(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引き戸装置の美観を向上させるためには、壁体に対する鴨居のチリ(壁体の一面及び他面夫々からの鴨居の突出量)を均等にすることが望ましい。
ところが、壁体が薄い場合、チリを均等にすると、鴨居及び案内レールを共締めするネジを、壁体の厚み方向中央部付近にネジ込むことができない場合がある。この場合、鴨居及び案内レールを十分な締め付け強度で壁体にネジ留めすることができないという問題が生じる。
そこで、引き戸装置を施工する作業者は、鴨居の配置位置を壁体の厚み方向にずらすことで問題に対処する。しかしながら、この対処ではチリが不均等になるので、引き戸装置の美観が損なわれる。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、壁体の厚薄に関わらず、壁体に対する鴨居のチリを均等にすることができる引き戸装置、引き戸吊り下げ装置、及び引き戸装置の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態に係る引き戸装置は、上吊り式の引き戸装置において、壁体に設けられている開口の上縁部に下側から
ネジを用いてネジ留めされている鴨居と、該鴨居に下側から
前記ネジとは別体のネジを用いてネジ留めされている案内レールと、該案内レールから、横移動可能に吊り下げられている引き戸とを備え
、前記別体のネジは前記鴨居から前記開口の上縁部に向けて突出していないことを特徴とする。
【0008】
本実施の形態に係る引き戸装置は、前記鴨居は、軸長方向を上下方向とするナットを、下方への脱落不可に保持しており、前記案内レールは、前記ナットに螺合する
前記別体のネジにより前記鴨居にネジ留めされていることを特徴とする。
【0009】
本実施の形態に係る引き戸装置は、前記鴨居には、上下方向に貫通する挿入孔、及び、該挿入孔の開口位置を含めて上面に形成された収容凹部が設けられ、前記ナットは筒状をなし、該ナットの軸長方向の一端部に、外向きに張り出すフランジが周設されており、前記ナットを、軸長方向の他端部を下向きとして前記挿入孔に挿入し、前記フランジを前記収容凹部に収容して前記鴨居に保持させてあることを特徴とする。
【0010】
本実施の形態に係る引き戸装置は、前記ナットは、前記鴨居に係止することによって共回りを防止する回り止めを有することを特徴とする。
【0011】
本実施の形態に係る引き戸装置は、前記鴨居の下面には、前記鴨居の長さ方向に延びるレール嵌込溝が設けられており、前記案内レールは、前記レール嵌込溝に嵌め込まれていることを特徴とする。
【0012】
本実施の形態に係る引き戸装置は、前記案内レールは、前記鴨居に接触する接触部と、該接触部に連続し、前記鴨居をネジ留めする
前記ネジのネジ頭を回避するための回避部とを有することを特徴とする。
【0013】
本実施の形態に係る引き戸装置は、前記鴨居は木材であり、前記鴨居をネジ留めする
前記ネジはトラスネジであることを特徴とする。
【0014】
本実施の形態に係る引き戸吊り下げ装置は、引き戸を吊り下げる引き戸吊り下げ装置において、壁体に設けられている開口の上縁部に下側から
ネジを用いてネジ留めされる鴨居と、該鴨居に下側から
前記ネジとは別体のネジを用いてネジ留めされ、前記引き戸を横移動可能に吊り下げる案内レールとを備え
、前記別体のネジは前記鴨居から前記開口の上縁部に向けて突出しないことを特徴とする。
【0015】
本実施の形態に係る引き戸装置の施工方法は、上吊り式の引き戸装置の施工方法において、壁体に設けられている開口の上縁部に、
ネジを用いて下側から鴨居をネジ留めし、該鴨居に、
前記ネジとは別体のネジを用いて下側から案内レールをネジ留めし、該
案内レールのネジ留めの際に、前記別体のネジが前記鴨居から前記開口の上縁部に向けて突出しないようにし、前記案内レールに、横移動可能に引き戸を吊り下げることを特徴とする。
【0016】
本実施の形態にあっては、壁体に設けられている開口の上縁部に鴨居がネジ留めされ、この鴨居に案内レールがネジ留めされる。故に、鴨居のネジ留め位置を、案内レールの配置位置とは無関係に決定することができる。従って、壁体の厚薄に関わらず、壁体に対する鴨居のチリを均等にすることができる。
【0017】
本実施の形態にあっては、鴨居に保持されているナットと、案内レールを鴨居に留めるネジとが螺合する。故に、ネジが鴨居に直接的にネジ込まれる場合よりも、鴨居に対する案内レールの取り付け強度を高めることができる。
【0018】
本実施の形態にあっては、挿入孔及び収容凹部が鴨居に設けられている。挿入孔にはナットが挿入され、ナットが有するフランジは、収容凹部の内面によって支持される。つまり、鴨居は簡易な構成でナットを保持することができる。
ナットのフランジは収容凹部に収容される。故に、フランジが壁体に干渉して鴨居のネジ留めを阻害する虞がない。
【0019】
本実施の形態にあっては、ナットが回り止めを有している。故に、案内レールのネジ留めの際にネジとナットとが共回りする虞がない。従って、案内レールのネジ留めの作業性を向上させることができる。
【0020】
本実施の形態にあっては、案内レールが、鴨居に設けられているレール嵌込溝に嵌め込まれている。故に、案内レールを目隠しすることができる。従って、引き戸装置の美観を向上させることができる。
【0021】
本実施の形態にあっては、回避部が設けられているので、鴨居をネジ留めするネジのネジ頭が案内レールに干渉して案内レールのネジ留めを阻害する虞がない。
【0022】
本実施の形態にあっては、木材(無垢材又は木質材)である鴨居をネジ留めする場合に、トラスネジが使用される。トラスネジのネジ頭は大きく、鴨居の座面に全面で接触するので、トラスネジの締め付け力を分散することができる。この結果、トラスネジの締め付けに伴う鴨居の損傷を抑制しつつ、鴨居を強固にネジ留めすることができる。
【0023】
本実施の形態にあっては、鴨居を壁体にネジ留めした後で、案内レールを鴨居にネジ留めするという手順で、本実施の形態の引き戸装置が施工される。
仮に、案内レールを鴨居にネジ留めした後で鴨居を壁体にネジ留めする場合、鴨居にネジ留めされている案内レールが、鴨居のネジ留め作業を阻害する虞がある。
つまり、本実施の形態の手順で施工すれば、鴨居のネジ留め作業の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本実施の形態の引き戸装置、引き戸吊り下げ装置、及び引き戸装置の施工方法による場合、鴨居のネジ留め位置を、案内レールの配置位置とは無関係に決定することができる。従って、壁体の厚薄に関わらず、壁体に対する鴨居のチリを均等にすることができる。この結果、引き戸装置の美観を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0027】
実施の形態 1.
図1は、実施の形態1に係る引き戸装置の構成を略示する正面図である。
図2は、引き戸装置の構成を略示する断面図である。
図3は、
図2の要部拡大図であり、引き戸装置の上部の構成を示している。
図中1は上吊り式の引き戸装置である。引き戸装置1は、鴨居2、案内レール3、及び引き戸4を備えている。鴨居2は、建築物の壁体5にネジ留めされている。案内レール3は、鴨居2にネジ留めされている。引き戸4は、案内レール3から吊り下げられている。案内レール3に沿って引き戸4が横移動することにより、壁体5に設けられている開口50が開閉される。
【0028】
図4は、鴨居2、及び壁体5の構成を略示する正面図である。
図5は、鴨居2の構成を略示する斜視図である。
図6は、
図5の要部拡大図である。
まず、
図4を参照しつつ、壁体5の構成について述べる。
壁体5の両面は、壁板51,52によって覆われている(
図3参照)。壁板51,52夫々は、例えば外面が化粧シートに覆われた石膏ボードである。
【0029】
図4に示すように、開口50は縦長の矩形状をなす。壁体5は、2本の柱53,53及びまぐさ54を更に備えている。開口50の周縁部は、柱53,53、まぐさ54、及び建築物の床Fによって構成されている。
各柱53は、矩形断面を有する棒材である。柱53は、例えば木材(無垢材又は木質材)である。柱53は、床Fに垂直に立てられている。柱53,53は、左右方向に離隔配置されている。柱53,53には、まぐさ54が架け渡されている。
まぐさ54は、矩形断面を有する棒材である。まぐさ54は、例えば木材である。まぐさ54は、床Fに平行である。まぐさ54は、開口50の上縁部を構成している。
【0030】
次に、引き戸装置1の構成について述べる。
図5に示すように、鴨居2は、矩形断面を有する棒材である。鴨居2の幅は、鴨居2の長さ方向の一端部から中央部まで狭く、長さ方向の中央部から他端部まで広い。
図6は、鴨居2の幅狭側の長さ方向端部を示している。
【0031】
図3及び
図6に示すように、鴨居2の一面2aには、コ字溝状のレール嵌込溝21が設けられている。一面2aは、鴨居2をまぐさ54にネジ留めする場合に下面となすべき面である。
レール嵌込溝21は、鴨居2の全長に亘って延びている。
レール嵌込溝21の内底面には、レール嵌込溝21の全長に亘って、コ字溝22が設けられている。コ字溝22は、レール嵌込溝21の幅方向中央部に配されている。
【0032】
鴨居2には、挿入孔23が設けられている。挿入孔23は、一面2aと一面2aの裏側の他面2bとの対面方向に鴨居2を貫通する。挿入孔23の一方の開口は、コ字溝22の内底面における幅方向中央部に位置している。挿入孔23は複数個、鴨居2の長手方向に適長離隔して並設されている。
【0033】
他面2bには、鴨居2の全長に亘って、コ字溝状の収容凹部24が設けられている。収容凹部24の幅は、レール嵌込溝21の幅より狭く、コ字溝22の幅より広い。収容凹部24は、コ字溝22の裏側に位置している。挿入孔23の他方の開口は、収容凹部24の内底面における幅方向中央部に位置している。
【0034】
鴨居2は、ナット25を保持している。
ナット25は円筒状をなす。ナット25の軸長方向一端部には、外向きに張り出すフランジ251が周設されている。
ナット25は、収容凹部24側から挿入孔23に挿入されている。ナット25の軸長方向他端部は、挿入孔23に収容され、フランジ251は、収容凹部24に収容されている。フランジ251は、収容凹部24の内底面における挿入孔23の開口周縁に係合している。フランジ251の厚みと収容凹部24の深さとは同程度である。故に、収容凹部24に収容されたフランジ251の外面は、鴨居2の他面2bと面一である。
フランジ251は、複数個の爪252,252,…を有する。各爪252は、収容凹部24の内底面に食い込んでいる。爪252,252,…は、鴨居2に係止する回り止めである。
【0035】
鴨居2には、ネジ通し孔26が設けられている。ネジ通し孔26は、レール嵌込溝21の内底面から、鴨居2の他面2bまで貫通している。ネジ通し孔26は、コ字溝22及び収容凹部24夫々よりも、鴨居2の幅広側の長さ方向端部における幅方向中心側に設けられている。ネジ通し孔26は複数個、長手方向に適長離隔して並設されている。
【0036】
図7は、鴨居2のネジ留めを説明する斜視図である。
引き戸装置1を施工する作業者は、鴨居2をまぐさ54にネジ留めする。
鴨居2のネジ留めのために、作業者は、一面2aを下側に向け、鴨居2の幅狭側の長さ方向端部を左側に向ける。
次に、作業者は、チリ(壁体5の壁板51,52夫々からの鴨居2の突出量)を均等にして、鴨居2の他面2bをまぐさ54の下面に押し当てる。各ネジ通し孔26は、まぐさ54の下面における幅方向(壁板5の厚み方向)の非端部に臨む。
【0037】
次いで、作業者は、留めネジ27,27,…を用いて、まぐさ54に下側から鴨居2をネジ留めする。各留めネジ27は、ネジ通し孔26,26,…を下側から貫通して、まぐさ54に適切にネジ込まれる。故に、鴨居2を十分な締め付け強度でまぐさ54にネジ留めすることができる。従って、鴨居2のまぐさ54からの脱落を抑制することができる。
【0038】
鴨居2にはネジ通し孔26,26,…が設けられているので、鴨居2のネジ留めに際して、鴨居2におけるネジ留め位置を作業者が容易に把握することができる。
特に、鴨居2が工場で製造され、工場出荷時にネジ通し孔26,26,…が予め鴨居2に設けられている場合には、作業者が鴨居2におけるネジ留め位置を決定する必要がない。
【0039】
図3及び
図7に示すように、留めネジ27はトラスネジであることが望ましい。トラスネジのネジ頭は大きく、鴨居2の座面に全面で接触する。故に、留めネジ27の締め付け力を分散することができる。この結果、留めネジ27の締め付けに伴う鴨居2の損傷を抑制しつつ、鴨居2を強固にネジ留めすることができる。
【0040】
図3に示すように、挿入孔23は鴨居2を上下に貫通している。挿入孔23の上面(他面2b)には、挿入孔23…の開口位置を含めて収容凹部24が形成されている。
まぐさ54にネジ留めされた鴨居2は、軸長方向を上下方向とするナット25を、下方への脱落不可に保持している。ナット25は、軸長方向一端部に設けられているフランジ251が収容凹部24に収容され、軸長方向の他端部を下向きとして挿入孔23に挿入されることによって、鴨居2に保持されている。ナット25のフランジ251が収容凹部24の内底面に係合しているので、ナット25の下方への脱落を防止することができる。
ナット25のフランジ251は、鴨居2の他面2bから上側に突出していない。従って、フランジ251がまぐさ54に干渉して鴨居2のネジ留めを阻害する虞がない。
【0041】
図1、
図4、及び
図5に示すように、引き戸装置1は、縦枠61,62を更に備える。縦枠61,62夫々は、例えば木材である。
縦枠61は、矩形断面を有する棒材である。縦枠61の一面61aには、戸じゃくり611が設けられている。戸じゃくり611は、縦枠61の全長に亘る矩形溝状をなす。
縦枠62は、矩形断面を有する棒材である。縦枠62の一面62aには、戸じゃくり621が設けられている。戸じゃくり621は、縦枠62の全長に亘る矩形溝状をなす。縦枠62の一面62aは、縦枠61の一面61aよりも幅広である。
【0042】
縦枠61は、鴨居2に対して縦勝ちに配される。縦枠61は、一面61aの上端部を鴨居2の幅狭側の長さ方向端面に対面させ、一面61aの裏面を左側の柱53の右面に対面させて、左側の柱53に右側からネジ留めされる。
同様に、縦枠62は、鴨居2に対して縦勝ちに配される。縦枠62は、一面62aの上端部を鴨居2の幅広側の長さ方向端面に対面させ、一面62aの裏面を右側の柱53の左面に対面させて、右側の柱53に左側からネジ留めされる。
縦枠61の戸じゃくり611と縦枠62の戸じゃくり621とは左右方向に対向配置される。
【0043】
図8は、案内レール3のネジ留めを説明する断面図である。
図9は、同斜視図である。
図3、
図8、及び
図9に示すように、案内レール3は、中空の二等辺三角形状の断面を有する棒材である。案内レール3は、例えばアルミニウム製である。
案内レール3の底辺部分には、案内レール3の全長に亘って、スリット31が設けられている。スリット31は、案内レール3の幅方向中央部に配されている。
【0044】
案内レール3の頂点部分には、案内レール3の全長に亘って、接触部32が設けられている。接触部32の外面は、適幅に亘って平坦化されている。
接触部32の幅方向中央部には、ネジ通し孔33が設けられている。ネジ通し孔33はスリット31に臨む。ネジ通し孔33は複数個、案内レール3の長さ方向に適長離隔して並設されている。
【0045】
案内レール3の内面には、車輪受け34,34が設けられている。車輪受け34,34は、スリット31の幅方向両側に1つずつ配されている。各車輪受け34は溝状をなす。車輪受け34は、案内レール3の全長に亘っている。
以下では、案内レール3の2等辺部分を、傾斜部35,36という。傾斜部35は、接触部32の幅方向一側に連続しており、傾斜部36は、接触部32の幅方向他側に連続している。
【0046】
案内レール3の底辺部分における傾斜部35側の端部には、垂下片37が突設されている。垂下片37の突設方向は、接触部32の外面に直交し、且つ、接触部32から離隔する方向である。垂下片37は、案内レール3の全長に亘っている。
【0047】
鴨居2のネジ留め後、作業者は、案内レール3を鴨居2にネジ留めする。
案内レール3のネジ留めのために、作業者は、案内レール3をレール嵌込溝21に下側から嵌め込む。この場合、作業者は、案内レール3の長手方向両端部を左右両側に向け、スリット31を下側に向け、垂下片37を、鴨居2の幅広側の長さ方向端部における幅方向中心側に向ける。
更に、作業者は、接触部32の外面(上面)を、鴨居2に接触させる。接触部32は、コ字溝22の開口を覆って、レール嵌込溝21の内底面に接触する。ネジ通し孔33,33,…は、コ字溝22を通して、挿入孔23,24,…に臨む。傾斜部35は、留めネジ27,27,…の下側に配される。ナット25のフランジ251の外面(上面)は、接触部32の外面と面一なので、鴨居2に接触する。
【0048】
案内レール3をレール嵌込溝21に嵌め込んだ後、作業者は、複数個の留めネジ38,38,…を用いて、鴨居2に案内レール3を下側からネジ留めする。この場合、各留めネジ38は、ネジ通し孔33を下側から貫通して、挿入孔23に挿入されているナット25に螺合する。
案内レール3のネジ留めの際に、留めネジ38とナット25とが共回りする虞はない。何故ならば、爪252,252,…が鴨居2に係止しているからである。また、下側から外力を受けたナット25が上側に位置ずれする虞はない。何故ならば、爪252,252,…が鴨居2に係止している上に、フランジ251が収容凹部24の内底面とまぐさ54の下面との間に挟まれているからである。以上の結果、案内レール3のネジ留めの作業性を向上させることができる。
【0049】
案内レール3は、ナット25,25,…に螺合する留めネジ38,38,…により鴨居2にネジ留めされている。故に、案内レール3が、鴨居2に直接的にねじ込まれるネジによって鴨居2にネジ留めされている場合に比べて、より大きな締め付け強度で案内レール3を鴨居2にネジ留めすることができる。従って、案内レール3の鴨居2からの脱落を抑制することができる。
【0050】
図に示す留めネジ38は皿ネジである。故に、案内レール3の内面におけるネジ通し孔33の内周面には、皿ザグリが設けてある。留めネジ38のネジ頭は、ネジ通し孔33の皿ザグリに沈むので、留めネジ38のネジ頭が接触部32の内面(下面)よりも下側に突出することはない。この結果、留めネジ38が後述する戸車44の横移動を阻害する虞はない。
【0051】
案内レール3にはネジ通し孔33,33,…が設けられているので、案内レール3のネジ留めに際して、案内レール3におけるネジ留め位置を作業者が容易に把握することができる。
特に、案内レール3が工場で製造され、工場出荷時にネジ通し孔33,33,…が予め案内レール3に設けられている場合には、作業者が案内レール3におけるネジ留め位置を決定する必要がない。
【0052】
傾斜部35,36は、接触部32から幅方向両側へ、レール嵌込溝21の内底面から離隔する向きに傾斜している。故に、レール嵌込溝21の内底面と傾斜部35,36との間には空隙が形成されている。
各留めネジ27のネジ頭は、レール嵌込溝21の内底面と傾斜部35との間に配されている。留めネジ27と案内レール3とは接触していない。即ち、傾斜部35は、留めネジ27のネジ頭を回避するための回避部として機能する。従って、留めネジ27のネジ頭が案内レール3に干渉して案内レール3のネジ留めを阻害する虞がない。
【0053】
図1及び
図2に示すように、引き戸4は矩形平板状をなす。
引き戸4の一面における一方の長辺部には、引き手41が取り付けられている。引き戸4の他面における一方の長辺部にも、引き手41が取り付けられている。引き手41,41は、引き戸4の厚み方向に対向配置されている。
引き戸4の長手方向一端側の端面には、案内溝42が設けられている。案内溝42は、引き戸4の短手方向に長い。
引き戸4の長手方向他端側の端部には、凹状の戸側連結部43が設けられている。引き戸4は戸側連結部43を2個有する。戸側連結部43,43は、引き戸4の戸先側及び戸尻側に1個ずつ配されている。
【0054】
作業者は、引き戸4を案内レール3から吊り下げる。このために、作業者は、案内レール3のネジ留め前に、案内レール3に戸車44を取り付ける。また、作業者は、床Fに案内突起45を取り付ける。
【0055】
図3に示すように、戸車44は、2個1組の車輪441,441と、支持部442と、車側連結部443とを備える。
各車輪441は、支持部442によって回転可能に支持されている。車輪441,441は、支持部442を介在して、車輪441,441の回転軸方向に対向配置されている。支持部442には、2個の車輪441,441が複数組、回転軸に直交する方向に適長離隔して並置されている。
車側連結部443は、支持部442から突出している。車側連結部443の突出方向は、車輪441,441の回転軸方向及び複数組の車輪441,441,…の並置方向夫々に対して直交している。車側連結部443の先端部44aは、戸側連結部43に嵌め込み可能である。車側連結部443の先端部44aが戸側連結部43に嵌め込まれることによって、車側連結部443と戸側連結部43とが連結される。
【0056】
案内レール3に戸車44を取り付ける場合、作業者は、戸車44の車輪441,441,…及び支持部442を案内レール3の内部に挿入して、車輪441,441,…を車輪受け34,34に載置する。また、作業者は、スリット31を通して車側連結部443を案内レール3の外部に突出させる。以上の結果、戸車44は、案内レール3に案内されて横移動(左右移動)可能に案内レール3に取り付けられる。
戸車44は、案内レール3に2個取り付けられる。従って、2個の戸車44,44が案内レール3の長手方向に並置される。
【0057】
図2に示すように、案内突起45は、平板451と突起本体452とを有する。突起本体452は円柱状をなし、平板451の一面に垂直に突設されている。
作業者は、突起本体452を上向きにして、平板451を床Fにネジ留めする。突起本体452は、案内レール3のスリット31に臨む。また、突起本体452は、開口50の左右方向中央部に配される。
【0058】
作業者は、引き戸4の引き手41,41側を縦枠61側に向け、引き戸4の案内溝42に案内突起45の突起本体452を挿入する。次いで、作業者は、引き戸4の戸側連結部43,43と戸車44,44の車側連結部443,443とを連結する。
以上の結果、引き戸4は、
図1及び
図2に示すように、案内レール3から吊り下げられる。且つ、引き戸4は、案内レール3に沿って横移動可能である。
【0059】
図2及び
図5に示すように、引き戸装置1は、中方立63及び袖壁パネル11を更に備える。
作業者は、鴨居2に中方立63を取り付ける。
中方立63は、矩形断面を有する棒材である。中方立63の一側面は、縦枠62の一面62aに対面する。中方立63の一端部は、鴨居2の段部にネジ留めされる。鴨居2、縦枠61,62、及び中方立63は、下向きに開放されたE字状の枠体を形成する。
作業者は、鴨居2、中方立63、縦枠62、及び床Fに囲繞された空間に、袖壁パネル11を配置する。袖壁パネル11は矩形平板状をなす。袖壁パネル11は、鴨居2、中方立63、縦枠62、及び床Fに取り付けられる。袖壁パネル11は、開口50の概ね右半分を閉塞する。
【0060】
使用者が引き戸4を左側へ移動させることによって、引き戸4の戸先が戸じゃくり611に嵌め込まれると、開口50が閉鎖される。一方、使用者が引き戸4を右側へ移動させることによって、引き戸4の戸尻が戸じゃくり621に嵌め込まれるまで開口50が開放される。
案内溝42と案内突起45との係合により、戸車44,44を中心とする引き戸4の揺動が抑制される。
引き戸4と袖壁パネル11及び中方立63夫々との間には、案内レール3から垂下する垂下片37が配されている。故に、引き戸4の揺動に伴う引き戸4と袖壁パネル11又は中方立63との接触が抑制される。
【0061】
以上のような引き戸装置1によれば、まぐさ54に鴨居2がネジ留めされ、この鴨居2に案内レール3がネジ留めされる。故に、鴨居2のネジ留め位置を、案内レール3の配置位置とは無関係に決定することができる。従って、壁体5の厚薄に関わらず、壁体5に対する鴨居2のチリを均等にすることができる。
また、案内レール3がレール嵌込溝21に嵌め込まれているので、案内レール3を目隠しすることができる。
以上の結果、引き戸装置1の美観を向上させることができる。
【0062】
本実施の形態の引き戸装置1の施工方法によれば、案内レール3は、鴨居2をまぐさ54にネジ留めした後で、鴨居2にネジ留めされる。
何故ならば、鴨居2をまぐさ54にネジ留めする前に、案内レール3を鴨居2にネジ留めした場合、ネジ通し孔26,26,…が案内レール3によって覆われてしまうからである。
仮に、案内レール3を部分的に切り欠いてネジ通し孔26,26,…を露出させた場合、案内レール3の車輪受け34も切り欠かれる虞がある。すると、車輪受け34の切り欠き部分を車輪441,441,…が乗り越える都度、騒音が発生する上に、引き戸4の円滑な横移動が阻害される。
【0063】
ところで、引き戸装置1には、引き戸4を吊り下げる引き戸吊り下げ装置7が含まれている。引き戸吊り下げ装置7は、少なくとも鴨居2及び案内レール3を備えた状態で、例えば工場から出荷される。鴨居2は、例えばナット25,25,…を保持した状態で、留めネジ27,27,…と共に施工現場に供給される。案内レール3は、留めネジ38,38,…と共に施工現場に供給される。
【0064】
なお、引き戸装置1は、ナット25を用いて案内レール3を鴨居2にネジ留めする構成に限定されない。例えば、ネジを直接的に鴨居2にネジ込むことによって案内レール3が鴨居2にネジ留めされてもよい。
【0065】
ナット25は、フランジ251を有していない構成でもよい。フランジ251を有していない場合、鴨居2に収容凹部24を設ける必要はない。換言すれば、鴨居2は、フランジ251と収容凹部24の内底面との係合とは異なる手段でナット25を保持してもよい。
鴨居2によるナット25の保持は、例えば、挿入孔23の内周面に、ナット25の周縁部を下側から支持する支持段部が設けられていることによるものであってもよい。又は、外周面に雄ネジを有するナット25が、挿入孔23にネジ込まれることによるものであってもよい。
収容凹部24は、コ字溝状に限定されない。例えば、収容凹部24は、挿入孔23毎に設けられた挿入孔23の同心円状でもよい。
【0066】
ナット25の回り止めは、例えば挿入孔23の内周面とナット25と外周面との間に注入された室温硬化型の接着剤でもよい。
鴨居2は、レール嵌込溝21又はコ字溝22が設けられていない構成でもよい。
工場出荷時の鴨居2には、ネジ通し孔26,26,…が設けられていなくてもよい。この場合、作業者は、引き戸装置1の施工時に、ネジ通し孔26,26,…を形成する。このために、工場出荷時の鴨居2に、ネジ通し孔26,26,…の配置位置を決定するための目印(例えばレール嵌込溝21の内底面に形成された溝)が設けられていてもよい。
【0067】
案内レール3の回避部は、傾斜部35に限定されず、例えば留めネジ27のネジ頭を収容可能な凹部であってもよい。
案内レール3は、従来の引き戸装置を構成する案内レールを流用したものでもよい。
鴨居2は木材に限定されない。案内レール3はアルミニウム製に限定されない。
【0068】
次に、実施の形態2,3を説明する。実施の形態2,3の引き戸装置1は、実施の形態1の引き戸装置1と略同様の構成である。以下では、実施の形態1との差異について説明し、その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
【0069】
実施の形態 2.
図10は、実施の形態2に係る引き戸装置1の構成を略示する正面図である。
図10は、実施の形態1の
図1に対応する。
壁体5は、壁板51,52と、2本の金属柱55,55及び金属梁56とを備えている。
【0070】
各金属柱55は、床Fに垂直な棒材である。金属柱55は、例えば鉄製である。金属柱55,55は、左右方向に離隔配置されている。
左側の金属柱55の右側部は、被覆板材551によって覆われている。被覆板材551に覆われた金属柱55は、開口50の左縁部を構成している。
右側の金属柱55の左側部は、被覆板材552によって覆われている。被覆板材552に覆われた金属柱55は、開口50の右縁部を構成している。
金属柱55,55には、金属梁56が架け渡されている。
金属梁56は、床Fに平行な棒材である。金属梁56は、例えば鉄製である。金属梁56の下部は、被覆板材561によって覆われている。被覆板材561に覆われた金属梁56は、開口50の上縁部を構成している。
【0071】
被覆板材551,552,561夫々は、例えば平板状の木材である。
引き戸装置1の鴨居2は被覆板材561にビス留めされる。縦枠61,62は被覆板材551,552にビス留めされる。
【0072】
金属柱55,55及び金属梁56には、縦枠61,62及び鴨居2を直接的にビス留めすることができない場合がある。この場合、作業者は、引き戸装置1の施工に先立って、金属柱55,55及び金属梁56に被覆板材551,552,561を取り付ける。被覆板材551,552,561は、例えば作業者が施工現場で適宜の板材から形成したものである。
金属柱55,55及び金属梁56と縦枠61,62及び鴨居2との間に被覆板材551,552,561を介在させることによって、作業者は、実施の形態1と同様に引き戸装置1を施工することができる。
【0073】
実施の形態 3.
図11は、実施の形態3に係る引き戸装置1が備える案内レール3のネジ留めを説明する断面図である。
図11は、実施の形態1の
図8に対応する。
本実施の形態の案内レール3は、中空の矩形状の断面を有する棒材である。
鴨居2に設けられているレール嵌込溝21の内底面には、ネジ頭収容溝28が設けられている。ネジ頭収容溝28は、鴨居2の全長に亘っている。ネジ頭収容溝28は、コ字溝22及び収容凹部24夫々よりも、鴨居2の幅広側の長さ方向端部における幅方向中心側に設けられている。ネジ通し孔26は、ネジ頭収容溝28の内底面から、鴨居2の他面2bまで貫通している。
【0074】
留めネジ27のネジ頭は、ネジ頭収容溝28に収容される。この場合、留めネジ27のネジ頭は、レール嵌込溝21の内部に突出しない。故に、留めネジ27と案内レール3とは接触していない。従って、留めネジ27のネジ頭が案内レール3に干渉して案内レール3のネジ留めを阻害する虞がない。
なお、鴨居2には、ネジ通し孔26毎に深ザグリが設けられていてもよい。この場合、留めネジ27のネジ頭は深ザグリに沈むので、留めネジ27のネジ頭が案内レール3に干渉することがない。
【0075】
実施の形態1〜3の引き戸装置1は片引き戸型であるが、これに限定されない。引き戸装置1は、例えば引き違い戸型又は両引き戸型でもよい。
【0076】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
また、本発明の効果がある限りにおいて、引き戸装置1又は引き戸装置1の施工方法に、実施の形態1〜3に開示されていない構成要素が含まれていてもよい。
各実施の形態に開示されている構成要件(技術的特徴)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせによって新しい技術的特徴を形成することができる。