(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような部分酸化改質法により改質したガス中では、CO
2量に対するCO量の比(CO/CO
2比)が大きく、改質ガスがメタノールの生成装置内に供給された瞬間に急激な温度上昇が生じ、その生成装置に大きな負担を与えることがある。また、生成装置及びその内部に配置した構成、例えば触媒の劣化が早くなり、部分酸化改質法の工業プロセスへの採用を困難としている。
【0006】
本発明は、前記事情に照らして、メタノールを生成する装置への負担を低減する等の前記問題を解消すると共に、天然ガスからのメタノールの製造効率を向上できるメタノール製造システム及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るメタノール製造方法は、メタンを含有する原料ガスを、酸素を用いて部分酸化改質し改質ガスを得る改質工程と、前記改質ガス中のCO/CO
2比を下げるCO/CO
2比低下工程と、前記CO/CO
2比低下工程後の改質ガスからメタノールを含有する生成ガスを得る生成工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
また、前記CO/CO
2比低下工程は、前記生成工程後の生成ガスの一部を前記改質ガスに導入することを含む形態とすることができる。
【0009】
更に、前記メタノール製造方法は、前記生成工程前に改質ガスを圧縮して昇圧する昇圧工程を更に含み、前記CO/CO
2比低下工程が、プラントのユーティリティ設備の排ガスからCO
2を回収するCO
2回収工程を含み、前記CO
2回収工程で回収したCO
2を前記昇圧工程前の改質ガスに導入して、該改質ガス中のCO/CO
2比を下げることを含む形態とすることができる。
【0010】
更にまた、前記メタノール製造方法は、前記生成工程前に前記改質ガスの熱を回収する熱回収工程を更に含み、前記CO/CO
2比低下工程が、前記熱回収工程前の改質ガス中の一部をシフト反応させてCO
2を得て、該CO
2を前記熱回収工程前の改質ガスに還流することにより、CO/CO
2比を下げると共に改質ガスを昇温することを含む形態とすることができる。
【0011】
また、前記生成工程は、その合成温度を均一化しながらメタノールを合成する等温反応工程であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は別の側面にてメタノール製造システムである。本発明に係るメタノール製造システムは、メタンを含有する原料ガスを、酸素を用いて部分酸化改質し改質ガスを得る改質装置と、前記改質ガス中のCO/CO
2比を下げるCO/CO
2比低下装置と、前記CO/CO
2比低下装置の後流に配されて前記改質ガスからメタノールを含有する生成ガスを得る生成装置とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、前記CO/CO
2比低下装置は、前記生成装置の後流から前流に連結して、前記後流の生成ガスの一部を前記前流の改質ガスに導入するラインを備える形態とすることができる。
【0014】
更に、前記メタノールシステムは、前記生成工程装置の前流にて改質ガスを圧縮して昇圧する昇圧装置を更に備え、前記CO/CO
2比低下装置が、前記昇圧装置の前流にてラインを介して連結し、プラントのユーティリティ設備の排ガスからCO
2を回収するCO
2回収装置を備え、前記CO
2回収装置からのCO
2を前記昇圧装置の前流の改質ガスに導入して、該改質ガス中のCO/CO
2比を下げる形態とすることができる。
【0015】
更にまた、前記メタノールシステムは、前記生成装置の前流に配置されて前記改質ガスの熱を回収する熱回収装置を更に備え、前記CO/CO
2比低下装置が、前記熱回収装置の前流にてラインを介して連結したシフト反応器を備え、前記熱回収装置の前流の改質ガス中の一部をシフト反応させてCO
2を得て、該CO
2を前記熱回収装置の前流の改質ガスに還流することにより、CO/CO
2比を下げると共に改質ガスを昇温する形態とすることができる。
【0016】
また、前記生成装置は、前記装置内の温度を均一化しながらメタノールを合成する等温反応器であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、メタノールを生成する装置への負担を低減する等の前記問題を解消すると共に、天然ガスからのメタノールの製造効率を向上することができるメタノール製造システム及び製造方法を提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るメタノール製造システム及び製造方法の実施の形態について、詳細に説明する。本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。また、添付図面は、本発明に係るメタノール製造システム及び製造方法の実施の形態の概要を説明するための図であり、装置又はそれに付属する機器を一部省略している。
【0020】
[第一実施の形態]
メタノール製造システムの第一実施の形態について、
図1を参照して説明する。
本実施の形態のメタノール製造システム100は、改質装置1と、酸素プラント2と、熱回収装置3と、昇圧装置4と、生成装置5と、CO/CO
2比低下装置6と、分離装置7とを少なくとも備える。
【0021】
改質装置1は、メタン(CH
4)を主に含有する原料ガスと酸素(O
2)とから、部分酸化改質法(PO
x: Partial Oxidation)により、一酸化炭素(CO)と二酸化炭素(CO
2)と水素(H
2)とを主に含有する部分酸化改質ガス(改質ガス)を得るように構成された部分酸化改質器である。部分酸化改質器としては、その内部に原料ガスを改質するための改質触媒を配置した直接的接触部分酸化器、改質触媒を配置しない無触媒部分酸化器等が挙げられる。このような改質触媒としては、白金(Pt)、ロジウム(Rh)等の貴金属系触媒が挙げられる。また、原料ガスは、天然ガスである。原料ガスは、メタンを含有する原料であればよく、天然ガスの他に、石炭ガス、石炭コークスガス等を用いることができる。
また、改質装置1は、その内部に原料ガスを導入するための原料ガス供給ラインL
0と、酸素プラント2から酸素を導入するためのラインL
1と、改質ガスを熱回収装置3に導入するためのラインL
2とそれぞれ連結している。
【0022】
酸素プラント2は、プラント内に設置され、深冷分離法により空気を冷却して酸素を分離する設備である。酸素プラント2は、分離した酸素を改質装置1に供給するためのラインL
1と連結している。また、酸素プラント2は、プラント外の設備でもよく、例えば他のメタノールプラント、他の化学プラント等にて設置された酸素プラントを採用できる。このように、酸素プラントを他のプラントと共有すれば、複数のプラントにおけるメタノールの又はメタノールと他の物質との併産に要する製造効率を向上できる。
【0023】
熱回収装置3は、改質装置1の後流に配置され、改質ガスと媒体(例えば水)とを熱交換して改質ガスの熱を蒸気として回収する熱交換器である。
また、熱回収装置3は、熱を回収した改質ガスを昇圧装置4に導入するためのラインL
3と連結している。このラインL
3は、後述するCO/CO
2比が低いガスを改質ガスに導入するためのCO/CO
2比低下装置L
6と連結している。
【0024】
昇圧装置4は、熱回収装置3の後流に配置した圧縮機である。圧縮機は、生成ガスを昇圧できる装置であればよい。このような圧縮機としては、例えば熱回収装置で発生した高圧の蒸気を動力源とする遠心圧縮機を採用できる。
また、昇圧装置4は、昇圧した改質ガスを生成装置5に導入するためのラインL
4と連結している。
【0025】
生成装置5は、昇圧装置4の後流に配置され、CO又はCO
2と水素とを含有する改質ガスからメタノール(CH
3OH)を含有する生成ガスを得るように構成された等温反応器である。生成装置5は、改質ガスからメタノールを合成できる装置であればよい。より具体的には、生成装置5としては、固定床型、流動床型、噴流床型等の反応器、マイクロチャンネルリアクタ、等温反応器等が挙げられる。これらのうち、生成装置5は、流動床型反応器、噴流床型反応器、マイクロチャンネルリアクタ又は等温反応器が好ましく、等温反応器がより好ましい。このような装置であれば、装置内部での局所的な高熱の発生を制御して熱を均一化し、生成装置、その内部の機器及び/又はメタノール合成触媒への負荷を軽減できる。
生成装置5の内部には、改質ガスからメタノールを合成するためのメタノール合成触媒、例えば銅系触媒を配置している。
また、生成装置5は、メタノールを含有する生成ガスの一部を分離装置6に導入するためのラインL
5と連結している。このラインL
5は、CO/CO
2比が低い生成ガスの残部を還流するためのCO/CO
2比低下装置L
6と連結している。
【0026】
前記等温反応器は、SPC(Super converter)が更に好ましい。SPCは、反応熱によりフィードガスをプレヒートする共に、その反応熱によりスチームを発生する等温反応器の一種である。これによって、反応時の触媒層の温度をより均一化することができる。
【0027】
CO/CO
2比低下装置L
6は、反応装置5の前流にて改質ガスのCO/CO
2比を制御するためのラインであり、その一端がラインL
5と連結し、その他端がラインL
3と連結している。CO/CO
2比低下装置L
6は、生成装置5の後流のCO/CO
2比の低い生成ガスを熱回収装置3の後流(昇圧装置4の前流)に還流し、改質ガスのCO/CO
2比を低下するように構成されている。なお、CO/CO
2比とは、改質ガス又は生成ガス中のCO
2量に対するCO量(モル比)である。
【0028】
分離装置6は、メタノールを含有する生成ガスをメタノールと副生成物とに分離する、例えば蒸留塔である。副生成物は低沸点と高沸点化合物に大別される。分離装置6は、分離して精製したメタノールを製品又は他のプラントの原料として供給するためのラインL
7と、副生成物を排出する図示しない排出ラインとに連結している。
【0029】
続いて、以上の構成を有するメタノール製造システム100について、その作動形態を説明することにより、本発明に係るメタノール製造方法の第一実施の形態を以下に詳説する。本実施の形態のメタノール製造方法は、改質工程と、熱回収工程と、CO/CO
2比低下工程と、昇圧工程と、生成工程と、精製工程とを含む。
【0030】
改質工程では、メタンを主に含有する原料ガスと酸素プラント2からの酸素とを改質装置1に導入する。該改質工程では、下記式(1)〜(3)に表されるように、部分酸化改質法によって、メタンと酸素とからCOとCO
2と水素とを含有する改質ガスを生成する反応が優勢的に進行する。
【0032】
また、改質工程での前記部分酸化改質法は、反応系に酸素を導入し、原料ガスの一部を酸化して改質に必要な熱を供給する反応である。このような部分酸化改質法としては、前述の無触媒部分酸化装置を用いた無触媒部分酸化法(無触媒PO
x)、直接的接触部分酸化装置を用いた直接的接触部分酸化法(D-CPOX: Direct Catalytic Partial Oxidation)等が挙げられる。無触媒部分酸化法を用いる場合、例えば、反応温度は1200〜1550℃であり、反応圧力は3.0〜7.0MPaとすることができる。また、直接的接触部分酸化法を用いる場合、例えば、反応温度は700〜900℃であり、反応圧力は1.0〜2.0MPaとすることができる。
【0033】
次いで、熱回収工程では、改質工程後の改質ガスを熱回収装置3に導入し、改質反応の発熱により高温となった改質ガスと水媒体とを熱交換して、改質ガスの熱を蒸気として回収する。また、後述するように、熱回収後の改質ガスには、CO/CO
2比低下工程を経てCO/CO
2比を低下したガスを導入する。
【0034】
次いで、昇圧工程では、熱回収工程後の生成ガスを昇圧装置4に導入し、圧縮によって生成ガスの圧力をメタノールの合成に適した所定の範囲、例えば5.0〜15MPaまで昇圧する。
【0035】
次いで、生成工程では、昇圧工程後の生成ガス中のCO又はCO
2と水素とから下記式(4)及び(5)にて表される反応によりメタノールを合成し、メタノールを少なくとも含有する生成ガスを得る。
【0037】
生成工程では、等温反応器である生成装置5を用いることによって、装置内での局所的な温度上昇を防ぎ、温度を均一化して好ましい範囲に制御する。これにより、合成反応の熱による装置、その内部の機器及び/又は触媒に与える負荷が低減できる。メタノールの合成に要する反応温度は、100〜300℃であり、150〜250℃が好ましい。
また、本工程では、部分酸化改質法を用いる改質工程にて十分なメタノールの添加率を得られるまでそのCO/CO
2比を増加した後、CO/CO
2比低下工程にてそのCO/CO
2比を制御したCO/CO
2比を有する生成ガスを得る。これにより、メタノールの合成反応の回数を低減し、すなわち生成工程の回数を低減し、且つ、合成反応の熱により生成装置、その機器及び/又は触媒に与える負荷をより低減することができる。
【0038】
CO/CO
2比低下工程では、CO/CO
2比低下装置L
6によって、生成工程後の生成ガスの一部を分離・回収し、熱回収工程後(昇圧工程前)の改質ガスに導入して還流する。生成工程後の生成ガス中のCO/CO
2比は、熱回収工程後の改質ガス中のCO/CO
2比よりも低い。したがって、本工程では、生成工程前の改質ガス中のCO/CO
2比を下げて、その比を所定の範囲内に制御する。
【0039】
CO/CO
2比低下工程にて制御するガス中のCO/CO
2比は、0.5以上5.0以下の範囲であり、1.2以上4.0以下の範囲が好ましく、1.4以上3.5以下の範囲がより好ましい。この範囲であれば、生成工程にて高いメタノール転化率を得ると共に、メタノールを合成反応の発熱に起因する、生成装置、その機器及び/又はその内部の触媒に与える負荷を低減できる。
【0040】
次いで、分離工程では、生成工程後及び/又はCO/CO
2比低下工程後のメタノールを含有する生成ガスを、ラインL
5を介して分離装置6に導入し、蒸留分離法によって高純度のメタノールと副生成物となる低沸点及び高沸点化合物とに分離する。高純度のメタノールはラインL
7を介して回収し、副生成物は廃水として系外へ排出する。
このようにして分離したメタノールは、製品としてもよく、本プラントに併設したアンモニアプラント、酢酸プラント等の製造原料として用いてもよい。アンモニア、酢酸等の製造原料として製造したメタノールを用いれば、本実施の形態のメタノール製造の効率性をアンモニア、酢酸等の製造にも付与することができる。
【0041】
以上のようにして、原料ガスからメタノールを製造する。本実施の形態によれば、部分酸化改質法により生成した改質ガス中のCO/CO
2比を制御して、改質ガスを生成装置5に供給した瞬間に、発熱反応であるメタノール合成反応が生じることを防ぐことができる。したがって、著しい温度上昇による生成装置、装置の機器及び/又は装置内の触媒への熱負荷を防ぐことができる。更に、部分酸化改質法を適用した改質工程に起因して十分な反応活性を得ることができるため、要求されるメタノール量に対する生成工程の回数を低減して、メタノールの製造効率を向上できる。
【0042】
[第二実施の形態]
以下、本発明に係るメタノール製造システム及び製造方法の第二実施の形態について、
図2を参照にして詳細に説明する。なお、第一実施の形態と同じ構成は、同一の符号を付すと共に、説明を省略する。
図2に示すように、本実施の形態のメタノール製造システム200は、前述したCO/CO
2比低下装置L
6に替えて、CO/CO
2比低下装置L
8を備える点において、第一実施の形態と主に相違する。
【0043】
CO/CO
2比低下装置L
8は、昇圧装置4の後流にて改質ガスのCO/CO
2比を制御するためのラインであり、その一端がラインL
3と連結し、その他端が図示しないCO
2回収装置と連結している。CO
2回収装置は、本プラント内のユーティリティ設備の排ガスからCO
2を回収するように構成されている。これにより、熱回収装置3と昇温装置4との間のラインL
3上の改質ガス中のCO/CO
2比を低下すると共に、ユーティリティ設備にて生じた排ガス中のCO
2を効率的に利用して製造効率を向上し、且つCO
2の削減に貢献することができる。
ユーティリティ設備は、CO
2を含有するガスを排出するものであればよく、限定されない。ユーティリティ設備としては、スチーム系統に設置された補助ボイラ、電力供給用のGTG(Gas Turbine Generator)、プラントスタートアップ用の直火式加熱炉(Fired Heater)等を挙げることができる。なお、ユーティリティ設備は、本プラントのものに限定されない。例えば、ユーティリティ設備として、本プラントに併設された他のメタノールプラント、アンモニアプラント等に設置されたユーティリティ設備を共有できる。更には、ユーティリティ設備の代わりに、プラント内外に設置されてCO
2を含有するガスを排出する水蒸気改質器を採用してもよい。これにより、他のプラントを含めたメタノールとアンモニア等との併産に要するCO
2を効率的に利用して、それらの製造効率を向上し、且つCO
2の削減に貢献することができる。
【0044】
また、CO
2回収装置は、排ガスからCO
2を回収できるものであればよく、限定されない。より具体的には、CO
2回収装置は、CO
2を吸収するアミン吸収液、又はDDR型、CHA型等のゼオライトからなる無機分離膜を備えたCO
2分離塔とすることができる。また、CO
2回収装置は、本プラントに配置した設備又は装置に限定されない。例えば、本プラントに併設された他のメタノールプラント又はアンモニアプラント等に設置されたCO
2回収装置を共有することができる。これにより、他のプラントを含めたメタノール、アンモニア等の製造効率を向上できる。
【0045】
また、本実施の形態のメタノール製造方法は、前述したCO/CO
2比低下工程において、第一実施の形態と主に相違する。
CO/CO
2比低下工程では、熱回収工程後、且つ昇圧工程前の改質ガスに、本プラント内のユーティリティ設備の排ガスからCO
2回収工程にて回収したCO
2を導入し、改質ガス中のCO/CO
2比を下げる。
CO
2回収工程では、ユーティリティ設備にて生じた排ガスからCO
2を回収し、CO
2を主に含有するCO
2リッチガスを生成する。CO
2回収工程としては、例えば、化学吸収法、膜分離法等を挙げることができる。化学吸収法では、排ガス中のCO
2をアミン吸収液に吸収させた後、加熱してCO
2を吸収液から分離・回収する。また、膜分離法では、排ガスを無機分離膜に透過して選択的にCO
2を分離・回収する。CO
2回収工程により、CO/CO
2比率の低い、すなわちCO
2の純度が高いCO
2リッチガスを得ることできるため、改質ガス中のCO/CO
2比の制御を容易とすることができる。
【0046】
[第三実施の形態]
以下、本発明に係るメタノール製造システム及び製造方法の第三実施の形態について、
図3を参照にして詳細に説明する。なお、第一実施の形態及び第二実施の形態と同じ構成は、同一の符号を付すと共に、説明を省略する。
本実施の形態に係るメタノール製造システム300は、前述したCO/CO
2比低下装置L
6に替えて、CO/CO
2比低下装置9を備える点において、第一実施の形態と主に相違する。
【0047】
CO/CO
2比低下装置9は、シフト反応器10を備え、改質装置1の後流且つ熱回収装置3の前流にて、改質ガスの一部をシフト反応によりCO
2リッチガスとし、還流するように構成されている。これにより、改質ガス中のCO/CO
2比低下させる。
また、CO/CO
2比低下装置9は、ラインL
2上の改質ガスをシフト反応器10に導入するためのラインL
9と、シフト反応器10で生じたガスをラインL
2上に還流するためのラインL
10とを備える。
【0048】
また、本実施の形態のメタノール製造方法は、前述したCO/CO
2比低下工程において、第一実施の形態と主に相違する。
CO/CO
2比低下工程では、改質工程後の改質ガスをCO/CO
2比低下装置9に導入し、下記式(6)に表されるように、シフト反応器10にてシフト反応により水蒸気(H
2O)とCOとからCO
2と水素を生成する。また、シフト反応の発熱によりCO
2リッチガスは高温となるため、本工程では、改質工程後のCO/CO
2比を低下すると共に、熱回収工程で回収する熱量を増加することができる。シフト反応に要する反応温度は、例えば200〜400℃であり、反応圧力は2.0〜4.0MPaとすることができる。
【0050】
シフト反応工程にて用いる水蒸気は、改質工程での副反応により生成し、改質ガス中に含有している。水蒸気が不足しているならば、熱回収装置3、昇圧装置4及び/又は本プラント外の装置にて過剰量となった水蒸気を導入できる。本プラント外の装置とは、例えばプラントに併設したアンモニアプラントに設置した補助ボイラ等である。これにより、プラント外の水蒸気をシステムに効率よく使用できる。
またシフト反応工程にて生成した水素は、熱回収工程後の改質ガスに導入して、生成工程のメタノール合成に用いることができる。生成工程にて水素が余剰となる場合、例えば図示しない分離膜を設けて、改質ガスから水素を分離し、この水素を改質装置1に還流して改質工程に用いることもできる。これにより、酸素プラント2から供給する酸素量を低減して、本プラント内外の水素をメタノール製造に効率よく使用できる。
【0051】
なお、前述した実施の形態では、それぞれ代替的にCO/CO
2比低下装置及びCO/CO
2比低下工程を説明した。本発明はこれに限定されない。例えば、CO/CO
2比低下装置L
6、CO/CO
2比低下装置L
8、CO/CO
2比低下装置9のうちの二つを設置してこれらのCO/CO
2比低下工程を併用してもよく、全てのCO/CO
2比低下装置を設置して全てのCO/CO
2比低下工程を併用してもよい。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例を説明することにより、本発明の効果を明らかにする。本発明に係るメタノール製造システム及び製造方法は、本例によって制限されない。
【0053】
[試験例1]
改質装置として無触媒部分酸化器を用い、反応装置として固定床型の反応器を用い、第一実施の形態のCO/CO
2比低下装置を備えないメタノールプラントにて、メタノール合成の際の反応器内で局所的に生じた温度の最大値を測定した。
改質装置内の反応温度を1300℃とし、反応圧力を4.0MPaとした。反応装置内の反応温度を250℃とし、反応圧力を10MPaとした。
【0054】
[試験例2]
改質装置として無触媒部分酸化器を用い、反応装置として固定床型の反応器を用い、第一実施の形態のCO/CO
2比低下装置を備えたメタノールプラントにて、メタノール合成の際の反応器内で局所的に生じた温度の最大値を測定した。
改質装置内の反応温度及び反応圧力を試験例1と同様とし、反応装置内の反応温度を250℃とし、反応圧力を10MPaとした。また、CO/CO
2比低下装置により、反応装置の前流の改質ガスのCO/CO
2比を4.0とした。
【0055】
[試験例3]
改質装置として無触媒部分酸化器を用い、反応装置としてSPCを用い、第一実施の形態のCO/CO
2比低下装置を備えたメタノールプラントにて、メタノール合成の際の等温反応器内で局所的に生じた温度の最大値を測定した。
改質装置内の反応温度及び反応圧力を試験例1と同様とし、反応装置内の反応温度を250℃とし、反応圧力を10MPaとした。また、CO/CO
2比低下装置により、反応装置の前流の改質ガスのCO/CO
2比を4.0とした。
【0056】
試験例1の反応装置にてメタノールの合成で生じた局所的な温度の最大値は500℃であり、試験例2の反応装置にてメタノールの合成で生じた局所的な温度の最大値は350℃であり、試験例3の反応装置にてメタノールの合成で生じた局所的な温度の最大値は270℃であった。
【0057】
結果より、CO/CO
2比低下装置を備えてCO/CO
2比低下工程を実施した場合(試験例2)は、試験例1よりも、反応器内にて生じる局所的な温度を低く抑えて、生成装置に与える負荷を低減できることを確認した。更に、試験例2の生成装置をSPCとしてCO/CO
2比低下工程を実施した場合(試験例3)は、試験例2よりも、反応器内にて生じる局所的な温度を低く抑えて、生成装置に与える負荷を低減できることを確認した。