【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳述する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
<ロジン変性物の作製>
以下の表1に示す実施例1A〜実施例6Aと、比較例1A〜比較例3Aの組成でロジン変性物を作製し、溶解性を検証した。
【0040】
【表1】
【0041】
(実施例1A)
200mlビーカーに、KE−604:20g(酸変性ロジン:荒川化学工業株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物1:39gを得た。実施例1Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.5であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.5であり、本発明で規定される範囲内である。実施例1Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できた。実施例1Aのロジン変性物を、ロジン変性物1と称す。
【0042】
(実施例2A)
200mlビーカーに、KE−604:15g(酸変性ロジン:荒川化学工業株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物2:34gを得た。実施例2Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.66であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.66であり、本発明で規定される範囲内である。実施例2Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できた。実施例2Aのロジン変性物を、ロジン変性物2と称す。
【0043】
(実施例3A)
200mlビーカーに、KE−604:25g(酸変性ロジン:荒川化学工業株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物3:44gを得た。実施例3Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.4であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.4であり、本発明で規定される範囲内である。実施例3Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できた。実施例3Aのロジン変性物を、ロジン変性物3と称す。
【0044】
(実施例4A)
200mlビーカーに、ForalAX−E:20g(水添ロジン:イーストマンケミカル株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物4:39gを得た。実施例4Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.5であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.5であり、本発明で規定される範囲内である。実施例4Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できた。実施例4Aのロジン変性物を、ロジン変性物4と称す。
【0045】
(実施例5A)
200mlビーカーに、ForalAX−E:15g(水添ロジン:イーストマンケミカル株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物5:34gを得た。実施例5Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.66であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.66であり、本発明で規定される範囲内である。実施例5Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できた。実施例5Aのロジン変性物を、ロジン変性物5と称す。
【0046】
(実施例6A)
200mlビーカーに、ForalAX−E:25g(水添ロジン:イーストマンケミカル株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物6:44gを得た。実施例6Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.4であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.4であり、本発明で規定される範囲内である。実施例6Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できた。実施例6Aのロジン変性物を、ロジン変性物6と称す。
【0047】
(比較例1A)
200mlビーカーに、KE−311:20g(ロジンエステル:荒川化学工業株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物7:39gを得た。比較例1Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.5であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.5であり、本発明で規定される範囲内である。比較例1Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できないものとなった。これは、ロジンエステルが脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと反応せず、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の反応が起こって高分子化したためと考えられる。
【0048】
(比較例2A)
200mlビーカーに、KE−604:10g(酸変性ロジン:荒川化学工業株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物を得た。比較例2Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は1であり、本発明で規定される範囲外である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は1であり、本発明で規定される範囲外である。比較例2Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できないものとなった。これは、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の反応が優先的に起こって高分子化したためと考えられる。
【0049】
(比較例3A)
200mlビーカーに、KE−604:30g(酸変性ロジン:荒川化学工業株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻したが、ロジン変性物が得られなかった。これは、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の反応が進行しないためと考えられる。比較例3Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.33であり、本発明で規定される範囲外である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.33であり、本発明で規定される範囲外である。
【0050】
以上の結果から、ロジンまたはロジン誘導体と、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと、脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物との反応物であって、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比が、本発明で規定される範囲内であるロジン変性物は、他の添加物が溶解でき、はんだ付け用フラックスとして使用できることが判った。これに対し、ロジンエステルと、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと、脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物との反応物であるロジン変性体は、他の添加物が溶解できないものとなり、はんだ付け用フラックスとして使用できないことが判った。また、ロジンまたはロジン誘導体と、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと、脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物との反応物であって、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比が、本発明で規定される範囲外であるロジン変性物は、他の添加物が溶解できない、または、ロジン変性物が作成できず、はんだ付け用フラックスとして使用できないことが判った。
【0051】
<はんだ付け用フラックス及びソルダペーストの作製>
表2〜表5に示す組成及び配合にて各成分を混練し、各実施例及び比較例のはんだ付け用フラックスを作製した。なお、表2〜表5のうち、組成を表すものに係る数値の単位は、特に断り書きがない限り重量%である。また、このフラックスを使用してソルダペーストを調合した。
【0052】
ソルダペースト中の金属粉は、Agが3.0重量%、Cuが0.5重量%、残部がSnであるSn−Ag−Cu系のはんだ合金であり、粒径はφ20〜38μmである。更に、ソルダペーストは、はんだ付け用フラックスが12重量%、金属粉が88重量%である。
【0053】
<耐残渣亀裂性>
0.5mmピッチのQFP(Quad Flat Package)パターンが存在する基板に、同じパターンを有する厚み150μmのメタルマスクを用いて各ソルダペーストを印刷した。印刷後、各基板についてリフロー炉(製品名:SNR−825GT、千住金属工業株式会社製)を用いてリフローを行った。リフロー条件は酸素濃度1,500ppm以下、最高温度は245℃であった。リフロー後の各基板に−40℃×30分から85℃×30分を1サイクルとした冷熱サイクル負荷を200サイクルかけた。そして、冷熱サイクル負荷後の各基板のQFPパターンのはんだ付け部における亀裂発生状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:QFP接続部の端子間(全60カ所)を連結するクラックが発生しない
×:QFP接続部の端子間(全60カ所)を連結するクラックが発生する
【0054】
<粘着性>
前記耐残渣亀裂性のリフロー後の各基板のフラックス残渣を指触し、その指触跡の有無を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:指触跡がない
〇:わずかに接触跡が生じる
△:接触跡が生じるが、フラックス残渣が指に付着しない
×:指触跡が生じ、フラックス残渣が指に付着する
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
以上示すように、各実施例のソルダペーストは、フラックス残渣の耐亀裂性と、フラックス残渣の粘着性抑制効果の両立が可能であることが判った。このようなソルダペーストは、特に高信頼性が要求される環境下で使用される基板にも好適に用いることができる。
【0060】
各実施例のソルダペーストにおいて、例えばロジン変性物1〜3のように、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比を、本発明で規定される範囲内で増減させても、フラックス残渣の耐亀裂性と、フラックス残渣の粘着性抑制効果の両立が可能であることが判った。また、ステアリン酸を、本発明で規定される範囲内で増減させることで、粘着性がより改善することが判った。
【0061】
これに対し、実施例のロジン変性物を含まず、ロジン及びアクリル樹脂を含む各比較例のソルダペーストにおいては、アクリル樹脂の含有量が30質量%未満であると、フラックス残渣の耐亀裂性が得られない。これに対し、アクリル樹脂の含有量が30質量%以上であれば、フラックス残渣の耐亀裂性が得られる。しかし、フラックス中のアクリル樹脂の含有量が30質量%以上となると、フラックス残渣の粘着性が悪化した。