(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直流電源(100)が接続される入力側から、磁気的に結合する第1コイル(L11,L21,L31)及び第2コイル(L12,L22,L32)からなるトランス(Tr11,Tr21,Tr31)、及びスイッチング素子(Q11,Q11a,Q12,Q12a,Q21〜Q24,Q31〜Q33,Q33a)を備える電力変換回路(10,10a,20,30,30a)を介して出力側の回路へと電力を供給する電力変換装置であって、
前記電力変換回路と前記直流電源との間に設けられるチョークコイル(L13,L23,L33)と、
前記チョークコイルをフライバックトランスとして機能させるべく、前記出力側の回路に並列接続され、前記チョークコイルと磁気的に結合し、前記チョークコイルに前記直流電源の正極側から負極側へ励磁電流が流れた場合に、前記出力側の回路の負極側から正極側への励磁電流が流れる方向に巻かれた補助コイル(L14,L24,L34)と、
前記補助コイルと直列接続され、前記直流電源から前記出力側への前記補助コイルを介した電力の供給、及び、前記出力側から前記入力側への電力の供給を遮断する整流素子(D1)と、を備え、
前記第1コイル(L11)は、センタータップを有し、
前記電力変換回路(10,10a)は、前記第1コイルの両端のそれぞれに接続された第1スイッチング素子(Q11,Q11a)及び第2スイッチング素子(Q12,Q12a)を有し、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子が、前記直流電源の正極及び負極の一方に接続され、前記センタータップが前記直流電源の正極及び負極の他方に接続され、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を制御する制御部(300)と、
前記出力側の電圧を出力側電圧として検出する電圧検出部(202)と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との一方をONとし、他方をOFFとする制御と、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とを共にOFFとする制御と、を順に行う期間を含む第1モードと、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とを共にONとする制御と、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との一方をONとし、他方をOFFとする制御と、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とを共にOFFとする制御と、を順に行う期間を含む第2モードと、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との一方をONとし、他方をOFFとする制御と、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とを共にONとする制御と、を順に行う期間を含む第3モードと、のうち、少なくとも2つのモードを実行し、
前記第1モードでは、
前記出力側電圧が所定値よりも小さい場合には、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との一方についてONとOFFとを交互に行い、且つ、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との他方について、OFF状態を継続し、
前記出力側電圧が所定値よりも大きい場合には、前記第1スイッチング素子のON期間と前記第2スイッチング素子のON期間とを重複させず、且つ、1制御周期に対するON状態を継続する期間の長さである時比率を50%未満としてONとOFFとを交互に行う、電力変換装置。
直流電源(100)が接続される入力側から、磁気的に結合する第1コイル(L11,L21,L31)及び第2コイル(L12,L22,L32)からなるトランス(Tr11,Tr21,Tr31)、及びスイッチング素子(Q11,Q11a,Q12,Q12a,Q21〜Q24,Q31〜Q33,Q33a)を備える電力変換回路(10,10a,20,30,30a)を介して出力側の回路へと電力を供給する電力変換装置であって、
前記電力変換回路と前記直流電源との間に設けられるチョークコイル(L13,L23,L33)と、
前記チョークコイルをフライバックトランスとして機能させるべく、前記出力側の回路に並列接続され、前記チョークコイルと磁気的に結合し、前記チョークコイルに前記直流電源の正極側から負極側へ励磁電流が流れた場合に、前記出力側の回路の負極側から正極側への励磁電流が流れる方向に巻かれた補助コイル(L14,L24,L34)と、
前記補助コイルと直列接続され、前記直流電源から前記出力側への前記補助コイルを介した電力の供給、及び、前記出力側から前記入力側への電力の供給を遮断する整流素子(D1)と、を備え、
前記電力変換回路(20)は、
直列接続された第1スイッチング素子(Q21)及び第2スイッチング素子(Q22)と、直列接続された第3スイッチング素子(Q23)及び第4スイッチング素子(Q24)と、を有し、
前記第1コイルの一端は前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子の接続部に接続され、前記第1コイルの他端は前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子の接続部に接続され、
前記第1スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子が前記直流電源の正極側に接続され、前記第2スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子が前記直流電源の負極側に接続されるフルブリッジ回路を備え、
前記第1〜第4スイッチング素子を制御する制御部(300)と、
前記出力側の電圧を出力側電圧として検出する電圧検出部(202)と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1スイッチング素子と前記第4スイッチング素子とをONとし、前記第2スイッチング素子と前記第3スイッチング素子とをOFFとする制御、又は、前記第2スイッチング素子と前記第3スイッチング素子とをONとし、前記第1スイッチング素子と前記第4スイッチング素子とをOFFとする制御と、前記第1〜第4スイッチング素子をいずれもOFFとする制御と、を順に行う期間を含む第1モードと、
前記第1〜第4スイッチング素子をいずれもONとする制御と、前記第1スイッチング素子と前記第4スイッチング素子とをONとし、前記第2スイッチング素子と前記第3スイッチング素子とをOFFとする制御、又は、前記第2スイッチング素子と前記第3スイッチング素子とをONとし、前記第1スイッチング素子と前記第4スイッチング素子とをOFFとする制御と、前記第1〜第4スイッチング素子をいずれもOFFとする制御と、を順に行う期間を含む第2モードと、
前記第1〜第4スイッチング素子をいずれもONとする制御と、前記第1スイッチング素子と前記第4スイッチング素子とをONとし、前記第2スイッチング素子と前記第3スイッチング素子とをOFFとする制御、又は、前記第2スイッチング素子と前記第3スイッチング素子とをONとし、前記第1スイッチング素子と前記第4スイッチング素子とをOFFとする制御と、順に行う期間を含む第3モードと、のうち、少なくとも2つのモードを実行し、
前記第1モードでは、
前記出力側電圧が所定値よりも小さい場合には、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子についてONとOFFとを交互に行い、且つ、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子についてOFF状態を継続する制御、又は、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子についてONとOFFとを交互に行い、且つ、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子についてOFF状態を継続する制御を行い、
前記出力側電圧が所定値よりも大きい場合には、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のON期間と、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子のON期間とを重複させず、且つ、前記第1〜第4スイッチング素子のいずれも、1制御周期に対するON状態を継続する期間の長さである時比率を50%未満としてONとOFFとを交互に行う、電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0011】
<第1実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、公称電圧が12Vである鉛バッテリ等の二次電池と、公称電圧が数百Vであるリチウムイオンバッテリ等の高電圧蓄電池とを備えるハイブリッドカーに搭載されるものである。
【0012】
図1は、本実施形態に係る電力変換装置の回路図である。本実施形態に係る電力変換装置は、電力変換回路10を介して入力側に接続される直流電源である二次電池100の電力を、出力側へと供給するものである。
【0013】
電力変換回路10は、トランスTr11と、MOSFETである第1〜第6スイッチング素子Q11〜Q16を備えている。トランスTr11は、互いに磁気的に結合した第1コイルL11と第2コイルL12とにより構成され、第1コイルL11は、センタータップを有している。第2コイルL12の巻数は、第1コイルL11の巻数のN/2倍である。すなわち、第2コイルL12の巻数が、第1コイルL11のいずれか一方の端からセンタータップまでの巻数のN倍となっている。
【0014】
第1コイルL11の両端は、それぞれ、第1スイッチング素子Q11のドレイン、第2スイッチング素子Q12のドレインに接続されている。一方、第1スイッチング素子Q11のソースと第2スイッチング素子Q12のソースとが接続されている。
【0015】
二次電池100は、チョークコイルL13を介して電力変換回路10と接続されている。具体的には、チョークコイルL13の一端が二次電池100の正極に接続され、チョークコイルL13の他端が、第1コイルL11のセンタータップに接続されている。一方、第1スイッチング素子Q11のソースと第2スイッチング素子Q12のソースとの接続点は、二次電池100の負極に接続されている。また、二次電池100には、コンデンサ101が並列接続されている。
【0016】
第2コイルL12の端部の一方は、第3スイッチング素子Q13のソース及び第4スイッチング素子Q14のドレインに接続されている。第2コイルL12の端部の他方は、第5スイッチング素子Q15のソース及び第6スイッチング素子Q16のドレインに接続されている。第3スイッチング素子Q13のドレイン及び第5スイッチング素子Q15のドレインは、正極側出力端子200aに接続されており、第4スイッチング素子Q14のソース及び第6スイッチング素子Q16のソースは、負極側出力端子200bに接続されている。この正極側出力端子200a、負極側出力端子200bには、コンデンサ201が並列接続されている。
【0017】
電力変換装置は、さらに、チョークコイルL13と磁気的に結合する補助コイルL14を備えている。これらチョークコイルL13と補助コイルL14により、フライバックトランスとして機能する第2トランスTr12を構成している。補助コイルL14は、電力変換回路10に対して並列接続され、正極側出力端子200a及び負極側出力端子200bに接続されている。
【0018】
この補助コイルL14は、チョークコイルL13に二次電池100の正極側から負極側へ励磁電流が流れた場合に、出力側の回路の負極側から正極側へ励磁電流が流れる方向に巻かれている。この補助コイルL14とチョークコイルL13との巻数比は、N:1である。加えて、補助コイルL14の負極側出力端子200b側には、ダイオードD1が直列接続されている。チョークコイルL13に対して二次電池100の正極から電圧が印加される場合には、ダイオードD1により、補助コイルL14を介した出力側への電力の供給は遮断される。また、補助コイルL14に対して正極側出力端子200a側から電圧が印加される場合には、ダイオードD1により、チョークコイルL13への電力の供給は遮断される。
【0019】
電力変換装置は、二次電池100の電圧である入力側電圧VBを検出する入力側電圧検出部102、チョークコイルL13を流れる電流(入力側の回路を流れる電流)であるリアクトル電流ILを検出する入力電流検出部103、及び、出力側の電圧(コンデンサ201の電圧)である出力側電圧VHを検出する出力側電圧検出部202を備えている。検出された入力側電圧VB、出力側電圧VH、及びリアクトル電流ILは、制御部300へ入力される。
【0020】
制御部300は、入力された入力側電圧VB、出力側電圧VH、及びリアクトル電流ILに基づいて演算を行い、第1スイッチング素子Q11、第2スイッチング素子Q12へ制御信号を送信する。このとき、出力側において、コンデンサ201への充電の進行具合に応じて、第1〜第3モードのいずれかを選択して制御を行う。
【0021】
第1モードの制御について、
図2のタイムチャートを用いて説明する。第1モードでは、第1スイッチング素子Q11をONとし、第2スイッチング素子Q12をOFFとする制御Aと、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12をいずれもOFFとする制御Bとを交互に行う。換言すれば、第2スイッチング素子Q12を常にOFFとしておき、第1スイッチング素子Q11のONとOFFとを交互に行う。
【0022】
制御Aでは、リアクトル電流ILの単位時間あたりの変化量は、チョークコイルL13に印加される電圧であるリアクトル電圧VLに基づいて定まる。このリアクトル電圧VLは、入力側電圧VBから、出力側電圧VHを巻数比で除算した値を減算したものとなる。また、第2コイルL12側に流れる電流である出力側電流ICの単位時間あたりの変化量は、リアクトル電流ILの単位時間あたりの変化量dIL/dtをNで除算した値となる。第2コイルL12に印加される電圧である励磁電圧VTは出力側電圧VHと等しい。励磁電流IMの時間変化量は、励磁電圧VTを励磁インダクタンスで除算したものであるため、直線的に単調増加する。なお、励磁電流IMについて、正極側出力端子200aから負極側出力端子200bへと流れる向きを正としている。
【0023】
この制御Aが行われる際の電流経路について、
図3(a)を用いて説明する。
図3(a)では、電流経路を矢印で示している。また、励磁電流IMについては破線で示している。第1コイルL11側では、二次電池100から供給される電流は、チョークコイルL13、第1コイルL11、第1スイッチング素子Q11の順に通過する経路をとることとなる。第2コイルL12側では、第6スイッチング素子Q16、第2コイルL12、第3スイッチング素子Q13の順に通過する経路をとることとなる。また、励磁電流IMについては、第3スイッチング素子Q13、第2コイルL12、第6スイッチング素子Q16の順に通過する経路をとることとなる。
【0024】
制御Aでは、リアクトル電流ILが単調増加するため、リアクトル電流ILが予め定められた値である第1指令値Iref1となることを条件に、リアクトル電流ILを減少させるべく制御Bが行われる。
【0025】
制御Bでは、リアクトル電流ILはゼロとなる。一方で、チョークコイルL13には逆起電力が生じ、リアクトル電圧VLは、出力側電圧VHを巻数比で除算した値の負値となる。そのため、フライバック電流IDはリアクトル電圧VLの値に基づいて直線的に単調減少し、それに伴いリアクトル電流ILも直線的に単調減少する。また励磁電圧VTは出力側電圧VHの負値となり、励磁電流IMは単調減少することとなる。
【0026】
この制御Bが行われる際の電流経路について、
図3(b)を用いて説明する。この電流経路は、制御Bの前半である期間B11の経路を示している。制御Bにおいて、第1コイルL11側では、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12が共にOFFであるため、二次電池100からの電力の供給は行われない。一方で、チョークコイルL13にはリアクトル電流ILが残存しており逆起電力が生ずるため、そのリアクトル電流ILにより補助コイルL14を介した電力の供給がなされることとなる。また、励磁電流IMについては、第3スイッチング素子Q13、第2コイルL12、第6スイッチング素子Q16の順に通過する経路をとることとなる。なお、制御Bの後半である期間B12については、いずれの電流も流れないため、電流経路についての説明を省略する。
【0027】
ところで、この第1モードにおけるフライバック電流IDは、上述した通り、制御Bが行われる期間においてリアクトル電圧VLの値に応じて直線的に単調減少する。このリアクトル電圧VLは、制御Bでは出力側電圧VHに基づくものであるため、フライバック電流IDの時間当たりの減少量は、出力側における充電の進行具合に基づいて変化する。この場合のフライバック電流IDについて、
図4を用いて説明する。
図4(a)はコンデンサ201への充電の開始時等の出力側電圧VHが0Vに近い状態のタイムチャートである。このとき、フライバック電流IDは制御Bの期間において十分に減少せず、出力側電流ICは、制御Aの期間ではトランスTr11を介して連続的に供給され、制御Bの期間では第2トランスTr12を介して連続的に供給されることとなる。
【0028】
図4(b)は、出力側電圧VHの値が、入力側電圧VBに巻数比Nを乗算した値の半分程度である場合でのタイムチャートである。この場合では、制御Aにおける出力側電流ICの時間当たりの増加量と、制御Bにおける出力側電流ICの時間当たりの減少量が等しくなる。そのため、制御Aが行われる期間と制御Bが行われる期間とが等しくなるように第1指令値Iref1を設定すれば、制御Bの終了時点でフライバック電流IDをゼロとすることができ、充電を効率よく行いつつ、リアクトル電流IL及びフライバック電流IDの過剰な増加を抑制することができる。
【0029】
図4(c)は、コンデンサ201への充電が進行し、出力側電圧VHの値が、VB×Nに接近した場合のタイムチャートである。この場合では、制御Bの後半である期間B12では、出力側電流ICがゼロである期間が設けられることとなる。
【0030】
続いて、第2モードの制御について、
図5のタイムチャートを用いて説明する。第2モードでは、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にONとする制御C、第1スイッチング素子Q11をONとし、第2スイッチング素子Q12をOFFとする制御A、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にOFFとする制御Bを順に行う。
【0031】
制御Cでは、チョークコイルL13に印加されるリアクトル電圧VLは、二次電池100から印加される入力側電圧VBに等しい。すなわち、リアクトル電流ILは、直線的に単調増加する。このとき、第1コイルL11には通電がなされないため出力側電流ICはゼロである。
【0032】
この制御Cが行われる際の電流経路について、
図6(a)を用いて説明する。第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12が共にONであるため、第1コイルL11から第2コイルL12へと電力が供給されることはない。加えて、チョークコイルL13から補助コイルL14への電力の供給についても、ダイオードD1により遮断されることとなる。そのため、チョークコイルL13に流れるリアクトル電流ILが増加することとなる。
【0033】
このように、制御Cではリアクトル電流ILが単調増加するため、リアクトル電流ILが予め定められた値である第2指令値Iref2となることを条件に、制御Cから制御Aへと移行する。
【0034】
続く制御Aでは、
図6(b)に示すように、第1モードにおける制御Aと同じ電流経路をとることとなるため、その説明を省略する。制御Aから制御Bへの切り替えは、制御Cの開始から所定時間が経過することを条件としてもよいし、制御Aの開始から所定時間が経過することを条件としてもよい。なお、
図4のタイムチャートにおいて、制御Aでリアクトル電流ILが単調増加するものとしているが、リアクトル電流ILの変化量は上式(1)で示されるとおり、入力側電圧VBと出力側電圧VHの関係によっては、増減しない場合もあるし、単調減少する場合もある。
【0035】
制御Bでは、第1コイルL11側では、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12が共にOFFであるため、二次電池100からの電流の供給は行われず、リアクトル電流ILはゼロとなる。一方で、チョークコイルL13には逆起電力が生じ、リアクトル電圧VLは、出力側電圧VHを巻数比で除算した値の負値となる。そのため、フライバック電流IDは直線的に単調減少し、それに伴いリアクトル電流ILも直線的に単調減少する。また励磁電圧VTは出力側電圧VHの負値となり、励磁電流IMは単調減少することとなる。
【0036】
この制御Bが行われる際の電流経路について、
図6(c)及び
図6(d)を用いて説明する。
図6(c)の電流経路は、制御Bの前半である期間B11の経路を示している。制御Bにおいて、第1コイルL11側では、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12が共にOFFであるため、二次電池100からの電力の供給は行われない。一方で、チョークコイルL13にはリアクトル電流ILが残存しており逆起電力が生ずるため、そのリアクトル電流ILにより補助コイルL14を介した電力の供給がなされることとなる。また、励磁電流IMについては、第3スイッチング素子Q13、第2コイルL12、第6スイッチング素子Q16の順に通過する経路をとることとなる。なお、制御Bの後半である期間B11については、いずれの電流も流れないため、電流経路についての説明を省略する。このフライバック電流IDがゼロとなった後の期間である期間B22では、電流経路は
図5(d)に示すものとなる。すなわち補助コイルL14を介した電力の供給が終了し、出力側では、第3スイッチング素子Q13、第2コイルL12、第6スイッチング素子Q16の順に通過する経路をとる励磁電流IMが流れることとなる。なお、制御Bの後半である期間B23については、第1モードと同様にいずれの電流も流れないため、電流経路についての説明を省略する。
【0037】
続いて、第3モードの制御について、
図7のタイムチャートを用いて説明する。第3モードでは、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にONとする制御Aと、第1スイッチング素子Q11と第2スイッチング素子Q12との一方をONとし、他方をOFFとする制御Aとを交互に行う。このとき、制御Aについては、第1スイッチング素子Q11がONであり第2スイッチング素子Q12がOFFである場合と、第1スイッチング素子Q11がOFFであり第2スイッチング素子Q12がONである場合とが、交互に行われる。
【0038】
制御Cでは、リアクトル電圧VLは二次電池100から印加される入力側電圧VBと等しく、リアクトル電流ILは、第2モードと同様に直線的に単調増加する。このとき、第1コイルL11には通電がなされないため出力側電流ICはゼロである。
【0039】
この制御Cが行われる際の電流経路について、
図8(a)を用いて説明する。第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12が共にONであるため、第1コイルL11から第2コイルL12へと電力が供給されることはない。加えて、チョークコイルL13から補助コイルL14への電力の供給についても、ダイオードD1により遮断されることとなる。そのため、チョークコイルL13に流れるリアクトル電流ILが増加することとなる。このように、制御Cではリアクトル電流ILが単調増加するため、リアクトル電流ILが予め定められた値である第3指令値Iref3となることを条件に、制御Cから制御Aへと移行する。
【0040】
続く制御Aでは、リアクトル電流ILは直線的に単調減少する。すなわち、出力側電流ICの単位時間あたりの変化量は、リアクトル電流ILの単位時間あたりの変化量dIL/dtをNで除算した値となる。第2コイルL12に印加される電圧である励磁電圧VTは出力側電圧VHと等しいものの、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12のいずれをONとするかに応じて、その極性が反転する。そのため、励磁電流IMについては、その励磁電圧VTの極性に基づいて、増加するか減少するかが定まる。
【0041】
この制御Aが行われる際の電流経路について、
図8(b)及び
図8(c)を用いて説明する。
図8(b)は第1スイッチング素子Q11がONであり、第2スイッチング素子Q12がOFFである例を示している。第1コイルL11側では、二次電池100から供給される電流は、チョークコイルL13、第1コイルL11、第1スイッチング素子Q11を通過する経路をとることとなる。第2コイルL12側では、第6スイッチング素子Q16、第2コイルL12、第3スイッチング素子Q13を通過する経路をとることとなる。
図8(c)は第1スイッチング素子Q11がOFFであり、第2スイッチング素子Q12がONである例を示している。第1コイルL11側では、二次電池100から供給される電流は、チョークコイルL13、第1コイルL11、第2スイッチング素子Q12を通過する経路をとることとなる。第2コイルL12側では、第4スイッチング素子Q14、第2コイルL12、第5スイッチング素子Q15を通過する経路をとることとなる。
【0042】
これら第1モード、第2モード、第3モードは、出力側電圧VHの値によって切り替えられる。コンデンサ201の充電開始時には第1モードで制御が行われ、充電が進行して出力側電圧VHが第1所定値V1よりも大きくなれば、第2モードで制御が行われる。そして、さらに充電が進行して出力側電圧VHが第2所定値V2よりも大きくなれば、第3モードで制御が行われる。
【0043】
上式(1)で示したように、第1モードの制御で入力側から出力側へと電力の供給が可能であるのは、入力側電圧VBに巻数比Nを乗算した値が、出力側電圧VHよりも大きい場合である。そのため、入力側電圧VBが一定であるとしたうえで、第1所定値V1は、少なくとも、定数である入力側電圧VBに巻数比Nを乗算した値よりも小さく設定されることとなる。また、第3モードにおける制御Aでリアクトル電流ILが減少する条件は、入力側電圧VBに巻数比Nを乗算した値が、出力側電圧VHよりも小さい場合である。そのため、入力側電圧VBが一定であるとしたうえで、第2所定値V2は、少なくとも、定数である入力側電圧VBに巻数比Nを乗算した値よりも大きく設定されることとなる。
【0044】
続いて、制御部300が実行する一連の処理について、
図9のフローチャートを用いて説明する。
図9のフローチャートに係る制御は、所定の制御周期で実行される。
【0045】
まず、起動要求を取得したか否かを判定する(S101)。この起動要求の指令信号は、例えば、上位の制御装置であるECU等から送信される。起動要求を取得していない場合(S101:NO)、一連の制御を行わず、待機状態を継続する。
【0046】
起動要求を取得すれば(S101:YES)、出力側電圧VHを取得し(S102)、その出力側電圧VHが第1所定値V1以下であるか否かを判定する(S103)。出力側電圧VHが第1所定値V1以下であれば(S103:YES)、第1モードでの制御を行う(S104)。出力側電圧VHが第1所定値V1以下でなければ(S103:NO)、続いて、出力側電圧VHが第2所定値V2以下であるか否かを判定する(S105)。出力側電圧VHが第2所定値V2以下であれば(S105:YES)、第2モードで制御を行う(S106)。一方、出力側電圧VHが第2所定値V2以下でなければ(S105:NO)、第3モードで制御を行う(S107)。
【0047】
第1モード、第2モード、第3モードのいずれかの制御が所定時間行われた後、制御の終了判定を行う(S108)。S108の処理では、例えば、再度出力側電圧VHを取得し、その出力側電圧VHが所定の上限値以上となったか否かを判定すればよい。なお、出力側電圧VHが所定の上限値以上となったか否かの判定は、S105で否定的な判定がなされた後に行うものとしてもよい。制御を終了すると判定した場合(S108:YES)、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。制御を終了すると判定しない場合(S108:NO)、終了要求を取得したか否かを判定する(S109)。この終了要求の指令信号は、ECU等の上位の制御装置から送信される。終了要求を取得すれば(S109:YES)、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。終了要求を取得しなければ(S109:NO)、S102以降の処理を再度実行する。
【0048】
なお、
図9のフローチャートでは、コンデンサ201への充電制御に関する制御のみを示しているが、電力変換装置はコンデンサ201への充電制御以外の電力変換も行う。例えば、正極側出力端子200a及び負極側出力端子200bを介して供給される電力を降圧し、二次電池100への充電を行う制御が挙げられる。その制御は、周知の制御であるため、説明を省略する。
【0049】
上記構成により、本実施形態に係る電力変換装置は以下の効果を奏する。
【0050】
・コンデンサ201への充電(プリチャージ)の開始時等、出力側電圧VHが小さい場合では、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の一方をONとし、他方をOFFとする制御Aと、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にOFFとする制御Bとを交互に行うものとしている。これにより、制御Aにおいて増加したチョークコイルL13の電流を、制御Bで減少させることができる。よって、チョークコイルL13に流れる電流が増加し続けることを防ぐことができる。ところが、この制御Bでは、チョークコイルL13に残存するリアクトル電流ILを回路中で消費する必要がある。この点、チョークコイルL13と磁気的に結合する補助コイルL14を介して出力側へと電力を供給することができるため、入力側の回路の劣化や損傷を防ぐことができる。
【0051】
・出力側電圧VHが第1所定値V1より大きくなった場合において、第2モードへと移行し、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にONとする制御C、第1スイッチング素子Q11をONとし、第2スイッチング素子Q12をOFFとする制御A、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にOFFとする制御Bを順に行うものとしている。そのため、制御CでチョークコイルL13に流れる電流を大きくすることができ、出力側への電力の供給速度を向上させることができる。また、制御BでチョークコイルL13の電流を減少させることができる。よって、チョークコイルL13に流れる電流が増加し続けることを防ぐことができる。ところが、第1モードと同様に、制御BではチョークコイルL13に残存するリアクトル電流ILを回路中で消費する必要がある。この点、チョークコイルL13と磁気的に結合する補助コイルL14を介して出力側へと電力を供給することができるため、入力側の回路の劣化や損傷を防ぐことができる。
【0052】
・補助コイルL14を設けているため、第1モード及び第2モードの制御Bにおいて、その補助コイルL14を介して出力側へと電力を供給可能としている。この電力は、補助コイルL14を設けていない場合には入力側の回路中で消費されるものである。よって、補助コイルL14を設けることにより、電力の供給効率を向上させることができる。
【0053】
・コンデンサ201へのプリチャージがさらに進行した場合等、出力側電圧VHが第2所定値V2より大きくなった場合には、第3モードへと移行し、第1スイッチング素子Q11及び第3スイッチング素子Q13をONとし、第2スイッチング素子Q12及び第4スイッチング素子Q14をOFFとする制御Cと、第1スイッチング素子Q11、第3スイッチング素子Q13及び第4スイッチング素子Q14をOFFとし、第2スイッチング素子Q12をONとする制御Aとを交互に行うものとしている。したがって、制御CによりチョークコイルL13に流れる電流を増加させることができ、続く制御AによりチョークコイルL13に流れる電流を減少させることができ、充電が進行したコンデンサ201へのさらなる充電を迅速に行うことができる。
【0054】
<第2実施形態>
本実施形態では、第3モードにおける制御が、第1実施形態と一部異なっている。
図10は、本実施形態での第3モードにおける第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の開閉状態と、そのときのリアクトル電流ILとを示している。
【0055】
第3モードにおいて、制御Cにおけるリアクトル電流ILの増加量と、制御Aにおけるリアクトル電流ILの減少量が等しければ、リアクトル電流ILの過剰な増加を抑制することができる。そこで、制御Cが行われる期間と制御Aが行われる期間の比を、1未満の値であるDを用いてD:(1−D)とし、入力側電圧VB及び出力側電圧VHを用いてDを定める。
【0056】
加えて、第3モードでは、低調波発振を抑制すべく、リアクトル電流ILにスロープ電流Isを加算した値が補正指令値Iref3*となるように、制御Cから制御Aへと切り替えるタイミングを制御する。このスロープ電流Isについて、
図10を用いて説明する。スロープ電流Isは、直線的に増加する仮想的な値であり、制御Cにおけるリアクトル電流ILの増加量をΔILとし、スロープ電流Isの増加量をΔIsとすれば、第3指令値Iref3にΔILとΔIsとを加算した値である補正指令値Iref3*を算出する。そして、この補正指令値Iref3*となるように、制御Cから制御Aへと切り替える制御を行う。
【0057】
続いて、制御部300が実行する処理を、
図11の制御ブロック図により説明する。定電流制御部50では、第1モードにおけるリアクトル電流ILの指令値である第1指令値Iref1と、第2モードにおけるリアクトル電流ILの指令値である第2指令値Iref2、及び、第3モードにおけるリアクトル電流ILの指令値である第3指令値Iref3とを、メモリから読み出して制御に用いる。
【0058】
第1指令値Iref1及び第2指令値Iref2は、そのまま、定電流制御部50から出力される。なお、第1指令値Iref1と第2指令値Iref2とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0059】
第3指令値Iref3は、フィードバック制御部51に入力される。フィードバック制御部51は、加えて、リアクトル電流ILの実電流である平均値IL_aveを取得する。この平均値IL_aveは、入力電流検出部103により検出されたリアクトル電流ILを所定期間蓄積し、その値を平均化したものである。第3指令値Iref3と平均値IL_aveは加算部52に入力され、加算部52は、第3指令値Iref3と平均値IL_aveの差分をとる。この差分はPI制御器53に入力され、リミッタ54へ入力される。このリミッタ54では、PI制御器53の出力値が上限値よりも大きければ、その出力値を上限値に制限する。リミッタ54からの出力値は、加算器55において第3指令値Iref3に加算され、フィードバック制御部51から出力される。
【0060】
一方、電流補正部57には、入力側電圧VB及び出力側電圧VHが入力され、第3指令値Iref3の補正量を出力する。そして、加算器56で第3指令値Iref3とフィードバック制御部51の出力値との和に加算されることにより、補正指令値Iref3*が得られる。
【0061】
定電流制御部50から出力された第1指令値Iref1、第2指令値Iref2、及び補正指令値Iref3*は、モード選択部60に入力される。モード選択部60には、さらに、出力側電圧VHも入力され、その出力側電圧VHと、第1所定値V1及び第2所定値V2とを比較する。そして、第1指令値Iref1、第2指令値Iref2及び補正指令値Iref3*のいずれを出力するかを決定して出力する。
【0062】
モード選択部60から出力された第1指令値Iref1、第2指令値Iref2及び補正指令値Iref3*のいずれかは、ピーク電流制御部70に入力され、DA変換器71においてアナログ値に変換され、コンパレータ72のマイナス端子に入力される。
【0063】
一方、ピーク電流制御部70のスロープ補償部73は、レジスタの値により得られるスロープ電流Isの値を信号として生成し、DA変換器74に入力する。このスロープ電流Isは、上述した通り、各制御周期において0Aから直線的に単調増加する鋸歯状波の信号である。そして、DA変換器74によりアナログ波形とされたスロープ電流Isとリアクトル電流ILとを、加算部75において加算して、コンパレータ72のプラス端子に入力する。なお、スロープ補償部73は、直接アナログ波形を生成し、DA変換器74を介さずコンパレータ72に入力するものとしてもよい。
【0064】
このスロープ補償部73は、第1モード及び第2モードでは、スロープ電流Isの値をゼロとし、第3モードでは、上述した鋸歯状波のスロープ電流Isを出力するものとしている。これは、第1モードでは、第1スイッチング素子Q11と第2スイッチング素子Q12とを共にOFFとする期間を有しており、その期間ではリアクトル電流ILがゼロとなり、その結果として低調波発振現象が発生しないためである。
【0065】
コンパレータ72は、マイナス端子に入力された、第1指令値Iref1、第2指令値Iref2及び補正指令値Iref3*のいずれかと、プラス端子に入力された、リアクトル電流ILにスロープ電流Isが加算された値との比較を行う。そして、プラス端子の入力値がマイナス端子の入力値よりも小さい期間において、ハイ状態の信号をRSフリップフロップ77のS端子に入力し、プラス端子の入力値がマイナス端子の入力値よりも大きい期間において、ロー状態の信号をRSフリップフロップ77のS端子に入力する。また、RSフリップフロップ77のR端子には、クロック76からクロック信号が入力される。
【0066】
第1モードにおいて、入力された信号がロー状態の信号となれば、リアクトル電流ILが第1指令値Iref1を超えたことを意味する。そのため、RSフリップフロップ77は、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にOFFとする信号を送信することにより、制御Aから制御Bへと切り替える。そして、1制御周期が経過すれば、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の一方をONとし他方をOFFとする信号を送信することにより、制御Bから制御Aへと切り替える。
【0067】
第2モードにおいて、入力された信号がロー状態の信号となれば、リアクトル電流ILが第2指令値Iref2を超えたことを意味する。そのため、RSフリップフロップ77は、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の一方をONとし、他方をOFFとする信号を送信することにより、制御Cから制御Aへと切り替える。続いて、制御Cの開始から1制御周期未満の所定時間(例えば半周期)が経過すれば、RSフリップフロップ77は、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12をいずれもOFFとする信号を送信することにより、制御Aから制御Bへと切り替える。そして、1制御周期が経過すれば、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にONとする信号を送信することにより、制御Bから制御Cへと切り替える。
【0068】
第3モードにおいて、入力された信号がロー状態の信号となれば、リアクトル電流ILにスロープ電流Isを加算した値が補正指令値Iref3*を超えたことを意味する。そのため、RSフリップフロップ77は、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の一方をONとし、他方をOFFとする信号を送信することにより、制御Cから制御Aへと切り替える。そして、1制御周期が経過すれば、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にONとする信号を送信することにより、制御Aから制御Cへと切り替える。
【0069】
RSフリップフロップ77の出力は、Duty制限部78へ入力される。このDuty制限部78では、各制御の期間の長さが上限値を超えていればその上限値に設定され、下限値を下回っていれば、下限値に設定される。そして、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12へ制御信号が送信される。
【0070】
上記構成により、本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態に係る電力変換装置が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0071】
・ピーク電流制御部70において、定電流制御部50から入力された各指令値を用いて定電流制御を行っている。これにより、入力側電圧VBに変化が生じた場合等において、過電流に対するロバスト性を向上させることができる。
【0072】
・第3モードでリアクトル電流ILについてのピーク電流制御を行ううえで、スロープ電流を加算するものとしている。これにより、リアクトル電流ILの低調波発振を抑制することができる。
【0073】
<第3実施形態>
本実施形態では、電力変換装置の回路構成が第1実施形態と異なっている。また、回路構成が異なっていることから、制御部300が実行する処理についても、一部異なっている。
【0074】
図12は、本実施形態に係る電力変換装置の回路図である。電力変換装置が備える電力変換回路20は、第1コイルL21及び第2コイルL22からなるトランスTr21と、MOSFETである第1〜第8スイッチング素子Q21〜Q28を備えている。第1コイルL21と第2コイルL22の巻数比は、1:Nである。
【0075】
第1スイッチング素子Q21のソースと、第2スイッチング素子Q22のドレインとが接続され、その接続点には第1コイルL21の一端が接続されている。一方、第3スイッチング素子Q23のソースと第4スイッチング素子Q24のドレインとが接続され、その接続点には第1コイルL21の他端が接続されている。第1スイッチング素子Q21のドレイン及び第3スイッチング素子Q23のドレインは、チョークコイルL23の一端に接続され、チョークコイルL23の他端は二次電池100の正極に接続されている。第2スイッチング素子Q22のソース及び第4スイッチング素子Q24のソースは、二次電池100の負極に接続されている。
【0076】
第2コイルL22側に設けられる第5〜第8スイッチング素子Q25〜Q28については、第1実施形態の第3〜第6スイッチング素子Q13〜Q16と同様に接続されるため、その説明を省略する。
【0077】
チョークコイルL23には、補助コイルL24が磁気的に結合するように設けられ、これらチョークコイルL23及び補助コイルL24により、第2トランスTr22を構成している。なお、チョークコイルL23、補助コイルL24については、第1実施形態と同様に巻かれており、ダイオードD2についても第1実施形態と同様に設けられるため、詳しい説明を省略する。
【0078】
図13は、第1モードにおける処理を示すタイムチャートである。第1モードでは、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24をONし、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23をOFFとする制御Aと、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24をいずれもOFFとする制御Bとを交互に行う。
【0079】
制御Aでは、第1実施形態における制御Aと同様に、リアクトル電流ILが単調増加し、それに伴い出力側電流ICも単調増加する。制御Bについても、第1実施形態における制御Bと同様に、リアクトル電流ILはゼロとなり、フライバック電流IDが単調減少する。そして、それに伴い出力側電流ICも単調減少する。
【0080】
図14は、第2モードにおける処理を示すタイムチャートである。第2モードでは、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24をいずれもONとする制御C、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24をONし、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23をOFFとする制御A、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24をいずれもOFFとする制御Bを順に行う。
【0081】
制御Cでは、第1実施形態における制御Cと同様に、リアクトル電流ILは単調増加する。一方で、第1コイルL21から第2コイルL22への電力の供給は行われないため、出力側電流ICはゼロである。制御Aでは、第1実施形態における制御Aと同様に、入力側電圧VBと出力側電圧VHとの関係によって、リアクトル電流ILの変化量が定まる。このとき、第1コイルL21から第2コイルL22への電力の供給が行われ、出力側電流ICはリアクトル電流ILの値に準ずるものとなる。続く制御Bでは、第1実施形態における制御Bと同様に、リアクトル電流ILはゼロとなり、フライバック電流IDが単調減少する。そして、それに伴い出力側電流ICも単調減少する。
【0082】
図15は、第3モードにおける処理を示すタイムチャートである。第3モードでは、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24をいずれもONとする制御Cと、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24をONし、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23をOFFとする制御A、又は第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24をOFFし、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23をONとする制御Aとを、交互に行う。
【0083】
制御Cでは、第1実施形態における制御Cと同様に、リアクトル電流ILは単調増加する。一方で、第1コイルL21から第2コイルL22への電力の供給は行われないため、出力側電流ICはゼロである。制御Aでは、第1実施形態における制御Aと同様に、リアクトル電流ILは単調減少する。このとき、第1コイルL21から第2コイルL22への電力の供給が行われ、出力側電流ICはリアクトル電流ILの値に準ずるものとなる。
【0084】
上記構成により、本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態に準ずる効果を奏する。
【0085】
<第4実施形態>
本実施形態では、電力変換装置の回路構成が第1実施形態と異なっている。また、回路構成が異なっていることから、制御部300が実行する処理についても、一部異なっている。
【0086】
図16は、本実施形態に係る電力変換装置の回路図である。電力変換装置が備える電力変換回路30は、トランスTr31、第1〜第4スイッチング素子Q31〜Q34、第1〜第4ダイオードD31〜D34、及びコンデンサC30を含んで構成されている。トランスTr31の入力側として設けられる第1コイルL31には、MOSFETである第2スイッチング素子Q32が直列接続されて直列接続体をなし、その直列接続体にMOSFETである第1スイッチング素子Q31が並列接続されている。より具体的には、第1コイルL31の一端に第1スイッチング素子Q31のドレインが接続されており、第1コイルL31の他端に第2スイッチング素子Q32のドレインが接続されている。そして、第1スイッチング素子Q31のソースと第2スイッチング素子Q32のソースが接続されている。
【0087】
第1スイッチング素子Q31のドレインと第1コイルL31との接続点は、チョークコイルL33を介して二次電池100の正極に接続されている。一方、第1スイッチング素子Q31のソースと第2スイッチング素子Q32のソースとの接続点は、二次電池100の負極に接続されている。
【0088】
トランスTr31の出力側には第1コイルL31と磁気的に結合する第2コイルL32が設けられている。第1コイルL31と第2コイルL32との巻数比は、1:Nである。出力側では、MOSFETである第3スイッチング素子Q33とコンデンサC30とが直列接続されて直列接続体をなし、その直列接続体と第2コイルL32とが並列接続されて並列接続体をなしている。その並列接続体には、MOSFETである第4スイッチング素子Q34が直列接続されている。より具体的には、第2コイルL32の一端とコンデンサC30の一端とが接続され、コンデンサC30の他端と第3スイッチング素子Q33のドレインが接続され、第2コイルL32の他端と第3スイッチング素子Q33のソースが接続されている。第2コイルL32と第3スイッチング素子Q33のソースとの接続点には、第4スイッチング素子Q34のドレインが接続されている。
【0089】
第2コイルL32とコンデンサC30との接続点は、正極側出力端子200aに接続されており、第4スイッチング素子Q34のソースは負極側出力端子200bに接続されている。この正極側出力端子200a、負極側出力端子200bには、コンデンサ201が並列接続されている。
【0090】
チョークコイルL33には、補助コイルL34が磁気的に結合するように設けられ、これらチョークコイルL33及び補助コイルL34により、第2トランスTr32を構成している。なお、チョークコイルL33、補助コイルL34については、第1実施形態と同様に巻かれており、ダイオードD3についても第1実施形態と同様に設けられるため、詳しい説明を省略する。
【0091】
図17は、第1モードにおける処理を示すタイムチャートである。第1モードでは、第1スイッチング素子Q31、第3スイッチング素子Q33及び第4スイッチング素子Q34をOFFとし、第2スイッチング素子Q32をONとする制御Aと、第1スイッチング素子Q31、第2スイッチング素子Q32、及び第4スイッチング素子Q34をOFFとし、第3スイッチング素子Q33をONとする制御Bとを交互に行う。換言すれば、第1スイッチング素子Q31及び第4スイッチング素子Q34については常にOFFとし、第2スイッチング素子Q32と第3スイッチング素子Q33とを交互にONとする制御を行う。
【0092】
制御Aでは、第1実施形態における制御Aと同様に、リアクトル電流ILが単調増加し、それに伴い出力側電流ICも単調増加する。制御Bについても、第1実施形態における制御Bと同様に、リアクトル電流ILはゼロとなり、フライバック電流IDが単調減少する。そして、それに伴い出力側電流ICも単調減少する。
【0093】
図18は、第2モードにおける処理を示すタイムチャートである。第2モードでは、第1スイッチング素子Q31及び第3スイッチング素子Q33をONとし、第2スイッチング素子Q32及び第4スイッチング素子Q34をOFFとする制御C、第1スイッチング素子Q31、第3スイッチング素子Q33及び第4スイッチング素子Q34をOFFとし、第2スイッチング素子Q32をONとする制御A、第1スイッチング素子Q31、第2スイッチング素子Q32、及び第4スイッチング素子Q34をOFFとし、第3スイッチング素子Q33をONとする制御Bを順に行う。
【0094】
制御Cでは、第1実施形態における制御Cと同様に、リアクトル電流ILは単調増加する。一方で、第1コイルL31から第2コイルL32への電力の供給は行われないため、出力側電流ICはゼロである。制御Aでは、第1実施形態における制御Aと同様に、入力側電圧VBと出力側電圧VHとの関係によって、リアクトル電流ILの変化量が定まる。このとき、第1コイルL31から第2コイルL32への電力の供給が行われ、出力側電流ICはリアクトル電流ILの値に準ずるものとなる。続く制御Bでは、第1実施形態における制御Bと同様に、リアクトル電流ILはゼロとなり、フライバック電流IDが単調減少する。そして、それに伴い出力側電流ICも単調減少する。
【0095】
図19は、第3モードにおける処理を示すタイムチャートである。第3モードでは、第1スイッチング素子Q31及び第3スイッチング素子Q33をONとし、第2スイッチング素子Q32及び第4スイッチング素子Q34をOFFとする制御Cと、第1スイッチング素子Q31、第3スイッチング素子Q33及び第4スイッチング素子Q34をOFFとし、第2スイッチング素子Q32をONとする制御Aとを交互に行う。
【0096】
制御Cでは、第1実施形態における制御Cと同様に、リアクトル電流ILは単調増加する。一方で、第1コイルL31から第2コイルL32への電力の供給は行われないため、出力側電流ICはゼロである。制御Aでは、第1実施形態における制御Aと同様に、リアクトル電流ILは単調減少する。このとき、第1コイルL31から第2コイルL32への電力の供給が行われ、出力側電流ICはリアクトル電流ILの値に準ずるものとなる。
【0097】
上記構成により、本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態に準ずる効果を奏する。
【0098】
<第5実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、回路構成の一部、及び、制御部が実行する制御が第1実施形態と異なっている。
【0099】
図20は、本実施形態に係る電力変換装置の回路図である。本実施形態では、プリチャージ時における出力側の回路の電流値である出力側電流IH、及び、出力側電流IHの平均値IH_aveを検出する電流検出部203を備えている。具体的には、電流検出部203は出力側の回路の負極側の配線に設けられている。なお、電流検出部203を設ける箇所については、
図20に示したものに限られず、正極側の配線に設けるものとしてもよい。
【0100】
制御部400は、入力された入力側電圧VB、出力側電圧VH、出力側電流IH、及び、出力側電流IHの平均値IH_aveに基づいて演算を行い、第1実施形態で説明した第1〜第3モードの制御に準ずる制御を行う。具体的には、第1モード及び第2モードでは、出力側電流IHが指令値となるように、ピーク電流制御を行う。第3モードでは、出力側電流IHの平均値IH_aveが指令値となるように、平均電流制御を行う。
【0101】
加えて、第1モードでは、出力側電圧VHが所定値V0よりも小さい値である所定値V0よりも小さい場合と、出力側電圧VHが所定値V0よりも大きい場合とで、制御を変更している。具体的には、出力側電圧VHが所定値V0以下である場合には第1aモードの制御を行い、出力側電圧VHが所定値V0よりも大きく第1所定値V1以下である場合には、第1bモードの制御を行う。
【0102】
本実施形態における第1モードの制御について、
図21及び
図22を参照して説明する。なお、第2モード及び第3モードの制御における第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12のONとOFFのタイミングは、第1実施形態と同等であるため、具体的な説明及び図示を省略する。
【0103】
第1aモードでは、第1スイッチング素子Q11についてONとOFFとを交互に行い、第2スイッチング素子Q12について、OFF状態を継続する。このとき、第1スイッチング素子Q11の、1制御周期Tsに対するON状態を継続する期間を示す時比率の上限が50%未満となるようにする。具体的には、時比率の上限を45%とする。すなわち、ピーク電流制御を行ううえで、出力側電流IHが指令値に到達した場合、及び時比率が45%に到達した場合の一方を満たした場合に、第1スイッチング素子Q11の制御状態をONからOFFへと切り替える。
【0104】
以上のように第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の制御が行われるため、
図21に示すように、第1aモードでは、第1スイッチング素子Q11がONであり第2スイッチング素子W12がOFFである制御Aと、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12がいずれもOFFである制御Bとが交互に行われ、且つ、制御Aが行われる期間の長さは、1制御周期Tsの半分未満となる。
【0105】
なお、第1aモードにおいて、第1スイッチング素子Q11についてOFF状態を継続し、第2スイッチング素子Q12についてONとOFFとを交互に行うものとしてもよい。また、所定の制御周期毎に、ONとOFFとを交互に行うスイッチング素子とOFF状態を継続するスイッチング素子とを切り替えるものとしてもよい。
【0106】
第1bモードでは、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12のいずれも、ONとOFFとを交互に行うものとしている。この制御を行ううえで、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の一方がONであり他方がOFFである期間と、第1スイッチング素子Q11と第2スイッチング素子Q12が共にOFFである期間とを交互に設けるべく、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を制御する。具体的には、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の1制御周期Tsの長さを等しくし、第1スイッチング素子Q11の制御周期と第2スイッチング素子Q12の制御周期とを半制御周期ずらし、時比率の上限を50%未満、例えば45%としている。
【0107】
以上のように第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の制御が行われるため、
図22に示すように、第1bモードでは、第1スイッチング素子Q11がONであり第2スイッチング素子Q12がOFFである制御A、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12がいずれもOFFである制御B、第2スイッチング素子Q12がONであり第1スイッチング素子Q11がOFFである制御A、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12がいずれもOFFである制御Bが順に行われ、且つ、制御Aが行われる期間の長さは、1制御周期Tsの半分未満となる。
【0108】
続いて、制御部300が実行する処理を、
図23の制御ブロック図により説明する。最初に、第1モード設定部410について説明する。まず、リアクトル電流ILの指令値である第1指令値Iref1が乗算器411へ入力され、巻数比Nの逆数が乗算される。すなわち、リアクトル電流ILの指令値を、出力側電流IHの指令値に換算する。乗算器411から得られた値は、DA変換器412を介してコンパレータ413のマイナス端子へ入力される。一方、コンパレータ413のプラス端子には、出力側電流IHが入力される。
【0109】
コンパレータ413は、マイナス端子に入力された、第1指令値Iref1を出力側電流IHの指令値に換算した値と、プラス端子に入力された出力側電流IHとの比較を行う。そして、プラス端子の入力値がマイナス端子の入力値よりも大きい期間において、ロー状態の信号をRSフリップフロップ414のS端子に入力する。また、RSフリップフロップ414のR端子には、クロック415からクロック信号が入力される。
【0110】
第1モードにおいて、入力された信号がロー状態の信号となれば、出力側電流IHが第1指令値Iref1を巻数比Nで除算した値を超えたことを意味する。そのため、RSフリップフロップ414は、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にOFFとする信号を送信することにより、制御Aから制御Bへと切り替える。そして、1制御周期が経過すれば、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の一方をONとし他方をOFFとする信号を送信することにより、制御Bから制御Aへと切り替える。
【0111】
RSフリップフロップ414の出力信号は、Duty制限部416へ入力される。Duty制限部416では、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の時比率が、上限値よりも大きければ時比率が上限値に設定される。この上限値は、50%未満の値、例えば45%に設定されている。以上のように求められた第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の制御信号は、モード選択部450へ入力される。
【0112】
第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の制御信号がモード選択部450へ入力されるうえで、選択されるモードが第1aモードであれば、第2スイッチング素子Q12の制御信号については、OFF状態を継続する信号とする。
【0113】
なお、上述した第1モード設定部410について、第1aモードでは第1スイッチング素子Q11のみの制御信号を生成すべく各演算を行い、第1bモードでは第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の制御信号を生成すべく演算を行うものとしてもよい。
【0114】
次に、第2モード設定部420について説明する。第2モード設定部420では、第1スイッチング素子Q11のON/OFF状態と、第2スイッチング素子Q12のON/OFF状態とが、それぞれ別の演算により求められる。
【0115】
第1スイッチング素子Q11の制御では、まず、入力側電流の上限値Igが乗算器421へ入力され、巻数比Nの逆数が乗算される。この上限値Igは、第2モードにおいて、制御Aの終了時点のリアクトル電流ILの上限を示している。すなわち、リアクトル電流ILの上限を、出力側電流IHの上限に換算する。乗算器421から得られた値は、DA変換器422を介してコンパレータ423のマイナス端子へ入力される。一方、コンパレータ423のプラス端子には、出力側電流IHが入力される。
【0116】
コンパレータ423は、マイナス端子に入力された、上限値Igを出力側電流IHの上限に換算した値と、プラス端子に入力された出力側電流IHとの比較を行う。そして、プラス端子の入力値がマイナス端子の入力値よりも大きい期間において、ロー状態の信号をRSフリップフロップ424のS端子に入力する。また、RSフリップフロップ424のR端子には、クロック425からクロック信号が入力される。
【0117】
入力された信号がロー状態の信号となれば、出力側電流IHが上限値Igを巻数比Nで除算した値を超えたことを意味する。そのため、RSフリップフロップ424は、第1スイッチング素子Q5をOFFとする信号を送信する。RSフリップフロップ424の出力信号は、Duty制限部426へ入力される。Duty制限部426では、第1スイッチング素子Q11の時比率が、上限値よりも大きければ時比率が上限値に設定される。この上限値は、例えば50%に設定されている。以上のように設定された第1スイッチング素子Q11の制御信号は、モード選択部450へ入力される。
【0118】
第2スイッチング素子Q12の制御では、リアクトル電流ILの第2指令値Iref2が乗算器427へ入力される。この乗算器427へは、リアクトル電圧VLの逆数と、チョークコイルL13の自己インダクタンスLを1制御周期Tsで除算した値も入力される。この乗算器427の出力値は、Duty制限部428へ入力される。Duty制限部428では、第2スイッチング素子Q12の時比率が、上限値よりも大きければ時比率が50%未満である上限値に設定される。この上限値は、例えば45%に設定されている。以上のように設定された第2スイッチング素子Q12の制御信号は、モード選択部450へ入力される。
【0119】
続いて、第3モード設定部430について説明する。第3モード設定部430では、まず、リアクトル電流ILの平均値の指令値を求める。具体的には、定電圧制御を行ううえでの指令値と、定電流制御を行ううえでの指令値を求めたうえで、求められた指令値の中で最も小さい指令値を用いて制御を行う。
【0120】
定電圧制御の指令値を求めるうえで、出力側電圧VHの目標値VH*と、検出された出力側電圧VHとが加算器431へ入力され、その偏差は、PI制御器432へ入力される。PI制御器432の出力値は定電圧制御を行ううえでのリアクトル電流ILの指令値であり、最小値選択部440へ入力される。
【0121】
一方、制御部400は、上位のECUからCAN通信等により、リアクトル電流ILの指令値IL*を取得する。この指令値IL*は徐変部433に入力される。徐変部433では、入力された指令値IL*に基づいて、漸増する値を出力するものである。徐変部433の出力値は、最小値選択部440へ入力される。
【0122】
以上のようにして最小値選択部440へ各指令値が入力されれば、最小値選択部440は、入力された各指令値のうち最も小さい値を指令値として出力する。最小値選択部440から出力された指令値は、加算器441へ入力される。加算器441へは、出力側電流IHの平均値IH_aveをリアクトル電流ILの値に換算した値も入力される。具体的には、出力側電流IHの平均値IH_aveと、出力側電圧VHを入力側電圧VBで除算した値とが乗算器442へ入力される。この乗算器442で乗算を行ううえで、電力変換回路10の変換効率αを考慮するものとしてもよい。乗算器442の出力値は加算器441へ入力される。加算器441では、入力された値の差分がとられ、その差分はPI制御器443へ入力される。
【0123】
PI制御器443の出力値は、乗算器444へ入力され、巻数比Nを出力側電圧VHの2倍の値で除算した値が乗算される。乗算器444の出力値は、加算器445へと入力される。この加算器445へは、選択部446で選択された、フィードフォワード制御用の時比率と、定数との一方が入力される。このとき、選択部446では、第3モードの制御においてコンデンサ201の充電が終了するまでは、フィードフォワード制御用の時比率が選択され、コンデンサ201の充電の終了後は、定数が選択される。
【0124】
加算器445の出力値は、Duty制限部447へ入力される。Duty制限部447には、上限値設定部448で求められた時比率の上限値も入力される。この時比率の上限値は、入力側電圧VB及び出力側電圧VHで定まるものである。Duty制限部447では、算出された時比率が上限値よりも大きければ、上限値を出力する。Duty制限部447の出力値は、モード選択部450に入力される。
【0125】
モード選択部450へは出力側電圧VHも入力され、第1〜第3モードの選択が行われる。そして、選択されたモードにより、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の制御が行われる。
【0126】
続いて、制御部300が実行する一連の処理について、
図24のフローチャートを用いて説明する。
図24のフローチャートに係る制御は、所定の制御周期で実行される。なお、
図9のフローチャートと同等の箇所については、同じ符号を付しており、具体的な説明は省略する。
【0127】
起動要求を取得し(S101:YES)、出力側電圧VHを取得すれば(S102)、その出力側電圧VHが所定値V0以下であるか否かを判定する(S201)。出力側電圧VHが所定値V0以下であれば(S202:YES)、第1aモードで制御を行う。出力側電圧VHが所定値V0以下でなければ(S202:NO)、第1所定値V1以下であるか否かを判定する(S203)。出力側電圧VHが第1所定値V1以下であれば(S203:YES)、第1bモードでの制御を行う(S204)。出力側電圧VHが第1所定値V1以下でなければ(S203:NO)、
図9のS105以降の処理を行う。
【0128】
第1aモード、第1bモード、第2モード、第3モードのいずれかの制御が所定時間行われた後、制御の終了判定を行う(S108)。制御を終了すると判定した場合(S108:YES)、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。制御を終了すると判定しない場合(S108:NO)、終了要求を取得したか否かを判定する(S109)。終了要求を取得すれば(S109:YES)、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。終了要求を取得しなければ(S109:NO)、S102以降の処理を再度実行する。
【0129】
本実施形態に係る電力変換装置が奏する効果について、
図25(a)〜(c)を参照して説明する。
図25(a)〜(c)は、第1〜第3モードに係る処理を実行した場合のリアクトル電流ILと出力側電圧VHを示している。また、第3モードを終了する条件としては、出力側電圧VHが予め定められた値である第3所定値V3よりも大きくなる条件を採用している。
【0130】
コンデンサ201の充電の開始時等、出力側電圧VHが所定値V0よりも小さいような場合では、第1実施形態における
図4(a)で示したように、リアクトル電流ILは、制御Bの期間において十分に小さくならない。すなわち、リアクトル電流ILが連続して流れる電流連続モードとなる。この電流連続モードでは、電流の周波数成分が高くなり、電流検出部203の出力が遅延する。このような場合では、制御Bを行う時間が短いほど、出力側電流IHが指令値を超えるオーバーシュートが大きくなる。すなわち、第1aモードの制御を行わず、第1bモードの制御のみを行うものとした場合には、
図25(b)に示すように、出力側電流IHのオーバーシュートに伴いリアクトル電流ILがオーバーシュートする期間が生ずる。
【0131】
一方、第1bモードの制御を行わず第1aモードの制御のみを行うものとした場合には、制御Aを行う期間が短くなるため、コンデンサ201への充電の進行に伴い、時間当たりの充電量が小さくなる。したがって、
図25(c)に示すように、リアクトル電流ILのオーバーシュートは抑制できるものの、コンデンサ201の充電により長い時間を要することとなる。
【0132】
本実施形態では、
図25(a)に示すように、出力側電圧VHが所定値V0以下である場合には第1aモードの制御を行うものとしているため、制御Bを行う期間を十分に確保することができる。これにより、リアクトル電流IL及び出力側電流IHのオーバーシュートを抑制することができる。加えて、出力側電圧VHが所定値V0よりも大きくなれば、第1bモードの制御を行うものとしているため、制御Aを行う期間を長くすることができる。これにより、コンデンサ201への充電時間を短縮することができる。
【0133】
<第6実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、
図26に示す通り、回路構成は第3実施形態に準ずるものであり、且つ、第5実施形態と同様に電流検出部203を備え、プリチャージ時における出力側の回路の電流値である出力側電流IH、及び、出力側電流IHの平均値IH_aveを検出するものとしている。
【0134】
本実施形態における第1モードの制御について、
図27及び
図28を参照して説明する。なお、第2モード及び第3モードの制御における第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24のONとOFFのタイミングは、第1実施形態と同等であるため、具体的な説明及び図示を省略する。
【0135】
第1aモードでは、第1スイッチング素子Q21と第4スイッチング素子Q24とを同期させてONとOFFとを交互に行い、第2スイッチング素子Q22と第3スイッチング素子Q23はOFF状態を継続する。このとき、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24の時比率の上限が50%未満となるようにする。具体的には、時比率の上限を45%とする。
【0136】
以上のように第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24の制御が行われるため、
図27に示すように、第1aモードでは、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24がONであり第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23がOFFである制御Aと、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24がいずれもOFFである制御Bとが交互に行われ、且つ、制御Aが行われる期間の長さは、1制御周期Tsの半分未満となる。
【0137】
なお、第1aモードにおいて、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24についてOFF状態を継続し、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23についてONとOFFとを交互に行うものとしてもよい。また、所定の制御周期毎に、ONとOFFとを交互に行うスイッチング素子とOFF状態を継続するスイッチング素子とを切り替えるものとしてもよい。
【0138】
第1bモードでは、第1スイッチング素子Q21と第4スイッチング素子Q24とを同期させ、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23とを同期させている。第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24の1制御周期の長さを等しく、且つ、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24と、第2スイッチング素子Q22及び第4スイッチング素子Q24とを、半制御周期ずらしている。そして、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24のいずれも、前記時比率を50%未満としてONとOFFとを交互に行うものとしている。
【0139】
以上のように第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24の制御が行われるため、
図28に示すように、第1bモードでは、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24がONであり第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23がOFFである制御A、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24がいずれもOFFである制御B、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23がONであり第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24がOFFである制御A、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24がいずれもOFFである制御Bが順に行われ、且つ、制御Aが行われる期間の長さは、1制御周期Tsの半分未満となる。
【0140】
上記構成により、本実施形態に係る電力変換装置は、第5実施形態に係る電力変換装置と同等の効果を奏する。
【0141】
<変形例>
・第1実施形態では、ダイオードD1を、補助コイルL14の負極側出力端子200b側に設けるものとしているが、
図29に示すように、ダイオードD1aを、補助コイルL14の正極側出力端子200a側に設けるものとしてもよい。この場合でも、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0142】
・第1実施形態の電力変換回路10を、
図30(a)のように構成してもよい。具体的には、電力変換回路10aにおいて、トランスTr11aを構成する第1コイルL11aの端部のそれぞれに、第1スイッチング素子Q11aのソース、第2スイッチング素子Q12aのソースをそれぞれ接続する。一方で、第1スイッチング素子Q11aのドレインと第2スイッチング素子Q12aのドレインは接続され、その接続点はチョークコイルL13の一端に接続される。また、第1コイルL11のセンタータップは、二次電池100の負極に接続される。なお、第2コイルL12側の構成については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。このとき、制御部300が実行する処理は、第1実施形態と同様のものとなる。また、この場合においても、
図30(b)に示すように、ダイオードD1aを補助コイルL14の正極側出力端子200a側に設けるものとしてもよい。
【0143】
・
図31に示すように、第3実施形態に係るフルブリッジ回路においても、ダイオードD2aを補助コイルL24の正極側出力端子200a側に設けるものとしてもよい。また、図示しないが、第4実施形態に係るフォワードアクティブクランプ回路についても同様に、ダイオードを補助コイルL34の正極側出力端子200a側に設けるものとしてもよい。
【0144】
・第4実施形態に係る電力変換回路30(フォワードアクティブクランプ回路)の第2コイルL32側について、
図32のように構成してもよい。具体的には、トランスTr31の出力側を構成する第2コイルL32の一端は正極側出力端子200aに接続されており、他端は第4スイッチング素子Q34aのドレインに接続されている。第2コイルL32と第4スイッチング素子Q34aのドレインとの接続点は、コンデンサC30aを介して第3スイッチング素子Q33aのソースに接続されており、第4スイッチング素子Q34aのソースは第3スイッチング素子Q33aのドレインに接続されている。この第4スイッチング素子Q34aと第3スイッチング素子Q33aの接続点は、負極側出力端子200bに接続されている。なお、第3スイッチング素子Q33aには第3ダイオードD33aが逆方向に並列接続されており、第4スイッチング素子Q34には第4ダイオードD34aが逆方向に並列接続されている。制御部300が実行する具体的な処理については、第4実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0145】
・各実施形態では、第1〜第3モードの制御をいずれも行うものとしているが、各モードのうち、少なくとも2つのモードの制御を行うものであってもよい。すなわち、充電の開始時には第1モードの制御を行い、出力側電圧VHが所定値を超えれば第2モードを経ずに第3モードの制御を行うものとしてもよい。また、充電の開始時から第2モードの制御を行い、出力側電圧VHが所定値を超えれば第3モードを行うものとしてもよい。
【0146】
・各実施形態では、補助コイルL14,L24,L34に接続する整流素子としてダイオードD1,D1a,D2,D2a,D3を用いるものとしているが、ダイオードD1,D1a,D2,D2a,D3の代わりにスイッチング素子を用いるものとしてもよい。この場合には、補助コイルL14,L24,L34を介して入力側から出力側へと電力を供給する際に、スイッチング素子をONとして通電するものとすればよい。
【0147】
・第1実施形態における第1モードにおいて、第2スイッチング素子Q12を常にOFFとする例を示したが、
図33(a)に示すように、制御Aでは、第1スイッチング素子Q11がONである場合とQ12がONである場合とを交互に行うものとしてもよい。また、
図33(b)に示すように、第1スイッチング素子Q11がONである制御Aを複数回行い、続いて、第2スイッチング素子Q12がONである制御Aを複数回行うものとしてもよい。
【0148】
・第1実施形態における第2モードにおいて、第2スイッチング素子Q12をOFFとすることにより制御Cから制御Aへと切り替えるものとしているが、
図34(a)に示すように、第2スイッチング素子Q12をOFFとすることにより制御Cから制御Aへと切り替える制御と、第1スイッチング素子Q11をOFFとすることにより制御Cから制御Aへと切り替える制御とを交互に行うものとしてもよい。また、
図34(b)に示すように、第2スイッチング素子Q12をOFFとすることにより制御Cから制御Aへと切り替える制御を複数回行い、続いて、第1スイッチング素子Q11をOFFとすることにより、制御Cから制御Aへと切り替える制御を複数回行うものとしてもよい。
【0149】
・第1〜第3モードにおいて、第1〜第3指令値Iref1〜Iref3を用いて制御するものとしたが、各モードにおいて、制御A〜制御Cを行う期間の長さを予め定めておき、その定められた期間に基づいて制御を行うものとしてもよい。
【0150】
・第5実施形態における第1aモードでは、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の一方はOFF状態を継続するものであるため、時比率の上限を50%よりも大きくしたとしても、制御Aと制御Bとが交互に行われる。したがって、時比率に上限を設けなくてもよい。第6実施形態についても同様である。
【0151】
・第5実施形態における第1bモードにおいて、第1スイッチング素子Q11の制御周期と第2スイッチング素子Q12の制御周期とを半制御周期ずらすものとしたが、制御周期のずれ量は、半制御周期に限られない。すなわち、第1スイッチング素子Q11をON状態とする期間と第2スイッチング素子Q12をON状態とする期間とが重複しないように、制御周期のずれ量及び時比率の上限が定められていればよい。第6実施形態についても同様である。
【0152】
・各実施形態では、チョークコイルL13,L23,L33を二次電池100に対して正極側に設けているが、負極側に設けてもよい。また、チョークコイルL13,L23,L33を正極側及び負極側に設け、それぞれに磁気結合する補助コイルL14,L24,L34を設けるものとしてもよい。
【0153】
・補助コイルL14とチョークコイルとの巻数比を、N以上:1としてもよい。
【0154】
・実施形態において、電力変換装置がハイブリッドカーに搭載されるものとしたが、搭載対象はこれに限られることはない。