(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被試験体保持装置は、本体フレームに取付けられた定滑車装置とバランスウェイトとの併用により、上下動可能なフローティング状態に配置され、押圧シリンダにより上方に押圧されて、前記被試験体は、摩擦シートを介して前記受けローラに押圧されると共に、前記押圧シリンダによる前記受けローラに対する当該被試験体の摩擦押圧力は、当該押圧シリンダのロッド又は前記被試験体保持装置の一部が、本体フレームに取付けられた第2ロードセルを押圧することで、測定可能であることを特徴とする請求項1に記載の連続式摩擦・磨耗試験装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、常に摩擦材の新規部分に被試験体を押圧させることで、現実の磨耗状態を再現させて、被試験体の耐磨耗性を適正に評価できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、連続走行する摩擦シートに対して被試験体を押圧させることで、当該被試験体の摩擦・磨耗能を試験する連続式摩擦・磨耗試験装置であって、
巻出し軸にブレーキトルクが加えられた状態で、当該巻出し軸と一体回転するシート巻管に巻回された摩擦シートを巻き出すシート巻出し装置と、
前記シート巻出し装置の巻管から巻き出された前記摩擦シートをシート巻取り軸に巻き取るシート巻取装置と、
前記シート巻出し装置と前記シート巻取装置との間を走行する摩擦シートにおける前後の各ガイドローラの間の試験走行部の一方の側に配置されて、前記被試験体を保持する被試験体保持装置と、
前記被試験体保持装置で保持された被試験体を前記摩擦シートを介して受けローラに押圧すべく、前記摩擦シートの試験走行部の他方の側に、当該被試験体と対向して配置される受けローラ装置と、
前記被試験体保持装置の全体を前記受けローラ装置の受けローラに対して設定荷重で押圧させる被試験体押圧装置と、
前記摩擦シートの前記試験走行部よりも下流側において、前記巻出し軸のブレーキトルクに抗して、当該摩擦シートを巻き出すための駆動ローラ装置と、を備え、
前記被試験体は、常に、連続走行する前記摩擦シートの新規部分に押圧されて磨耗され、
前記摩擦シートの試験走行部は、ほぼ水平であって、当該試験走行部の直下に前記被試験体保持装置が水平方向に微動可能に支持されて、前記被試験体と走行中の摩擦シートとの摩擦力により、当該被試験体保持装置が前記摩擦シートの走行方向に微動されて、当該保持装置のフレームの一部が、本体フレームに対して取付けられた第1ロードセルに押圧されることで、前記摩擦力の測定が可能であることを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明によれば、シート巻出し装置の巻出し軸のシート巻管に巻回されている摩擦シートは、前記駆動ローラ装置を構成する一対の駆動ローラの駆動回転により、当該シート巻管に巻き取られている摩擦シートの巻径に比例して減少する巻出し軸のブレーキトルクに抗して一定張力で巻き出されて、シート巻取装置の巻取り軸に巻き取られる。連続走行する摩擦シートの試験走行部においては、前記被試験体保持装置で保持された被試験体は、被試験体保持装置の全体を受けローラの側に押圧する被試験体押圧装置によって、前記摩擦シートを介して受けローラ装置の受けローラに設定荷重で押圧されることで、当該被試験体は、常に、摩擦シートの新規部分との摩擦により磨耗される。このように、摩擦材として、連続走行する摩擦シートを使用することで、被試験体は、常に摩擦シートの新規部分に対して摩擦接触することで、現実の磨耗状態が実現されて、被試験体による高い耐磨耗性の評価が得られる。
【0008】
【0009】
また、請求項
1の発明によれば、被試験体を保持している被試験体保持装置が、本体フレームに対して水平方向に微動可能に支持されていて、連続走行する摩擦シートと被試験体との摩擦によって、前記被試験体保持装置は、摩擦シートの走行方向に沿って微動されて、当該保持装置のフレームの一部が、本体フレームに取付けられた第1ロードセルを押圧することで、試験中の被試験体と摩擦シートとの摩擦力の測定が可能となる。
【0010】
請求項
2の発明は、請求項
1の発明において、前記被試験体保持装置は、本体フレームに取付けられた定滑車装置とバランスウェイトとの併用により、上下動可能なフローティング状態に配置され、押圧シリンダにより上方に押圧されて、前記被試験体は、摩擦シートを介して前記受けローラに押圧されると共に、前記押圧シリンダによる前記受けローラに対する当該被試験体の摩擦押圧力は、当該押圧シリンダのロッド又は前記被試験体保持装置の一部が、本体フレームに取付けられた第2ロードセルを押圧することで、測定可能であることを特徴としている。
【0011】
受けローラに対する被試験体の摩擦押圧力の測定に対して、被試験体保持装置の全体を上方に押圧する全体押圧力を測定すると、前記摩擦押圧力は、全体押圧力から被試験体保持装置の自重を減じた値となって、計測精度が低下する。そこで、請求項
2の発明のように、被試験体保持装置は、本体フレームに取付けられた定滑車装置とバランスウェイトとの併用により、上下動可能なフローティング状態に配置され、この状態で、押圧シリンダにより、被試験体保持装置を上方に押圧させて、被試験体を摩擦シートを介して受けローラに押圧させる構成の採用によって、押圧シリンダの上方への押圧力自体が、受けローラに対する被試験体の摩擦押圧力と同等となって、当該押圧シリンダのロッド又は被試験体保持装置の一部が、本体フレームに取付けられた第2ロードセルを押圧することで、当該摩擦押圧力は、高精度で測定可能となる。
【0012】
請求項
3の発明は、請求項1
又は2の発明において、
前記被試験体保持装置は、断面形状及び/又は長さの異なる種々の被試験体が固定される被試験体ホルダが、ホルダベッドに対して着脱可能な構成であり、
前記被試験体ホルダは、前記ホルダベッドに対して、前記被試験体の横断面視で傾動可能に支持されて、摩擦シートに対する被試験体の配置角度が調整可能であると共に、前記受けローラは、当該被試験体の傾動に対応して、摩擦シートの走行方向に微動することで、当該被試験体は、自身の配置姿勢とは無関係に、常に受けローラの最下部に押圧される構成であることを特徴としている。
【0013】
摩擦・磨耗試験の被試験体には、その素材、断面形状及び/又は長さの異なる種々のものがあり、しかも、評価精度を高めるために、同一の被試験体に対して複数回の試験を行うのが常である。請求項
3の発明は、このような実情に対応可能にしたもので、ホルダベッドに対して着脱可能な複数の被試験体ホルダを用意しておいて、各被試験体ホルダに、種々の被試験体、或いは同一の被試験体に対して複数回の試験を行う場合には、同一の別の被試験体を予めセットしておくことで、被試験体がセットされた被試験体ホルダをホルダベッドに対して着脱するのみで、被試験体のセット及び取り外しが可能となる。これにより、多数の被試験体を連続して試験する場合において、被試験体のセットの無駄時間が少なくなって、被試験体の耐磨耗性の試験の能率が高められる。
【0014】
【0015】
また、
請求項3の発明によれば、連続走行する摩擦シートに対する被試験体の配置は、当該摩擦シートの上流側において被試験体とのなす角度が鋭角となるようにすると、摩擦シートは、被試験体に引っ掛かることなくスムーズに走行できて、磨耗試験を安定して行える。請求項
3の発明によれば、連続走行する摩擦シートに対して被試験体を上記したように配置でき、しかも受けローラの最下部に被試験体を押圧することが可能となって、摩擦シートに対する被試験体の配置角度とは無関係に、常に安定状態で磨耗試験を行える。
【0016】
【0017】
【0018】
請求項
4の発明は、請求項1ないし
3のいずれかの発明において、前記摩擦シートが両面使用可能
であり、前記シート巻出し装置の側には、シート巻取装置のシート巻取り軸に巻き取られて、一面が使用済の前記摩擦シートを表裏反転状態で巻き戻して巻回して、他面を使用可能とするシート巻戻し装置が設けられていることを特徴としている。
【0019】
請求項
4の発明によれば、摩擦シートが両面使用可能
であり、一面のみが使用済の状態で、シート巻取り軸に巻き取られた摩擦シートを、シート巻出し装置の側に配置されたシート巻戻し装置の巻管に、使用済面を裏側にして巻き取った後に、当該巻管を、シート巻出し装置の巻出し軸に装着することで、摩擦シートの未使用面を使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、摩擦材として、シート巻出し装置から巻き出されて、シート巻取装置に巻き取られることで、連続走行する摩擦シートを用いているため、被試験体は、常に、摩擦シートの新規部分との摩擦により磨耗されるので、現実の磨耗状態が実現されて、被試験体による高い耐磨耗性の評価が得られる。
また、本発明によれば、被試験体を保持している被試験体保持装置が、本体フレームに対して水平方向に微動可能に支持されていて、連続走行する摩擦シートと被試験体との摩擦によって、前記被試験体保持装置は、摩擦シートの走行方向に沿って微動されて、当該保持装置のフレームの一部が、本体フレームに取付けられた第1ロードセルを押圧することで、試験中の被試験体と摩擦シートとの摩擦力の測定が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、最適な実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。最初に、
図1〜
図4を参照して、連続式摩擦・磨耗試験装置(以下、単に「試験装置」という)の概略(基本)構成について説明し、その後に、当該試験装置の各部分の具体的構成について説明する。
【0023】
本体フレームDは、水平配置された方形状の上下の各フレーム板1,2の各コーナー部が計4本の連結ロッド3を介して一体で連結され、下フレーム板2の各コーナー部が計4本のベースロッド4を介してベッド5に固定された構成である。被試験体ホルダHを保持する被試験体保持装置Aは、上下の各フレーム板1,2の間に上下方向に移動可能に配置されている。垂直上方に向いた荷重により、被試験体ホルダHに固定された被試験体Tを摩擦シートSを介して押圧させることで、摩擦押圧力F
2 を受ける受けローラRを備えた受けローラ装置Bは、上フレーム板1の直下において、前記各連結ロッド3に案内支持されて昇降する昇降板6の下面に装着されることで、前記被試験体保持装置Aの直上に配置される。摩擦シートSは、その一面又は両面に摩擦材が一体に貼り付けられている。昇降板6は、上フレーム板1の上面に垂直に取付けられた昇降シリンダ7のロッド7aが当該昇降板6の中央部に連結されることで、昇降シリンダ7の駆動により昇降される。
図4に示されるように、昇降板6における各連結ロッド3の内側には、それぞれ当接ロッド8が下方に向けて垂直となって一体に設けられ、下フレーム板2における前記各当接ロッド8の直下には、それぞれストッパロッド9が上方に向けて垂直に設けられ、昇降板6と一体に昇降する各当接ロッド8の下端面が、前記各ストッパロッド9の上端面に当接することで、当該昇降板6の下降端位置が定められる。なお、
図4に示されるように、ストッパロッド9の上端部には、人体の一部が入り込むのを防止する防護ガイド筒10が設けられ、ストッパロッド9の上端部、及び当接ロッド8の下端部は、いずれも前記防護ガイド筒10内に配置されている。
図2及び
図4に示されるように、上フレーム板1の上面には、複数本のバネ収容筒11が配置され、各バネ収容筒11に収容されたバネ軸12の先端と前記昇降板6とが連結されて、前記バネ収容筒11に収容された圧縮バネ13の復元力によりバネ軸12が上方に移動するように付勢されることで、前記昇降板6が上方に付勢されていて、この付勢力に抗して前記昇降シリンダ7により昇降板6は、下方に移動される。
【0024】
図1及び
図3に示されるように、本体フレームDの一方の側には、シート巻出し装置Eが配置され、その他方には、シート巻取装置Jが配置されている。シート巻出し装置Eの巻出し軸21には、摩擦シートSが巻回されたシート巻管22が嵌め込まれ、巻出し軸21には、パウダーブレーキ23により、摩擦シートSの巻径に比例したブレーキトルクが加えられることで、当該摩擦シートSは、常に、一定張力で巻き出される。シート巻取装置Jの巻取り軸24には、同じくシート巻管25が嵌め込まれ、当該巻取り軸24は、駆動モータM
1 の駆動により回転される。摩擦シートSの走行路を特定するために、本体フレームDの両側には、それぞれガイドローラ26a,26bが配置され、本体フレームDにおける前後一対の連結ロッド3の間には、被試験体Tを押圧される摩擦シートSの支持スパンを定めるためのスパンローラ27a,27bが配置されている。
図4に示されるように、前後一対の連結ロッド3には、支持板28が水平に支持され、各スパンローラ27a,27bは、当該支持板28に一対の支持ブラケット29を介して支持されている。シート巻取装置Jの側のガイドローラ26bとスパンローラ27bとの間には、巻出し軸21のシート巻管22から摩擦シートSを巻き出すために、当該摩擦シートSを挟持する一対のニップローラ(送りローラ)31a,31bが配置されている。一方のニップローラ31aは、不動であって、駆動モータ(図示せず)により駆動回転され、他方のニップローラ31bは、上下方向に可動であって、従動回転される。即ち、摩擦シートSは、一対のニップローラ31a,31bにより、巻出し軸21のシート巻管22から巻き出されて、巻取り軸24のシート巻管25は、摩擦により損耗された摩擦シートSを単に巻き取るのみである。
【0025】
また、
図1及び
図3に示されるように、摩擦シートSが表裏両面使用可能な場合には、巻出し軸21及びシート巻管22を、
図1で2点鎖線で示される巻戻し位置に配置させて、当該巻戻し位置に配置された巻戻し軸(図示せず)を巻戻し用の駆動モータM
2 により、巻出し軸21の回転と逆方向に駆動回転させることで、巻取り軸24のシート巻管25に巻き取られた一面が使用済の摩擦シートS’を、表裏反転状態で巻き戻してシート巻管22に巻回させ、その後に、一面が使用済の摩擦シートS’が巻き取られたシート巻管22を、左右反転させて、巻出し軸21に装着することで、摩擦シートSの未使用面が使用可能となる。
【0026】
図5〜
図9において、被試験体保持装置Aは、計4本の支持ロッド35を介して下フレーム板2に対して昇降可能に支持されている。保持板36には、摩擦シートSの走行方向Pに沿った一対の支持ロッド37が支持ブラケット38に支持され、各支持ロッド37に固定された支持ブロック39に、ホルダベッド板41が一体に取付けられ、当該ホルダベッド板41に取付けられた一対のあり溝ブロック42a,42bの間に被試験体ホルダHが着脱可能に取付けられる。一方のあり溝ブロック42aは、前記ホルダベッド板41に一体に取付けられて、他方のあり溝ブロック42bは、長手方向に二分割されて、ガイドブロック43に案内されて、駆動シリンダ44よりに駆動されて、摩擦シートSの走行方向Pに沿って僅かに進退して、一対のあり溝ブロック42a,42bに対して被試験体ホルダHを着脱可能にしている。
【0027】
被試験体ホルダHは、断面形状及び/又は長さの異なる種々の被試験体T、或いは同一の被試験体Tで複数回の試験を行う場合には、別の同一の被試験体Tを予めセットしておいて、当該被試験体Tが固定された被試験体ホルダHを前記ホルダベッド板41にワンタッチで着脱することで、被試験体Tの交換作業を迅速にさせている。被試験体ホルダHは、
図8に示されるように、横断面視で両端部があり状となったホルダ基板45に対して被試験体取付け板46が、幅方向の中央部の回動支点軸47を中心にして僅かに回動可能に支持されている。回動支点軸47は、摩擦シートSの走行方向と直交する方向に沿って水平に配置されている。被試験体取付け板46の上面には、被試験体取付けブロック48が複数本の固定ボルト49を介して固定され、被試験体取付けブロック48の支持突部48aの側面に、被試験体Tが配置されて、その他方の側面が、返信構造のロックボルト51の六角頭部51aにより、被試験体Tが前記支持突部48aに押し付けられることで、固定される。
【0028】
また、
図1に示されるように、一対のスパンローラ27a,27bの摩擦シートSは、受けローラRにより僅かに下方に押し付けられることで、垂直配置された被試験体Tとのなす角度(θ
1 )が90°よりも大きくすることで、走行中の摩擦シートSと被試験体Tとの引掛り現象が生じないようにしてある。また、
図17に示されるように、被試験体Tは、垂直配置するよりも、摩擦シートSの上流側において、当該摩擦シートSと被試験体Tとのなす角度(θ
2 )が前記角度(θ
1 )よりも小さくなる(θ
2 <θ
1 )ように、当該被試験体Tを傾斜配置する方が、被試験体Tと摩擦シートSとの摩擦現象が、更にスムーズとなる。なお、
図17において、被試験体Tは、摩擦押圧力の符号(F
2 )を記入可能とすべく、他の図面との関係において、板厚を厚くして表示してある。よって、回動支点軸47を中心に僅かに回動する被試験体取付け板46の裏面の幅方向の一端部は、V字状の受け面52が形成され、当該受け面52と、前記ホルダ基板45の当接面45aとの間に、断面円形の挟持円柱体53が配置され、被試験体取付け板46の幅方向の他端部には、頭部54aが前記ホルダ基板45に当接する調整固定ボルト54が設けられ、前記挟持円柱体53と前記当接面45aとの間にシム板55を介在させることで、被試験体Tと、当該被試験体Tの上流側の摩擦シートSとのなす角度(θ
2 )を前記角度(θ
1 )よりも小さくできて、前記シム板55の板厚の調整により、前記角度(θ
2 )の調整が可能となる。なお、
図5〜
図9において、56は、被試験体ホルダHの着脱の際に、手で把持する把手を示す。
【0029】
よって、試験時には、被試験体Tが走行中の摩擦シートSを介して受けローラRを押圧させるために、当該摩擦シートSと被試験体Tとの摩擦力F
1 により、ホルダベッド板41は、摩擦シートSの走行方向Pに追従移動させられる。この現象を利用して、前記摩擦力F
1 を測定すべく、前記保持板36の上面における一対の支持ロッド37の間には、第1ロードセル圧接板61が取付けられ、前記ホルダベッド板41の裏面には、第1ロードセルL
1 が取付けられ、前記摩擦力F
1 によりホルダベッド板41が上記方向に追従移動されると、
図10に示されるように、第1ロードセルL
1 が第1ロードセル圧接板61に圧接することで、前記摩擦力F
1 が測定される構成になっている。なお、異常時において、設定を遥かに上回る荷重が第1ロードセルL
1 に作用する場合には、ホルダベッド板41における摩擦シートSの走行方向Pに沿った下流側の端面は、当該下流側に配置した各支持ブラケット38に取付けられたストッパボルト63に当接することで、前記第1ロードセルL
1 に過荷重が作用するのを防止している。
【0030】
また、試験時において、摩擦シートSと被試験体Tとの摩擦により発生する磨耗粉が周辺に飛散するのを防止すべく、前記被試験体ホルダHの全体は、カバー体64で覆われる。即ち、カバー体ユニット65は、取付け板66を介して前記ホルダベッド板41の裏面側に取付け可能であって、カバー体64の幅方向の中央部には、直線状の空隙67が設けられ、被試験体Tは、当該空隙67を通して上方に突出した状態で配置される。カバー体64の裏面側には、吸引気流が及んでいるため、当該吸引気流により、発生した磨耗粉は、前記空隙67を通って、当該カバー体64の裏面側に吸引して回収される構成になっている。
【0031】
次に、
図10及び
図11を参照して、被試験体保持装置Aをフローティングさせるフローティング装置G、及び被試験体保持装置Aの全体を上方に押圧させて、摩擦シートSを介して被試験体Tを受けローラRに押圧させて、摩擦押圧力F
2 を発生させる摩擦押圧装置Nについて説明する。下フレーム板2の直下には、所定期間をおいて固定フレーム板71が配置されて、計4本の連結ロッド72を介して連結されている。下フレーム板2と固定フレーム板71との間には、可動板73が上下方向に移動可能に配置されて、被試験体保持装置Aの保持板36と前記可動板73とは、下フレーム板2を貫通する計4本の可動連結ロッド74を介して連結されることで、被試験体保持装置Aの保持板36とは、一体となって昇降する構成となっている。各可動連結ロッド74は、下フレーム板2を貫通して、当該下フレーム板2に固定されたボールブッシュから成る直線案内筒75に案内されて上下方向する摺動することで、摺動抵抗を小さくしてある。
【0032】
固定フレーム板71の各コーナー部には、滑車支持支柱76が垂直となって固定されて、各滑車支持支柱76の上端部の外側には、回転軸心を摩擦シートSの走行方向Pに沿わせて定滑車77がそれぞれ取付けられ、各定滑車77に掛装された連結ロープ78の上端側端部は、前記可動板73の各コーナー部に連結されていると共に、当該連結ロープ78の上端側端部は、バランスウェイト載置板81の各コーナー部にフックボルト82を介して連結される。この構成によって、前記バランスウェイト載置板81の重量を含めて、被試験体保持装置Aの重量と同等のバランスウェイトWを、当該バランスウェイト載置板81に載置することで、定滑車77に掛装されている前記連結ロープ78の両端部に作用する荷重が同等となって、被試験体保持装置Aは、空中にフローティングされた状態となる。よって、被試験体保持装置Aを上昇させる際に、当該被試験体保持装置Aの自重が負荷とならなくなって、垂直上方を向いた小さな荷重(受けローラRに対しては、摩擦押圧力F
2 として作用する荷重)によって、昇降する構造が実現される。上記した各連結ロッド72の上端側は、他部に比較して小径に形成され、下フレーム板2から上方に突出されることでストッパ部72aとなっており、被試験体保持装置Aの保持板36から下方に突出されたストッパ体79に当接することで、当該被試験体保持装置Aの下降端位置を定めている。
【0033】
図12は、
図1のX矢視を主体にした図であって、被試験体保持装置Aを昇降させると共に、当該被試験体保持装置Aの上昇時において、走行中の摩擦シートSを介して被試験体Tを直上の受けローラRに押圧させて、摩擦力F
1 を発生させるための摩擦押圧装置Nの側面原理図である。下フレーム板2の下面には、押圧力を調整可能な押圧シリンダK
1 が上方を向いて装着されて、そのロッド85は、下フレーム板2に設けられた貫通孔86から出没可能に配置されている。一方、被試験体保持装置Aの保持板36の下面における前記押圧シリンダK
1 と対向する位置に、第2ロードセルL
2 が下方を向いて装着され、前記押圧シリンダK
1 のロッド85を突出させて、当該ロッド85が設定荷重で第2ロードセルL
2 の検出部を押圧すると、
図12(a)に示されるように、フローティング状態の被試験体保持装置Aは、前記設定荷重で上方に押圧されることで、被試験体Tは、前記設定荷重と等しい摩擦押圧力F
2 により、走行中の摩擦シートSを介して受けローラRに押圧される。このように、被試験体保持装置Aは、フローティング状態で空中配置されているため、小さな押圧力で上昇させることが可能となり、この小さな押圧力は、予め設定された荷重であるので、受けローラRに対する摩擦押圧力F
2 の正確な測定が可能となる。押圧シリンダK
1 の押圧力を調整することで、摩擦押圧力F
2 を調整できる。
【0034】
また、前記押圧シリンダK
1 の直下には、方形状のシリンダ取付け板87が配置されて、当該取付け板87における一方の対角線方向に沿った各コーナー部において、一対の連結ロッド88を介して下フレーム板2に連結されている。シリンダ取付け板87の下面には、被試験体保持装置Aを下降させる下降シリンダK
2 が下方を向いて装着されている。下降シリンダK
2 の直下には、同じく方形状の押付け板91が配置され、当該押付け板91における前記取付け板87における一対の連結ロッド88を連結している対角線方向とは、別の対角線方向に沿ってコーナー部と、被試験体保持装置Aの保持板36とは、一対の連結ロッド92を介して連結されている。このため、下降シリンダK
2 のロッド93を下方に向けて突出させると、
図12(b)で示されるように、下降シリンタK
2 のロッド93の突出により、押付け板91が下方に押し付けられることで、一対の連結ロッド92を介して被試験体保持装置Aの全体が下降されて、被試験体Tは、受けローラRから離間される。
【0035】
次に、
図13〜
図16を参照して、受けローラ装置Bについて説明する。受けローラ装置Bは、摩擦押圧装置Nを構成する押圧シリンダK
1 により、受けローラRに対して走行中の摩擦シートSを介して被試験体Tを押圧する摩擦押圧力F
2 を受ける装置であって、両端部があり状(傾斜面状)に形成されたスライド板101に、摩擦シートSの走行方向Pに沿って設定間隔をおいて一対の方形枠体支持板102a,102bが一体に立設されている。方形枠体103における摩擦シートSの走行方向と直交する方向Qに沿って所定間隔をおいて一対の軸受部104が昇降板6の側に向けて一体に設けられ、受けローラRは、横断面視における全体の一部が方形枠体103から下方に向けて突出するようにして、軸方向の両端の小径の支持軸部105を介して当該方形枠体103の前記軸受部104に回転可能に支持されている。
【0036】
受けローラRを支持している方形枠体103は、当該受けローラRの軸方向の中央部において回動支持軸106を介して前記各方形枠体支持板102a,102bに、摩擦シートSの走行方向に沿った軸心を中心にして回動可能に支持されている。即ち、方形枠体103における受けローラRの軸心方向に沿った部分の中央部には、一対の回動支持板部107がスライド板101の側に向けて一体に設けられ、各回動支持板部107と、前記方形枠体支持板102a,102bとが、それぞれ回動支持軸106で連結支持されている。よって、方形枠体103、即ち、受けローラRは、その全体が、自身の軸心と直交する軸心を有する回動支持軸106を中心にして僅かに回動可能な構造とすることで、被試験体Tの長手方向(摩擦シートSの走行方向と直交する方向Q)に沿った全部分が受けローラRに押圧可能となって、磨耗試験の精度が高められる。方形枠体103、即ち、受けローラRの回動角度を規制するために、スライド板101には、前記軸受部104が当接するストッパ体108が設けられている。換言すると、軸受部104とストッパ体108との間には、僅かの隙間109が形成されている。
【0037】
上記したように、被試験体Tと走行中の摩擦シートSの上流側とのなす角度(θ
2 )を鋭角にして、被試験体Tと摩擦シートSとの摩擦をスムーズにさせると、被試験体Tの先端は、摩擦シートSの走行方向に沿った下流側に微動し、この場合においても、被試験体Tが受けローラRの直下に押圧されることが望ましい。
図17において、被試験体Tが傾斜配置されることで、受けローラRが、摩擦シートSの走行方向Pに沿って距離Uだけ移動した状態が図示されている。そこで、前記スライド板101は、昇降板6の裏面に固定された一対のあみ溝ブロック111a,111bに案内されて、摩擦シートSの走行方向に沿ってスライド可能な構造にしてある。摩擦シートSの走行方向Pと直交する方向Qに配置されたスライド軸112を回転させると、当該回転が直線変換機構113によって、摩擦シートSの走行方向Pの直線移動に変換されることで、前記スライド板101は、摩擦シートSの走行方向Pに沿って微動する構造にしてある。なお、
図13及び
図14において、114は、スライド板101をあり溝ブロック111aに対して押圧させて固定するための押圧ブロックであり、ハンドル115によって、回転ねじ軸116を回転させることで、押圧ブロック114を前記方向Qに微動させて、スライド板101の固定、及びその解除を行う。
【0038】
そして、上記した試験装置を用いて、被試験体Tの摩擦・磨耗試験を行うには、以下のようにする。
図2は、試験装置の非試験状態であって、被試験体保持装置Aの保持板36の下面から下方に突出した各ストッパ体79が、本体フレームDに対して固定配置された各ストッパ部72aに当接することで、被試験体保持装置Aは、本体フレームDに対して下降端に配置されていると共に、昇降シリンダ7及び各バネ収容筒11に収容された圧縮バネ13の復元力により、受けローラ装置Bは、本体フレームDに対して上昇端位置に配置されることで、受けローラRと、被試験体保持装置Aの被試験体ホルダHにセットされた被試験体Tとは、上下方向に沿って離間されている。この状態で、シート巻出し装置Eのシート巻管22に巻回されている摩擦シートSを巻き出して、上下一対のニップローラ31a,31bの間を通して、左右一対のガイドローラ26a,26b、左右一対のスパンローラ27a,27bに巻き掛けて、シート巻取装置Jのシート巻管25に巻回させ、その後に、上方に退避している従動回転するニップローラ31bを下降させて、駆動回転するニップローラ31aに対して押し付けて、各ニップローラ31a,31bの間の摩擦シートSを挟持する。
【0039】
次に、昇降シリンダ7の押下げ力により、各バネ収容筒11に収容された圧縮バネ13の復元力に抗して、昇降板6の裏面に装着されている受けローラ装置Bを、その当接ロッド8がストッパロッド9に当接する下降端まで下降させて、前記昇降シリンダ7の押下げ力を加え続けることで、当該状態を維持させる。当接状態では、被試験体保持装置Aは、
図2及び
図12(b)に示されるように、被試験体保持装置Aの側の各ストッパ体79が、本体フレームDの側の各ストッパ部72aに当接することで、被試験体保持装置Aは、下降端に位置していて、押圧シリンダK
1 のロッド85は、下フレーム板2の貫通孔86内に入り込んでいる。この状態で、押圧シリンダK
1 のロッド85を突出させると、当該ロッド85は、第2ロードセルL
2 を介してフローティング状態の被試験体保持装置Aの全体を上方に昇降量V(
図1及び
図10参照)だけ押し上げることで、被試験体ホルダHに取付けられている被試験体Tは、摩擦シートSを介して直上の受けローラRに押圧される。この状態が、
図1及び
図12(a)で示される試験時の状態である。
【0040】
上記において、押圧シリンダK
1 の押圧力である摩擦押圧力F
2 は、予め設定されていて、フローティング状態の被試験体保持装置Aの持ち上げには、一切寄与しておらず、しかも第2ロードセルL
2 により測定される。各直線案内筒75に対する各可動連結ロッド74の摺動抵抗は、極めて小さいので、第2ロードセルL
2 により測定される荷重は、受けローラRに対して被試験体Tが押圧される摩擦押圧力F
2 と見做すことができる。
【0041】
上記の試験時の状態において、パウダーブレーキ23、一対のニップローラ31a,31bのうち下方のニップローラ31bの駆動モータ(図示せず)、シート巻取装置Jの巻取り軸24の駆動モータM
1 を、それぞれ駆動させると、一対のニップローラ31a,31bにより、シート巻取装置Jのシート巻管22から摩擦シートSが巻き出されることで、摩擦押圧力F
2 で受けローラRに押圧されている被試験体Tは、常に、走行中の摩擦シートSの新規部分で摩擦・磨耗される。また、被試験体Tの先端磨耗部の配置姿勢に応じて、受けローラRは、軸方向の中央部に配置された回動支持軸106を中心に僅かに回動することで、被試験体Tは、偏磨耗されることなく、均一磨耗される。これにより、現実の摩擦・磨耗に近い状態が実現され、高評価の摩擦・磨耗試験が行われる。被試験体Tの磨耗量が多い場合には、試験中において、被試験体保持装置Aは、押圧シリンダK
1 の押圧力により、前記磨耗量に応じた微量だけ上昇されて、常に設定した摩擦押圧力F
2 で摩擦・磨耗試験が行われる。摩擦・磨耗に供された使用済の摩擦シートSは、シート巻取装置Jのシート巻管25に巻き取られる。
【0042】
また、連続走行する摩擦シートSと被試験体Tとの摩擦力F
1 によって、被試験体ホルダHを装着しているホルダベッド板41は、一対の支持ロッド37に案内されて摩擦シートSの走行方向Pに移動させられて、当該保持板36の下面に装着した第1ロードセルL
1 が、保持板36の上面に固定された第1ロードセル圧接板61に圧接されることで、当該第1ロードセルL
1 によって前記摩擦力F
1 が測定される。
【0043】
このように、上記した試験装置によれば、シート巻出し装置Eから巻き出されて、シート巻取装置Jに巻き取られることで、試験走行部において略水平方向に連続走行する摩擦シートSによって、被試験体Tは、常に当該摩擦シートSの新規部分で摩擦・磨耗されるために、摩擦・磨耗状態が、現実の状態に近づいて、高い耐磨耗性の評価が得られるのに加えて、第1及び第2の各ロードセルL
1 ,L
2 によって、摩擦力F
1 及び摩擦押圧力F
2 の双方が測定可能となって、被試験体Tの耐磨耗性の評価の基準項目の一つである摩擦力F
1 及び摩擦押圧力F
2 に関して、具体的な数値が得られるために、被試験体Tの耐磨耗性の評価の信頼性が高まる。
【0044】
試験終了後には、シート巻出し装置Eのパウダーブレーキ23、シート巻取装置Jの駆動モータM
1 及びニップローラ31aの駆動モータ(図示せず)を停止させた状態で、押圧シリンダK
1 のロッド85を引っ込めた後に、下降シリンダK
2 のロッド93の突出により、被試験体保持装置Aのストッパ体79が本体フレームDのストッパ部72aが当接するまで、フローティング状態の当該被試験体保持装置Aの全体が下降する。また、昇降シリンダ7のロッド7aが引っ込むと共に、各バネ収容筒11に収容された各圧縮バネ13の復元力により、本体フレームDに対して昇降板6が上昇することで、当該昇降板6の下面に装着された受けローラ装置Bが上昇して、摩擦シートSに対して離間する。
【0045】
この状態で、被試験体保持装置Aの被試験体ホルダHを、予め被試験体Tがセットされている別の被試験体ホルダHと交換し、再度、上記した各操作を反復させることで、被試験体Tの交換時間を極めて短くすることで、高能率で、被試験体Tの摩擦・磨耗試験
が行われる。
【0046】
また、上記実施例では、摩擦シートSの試験走行部が略水平であって、当該試験走行部の下方に被試験体Tを配置すると共に、その上方に受けローラRを配置しているが、配置を逆にして、摩擦シートSの試験走行部の上方に被試験体Tを配置して、その下方に受けローラRを配置することも可能である。更に、摩擦シートSの試験走行部は、垂直方向に配置してもよいし、傾斜方向に配置してもよい。