を通して、貼合品10と成形面との間の空気を吸引し、貼合品10を成形面に固定してもよい。
【0081】
また、貼合品10は、インサート材12と表皮材5との間に柔軟層11が貼り合わせられたものであってもよい(図17参照)。柔軟層11の両面に、たとえばOCAを用いて貼り合わせることができる。また、柔軟層11が接着性または粘着性を有する材料であれば、その性質を利用して貼り合わせることができる。
【0082】
次に、一対の金型9を型締めする(図16(b)参照)。図では、第1型91が可動側であり第2型92が固定側としているが、逆であってもよい。型締めすることで、第1型91と第2型92との間に成形空間ができる。
【0083】
次に、上記成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ、発泡体2を形成する(図16(c)参照)。発泡樹脂は、樹脂と発泡剤とを含む。樹脂は特に限定されず、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いることができ、たとえば、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂などである。中でも、発泡体2により柔軟性を付与できるため、ウレタン樹脂などの柔らかい樹脂が好ましい。発泡体2に含まれる気泡は、連続気泡であってもよいし、独立気泡であってもよい。発泡成形の方法としては公知の方法を用いる。たとえば、発泡樹脂を成形空間内に注入して発泡させ、加熱または冷却して樹脂を固化し、成形する方法がある。また、発泡樹脂を成形空間内に注入後、第1型91または第2型92をわずかに動かして成形空間を拡げ、発泡樹脂を発泡させる方法(コアバック法)を用いてもよい。成形工程における発泡樹脂の圧力は、たとえばウレタン樹脂の場合、0.1MPa以上1MPa未満であり、温度は、たとえば40℃以上100℃以下である。
【0084】
このように、本発明の発泡成形品の製造方法は、従来の射出成形と比べて圧力や温度を低くすることができるため、インサート材が損傷してしまうほどの過大な負荷がかからないものである。また、低温低圧成形であるため、表皮の風合い(シボ、毛の立ち具合など)を残すことができる。
【0085】
次に、一対の金型9を型開きし(図16(d)参照)、発泡成形品1を取り出す(図16(e)参照)。
上記のようにして、本発明の発泡成形品を製造することができる。
【0086】
上記では表皮材5とインサート材12とが貼り合わせられた貼合品10を、第1型91の成形面に配置する貼合品配置工程を備えていたが、次のように構成してもよい。つまり、第1型91の成形面に表皮材5を配置する表皮材配置工程(図18(a)参照)と、表皮材5の成形面に接している面と反対の面に、表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材12を配置するインサート材配置工程(図18(b)参照)と、一対の金型9を型締めする型締工程(図16(b)参照)と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体2を形成する成形工程(図16(c)参照)と、一対の金型9を型開きする型開工程(図16(d)参照)と、表皮材5、インサート材12、および発泡体2が一体化した成形品を取り出す取出工程(図16(e)参照)とを備えるように構成する。表皮材5またはインサート材12には、たとえば光学粘着テープ(OCA)を予め貼っておき、インサート材配置工程において表皮材5に対してインサート材12を固定することができる。
【0087】
また、表皮材5とインサート材12との間に柔軟層11を配置する柔軟層配置工程をさらに備えたものであってもよい。つまり、第1型91の成形面に表皮材5を配置する表皮材配置工程と(図19(a)参照)、表皮材5の成形面に接している面と反対の面に柔軟層11を配置する柔軟層配置工程と(図19(b)参照)、柔軟層11の表皮材5に接している面と反対の面にインサート材12を配置するインサート材配置工程(図19(c)参照)と、型締工程(図16(b)参照)と、成形工程(図16(c)参照)と、型開工程(図16(d)参照)と、取出工程(図16(e)参照)とによって発泡成形品1を得ることができる。
【0088】
発泡成形品の製造方法は、型締工程よりも前に、第2型92の成形面に基材6を配置する基材配置工程をさらに備えてもよい(図20参照)。基材6を配置するタイミングは、型締工程よりも前であればよく、特に限定されない。基材6の形状としては、たとえば、第2型92の成形面に沿った形状(図20(a)(b)参照)、第2型92のパーティング面にかかる形状(図20(c)参照)などとすることができる。後者の場合、基材6の余分な箇所はトリミングして発泡成形品1を得ることができる(図20(d)参照)。
【0089】
また、インサート材12は第1型のパーティング面91aに突出する長さの配線部材4を有し、第1型91および第2型92の少なくとも一方のパーティング面91a,92aに軟質シール材7が形成されていてもよい(図21参照)。
【0090】
軟質シール材7は、第1型のパーティング面91a、第2型のパーティング面92a、またはその両方に形成する。軟質シール材7はパーティング面91a,92aを覆うように形成してもよいし(図21(a)(b)(e)参照)、パーティング面91a,92aの一部に形成してもよい(図21(c)(d)参照)。なお、基材6が第2型のパーティング面92aを覆っている場合は、基材6に軟質シール材7を形成してもよいし(図21(f)参照)、第1型のパーティング面91aに形成してもよい。
【0091】
軟質シール材7を形成することで、成形工程において、発泡樹脂が成形空間から漏れ出してバリが形成されてしまうことを防ぐことができる。また、軟質シール材7が配線部材4と接するため、型締工程において、配線部材4に加わる型締め力が緩和され、配線部材4が断線してしまうことを防ぐことができる。
【0092】
本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態は、第1型91と第2型92とを含む一対の金型9を準備し、第1型91の成形面に表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材12を配置するインサート材配置工程(図22(a)参照)と、一対の金型9を型締めする型締工程(図22(b)参照)と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体2を形成する成形工程(図22(c)参照)と、一対の金型9を型開きする型開工程(図22(d)参照)と、インサート材12と発泡体2とが一体化した成形品を取り出す取出工程(図22(e)参照)とを備えたものである。
【0093】
また、本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態は、第1型91と第2型92とを含む一対の金型9を準備し、第1型91の成形面に表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材12を配置するインサート材配置工程と、第2型92の成形面に基材6を配置する基材配置工程と、一対の金型9を型締めする型締工程と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、一対の金型9を型開きする型開工程と、インサート材12、基材6、および発泡体2が一体化した成形品を取り出す取出工程とを備えたものである(図23参照)。なお、図のようにインサート材と基材は同時に配置してもよいし、一方を配置した後に他方を配置してもよい。
【0094】
また、本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態は、上記のインサート材12、基材6、および発泡体2が一体化した成形品に、インサート材12を覆うように表皮材5を貼り合わせる貼合工程をさらに備えたものである(図23(f)参照)。表皮材5を後から貼り合わせるため、使用できる表皮材5のバリエーションが多くなる。たとえば、立体縫製した皮革製の表皮材5、表面にエンボス加工やシボ加工など凹凸を形成した表皮材5などを用いることができる。この形態の製造方法では、立体形状を潰すことがないため、発泡成形品の装飾性を向上させることができる。
【0095】
また、本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態は、平面視で表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材12と同じ大きさの凸部91bを成形面に有する第1型91と、第2型92とを含む一対の金型9を準備し、第2型92の成形面に基材6を配置する基材配置工程と、一対の金型9を型締めする型締工程と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ、第1型91の凸部91bによって形成された凹部2aを有する発泡体2を形成する成形工程と、一対の金型9を型開きする型開工程と、基材6と発泡体2とが一体化した成形品を取り出す取出工程と、インサート材12が貼り合わせられた表皮材5を、インサート材12を凹部2aにはめるようにして成形品に貼り合わせる貼合工程とを備えたものである(図24参照)。
【0096】
第1型91は、成形面に凸部91bを有している。凸部91bは、平面視で表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材12と同じ大きさである。第2型92の成形面には基材6を配置する(図24(a)参照)。次に、一対の金型を型締めし(図24(b)参照)、成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ、発泡体2を形成する(図24(c)参照)。このとき、第1型91の凸部91bによって、凸部91bに対応した大きさの凹部2aが発泡体2に形成される。次に、一対の金型を型開きし(図24(d)参照)、成形品を取り出す(図24(e)参照)。そして、インサート材12が貼り合わせられた表皮材5を、インサート材12を凹部2aにはめるようにして成形品に貼り合わせる(図24(f)参照)。インサート材12は、その表示面121および検知面123の少なくとも一方を表皮材と貼り合わせる。
なお、図24(f)において、表皮材5とインサート材12との間に柔軟層11が貼り合わせられたものを、成形品に貼り合わせてもよい。
【0097】
また、本発明の発泡成形品の製造方法の別の実施形態は、平面視で表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材12と同じ大きさの凸部91bを成形面に有する第1型91と、第2型92とを含む一対の金型9を準備し、第2型92の成形面に基材6を配置する基材配置工程と、一対の金型9を型締めする型締工程と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ、第1型91の凸部91bによって形成された凹部2aを有する発泡体2を形成する成形工程と、一対の金型9を型開きする型開工程と、基材6と発泡体2とが一体化した成形品を取り出す取出工程と、表示部の表示面121および検知部の検知面123の少なくとも一方が露出するように凹部2aにインサート材12を取り付けるインサート材取付工程(図25(a)参照)と、インサート材12を覆うように成形品に表皮材5を貼り合わせる貼合工程とを備えたものである(図25(b)参照)。
【0098】
成形品を取り出すところまでは図24(e)と同じであるため、説明を省略する。取出工程の後、発泡体2の凹部2aにインサート材12を取り付ける(図25(a)参照)。取り付ける際は、表示部の表示面121および検知部の検知面123の少なくとも一方が露出するようにする。取り付け方法は、インサート材12を凹部2aに単に置くだけでもよいし、接着剤または粘着剤で貼り合わせてもよい。
なお、インサート材12を取り付けた後、少なくともインサート材が取り付けられた面に柔軟層11を貼り合わせ、その上にさらに表皮材を貼り合わせてもよい。
【0099】
なお、たとえば図16図24において、第1型91は曲面を有する凸部91bまたは凹部91cを成形面に有していてもよい(図26(a)(d)参照)。曲面を有する凸部91bまたは凹部91cは、平面視でインサート材と同じ大きさである。この場合、インサート材は曲面に追従できるフレキシブルなものを用いる。
また、第1型91は平面視でインサート材と同じ大きさの凹部91cを成形面に有していてもよい(図26(b)参照)。たとえば図16のような製造方法に用いる場合、インサート材を凹部91cに合わせて配置すればよいため、インサート材の位置合わせが容易にできる。また、図24のような製造方法に用いる場合、成形品は図26(c)のように凸部2bを有する。この凸部2bは平面視でインサート材12と同じ大きさであるため、インサート材を成形品に貼り合わせる際の位置合わせが容易にできる。
また、第1型91は図26(e)のように、成形面に凹凸部91dを有していてもよい。凹凸部が形成されている箇所にインサート材を位置合わせして発泡成形品を得れば、ユーザは成形品の凹凸箇所でインサート材の位置が分かり、さらにそこを押すと柔らかい感触を感じ取ることができる。つまり、このような発泡成形品では、ユーザはインサート材部分を視認することなく操作(ブラインドタッチ)が可能となる。
【0100】
なお、図24図25において、インサート材が配線部材を有している場合は、発泡体2のみを、または発泡体2と基材6を加工して、配線部材を発泡成形品1の裏側に突出させるようにすることができる。
【0101】
(タッチセンサ)
インサート材12が有する検知部は、タッチセンサ3であってもよい。タッチセンサ3を用いる場合、上記したそれぞれの製造方法(図16から図26参照)において、インサート材12をタッチセンサ3、検知面123をタッチセンサの検知面3aに読み替えた製造方法を適用することができる。
【0102】
なお、タッチセンサ3に代えて、生体センサを用いることができる。生体センサは、たとえば体温、脈拍、血圧、姿勢などといったユーザの生体情報を検知できるセンサである。また、タッチセンサと生体センサの両方を用いることもできる。この場合、両方を重ねて配置してもよいし、両方を並べて配置してもよい。
【0103】
なお、タッチセンサ3に代えて、ワイヤレス充電装置を用いることができる。また、タッチセンサ3とワイヤレス充電装置の両方を用いることもできる。この場合、たとえば、両者が並んで配置され、タッチ操作とワイヤレス充電とが可能な発泡成形品1を得ることができる。
【0104】
なお、発泡成形品1は、タッチセンサ3に代えて生体センサまたはワイヤレス充電装置を用い、さらに光源8を備えたものであってもよい。この場合、図10(a)〜(f)に示したタッチセンサ3を生体センサまたはワイヤレス充電装置に置き換えた発泡成形品1を得ることができる。このような発泡成形品1では、たとえば生体測定中または充電中は光源が点灯し、生体測定または充電が終われば光源が消灯するといった効果を得られる。
【0105】
(タクトスイッチ)
インサート材12が有する検知部は、タクトスイッチ13であってもよい。タクトスイッチ13を用いる場合、上記したそれぞれの製造方法(図16から図26参照)において、インサート材12をタクトスイッチ13、検知面123をタクトスイッチの押圧面13aに読み替えた製造方法を適用することができる。
【0106】
また、タクトスイッチ13の外周にシール材16を配置してもよい(図27参照)。このようにすると、タクトスイッチ13の可動部への発泡樹脂の侵入を防ぐことができ、スイッチの操作感を維持することができる。なお、シール材16は軟質のものであってもよい。
【0107】
また、表皮材5とタクトスイッチ13との間に柔軟層11を配置する場合は、タクトスイッチ13の外壁を柔軟層11に食い込ませるように、タクトスイッチ13を配置するとよい(図28参照)。このようにすると、タクトスイッチ13の可動部への発泡樹脂の侵入を防ぐことができ、スイッチの操作感を維持することができる。
【0108】
(積層物)
表皮材5は光透過性を有し、インサート材12が有する表示部は透過表示部14aを有するラベル140と光源8との積層物14であってもよい。積層物14を用いる場合、上記したそれぞれの製造方法(図16から図26参照)において、インサート材12を、透過表示部14aを有するラベル140と光源8との積層物14に読み替えた製造方法を適用することができる。
【0109】
なお、積層物14を表皮材5に配置する場合は、積層物14の表示面121が表皮材5に接するように配置する(図29(a)参照)。また、柔軟層11を配置する場合は、柔軟層11は光透過性を有するものを用い、ラベル140と光源8との間に配置することができる(図29(b)参照)。
【0110】
積層物14は、金型内にインサートされた表皮材5と貼り合わせられるなどして固定されるため、発泡樹脂を金型内に注入して発泡成形しても、透過表示部14aの位置ずれが起こりにくい。
【0111】
(ドットマトリクス表示装置)
表皮材5は光透過性を有し、インサート材12が有する表示部はドットマトリクス表示装置15であってもよい。ドットマトリクス表示装置15を用いる場合、上記したそれぞれの製造方法(図16から図26参照)において、インサート材12をドットマトリクス表示装置15に読み替えた製造方法を適用することができる。
【0112】
なお、ドットマトリクス表示装置15を表皮材5に配置する場合は、ドットマトリクス表示装置15の表示面121が表皮材5に接するように配置する(図30(a)参照)。また、柔軟層11を配置する場合は、柔軟層11は光透過性を有するものを用い、ドットマトリクス表示装置15の表示面121と表皮材5との間に配置することができる(図30(b)参照)。
【0113】
なお、ドットマトリクス表示装置15の最も外側の遮光壁151は、それより内側にある遮光壁151よりも厚くしてもよい(図31(a)参照)。このようにすると、発泡樹脂の圧力によって最も外側の遮光壁151が内側に変形することを防ぐことができる。また、同様の効果は、最も外側の遮光壁にフランジ部153を設けることでも得ることができる(図31(b)参照)。
【0114】
なお、表示部としては、たとえば無機ELまたは有機ELを用いたディスプレイ、
導光板を用いた表示なども用いることができる。また、検知部としては、たとえば赤外線センサ、音センサ、臭いセンサ、ガスセンサ、温度センサ、超音波センサなども用いることができる。また、表示部または検知部と組み合わせて使用できるものとして、たとえば、ヒータなどがある。
【符号の説明】
【0115】
1 :発泡成形品
2 :発泡体
2a :凹部
2b :凸部
3 :タッチセンサ
3a :検知面
4 :配線部材
5 :表皮材
6 :基材
7 :軟質シール材
8 :光源
9 :金型
91 :第1型
91a:第1型のパーティング面
91b:凸部
91c:凹部
91d:凹凸部
92 :第2型
92a:第2型のパーティング面
PL :パーティングライン
10 :貼合品
11 :柔軟層
12 :インサート材
121:表示面
123:検知面
13 :タクトスイッチ
13a:押圧面
130:反転ばね
14 :積層物
14a:透過表示部
14b:透光部
14c:遮光部
140:ラベル
15 :ドットマトリクス表示装置
15a:領域
150:回路基板
151:遮光壁
152:LED
153:フランジ部
16 :シール材
100:成形品
101:表皮材
102:タッチセンサ
103:金型
【要約】
インサート材部分を含めて全体的に柔らかい感触を得られる発泡成形品と、そのような発泡成形品を得るための製造方法、およびインサート材に過大な負荷がかからない製造方法を提供することを目的とする。
発泡成形品は、発泡体と、発泡体に取り付けられた表示部および検知部の少なくとも一方を有するインサート材と、少なくともインサート材が取り付けられた面に貼り合わせられた表皮材とを備えるように構成した。製造方法は、第1型と第2型とを含む一対の金型を準備し、インサート材と表皮材とが貼り合わせられた貼合品を、表皮材が第1型の成形面に接するように配置する貼合品配置工程と、金型を型締めする型締工程と、型締めにより形成された成形空間内に発泡樹脂を注入して発泡させ発泡体を形成する成形工程と、金型を型開きする型開工程と、貼合品と発泡体とが一体化した成形品を取り出す取出工程とを備えるように構成した。
図1
図2
図3
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