【実施例】
【0018】
以下、
図1〜
図8を参照して本発明の具体的実施形態について説明する。本発明の転写具1の基本構成は、筐体2内に、基材に転写媒体が塗布された転写テープ(不図示)が巻装された送出コア3、転写テープのうちの転写媒体が被転写体へ転写された後の基材を巻き取る巻取コア4、及び転写テープの転写媒体を被転写体へ転写する転写部5を備え、いわゆる詰替タイプ、すなわち、少なくとも、使用後の、基材が巻き取られた巻取コア4及び送出コア3を未使用のそれらと交換する構造とされている。
【0019】
筐体2は、一方側2Aと他方側2Bとに2分割とされており、以下、本例において一方側2Aは交換部材が配置される本体として、他方側2Bは本体の交換部材を含め内部を覆う蓋として、各々位置付けている。
【0020】
そして、2分割された一方側2Aと他方側2Bは、
図2(a)(b)に示すように、後述する
図2(c)に示す開閉軸部2Cを中心に他方側2B(蓋)が一方側2A(本体)に対して扇状に開閉可能に構成されている。
【0021】
一方側2Aは、主に、閉じた状態で他方側2Bの対向面2Baと対向する対向面2Aaとこの対向面2Aaと直交して隣接する隣接面2Abにより構成されている。また、他方側2Bは、主に、閉じた状態で一方側2Aの対向面2Aaと対向する対向面2Baとこの対向面2Baと直交して隣接する隣接面2Bbにより構成されている。
【0022】
本例の場合、一方側2A及び他方側2Bは、対向面2Aa,2Ba、隣接面2Ab,2Bbにより、閉じた状態で筐体2の4面を構成するが、6面の残りの2面のうち1面は転写部5の開口を形成する理由から存在せず、残りの2面のうちさらに1面は該筐体2の全体形状が転写部5が位置する側と反対側に向けて尖塔状(以下、この部分を尖塔状部2Dという)としているために存在しない。
【0023】
筐体2の、転写部5が位置する側と反対側(以下、反転写部側という)の尖塔状部2Dには、
図2(c)に示すように、該尖塔状部2Dの端部に開閉軸部2Cが設けられている。開閉軸部2Cは、他方側2Bの尖塔状部2Dにおける対向面2Aa,2Ba方向両端に形成された軸部2Bcと、一方側2Aの尖塔状部2Dにおける対向する壁面に形成された枢支部2Acと、によってヒンジ構造とされている。
【0024】
したがって、筐体2は、他方側2Bが一方側2Aに対して開閉軸部2Cを中心に転写部5の部位が扇状に旋回して開閉することとなり、一方側2Aの内部をほぼ全面的に開放することができる。また、本例のように筐体2を構成することで、一方側2Aと他方側2Bとの結合部位のセパレート部が目立つことを防止でき、かつ開閉のための構造を筐体2の内部に突出させて内部空間を圧迫することを防止できる。
【0025】
また、本例においては、
図4(b)に示すように、尖塔状部2Dは、反転写部側へ、該転写部5から筐体2内における反転写部側に位置する本例の場合は送出コア3までの長さの1/2以上の長さ分突出させている。こうすることで、他方側2Bを一方側2Aに対して比較的小さい角度の旋回により、内部を全面的に開放することができる。
【0026】
さらに、一方側2Aと他方側2Bの閉状態の維持に関しては、
図4(a)に示すように、該他方側2Bの転写部5方向の先端部位で隣接面2Bbにおいて対向面2Baが隣接する側と反対側に形成された係合凸部2Bdと、該一方側2Aの転写部5方向の先端部位の対向面2Aaの内面側に形成された係合凹部2Adと、によってロックができるよう構成している。
【0027】
また、本例の転写具1は、筐体2の一方側2Aと他方側2Bを閉時に結合した状態において剛性の向上を図るために、
図5〜
図7に示す、筐体2の一方側2Aと他方側2Bの内側に外圧に対抗する支承構造を採用している。
【0028】
例えば、筐体2において、使用時に被転写体に対して直交する面(以下、「側面」という、ちなみに対向面2Aaは「左側面」、対向面2Baは「右側面」という)には、使用時に筐体2を把持するための力がかかることから、本例では
図5及び
図7の支承構造を採用している。
【0029】
さらに、筐体2において、使用時に被転写体に面する側と反対面(以下、「上面」という、ちなみに被転写体に面する側を「下面」という)には、使用時に被転写体へ押圧する力がかかることから、本例では
図6の支承構造を採用している。
【0030】
図5(a)は、他方側2Bの隣接面2Bbと隣接する対向面2Baと反対面の耐力点Aにおける剛性向上のための支承面Aについて示している。支承面Aは、他方側2Bの係合凸部2Bdが形成された部位において該係合突部2Bdの先後方向両端側に設けられた面、尖塔状部2Dにおける他方側2Bの隣接面2Bbの端面と一方側2Aの対向面2Aa周縁内面とが当接する面と、により形成され、支承面Aが一方側2Aの対向面2Aaの内面と当接することで、左右方向からの荷重を支承する。なお、
図5(b)は支承面Aによる支承モデルを示している。
【0031】
図6(a)は、他方側2Bの対向面2Baの耐力点Bにおける剛性向上のための支承リブBについて示している。支承リブBは、他方側2Bの対向面2Baの内面に上面−下面方向に複数本形成し、一方側2Aの隣接面2Abの内面と当接させることで、上方からの荷重を支承する。なお、
図6(b)は支承リブBによる支承モデルを示している。
【0032】
図7(a)は、尖塔状部2Dの耐力点Cにおける剛性向上のための一方側2Aの支承リブCAと他方側2Bの支承リブCBについて示している。支承リブCBは、他方側2Bの尖塔状部2Dの内側において転写部5方向に例えば適当な間隔を有して2枚形延設されている(
図8参照)。支承リブCAは、一方側2Aの尖塔状部2Dの内側において断面視L字状とされ、反転写部方向へ間隔を有して2箇所設けられている。そして、耐力点Cは、支承リブCAのL字の縦長辺部が支承リブCBの(支承リブCAのL字縦長辺側の)側面と当接する部位及び支承リブCBの下端と支承リブCAのL字の横辺部とが当接する部位を意味する。なお、
図7(b)は耐力点Cによる支承モデルを示している。
【0033】
また、本例における転写具1の筐体2は一方側2Aと他方側2Bの閉動作をスムーズに行うために、例えば、
図8(a)(b)に示すように、筐体2における一方側2Aの対向面2Aaに設けられた部材S1(例えば本例では支承リブCA),S2であって該部材の閉時に他方側2Bの隣接面2Bbに当接する部位、筐体2における他方側2Bの対向面2Baに設けられた部材S3であって該部材のに閉時と一方側2Aの隣接面2Abに当接する部位、に面取り加工を施している(面取部P)。こうすることで、一方側2Aに対する他方側2Bの閉動作がスムーズに行うことができ、当該部位S1〜S3などの摺動音を抑制することができる。
【0034】
次に、本例の転写具1において使用される交換部材について説明する。本例では、転写部5と、送出コア3と、巻取コア4、を交換部材とする。これらは、基板6に支持されている。基板6は、送出コア3及び巻取コア4の軸の一方端、例えば本例では筐体2の他方側2Bにおける対向面2Baに臨む側に取り付けられる。
【0035】
基板6は、その上記配置関係で言うと筐体2の一方側2Aにおける対向面2Aaに臨む側の面(以下、この面を内側という)に、送出コア3と巻取コア4の各々の軸支部6A,6Bが形成されている。また、基板6は、内側に形成された腕部6aに支持されて転写部5が設けられている。
【0036】
基板6において、外側における軸支部6Aと軸支部6Bとの間の位置には、該基板6の外側面からさらに外側へ湾曲して弾性を付与されたばね部6Cが形成されている。このばね部6Cは、交換部材を装入した状態の筐体2の閉時に、本例の場合、他方側2Bの対向面2Baを付勢し、交換部材のがたつきを抑制する。
【0037】
また、基板6における本例では送出コア3の軸支部6Aには、その外周面の一部に外径方向に湾曲して弾性を付与された回止部6Dが形成されている。この回止部6Dは、筐体2が開いているときは、軸支部6Aに軸支された送出コア3を送出コア3の軸内周を外径方向へ付勢している。
【0038】
他方側2Bの対向面2Baにおける上記回止部6Dと対応する位置には、回止解除部6Eが形成されている。この回止解除部6Eは、筐体2の開時に送出コア3の内周を付勢して不要な回転を阻止し、筐体2の閉時においては回止解除部6Eがその他方側2Bの旋回移動により回止部6Dを内径方向へ押圧して該回止部6Dによる送出コア3の内周に対する付勢状態を解除する(これにより該送出コア3が回転可能となる)。
【0039】
このように構成された本例の転写具1は、筐体2が一方側2Aと他方側2Bがそれぞれ対向面2Aa,2Baと隣接面2Ab,2Bbで構成されと共に筐体2の一方側2Aに対して他方側2Bが開閉軸部2Cを中心とした扇状に開閉する構造であるので、セパレート部が筐体2の幅方向中央に現れず、よって、セパレート部に手指がかかって把持力や被転写体に対する押圧力を受けないので、歪みや軋みが生じにくく、また、これらに起因した異音の発生が抑制される。
【0040】
さらに、本例の転写具1は、開閉軸部2Cを、転写部5が位置する側と反対側へ、該転写部5から筐体2内における転写部5と反対側に位置する送出コア3までの長さの1/2以上の長さ分突出した尖塔状部2Dに設けることで、他方側2Bの一方側2Aに対して小さい角度の回転で筐体2内を全面的に開放できる。
【0041】
また、本例の転写具1は、上記のように尖塔状部2を長く取ることで、該尖塔状部2を例えば人差指と親指との間にフィットさせて安定した把持状態で使用することが可能となる。
【0042】
さらには、本例の転写具1は、筐体2の一方側2Aと他方側2Bの内側に外圧に対抗する支承構造を採用することで、剛性が向上する。さらにこうした支承構造においては、一方側2Aと他方側2Bの対向面2Aa,2Ba又は隣接面2Ab,2Bbの相互に接触する部位の面取部Pを形成しているので、筐体2の閉動作を阻害することがないと共に摺動音を抑制することができる。
【0043】
また、本例の転写具1は、基板6にばね部6Cを形成することで、交換部材が筐体2の内部でがたつくことを抑制でき、また、軸支部6Aに回止部6Dを、他方側2Bの対向面2Baに回止解除部6Eを設けることで、筐体2の開時には送出コア3が不要に回転することを抑制でき、かつ閉時には送出コア3を円滑に回転させるようにできる。
【0044】
すなわち、本発明の転写具1は、上記構成とすることで、手指で把持する力あるいは使用時に押圧する力がかかるセパレート部が筐体の幅方向の面の中央ではなく、基材の幅方向端部に現れるので、セパレート部に力がかかることによる歪みや軋み、これに伴う異音の発生を抑制できるだけでなく、剛性の向上、筐体2内での交換部材のがたつきの抑制、送出コア3の不要な基材の送り出しの抑制といった、従来にはない格別の効果を得ることができる。