(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663259
(24)【登録日】2020年2月18日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20200227BHJP
G01R 33/07 20060101ALI20200227BHJP
H01L 43/06 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
G01R33/02 V
G01R33/07
H01L43/06 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-51494(P2016-51494)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-166924(P2017-166924A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岸 松雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 未英
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寛
(72)【発明者】
【氏名】海老原 美香
(72)【発明者】
【氏名】飛岡 孝明
【審査官】
永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/119569(WO,A1)
【文献】
特開2007−263951(JP,A)
【文献】
特開2008−55663(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0367813(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01R 33/07
G01R 33/06
G01R 15/20
H01L 43/06
H01L 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のホール素子が設けられた半導体基板と、前記半導体基板の上に保護層を介して設けられた磁気収束機能を備えた磁性体とを有する半導体装置であって、
前記磁性体の縦断面における外形形状は外周部を有し、
前記外周部の少なくとも一部は、曲面形状を有する部分と前記曲面形状を有する部分につながっている前記半導体基板と概略平行な部分を有し、
前記概略平行な部分と前記保護層との間に間隙を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記曲面形状を有する部分が略1/4円形形状を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記磁性体の縦断面の略1/4円形形状の終端部のうち前記半導体基板に近いほうの一終端部における接線方向が前記半導体基板に対して概略垂直の関係にあることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記磁性体の縦断面の外周部の一部をなす略1/4円形形状の終端部のうち前記半導体基板に近いほうの一終端部につながる部分として、前記半導体基板と平行な部分を有し、この平行な部分が、前記ホール素子の領域を少なくとも部分的に覆う部分を有することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記保護層と前記磁性体とを接続する下地層がさらに設けられ、前記下地層が前記ホール素子領域を覆っていないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
複数のホール素子が設けられた半導体基板と、前記半導体基板に設けられた磁気収束機能を有する磁性体とを備えた半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板の表面に前記複数のホール素子を埋め込み形成する工程と、
前記ホール素子上に絶縁物からなる保護層を形成する工程と、
導電性膜を形成する工程と、
ホール素子領域に掛からない開口を有するめっきレジスト層を形成する工程と、
めっきレジスト開口部上部のレジスト端面より磁性体を湿式めっき法によりレジスト垂直方向および平行方向に対して等方的に成長させる磁性体めっき工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を検出するための半導体装置とその製造方法に関するものである。より詳しくは、複数のホール素子とこの半導体装置近傍を通過する磁束を収束するための磁性体を備えることにより、2次元または3次元方向の磁気を感度良く検出できる半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホール効果により磁気を検出するための半導体装置は古くから知られており、更に、その感度や性能を高めたり、2次元または3次元方向からの磁気を検出したりするために、磁性体と組み合わせた半導体装置が考案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載のホール効果を用いた磁場方向センサは、複数のホール素子とこれらのホール素子領域上部に平らな形状を有する軟磁性体材料からなる磁気収束板が配置されている。
【0004】
この磁場方向センサでは、磁気収束板の端部がホール素子領域に配置されているので、磁気収束板より収束される磁束がホール素子表面近傍で、ホール素子に対して垂直方向に集中するため、ホール素子を通過する磁束密度が高くなり、その検出感度が高くなる。更に、複数個のホール素子を通過する磁束の強度をそれぞれ検出し、演算することにより磁束の方向とそれぞれの方向における強度を算出することができる。これにより、磁場方向センサに対する磁束の方向をこのセンサを基準とする座標軸に分解することが可能となる。単純なホール素子による磁気センサに対し、格段の性能向上を図ることができる。
【0005】
また、特許文献2に記載のホール効果を用いた磁気センサは、特許文献1と同様な構造と原理に基づいている。磁気収束板とこれを搭載している半導体基板との間に生じる材料の違いによる応力、特に、熱膨張差による応力がセンサ特性に大きく影響するため、この影響を小さくするための構造を有している。
【0006】
この目標を達成するため、この磁気センサでは、磁気収束板と半導体基板との間に下地層を形成し、この下地層の半導体基板に接続する面積を磁気収束板の面積より小さくするとともに、この下地層の少なくとも一部がホール素子領域を覆うような構造とすることを採用している。
また、特許文献2に記載のホール効果を用いた磁気センサでは、磁気収束板の縦断面における形状を規制することにより、その性能を向上することを採用している。
【0007】
図6は、従来の磁気センサである特許文献1に記載の磁気センサを説明するための図であり、主要部の縦断面図を示している。
図6(a)では、前記の下地層の面積を磁気収束板の面積より小さくした磁気センサを示しており、半導体基板101aの一表面近傍に埋め込まれ形成されているホール素子102aおよび102bの表面に絶縁保護層103が形成され、その表面にホール素子102a、102bを覆うように、下地層104が形成され、更にその上部に下地層104の面積より大きくなるように磁性材料からなる磁気収束板105aが形成されている。
【0008】
図6(b)および(c)では、磁気収束板105b、105cの端面方向に直線からなるテーパーを付けた構造を示している。
しかしながら、ホール素子領域上に応力を発生することとなる下地層や磁気収束板を直接的に接続することは、好ましいことではないことは明らかであり、素子性能改善のためにもホール素子領域上に下地層や磁気収束板等の構造体を形成することは避けるべき点であった。
【0009】
また、半導体基板に平行方向(面方向)に形成されているホール素子領域面に効率よく垂直に磁束を収束するためには、磁気収束板の端面がホール素子方向を向き、さらに磁気収束板のうち半導体基板に平行な方向部を通過する磁束が磁気収束板端部で半導体基板に対して垂直方向に効率良く偏向する構造となるような曲率を有することが好ましく、
図6(b)および(c)に示したテーパー構造では不完全であった。
【0010】
磁気収束板を有する磁気センサの作製方法は、特許文献2や特許文献3に記載されているように、フォトリソグラフィー法、気相めっき法および電解めっき法によっているが、直線テーパーを有する磁気収束板105bや105cを形成する方法として、フォトレジストによる電解めっき用の型としての形状規制が採用されている。
【0011】
一方、フォトリソグラフィー法と電解めっき法を組み合わせることにより、略1/4円形形状のめっき物を形成する方法が知られている(例えば、特許文献3)。
この方法によれば、断面形状において、略1/4円形形状を有する曲面を有する構造体を電解めっき法により形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−71381号公報
【特許文献2】国際公開第WO2007/119569号
【特許文献3】特開2008−55663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のごとく、ホール素子領域に下地層や磁気収束板等の構造体を搭載することは好ましいことではなく、ホール素子領域に直接構造体が無く磁気収束板がホール素子領域の直上に形成できる有効な手段がないという問題があった。
また、磁束をホール素子領域に垂直に偏向するための適切な構造を有する磁気収束板とその製造方法が望まれていた。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、半導体製造技術により作られる微細構造を有するホール素子と磁束をホール素子領域面に垂直かつ効率よく通過させることができる端面構造を有する磁気収束板を搭載した磁気センサを有する半導体装置とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る半導体装置は、複数のホール素子が設けられた半導体基板と、前記半導体基板上に設けられた磁気収束機能を有する磁性体とを有する半導体装置であって、前記半導体基板上の前記磁性体の縦断面外形形状において、その外周部の少なくとも一部に略1/4円形状を有する部分とこれとつながる部分として、前記半導体基板と略平行な部分を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、複数のホール素子が設けられた半導体基板と、前記半導体基板に設けられた磁気収束機能を有する磁性体とを備えた半導体装置の製造方法において、前記半導体基板の表面に前記複数のホール素子を埋め込み形成する工程と、前記ホール素子上に絶縁物からなる保護層を形成する工程と、導電性膜を形成する工程と、ホール素子領域に掛からない開口を有するめっきレジスト層を形成する工程と、めっきレジスト開口部上部のレジスト端より磁性体を湿式めっき法によりレジスト垂直方向および平行方向に対して等方的に成長させる磁性体めっき工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高感度を有する2次元または3次元方向からの磁気を検出するための磁気収束板を搭載した半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の主要部を示す図である。(a)は上方からの図であり、(b)は(a)のA−A′に沿った断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造工程のうち、(a)は保護層を形成する工程、(b)導電性膜を形成する工程、(c)および(d)はめっきレジスト層を形成する工程を縦断面図によりそれぞれ示した図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造工程のうち、(a)から(c)は磁性めっき形成の過程を縦断面図により順に示した図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造工程のうち、(a)はレジスト層剥離工程、(b)はエッチング工程を縦断面図によりそれぞれ示した図である。
【
図5】(a)および(b)は本発明の実施形態の半導体装置の別の形態の縦断面図をそれぞれ示した図である。
【
図6】従来の磁性体を搭載した半導体装置の主要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る第1の実施形態について、
図1から
図5を参照して説明する。
図1(a)は、本発明に係る半導体装置の表面上方からの概略を示す図であり、
図1(b)は
図1(a)に示したA−A′における縦断面図の概略を示す図である。
【0020】
半導体装置201は、シリコン基板からなる半導体基板202の表面に離間して形成された2つのホール素子203aおよび203bと、半導体基板202上を覆う絶縁性の保護層204と、ホール素子203aと203bと接触せずに、これらの間の絶縁性の保護層204の上に形成された下地層205と、下地層205の上に形成された磁性体206は、柱状部211と、柱状部211の周囲に設けられた、ひさし部207,207a、207bとからなる。
図1(a)に示すように、ひさし部207は平面視的に柱状部211の周囲にドーナツ状に形成され、断面視的には、
図1(b)に示すように、ひさし部207a、207bは略1/4円形形状の曲面を示しており、ひさし部の底面部210a、210bは端部209a、209bに至るまで、間隙208a、208bを介して絶縁性保護膜204と平行に設けられている。
【0021】
なお、ひさし部の端部209a、209bはホール素子203a、203bを間隙208a、208bを介して覆うように張り出している。このように柱状部211とひさし部207により磁性体206の外周はほぼ決定されている。また、下地層205は、間隙208a、208bによりホール素子203a、204bと接することなく形成されており、下地層205や磁性体206による応力を直接受けない構造となっている。
【0022】
さらに、間隙208a、208bでは、ホール素子203a、203bと磁性体206の一部を構成している底面部210a、210bが平行に対向しており、磁性体206に集められ、底面部210a、210bを通過する磁束がホール素子203a、203bへ垂直に出入りするようになるのでホール素子203a、203bでのホール効果を効率よく発揮することができるように配置してある。
【0023】
次に、このような、半導体装置201を作製するための製造工程を
図2から
図4に示す主要部の縦断面図により説明する。
まず、図示しないシリコン半導体製造プロセスによりシリコン半導体基板表面近傍に1辺が30μmの矩形の2つのホール素子203aおよび203bを埋め込み形成する工程を経た半導体基板202を準備する。この半導体基板202の表面に絶縁物からなる保護層204を形成する(
図2(a))。保護層204としては、酸化膜、窒化膜、酸窒化膜等の絶縁性無機化合物膜やポリイミド等の有機物からなる膜の単独もしくは複数の組み合わせからなる膜で構成することができるが、本実施の形態では最上層にポリイミド膜を用いた。
【0024】
図2(b)は、半導体基板202表面のうち保護層204表面上に導電性膜304を形成する工程を示した図であり、ここでは導電性膜304としてスパッタリング法により銅膜を500nm形成した。
【0025】
図2(c)および(d)は、めっきレジスト層を形成する工程を示した図であり、この工程では、半導体基板202の表面のうち導電性膜304表面にフォトレジスト305をコートし(
図2(c))、露光・現像によりレジスト開口部306を有するめっきレジスト層307を形成する(
図2(d))。フォトレジスト305のタイプとして、ポジタイプ、ネガタイプのいずれを用いてもよく、さらに、液状だけでなくドライフィルムのようなフィルム状フォトレジストを用いてもよい。本実施の形態では、液状ポジタイプフォトレジストをスピンコーターにより厚みが3μmとなるようにコートした。また、レジスト開口部306は、そのレジスト端部308a、308bとホール素子203a、203bのレジスト開口部306側での距離が5μmとなるようにした。
【0026】
図3は、磁性体めっき工程を示した図であり、
図3(a)は
図2(d)に示したレジスト開口部306内へ磁性体めっき406が形成される過程を示した図であり、
図3(b)は、
図2(d)に示したレジスト端部308a、308bに磁性体めっき407が至り、縦方向とレジスト層405表面に沿った方向に対して等方的な成長部408を形成する概要を示した図であり、
図3(c)は、所望とする成長量に至った磁性体206の形態を示した図である。磁性体206は形状は、レジスト開口部306の上に成長した柱状部211とその周囲を取り囲むひさし部207a、207bとから形成されていると言うことができる。縦断面図における外形形状である外周部も柱状部211とその周囲を取り囲むひさし部207a、207bによりほぼ決定されている。
【0027】
このように形成される磁性体めっき方法について述べる。磁性体めっき液として、スルファミン酸ニッケルとスルファミン酸第一鉄をそれぞれ、金属量として50g/L、5g/Lを含有し、同時に、PH調整剤としてのホウ酸、さらに光沢剤として水溶性有機物を含有するものを使用した。
図2(d)におけるレジスト開口部306に現れている導電性膜304上に、通電することにより、このめっき液から、鉄の含有量が20wt%となるようにニッケルと鉄の合金を析出させる。なお、鉄の含有量は、めっき液内のニッケルイオン濃度と第一鉄イオン濃度の比と、電気めっき中の電流密度の値により制御することができる。本実施の形態では、各イオン濃度が一定に保っていることから、電流密度を一定に保つため、めっき面積に応じて電流値を変化することにより、析出する磁性めっきの組成の安定化を図った。
【0028】
すなわち、めっき析出速度をVとすると、この値は電流密度に比例するので、電流密度を一定とすれば、めっき析出速度Vは一定となる。たとえば、本実施の形態のめっき液と析出物の関係では、電流密度を20mA/cm
2が最適条件であり、この場合、めっきはV=約0.4μm/分の速度で成長する。また、電流密度をI
dとすれば、めっきを構成する元素から求められる比例係数をkとして、
V=I
d×k
の関係となる。たとえば、本実施例の組成からなるニッケルと鉄の合金めっきでは、I
d=20mA/cm
2の時、V=約0.4μm/分であるから、k=0.02μm/mA/分ということになる。
【0029】
図3(a)では、電流密度20mA/cm
2にて、レジスト開口部306の面積に対応した一定の電流値で磁性体めっき406をレジスト層307の厚みである3μmの厚みにまで形成する。これに掛かるめっき時間は、
3÷0.4=7.5分
ということになるが、一般式としては、レジスト層307の厚みをY
1とし、めっきがこの厚みまで至る時間をt
1とすると、
t
1=Y
1÷V=Y
1÷(I
d×k)
で表される。
【0030】
また、レジスト開口部306は半径rを有する円形であるとし、その面積をS
1とすると、
S
1=π×r
2
であるから、この時の電流値をI
1とすると、
I
1=I
d×S
1=I
d×π×r
2
となる。
【0031】
磁性めっき406がさらに成長し、レジスト端部308a、308bに至ると、この部分から磁性めっき406は、縦方向(レジストに対して垂直方向)と横方向(レジスト面方向)に対して等方的に成長を始め、レジスト開口部よりも大きな磁性めっき407となる(
図3(b))。
【0032】
このとき、磁性めっき407の表面積は、レジスト開口部306の面積と、レジスト端部308a、308bから成長した略1/4円形形状部の表面積が加えられたものとなる。本実施の形態では、めっきレジスト開口部306が円形であることから、略1/4円形形状部の表面積は、めっき開始からの時間をtとすればレジスト層307を超えてからの時間はt
2=t−t
1であり、その時間で形成されるめっき厚みをY
2とすると、これが略1/4円形形状部の半径となるので、この部分の表面積をS
2とすると、
S
2=(2×π×Y
2÷4)×(2×π×r)=π
2×Y
2×r=π
2×V×t
2×r
=π
2×k×I
d×t
2×r=π
2×k×I
d×(t−t
1)×r
となり、レジスト開口部306の面積をS
1と加えた全表面積をSとすると、
S=S
1+S
2=π×r
2+π
2×k×I
d×(t−t
1)×r
となり、このときの電流値をI(t)とすると、
I(t)=S×I
d=I
d×(π×r
2+π
2×k×I
d×(t−t
1)×r)
となる。
【0033】
すなわち、本実施の形態である
図3(c)に示した磁性体206を一定の成長速度で形成するための具体的な電流設定は以下のようになる。形成すべき磁性体206の数をNとすると、時間0からレジスト層405厚みY
1まで、すなわち、時間t
1までは、電流値を
N×I
d×π×r
2
とし、
その後、所望とする大きさの磁性めっき409までは、電流値を
I(t)=N×I
d×(π×r
2+π
2×k×I
d×(t―t
1)×r)
の関係を維持して変化させることになる。
【0034】
めっきの終了は、めっきの成長量、すなわち、レジスト厚みとレジスト端部308a、308bからめっき端部411までの距離で決定する。レジスト端部308aからめっき端部209aまでの距離をXとすれば、レジスト端部308a、308bからめっきが成長を始める時間であるt
2=(t−t
1)とめっき速度Vを掛け合わせた値に等しいことから
X=V×t
2=V×(t−t
1)
となる。したがって、めっき終了時間tは
t=t
1+t
2=Y
1÷(I
d×k)+X÷V=Y
1÷(I
d×k)+X÷(I
d×k)
となる。
【0035】
本実施の形態では、めっき端部411をホール素子402a、402bの外側5μmと設定したことから、X=(5+30+5)=40μmとなる。I
d=20mA/cm
2、k=0.02μm/mA/分、t
1=7.5分であるから、めっき時間t
2は、
t
2=40÷(20×0.02)+7.5=107.5分
となる。
【0036】
以上のようにめっき条件を設定し、磁性体206を形成したところ、1/4円形形状を有したものとなり、かつ、組成もニッケル80wt%、鉄20wt%からなる理想的な形状を有したものとなった。
【0037】
図4は、レジスト層除去工程(
図4(a))と導電性膜エッチング工程(
図4(b))を示した図である。
図4(a)に示したレジスト層除去工程では、ポジ型フォトレジストからなるレジスト層307を専用剥離液で除去するが、この時、磁性体206のひさし部207aの底面部210aと半導体基板202本体表面上の導電性膜304との間にレジスト層307の厚みである3μmの隙間が形成される。
【0038】
図4(b)に示した導電性膜エッチング工程では、レジスト層除去工程で形成された間隙を利用して半導体基板202のうち表面に現れた銅からなる導電層膜304を湿式エッチングにより除去する。なお、湿式エッチング液としては、過硫酸アンモニウム水溶液にアンモニア水を加え、PHを12程度に調整したものを用いた。これにより、半導体基板202の表面に形成されているホール素子203a、203bを覆う保護層204との間に間隙208が形成される。また、半導体基板202と磁性体206との間には、導電層膜304のうちエッチングにより残された部分が下地層205として残り、半導体装置201が完成する。
【0039】
以上に示した製造方法によれば、レジスト開口部において、導電膜表面から析出・成長を開始する磁性体膜は、レジスト開口部を完全に埋め込み、レジスト厚みまで至ると、レジスト開口部端面より内側では垂直方向に成長し、レジスト端外側では、レジスト表面に対して垂直方向と平行方向に等方的に成長する。この部分では、レジスト端を中心とする略1/4円形形状の成長を開始するので、この部分における成長終了面の縦断面では、略1/4円形形状となり、レジスト表面ではレジスト面に沿って成長するため、半導体基板と平行な面となり、略1/4円形形状断面を有し、ホール素子領域において、ホール素子面に平行な面を同時に有する磁気収束板を形成することができる。
【0040】
さらに、めっきレジスト層を剥離し、磁気収束板の略1/4円形形状部下部の導電膜を含め、導電膜をエッチング除去することにより、ホール素子領域に下地膜や磁気収束板等の構造体が直接搭載されることが無い半導体装置を提供することができる。
【0041】
磁性体206のひさし部207aの底面部210aは、半導体基板202の表面と平行になっており、さらに、磁性体206のうちひさし部207aの先端部209aから半導体基板202へ降ろした垂線の位置は、ホール素子203aの一端部から5μmだけ外に出ており、間隙208aの内端部509はホール素子203aの他端部から5μm離れており、底面部210aがホール素子203aを完全に平行かつ完全に覆う位置関係となっている。
【0042】
このようにして作製された半導体装置201は、縦断面形状が略U字型を有する磁性体206を搭載することになり、優れた磁気収束性能を有するホール素子搭載半導体装置となる。すなわち、この半導体装置201近傍を通過する磁束は、ニッケル80wt%−鉄20wt%からなる優れた磁気収束性能を有する磁性体206で収束されて通過することになるが、その際、この磁性体206の形状が略U字型に近いことから、ホール素子203aおよび203bに平行である底面部210aおよび210bを通過することになるため、ホール素子203aおよび203bに対して垂直に通過することになる。このため、ホール効果が大きく発生し、素子としての感度が
図6に示した従来構造の半導体装置と比べ、格段の差が得られた。
【0043】
また、半導体装置201に対して、平行方向、すなわち、ホール素子203aおよび203bに対して平行方向の磁場は、磁性体206により偏向し、ホール素子203a、203bに対して垂直方向出入りすることになるが、ホール素子203aとホール素子203bとでは、その向きが反対方向になることから、ホール素子203aとホール素子203bからの出力の差を算出すれば、半導体装置201に対して平行方向の磁場成分を算出することができる。
【0044】
また、半導体装置201に対して、垂直方向、すなわち、ホール素子203aおよび203bに対して垂直方向の磁場は、磁性体206をそのまま通過することになり、ホール素子203a、203bに対しても、そのままの方向で垂直方向出入りし、その方向は、ホール素子203aとホール素子203bとで同じ方向となることから、ホール素子203aとホール素子203bからの出力の和を算出すれば、半導体装置201に対して垂直方向の磁場成分を算出することができる。
【0045】
以上から、本実施形態の例による縦断面形状が上に凸である逆U字型を有し、逆U字型を呈する部分の両端となるひさし部の下面を構成している底面部がホール素子と平行であり、かつ、当該底面部がホール素子上部に配置されている磁性体を搭載した半導体装置は、当該半導体装置の外部からの磁場を当該半導体装置に対して平行成分と垂直成分に分離し、かつ、高感度で出力することができる。
【0046】
なお、本実施形態の例では、
図1に示した逆U字型の端部の内側である底面部がホール素子全体を覆う例について記したが、
図5(a)に示したごとく逆U字型の端部209a、209bがホール素子203a、203bの領域内に掛かっているものでもよい。
【0047】
さらに、
図5(b)に示したごとく、磁性めっき全体の縦断面形状が、略半円形状あるいは略半楕円形状の断面形状のものでも同様の効果が得られる。この形状を有するめっきからなる磁性体は、
図2におけるレジスト層307の厚み、厚みレジスト開口部306の径、および、ホール素子203aと203bの位置関係を適宜設定し、さらに、磁性体206を形成するために使用するめっき液の組成を変えることに達成可能である。特に、有機系添加剤を工夫することにより、縦横等方的めっき成長により得られる略1/4円形形状めっき成長における縦横成長比を変えることができるので容易に得ることができる。
【0048】
さらに、本発明に係る半導体装置を実装・パッケージ化するに当たり、樹脂等でモールド・封止することがあるが、この際、磁性体ひさし部底面部とホール素子面との間に存在する間隙に樹脂等が充填されても、本発明に係る半導体装置の本質に係るものではなく、本発明に含まれることは明らかである。
【符号の説明】
【0049】
201 半導体装置
202 半導体基板
203a、203b ホール素子
204 保護層
205 下地層
206 磁性体
207、207a、207b ひさし部
208a、208b 間隙
209a、209b 端部
210a、210b 底面部
211 柱状部
304 導電性膜
305 フォトレジスト
306 レジスト開口部
307 レジスト層
308a、308b レジスト端部
408 成長部
509 内端部