特許第6663352号(P6663352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6663352-エレベータシステムを操作する方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663352
(24)【登録日】2020年2月18日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】エレベータシステムを操作する方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20200227BHJP
   B66B 7/00 20060101ALI20200227BHJP
   B66B 9/10 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   B66B1/18 X
   B66B7/00 A
   B66B9/10
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-547854(P2016-547854)
(86)(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公表番号】特表2017-504542(P2017-504542A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】EP2015000167
(87)【国際公開番号】WO2015113764
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2017年7月18日
(31)【優先権主張番号】102014201804.8
(32)【優先日】2014年1月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516033190
【氏名又は名称】ティッセンクルップ エレベーター アクツィエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Elevator AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】イェッター,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ゲルステンマイヤー,シュテファン
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−112875(JP,A)
【文献】 特開平10−310337(JP,A)
【文献】 特開平06−321445(JP,A)
【文献】 特開昭63−315480(JP,A)
【文献】 特開平02−132077(JP,A)
【文献】 特開平06−092555(JP,A)
【文献】 特開平07−172716(JP,A)
【文献】 特開2002−080183(JP,A)
【文献】 特開2007−238331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00−1/52
B66B 7/00
B66B 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が複数のリフトシャフト(111a、111b、111c、112a、112b,112c、113a、113b、113c、114a、114b、114c;121、122、123、124)を具える第1シャフトユニット(110)及び第2シャフトユニット(120)を有するエレベータシステム(100)の操作方法において、
− 前記第1シャフトユニット(110)に、少なくとも1つの単カゴ又は1カゴシステム及び/又は少なくとも1つの複数カゴシステムを提供し、
− 前記第2シャフトユニット(120)に、少なくとも1つのシャフト交換複数カゴシステムを提供し、
− 前記エレベータシステムが、行き先選択制御により操作され、
− 搬送操作が初期階から行き先階へと行われる場合に、前記エレベータシステムの制御ユニットが、最適な搬送操作を計算することによって、前記少なくとも1つの単カゴシステムの1又は複数台のカゴ、前記少なくとも1つの複数カゴシステムの1又は複数台のカゴ、前記少なくとも1つのシャフト交換複数カゴシステムの1又は複数台のカゴ、又はこれらの組合せを用いて前記搬送操作を行うかどうかについてを決定
前記シャフト交換複数カゴシステムのカゴの数が、予測された又は実際の搬送操作数に応じて変更できる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
− 前記第1及び第2シャフトユニット(110、120)を、それぞれ高低差(I1、I2、I3、I4、I5)に分けて、前記高低差(I1、I2、I3、I4、I5)がそれぞれ複数の階を含み、
− 前記第1シャフトユニット(110)の前記高低差(I1)の個々の高低差に、1又は複数の単カゴシステムを提供し、及び/又は、複数の前記高低差(I2、I3;I4、I5)に、1又は複数の複数カゴシステムを提供する、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記少なくとも1つのシャフト交換複数カゴシステムのカゴが、前記第2シャフトユニット(120)の縦全長に亘って移動することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の方法において、前記第1シャフトユニット(110)の上下に重なって配置された少なくとも2つの高低差に複数カゴシステムが提供されており、前記複数カゴシステムの上のカゴが、上下に重なって配置された前記2つの高低差の上の高低差内を移動し、前記複数カゴシステムの下のカゴが、上下に重なって配置された前記2つの高低差の下の高低差内を移動することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の方法において、シャフトユニットの上下に重なって配置された2つの高低差が、いずれも部分的にオーバーラップしており、一定数の階が、前記オーバーラップしている2つの高低差の各々に結びつけられていることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法において、前記第2シャフトユニット(120)のシャフト交換複数カゴシステムのカゴが、前記搬送操作の第1部分搬送操作中に、長距離カゴとして用いられることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記長距離カゴが、前記搬送操作の第1部分搬送操作中に、個々の高低差の間を移動することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法において、前記第1シャフトユニット(110)の単カゴシステム及び複数カゴシステムのカゴが、前記搬送操作の第2部分搬送操作中に、短距離カゴとして用いられることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記短距離カゴが、前記搬送操作の第2部分搬送操作中に、単カゴシステム又は複数カゴシステムに対応する高低差の内側のそれぞれの階の間を移動することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項2乃至9のいずれか一項に記載の方法において、互いに隣接する高低差(I1、I2、I3、I4、I5)における階が、前記単カゴシステム、前記複数カゴシステム、及び/又は前記シャフト交換複数カゴシステムのうちの1つのカゴの間で、乗換え停止所として用いられることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記乗換え停止所が、いずれも20乃至100mの間の縦の距離に提供されていることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項2乃至11のいずれか一項に記載の方法において、前記シャフトユニット(110、120)が、建築物の高さ100m当たり2乃至5つの間の高低差に分けられていることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法において、前記シャフト交換複数カゴシステムが呼び制御有り又は無しで操作されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法において、前記少なくとも1つのシャフト交換複数カゴシステムのカゴが、同期されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法において、前記搬送操作に関連する情報が、ディスプレイ装置の手段によって出力されていることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法において、定義可能な時間外、特にピーク時間外であって、前記シャフト交換複数カゴシステムのカゴの手段による直接的な行程中に、前記搬送操作が行われることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法において、予め選択可能な基準及び又は予め定義可能な及び/又は検出されたパラメータを考慮して、前記少なくとも1つの単カゴシステムの1又は複数台のカゴ、前記少なくとも1つの複数カゴシステムの1又は複数台のカゴ、前記少なくとも1つのシャフト交換複数カゴシステムの1又は複数台のカゴ、又はこれらの組合せを用いて前記搬送操作を行うかどうかについての前記決定を行うことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記搬送操作をどのカゴ又はどの複数のカゴで行うかについての決定が、以下の基準又はパラメータ:乗客の行き先階、複数の乗客の行き先階、現在の交通密度、エネルギー需要、及び/又は個々のカゴの使用状況、を考慮して行われることを特徴とする方法。
【請求項19】
複数のリフトシャフト(111a、111b、111c、112a、112b,112c、113a、113b、113c、114a、114b、114c;121、122、123、124)をそれぞれ含む第1シャフトユニット(110)及び第2シャフトユニット(120)を有するリフトシステム(100)において、
− 前記第1シャフトユニット(110)に、少なくとも1つの単カゴシステム及び/又は少なくとも1つの複数カゴシステムが提供され、
− 前記第2シャフトユニット(120)に、少なくとも1つのシャフト交換複数カゴシステムが提供され、
− 前記リフトシステム(100)が、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の方法によって操作される目的で設置される
ことを特徴とするリフトシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムを操作する方法及びこれに対応するエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高層建築物及び多数階建築物は、全てのゆそう搬送操作を可能な限り効率的に扱うための複雑なエレベータシステムを必要とする。特に、多数のユーザが建築物の地上レベルからこの建築物の様々な階へと移動することを望んでいるピーク時間における場合がそうである。他のピーク時間に、例えば、多数のユーザが様々な階から地上レベルへと移動する。
【0003】
このようなロードピークを可能な限り短い時間で扱うロジスティックに最適化されたエレベータシステムを必要とする。同時に、個々のユーザは、可能な限り速く又長く待つことなく行き先階へと搬送されなければならない。一方で、同時に、個々のユーザが、エレベータに乗りたい初期階でカゴを可能な限り速やかに利用できなければならない。他方で、ユーザが乗っているカゴは、不必要に途中で何度も止まることなく可能な限り速やかに対応する行き先階に到達しなければならない。更に、ユーザが行き先階に到達するまで可能な限り少ない回数でカゴを乗り換えるようにするべきである。ユーザがカゴを乗り換えなければならない場合、可能な限り短い待ち時間の条件が、後続の接続カゴに適用される。
【0004】
このような目的のエレベータシステムは公知である。単カゴシステム又は1カゴシステムは、例えば、1つのエレベータシャフト内に1台のカゴを具える。ダブルデッカーカゴシステムは、1つのエレベータシャフト内に2台のカゴを具える。ほとんどの場合、ダブルデッカーカゴシステムの2台のカゴは互いに固定的に連結されており、互いに独立して動くことができない。複数カゴシステムは、1つのエレベータシャフト内に少なくとも2台のカゴを具える。複数カゴシステムの前述のカゴは、互いに独立して動くことができる。1つのエレベータシャフト内で互いに独立して移動可能な2台のカゴを持つタイプの複数カゴシステムは、本願出願人によって“TWIN”の呼称で市販されている。
【0005】
ほとんどの場合、全ての公知のエレベータシステムは、独自の利点と共に独自の欠点を有する。同時に、現代のエレベータシステムに1つの単カゴシステムだけを用いることは効率的ではない。従来のカゴシステムは、高層建築物において階数を増加し続けること及びこれに関連してユーザが増加することといった要件に、もはや対処できていない。この種の公知のカゴシステム又はそれらの性能を拡張することは、この場合、床面積及び空間の需要が増加し、運営費、導入費、及び運用費の増加と共に資源の高い需要につながる。公知のカゴシステムを拡張することは、結果的に非経済的であることが明らかであり、建築計画の要件を満たすことができない。
【0006】
従って、エレベータシステムを、建築物及び高層建築物において階数が増加し続けていることと共にユーザによって提供される負荷の増加を含む要件に対処可能である効果へと改良することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
前述の目的は、エレベータシステムを操作する方法、及び、これに対応する本願の独立請求項に記載の特徴を有するエレベータシステムによって達成される。
【0008】
本発明によるエレベータシステムは、この場合、第1及び第2シャフトユニットを含む。少なくとも1つの単カゴシステム又は1カゴシステム及び/又は少なくとも1つの複数カゴシステムが、第1シャフトユニット内に設けられている。少なくとも1つのシャフト交換複数カゴシステムが、第2シャフトユニット内に設けられている。
【0009】
第1シャフトユニットは、従って複数の単カゴ及び/又は複数カゴシステムを具えることができる。具体的には、この場合、各単カゴシステム及び各複数カゴシステムが、それ自体のエレベータシャフトと共に提供される。第1シャフトユニットは、従って複数のエレベータシャフトを具えていてもよい。適切な数のカゴが、従って第1シャフトユニットの個々のエレベータシャフト内を走行する。
【0010】
少なくとも1つのシャフト交換複数カゴシステムが、第2シャフトユニット内に設けられる。第2シャフトユニットは、具体的には、少なくとも2つのエレベータシャフトを具える。少なくとも1つのシャフト交換複数カゴシステムが、この場合、前述の少なくとも2つのエレベータシャフト内を走行する。シャフト交換複数カゴシステムは、この場合、具体的には、少なくとも2つのエレベータシャフト内の少なくとも2台のカゴを具える。前述の少なくとも2台のカゴは、少なくとも2つのエレベータシャフト間で適切に交換可能である。シャフト交換複数カゴシステムのカゴは、この場合、単カゴシステム及び複数カゴシステムの場合と同様に、エレベータシャフトに固定的に連結されてはいない。
【0011】
具体的に、シャフト交換複数カゴシステムのカゴは、エレベータシャフト間において、エレベータシャフトの上部端及び/又は下部端で交換可能である。例えばシャフト中央の範囲内といった他の適切な階におけるエレベータシャフト間において交換するカゴも考え得る。シャフト交換複数カゴシステムが2つ又はそれ以上のエレベータシャフトを具える場合、シャフト交換複数カゴシステムの個々のカゴは、具体的には全ての前述のエレベータシャフト間で交換可能である。この様式でのエレベータシャフト間のカゴ交換は、この場合、例えば、隣り合ったエレベータシャフト間、又は、特に柔軟な形で隣り合っていないエレベータシャフト間でのみ実行可能である。
【0012】
本発明によれば、搬送操作、すなわち1名の乗客又は複数名の乗客の運搬が初期階から行き先階へと行われる場合、この搬送操作を行うためにどのカゴ及び/又は複数のカゴを使用するかを決定する。この場合、少なくとも1つの単カゴシステムの1台又は数台のカゴ、少なくとも1つの複数カゴシステムの1台又は数台のカゴ、少なくとも1つのシャフト交換複数カゴシステムの1台又は数台のカゴ、又はこれらの組合せのうちのどれを使用して搬送操作を行うかを決定する。
【0013】
具体的に、本発明によるエレベータシステムは、適切な計算モデルを用いることによって、各々のカゴを考慮して最適な搬送操作が計算できる制御ユニットを具える。この種の制御ユニットは、運搬される者によって作動可能な行き先制御ユニット又は行き先選択制御手段と共に適切な様式で実現される。
【0014】
従って、本発明によれば、エレベータシステムの個々のカゴシステムのどのカゴを用いて搬送操作を行うかを評価する。2つのカゴシステムのカゴの交換は、この場合、適切な乗換えレベル、乗換え停止所、又は切換え停止所に影響される。具体的に、前述の乗換え停止所は、より上層階への搬送操作を提供する。乗換え停止所は、搬送操作用の、可能な組合せ用の追加の自由度、又は、異なるカゴシステムの個々のカゴの組合せを提示する。次いで、乗換え停止所は、異なるカゴシステムのどのカゴを搬送操作に用いるかについての本発明による評価又は決定の変数を形成する。
【0015】
第1及び第2シャフトユニットの全てのカゴシステムを、この場合、考慮して評価する。評価は、第1及び第2シャフトユニットの異なるカゴシステムについて互いに別々に及び単独には行われない。エレベータシステムは、評価の1つのユニットとして考慮される。従って、具体的には、エレベータシステムの全てのカゴシステムの組合せを考慮して評価する。
【0016】
従って、エレベータシステムは、個々のカゴシステムを一続きに吊るしたものとして単純にされるものではない。エレベータシステムの個々のカゴシステムは、従って、互いに独立して操作されない。本発明によれば、個々のカゴシステムは、従って、最善の形で連結される。個々のカゴシステムは、従って、互いにクロスリンクされている。具体的には、この場合、個々のカゴシステムの全てのカゴが、互いにクロスリンクされる。従って、搬送操作にどのカゴ又はどの複数のカゴを使用するかを評価するために、個々のカゴシステムの全てのカゴが考慮される。具体的には、乗客が個々のカゴシステムのカゴを変えることができる乗換え停止所で、個々のカゴシステムのこの種のクロスリンク又は組合せが可能となる。
【0017】
従って、本発明によれば、可能な限り速い又は可能な限り最良の搬送操作が、個々のカゴシステムのどの組合せ又は個々のカゴシステムの個々のカゴのどの組合せで行うことができるのかについて評価が行われる。個々のカゴシステムは、この場合、乗換え停止所によって互いに組み合わせる。
【0018】
本発明によって、各カゴシステムの利点が活用され、欠点又は弱点は最小にする又は取り除くことができる。それ自体が分離されている各カゴシステムは、今日、複数階を有する建築物又は高層建築物についての高い要件を、もはや満たすことができなくなっている。しかしながら、本発明による単カゴシステム、複数カゴシステム、及びシャフト交換複数カゴシステムの組合せ又はクロスリンクによって、これが可能となる。
【0019】
個々のカゴシステムの効果的で効率的な使用は、他のカゴシステムとの組合せ又は組合せ理論に大きく依存する。本発明は、シャフト交換複数カゴシステムと単カゴ及び/又は複数カゴシステムとの間の効果的な組合せを提供する。この場合、個々のカゴシステムの利点を、最適化して組合せても最大化してもよい。具体的に、シャフト交換複数カゴシステムは、高い処理能力(handling capacity:HC)、すなわち、高い搬送能力を有する。しかしながら、この利点は、シャフト交換複数カゴシステムが可能な限り少ない途中停止所をカバーしなければならない場合にのみ、最適に活用される。本発明によれば、可能な限り少ない乗換えと、従って、可能な限り少ない途中停止所で搬送操作を行うことができ、前述のシャフト交換複数カゴシステムの利点を最適に利用できる。
【0020】
本発明は、この場合、建築物の高さ又は縦の長さが1000m以下の建築物内のエレベータシステムに特に適している。乗客の搬送処理能力は、本発明によるエレベータシステムによって最適化できる。更に、この場合、垂直搬送システムの断面積を、最小化することができる。本発明によるエレベータシステムの床面積と空間の要件を、この場合、可能な限り小さくして処理能力を最適化することができる。
【0021】
搬送操作は、個々のカゴシステムの本発明による組合せ又はクロスリンクと、個々のカゴシステムのどのカゴを搬送操作に用いるかについての本発明による評価と、によって最適化可能である。特に、搬送操作は、この場合、ユーザが行き先階に到達するまでの最短時間で、可能な限り早くかつ時間を最適化して行うことができる。更に、この場合、待ち時間が短くなる。特に、初期階でのエレベータシステムのカゴの待ち時間は、この場合、可能な限り短くすることができる。更に、搬送操作は、途中停止所が最も少ない個々のカゴを使って行われる。特に、搬送操作は、カゴの中で、乗換え、切換え、交換して行うことができる。しかしながら、前述の必要な乗換えは、本発明による評価を行う結果、最小数に減る。従って、エレベータシステムは、客観的及び/又は主観的に最適化された搬送挙動となる。
【0022】
本発明による個々のカゴシステムのクロスリンク又は評価は、具体的には、例えば適切な制御装置又は適切な制御ユニットで実現される適切なクロスリンク制御手段によって行われる。しかしながら、本発明によるエレベータシステムは、例えば前述のクロスリンク制御が故障した場合、個々のカゴシステムの前述のクロスリンク又は組合せが無くても操作可能である。この場合、個々のカゴシステムは、互いに独立してかつ互いにクロスリンクすることなく操作できる。この場合、評価は、その組合せ又はクロスリンクは考慮せずに個々のカゴシステム自体を考慮する。
【0023】
ピーク時間中、いわゆるアップピーク(up−peaks)(より上層階への多数の搬送操作)が特に起こり得る。更に、ピーク時間に、いわゆるランチトラフィック(lunch traffic)が起こり得る。この場合、両方向についての多数の搬送操作、すなわちより低層階およびより上層階両方への運転が行われる。前述のピーク時間は、本発明によるカゴシステムの組合せ又はクロスリンクとこれに対応する評価によって、最適に管理することができる。
【0024】
評価の過程では、具体的には、1回の搬送操作に可能な限り少ない台数のカゴを用いて、この搬送操作が可能な限り速く行われることが考慮される。このことは、搬送操作中に、ある階に行きたいユーザにとって利点となるだけでなく、結果的に、エレベータシステムのエネルギーバランスも最適化することができる。搬送操作中に可能な限り少ない台数のカゴで運行することによって、エレベータシステムを操作するために必要なエネルギーを削減できる。従って、エネルギー需要とエネルギー供給のバランスを最適にすることができ、最適なエネルギーバランスが達成できる。
【0025】
本発明によってエレベータシャフトを第1及び第2シャフトユニットに分割すること、並びに本発明によって一方で単カゴ又は複数カゴシステムを使用し、他方ではシャフト交換複数カゴシステムを使用することは、対応する建築物の高さに応じて柔軟に適合した基本構成と見ることができる。これと対応して、基本構成は、対応する建築物の人口、又は交通流量、すなわち搬送操作(平均)回数に適合させることができる。
【0026】
従来型のエレベータシステムによれば、どの場合でも固定的に相互連結された2台のカゴを持つダブルデッカーカゴシステムを使用することが多い。しかしながら、このシステムには多くの欠点がある。このシステムと対照的に、シャフト交換複数カゴシステムのカゴを使用することによって、多くの利点が得られる。ダブルデッカーカゴシステムのカゴは、比較的重量が重くて柔軟かつ互いに独立して動かすことはできないが、シャフト交換複数カゴシステムのカゴは、カゴ自体を個々かつ互いに独立して動かすことができる。エレベータシャフト間を柔軟に交換可能であるため、更なる評価の自由度が得られる。
【0027】
単カゴシステム及び複数カゴシステムを使用することによって、ダブルデッカーカゴシステムに比べて多くの利点が得られる。この場合、ダブルデッカーカゴシステムと比べた複数カゴシステムの具体的な利点は、異なる方向に柔軟に移動可能な数台のカゴを操作することである。
【0028】
これに加えて、ダブルデッカーカゴシステムは、ほとんどの場合、ダブルデッカー入口レベルが必要となる。このようなダブルデッカー入口レベルは、本発明によるカゴシステムの組合せには必要ない。これらのダブルデッカー入口レベルは、ほとんどの場合、二重入口レベルの上方の入口レベル用にエスカレータ又は動く階段が必要であり、更に出費がかさむことになる。とは言え、二重入口レベルは、本発明にも使用可能である。
【0029】
本発明の有利な発展型において、第1及び第2シャフトユニットは、それぞれ、高低差に分割されている。個々の高低差は、この場合、所定の階を含む又は適宜の数の階に亘っている。
【0030】
具体的には、2つのシャフトユニットは、同じ高低差で同様に分割される。具体的には、この場合、本発明によるエレベータシステムを導入する建築物の縦の長さは、いずれも均等、等距離、高低差に分割できる。更に具体的には、各高低差は、適切な異なる適宜の階を含む。
【0031】
1又は複数の単カゴシステムは、いずれも第1シャフトユニットの高低差の個々の高低差内に設けることができる。具体的に、この場合、エレベータシャフトは、各単カゴシステムのそれぞれの高低差に設けられている。このような単カゴシステムにおいては、カゴが高低差のエレベータシャフト内で移動可能である。
【0032】
更に、共通の複数カゴシステムを、幾つかの高低差に提供してもよい。高低差は、この場合、縦方向に隣接する間隔である。この場合、特にエレベータシャフトが、対応する高低差を越えて延在する。複数カゴシステムのカゴは、この場合、エレベータシャフト内に対応する高低差上を個別に移動可能である。この場合、特に複数カゴシステムのうちの1台のカゴが、いずれも高低差のうちの1つの内側を移動する。具体的には、複数カゴシステムの1台のカゴが各高低差内を走行する。
【0033】
複数カゴシステムを高低差内に提供すること、又は、いずれの場合も複数カゴシステムが第1シャフトユニットの高低差の個々の高低差内を走行することもある。対応する高低差は、各々、エレベータシャフトを具え、このエレベータシャフト内を、それぞれの複数カゴシステムの数台のカゴが独立して移動可能である。
【0034】
従って、いずれの場合も少なくとも1つの単カゴシステム及び/又は少なくとも一部の複数カゴシステムが、第1シャフトユニットの各高低差内に提供される。幾つかのカゴシステムを、1つの高低差内に提供してもよい。例えば、第1高低差は1つの単カゴシステムがある第1エレベータシャフトを具えていてもよい。更に、第1高低差は、第1高低差に限られず、第1高低差上に配置された第2高低差上に延在する第2エレベータシャフトを具えていてもよい。複数カゴシステムは、例えば、第2エレベータシャフト内と、結果的に第1及び第2高低差内に存在することができる。
【0035】
第1シャフトユニットは、従って、複数の単カゴ及び/又は複数カゴシステムを具えていてもよい。更に、第1シャフトユニットは、結果的に複数のエレベータシャフトを具えていてもよい。個々のエレベータシャフトは、この場合、高低差の内側にのみ又は縦方向に隣接する幾つかの高低差上に延在してもよい。従って、適切な数のカゴが、第1シャフトユニットの個々のエレベータシャフトの内側を走行する。各カゴは、この場合、対応する単カゴシステム又は複数カゴシステムが設けられている特定の高低差内又は特定の高低差の階の間のみを走行する。
【0036】
第1シャフトユニットの個々の高低差のエレベータシャフトは、この場合、建築物の縦全長を越えて延在しないが、それぞれの高低差又はそれぞれの複数高低差の縦の長さだけを越えて延在する。高低差の個々のエレベータシャフトは、この場合、互いに分離されている又は物理的バリヤ材料によって区切られている。高低差の各エレベータシャフトは、具体的には、単カゴ又は複数カゴシステムのそれぞれの専用機械室を有する。更に、機械室を持たない単カゴ又は複数カゴシステムの実現も考えられる。
【0037】
しかしながら、これに代替するものとして、連続的に上下に重なって配置されている隣接する高低差のエレベータシャフトも、物理的バリヤ材料で分離されていなくてもよく、互いに連結されていてもよい。例えば、シャフトは、建築物の縦全長を越えて延在していてもよい。個々の(連続的な)階は、この場合、個々の高低差に適切に分割される又は同様に組み立てられる。前述のエレベータシャフトは、結果的に適切な数の高低差でかつ結果的に適切な数のより小さいエレベータシャフトに分割される。
【0038】
具体的には、1台のカゴが建築物の全長に亘って第1シャフトユニットのエレベータシャフトの1つの中を移動することは、この場合、不可能である。各カゴは、それぞれ単カゴ又は複数カゴシステムが提供された対応する高低差の内側のみを移動可能である。
【0039】
シャフト交換複数カゴシステム又は第2シャフトユニット内のシステムは、具体的には、幾つかの高低差に亘って、具体的には全ての高低差に亘って延在する。これは、具体的には、シャフト交換複数カゴシステムのそのカゴが全ての階で停止可能であることを意味する。
【0040】
特に、シャフト交換複数カゴシステムのカゴは、エレベータシャフト間のエレベータシャフトの上端及び/又は下端で交換可能である。カゴは、エレベータシャフト間で、具体的には少なくとも1つの高低差の中で、更に具体的には上下に重なって配置された2つの高低差の間で交換される。上下に重なって配置された2つの高低差は、この場合、縦方向に隣接した2つの高低差として理解されるべきである。
【0041】
2カゴシステムのカゴは、乗換え停止所で交換される。乗換え停止所は、具体的には、互いに上下に重なって隣接する階である。乗換え停止所は、上層階への搬送操作に役立つ。上下に重なって配置された2つの高低差が隣接する乗換え停止所は、結果的に、2つの高低差のそれぞれ上部の高低差のカゴシステムが入る機会を形成する。
【0042】
少なくとも1つのシャフト交換複数カゴシステムのカゴは、有利な様式で、第2シャフトユニットの縦全長に亘って走行することができる。特に、少なくとも1つのシャフト交換複数カゴシステムのカゴは、第2シャフトユニットのそれぞれのエレベータシャフトの縦全長に亘って移動可能である。具体的に、第2シャフトユニットのエレベータシャフトは、この場合、建築物の縦全長を越えて延在してもよい。説明したように、単カゴシステム及び複数カゴシステムのカゴは、第1シャフトユニットの所定の高低差の内側のみを走行する。ここには幾つかのシャフト交換複数カゴシステムがあり、各シャフト交換複数カゴシステムは、建築物の縦長の一部(具体的には様々な個別部分)に亘ってのみ延在することができる。
【0043】
上下に重なって配置された少なくとも2つの高低差(すなわち、縦方向で隣接する2つの高低差)は、複数カゴシステムを形成することが好ましい。共通エレベータシャフトは、この場合、2つの高低差を越えて延在する。具体的に、前述の複数カゴシステムは2カゴシステムであり、その2カゴシステム内では2台のカゴが互いに独立して移動する。複数カゴシステムの上方のカゴは、この場合、2つの高低差の上の高低差内を移動し、複数カゴシステムの下方のカゴは、2つの高低差の下の高低差内を移動する。
【0044】
前述の2つの高低差が隣接する階は、この場合、具体的には、乗換え停止所又は複数カゴシステムの上方のカゴが入るレベルとして作用する。下の高低差の最下層階は、乗換え停止所又は複数カゴシステムの下のカゴが入るレベルとして作用する。
【0045】
本発明の好ましい発展型では、エレベータシャフトの高低差が、オーバーラップしていてもよい。これは、2つの異なる高低差を構成する特定の階として理解するべきである。2つの高低差がオーバーラップすると、前述のオーバーラップしている2つの高低差のそれぞれの2つの単カゴ又は複数カゴシステムは、エレベータシャフト内のオーバーラップしている階で停止することができる。2つの高低差がオーバーラップしている特定の階では、オーバーラップしている高低差の1つの単カゴ又は複数カゴシステムのカゴと、オーバーラップしている他の高低差の単カゴ又は複数カゴシステムのカゴの両方が停止することができる。それにもかかわらず、単カゴシステム又は複数カゴシステムのカゴは、それぞれの高低差の内側のみを走行する。しかしながら、これは、高低差がオーバーラップしており、ある階に複数のカゴが停止することができる結果、可能となる。オーバーラップしている階は結果的にオーバーラップしている乗換え停止所を形成し、このオーバーラップしている乗換え停止所で、乗客が、上方の高低差のカゴシステムと、下方の高低差のカゴシステムの両方に入ることができる。オーバーラップしている乗換え停止所は、2つの単カゴシステム用に提供されている。
【0046】
有利な形では、第2シャフトユニットのシャフト交換複数カゴシステムのカゴは、搬送操作の第1部分搬送操作の過程でフィーダカゴとして使用される。搬送操作は、幾つかの部分搬送操作に、具体的には2つの部分搬送操作に結果的に分けることができる。第1部分搬送操作中は、比較的大きな縦の距離、高さ、又は階数に及ぶ。フィーダは、結果的に長距離を扱う役目をする。従って、シャフト交換複数カゴシステムのカゴは、長距離カゴとして使用される。これによって、シャフト交換複数カゴシステムのカゴは、可能な限り少ない途中停止所をカバーすることになる。具体的に、シャフト交換複数カゴシステムのカゴは、第1部分搬送操作の過程においてフィーダカゴとして乗換え停止所で使用される。従って、フィーダカゴは、乗換え停止所間を移動する。結果的に、乗客は、フィーダカゴの手段によって乗換え停止所へ搬送され、乗客はこの乗換え停止所で更なるカゴシステムに乗換えることができる。好ましくは、フィーダカゴは、搬送操作の第1部分搬送操作中に個々の高低差間を走行する。
【0047】
第1シャフトユニットの単カゴシステム及び複数カゴシステムのカゴは、搬送操作の第2部分搬送操作の過程で短距離カゴとして使用するのがよい。この場合、短距離カゴは、搬送操作の第2部分搬送操作中、対応する単カゴシステム又は複数カゴシステムのそれぞれの高低差の内側で階層間を走行するのが好ましい。第2部分搬送操作中は、比較的短い縦の距離、高さ、又は階数が扱われる。個々の高低差の内側の第1シャフトユニットの単カゴシステム又は複数カゴシステムのカゴは、結果的に、局所エレベータグループとして実現される。
【0048】
搬送操作は、フィーダカゴと短距離カゴの組合せによって最適化できる。シャフト交換複数カゴシステムを第1部分搬送操作用の(具体的には乗換え停止所への)フィーダカゴとして使用すること、及び単カゴ及び複数カゴシステムを第2部分搬送操作用の短距離カゴとして使用することは、結果的に、個々のカゴシステムの特に好ましい組合せ又はクロスリンクである。第1部分搬送操作中、乗客は、結果的にフィーダカゴによって乗換え停止所へと搬送され、ここで乗客は、短距離カゴの1つに乗換える。フィーダカゴ及び短距離カゴとしての個々のカゴの使用、又は個々のフィーダカゴと短距離カゴが走行する間の許容階の対応する数が、この場合、本発明による評価において考慮される。
【0049】
例えば、搬送操作が地上レベル又は最下層階から上層目的階へと行われる場合、まず初めに、第1部分搬送操作が、フィーダカゴによって目的階がある高低差へ行われる。切換えは、対応する乗換え停止所でフィーダカゴから短距離カゴへと行うことができる。次いで、第2部分搬送操作が、短距離カゴによって対応する目的階へ高低差の内側で行われる。
【0050】
好ましくは、互いに隣接する高低差の階は、単カゴシステム、複数カゴシステム、及び/又はシャフト交換複数カゴシステムのうちの1つのカゴ間で、乗換え停止所又は切換え選択所として使用される。その結果、搬送操作中、交換は単カゴシステム、複数カゴシステム、及び/又はシャフト交換複数カゴシステム間の対応する階で行われる。具体的には、2つのシャフトユニットが同じ高低差に類似して分けられると、2つの高低差で隣接する階は、様々に隣接するカゴシステムの間の柔軟な乗換え停止所を形成する。
【0051】
乗換え停止所は、結果的に、搬送操作の乗換え選択所である。個々の部分搬送操作間のカゴの交換は、乗換え停止所で行われる。乗換え停止所は、この場合、フィーダ停止所である。更に、第1部分搬送のフィーダカゴから第2部分搬送の短距離カゴへの乗換えは、具体的には乗換え停止所で行われる。
【0052】
しかしながら、個々の高低差の内側の階を、乗換え停止所として選択してもよい。特に、乗換え停止所は、エレベータシステムの通常操作中でも柔軟な形で選択できる。乗換え停止所は、固定的にあるいは義務的に予め決定されないが、柔軟に、現交通流又は現搬送操作数に適合するように選択できる。特に、本発明による評価の過程で、どの階を乗換え停止所として利用するかを選択することができる。
【0053】
第2シャフトユニット内で少なくとも2つのシャフト交換複数カゴシステムが操作され、同時に少なくとも2つのシャフト交換複数カゴシステムのカゴがフィーダカゴとして利用される場合、個々の乗換え停止所を、全てのフィーダカゴの間で分けることができる。結果的に、個々のカゴの不必要な停止が避けられる。
【0054】
乗換え停止所は、いずれも20m乃至100mの間の縦距離で提供されることが好ましい。乗換え停止所は、この場合、ピーク時間におけるアップピーク(up−peak)(より上層階への多数の搬送操作)に対処するための最適条件である(特に等距離の)縦距離で配置されてもよい。特に、乗換え停止所は、本発明による評価の過程で最適なディスパッチアルゴリズムが実行できるように、縦距離で提供される。
【0055】
好ましくは、シャフトユニットは、建築物の高さ100m当たり2乃至5つの間の高低差に分けられる。この場合、両シャフトユニットが、同じ縦距離に分けられている。建築物の高さ100m当たり2乃至5つの間の高低差で分けると、本発明による評価の過程で最適なディスパッチアルゴリズムを実行することができる。これによって、シャフトユニット内を移動するカゴの交通の遅延が最小となる。
【0056】
エレベータシステムは、行き先選択制御(destination selection control:DSC)なしで又は呼び制御なしで操作することが好ましい。複数カゴシステムのカゴがフィーダカゴ(専用)に用いられると、行き先選択制御はなくて済む。この場合、個々の高低差は、方向感知回収制御を用いて実現してもよい。個々のカゴシステムのクロスリンクは、カゴを、常に切換え選択所で直ちに使用できるようにする。この代替として、エレベータシステム内に行き先選択制御又は呼び制御を実装することもできる。
【0057】
シャフト交換複数カゴシステムは、呼び制御なしで操作される。シャフト交換複数カゴシステムのカゴは、この場合、呼び制御に関係なく乗換え停止所間を恒久的に移動する。この場合、乗客は、初期階で利用可能なシャフト交換複数カゴシステムの任意のカゴに入って搬送操作を開始できる。次いで、乗客は、 対応する乗換え停止所で自主的に退出し、短距離カゴの1つに乗り換えて行き先階に到着する。この代替として、呼び制御を持つシャフト交換複数カゴシステムを操作することも可能である。
【0058】
本発明の有利な発展型では、シャフト交換複数カゴシステムのカゴ又は各シャフト交換複数カゴシステムのカゴは、いずれも同期される。この場合、シャフト交換複数カゴシステムの個々のカゴの開始又は出発と到着が同期する、すなわち互いに一致する。具体的には、個々の乗換え停止所で出発と到着が同期される。このため、交通渋滞が避けられ、最適なカゴ数でシャフト交換複数カゴシステムを操作できる。個々のカゴの走行曲線は、同期の結果として個別に適合させることができる。結果的に、他のカゴを待つことによって生じる長い停止時間と分離停止所を避ける又は減らすことができる。
【0059】
この同期中、シャフト交換複数カゴシステムの反対方向に走行するカゴを、考慮して互いに調和させてもよい。この場合、反対方向に走行しているカゴの行程を、反対方向に移動しているカゴがほぼ同時に移動するように互いに調和させてもよい。シャフト交換複数カゴシステムの第1の下方移動カゴは、この場合、シャフト交換複数カゴシステムの第2の下方移動カゴに対する“事実上の”つり合い重りとしてみなすことができる。この結果、エレベータシステムのエネルギー管理を、更に最適化することができる。第1のカゴが下方へ移動する結果、第2のカゴが上方へ移動する(即座)のに用いられるエネルギーを増やすことができる。結果的に、エレベータシステムの接続負荷を最適化することができる。
【0060】
好ましくは、搬送操作に関連する情報は、ディスプレイ装置によって出力される。この種の情報は、具体的には、搬送操作用に用いられるカゴの出発時間又は到着時間を含む。この情報は、例えば、カゴの出発が遅れたことによる遅延時間を含んでもよい。このような遅延時間は、例えば、シャフト交換複数カゴシステムのカゴを同期させる場合に生じ得る。これは、乗客がカゴの1つに乗り込んでいる間に、又は事実上のつり合い重りとして作用する別のカゴの出発準備ができている場合に、時々あり得る。出発と到着のための情報システムが、この種のディスプレイ装置によって提供される。この種のディスプレイ装置は、例えば、視覚的に及び/又は聴覚的に実現される。この種のディスプレイ装置は、個々のカゴの中及び/又はカゴの外側に配置されたモニタとして実現される。例えば、この種のディスプレイ装置は、個々の乗換え停止所に配置できる。
【0061】
有利な態様では、搬送操作は、直接の行程中に、特に定義可能なピーク時間の外で、シャフト交換複数カゴシステムによって行われる。直接の行程中は、専ら対応するカゴが初期階から行き先階への搬送操作を行う。従って、大きな交通流がないピーク時間外には、複数カゴ(具体的にはフィーダカゴ及び短距離カゴ)操作する必要がない。従って、エレベータシステムの操作に要するエネルギーを、例えば、ピーク時間外で減らすことができる。
【0062】
シャフト交換複数カゴシステムのカゴ数は、変更できることが好ましい。この数は、搬送操作数に応じて若しくは実際の又は予測した交通流に応じて変更する又は適合させることができる。この場合、個々のカゴは、シャフト交換複数カゴシステムから(一時的に)取り除くようにしてもよい。取り除いたカゴは、具体的にはガレージ又は保管空間内に保管できる。具体的には、シャフト交換複数カゴシステムからカゴを取り除くべきか、及びどれくらいのカゴを取り除くべきかが、本発明による評価の過程において評価される。評価は、この場合、具体的には、合理的な、自己学習する、及び先を見越した形で行うことができる。
【0063】
本発明の有利な実施形態によれば、搬送操作を実行するためにどのカゴ又は複数のカゴを用いるかについての決定は、予め選択可能な基準を、及び/又は、予め定義可能な及び/又は今現在又は予め定義された時間窓で検出されたパラメータを、考慮して行われる。具体的に、エレベータシステムの制御ユニットは、適切な計算モデルを用いて、予め選択可能な入力基準、及び/又は、予め定義可能な及び/又は検出されたパラメータに基づいてそれぞれのカゴを考慮して、最適な搬送操作を計算することができる。この種の制御ユニットは、行き先制御ユニット又は運ばれる人によって作動可能な行き先選択制御として適切に実現される。
【0064】
搬送操作をどのカゴ又は複数のカゴで行うかについての決定は、好ましくは以下の基準又はパラメータを考慮して行われる:乗客の行き先階、複数の乗客の行き先階、現在の交通密度、エネルギー需要、及び/又は個々のカゴの使用状況。具体的には、多様な交通ルート又は搬送操作を実行するための選択が、基準又はパラメータによって計算できる。多様な交通ルートには、多様なカゴシステムのカゴの直接的ルート及び組合せの両方を考慮できる。最も可能性が高く又は最も好ましい交通ルートが、指定した基準又はパラメータによって選択される。
【0065】
本発明の更なる利点及び発展型は、説明と添付の図面によって提供される。
【0066】
上述した特徴及び以下で説明する特徴は、提供される組合せにいずれも使用できると共に、本発明の骨組みから逸脱することなく他の組合せ又は単独で使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
本発明について、例示的実施形態の方法によって図面に概略的に示し、図面の説明と共に以下に詳細に説明する。
図1図1は、本発明による方法の好ましい実施形態実行するために提供された本発明によるエレベータシステムの好ましい発展型の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1は、建築物における本発明によるエレベータシステムの好ましい発展型の概略図である。前述のエレベータシステムは符号100で示されている。エレベータシステム100は、この場合、第1シャフトユニット110と第2シャフトユニット120を具える。
【0069】
シャフトユニットは、5つの高低差I1、I2、I3、I4、I5に分けられている。この場合、一定数の階が、いずれも高低差の1つを形成して組み立てられている。例えば、5つ全ての高低差I1、I2、I3、I4、I5は、縦方向に同じ高さである。例えば、5つ全ての高低差I1、I2、I3、I4、I5は、同様の階数を更に含む。各高低差は、様々な適切な階数又は縦の高さを具えている。
【0070】
中にエレベータシステム100が導入された建築物は、一例として、建築物高さが100mである。各高低差は、結果的に、例えば、20mの建築物高さを越えて延在する。この建築物は、例えば、25の階を含む。各高低差は、結果的に、5つの階を越えて延在する。互いに隣接する2つの高低差における階は、いずれも乗換え停止所又は切換え選択所H1、H2、H3、H4として提供されている。入場点H0は、この場合、地上レベルにある。
【0071】
例えば、ここで第2シャフトユニット120は、4つのエレベータシャフト121、122、123、124を具えている。シャフト交換複数カゴシステムは、第2シャフトユニット120の4つのエレベータシャフト121、122、123、124内にある。シャフト交換複数カゴシステムは、具体的には、第2シャフトユニット120の4つのエレベータシャフト121、122、123、124の間で柔軟に交換できる20台のカゴを具えている。
【0072】
第1シャフトユニット110は、第1の間隔I1の内側に4つのエレベータシャフト111a、112a、113a、及び114aを具える。第1シャフトユニット110は、第2及び第3の間隔I2及びI3の内側に更なる4つのエレベータシャフト111b、112b、113b、及び114bを具える。第1シャフトユニット110は、第4及び第5の間隔I4及びI5の内側に更なる4つのエレベータシャフト111c、112c、113c、及び114cを具える。多様な高低差のエレベータシャフトは、具体的には縦の物理的バリヤ(例えばコンクリートスラブ)によって互いに分離されており、いずれも専用機械室を有する。
【0073】
単カゴシステムの1台のカゴは、第1シャフトユニット110の各4つのシャフト111a、112a、113a、114aの高低差I1の内側を走行する。結果的に、総数5台のカゴが、入場点H0と切換え選択所H1の間を走行する。カゴは、分かり易くするために詳細には示していない。
【0074】
各複数カゴシステムの互いに独立して移動できる2台のカゴは、第1シャフトユニット110の高低差I2及びI3の各4つのシャフト111b、112b、113b、114bを走行する。複数カゴシステムは、この場合、それぞれ2カゴシステムとして構成されている。各複数カゴシステムの下方のカゴは、この場合、第2高低差I2の各4つのシャフト111b、112b、113b、114bの内側を走行する。各複数カゴシステムの上方のカゴは、この場合、第3高低差I3の各4つのシャフト111b、112b、113b、114bの内側を走行する。
【0075】
乗換え停止所H1には、この場合、各複数カゴシステムの下のカゴが入ることができる。乗換え停止所H2は、各複数カゴシステムの上のカゴが入ることができる。
【0076】
各複数カゴシステムの下又は上のカゴは、類似の形で、第1シャフトユニット110の高低差I4又はI5の各4つのシャフト111c、112c、113c、114cを走行する。
【0077】
乗換え停止所H3又はH4は、類似の形で、各複数カゴシステムの下又は上のカゴが入ることができる。
【0078】
搬送操作が実行されると、単カゴシステム、複数カゴシステム、及びシャフト交換複数カゴシステムの個々のカゴのどれを搬送操作に用いるかについての評価が行われる。
【0079】
地上レベルH0から異なる4つの行き先階へと行われる4つの搬送操作の例を以下に説明する。第1搬送操作は、4階S4へと行われる。第2搬送操作は、第2乗換え停止所H2を提供する10階S10へと行われる。第3搬送操作は、17階S17へと行われる。第4搬送操作は、22階S22へと行われる。
【0080】
異なる4つの行き先階、個々のカゴの使用状況、現在の交通密度、及び必要なエネルギー需要に関して個々の搬送操作にどのカゴを用いるかについての決定が行われる。この場合、4階S4への第1搬送操作が、第1シャフトユニット110のエレベータシャフト111a内の単カゴシステムのカゴによる、直接的な行程として行われる。
【0081】
10階S10への第2搬送操作は、第2シャフトユニット120のエレベータシャフト121内のシャフト交換複数カゴシステムのカゴによる、直接的な行程として行われる。
【0082】
17階S17への第3搬送操作は、2つの部分搬送操作で行われる。この場合、まず、第1部分搬送操作が、地上レベルから乗換え停止所H3へと行われる。第1部分搬送操作は、第2シャフトユニット120のエレベータシャフト123内のシャフト交換複数カゴシステムのカゴによって、フィーダ行程として行われる。第2部分搬送操作は、次いで、乗換え停止所H3から階S17へと行われる。第2部分搬送操作は、高低差I4のエレベータシャフト114c内の複数カゴシステムの下方のカゴで行われる。
【0083】
22階S22への第4搬送操作も、2つの部分搬送操作で行われる。この場合、まず、第1部分搬送操作が、地上レベルから乗換え停止所H4へと行われる。第1部分搬送操作は、第2シャフトユニット120のエレベータシャフト121内のシャフト交換複数カゴシステムのカゴによって、フィーダ行程として行われる。このカゴは、第2搬送操作を行うために、乗換え停止所H2で途中停止しなければならない。カゴは、次いで、乗換え停止所H4へとさらに移動する。次いで、乗換え停止所H4から階S22への第2部分搬送操作が行われる。第2部分搬送操作は、高低差I5のエレベータシャフト113c内の複数カゴシステムの上方のカゴで行われる。
【符号の説明】
【0084】
100 エレベータシステム
110 第1シャフトユニット
111a、b、c エレベータシャフト
112a、b、c エレベータシャフト
113a、b、c エレベータシャフト
114a、b、c エレベータシャフト
120 第2シャフトユニット
121 エレベータシャフト
122 エレベータシャフト
123 エレベータシャフト
124 エレベータシャフト
I1 高低差
I2 高低差
I3 高低差
I4 高低差
I5 高低差
H0 入場点
H1 乗換え停止所
H2 乗換え停止所
H3 乗換え停止所
H4 乗換え停止所
S4 4階、行き先階
S10 10階、行き先階
S17 17階、行き先階
S22 22階、行き先階
図1