(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては、説明の都合上、実際には存在する構成要素が省略されていたり、寸法が実際よりも誇張されて描かれていたりする場合がある。
【0012】
(実施形態)
まず、
図1乃至
図4を参照しつつ、本実施形態の電子装置1とこの電子装置1が搭載する音響部品20の概略構成について説明する。
図1は実施形態の音響部品を搭載した電子装置の斜視図である。
図2(A)は実施形態の音響部品を搭載した電子装置の正面図であり、
図2(B)は
図2(A)におけるA−A線断面図である。
図3は電子装置の筐体を形成する前面側カバーを電子装置の内側となる側から観た斜視図である。
図4は前面側カバーに音響部品を装着した状態を示す斜視図である。なお、以下の説明では、電子装置1の前面側及び背面側を、
図1や、
図3等に示すように設定することとする。
【0013】
図1、
図2(A)、(B)を参照すると、電子装置1は、例えば、室内の壁面や柱等に設置され、高齢者等の様子を見守る装置である。高齢者等は、電子装置1を介して、遠隔地にいる家族や医療従事者、介護者等と通話することができ、遠隔地にいる家族等は、電子装置1を介して高齢者等の様子を知ることができる。電子装置1は、インターネット等を介して外部と通信可能に構成されている。電子装置1は、前面側カバー2aと背面側カバー2bを組み合わせて構成される筐体2を備える。前面側カバー2aの前面には、電子装置1が設置された室内の様子を撮影することができるカメラ3が設けられている。前面側カバー2aには、音孔となる複数の第1開口部2a1が設けられており、この第1開口部2a1からは、それぞれ、音響部品20が露出している。電子装置1の筐体2内には、基板30が配置されている。基板30には、前面側カバー2aに設けられた複数の第1開口部2a1の位置に対応する位置にマイク素子31が実装されている。音響部品20は、基板30に実装されたマイク素子31毎に設けられている。音響部品20については、後に詳述する。また、前面側カバー2aには、人感センサ4、スピーカー5、電子装置1の作動状況を示す作動ランプ7が装着されている。なお、本実施形態では、3つのマイク素子31を備え、音響部品20も3つ装備されているが、マイク素子31、音響部品20の数は、これに限定されない。
【0014】
図3を参照すると、前面側カバー2aには、第2開口部2a2、第3開口部2a3、第4開口部2a4及び第5開口部2a5が設けられている。第2開口部2a2には、電子装置1を操作するための第1ボタン6aが装着されている。第1ボタン6aは、電子装置1の通話状態等を終了させる停止ボタンとなっている。第3開口部2a3には、電子装置1を操作するための第2ボタン6bが装着されている。第2ボタン6bは、利用者が電子装置1を通じて通話するための通話開始ボタンとなっている。第4開口部2a4には、電子装置1を操作するための第3ボタン6cが装着されている。第3ボタン6cは、緊急時に用いられるボタンであり、第3ボタン6cが操作されると即座に外部へ発信され、緊急事態であることが通知される。緊急事態が生じたときには、利用者が慌ててしまい、ボタン操作がし難くなることが想定される。そこで、第3ボタン6cは、第1ボタン6aや第2ボタン6bと比較して大型であり、また、前面側カバー2aの前方や上方等、多方向からの押圧動作に対応できる形状及び構造を備えている。第5開口部2a5には、人感センサ4が装着されている。
【0015】
前面側カバー2aの筐体2の内側となる側には、マイク素子31と同数の音響部品装着部8が形成されている。音響部品装着部8は、それぞれ壁部8aによって囲まれている。音響部品装着部8は、後に詳述する音響部品20の外形形状に対応させた形状を有する。音響部品装着部8の周囲には、基板30を前面側カバー2aに固定するためのネジ受け部9が設けられている。また、前面側カバー2aには、前面側カバー2aに基板30を取り付ける際に、基板30の位置決めを容易に行うための位置決め突部10が設けられている。位置決め突部10は、前面側カバー2aの両側縁部にそれぞれ設けられている。
図4を参照すると、音響部品20は、前面側カバー2aに設けられた音響部品装着部8に装着される。
【0016】
ここで、
図5(A)乃至
図14を参照しつつ、音響部品20について、詳細に説明する。
図5は実施形態の音響部品を示す斜視図である。
図6は音響部品の4面図であり、
図6(A)は正面図、
図6(B)は側面図、
図6(C)は背面図、
図6(D)は底面図である。
図7は実施形態の音響部品の分解斜視図である。
図8は第1部材の3面図であり、
図8(A)は正面図、
図8(B)は側面図、
図8(C)は背面図である。
図9は第2部材の3面図であり、
図9(A)は正面図、
図9(B)は側面図、
図9(C)は背面図である。
図10は第3部材の3面図であり、
図10(A)は正面図、
図10(B)は側面図、
図10(C)は背面図である。
図11は第4部材の3面図であり、
図11(A)は正面図、
図11(B)は側面図、
図11(C)は背面図である。
図12は吸音材の3面図であり、
図12(A)は正面図、
図12(B)は側面図、
図12(C)は平面図である。
図13は吸音材の吸音特性を示すグラフである。
図14は音響部品を構成する部材の並びを示す説明図である。なお、以下の説明では、XYZ方向を、
図7に示すように設定することとする。Z方向に沿う方向は、電子装置1の前面側から背面側へ向かう方向に一致する。
【0017】
図5乃至
図7を参照すると、音響部品20は、第1部材21と、開口部221を備える第2部材22と、収納部231を備える第3部材23と、開口部241を備える第4部材24とを有する。音響部品20は、さらに、スポンジ状の素材により形成され、圧縮された状態で収納部231に収納された吸音材25を備える。音響部品20の外形形状は、略矩形であり、4つの角部のうち、1つの角部の形状が他の3つの角部の形状と異なっている。すなわち、音響部品20は、第1角部20a、第2角部20b、第3角部20c及び第4角部20dを備え、これらの角部のうち、第1角部20aは丸め処理がされ、他の第2角部20b〜第4角部20dは、大きく面取り処理がされている。このような形状とするのは、音響部品20を正しく音響部品装着部8に装着するためである。この音響部品20の音響部品装着部8への装着については、後に詳述する。なお、
図7では、各部材を接着するための両面テープは省略されている。
【0018】
音響部品20のX方向に沿う外形寸法は、X20に設定され、Y方向に沿う外形寸法は、Y20に設定されている。また、音響部品20のZ方向に沿う外形寸法、すなわち、音響部品20厚みは、Z20に設定されている。
【0019】
図8(A)乃至
図8(C)を参照すると、第1部材21は、厚みZ21であるシート状の部材である。第1部材21は、不織布によって形成されている。第1部材21の外形形状は、音響部品20の外形形状と一致する略矩形であり、X方向の外形寸法がX21に設定され、Y方向の外形寸法がY21に設定されている。従って、寸法X21は寸法X20と一致しており、寸法Y21は寸法Y20と一致している。また、第1部材21の外形形状は、第1角部21a、第2角部21b、第3角部21c及び第4角部21dを備える。第1角部21a乃至第4角部21dは、それぞれ、音響部品20の第1角部20a乃至第4角部20dの形状と一致している。
【0020】
図8(A)を参照すると、第1部材21の一面側は、中心部の矩形の第1領域211とその周囲の第2領域212に区画されている。
図8(A)中、ハッチングを付して示された第2領域212は、第1両面テープ26が貼付される領域となる。第1両面テープ26は、音響部品20を前面側カバー2aの内周壁面に接着するために用いられる。第1両面テープ26には、市販品を用いることができ、本実施形態における第1両面テープ26には、日東電工株式会社製のNo.5000NSが用いられている。第1領域211は、前面側カバー2aに設けられた第1開口部2a1を通過した音が通過する領域となる。第1領域211のX方向の寸法は、X211に設定されており、Y方向の寸法は、Y211に設定されている。第1部材21は、筐体2内への異物浸入を防止するとともに、吸音材25が第1開口部2a1から筐体2の外部へ飛び出ることがないように、吸音材25を収納部231内に留めておく。また、第1部材21は、電子装置1の外観意匠の質向上に寄与する。
【0021】
第1部材21は、市販品の不織布を用いることができる。本実施形態では、アンビック株式会社製のヒメロン HN604Bが用いられている。なお、ヒメロン HN604Bは、厚さ0.25mmであるので、本実施形態におけるZ21は、0.25mmである。
【0022】
図9(A)乃至
図9(C)を参照すると、第2部材22は、厚みZ22の部材である。本実施形態の第2部材22は、第3部材23及び第4部材24よりも硬いPET(Polyethylene terephthalate)によって形成されている。第2部材22の外形形状は、音響部品20の外形形状と一致する略矩形であり、X方向の外形寸法がX22に設定され、Y方向の外形寸法がY22に設定されている。従って、寸法X22は寸法X20と一致しており、寸法Y22は寸法Y20と一致している。また、第2部材22の外形形状は、第1角部22a、第2角部22b、第3角部22c及び第4角部22dを備える。第1角部22a乃至第4角部22dは、それぞれ、音響部品20の第1角部20a乃至第4角部20dの形状と一致している。また、第2部材22には、略矩形の開口部221が設けられている。開口部221のX方向の寸法は、X221に設定されており、Y方向の寸法は、Y221に設定されている。寸法X221は、第1部材21における第1領域211の寸法X211と一致しており、寸法Y221は、寸法Y211と一致している。開口部221は、第1開口部2a1を通過した音が遮断されないように設けられている。
【0023】
図9(A)を参照すると、第2部材22には、開口部221の周囲にハッチングを付して示された領域に第2両面テープ27が貼付されている。第2部材22には、第2両面テープ27を介して第1部材21が接着され、貼り合わされている。第2両面テープ27には、市販品を用いることができ、本実施形態では、第2両面テープ27として日東電工株式会社製のNo.5000NSが採用されている。
【0024】
第2部材22は、PETにより成形されることにより、変形しにくくなっている。音響部品20は、この第2部材22が積層されていることにより、その外形形状が変形しにくくなっている。音響部品20は、第1角部20aの形状をそれ以外の第2角部20b乃至第4角部20dの形状と異ならせることで、音響部品装着部8へ装着姿勢が規定されている。仮に、音響部品20の全体が柔軟であり、容易に変形できるとすると、音響部品20は、誤った向きで音響部品装着部8に装着される可能性がある。そこで、第2部材22を容易には変形しない素材により成形し、保形性を持たせることで、音響部品20の外形形状の変形を防止し、音響部品20を正しい向きで音響部品装着部8に装着することができる。なお、本実施形態では、第2部材22の外形形状を、1つの角部の形状が他の角部の形状と異なる略矩形としているが、第2部材22は、1つの角部の形状が他の角部の形状と異なる略多角形状としてもよい。
【0025】
図10(A)乃至
図10(C)を参照すると、第3部材23は、厚みZ23の部材である。厚みZ23は、第1部材21、第2部材22及び第4部材24の厚さよりも厚い。すなわち、4層の部材の中で最も厚い。このように第3部材23の厚みを設定することにより、第3部材23に後述する収納部231を形成することができるようになる。第3部材23は、スポンジ状の柔らかい材料によって形成する。第3部材23には、市販品の素材を用いることができ、本実施形態では、株式会社ロジャースイノアック製のPORON LE−20(厚さ4mm)を用いている。PORON LE−20の密度は、200kg/m
3、引張強度0.30MPa、伸び150%、引裂強度1.3N/mm、25%圧縮荷重0.02、圧縮残留歪7.9%である。
【0026】
第3部材23の外形形状は、音響部品20の外形形状と一致する略矩形であり、X方向の外形寸法がX23に設定され、Y方向の外形寸法がY23に設定されている。従って、寸法X23は寸法X20と一致しており、寸法Y23は寸法Y20と一致している。また、第3部材23の外形形状は、第1角部23a、第2角部23b、第3角部23c及び第4角部23dを備える。第1角部23a乃至第4角部23dは、それぞれ、音響部品20の第1角部20a乃至第4角部20dの形状と一致している。また、第3部材23には、略矩形の収納部231が設けられている。収納部231のX方向の寸法は、X231に設定されており、Y方向の寸法は、Y231に設定されている。寸法X231は、第2部材22における開口部221の寸法X221と一致しており、寸法Y231は、寸法Y221と一致している。寸法X231と寸法Y231が収納部231の開口部の寸法となる。収納部231の深さは、第3部材23の厚みZ23と一致し、本実施形態では、4mmである。収納部231には、吸音材25が圧縮された状態で収納される。
【0027】
図10(A)を参照すると、第3部材23には、収納部231の周囲にハッチングを付して示された領域に第3両面テープ28が貼付されている。第3部材23には、第3両面テープ28を介して第2部材22の第1部材21が貼り合わされた面の裏面が接着され、貼り合わされている。また、
図10(B)を参照すると、第3部材23には、収納部231の周囲にハッチングを付して示された領域に第4両面テープ29が貼付されている。第4両面テープ29は、第3部材23と第4部材24との接着による貼り合わせに用いられる。第3両面テープ28及び第4両面テープ29には、市販品を用いることができ、本実施形態では、日東電工株式会社製のNo.5000NSが採用されている。第3部材23が第2部材22と貼り合わされることにより、収納部231は、開口部221と連通する。
【0028】
マイク素子31は、筐体3内に装備される。このため、筐体2内で反響する音のマイク素子31に対する回り込みを防止する必要がある。第3部材23は、マイク素子31に対するこのような音の回り込みを防止する。本実施形態の電子装置1は、複数のマイク素子31を備えるため、それぞれのマイク素子31において、音の回り込みを防止することが求められる。第3部材23は、マイク素子31毎に装備される音響部品20のそれぞれに装備されているため、マイク素子31毎に音の回り込みの防止が実現されている。
【0029】
図11(A)乃至
図11(C)を参照すると、第4部材24は、厚みZ24の部材である。第4部材24は、スポンジ状の素材を用いて成形されている。第4部材24の素材としては、第3部材23よりも硬く、第2部材22よりも柔らかい素材が選定されている。第4部材は、電子装置1内で、基板30の表面に接触する部材となる。第4部材24の素材には、基板30に隙間なく密着することができる適度なクッション性を有する素材が選定されている。また、第4部材24の素材の選定には、収納部231に収納された吸音材25の弾性力によって第4部材24が盛り上がってしまうことがない強度を有することも考慮される。このような第4部材24には、市販品の素材を用いることができ、本実施形態では、株式会社ロジャースイノアック製のPORON H−48(厚さ1mm)が用いられている。PORON H−48の密度は、480kg/m
3、引張強度2.35MPa、伸び140%、引裂強度6.2N/mm、25%圧縮荷重0.25、圧縮残留歪3.9%である。
【0030】
第4部材24の外形形状は、音響部品20の外形形状と一致する略矩形であり、X方向の外形寸法がX24に設定され、Y方向の外形寸法がY24に設定されている。従って、寸法X24は寸法X20と一致しており、寸法Y24は寸法Y20と一致している。また、第4部材24の外形形状は、第1角部24a、第2角部24b、第3角部24c及び第4角部24dを備える。第1角部24a乃至第4角部24dは、それぞれ、音響部品20の第1角部20a乃至第4角部20dの形状と一致している。また、第4部材24には、収納部231と連通する略矩形の開口部241が設けられている。開口部241のX方向の寸法は、X241に設定されており、Y方向の寸法は、Y241に設定されている。ここで、開口部241の寸法は、少なくとも収納部231の開口部の寸法よりも小さい。すなわち、寸法X241は、第3部材23における収納部231の寸法X231よりも小さく、寸法Y241は、寸法Y231よりも小さい。第4部材24の開口部241は、マイク素子31を吸音材25内に埋設するために設けられている。このため、開口部241の寸法は、マイク素子31の外形寸法よりも大きい。しかしながら、収納部231に収納された吸音材25が脱落しないように、開口部241の寸法は、収納部231の開口部の寸法よりも小さく設定されている。
【0031】
第4部材には、第3部材23の第2部材22が貼り合わされた面の裏面が貼り合わされている。具体的に、第4両面テープ29を介して第3部材23と第4部材24とが接着により、貼り合わされている。
【0032】
図12(A)乃至
図12(C)を参照すると、吸音材25は、直方体の部材である。吸音材25は、スポンジ状の素材により形成され、圧縮された状態で収納部231に収納される。吸音材25が圧縮された状態で収納部231に収納されるのは、吸音材25がその弾性力によって、収納部231内で隙間なく広がるようにするためである。このため、吸音材25の形状は、必ずしも直方体でなくてもよく、収納部231内を隙間なく埋めることができる体積及び形状を有していればよい。なお、吸音材25は、収納部231と連通する開口部221にも入り込み、隙間を形成しないことが望ましい。
【0033】
本実施形態の吸音材25のX方向の寸法は、X25に設定され、Y方向の寸法はY25に設定されている。そして、Z方向の寸法、すなわち、厚みは、Z25に設定されている。ここで、寸法X25、Y25及びZ25は、吸音材25が圧縮されていない状態での寸法である。本実施形態において、寸法X25は、収納部231の寸法X231と同一とされているが、寸法X231よりもわずかに大きくしてもよい。寸法Y25は収納部231の寸法Y231と同一とされているが、寸法Y231よりもわずかに大きくしてもよい。寸法Z25は、収納部231の寸法Z231よりも大きく設定されている。これにより、吸音材25は、収納部231内に圧縮された状態で保持される。これにより、吸音材25は、安定した姿勢を保つことができる。
【0034】
吸音材25は、特定周波数を低減する。吸音材25には、市販品の素材を用いることができ、本実施形態では、株式会社イノアックコーポレーション製のカームフレックス F−2を用いている。本実施形態では、寸法Z25を10mmに設定している。ここで、
図13を参照しつつ、吸音材25の吸音特性について説明する。
図13に示すグラフの横軸は、周波数[Hz]を表し、縦軸は、吸音率を示している。吸音材25は、高い周波数の音ほど、吸音率が高いことがわかる。従って、吸音材25を通過した音は、高周波の音ほど低減し、低周波の音をよく伝える。このように、吸音材25は、高周波を低減したい特定周波数とする場合に、有効に機能する。なお、吸音材25は、厚み、すなわち、音が進む方向に直交する方向の寸法であるZ方向寸法に応じて吸音特性が変化する。従って、低減したい特定周波数に応じて、Z方向寸法を適宜設定することができる。なお、吸音特性は、圧縮されていない状態でのZ方向寸法で評価され、使用状態において、仮に吸音材のZ方向寸法が圧縮されていても、吸音特性は変化しない。従って、本実施形態における吸音材25は、Z方向の寸法が圧縮された状態で収納部231内に収納されているが、Z方向寸法が圧縮されていないときと同等の吸音特性を得ることができる。
【0035】
以上、音響部品20の各構成要素について、個別に説明したが、音響部品20の構成の理解を容易にするため、
図14を参照しつつ、各構成要素の並びについて説明する。音響部品20を構成する各構成要素の最も前面側には、第1両面テープ26が配置されている。そして、前面側から背面側に向かって、第1部材21、第2両面テープ27、第2部材22、第3両面テープ28、第3部材23、第4両面テープ29及び第4部材24が配置されている。そして、収納部231内に吸音材25が圧縮された状態で収納される。なお、本実施形態では、各部材の接着に両面テープを用いているが、両面テープに代えて、接着剤を用いてもよい。
【0036】
つぎに、
図15乃至
図17を参照しつつ、音響部品20の製造方法の一例について説明する。
図15は音響部品の製造工程の一部を模式的に示す説明図である。
図16(A)は音響部品を構成する部材の素材を重ね、接着により貼り合わせた状態を示し、
図16(B)は、貼り合わされた素材を音響部品の外形形状に合わせてケース部材を切り出した様子を示す説明図である。
図17はケース部材に吸音材を押し込む様子を示す説明図である。
【0037】
まず、第1部材21が切り出される第1素材210、第2部材22が切り出される第2素材220、第3部材23が切り出される第3素材230と、第4部材24が切り出される第4素材240を準備する。第1素材210は、最終的な音響部品20の外形寸法よりも大きい寸法のヒメロン HN604Bである。第2素材220は最終的な音響部品20の外形寸法よりも大きい寸法のPTE板である。第3素材230は最終的な音響部品20の外形寸法よりも大きい寸法のPORON LE−20である。第4素材240は、最終的な音響部品20の外形寸法よりも大きい寸法のPORON H−48である。また、第1両面テープ26の素材260、第2両面テープ27の素材270、第3両面テープ28の素材280及び第4両面テープ29の素材290も同様に準備しておく。
【0038】
また、吸音材25の素材となるカームフレックス F−2を所定の形状、すなわち、寸法X25、Y25、Z25に切り出すことで、吸音材25が準備される。なお、吸音材25の切り出しは、最終的に、吸音材25が収納部231に押し込められる以前に完了していればよい。
【0039】
各素材を接着する以前に、各部材が備える開口部や収納部が形成される。すなわち、第2部材22を形成する第2素材220に開口部221が設けられる。また、第3部材23を形成する第3素材230に収納部231が設けられる。さらに、第4部材24を形成する第4素材240に開口部241が設けられる。これらの工程は、特に順序を問われるものではなく、各素材を接着する以前に完了していれば、順次行ってもよいし、同時並行的に行ってもよい。第1両面テープ26の素材260、第2両面テープ27の素材270、第3両面テープ28の素材280及び第4両面テープ29の素材290にもそれぞれ、所定の開口部を設けておく。
【0040】
各部材が備える開口部や収納部の形成が完了したら、第1部材21を形成する第1素材210と、開口部221が設けられた第2素材220とを重ねて接着する。第1素材210と第2素材220との接着は、第2両面テープ27の素材270によって行われる。また、開口部221が設けられた第2素材220と、収納部231が設けられた第3素材230とを重ねて接着する。第2素材220と第3素材230との接着は、第3両面テープ28の素材280によって行われる。さらに、収納部231が設けられた第3素材230と、開口部241が設けられた第4素材240とを重ねて接着する。第3素材230と第4素材240との接着は、第4両面テープ29の素材290によって行われる。各素材の接着の実施順は問わない。なお、第1素材210には、最終的な音響部品20の外形形状となる仮想の輪郭線210aが設定されている。同様に、第2素材220には、仮想の輪郭線220aが設定されている。さらに、第3素材230には、仮想の輪郭線230aが設定され、第4素材240には、仮想の輪郭線240aが設定されている。
【0041】
図16(A)に示すように、各素材が重ね合わされ、接着された後、
図16(B)に示すように、接着された状態の第1素材210乃至第4素材240から音響部品20の外形形状に沿ってケース部材200を切り出す。ケース部材200の切り出しは、例えば、パンチングによって行われる。
【0042】
図17に示すようにケース部材200が切り出された後は、予め準備されていた、吸音材25を第4部材24に設けられた開口部241を通じて、ケース部材200の収納部231に圧縮しつつ押し込み、収納する。これにより、音響部品20が完成する。
【0043】
つぎに、前面側カバー2aへの音響部品20の装着及び基板30の取り付けについて、
図18乃至
図23を参照しつつ説明する。
図18は第1ボタン乃至第3ボタン及び音響部品が装着された前面側カバーを電子装置の内側となる側から観た説明図である。
図19(A)は電子装置が備える基板を一面側から観た説明図であり、
図19(B)は電子装置が備える基板を他面側から観た説明図である。
図20は基板が装着された前面側カバーを電子装置の内側となる側から観た説明図である。
図21は
図20におけるB−B線に対応する線で電子装置を断面とした説明図である。
図22は前面側カバーに基板をネジ止めした様子を示す説明図である。
図23(A)は基板がネジ止めされる以前の音響部品の様子を模式的に示す説明であり、
図23(B)は基板がネジ止めされ、基板が音響部品に密着する様子を模式的に示す説明図である。
【0044】
図18を参照すると、前面側カバー2aには、第1ボタン6a、第2ボタン6b及び第3ボタン6cが装着される。また、前面側カバー2aには、音響部品20が装着される。そして、音響部品20が装着された状態の前面側カバー2aに
図19(A)、
図19(B)に示す基板30が装着される。基板30には、マイク素子31と、第1スイッチ素子32a、第2スイッチ素子32b及び第3スイッチ素子32cが実装されている。第1スイッチ素子32aは、第1ボタン6aを介して使用者に押圧操作される。第2スイッチ素子32bは、第2ボタン6bを介して使用者に押圧操作される。第3スイッチ素子32cは、第3ボタン6cを介して押圧操作される。なお、第3ボタン6cは、大型であるため、これに対応させて第3スイッチ素子32cは、2個装備されている。2個の第3スイッチ素子32cは、どちらが押圧されても、同一の信号を発する。
【0045】
基板30を前面側カバー2aに取り付ける際は、
図20や
図21に示すように、基板30が備える位置決め穴30aに位置決め突部10を挿通させる。これにより、基板30の平面方向の位置決めがされる。
【0046】
基板30は、位置決め穴30aに位置決め突部10を挿通させた状態で、
図22に示すようにネジ受け部9にネジ33を締め付けることにより、前面側カバー2aに固定される。このとき、基板30は、音響部品20の第4部材24に当接し、第4部材24を適度に圧縮する。これにより、第4部材24と基板30の表面とが密着し、音響部品20と基板30との間の隙間の発生が回避される。
【0047】
ここで、
図23(A)、
図23(B)を参照して壁部8aの縁部位置、ネジ受け部9の縁部位置及び音響部品20の縁部位置の関係について説明する。ネジ受け部9の縁部位置は、
図23(A)において、壁部8aの縁部位置よりも上側となっている。また、基板30がネジ止めされる以前の音響部品20の縁部位置は、
図23(A)において、ネジ受け部9の縁部位置よりも上側となっている。このような状態から、
図23(B)に示すように、基板30をネジ33によってネジ受け部9にネジ止めすると、基板30の表面がネジ受け部9に接触する位置まで移動する。このとき、音響部品20は、基板30と接触し、押圧されて圧縮状態となる。音響部品20において基板30と接触しているのは第4部材24である。第4部材24は、そのクッション性により、元の形状に復帰しようとするため、基板30との密着性を高めることができる。この結果、音響部品20と基板30との間の隙間の発生が回避される。
【0048】
特定周波数を低減する吸音材25は、収納部231内に圧縮された状態で収納されている。これにより、吸音材25は、動きが抑制され、特定周波数を低減する効果を発揮しやすくなる。また、音響部品20は、筐体2内で音響部品装着部8内に収容され、前面側カバー2aと基板30とに挟持された状態で設置される。さらに、音響部品20は、変易しにくく、保形性を有する第2部材22を積層するとともに、4つの角部のうち、1つの角部の形状が他の3つの角部の形状と異なっている。これにより、吸音材25の位置や姿勢を適切に維持することができ、適切に特定周波数を低減する効果を発揮することができる。
【0049】
以上のように、本実施形態の音響部品20によれば、適切に特定周波数を低減することができる。また、マイク素子31への周囲からの音の回り込みを防止することができる。なお、本実施形態では、マイク素子31に音響部品20を組み合わせて用いているが、マイク素子31以外の音響に関する部品、例えば、スピーカー等と組み合わせて用いることもできる。
【0050】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0051】
なお、以上の実施形態の説明に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
シート状の第1部材と、
開口部を備えるとともに、前記第1部材が貼り合わされた第2部材と、
前記第2部材が備える前記開口部と連通する収納部を備えるとともに、前記第2部材の前記第1部材が貼り合わされた面の裏面が貼り合わされた第3部材と、
前記第3部材が備える前記収納部と連通する開口部を備えるとともに、前記第3部材の前記第2部材が貼り合わされた面の裏面が貼り合わされた第4部材と、
スポンジ状の素材により形成され、圧縮された状態で前記収納部に収納された吸音材と、
を備える音響部品。
(付記2)
前記第4部材が備える前記開口部の寸法は、少なくとも前記収納部の開口部の寸法よりも小さい付記1に記載の音響部品。
(付記3)
前記第1部材は、不織布により形成された付記1又は2に記載の音響部品。
(付記4)
前記第2部材は、1つの角部の形状が他の角部の形状と異なる略多角形状であり、前記第3部材及び第4部材よりも硬い付記1乃至3のいずれか1項に記載の音響部品。
(付記5)
前記第4部材は、前記第3部材よりも硬く、前記第2部材よりも柔らかい付記1乃至4のいずれか1項に記載の音響部品。
(付記6)
前記第3部材は、前記第1部材、前記第2部材、前記第4部材よりも厚いスポンジ状の素材により形成された付記1乃至5のいずれか1項に記載の音響部品。
(付記7)
複数の音孔が設けられた筐体と、
前記筐体内に配置された基板と、
前記基板の前記複数の音孔の位置に対応する位置に実装された複数のマイク素子と、
前記複数のマイク素子毎に前記筐体内に配置された複数の音響部品を備え、
前記音響部品は、それぞれ、
シート状の第1部材と、
開口部を備えるとともに、前記第1部材が貼り合わされた第2部材と、
前記第2部材が備える前記開口部と連通する収納部を備えるとともに、前記第2部材の前記第1部材が貼り合わされた面の裏面が貼り合わされた第3部材と、
前記第3部材が備える前記収納部と連通する開口部を備えるとともに、前記第3部材の前記第2部材が貼り合わされた面の裏面が貼り合わされた第4部材と、
スポンジ状の素材により形成され、圧縮された状態で前記収納部に収納された吸音材と、を備える電子装置。
(付記8)
前記第4部材が備える前記開口部の寸法は、少なくとも前記収納部の開口部の寸法よりも小さい付記7に記載の電子装置。
(付記9)
前記第1部材は、不織布により形成された付記7又は8に記載の電子装置。
(付記10)
前記第2部材は、1つの角部の形状が他の角部の形状と異なる略多角形状であり、前記第3部材及び第4部材よりも硬い付記7乃至9のいずれか1項に記載の電子装置。
(付記11)
前記第4部材は、前記第3部材よりも硬く、前記第2部材よりも柔らかい付記7乃至10のいずれか1項に記載の電子装置。
(付記12)
前記第3部材は、前記第1部材、前記第2部材、前記第4部材よりも厚いスポンジ状の素材により形成された付記7乃至11のいずれか1項に記載の電子装置。
(付記13)
第1部材と、開口部を備える第2部材と、収納部を備える第3部材と、開口部を備える第4部材とを有し、スポンジ状の素材により形成され、圧縮された状態で前記収納部に収納された吸音材を備える音響部品の製造方法であって、
前記第2部材を形成する第2素材に前記第2部材が備える前記開口部を設ける工程と、
前記第3部材を形成する第3素材に前記第3部材が備える前記収納部を設ける工程と、
前記第4部材を形成する第4素材に前記第4部材が備える前記開口部を設ける工程と、
前記第1部材を形成する第1素材と、前記開口部が設けられた第2素材とを重ねて接着する工程と、
前記開口部が設けられた第2素材と、前記収納部が設けられた第3素材とを重ねて接着する工程と、
前記収納部が設けられた第3素材と、前記開口部が設けられた第4素材とを重ねて接着する工程と、
接着された状態の前記第1素材乃至前記第4素材から前記音響部品の外形形状に沿ってケース部材を切り出す工程と、
前記第4部材に設けられた開口部を通じて、前記ケース部材の前記収納部に前記吸音材を圧縮しつつ押し込み、収納する工程と、
を備える音響部品の製造方法。