特許第6663266号(P6663266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663266
(24)【登録日】2020年2月18日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/54 20060101AFI20200227BHJP
   B61H 5/00 20060101ALI20200227BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20200227BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20200227BHJP
   F16D 121/02 20120101ALN20200227BHJP
【FI】
   F16D65/54 A
   B61H5/00
   F16D65/18
   F16D65/02 N
   F16D121:02
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-60676(P2016-60676)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-172731(P2017-172731A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100197516
【弁理士】
【氏名又は名称】秋岡 範洋
(72)【発明者】
【氏名】大河原 義之
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−032773(JP,U)
【文献】 実開昭63−115639(JP,U)
【文献】 特開昭50−005772(JP,A)
【文献】 実開昭54−056052(JP,U)
【文献】 特開2016−089979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61H 5/00
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪とともに回転するブレーキディスクに摩擦力を付与するブレーキ装置であって、
前記ブレーキディスクの両側から前記ブレーキディスクに摺接して摩擦力を付与可能な第1及び第2ブレーキライニングをそれぞれ支持する第1及び第2キャリパアームを有するブレーキ本体と、
車体又は台車に取り付けられる支持枠に軸方向に移動自在に支持されると共に前記ブレーキ本体を支持する支持ピンと、
前記第1キャリパアームに設けられ前記第1ブレーキライニングを前記ブレーキディスクに押圧すると共に前記ブレーキ本体を前記支持ピンの軸方向に移動させて前記第2ブレーキライニングを前記ブレーキディスクに押圧する押圧部と、
前記支持ピンをクランプ可能なクランプ部と、
制動時の前記ブレーキ本体の移動に対して反力を発揮して、前記ブレーキ本体の移動に抗するように前記クランプ部を付勢する付勢部材と、を備え、
前記支持ピンは、前記第2ブレーキライニングが前記ブレーキディスクに近づく押圧方向への前記ブレーキ本体の移動量が予め定められた基準移動量以下の状態では、前記クランプ部によってクランプされ、前記ブレーキ本体が前記基準移動量を超えて前記押圧方向へ移動する際には、前記クランプ部によるクランプが解除され、
前記クランプ部は、
前記支持ピンの軸方向に沿って間隔が徐々に狭くなるくさび空間を前記支持ピンの外周面との間で形成するくさび面を有するくさび部材と、
前記くさび空間に収容される転動体と、
前記転動体が前記くさび面に軸方向から押し付けられるように前記くさび部材または前記転動体を押圧する押付部材と、
前記押付部材の押し付け力に抗して前記くさび部材または前記転動体を押圧してクランプを解除可能な解除部と、を有することを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記解除部は、前記ブレーキ本体が前記基準移動量を超えて移動すると、前記押付部材の押し付け力に抗して前記くさび部材または前記転動体を押圧して前記クランプ部のクランプを解除することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記クランプ部は、前記くさび部材と前記支持ピンとの間に設けられ内外周面に開口する貫通孔を有する筒状のインナー部材をさらに有し、
前記転動体は、前記貫通孔を通じて前記支持ピンの外周面に接触し、
前記インナー部材は、
前記くさび部材との間で前記押付部材を支持する受け部と、
前記支持枠との間で前記付勢部材を支持する支持部と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記解除部は、前記インナー部材に係止する窪み部と、前記窪み部を挟んで両側に設けられる第1及び第2当接部と、を有するレバー部材であり、
前記レバー部材は、前記ブレーキ本体が前記基準移動量を超えて移動すると、前記第1当接部が押圧されて前記窪み部を支点に回動し、前記第2当接部が前記くさび部材を前記押付部材の付勢力に抗して押圧することにより前記クランプ部のクランプを解除することを特徴とする請求項3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記クランプ部は、前記支持枠の外側に設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記クランプ部は、前記支持枠の内側に設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両の台車に固着される支持枠と、支持枠に対して2本の支持ピンにより支持ピンの軸線方向に摺動自在に支持されるキャリパブレーキ本体と、キャリパブレーキ本体に設けられて車両の車輪を挟む2本のアームと、第1のアームに備えられるシリンダと、2本のアームに保持される制輪子と、を備える鉄道車両用キャリパブレーキ装置が開示されている。特許文献1に開示のディスクブレーキ装置では、ブレーキライニングを有する制輪子と車輪にとりつけられるロータとの間の隙間を自動的に調整する隙間調整装置が第1のアームに設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−226467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のブレーキ装置のようなフローティング式のブレーキ装置では、ブレーキ本体の第1、第2キャリパアームが車輪を跨ぐように設けられ、一方のキャリパアームにのみブレーキライニングを進退させる押圧部が設けられる。フローティング型ブレーキ装置では、押圧部が一方のブレーキライニングをブレーキディスクに向けて押圧すると共に、その反力によってブレーキ本体を移動させて他方のブレーキライニングをブレーキディスクに向けて引き寄せる。これにより、ブレーキディスクがブレーキライニングによって両側から押圧され、制動力としての摩擦力が発生する。
【0005】
押圧部が設けられるキャリパアームには、隙間調整装置が設けられる。ブレーキ装置の非制動時において、一方のブレーキライニングとブレーキディスクとの間の隙間が隙間調整装置によって一定に保たれる。
【0006】
これに対し、押圧部が設けられない他方のキャリパアームには、隙間調整機構が設けられない。このため、ブレーキ装置の非制動時であっても、他方のブレーキライニングとブレーキディスクとが接触することがある。これにより、ブレーキライニングが摩耗しやすくなり、ブレーキライニングの寿命低下を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ブレーキ装置のブレーキライニングの寿命を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、車輪とともに回転するブレーキディスクに摩擦力を付与するブレーキ装置であって、ブレーキディスクの両側からブレーキディスクに摺接して摩擦力を付与可能な第1及び第2ブレーキライニングをそれぞれ支持する第1及び第2キャリパアームを有するブレーキ本体と、車体又は台車に取り付けられる支持枠に軸方向に移動自在に支持されると共にブレーキ本体を支持する支持ピンと、第1キャリパアームに設けられ第1ブレーキライニングをブレーキディスクに押圧すると共にブレーキ本体を支持ピンの軸方向に移動させて第2ブレーキライニングをブレーキディスクに押圧する押圧部と、支持ピンをクランプ可能なクランプ部と、制動時のブレーキ本体の移動に対して反力を発揮して、ブレーキ本体の移動に抗するようにクランプ部を付勢する付勢部材と、を備え、支持ピンは、第2ブレーキライニングがブレーキディスクに近づく押圧方向へのブレーキ本体の移動量が予め定められた基準移動量以下の状態では、クランプ部によってクランプされ、ブレーキ本体が基準移動量を超えて押圧方向へ移動する際には、クランプ部によるクランプが解除され、クランプ部は、支持ピンの軸方向に沿って間隔が徐々に狭くなるくさび空間を支持ピンの外周面との間で形成するくさび面を有するくさび部材と、くさび空間に収容される転動体と、転動体がくさび面に軸方向から押し付けられるようにくさび部材または転動体を押圧する押付部材と、押付部材の押し付け力に抗してくさび部材または転動体を押圧してクランプを解除可能な解除部と、を有することを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、解除部が、ブレーキ本体が基準移動量を超えて移動すると、押付部材の押し付け力に抗してくさび部材または転動体を押圧してクランプ部のクランプを解除することを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、クランプ部が、くさび部材と支持ピンとの間に設けられ内外周面に開口する貫通孔を有する筒状のインナー部材をさらに有し、転動体は、貫通孔を通じて支持ピンの外周面に接触し、インナー部材は、くさび部材との間で押付部材を支持する受け部と、支持枠との間で付勢部材を支持する支持部と、を有することを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、解除部が、インナー部材に係止する窪み部と、窪み部を挟んで両側に設けられる第1及び第2当接部と、を有するレバー部材であり、レバー部材は、ブレーキ本体が基準移動量を超えて移動すると、第1当接部が押圧されて窪み部を支点に回動し、第2当接部がくさび部材を押付部材の付勢力に抗して押圧することによりクランプ部のクランプを解除することを特徴とする。
【0012】
第1から第4の発明では、制動時のブレーキ本体の移動に伴う付勢部材の反力がクランプ部を介して支持ピンに付与される。これにより、ブレーキ装置の制動を解除すると、反力によって第2ブレーキライニングとブレーキディスクとが離間する方向にブレーキ本体が移動する。また、解除部によってクランプ部による支持ピンのクランプを容易に解除することができる。
【0013】
第5の発明は、クランプ部が、支持枠の外側に設けられる。
【0014】
第5の発明によれば、ブレーキ装置へのクランプ部及び付勢部材の組付けが容易となり、既存のブレーキ装置にも容易に後付けすることができる。
【0015】
第6の発明は、クランプ部が、支持枠の内側に設けられる。
【0016】
第6の発明によれば、支持枠周辺の省スペース化を図ることができ、ブレーキ装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ブレーキ装置のブレーキライニングの寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るブレーキ装置の平面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るブレーキ装置の正面図である。
図3図1におけるA−A線に沿った断面図であり、第1支持ピン周辺を示した図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るクランプ部周辺を示す拡大断面図であり、非制動状態を示す。
図5】本発明の第1実施形態に係るクランプ部周辺を示す拡大断面図であり、ブレーキ本体が基準移動量以下で移動して制動状態となった場合を示す。
図6】本発明の第1実施形態に係るクランプ部周辺を示す拡大断面図であり、ブレーキ本体が基準移動量だけ移動した状態を示す。
図7】本発明の第1実施形態に係るクランプ部周辺を示す拡大断面図であり、ブレーキ本体が基準移動量を超えて移動して制動状態となった場合を示す。
図8】本発明の第2実施形態に係るクランプ部周辺を示す拡大断面図であり、非制動状態を示す。
図9】本発明の第2実施形態に係るクランプ部周辺を示す拡大断面図であり、ブレーキ本体が基準移動量以下で移動して制動状態となった場合を示す。
図10】本発明の第2実施形態に係るクランプ部周辺を示す拡大断面図であり、ブレーキ本体が基準移動量だけ移動した状態を示す。
図11】本発明の第2実施形態に係るクランプ部周辺を示す拡大断面図であり、ブレーキ本体が基準移動量を超えて移動して制動状態となった場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0020】
(第1実施形態)
まず、図1から図4を参照して、第1実施形態に係るブレーキ装置100の構成について説明する。
【0021】
ブレーキ装置100は、作動流体として圧縮空気が用いられる鉄道車両用のフローティング型空気圧ブレーキである。圧縮空気に代えて、作動油など他の作動流体を用いてもよい。
【0022】
ブレーキ装置100は、車輪1とともに回転するブレーキディスク2に摩擦力を付与するものである。具体的には、ブレーキ装置100は、ブレーキディスク2の両側からブレーキディスクに摺接して摩擦力を付与可能な第1,第2ブレーキライニング3,4によってブレーキディスク2に摩擦力を付与して、車輪1の回転を制動する。
【0023】
ブレーキディスク2は、車輪1の表裏両面に形成されて車輪1と一体に回転する。ブレーキディスク2を車輪1と一体に形成する構成に代えて、車輪1とともに回転する別体のブレーキディスク2を設けてもよい。
【0024】
ブレーキ装置100は、図1及び図2に示すように、ガイドプレート5を介して第1,第2ブレーキライニング3,4をそれぞれ支持する第1,第2キャリパアーム12,14を有するブレーキ本体10と、台車(図示省略)取り付けられる支持枠20に軸方向に移動自在に支持されると共にブレーキ本体10を支持する第1,第2支持ピン21,22と、第1ブレーキライニングに支持されるガイドプレート5をブレーキ本体10に進退自在に支持する一対のアンカピン33と、圧縮空気の圧力によって第1,第2ブレーキライニング3,4をブレーキディスク2に押圧する押圧部35と、を備える。
【0025】
ブレーキ本体10は、ブレーキ装置100が鉄道車両に適用される場合には、支持枠20を介して台車に支持される。ブレーキ本体10は、ブレーキ装置100が鉄道車両以外の車両に適用される場合には、車体(図示省略)に支持される。
【0026】
ブレーキ本体10は、図1に示すように、ブレーキディスク2に跨るようにして延びる第1キャリパアーム12及び第2キャリパアーム14と、第1キャリパアーム12と第2キャリパアーム14とを連結するヨーク部13と、ブレーキ本体10を台車上に支持するための第1,第2ブラケット部15,16と、を有する。
【0027】
第1支持ピン21の周辺構造と第2支持ピン22の周辺構造とは、後述するクランプ部40及びリリーススプリング60が取り付けられるか否かを除き、基本的な構成は同一である。よって、以下では、クランプ部40及びリリーススプリング60が取り付けられる第1支持ピン21の周辺構造について具体的に説明し、第2支持ピン22に関しては説明を省略する。
【0028】
第1支持ピン21は、図3に示すように、支持枠20の挿通孔20aに挿通される。第1支持ピン21の両端部は、ブレーキ本体10の第1,第2ブラケット部15,16に各々連結される。第1支持ピン21は、車輪1の回転軸と平行に設けられると共に軸方向に移動可能に支持枠20に支持される。これにより、ブレーキ本体10は、第1支持ピン21の軸方向への移動が可能なように支持枠20に支持される。
【0029】
第1支持ピン21の露出部は、図1に示すように、ゴム製のブーツ25によって覆われ、ダスト等から保護されている。このようにして、ブレーキ本体10は、第1支持ピン21によって支持枠20に対して摺動可能にフローティング支持される。なお、図1を除き、ブーツ25の図示は省略する。
【0030】
第1,第2ブレーキライニング3,4は、ガイドプレート5に固定される裏板部3a,4aと、制動時にブレーキディスク2に当接する摩擦部材3b,4bと、を有する。摩擦部材3b,4bは、複数のセグメントからなり、裏板部3a,4aの表面に固定される。第1,第2ブレーキライニング3,4は、摩擦部材3b及び4bとブレーキディスク2との当接によって発生する摩擦力によって、車輪1の回転を制動する。
【0031】
第1,第2ブレーキライニング3,4は、非制動時には、それぞれブレーキディスク2と予め設定された所定の間隔をあけて対向する(図1に示す状態)。第1及び第2ブレーキライニング3,4は、制動時には、押圧部35による押圧力を受けてブレーキディスク2に向かってそれぞれ移動し、ブレーキディスク2に平行に当接して押圧される。
【0032】
ガイドプレート5は、長手方向に沿って形成され第1ブレーキライニング3の裏板部3aが係合するアリ溝5aを有する。ガイドプレート5は、長手方向の両端部が、一対のアンカピン33によってブレーキ本体10に支持される。一方のアンカピン33は、ガイドプレート5の一端(図2では上端)をブレーキ本体10に回動可能に支持し、他方のアンカピン33は、ガイドプレート5の他端(図2では下端)をブレーキ本体10に係止する。
【0033】
ブレーキ本体10の第1キャリパアーム12には、長手方向(図2中上下方向)の両端部に配置される一対のアジャスタ30と、一対のアジャスタ30の間に配置される押圧部35と、が設けられる。
【0034】
アジャスタ30は、非制動時にブレーキディスク2に対する第1ブレーキライニング3の相対位置を一定に調整するものである。アジャスタ30は、アンカボルト32によってブレーキ本体10の上下端部にそれぞれ締結される。
【0035】
アジャスタ30は、図1に示すように、アンカボルト32によってブレーキ本体10に固定されるライニング受け31と、ライニング受け31に対して進退可能に設けられて第1ブレーキライニング3をブレーキ本体10に支持するアンカピン33と、第1ブレーキライニング3をブレーキディスク2から離間する方向に付勢するリターンスプリング(図示省略)と、非制動時に第1ブレーキライニング3とブレーキディスク2との隙間を一定に調整する隙間調整機構(図示省略)と、を備える。
【0036】
アンカピン33は、第1ブレーキライニング3がブレーキディスク2に近接する際に、第1ブレーキライニング3とともに変位するガイドプレート5によってライニング受け31から引き出されて軸方向に変位する。アンカピン33は、第1ブレーキライニング3がブレーキディスク2に摺接する制動時に、摩擦力によってブレーキディスク2が第1ブレーキライニング3を周方向に移動させようとするのに抗して、第1ブレーキライニング3を保持する。アンカピン33の内周に、リターンスプリングと隙間調整機構とが収装される。
【0037】
リターンスプリングは、アンカピン33の内周に圧縮して介装されるコイルばねである。ブレーキ装置100が制動状態から非制動状態になったときには、リターンスプリングの付勢力によって、アンカピン33がガイドプレート5を介して第1ブレーキライニング3を押し戻し、第1ブレーキライニング3をブレーキディスク2から所定の距離だけ離間させる。これにより、非制動時における第1ブレーキライニング3とブレーキディスク2との距離を調整して、ブレーキディスク2の放熱性を良好にすることができる。なお、制動状態とは、後述する押圧部35によって第1,第2ブレーキライニング3,4がブレーキディスク2に押圧されている状態のことである。また、非制動状態とは、押圧部35によってブレーキディスク2に押圧される押圧力が第1,第2ブレーキライニング3,4に作用しない状態のことである。
【0038】
隙間調整機構は、非制動時におけるリターンスプリングの付勢力による第1ブレーキライニング3の戻し量を一定に調整する。つまり、隙間調整機構は、非制動時における第1ブレーキライニング3とブレーキディスク2の間隔を常に一定に保つ。
【0039】
第1ブレーキライニング3の摩耗量が小さく、制動時におけるアンカピン33のストローク量が小さいうちは、非制動時には、アンカピン33が制動前における元の位置まで戻る。
【0040】
これに対して、第1ブレーキライニング3の摩耗が進行し、制動時におけるアンカピン33の移動量が大きくなった場合において、非制動時には、隙間調整機構が非制動時における第1ブレーキライニング3の位置を、摩耗した厚さの分だけ前進させる。これにより、非制動時における第1ブレーキライニング3とブレーキディスク2との間隔を常に一定に保つことができる。
【0041】
押圧部35は、圧縮空気の圧力により第1ブレーキライニング3をブレーキディスク2に押圧すると共にその反力によってブレーキ本体10を第1支持ピン21の軸方向に移動させて第2ブレーキライニング4をブレーキディスク2に押圧する。
【0042】
押圧部35は、第1、第2ブレーキライニング3,4をブレーキディスク2に押圧するものであれば、任意の構成とすることができる。このため、押圧部35の詳細な説明は省略するが、例えば、押圧部35は、内部に設けられる圧力室おける空気圧を調整することでダイヤフラムを変形させ、ダイヤフラムの変形によってピストンをシリンダから退出させる。これにより、押圧部35は、ガイドプレート5を介して第1ブレーキライニング3をブレーキディスク2に向けて図1中右方向に押圧し、その反力によってブレーキ本体10を図1中左方向へ移動させて第2ブレーキライニング4をブレーキディスク2に向けて引き寄せる。このようにして、ブレーキディスク2が第1,第2ブレーキライニング3,4によって挟持されて、制動力としての摩擦力が発揮される。
【0043】
なお、以下では、図1に示すように、ブレーキ装置100の制動時におけるブレーキ本体10の移動方向、言い換えれば第2ブレーキライニング4がブレーキディスク2に近づいて押圧されるようなブレーキ本体10の移動方向を「押圧方向」と称する。また、反対に第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2とが離間するようなブレーキ本体10の移動方向を「解除方向」と称する。
【0044】
ブレーキ装置100は、図3に示すように、支持枠20の挿通孔20a内に設けられ第1支持ピン21を摺動自在に支持する球面ベアリング26と、支持枠20の挿通孔20a内であって球面ベアリング26の軸方向両側に設けられ第1支持ピン21を摺動自在に支持する一対のゴム製ブッシュ27,28と、支持枠20外の露出部に設けられ第1支持ピン21をクランプ可能なクランプ部40と、制動時のブレーキ本体10の移動に抗するように反力を発揮してクランプ部40を付勢する付勢部材としてのリリーススプリング60と、をさらに備える。
【0045】
また、支持枠20は、第2ブラケット部16側の端部に設けられクランプ部40との間でリリーススプリング60を軸方向に支持するカバー部23を有する。カバー部23は、径方向内側に延びる環状部23aと、軸方向に延びる円筒部23bと、を有する(図4参照)。
【0046】
図3に示すように、球面ベアリング26は、互いに摺動可能に嵌合する軸受面を有する外輪26a及び内輪26bを備える。外輪26aと内輪26bとは、相対回転可能に係合する。
【0047】
外輪26aは、支持枠20の挿通孔20aの内周面に嵌合して設けられる。内輪26bには、第1支持ピン21が摺動自在に挿通する。これにより、球面ベアリング26は、支持枠20に対してブレーキ本体10を揺動可能に支持すると共に支持枠20に対して第1支持ピン21の軸方向(車輪1の回転軸方向)に摺動可能にフローティング支持する。
【0048】
リリーススプリング60は、第1支持ピン21をクランプするクランプ部40を解除方向に向けて付勢するコイルばねである。
【0049】
制動時においてブレーキ本体10及び第1支持ピン21が押圧方向へ移動すると、その移動に対してリリーススプリング60が反力を発生して、ブレーキ本体10及び第1支持ピン21がクランプ部40を介して解除方向に付勢される。これにより、非制動時にリリーススプリング60の付勢力によってブレーキ本体10及び第1支持ピン21が解除方向に移動し、第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との間に所定の隙間が形成される。
【0050】
また、ブレーキ本体10及び第1支持ピン21は、非制動状態であっても、リリーススプリング60によって解除方向に付勢される。これにより、非制動時において、車両の振動等によりブレーキ本体10及び第1支持ピン21が押圧方向に移動することが防止される。
【0051】
クランプ部40は、図4に示すように、くさび空間を第1支持ピン21の外周面との間で形成するくさび面41aを有するくさび部材としてのリテーナ41と、くさび空間に収容される転動体42と、転動体42が第1支持ピン21の軸方向からくさび面41aに押し付けられるようにリテーナ41を押圧する押付部材としてのクランプスプリング43と、リテーナ41と第1支持ピン21との径方向の間に設けられ内外周面に開口する貫通孔45aを有する筒状のインナー部材44と、を有する。
【0052】
リテーナ41は、インナー部材44の外周に設けられる筒状の部材である。リテーナ41は、第1支持ピン21の軸方向に対して傾斜するテーパ状のくさび面41aを有する。リテーナ41は、くさび面41aによって、第1支持ピン21の軸方向に沿って径方向の間隔が徐々に狭くなるくさび空間を第1支持ピン21の外周面との間で形成する。
【0053】
転動体42は、球状に形成され、貫通孔45aを通じて第1支持ピン21の外周面とくさび面41aとの両方に接触する。なお、転動体42は、球状に限らず円筒形状に形成されてもよい。また、図4では、単一の転動体42を図示しているが、転動体42の数はこれに限らず、複数設けられてもよい。複数の転動体42が設けられることにより、クランプ部40が安定して第1支持ピン21を支持することができる。
【0054】
インナー部材44は、貫通孔45aが形成される筒状の本体部45と、本体部45の外周面から径方向外側に延びて形成されリテーナ41との間でクランプスプリング43を支持する受け部としてのばね受け部46と、本体部45の一端から径方向外側に延びて形成され支持枠20のカバー部23との間でリリーススプリング60を支持する支持部としてのフランジ部47と、ばね受け部46に対してフランジ部47とは反対側における本体部45の外周面から径方向外側に延びて形成される規制部48と、を有する。
【0055】
ばね受け部46は、貫通孔45aを挟んでフランジ部47とは反対側に設けられる。クランプスプリング43は、ばね受け部46とリテーナ41との間に圧縮状態で介装され、転動体42がくさび面41aに押し付けられるようにリテーナ41を図4中右方向に付勢する。これにより、転動体42は、くさび空間において幅が狭い部分(図4中左側部分)に向けて押し込まれる。よって、クランプ部40と第1支持ピン21との相対移動がくさび効果によって規制される。クランプ部40は、このようにして第1支持ピン21をクランプする。
【0056】
ばね受け部46と規制部48とは、カバー部23の環状部23aを挟んで軸方向の両側に配置される。図4に示すように、ブレーキ装置100の非制動状態では、規制部48と環状部23aとが当接する。規制部48と環状部23aとが当接することにより、解除方向へのクランプ部40のそれ以上の移動が規制される。また、クランプ部40がブレーキ本体10及び第1支持ピン21と共に押圧方向へ移動して、ばね受け部46が環状部23aに当接すると、押圧方向へのそれ以上のブレーキ本体10及び第1支持ピン21の移動が規制される。つまり、第1支持ピン21の軸方向へのクランプ部40の移動は、ばね受け部46と規制部48との軸方向の距離によって規定される。
【0057】
次に、図4から図7を参照して、ブレーキ装置100の作用について説明する。
【0058】
図5から図8では、非制動状態における第1支持ピン21を破線で示す。また、以下では、クランプ部40のフランジ部47とブレーキ本体10の第2ブラケット部16との間の軸方向距離を、クランプ部40とブレーキ本体10との間の「相対距離」と称する。また、図4に示すように、第2ブレーキライニング4が摩耗していない状態における相対距離を「L0」とする。
【0059】
鉄道車両の走行時には、車輪1は高速で回転している。ここで、運転士の操作等によってブレーキ装置100が制動状態に切り換えられると、空気圧源から供給される圧縮空気によって、押圧部35(図1参照)がガイドプレート5を介して第1ブレーキライニング3を車輪1に設けられたブレーキディスク2に向けて押圧する。
【0060】
この際、ブレーキ本体10には、押圧部35が第1ブレーキライニング3を押圧する反力が作用する。これにより、ブレーキ本体10は、図5に示すように、クランプ部40との相対距離L0を保ったまま、押圧部35の反力によって第1支持ピン21及びクランプ部40と共にリリーススプリング60の付勢力に抗して押圧方向に移動する。よって、第2ブレーキライニング4がブレーキディスク2に向けて引き寄せられ、第1、第2ブレーキライニング3,4がブレーキディスク2の両側から当接して摩擦力が発生し、車輪1の回転は制動される。これにより、鉄道車両は、速度が低下してやがて停止することとなる。
【0061】
運転士の操作等によってブレーキ装置100による車輪1の制動が解除されると、アジャスタ30内部に設けられたリターンスプリングの復元力によって、第1ブレーキライニング3はブレーキディスク2に当接した状態から離間する。また、圧力室内の圧縮空気は通孔(図示省略)から排出されて、第1ブレーキライニング3は制動前の位置に戻る。
【0062】
これにより、ブレーキディスク2と第1ブレーキライニング3とは、隙間調整機構の作用によって再び一定の間隔をもって対峙する。
【0063】
一方、圧力室内の圧縮空気が排出されることにより、ブレーキ本体10、第1支持ピン21、及びクランプ部40は、制動時に圧縮されたリリーススプリング60の付勢力を復元力として受けて、解除方向に向けて移動する。ブレーキ本体10、第1支持ピン21、及びクランプ部40は、規制部48が環状部23aに当接するまで解除方向に向けて移動して、制動前の状態(図4に示す状態)に戻る。
【0064】
これにより、ブレーキディスク2と第2ブレーキライニング4とは、互いに離間して再び一定の隙間をもって対峙する。よって、ブレーキ装置100の解除時における第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との接触が防止される。これにより、第2ブレーキライニング4の摩耗が抑制されて、第2ブレーキライニング4の寿命を向上させることができる。また、車輪1は、ブレーキ装置100の影響を受けることなく回転することが可能となる。
【0065】
第1ブレーキライニング3の摩擦部材3bが摩耗すると、隙間調整機構によりガイドプレート5は、摩擦部材3bが摩耗した分だけブレーキディスク2に向かって前進する。このため、第1ブレーキライニング3とブレーキディスク2との間の隙間は、一定に保たれる。
【0066】
これに対し、第2キャリパアーム14には隙間調整機構が設けられないため、第2ブレーキライニング4の摩耗部材4bが摩耗(以下、単に「第2ブレーキライニング4が摩耗」とする。)すると、第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との間の隙間は大きくなる。このため、非制動状態から第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2とを接触させて制動状態とするために押圧方向へ向けて移動するブレーキ本体10の移動量が大きくなる。
【0067】
ここで、ブレーキ装置100では、非制動状態(図4に示す状態)からブレーキ本体10が予め定められた基準移動量S0だけ押圧方向に移動すると、第1支持ピン21とクランプ部40とを相対移動させる力が、クランプ部40による第1支持ピン21をクランプする力(以下、「クランプ力」と称する。)と釣り合うように、クランプ部40及びリリーススプリング60が構成される。
【0068】
具体的に説明すると、制動時において、第1支持ピン21とクランプ部40とを相対移動させる力(以下、単に「相対移動させる力」と称する。)は、押圧部35からブレーキ本体10に作用する反力と、クランプ部40に作用しクランプ部40の移動量に応じて変化するリリーススプリング60の付勢力と、によるものである。つまり、相対移動させる力は、ブレーキ本体10及び第1支持ピン21に対して押圧方向に作用する押圧部35の反力と、クランプ部40に対して解除方向に作用するリリーススプリング60の付勢力と、によるものである。押圧部35の反力は、所望の制動力に応じて定められるため、相対移動させる力は、主にリリーススプリング60の付勢力によって決定される。
【0069】
クランプ部40のクランプ力は、相対移動させる力に対して転動体42と第1支持ピン21との間で生じる摩擦力である。クランプ力は、クランプスプリング43の付勢力、くさび面41aの形状、転動体42の形状、及び第1支持ピン21と転動体42との間の摩擦係数などにより決定される。これらを適切に設定することにより、所望のクランプ力を得ることができる。クランプ部40のクランプ力は、ブレーキ本体10の移動量に関わらず、一定である。なお、図4から図7では、クランプ力及び相対移動させる力を模式的に矢印で示している。
【0070】
以下、クランプ部40の作用について具体的に説明する。
【0071】
図5に示すように、第2ブレーキライニング4の摩耗が小さくブレーキ本体10の移動量が基準移動量S0よりも小さい移動量S1である場合には、制動状態における相対移動させる力がクランプ部40のクランプ力を上回らず、クランプ部40と第1支持ピン21とは相対移動しない。つまり、制動時には、第1支持ピン21がクランプ部40によってクランプされた状態を維持し相対距離L0を保ったまま、ブレーキ本体10、第1支持ピン21、及びクランプ部40が一体となって押圧方向へ移動する。
【0072】
図6に示すように、制動時のブレーキ本体10の移動量が基準移動量S0となると、リリーススプリング60による付勢力と押圧部35の反力とによる相対移動させる力がクランプ部40のクランプ力と釣り合う。以下、ブレーキ本体10が基準移動量S0だけ移動した際のリリーススプリング60の付勢力を「基準付勢力」と称する。
【0073】
ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて押圧方向へ移動しようとすると、リリーススプリング60がさらに圧縮されることになるため、相対移動させる力が転動体42と第1支持ピン21との間で生じる摩擦力(クランプ力)を上回る。これにより、クランプ部40のクランプが解除されることとなり、第1支持ピン21及びブレーキ本体10は基準移動量S0を超えて押圧方向へ移動する一方で、クランプ部40はそれ以上押圧方向には移動しない。このようにして、クランプ部40と第1支持ピン21及びブレーキ本体10との相対移動が許容される。
【0074】
このように、第1実施形態に係るブレーキ装置100では、相対移動させる力が転動体42と第1支持ピン21との間の摩擦力(クランプ力)を上回ることで、クランプ部40と第1支持ピン21とが相対移動する状態が、クランプ部40による第1支持ピンのクランプが解除された状態である。なお、リリーススプリング60は、ブレーキ本体10及び第1支持ピン21が基準移動量S0を超えて移動しても、クランプ部40が押圧方向へ移動しないため、基準付勢力を発揮する状態からさらに圧縮されることはない。
【0075】
第1支持ピン21及びブレーキ本体10は、図7に示すように、ブレーキ装置100が制動状態となるような移動量S2までクランプ部40に対して相対移動する。この際、ブレーキ本体10とクランプ部40との相対距離は、L0よりも小さいL1になる。ブレーキ装置100の制動が解除されると、押圧部35からブレーキ本体10に作用する反力がなくなる。このため、ブレーキ本体10及び第1支持ピン21とクランプ部40とを相対移動させる力がなくなり、相対移動させる力がクランプ力を下回る。よって、再び、第1支持ピン21がクランプ部40と相対移動しないクランプされた状態となる。これにより、リリーススプリング60の基準付勢力によって、ブレーキ本体10、第1支持ピン21、及びクランプ部40が解除方向に向けて一体となって移動する。したがって、ブレーキディスク2と第2ブレーキライニング4とが互いに離間して再び一定の隙間をもって対峙する。
【0076】
図5から図7を参照してより詳細に説明すると、クランプ部40は、クランプが解除された状態では押圧方向へ移動せず、ブレーキ本体10及び第1支持ピン21は、基準移動量S0を超えて押圧方向へ移動する。クランプが解除されたクランプ部40は、ブレーキ装置100の制動が解除された後に、再び第1支持ピン21をクランプする。
【0077】
図5及び図6に示すように、クランプ部40は、ブレーキ本体10の移動量が基準移動量S0以下のクランプ解除前では、ブレーキ本体10とクランプ部40との相対距離がL0の位置で第1支持ピン21をクランプしている。これに対し、図7に示すように、クランプ部40がブレーキ本体10及び第1支持ピン21と相対移動して再び第1支持ピン21をクランプした状態では、相対距離がL0よりも小さいL1の位置で第1支持ピン21をクランプする。つまり、第1支持ピン21をクランプする位置が、クランプが解除される前と比べて、クランプ部40とブレーキ本体10との相対移動距離Tだけずれる。このため、リリーススプリング60によってブレーキ本体10が解除方向に戻されると、制動解除後のブレーキ本体10の位置は、押圧方向に相対移動距離T分だけずれた位置となる。
【0078】
ここで、図7に示すように、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動した状態であっても、クランプ部40は押圧方向に移動しないため、リリーススプリング60の解除方向への戻し量は、基準移動量S0で一定である。よって、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動して車輪1を制動し、その制動が解除されると、再びブレーキディスク2と第2ブレーキライニング4とは、戻し量(基準移動量S0)に応じた一定の隙間をもって対峙することになる。このように、リリーススプリング60とクランプ部40とは、第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との間の隙間を調整する隙間調整機能を発揮することができる。これにより、第2ブレーキライニング4の摩耗が進展しても、第2ブレーキライニングとブレーキディスク2との間の隙間を適切に確保することができる。
【0079】
制動時におけるブレーキ本体10の移動量が大きくなると、その分リリーススプリング60の圧縮量も大きくなり、クランプ部40を付勢するリリーススプリング60の付勢力も大きくなる。リリーススプリング60の付勢力は、制動時のブレーキ本体10の移動の抵抗となるため、過大になるとブレーキディスク2への第2ブレーキライニング4の押し付け力が低下して、制動力が不安定になるおそれがある。
【0080】
これに対し、ブレーキ装置100では、第2ブレーキライニング4の摩耗量が大きくなって、制動時のブレーキ本体10の移動量が基準移動量S0を超えると、クランプ部40によるクランプが解除される。このため、リリーススプリング60の付勢力が基準付勢力を超えることはない。言い換えれば、第2ブレーキライニング4の摩耗量が大きくなっても、リリーススプリング60からの反力が基準付勢力以下に抑制され、ブレーキ本体10の移動に対する抵抗の増加を抑制することができる。このように、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて押圧方向に移動しても、リリーススプリング60の付勢力が基準付勢力以下に抑制されるため、制動力の安定性が確保される。
【0081】
以上のように、ブレーキ装置100では、押圧方向へのブレーキ本体10の移動量が基準移動量S0を超えても、リリーススプリング60の付勢力が基準付勢力を超えることがない。リリーススプリング60がクランプ部40を付勢することにより、非制動時に第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2とを離間させると共に、基準移動量S0を超えるとクランプが解除されてリリーススプリング60の反力を抑制することができる。つまり、制動時のブレーキ本体10の移動に対する抵抗が抑制されると共に、非制動時にはリリーススプリング60の付勢力によって第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2とを離間させることができる。
【0082】
基準移動量S0は、制動力の安定性及び第2ブレーキライニング4の寿命が所望のものとなるように定められる。具体的には、許容されるリリーススプリング60の反力やブレーキ本体10の移動量(第2ブレーキライニング4の摩耗量)に応じて、クランプ部40の構成に基づいて決定されるクランプ力とリリーススプリング60によって決定される相対移動させる力との関係を調整して予め定められる。
【0083】
以下、クランプ力と相対移動させる力について、具体例を示して詳細に説明する。
【0084】
クランプスプリング43の付勢力は、例えば、200N以下に設定される。これにより、クランプ部40のクランプ力、つまり転動体42と第1支持ピン21との間の摩擦力は800N程度となる。
【0085】
非制動状態におけるリリーススプリング60の付勢力(セット荷重)は、例えば、500N程度に設定される。リリーススプリング60の付勢力は、基準移動量S0以下の移動量でブレーキ本体10が移動して第2ブレーキライニング4がブレーキディスク2に接触した状態では、800Nを超えないように設定される。例えば、リリーススプリング60の付勢力は、第2ブレーキライニング4に摩耗が生じていない状態で第2ブレーキライニング4がブレーキディスク2に接触して制動状態となると、700N程度の付勢力となる。
【0086】
ブレーキ本体10が基準移動量S0だけ押圧方向に移動すると、その分リリーススプリング60が圧縮されて、クランプ力と釣り合う800Nの基準付勢力を発揮するようになる。
【0087】
ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動すると、リリーススプリング60がさらに圧縮されて、800Nよりもわずかに大きく1000N程度の付勢力を発揮する。このため、800Nのクランプ力では、クランプ部40と第1支持ピン21との相対移動を規制できず、両者が相対移動して、クランプが解除される。
【0088】
クランプ部40によるクランプが解除されると、クランプ部40は押圧方向へそれ以上移動せず、リリーススプリング60の反力が増加しなくなる。つまり、リリーススプリング60の付勢力は、800Nを大きく超えることはない。よって、制動時においてブレーキ本体10の移動量が基準移動量S0を超えて大きくなっても、ブレーキ本体10の移動に対する反力は800N程度に抑制される。したがって、ブレーキ装置100の制動力の安定性を確保しつつ、非制動時の第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との接触が防止される。
【0089】
なお、以上の具体例は、クランプ力と相対移動させる力についての一例を示したにすぎず、ブレーキ装置100の構成は、上記具体例に限られるものではない。また、第1実施形態においても、クランプ力と相対移動させる力を、上記具体例のように構成してもよいし、その他の構成としてもよい。
【0090】
次に、第1実施形態における変形例について説明する。
【0091】
上記第1実施形態では、クランプ部40は、第1支持ピン21をクランプするものである。これに代えて、ブレーキ装置100は、第2支持ピン22をクランプするクランプ部40が設けられ、このクランプ部40がリリーススプリング60で付勢されるものでもよい。また、第1支持ピン21及び第2支持ピン22をそれぞれクランプするクランプ部40が設けられ、2つのクランプ部40のそれぞれがリリーススプリング60で付勢されてもよい。このように、クランプ部40は、第1支持ピン21及び第2支持ピン22のいずれか一方に設けられてもよいし、両方に設けられてもよい。
【0092】
また、上記第1実施形態では、クランプ部40は、第1支持ピン21のうち支持枠20から露出する部分をクランプするように設けられる。つまり、クランプ部40及びリリーススプリング60は、支持枠20の挿通孔20aの外に設けられる。これに代えて、クランプ部40及びリリーススプリング60は、支持枠20の挿通孔20a内に設けられてもよい。例えば、球面ベアリング26と一方のゴム製ブッシュ28との間における挿通孔20a内にクランプ部40及びリリーススプリング60が設けられてもよい。この場合には、支持枠20周辺の省スペース化を図ることができ、ブレーキ装置100を小型化することができる。
【0093】
一方、クランプ部40及びリリーススプリング60を支持枠20外に設けた場合には、ブレーキ装置100への組付けが容易となり、既存のブレーキ装置100にも容易に後付けすることができる。さらには、クランプ部40及びリリーススプリング60の各部品のメンテナンスや交換も容易に行うことができる。
【0094】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を生じる。
【0095】
ブレーキ装置100では、制動時のブレーキ本体10の移動に伴うリリーススプリング60の反力がクランプ部40を介して第1支持ピン21に付与される。これにより、ブレーキ装置100の制動を解除すると、反力によって第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2とが離間する方向にブレーキ本体10が移動する。よって、ブレーキ装置100の非制動時における第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との接触が防止される。したがって、非制動時における第2ブレーキライニング4の摩耗が抑制され、第2ブレーキライニング4の寿命を向上させることができる。
【0096】
また、第2ブレーキライニング4の摩耗により制動に必要なブレーキ本体10の移動量が増加し、基準移動量S0を超えてブレーキ本体10が押圧方向へ移動すると、第1支持ピン21とクランプ部40とを相対移動させる力が第1支持ピン21とクランプ部40の転動体42との間の摩擦力を上回る。クランプ部40は押圧方向へ移動せずに第1支持ピン21と相対移動するため、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動しても、リリーススプリング60の反力が増加しなくなる。これにより、制動時においてブレーキ本体10の移動量が基準移動量S0を超えて大きくなっても、ブレーキ本体10の移動に対する反力の増加が抑制される。したがって、ブレーキ装置100の制動力の安定性を確保しつつ、非制動時の第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との間の隙間を適切に確保し両者の接触を防止して、第2ブレーキライニング4の寿命を向上させることができる。
【0097】
また、ブレーキ装置100では、ブレーキ本体10の移動量が基準移動量S0を超えると第1支持ピン21とクランプ部40とが相対移動するように、相対移動させる力とクランプ力とを設定している。このため、クランプを解除するための解除機構を設けなくてもクランプを解除でき、クランプ部40周辺を省スペース化して、ブレーキ装置100を小型化することができる。
【0098】
(第2実施形態)
次に、図8から図11を参照して本発明の第2実施形態に係るブレーキ装置200について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態のブレーキ装置100と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。また、図9から図11では、非制動状態における第1支持ピン21を破線で示す。
【0099】
上記第1実施形態では、ブレーキ装置100は、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動すると、リリーススプリング60の付勢力が増加することにより、クランプ部40のクランプが解除されてブレーキ本体10及び第1支持ピン21とクランプ部140とが相対移動する。
【0100】
これに対し、第2実施形態に係るブレーキ装置200は、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動するとクランプスプリング43の付勢力に抗してリテーナ41を押圧してクランプ部140のクランプを解除可能な解除部としてのレバー部材50を有する。ブレーキ装置200では、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて押圧方向に移動すると、クランプ部140のクランプがレバー部材50によって解除されることにより、第1支持ピン21とクランプ部140との軸方向に相対移動が許容される。このように、第2実施形態に係るブレーキ装置200は、クランプ部140による第1支持ピン21のクランプが解除される構成が第1実施形態に係るブレーキ装置100とは相違する。
【0101】
図8に示すように、ブレーキ装置200のクランプ部140は、上記第1実施形態のクランプ部40の構成に加え、リテーナ41とインナー部材144とによって軸方向に挟持されるレバー部材50をさらに備える。
【0102】
レバー部材50は、インナー部材144の周方向に並んで複数設けられる。レバー部材50は、インナー部材144のフランジ部147に形成される径方向溝147bに収容される板状部材であり、リリーススプリング60には接触しない。なお、図8から図11では、単一のレバー部材50を図示し、その他のレバー部材50の図示を省略している。レバー部材50の数は、クランプ部140のクランプを安定して解除するためには、複数であることが望ましいが、これに限らず、1つであってもよい。
【0103】
レバー部材50は、フランジ部147に対向する面に形成される窪み部50aと、窪み部50aを挟んで両側に設けられる第1、第2当接部50b,50cと、を有する。
【0104】
窪み部50aは、フランジ部147の径方向溝147bに形成される球状突起147aに回動可能に係止される。第1当接部50bは、カバー部23の円筒部23bに軸方向に対向する。第2当接部50cは、クランプ部140が第1支持ピン21をクランプした状態でリテーナ41とフランジ部147とによって第1支持ピン21の軸方向に挟持される。
【0105】
レバー部材50は、第1当接部50bが解除方向にむけて押圧されると、第2当接部50cが解除方向に移動するように窪み部50aを中心に回動する。これにより、レバー部材50は、クランプスプリング43の付勢力に抗してリテーナ41を押圧する。レバー部材50が設けられることにより、後述するような制動時においてクランプ部140のクランプが解除される場合以外の非制動時の場合、例えば、ブレーキ装置200のメンテナンス時などの場合であっても、作業者がレバー部材50の第1当接部50bを押圧することでクランプ部140によるクランプを容易に解除することができる。よって、ブレーキ装置200のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0106】
次に、ブレーキ装置200の作用について説明する。
【0107】
ブレーキ装置200では、クランプ部140のクランプが解除されるブレーキ本体10の基準移動量S0は、レバー部材50とカバー部23の円筒部23bとの間の距離によって、定められる。レバー部材50やカバー部23の形状を変更することにより、両者の間の距離を変更して基準移動量S0を容易に調整することができる。
【0108】
図9に示すように、第2ブレーキライニング4の摩耗が小さくブレーキ本体10の移動量が基準移動量S0よりも小さい移動量S1である場合には、レバー部材50と円筒部23bとが当接する前にブレーキ装置200が制動状態となる。この場合には、第1支持ピン21がクランプ部40によってクランプされた状態を維持して相対距離L0を保ったまま、ブレーキ本体10、第1支持ピン21、及びクランプ部40が一体となって押圧方向へ移動する。
【0109】
ブレーキ本体10が基準移動量S0だけ押圧方向へ移動すると、図10に示すように、レバー部材50の第1当接部50bとカバー部23の円筒部23bとが接触する。
【0110】
ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて押圧方向へ移動すると、図11に示すように、窪み部50aを支点としてレバー部材50が図11中時計回りに回動する。このため、第2当接部50cがリテーナ41をクランプスプリング43の付勢力に抗して図11中左方向へ移動させる。
【0111】
これにより、リテーナ41のくさび面41aと転動体42とが離間してくさび効果が生じなくなり、クランプ部140による第1支持ピン21のクランプが解除される。よって、第1支持ピン21とクランプ部140との軸方向への相対移動が許容される。
【0112】
第1支持ピン21及びブレーキ本体10は、図12に示すように、ブレーキ装置200が制動状態となるような移動量S2までクランプ部140に対して相対移動する。ブレーキ装置200の制動が解除されると、クランプスプリング43の付勢力によって第2当接部50cが押され、レバー部材50は図1中反時計回りに回動する。これにより、クランプスプリング43の付勢力によって転動体42が再びくさび面41aに押し付けられ、くさび効果によってクランプ部140は第1支持ピン21をクランプする。よって、再びクランプ部140と第1支持ピン21との相対移動が規制される。
【0113】
クランプ部140が第1支持ピン21を再びクランプすると、リリーススプリング60の基準付勢力がクランプ部140を介してブレーキ本体10及び第1支持ピン21に作用する。このため、ブレーキ本体10の移動量が基準移動量S0以下である場合と同様に、ブレーキ本体10、第1支持ピン21、及びクランプ部140が解除方向に向けて移動する。よって、ブレーキディスク2と第2ブレーキライニング4とは、互いに離間して再び一定の隙間をもって対峙する。
【0114】
次に、上記第2実施形態の変形例について説明する。
【0115】
上記第2実施形態では、ブレーキ装置200は、ブレーキ本体10が基準移動量S0だけ移動すると、レバー部材50がカバー部23に当接して回動することで、リテーナ41を押圧してクランプ部140のクランプが解除される。これに対し、ブレーキ装置200は、ブレーキ本体10が基準移動量S0だけ移動した状態ではレバー部材50がリテーナ41を押圧せず、上記第1実施形態に係るブレーキ装置100と同様に、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動することによるリリーススプリング60の付勢力の増加によって、クランプ部140のクランプが解除されるものでもよい。言い換えれば、上記第1実施形態と上記第2実施形態とを組み合わせて、ブレーキ本体10が基準移動量S0だけ押圧方向に移動した状態におけるクランプ部140のクランプの解除は、リリーススプリング60の付勢力によって行われ、レバー部材50は非制動時におけるクランプ部140の解除に用いられるように構成してもよい。このような場合には、第2ブレーキライニング4の摩耗進展時に、第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との間の隙間を適切に保つことができると共に、非制動時においてレバー部材50によりクランプ部140のクランプを容易に解除してブレーキ装置200のメンテナンス性を向上させることができる。
【0116】
以上の第2の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0117】
ブレーキ装置200では、制動時のブレーキ本体10の移動に伴うリリーススプリング60の反力がクランプ部140を介して第1支持ピン21に付与される。これにより、ブレーキ装置100の制動を解除すると、反力によって第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2とが離間する方向にブレーキ本体10が移動する。よって、ブレーキ装置100の非制動時における第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との接触が防止される。したがって、非制動時における第2ブレーキライニング4の摩耗が抑制され、第2ブレーキライニング4の寿命を向上させることができる。
【0118】
また、ブレーキ装置200では、第2ブレーキライニング4の摩耗により制動に必要なブレーキ本体10の移動量が増加し、基準移動量S0を超えてブレーキ本体10が押圧方向へ移動すると、レバー部材50によってクランプが解除される。これにより、クランプ部140と第1支持ピン21との相対移動が許容される。このため、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動しても、クランプ部140は押圧方向へ移動せず、リリーススプリング60の反力が増加しなくなる。よって、制動時においてブレーキ本体10の移動量が基準移動量S0を超えて大きくなっても、ブレーキ本体10の移動に対する反力の増加が抑制される。したがって、ブレーキ装置200の制動力の安定性を確保しつつ、非制動時の第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との接触を防止して、第2ブレーキライニング4の寿命を向上させることができる。
【0119】
また、ブレーキ装置200では、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動すると、レバー部材50によってリテーナ41がクランプスプリング43の付勢力に抗して押し下げられる。このため、ブレーキ装置200の作動時には、確実にクランプ部140のクランプを解除して、第1支持ピン21とクランプ部140とを確実に相対移動させると共に、ブレーキ装置200が作動しない状態では、レバー部材50によって容易にクランプ部140のクランプが解除でき、メンテナンス性を向上させることができる。
【0120】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0121】
車輪1とともに回転するブレーキディスク2に摩擦力を付与するブレーキ装置200は、ブレーキディスク2の両側からブレーキディスク2に摺接して摩擦力を付与可能な第1及び第2ブレーキライニング3,4をそれぞれ支持する第1及び第2キャリパアーム12,14を有するブレーキ本体10と、台車に取り付けられる支持枠20に軸方向に移動自在に支持されると共にブレーキ本体10を支持する第1支持ピン21と、第1キャリパアーム12に設けられ第1ブレーキライニング3をブレーキディスク2に押圧すると共にブレーキ本体10を第1支持ピン21の軸方向に移動させて第2ブレーキライニング4をブレーキディスクに押圧する押圧部35と、第1支持ピン21をクランプ可能なクランプ部140と、制動時のブレーキ本体10の移動に対して反力を発揮して、ブレーキ本体10の移動に抗するようにクランプ部140を付勢するリリーススプリング60と、を備え、第1支持ピン21は、第2ブレーキライニング4がブレーキディスク2に近づく押圧方向へのブレーキ本体10の移動量が予め定められた基準移動量S0以下の状態では、クランプ部140によってクランプされ、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて押圧方向へ移動する際には、クランプ部140によるクランプが解除され、クランプ部140が、第1支持ピン21の軸方向に沿って間隔が徐々に狭くなるくさび空間を第1支持ピン21の外周面との間で形成するくさび面41aを有するリテーナ41と、くさび空間に収容される転動体42と、転動体42がくさび面41aに軸方向から押し付けられるようにリテーナ41を押圧するクランプスプリング43と、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動すると、リリーススプリング60の押し付け力に抗してリテーナ41を押圧してクランプを解除する解除部(レバー部材50)と、を有する。
【0122】
また、ブレーキ装置200は、クランプ部140が、リテーナ41と第1支持ピン21との間に設けられ内外周面に開口する貫通孔45aを有する筒状のインナー部材144をさらに有し、転動体42は、貫通孔45aを通じて第1支持ピン21の外周面に接触し、インナー部材144は、リテーナ41との間でクランプスプリング43を支持するばね受け部46と、支持枠20のカバー部23との間でリリーススプリング60を支持するフランジ部147と、を有する。
【0123】
また、ブレーキ装置200では、解除部が、インナー部材44に係止する窪み部50aと、窪み部50aを挟んで両側に設けられる第1及び第2当接部50b,50cと、を有するレバー部材50であり、レバー部材50は、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動すると、第1当接部50bが押圧されて窪み部50aを支点に回動し、第2当接部50cがリテーナ41をクランプスプリング43の付勢力に抗して押圧することによりクランプ部40のクランプを解除する。
【0124】
これらの構成では、制動時のブレーキ本体10の移動に伴うリリーススプリング60の反力がクランプ部140を介して第1支持ピン21に付与される。これにより、ブレーキ装置200の制動を解除すると、反力によって第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2とが離間する方向にブレーキ本体10が移動する。よって、ブレーキ装置200の解除時における第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との接触が防止される。また、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて押圧方向に移動すると、解除部によってクランプ部140による第1支持ピン21のクランプが解除され、第1支持ピン21とクランプ部140とを確実に相対移動させることができる。これにより、第2ブレーキライニング4の摩耗が進展しても、第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との間の隙間を適切に保つことができる。したがって、ブレーキ装置200の第2ブレーキライニング4の寿命を向上させることができる。
【0125】
また、ブレーキ装置200では、クランプ部140が、支持枠20の外側に設けられる。
【0126】
この構成によれば、ブレーキ装置200へのクランプ部140及びリリーススプリング60の組付けが容易となり、既存のブレーキ装置200にも容易に後付けすることができる。
【0127】
また、ブレーキ装置200では、クランプ部140が、支持枠20の内側に設けられてもよい。
【0128】
この構成によれば、支持枠20周辺の省スペース化を図ることができ、ブレーキ装置200を小型化することができる。
【0129】
また、ブレーキ装置200は、クランプ部140が、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動すると、リリーススプリング60の押し付け力に抗してリテーナ41を押圧してクランプを解除する解除部(レバー部材50)をさらに有する。
【0130】
また、ブレーキ装置200では、解除部が、インナー部材144に係止する窪み部50aと、窪み部50aを挟んで両側に設けられる第1及び第2当接部50b,50cと、を有するレバー部材50であり、レバー部材50は、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて移動すると、第1当接部50bが押圧されて窪み部50aを支点に回動し、第2当接部50cがリテーナ41をクランプスプリング43の付勢力に抗して押圧することによりクランプ部140のクランプを解除する。
【0131】
これらの構成では、ブレーキ本体10が基準移動量S0を超えて押圧方向に移動すると、解除部(レバー部材50)によってクランプ部140による第1支持ピン21のクランプが解除される。したがって、確実に第1支持ピン21とクランプ部140との相対移動を許容することができる。
【0132】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0133】
1…車輪、2…ブレーキディスク、3…第1ブレーキライニング、4…第2ブレーキライニング、10…ブレーキ本体、12…第1キャリパアーム、14…第2キャリパアーム、20…支持枠、21…第1支持ピン(支持ピン)、22…第2支持ピン(支持ピン)、35…押圧部、40,140…クランプ部、41…リテーナ(くさび部材)、41a…くさび面、42…転動体、43…クランプスプリング(押付部材)、44,144…インナー部材、45a…貫通孔、50…レバー部材(解除部)、50a…窪み部、50b…第1当接部、50c…第2当接部、60…リリーススプリング(付勢部材)、100,200…ブレーキ装置
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