特許第6663124号(P6663124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6663124ロジン変性物、はんだ付け用フラックス及びソルダペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6663124
(24)【登録日】2020年2月18日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】ロジン変性物、はんだ付け用フラックス及びソルダペースト
(51)【国際特許分類】
   C08L 93/04 20060101AFI20200227BHJP
   B23K 35/363 20060101ALI20200227BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20200227BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20200227BHJP
【FI】
   C08L93/04
   B23K35/363 C
   B23K35/363 E
   !B23K35/26 310A
   !C22C13/00
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-135903(P2019-135903)
(22)【出願日】2019年7月24日
【審査請求日】2019年7月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝脇 敏夫
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−059028(JP,A)
【文献】 特開平05−132896(JP,A)
【文献】 特開2001−219294(JP,A)
【文献】 特開2011−246647(JP,A)
【文献】 特開2010−144150(JP,A)
【文献】 特開2015−205996(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第109553733(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
B23K
C09F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジンまたはロジン誘導体と、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと、脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物との反応物であり、
ロジンまたはロジン誘導体は、酸変性ロジン、水添ロジンまたは重合ロジンであり、
前記ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの前記脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は、0.4以上0.67以下であり、前記ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの前記脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は、0.4以上0.67以下であ
ことを特徴とするロジン変性物。
【請求項2】
前記ロジンまたはロジン誘導体の酸価は、15mgKOH/g以上である
ことを特徴とする請求項1に記載のロジン変性物。
【請求項3】
前記ロジン変性物に含まれる未反応のロジン成分の量は、10重量%以上50重量%以下である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロジン変性物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のロジン変性物を含む
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス。
【請求項5】
前記ロジン変性物の配合量は、はんだ付け用フラックスの総重量に対して30重量%以上60重量%以下である
ことを特徴とする請求項4に記載のはんだ付け用フラックス。
【請求項6】
更にステアリン酸を含み、前記ステアリン酸の配合量は、はんだ付けフラックスの総重量に対して5重量%以上15重量%以下である
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のはんだ付け用フラックス。
【請求項7】
請求項4〜請求項6の何れか1項に記載のはんだ付け用フラックスとはんだ合金粉末とを含む
ことを特徴とするソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け用フラックスに好適に用いられるロジン変性物に関する。詳しくは、長期に渡る激しい冷熱サイクル環境下におけるフラックス残渣への亀裂発生・亀裂進展抑制効果と、フラックス残渣の粘着性抑制効果を両立することのできるロジン変性物、これを用いたはんだ付け用フラックス、及びソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板に実装する際に使用されるソルダペーストは、はんだ付け用フラックスとはんだ合金粉末を混合して作製される。当該ソルダペーストを用いてはんだ付けを行う場合、はんだ付け用フラックスの一部はフラックス残渣として基板上のはんだ接合部付近に残留する傾向にある。そして一般的に、はんだ付け用フラックスにはベース樹脂、活性剤および溶剤が含まれている。このベース樹脂としては、従来からロジンが用いられている。
【0003】
近年の電子製品の高性能化、高密度化等に伴い、寒暖の差が激しい環境下に基板が曝される場面が増えてきている。ベース樹脂としてロジンを用いたはんだ付け用フラックスを用いて形成したフラックス残渣は、その性質上、このような環境下に置かれると硬く脆くなり易い。そして、上述したフラックス残渣は経時と共に亀裂が入り易くなる。そのため、この亀裂を通して水分が基板の回路部分に浸透し易くなり、回路のショート、回路の金属の腐食といった問題が生じ易くなる。
【0004】
このような問題を解決する方法として、ベース樹脂としてロジンの代わりに他の樹脂を使用する、若しくはロジンと他の樹脂とを併用する方法(特許文献1参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−121059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されるはんだペースト用フラックスは、ソルダペーストの印刷性向上のために一定量のロジン類の配合が必要になる。そのため、これを用いて形成されるフラックス残渣は寒暖の差が激しい環境下においては亀裂発生や亀裂進展の不安が残る。また、他の樹脂としてアクリル樹脂を含有することで、亀裂発生や亀裂進展が改善する傾向が見られる。しかし、アクリル樹脂の含有量を増やすと、フラックス残渣の粘着性が悪化する。
【0007】
本発明の目的は、長期に渡る激しい冷熱サイクル環境下におけるフラックス残渣への亀裂発生・亀裂進展抑制効果と、フラックス残渣の粘着性抑制効果を両立することのできるロジン変性物、はんだ付け用フラックスおよびソルダペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の構成からなることをその特徴とする。
【0009】
(1)本発明のロジン変性物は、ロジンまたはロジン誘導体と、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと、脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物との反応物であり、ロジンまたはロジン誘導体は、酸変性ロジン、水添ロジンまたは重合ロジンであり、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は、0.4以上0.67以下であり、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は、0.4以上0.67以下である。
【0010】
(2)前記(1)の構成にあって、ロジンまたはロジン誘導体の酸価は、15mgKOH/g以上である。
【0011】
(3)前記(1)または(2)のいずれかの構成にあって、ロジン変性物に含まれる未反応のロジン成分の量は、10重量%以上50重量%以下である。
【0013】
)本発明のはんだ付け用フラックスは、前記(1)から()のいずれかの構成にあるロジン変性物を含む。
【0014】
)前記()の構成にあって、ロジン変性物の配合量は、はんだ付け用フラックスの総重量に対して30重量%以上60重量%以下である。
【0015】
)前記()または()のいずれかの構成にあって、更にステアリン酸を含み、ステアリン酸の配合量は、はんだ付けフラックスの総重量に対して5重量%以上15重量%以下である。
【0016】
)本発明のソルダペーストは、前記()から()のいずれかの構成にあるはんだ付け用フラックスとはんだ合金粉末とを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明のロジン変性物、はんだ付け用フラックスおよびソルダペーストは、長期に渡る激しい冷熱サイクル環境下におけるフラックス残渣への亀裂発生・亀裂進展抑制効果と、フラックス残渣の粘着性抑制効果を両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のロジン変性物、はんだ付け用フラックスおよびソルダペーストの一実施形態について詳細に説明する。なお、本発明が当該実施形態に限定されないのはもとよりである。
【0019】
1.ロジン変性物
本実施の形態のロジン変性物は、ロジンまたはロジン誘導体と、エポキシ樹脂である脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと、酸無水物である脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物とを反応することにより得られる反応物である。
【0020】
一般的に、エポキシ樹脂と有機酸が反応してヒドロキシルエステルを形成し、これが核になって、ヒドロキシル基とエポキシ基が開裂重合し、これによって形成されたヒドロキシル基が再びエポキシ基と反応しながら高分子化することが知られている。こうして高分子化したものに、その他の添加物を溶解しようとしても溶解できず、フラックスとして使用することができなかった。これに対し、ヒドロキシルエステルを形成した後、エポキシ基が開裂重合を起こす何れかの過程で生成するヒドロキシル基に有機酸のカルボキシル基が結合して、脱水エステル反応を起こすと、エポキシ基の開裂重合はそれ以上進まない。本実施の形態のロジン変性物では、ロジンまたはロジン誘導体がこの脱水エステル反応を誘発するものと考えられ、これが脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの高分子化を抑制しているものと考えられる。これにより、本実施の形態のロジン変性物は、溶剤やチキソ剤、その他の活性剤成分を溶かすことができ、フラックスとして使用することができる。
【0021】
本実施の形態のロジン変性物は、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比が0.4以上0.67以下であることが好ましい。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比も0.4以上0.67以下であることが好ましい。
【0022】
ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比が0.4未満の場合には、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の反応が進行せず、ロジン変性物が得られない。また、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比が0.4未満の場合には、同様に脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の反応が進行せず、ロジン変性物が得られない。
【0023】
ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比が0.67を超える場合には、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の反応が過度となり、はんだ付けフラックス中に溶解しないロジン変性物となる。また、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比が0.67を超える場合には、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の反応が過度となり、はんだ付けフラックス中に溶解しないロジン変性物となる。
【0024】
ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びに該原料ロジンから得られる誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、精製ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、酸変性ロジン、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0025】
脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルとしては、ドデカン二酸グリシジルエステル、エイコサン二酸グリシジルエステル、エイコサジエン二酸グリシジルエステル、イソエイコサン二酸グリシジルエステル、イソドコサン二酸グリシジルエステル、イソドコサジエン二酸グリシジルエステル、ブチルオクタン二酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0026】
脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物としては、ドデカン二酸ポリ無水物、エイコサン二酸ポリ無水物、エイコサジエン二酸ポリ無水物、イソエイコサン二酸ポリ無水物、イソドコサン二酸ポリ無水物、イソドコサジエン二酸ポリ無水物、ブチルオクタン二酸ポリ無水物等が挙げられる。
【0027】
ロジンまたはロジン誘導体の酸価は、15mgKOH/g以上であることが好ましい。ロジンまたはロジン誘導体の酸価が15mgKOH/g未満であると、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の反応のみが優先的に起こって高分子化し、他の添加物が溶解できないものとなる。また、ロジン変性物に含まれる未反応のロジン成分の量は、10重量%以上50重量%以下であることが好ましい。
【0028】
2.はんだ付け用フラックス
本実施の形態のはんだ付け用フラックスは、上述したロジン変性物と、有機酸と、アミンと、有機ハロゲン化合物と、溶剤を含む。
【0029】
ロジン変性物の配合量は、はんだ付け用フラックス全量に対して30重量%以上60重量%以下であることが好ましい。
【0030】
有機酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、プロピオン酸、2,2−ビスヒドロキシメチルプロピオン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、ジグリコール酸、チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等が挙げられる。有機酸の配合量は、はんだ付け用フラックス全量に対して0重量%以上10重量%以下であることが好ましい。また、任意の添加物としてステアリン酸を含んでも良く、ロジン変性物とステアリン酸とを併用する場合、ステアリン酸の配合量は、はんだ付け用フラックス全量に対して5重量以上15重量%以下であることが好ましい。ステアリン酸を含まなくても良い。
【0031】
アミンとしては、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−ウンデシルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−エチル−4′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、エポキシ−イミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6′−tert−ブチル−4′−メチル−2,2′−メチレンビスフェノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2′−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1−(1′,2′−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−[(2−エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6−ビス[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]−4−メチルフェノール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。アミンの配合量は、はんだ付け用フラックス全量に対して0重量%以上10重量%以下であることが好ましい。
【0032】
有機ハロゲン化合物としては、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール等が挙げられる。有機ハロゲン化合物の配合量は、はんだ付け用フラックス全量に対して0重量%以上5重量%以下であることが好ましい。
【0033】
溶剤としては、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。アルコール系溶剤としてはイソプロピルアルコール、1,2−ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,2′−オキシビス(メチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ビス[2,2,2−トリス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エリトリトール、トレイトール、グアヤコールグリセロールエーテル、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、ヘキシルジグリコール、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。溶剤の配合量は、はんだ付け用フラックス全量に対して25重量%以上55重量%以下であることが好ましい。
【0034】
本実施の形態のはんだ付け用フラックスには、はんだ合金粉末の酸化を抑える目的で酸化防止剤を配合することができる。酸化防止剤としては、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]等のヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用することができる。酸化防止剤の配合量は、はんだ付け用フラックス全量に対して0重量%以上5重量%以下であることが好ましい。
【0035】
本実施の形態のはんだ付け用フラックスには、ソルダペーストを印刷に適した粘度に調整する目的でチキソ剤を配合することができる。チキソ剤としては、ワックス系チキソ剤、アマイド系チキソ剤が挙げられる。ワックス系チキソ剤としては例えばヒマシ硬化油等が挙げられる。アマイド系チキソ剤としてはラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、不飽和脂肪酸アマイド、p−トルエンメタンアマイド、芳香族アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、芳香族ビスアマイド、飽和脂肪酸ポリアマイド、不飽和脂肪酸ポリアマイド、芳香族ポリアマイド、置換アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールアマイド、脂肪酸エステルアマイド等が挙げられる。チキソ剤を含む場合、チキソ剤の配合量は、はんだ付け用フラックス全量に対して3重量%以上15重量%以下であることが好ましい。
【0036】
本実施の形態のはんだ付け用フラックスには、更に他のハロゲン、つや消し剤、消泡剤等の添加剤を加えてもよい。上記添加剤の配合量は、はんだ付け用フラックス全量に対して10重量%以下であることが好ましく、更に好ましい配合量は5重量%以下である。
【0037】
3.ソルダペースト
本実施の形態のソルダペーストは、上述したはんだ付け用フラックスと、金属粉を含む。金属粉は、Pbを含まないはんだであることが好ましく、Sn単体、または、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Bi系、Sn-In系等、あるいは、これらの合金にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだの粉体で構成される。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳述する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
<ロジン変性物の作製>
以下の表1に示す実施例1A〜実施例6Aと、比較例1A〜比較例3Aの組成でロジン変性物を作製し、溶解性を検証した。
【0040】
【表1】
【0041】
(実施例1A)
200mlビーカーに、KE−604:20g(酸変性ロジン:荒川化学工業株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物1:39gを得た。実施例1Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.5であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.5であり、本発明で規定される範囲内である。実施例1Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できた。実施例1Aのロジン変性物を、ロジン変性物1と称す。
【0042】
(実施例2A)
200mlビーカーに、KE−604:15g(酸変性ロジン:荒川化学工業株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物2:34gを得た。実施例2Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.66であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.66であり、本発明で規定される範囲内である。実施例2Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できた。実施例2Aのロジン変性物を、ロジン変性物2と称す。
【0043】
(実施例3A)
200mlビーカーに、KE−604:25g(酸変性ロジン:荒川化学工業株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物3:44gを得た。実施例3Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.4であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.4であり、本発明で規定される範囲内である。実施例3Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できた。実施例3Aのロジン変性物を、ロジン変性物3と称す。
【0044】
(実施例4A)
200mlビーカーに、ForalAX−E:20g(水添ロジン:イーストマンケミカル株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物4:39gを得た。実施例4Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.5であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.5であり、本発明で規定される範囲内である。実施例4Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できた。実施例4Aのロジン変性物を、ロジン変性物4と称す。
【0045】
(実施例5A)
200mlビーカーに、ForalAX−E:15g(水添ロジン:イーストマンケミカル株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物5:34gを得た。実施例5Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.66であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.66であり、本発明で規定される範囲内である。実施例5Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できた。実施例5Aのロジン変性物を、ロジン変性物5と称す。
【0046】
(実施例6A)
200mlビーカーに、ForalAX−E:25g(水添ロジン:イーストマンケミカル株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物6:44gを得た。実施例6Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.4であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.4であり、本発明で規定される範囲内である。実施例6Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できた。実施例6Aのロジン変性物を、ロジン変性物6と称す。
【0047】
(比較例1A)
200mlビーカーに、KE−311:20g(ロジンエステル:荒川化学工業株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物7:39gを得た。比較例1Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.5であり、本発明で規定される範囲内である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.5であり、本発明で規定される範囲内である。比較例1Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できないものとなった。これは、ロジンエステルが脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと反応せず、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の反応が起こって高分子化したためと考えられる。
【0048】
(比較例2A)
200mlビーカーに、KE−604:10g(酸変性ロジン:荒川化学工業株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻してロジン変性物を得た。比較例2Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は1であり、本発明で規定される範囲外である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は1であり、本発明で規定される範囲外である。比較例2Aのロジン変性物では、他の添加物が溶解できないものとなった。これは、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の反応が優先的に起こって高分子化したためと考えられる。
【0049】
(比較例3A)
200mlビーカーに、KE−604:30g(酸変性ロジン:荒川化学工業株式会社製)とIPU−22G:10g(脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステル:岡村製油株式会社製)とIPU−22AH:10g(脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物:岡村製油株式会社製)を加え、攪拌しながら約15分かけて200℃まで昇温させた。次に、200℃で15分間保持した後、室温に戻したが、ロジン変性物が得られなかった。これは、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の反応が進行しないためと考えられる。比較例3Aのロジン変性物において、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比は0.33であり、本発明で規定される範囲外である。また、ロジンまたはロジン誘導体を1としたときの脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比は0.33であり、本発明で規定される範囲外である。
【0050】
以上の結果から、ロジンまたはロジン誘導体と、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと、脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物との反応物であって、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比が、本発明で規定される範囲内であるロジン変性物は、他の添加物が溶解でき、はんだ付け用フラックスとして使用できることが判った。これに対し、ロジンエステルと、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと、脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物との反応物であるロジン変性体は、他の添加物が溶解できないものとなり、はんだ付け用フラックスとして使用できないことが判った。また、ロジンまたはロジン誘導体と、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと、脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物との反応物であって、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比が、本発明で規定される範囲外であるロジン変性物は、他の添加物が溶解できない、または、ロジン変性物が作成できず、はんだ付け用フラックスとして使用できないことが判った。
【0051】
<はんだ付け用フラックス及びソルダペーストの作製>
表2〜表5に示す組成及び配合にて各成分を混練し、各実施例及び比較例のはんだ付け用フラックスを作製した。なお、表2〜表5のうち、組成を表すものに係る数値の単位は、特に断り書きがない限り重量%である。また、このフラックスを使用してソルダペーストを調合した。
【0052】
ソルダペースト中の金属粉は、Agが3.0重量%、Cuが0.5重量%、残部がSnであるSn−Ag−Cu系のはんだ合金であり、粒径はφ20〜38μmである。更に、ソルダペーストは、はんだ付け用フラックスが12重量%、金属粉が88重量%である。
【0053】
<耐残渣亀裂性>
0.5mmピッチのQFP(Quad Flat Package)パターンが存在する基板に、同じパターンを有する厚み150μmのメタルマスクを用いて各ソルダペーストを印刷した。印刷後、各基板についてリフロー炉(製品名:SNR−825GT、千住金属工業株式会社製)を用いてリフローを行った。リフロー条件は酸素濃度1,500ppm以下、最高温度は245℃であった。リフロー後の各基板に−40℃×30分から85℃×30分を1サイクルとした冷熱サイクル負荷を200サイクルかけた。そして、冷熱サイクル負荷後の各基板のQFPパターンのはんだ付け部における亀裂発生状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:QFP接続部の端子間(全60カ所)を連結するクラックが発生しない
×:QFP接続部の端子間(全60カ所)を連結するクラックが発生する
【0054】
<粘着性>
前記耐残渣亀裂性のリフロー後の各基板のフラックス残渣を指触し、その指触跡の有無を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:指触跡がない
〇:わずかに接触跡が生じる
△:接触跡が生じるが、フラックス残渣が指に付着しない
×:指触跡が生じ、フラックス残渣が指に付着する
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
以上示すように、各実施例のソルダペーストは、フラックス残渣の耐亀裂性と、フラックス残渣の粘着性抑制効果の両立が可能であることが判った。このようなソルダペーストは、特に高信頼性が要求される環境下で使用される基板にも好適に用いることができる。
【0060】
各実施例のソルダペーストにおいて、例えばロジン変性物1〜3のように、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルの重量比、ロジンまたはロジン誘導体に対する脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物の重量比を、本発明で規定される範囲内で増減させても、フラックス残渣の耐亀裂性と、フラックス残渣の粘着性抑制効果の両立が可能であることが判った。また、ステアリン酸を、本発明で規定される範囲内で増減させることで、粘着性がより改善することが判った。
【0061】
これに対し、実施例のロジン変性物を含まず、ロジン及びアクリル樹脂を含む各比較例のソルダペーストにおいては、アクリル樹脂の含有量が30質量%未満であると、フラックス残渣の耐亀裂性が得られない。これに対し、アクリル樹脂の含有量が30質量%以上であれば、フラックス残渣の耐亀裂性が得られる。しかし、フラックス中のアクリル樹脂の含有量が30質量%以上となると、フラックス残渣の粘着性が悪化した。
【要約】
【課題】長期に渡る激しい冷熱サイクル環境下におけるフラックス残渣への亀裂発生・亀裂進展抑制効果と、フラックス残渣の粘着性抑制効果を両立することのできるロジン変性物、はんだ付け用フラックスおよびソルダペーストを提供する。
【解決手段】ロジン変性物は、ロジンまたはロジン誘導体と、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと、脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物との反応物である。フラックスは、ロジンまたはロジン誘導体と、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと、脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物との反応物であるロジン変性物を含む。ソルダペーストは、ロジンまたはロジン誘導体と、脂肪族ポリカルボン酸グリシジルエステルと、脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物との反応物であるロジン変性物を含むはんだ付け用フラックスと、はんだ合金粉末とを含む。
【選択図】無し