【文献】
van der Waart AB. et al.,Akt Signalling Inhibition Promotes The Ex Vivo generation Of Minor Histocompatibility Antigen-Specific CD8+ Memory Stem T Cells,Blood,2013年,122(21),3269
【文献】
Gattinoni L. et al.,Adoptive immunotherapy for cancer: building on success,Nature Reviews Immunology,2006年,6(5),383-393
【文献】
Kim EH. et al.,Role of PI3K/Akt signaling in memory CD8 T cell differentiation,Frontiers in Immunology,2013年,4,20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)前記がんが、骨髄腫、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、神経内分泌腫瘍、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、黒色腫、皮膚がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、肝臓がん、腎がん、膵がん、肺がん、胆管がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、甲状腺髄様癌、卵巣がん、神経膠腫、リンパ腫、白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫および膀胱がん(urinary bladder cancer)からなる群より選択される、
(b)前記がんが、B細胞悪性疾患であり、結合性ドメインが、BCMAのエピトープに結合する、
(c)前記がんが、膀胱がん(bladder cancer)であり、細胞外結合性ドメインが、PSCAまたはMUC1のエピトープに結合する、
(d)前記がんが、多形神経膠芽腫であり、細胞外結合性ドメインが、EPHA2、EGFRvIIIまたはCSPG4のエピトープに結合する、
(e)前記がんが、肺がんであり、細胞外結合性ドメインが、PSCAまたはGD2のエピトープに結合する、
(f)前記がんが、乳がんであり、細胞外結合性ドメインが、CSPG4またはHER2のエピトープに結合する、
(g)前記がんが、黒色腫であり、細胞外結合性ドメインが、CSPG4またはGD2のエピトープに結合する、または
(h)前記がんが、膵がんであり、細胞外結合性ドメインが、PSCAまたはMUC1のエピトープに結合する、
請求項12に記載の組成物。
血液学的悪性疾患の処置を必要とする被験体における血液学的悪性疾患の処置に使用するための、治療有効量(therapeutically effect amount)の請求項11に記載の組成物。
前記血液学的悪性疾患が、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ球性白血病(CLL)または非ホジキンリンパ腫(NHL)からなる群より選択されるB細胞悪性疾患である、請求項14に記載の組成物。
前記MMが、顕性多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌型骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫および髄外性形質細胞腫からなる群より選択される、請求項15に記載の組成物。
前記NHLが、バーキットリンパ腫、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される、請求項15に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0096】
A.概要
本発明は、一般に、T細胞組成物を製造するための改善された方法に関する。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本明細書において意図されている本発明の方法は、分化からT細胞増殖を切り離して、優れた特性、例えば、当技術分野における既存のT細胞組成物と比較して、付随する分化減少と共に、in vivoにおける増加した生存、増大および持続性を有するT細胞を産生する。よって、本明細書において意図されているT細胞組成物は、分化を殆ど伴わない複数ラウンドの増大が可能な、若いまたはナイーブT細胞集団の特徴を有する能力あるT細胞を含む。さらに、増大させた細胞は、その後に分化し、免疫エフェクター細胞機能をもたらすことができる。
【0097】
種々の実施形態では、T細胞増大中にT細胞増殖を維持または最小限で低下させ、T細胞分化を低下、減少または軽減する、T細胞を製造するための方法が提供される。特定の好ましい実施形態では、工学的に作製されたT細胞組成物は、T細胞養子免疫療法の有効性をさらに増加させることができる、本明細書において意図されている方法によって製造される。本明細書において意図されている製造されたT細胞組成物は、これらに限定されないが、がん、感染症、自己免疫疾患、炎症性疾患および免疫不全症を含めた多数の状態の処置または予防において有用である。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本発明者は、T細胞における細胞シグナル伝達経路であって、がん細胞における増殖に通常関連する経路のモジュレーションが、細胞シグナル伝達経路がモジュレートされていないT細胞と比較して、T細胞増大中に、T細胞増殖の実質的な維持またはごくわずかな低下およびT細胞分化の減少をもたらすことを驚くべきことに、また、予期せずに発見した。
【0098】
一実施形態では、工学的に作製されたT細胞を製造する方法は、T細胞を細胞におけるPI3K/AKT/mTOR経路を阻害する薬剤と接触させるステップを含む。細胞は、活性化および増大の前、最中および/または後に接触させることができる。工学的に作製されたT細胞組成物は、分化の実質的な増加を伴うことなく複数ラウンドの増大を受けることができるように、十分なT細胞効力を保持する。
【0099】
したがって、本明細書において意図されている方法および組成物は、既存の養子細胞免疫療法と比較して画期的な改善を表す。
【0100】
本発明の実施には、特にそれに反する指示がなければ、当技術分野の技術の範囲内に入る化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技法、遺伝学、免疫学、および細胞生物学の従来の方法を使用し、その多くを例示目的で以下に記載する。そのような技法は、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第3版、2001年);Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第2版、1989年);Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982年);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons、2008年7月更新);Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub. Associates and Wiley−Interscience;Glover、DNA Cloning: A Practical Approach、I巻&II巻(IRL Press、Oxford、1985年);Anand、Techniques for the Analysis of Complex Genomes、(Academic Press、New York、1992年);Transcription and Translation(B. HamesおよびS. Higgins編、1984年);Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning(1984年);HarlowおよびLane、Antibodies、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1998年)Current Protocols in Immunology Q. E. Coligan、A. M. Kruisbeek、D. H. Margulies、E. M. ShevachおよびW. Strober編、1991年);Annual Review of Immunology;ならびにAdvances in Immunologyなどの学術誌内のモノグラフを参照されたい。
【0101】
本明細書において引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
B.定義
別段の定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似した、またはそれと等しい任意の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、組成物、方法および材料の好ましい実施形態が本明細書に記載されている。本発明の目的に関して、次の用語を以下に定義する。
【0103】
「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」という冠詞は、本明細書では、その冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つ超(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「an(1つの)要素」とは、1つの要素または1つ超の要素を意味する。
【0104】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、参照数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%と同程度変動する数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。特定の実施形態では、数値の前の「約」または「およそ」という用語は、プラスまたはマイナス15%、10%、5%、または1%の範囲の値を示す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、参照数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さの80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超である数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。一実施形態では、「実質的に同じ」とは、参照数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さとほぼ同じである影響、例えば、生理的影響を生じる数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。
【0106】
本明細書全体を通して、文脈がそうでないことを要しない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」という単語は、規定されたステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群を含むが、任意の他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群は排除されないことを意味するものと理解されたい。「からなる(consisting of)」とは、「からなる(consisting of)」という句に続くいかなるものも含み、かつそれに限定されることを意味する。したがって、「からなる(consisting of)」という句は、列挙されている要素が必要または必須であること、および他の要素は存在してはならないことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、その句の後に列挙されている要素をいずれも含み、かつ、列挙されている要素に関して本開示に明記されている活性または作用に干渉も寄与もしない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる(consisting essentially of)」という句は、列挙されている要素が必要または必須であるが、他の要素は任意選択ではなく、それらが、列挙されている要素の活性または作用に影響を及ぼすか否かに応じて、存在してよいまたは存在してはならないことを示す。
【0107】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある特定の実施形態」、「追加的な実施形態」または「さらなる実施形態」またはこれらの組合せへの言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に包含されることを意味する。したがって、本明細書全体を通して種々の箇所における前述の句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態について言及しているのではない。さらに、1つまたは複数の実施形態において、特定の特徴、構造、または特性を任意の適切な様式で組み合わせることができる。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「T細胞製造」もしくは「T細胞を製造する方法」または同等の用語は、T細胞の治療用組成物を産生するプロセスを指し、この製造方法は、次のステップのうち1種もしくは複数または全てを含むことができる:採取、刺激、活性化および増大。
【0109】
用語「T細胞」または「Tリンパ球」は、当技術分野で認識されており、胸腺細胞、ナイーブTリンパ球、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、休止Tリンパ球または活性化されたTリンパ球を含むものとする。T細胞は、Tヘルパー(Th)細胞、例えば、Tヘルパー1(Th1)またはTヘルパー2(Th2)細胞であり得る。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL;CD4
+T細胞)CD4
+T細胞、細胞傷害性T細胞(CTL;CD8
+T細胞)、腫瘍浸潤細胞傷害性T細胞(TIL;CD8
+T細胞)、CD4
+CD8
+T細胞、CD4
−CD8
−T細胞または任意の他のT細胞のサブセットであり得る。特定の実施形態での使用に適したT細胞の他の例示的な集団は、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞を含む。
【0110】
「能力あるT細胞」および「若いT細胞」は、特定の実施形態では互換的に使用されており、T細胞が増殖および付随する分化減少をすることができるT細胞表現型を指す。特定の実施形態では、若いT細胞は、「ナイーブT細胞」の表現型を有する。種々の実施形態では、本明細書において意図されている製造方法は、若いT細胞;T細胞増殖が、T細胞刺激、活性化および増大中にT細胞分化から切り離された細胞を産生する。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、意図されている組成物および方法により製造された能力あるT細胞は、養子移入後に、より優れた抗腫瘍性有効性を保持する。特定の実施形態では、若いT細胞は、次の生物学的マーカー:CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122およびCD127のうち1種もしくは複数または全てを含む。一実施形態では、若いT細胞は、次の生物学的マーカー:CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122およびCD127のうち1種もしくは複数または全てを含み、CD57、CD244、CD160、PD−1、CTLA4、TIM3およびLAG3の発現を欠如する。
【0111】
本明細書で使用される場合、「増殖」という用語は、細胞の対称または非対称分裂のいずれかの細胞分裂の増加を指す。特定の実施形態では、「増殖」とは、T細胞の対称または非対称分裂を指す。「増殖の増加」は、処理された試料中の細胞の数が処理されていない試料中の細胞と比較して増加している場合に起こる。
【0112】
本明細書で使用される場合、用語「分化」は、細胞の効力もしくは増殖を減少させるまたは細胞をより発生的に制限された状態へと移動させる方法を指す。特定の実施形態では、分化したT細胞は、免疫エフェクター細胞機能を獲得する。
【0113】
「免疫エフェクター細胞」は、1種または複数のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性細胞死滅活性、サイトカインの分泌、ADCCおよび/またはCDCの誘導)を有する免疫系の任意の細胞である。本明細書において意図されている例示的な免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球、特に、細胞傷害性T細胞(CTL;CD8
+T細胞)、TILおよびヘルパーT細胞(HTL;CD4
+T細胞)である。
【0114】
「改変T細胞」とは、本明細書において意図されている工学的に作製されたTCRまたはCARをコードするポリヌクレオチドを導入することによって改変されたT細胞を指す。改変T細胞とは、遺伝子改変および非遺伝子改変(例えば、エピソームまたは染色体外)の両方を含む。
【0115】
本明細書で使用される場合、「遺伝子工学的に作製された」または「遺伝子改変された」という用語は、細胞内の全遺伝物質に余分の遺伝物質をDNAまたはRNAの形態で付加することを指す。
【0116】
「遺伝子改変細胞」、「改変細胞」、および「向け直された(redirected)細胞」という用語は、互換的に使用される。
【0117】
本明細書で使用される場合、「遺伝子療法」という用語は、遺伝子の発現を回復させる、補正する、または改変する、あるいは治療用ポリペプチド、例えば、TCRもしくはCARおよび/または1種もしくは複数種のサイトカインを発現させる目的で、細胞内の全遺伝物質に余分の遺伝物質をDNAまたはRNAの形態で導入することを指す。特定の実施形態では、T細胞を、細胞のゲノムを改変することなく、例えば、TCRまたはCARを発現するエピソームベクターを細胞に導入することにより、工学的に作製されたTCRまたはCARを発現するように改変する。
【0118】
「ex vivo」という用語は、一般に、生物体の外側で行われる行為、例えば、天然の条件の変更が最小であることが好ましい、生物体の外側の人工的な環境において生組織内または生組織上で行われる実験または測定などを指す。特定の実施形態では、「ex vivo」手順は、生物体から取得し、通常は滅菌条件下で、一般には数時間または最大約24時間であるが状況に応じて最大48または72時間を含む時間にわたって実験装置内で培養または調節した生細胞または組織を伴う。ある特定の実施形態では、そのような組織または細胞を収集し、凍結させ、ex vivoにおける処理のために後で解凍することができる。生細胞または組織を使用して数日よりも長く続く組織培養実験または手順は、一般には「in vitro」とみなされるが、ある特定の実施形態では、この用語は、ex vivoと互換的に使用することができる。
【0119】
「in vivo」という用語は、一般に、生物体の内側で行われる行為、例えば、細胞の自己再生および細胞の増大などを指す。一実施形態では、「in vivoにおける増大」という用語は、細胞集団の数をin vivoにおいて増加できることを指す。
【0120】
「刺激」という用語は、これに限定されないが、TCR/CD3複合体を介したシグナルトランスダクションを含めたシグナルトランスダクション事象が媒介される、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)とその同族リガンドの結合によって誘導される一次応答を指す。
【0121】
「刺激分子」とは、同族刺激性リガンドと特異的に結合するT細胞上の分子を指す。
【0122】
「刺激性リガンド」は、本明細書で使用される場合、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上に存在する場合、T細胞上の同族結合パートナー(本明細書において、「刺激分子」と称される)と特異的に結合し、それにより、これらに限定されないが、活性化、免疫応答の開始、増殖などを含めた、T細胞による一次応答を媒介することができるリガンドを意味する。刺激性リガンドとして、これらに限定されないが、CD3リガンド、例えば、抗CD3抗体ならびにCD2リガンド、例えば、抗CD2抗体およびペプチド、例えば、CMV、HPV、EBVペプチドが挙げられる。
【0123】
「活性化」という用語は、検出可能な細胞増殖を誘導するように十分に刺激されたT細胞の状態を指す。特定の実施形態では、活性化は、誘導性サイトカイン産生、および検出可能なエフェクター機能にも関連し得る。「活性化T細胞」という用語はとりわけ、増殖しているT細胞を指す。TCR単独を通じて生成されるシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分であり、1つまたは複数の二次または共刺激シグナルも必要である。したがって、T細胞の活性化は、TCR/CD3複合体を通じた一次刺激シグナルおよび1つまたは複数の二次共刺激シグナルを含む。共刺激は、CD3/TCR複合体を通じた、またはCD2を通じた刺激などの一次活性化シグナルを受けたT細胞による増殖および/またはサイトカイン産生によって証明することができる。
【0124】
「共刺激シグナル」とは、TCR/CD3ライゲーションなどの一次シグナルと組み合わさって、T細胞増殖、サイトカイン産生、および/または特定の分子(例えばCD28)の上方制御もしくは下方制御を導くシグナルを指す。
【0125】
「共刺激リガンド」は、共刺激分子に結合する分子を指す。共刺激リガンドは、可溶性であり得るか、または表面上に提示され得る。「共刺激分子」は、共刺激リガンド(例えば、抗CD28抗体)と特異的に結合するT細胞上の同族結合パートナーを指す。
【0126】
「自己由来」とは、本明細書で使用される場合、同じ被験体に由来する細胞を指す。
【0127】
「同種異系」とは、本明細書で使用される場合、比較される細胞とは遺伝的に異なる同じ種の細胞を指す。
【0128】
「同系」とは、本明細書で使用される場合、比較される細胞と遺伝的に同一である異なる被験体の細胞を指す。
【0129】
「異種」は、本明細書で使用される場合、比較される細胞とは異なる種の細胞を指す。好ましい実施形態では、本発明の細胞は、同種異系である。
【0130】
本明細書で使用される場合、用語「個体」および「被験体」は、多くの場合、互換的に使用され、遺伝子療法ベクター、細胞ベースの治療薬および本明細書の他の箇所に開示されている方法により処置することができるがんの症状を示す任意の動物を指す。適切な被験体(例えば、患者)は、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギまたはモルモットなど)、農場動物および家畜動物またはペット(例えば、ネコまたはイヌなど)を含む。非ヒト霊長類、および好ましくはヒト患者が含まれる。典型的な被験体は、がんを有する、がんであると診断された、またはがんを有するリスクがあるヒト患者を含む。
【0131】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、本明細書の他の箇所で開示されている遺伝子療法ベクター、細胞に基づく治療薬、および方法を用いて処置することができる特定の適応症と診断された被験体を指す。
【0132】
本明細書で使用される場合、「処置」または「処置すること」は、疾患または病的状態の症状または病態に対するあらゆる有益なまたは望ましい効果を含み、処置されている疾患または状態、例えば、がんの1種または複数の測定可能なマーカーの最小の低下さえも含むことができる。処置は、場合によって、疾患もしくは状態の症状の低下もしくは好転または疾患もしくは状態の進行の遅延のいずれかを伴い得る。「処置」は、疾患もしくは状態またはその関連する症状の完全な根絶または治癒を必ずしも示さない。
【0133】
本明細書で使用される場合、「予防する(prevent)」および「予防された(prevented)」、「予防すること(preventing)」などの同様の単語は、疾患または状態、例えばがんの出現または再発を予防する、阻害する、またはその可能性を低下させる手法を示す。当該用語は、疾患もしくは状態の発症もしくは再発を遅延させること、または疾患もしくは状態の症状の出現もしくは再発を遅延させることも指す。本明細書で使用される場合、「予防(prevention)」および同様の単語は、疾患または状態の強度、影響、症状および/または負荷を、疾患または状態の発症または再発の前に低減することも包含する。
【0134】
本明細書で使用される場合、「量」という用語は、有益なまたは所望の、臨床結果を含めた予防または治療結果を達成するための、遺伝子改変された治療用細胞、例えばT細胞の「有効量(an amount effective)」または「有効量(an effective amount)」を指す。
【0135】
「予防有効量」とは、所望の予防結果を達成するのに有効な、遺伝子改変された治療用細胞の量を指す。必ずではないが、一般には、予防用量は被験体に疾患の前またはより早い段階で使用されるので、予防有効量は、治療有効量よりも少ない。
【0136】
遺伝子改変された治療用細胞の「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体における所望の応答を引き出すT細胞の能力などの因子に応じて変動し得る。治療有効量は、ウイルスまたは形質導入された治療用細胞のあらゆる毒性の影響または有害な影響よりも治療的に有益な影響が上回る量でもある。「治療有効量」という用語は、被験体(例えば、患者)を「処置する」のに有効である量を包含する。治療量が示されている場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、医師が、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および患者(被験体)の状態の個々の差異を考慮して決定することができる。
【0137】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、一般に、異常な細胞が制御されずに分裂し、近くの組織に浸潤し得る、疾患または状態のクラスに関する。
【0138】
本明細書で使用される場合、「悪性」という用語は、腫瘍細胞の群が、制御されていない成長(すなわち、正常な限界を超えた分裂)、浸潤(すなわち、近接組織への侵入およびその破壊)、ならびに転移(すなわち、リンパ液または血液を介した、体内の他の場所への拡散)のうちの1つまたは複数を示すがんを指す。本明細書で使用される場合、「転移する」という用語は、がんが体の一部分から別の部分に拡散することを指す。拡散した細胞によって形成される腫瘍は、「転移性腫瘍」または「転移」と称される。転移性腫瘍は、元の(原発)腫瘍における細胞と同様の細胞を含有する。
【0139】
本明細書で使用される場合、「良性」または「非悪性」という用語は、大きく成長する可能性があるが、体の他の部分には拡散しない腫瘍を指す。良性腫瘍は自己限定的であり、一般には浸潤も転移もしない。
【0140】
「がん細胞」または「腫瘍細胞」とは、癌性増殖物または組織の個々の細胞を指す。腫瘍とは、一般に、細胞の異常な成長によって形成される腫脹または病変を指し、これは、良性、前悪性、または悪性であり得る。大多数のがんは腫瘍を形成するが、いくつか、例えば、白血病は、腫瘍を必ずしも形成しない。腫瘍を形成するがんに関して、がん(細胞)および腫瘍(細胞)という用語は、互換的に使用される。個体内の腫瘍の量は、腫瘍の数、体積、または重量として測定することができる「腫瘍量(tumor burden)」である。
【0141】
「感染症」とは、人から人へまたは生物体から生物体へ伝染する可能性があり、微生物因子によって引き起こされる疾患(例えば、感冒)を指す。感染症は当技術分野で公知であり、それらとして、例えば、肝炎、性行為感染症(例えば、クラミジア、淋病)、結核、HIV/AIDS、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、およびインフルエンザが挙げられる。
【0142】
「自己免疫疾患」とは、体が、自身の組織のある構成要素に対する免疫原性(すなわち、免疫系)応答を生じる疾患を指す。言い換えれば、免疫系は体内のある組織または系を「自己」と認識する能力を失い、あたかもそれを外来であるかのように標的とし、攻撃する。自己免疫疾患は、主に1つの器官が影響を受けるもの(例えば、溶血性貧血および抗免疫甲状腺炎)と、自己免疫疾患プロセスが多くの組織を通じて拡散するもの(例えば、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erytnematosus))に分類することができる。例えば、多発性硬化症は、脳および脊髄の神経線維を囲む鞘を攻撃するT細胞によって引き起こされると考えられている。その結果、協調喪失、衰弱、および霧視が生じる。自己免疫疾患は、当技術分野で公知であり、例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ループス、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、溶血性貧血、抗免疫甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、セリアック病、クローン病、大腸炎、糖尿病、強皮症、乾癬などが挙げられる。
【0143】
「免疫不全症」とは、疾患によってまたは化学物質の投与によって免疫系が損なわれた患者の状態を意味する。この状態により、当該系が、外来物質に対する防御に必要な血液細胞の数および型が欠損したものになる。免疫不全症状態または疾患は当技術分野で公知であり、それらとして、例えば、AIDS(後天性免疫不全症候群)、SCID(重症複合型免疫不全症)、選択的IgA欠損症、分類不能型免疫不全症、X連鎖無ガンマグロブリン血症、慢性肉芽腫性疾患、高IgM症候群、および糖尿病が挙げられる。
【0144】
「増強する(enhance)」または「促進する(promote)」または「増加させる(increase)」または「増大させる(expand)」とは、一般に、本明細書において意図されている組成物の、ビヒクルまたは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較してより大きな生理応答(すなわち、下流の効果)を生じさせる、引き出す、または引き起こす能力を指す。測定可能な生理応答としてはとりわけ、当技術分野における理解および本明細書における説明から明らかである、T細胞増大、活性化、持続の増加、および/またはがん細胞死滅能力の増加を挙げることができる。「増加した(increased)」または「増強された(enhanced)」量とは、一般には、「統計的に有意な」量であり、ビヒクルまたは対照組成物によって生じる応答の1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍またはそれ超(例えば、500倍、1000倍)(中間の1を超える全ての整数および小数点、例えば、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍などを含める)である増加を含み得る。
【0145】
「減少する(decrease)」または「低減する(lower)」または「減る(lessen)」または「低下する(reduce)」または「軽減する(abate)」とは、一般に、本明細書において意図されている組成物の、ビヒクルまたは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較してより小さな生理応答(すなわち、下流の効果)を生じさせる、引き出す、または引き起こす能力を指す。「減少した(decrease)」または「低下した(reduced)」量とは、一般には、「統計的に有意な」量であり、ビヒクル、対照組成物によって生じる応答(参照応答)、または特定の細胞系列における応答の1.1分の1、1.2分の1、1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1、15分の1、20分の1、30分の1またはそれ未満(例えば、500分の1、1000分の1)(中間の1を超える全ての整数および小数点、例えば、1.5分の1、1.6分の1、1.7分の1、1.8分の1などを含める)である減少を含み得る。
【0146】
「維持する(maintain)」または「保存する(preserve)」または「維持(maintenance)」または「変化なし(no change)」または「実質的な変化なし(no substantial change)」または「実質的な減少なし(no substantial decrease)」とは、一般に、本明細書において意図されている組成物の、ビヒクル、対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答、または特定の細胞系列における応答と比較してより小さな、細胞における生理応答(すなわち、下流の効果)を生じさせる、引き出す、または引き起こす能力を指す。同等の応答とは、参照応答と有意に異ならないまたは測定可能なほど異ならない応答である。
【0147】
「特異的な結合親和性」または「特異的に結合する」または「特異的に結合した」または「特異的な結合」または「特異的に標的とする」という用語は、本明細書で使用される場合、1つの分子が別の分子にバックグラウンド結合よりも高い結合親和性で結合することを記載するものである。結合性ドメイン(または結合性ドメインを含むCARまたは結合性ドメインを含有する融合タンパク質)は、例えば、約10
5M
−1を超えるまたはそれと同等の親和性またはKa(すなわち、単位1/Mの特定の結合相互作用の平衡会合定数)で標的分子に結合するまたはそれと会合する場合、標的分子に「特異的に結合する」。ある特定の実施形態では、結合性ドメイン(またはその融合タンパク質)は、約10
6M
−1、10
7M
−1、10
8M
−1、10
9M
−1、10
10M
−1、10
11M
−1、10
12M
−1、または10
13M
−1を超えるまたはそれと同等のKaで標的に結合する。「高親和性」結合性ドメイン(またはその単鎖融合タンパク質)とは、Kaが少なくとも10
7M
−1、少なくとも10
8M
−1、少なくとも10
9M
−1、少なくとも10
10M
−1、少なくとも10
11M
−1、少なくとも10
12M
−1、少なくとも10
13M
−1、またはそれ超である結合性ドメインを指す。
【0148】
あるいは、親和性は、単位Mの、特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)と定義することができる(例えば、10
−5M〜10
−13Mまたはそれ未満)。本開示による結合性ドメインポリペプチドおよびCARタンパク質の親和性は、従来の技法を使用して、例えば、競合ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)によって、または結合会合、または標識したリガンドを使用した置換アッセイによって、または、Biacore,Inc.、Piscataway、NJから入手可能なBiacore T100などの表面プラズモン共鳴デバイス、またはそれぞれCorningおよびPerkin Elmerから入手可能なEPIC systemもしくはEnSpireなどの光学バイオセンサー技術を使用して、容易に決定することができる(例えば、Scatchardら(1949年)Ann. N.Y. Acad. Sci. 51巻:660頁;および米国特許第5,283,173号;同第5,468,614号、または等価物も参照されたい)。
【0149】
一実施形態では、特異的な結合の親和性は、バックグラウンド結合の約2倍、バックグラウンド結合の約5倍、バックグラウンド結合の約10倍、バックグラウンド結合の約20倍、バックグラウンド結合の約50倍、バックグラウンド結合の約100倍、またはバックグラウンド結合の約1000倍またはそれ超である。
【0150】
「抗原(Ag)」とは、動物に注射または吸収される組成物(例えば、腫瘍に特異的なタンパク質を含むものなど)を含めた、動物における抗体の産生またはT細胞応答を刺激することが可能な化合物、組成物、または物質を指す。抗原は、開示されている抗原などの異種抗原によって誘導されるものを含めた、特定の体液性または細胞性免疫の産物と反応する。「標的抗原」または「目的の標的抗原」とは、本明細書において意図されているCARの結合性ドメインが結合するように設計されている抗原である。
【0151】
「エピトープ」または「抗原決定基」とは、結合剤が結合する抗原の領域を指す。
【0152】
「単離されたペプチド」または「単離されたポリペプチド」などは、本明細書で使用される場合、細胞環境からの、および、細胞の他の構成成分との関連からのペプチドまたはポリペプチド分子のin vitro単離および/または精製を指す、すなわち、これは、in vivo物質と有意に関連していない。同様に、「単離された細胞」は、in vivo組織または器官から得られた、細胞外マトリックスを実質的に含まない細胞を指す。
【0153】
本明細書で使用される場合、「単離されたポリヌクレオチド」は、天然に存在する状態でこれと隣接する配列から精製されたポリヌクレオチド、例えば、ある断片に通常近接する配列から除去されたDNA断片を指す。「単離されたポリヌクレオチド」は、天然に存在しない、人の手によって作製された、相補的DNA(cDNA)、組換えDNAまたは他のポリヌクレオチドも指す。
【0154】
C.T細胞製造方法
本明細書において意図されている方法によって製造されるT細胞は、改善された養子免疫療法組成物をもたらす。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本明細書において意図されている方法によって製造されるT細胞組成物が、分化の相対的な非存在下での増加された生存、増大、およびin vivoでの持続性を含む優れた特性が染み込んでいることが考えられる。一実施形態では、T細胞を製造する方法は、細胞をPI3K/Akt/mTOR細胞シグナル伝達経路をモジュレートする1種または複数の薬剤と接触させるステップを含む。種々の実施形態では、T細胞を任意の供給源から得て、製造プロセスの活性化および/または増大期中に、薬剤と接触させることができる。その結果得られるT細胞組成物は、次のバイオマーカー:CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122およびCD127の1種または複数を増殖および発現する能力を有する発生的に能力あるT細胞が豊富である。
【0155】
一実施形態では、維持されたレベルの増殖および減少した分化を含む改変されたT細胞が製造される。特定の実施形態では、T細胞は、T細胞を刺激して、1種または複数の刺激シグナルおよびPI3K/Akt/mTOR細胞シグナル伝達経路の阻害剤である薬剤の存在下で活性化させ、増殖させることにより製造される。
【0156】
次いで、T細胞は、1種または複数の工学的に作製されたTCRまたはCARを発現するように改変することができる。一実施形態では、T細胞は、T細胞に、工学的に作製されたTCRまたはCARを含むウイルスベクターを用いて形質導入を行うことにより改変される。ある特定の実施形態では、T細胞は、PI3K/Akt/mTOR細胞シグナル伝達経路の阻害剤の存在下での刺激および活性化の前に改変される。別の実施形態では、T細胞は、PI3K/Akt/mTOR細胞シグナル伝達経路の阻害剤の存在下での刺激および活性化後に改変される。特定の実施形態では、T細胞は、PI3K/Akt/mTOR細胞シグナル伝達経路の阻害剤の存在下での刺激および活性化から12時間、24時間、36時間または48時間以内に改変される。
【0157】
T細胞が活性化された後に、細胞は、増殖するよう培養される。T細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10またはそれを超えるラウンドの増大により、少なくとも1、2、3、4、5、6もしくは7日間、少なくとも2週間、少なくとも1、2、3、4、5もしくは6ヶ月間またはそれを超えて培養することができる。
【0158】
種々の実施形態では、T細胞組成物は、PI3K/AKT/mTOR経路の1種または複数の阻害剤の存在下で製造される。この阻害剤は、この経路における1種もしくは複数の活性または単一の活性を標的とすることができる。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、製造プロセスの刺激、活性化および/または増大期中にPI3K/AKT/mTOR経路の1種または複数の阻害剤によるT細胞の処理またはこれらとT細胞の接触が、若いT細胞を優先的に増加させ、それにより、優れた治療用T細胞組成物を産生することが意図される。
【0159】
特定の実施形態では、工学的に作製されたT細胞受容体を発現するT細胞の増殖を増加させるための方法が提供される。そのような方法は、例えば、被験体からT細胞の供給源を採取するステップと、工学的に作製されたTCRまたはCARを発現させるためのT細胞の改変である、PI3K/AKT/mTOR経路の1種または複数の阻害剤の存在下でT細胞を刺激および活性化するステップと、培養においてT細胞を増大させるステップとを含むことができる。
【0160】
ある特定の実施形態では、次のバイオマーカー:CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122およびCD127の1種または複数の発現のために濃縮されたT細胞の集団を産生するための方法が提供される。関連する実施形態では、CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122およびCD127を発現し、CD57、CD244、CD160、PD−1、CTLA4、TIM3およびLAG3を発現しないまたは低レベルのそれらのものを発現するT細胞を増加させるための方法が提供される。本明細書の他の箇所に論じられている通り、若いT細胞バイオマーカーの発現レベルは、より分化したT細胞または免疫エフェクター細胞集団におけるこのようなマーカーの発現レベルと比べてのものである。
【0161】
一実施形態では、本明細書において意図されているT細胞製造方法におけるT細胞の供給源として末梢血単核細胞(PBMC)が使用される。PBMCは、CD4
+、CD8
+またはCD4
+およびCD8
+であり得、例えば、単球、B細胞、NK細胞およびNKT細胞など、他の単核細胞を含むことができるTリンパ球の不均一集団を形成する。本明細書において意図されている工学的に作製されたTCRまたはCARをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、ヒトドナーT細胞、NK細胞またはNKT細胞の集団に導入することができる。発現ベクターを保有する成功裏に形質導入されたT細胞は、フローサイトメトリーを使用して選別して、CD3陽性T細胞を単離し、次いで抗CD3抗体および/または抗CD28抗体ならびにIL−2、IL−7および/またはIL−15または本明細書の他の箇所に記載されている当技術分野で公知の任意の他の方法を使用した細胞活性化に加えて、さらに繁殖させて、改変T細胞の数を増加させることができる。
【0162】
本明細書において意図されている製造方法は、ヒト被験体における使用のための貯蔵および/または調製のための改変T細胞の凍結保存をさらに含むことができる。細胞が、解凍後に生存可能であり続けるように、T細胞が凍結保存される。必要に応じて、凍結保存され形質転換された免疫エフェクター細胞を解凍し、成長させ、より多くのこのような細胞のために増大させることができる。本明細書で使用される場合、「凍結保存」は、例えば(典型的には)77Kまたは−196℃(液体窒素の沸点)など、氷点下(sub−zero)の温度まで冷却することによる細胞の保存を指す。氷点下の温度において、凍結保護剤(cryoprotective agent)が頻繁に使用されて、保存されている細胞が低温における凍結または室温への加温により損傷を受けることを防止する。凍結保存剤および最適冷却速度は、細胞傷害から保護することができる。使用することができる凍結保護剤として、これらに限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)(LovelockおよびBishop、Nature、1959年;183巻:1394〜1395頁;Ashwood−Smith、Nature、1961年;190巻:1204〜1205頁)、グリセロール、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidine)(Rinfret、Ann. N.Y. Acad. Sci.、1960年;85巻:576頁)およびポリエチレングリコール(SloviterおよびRavdin、Nature、1962年;196巻:48頁)が挙げられる。好ましい冷却速度は、1°〜3℃/分である。少なくとも2時間後、T細胞は、−80℃の温度に達し、例えば長期低温貯蔵容器中など、永久貯蔵のために液体窒素(−196℃)中に直接的に置くことができる。
【0163】
1.T細胞
本発明は、改善されたT細胞組成物の製造を意図する。T細胞は、自己由来/自原性(「自己」)または非自己由来(「非自己」、例えば、同種異系、同系または異種)であってもよい。好ましい実施形態では、T細胞は、哺乳動物被験体から得られる。より好ましい実施形態では、T細胞は、霊長類被験体から得られる。最も好ましい実施形態では、T細胞は、ヒト被験体から得られる。
【0164】
T細胞は、これらに限定されないが、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織および腫瘍を含めた、いくつかの供給源から得ることができる。ある特定の実施形態では、T細胞は、沈降、例えば、FICOLL(商標)分離など、当業者に公知の任意の数の技法を使用して、被験体から収集された血液の単位から得ることができる。一実施形態では、個体の循環血由来の細胞は、アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球および血小板を含むリンパ球を含有する。一実施形態では、アフェレーシスによって収集した細胞を、血漿画分を除去するため、およびその後の加工のために適切な緩衝液または培地中に細胞を入れるために洗浄することができる。細胞は、PBSで、またはカルシウム、マグネシウムおよび他の全てではないが大多数の二価カチオンを欠く別の適切な溶液で洗浄することができる。当業者によって認められる通り、洗浄ステップは、例えば、半自動フロースルー遠心分離機の使用によるなど、当業者に公知の方法によって達成することができる。例えば、Cobe 2991 cell processor、Baxter CytoMateなど。洗浄後に、細胞は、様々な生体適合性緩衝液または緩衝液を含むもしくは含まない他の食塩溶液に再懸濁することができる。ある特定の実施形態では、細胞が直接的に再懸濁された培養培地におけるアフェレーシス試料の望ましくない構成成分を除去することができる。
【0165】
特定の実施形態では、T細胞、例えば、PBMCを含む細胞の集団は、本明細書において意図されている製造方法において使用される。他の実施形態では、T細胞の単離または精製された集団は、本明細書において意図されている製造方法において使用される。細胞は、赤血球を溶解し、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離により単球を枯渇させることにより、末梢血単核細胞(PBMC)から単離することができる。一部の実施形態では、PBMCの単離後に、活性化、増大および/または遺伝子改変の前または後のいずれかで、細胞傷害性およびヘルパーTリンパ球の両方を、ナイーブ、メモリーおよびエフェクターT細胞亜集団へと選別することができる。
【0166】
次のマーカー:CD3、CD4、CD8、CD28、CD45RA、CD45RO、CD62、CD127およびHLA−DRの1種または複数を発現するT細胞の特異的な亜集団は、正または負の選択技法によってさらに単離することができる。一実施形態では、CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122およびCD127からなる群より選択されるマーカーの1種または複数を発現するT細胞の特異的な亜集団は、正または負の選択技法によってさらに単離される。種々の実施形態では、製造されたT細胞組成物は、次のマーカー:CD57、CD244、CD160、PD−1、CTLA4、TIM3およびLAG3の1種または複数を発現しないまたは実質的に発現しない。
【0167】
一実施形態では、CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122およびCD127からなる群より選択されるマーカーの1種または複数の発現は、PI3K/AKT/mTOR阻害剤なしで活性化および増大させたT細胞の集団と比較して、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍またはそれ超に増加する。
【0168】
一実施形態では、CD57、CD244、CD160、PD−1、CTLA4、TIM3およびLAG3からなる群より選択されるマーカーの1種または複数の発現は、PI3K/AKT/mTOR阻害剤により活性化および増大させたT細胞の集団と比較して、1.5分の1以下、2分の1以下、3分の1以下、4分の1以下、5分の1以下、6分の1以下、7分の1以下、8分の1以下、9分の1以下、10分の1以下、25分の1以下またはそれ未満に減少する。
【0169】
一実施形態では、本明細書において意図されている製造方法は、ナイーブまたは発生的に能力あるT細胞の1種または複数のマーカーを含むT細胞の数を増加させる。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本発明者らは、1種または複数のPI3K/AKT/mTOR阻害剤によるT細胞を含む細胞の集団の処理が、T細胞増殖および分化シグナルを切り離し、それにより、発生的に能力あるT細胞の増大の増加をもたらし、既存のT細胞療法よりも頑強かつ効果的な養子免疫療法を提供すると考える。
【0170】
本明細書において意図されている方法を使用して製造されるT細胞において増加されるナイーブまたは発生的に能力あるT細胞のマーカーの実例として、これらに限定されないが、CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD95、CD122およびCD127が挙げられる。特定の実施形態では、ナイーブT細胞は、次のマーカー:CD57、CD244、CD160、PD−1、BTLA、CD45RA、CTLA4、TIM3およびLAG3の1種または複数を発現しないまたは実質的に発現しない。
【0171】
T細胞に関して、本明細書において意図されている種々の増大方法論に起因するT細胞集団は、用いられる条件に依存して様々な特異的表現型特性を有することができる。種々の実施形態では、増大させたT細胞集団は、次の表現型マーカー:CCR7、CD3、CD4、CD8、CD27、CD28、CD62L、CD95、CD122、CD127およびHLA−DRの1種または複数を含む。
【0172】
一実施形態では、このような表現型マーカーは、CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122およびCD127のうち1種もしくは複数または全ての増強された発現を含む。特定の実施形態では、CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122およびCD127を含むナイーブT細胞の表現型マーカーの発現によって特徴付けられるCD8
+Tリンパ球が増大する。
【0173】
特定の実施形態では、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122およびCD127を含むセントラルメモリーT細胞の表現型マーカーの発現ならびにグランザイムBに関して陰性によって特徴付けられるT細胞が増大する。一部の実施形態では、セントラルメモリーT細胞は、CD45RO
+、CD62L
+、CD8
+T細胞である。
【0174】
ある特定の実施形態では、CD62Lを含むナイーブCD4
+細胞の表現型マーカーの発現ならびにCD45RAおよび/またはCD45ROの発現に関して陰性によって特徴付けられるCD4
+Tリンパ球が増大する。一部の実施形態では、CD62Lを含むセントラルメモリーCD4
+細胞の表現型マーカーの発現およびCD45RO陽性によって特徴付けられるCD4
+細胞。一部の実施形態では、エフェクターCD4
+細胞は、CD62L陽性およびCD45RO陰性である。
【0175】
ある特定の実施形態では、T細胞は、個体から単離され、ex vivoまたはin vitroにおけるさらなる操作なしで改変される。次いで、このような細胞を個体に直接的に再投与することができる。さらなる実施形態では、工学的に作製されたTCRまたはCARを発現するように遺伝子改変される前に、T細胞をまず活性化および刺激して、in vitroで増殖させる。この点について、T細胞は、遺伝子改変(すなわち、本明細書において意図されている工学的に作製されたTCRまたはCARを発現するように形質導入またはトランスフェクト)される前および/または後に培養することができる。
【0176】
2.活性化および増大
T細胞組成物の十分な治療用量を達成するために、T細胞は多くの場合、1または複数ラウンドの刺激、活性化および/または増大に供される。T細胞は、例えば、これらのそれぞれがその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,352,694号;同第6,534,055号;同第6,905,680号;同第6,692,964号;同第5,858,358号;同第6,887,466号;同第6,905,681号;同第7,144,575号;同第7,067,318号;同第7,172,869号;同第7,232,566号;同第7,175,843号;同第5,883,223号;同第6,905,874号;同第6,797,514号;および同第6,867,041号に記載されている方法を使用して、一般に活性化および増大させることができる。工学的に作製されたTCRまたはCARを発現するように改変されたT細胞は、T細胞が改変される前および/または後に活性化および増大させることができる。加えて、T細胞は、活性化および/または増大の前、最中および/または後に、PI3K/AKT/mTOR細胞シグナル伝達経路をモジュレートする1種または複数の薬剤と接触させることができる。一実施形態では、本明細書において意図されている方法によって製造されたT細胞は、そのそれぞれが、PI3K/AKT/mTOR細胞シグナル伝達経路をモジュレートする1種または複数の薬剤を含むことができる、1、2、3、4もしくは5またはそれを超えるラウンドの活性化および増大を受ける。
【0177】
一実施形態では、共刺激リガンドは、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上に提示され、これは、T細胞上の同族共刺激分子に特異的に結合し、それにより、例えば、TCR/CD3複合体の結合によってもたらされる一次シグナルに加えて、所望のT細胞応答を媒介するシグナルをもたらす。適切な共刺激リガンドとして、これらに限定されないが、CD7、B7−1(CD80)、B7−2(CD86)、PD−L1、PD−L2、4−1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS−L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA−G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンベータ受容体、ILT3、ILT4、Tollリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体、およびB7−H3と特異的に結合するリガンドが挙げられる。
【0178】
特定の実施形態では、共刺激リガンドは、これらに限定されないが、CD27、CD28、4−IBB、OX40、CD30、CD40、PD−1、1COS、リンパ球機能関連抗原−1(LFA−1)、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3、およびCD83と特異的に結合するリガンドを含めたT細胞上に存在する共刺激分子に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0179】
適切な共刺激リガンドは、可溶性形態で提供され得るまたはAPCもしくはaAPC上に発現され得る標的抗原をさらに含み、これは、改変T細胞上に発現される工学的に作製されたTCRまたはCARに結合する。
【0180】
種々の実施形態では、本明細書において意図されているT細胞を製造するための方法は、T細胞を含む細胞の集団を活性化するステップと、T細胞の集団を増大させるステップとを含む。T細胞活性化は、T細胞TCR/CD3複合体によるまたはCD2表面タンパク質の刺激を介した一次刺激シグナルを提供し、アクセサリー分子、例えば、CD28による二次共刺激シグナルを提供することにより達成することができる。
【0181】
TCR/CD3複合体は、T細胞を適切なCD3結合剤、例えば、CD3リガンドまたは抗CD3モノクローナル抗体と接触させることにより刺激することができる。CD3抗体の実例として、これらに限定されないが、OKT3、G19−4、BC3および64.1が挙げられる。
【0182】
別の実施形態では、CD2結合剤を使用して、T細胞に一次刺激シグナルを提供することができる。CD2結合剤の実例として、これらに限定されないが、CD2リガンドおよび抗CD2抗体、例えば、T11.1またはT11.2抗体と組み合わせたT11.3抗体(Meuer, S. C.ら(1984年)Cell 36巻:897〜906頁)および9−1抗体と組み合わせた9.6抗体(TI 1.1と同じエピトープを認識する)(Yang, S. Y.ら(1986年)J. Immunol.137巻:1097〜1100頁)が挙げられる。上述の抗体のいずれかと同じエピトープに結合する他の抗体を使用することもできる。追加的な抗体または抗体の組合せは、本明細書の他の箇所に開示されている標準技法によって調製および同定することができる。
【0183】
TCR/CD3複合体によりまたはCD2を介して提供される一次刺激シグナルに加えて、T細胞応答の誘導は、第2の共刺激シグナルを必要とする。特定の実施形態では、CD28結合剤を使用して、共刺激シグナルを提供することができる。CD28結合剤の実例として、これらに限定されないが、天然CD28リガンド、例えば、CD28の天然リガンド(例えば、B7−1(CD80)およびB7−2(CD86)など、タンパク質のB7ファミリーのメンバー);ならびにCD28分子を架橋することができる抗CD28モノクローナル抗体またはその断片、例えば、モノクローナル抗体9.3、B−T3、XR−CD28、KOLT−2、15E8、248.23.2およびEX5.3D10が挙げられる。
【0184】
一実施形態では、一次刺激シグナルをもたらす分子、例えば、TCR/CD3複合体またはCD2を通じて刺激をもたらす分子と共刺激分子を同じ表面にカップリングさせる。
【0185】
ある特定の実施形態では、刺激シグナルをもたらす結合剤と共刺激シグナルをもたらす結合剤は細胞の表面に局在している。これは、細胞に、細胞表面上に発現するのに適した形態の結合剤をコードする核酸をトランスフェクトまたは形質導入することによって、あるいは、結合剤を細胞表面にカップリングさせることによって達成することができる。
【0186】
別の実施形態では、一次刺激シグナルをもたらす分子、例えばTCR/CD3複合体またはCD2を通じて刺激をもたらす分子と共刺激分子を抗原提示細胞上にディスプレイさせる。
【0187】
一実施形態では、一次刺激シグナルをもたらす分子、例えばTCR/CD3複合体またはCD2を通じて刺激をもたらす分子と共刺激分子を別々の表面上にもたらす。
【0188】
ある特定の実施形態では、刺激シグナルをもたらす結合剤と共刺激シグナルをもたらす結合剤の一方は可溶性であり(溶液中にもたらされる)、他の薬剤(複数可)は1つまたは複数の表面上にもたらされる。
【0189】
特定の実施形態では、刺激シグナルをもたらす結合剤と共刺激シグナルをもたらす結合剤はどちらも可溶性の形態でもたらされる(溶液中にもたらされる)。
【0190】
種々の実施形態では、本明細書において意図されているT細胞を製造するための方法は、抗CD3および抗CD28抗体によりT細胞を活性化するステップを含む。
【0191】
本明細書において意図されている方法によって製造されるT細胞組成物は、PI3K/AKT/mTOR細胞シグナル伝達経路を阻害する1種または複数の薬剤の存在下で活性化および/または増大させたT細胞を含む。工学的に作製されたTCRまたはCARを発現するように改変されたT細胞は、T細胞が改変される前および/または後に活性化および増大させることができる。特定の実施形態では、T細胞の集団は、活性化され、工学的に作製されたTCRまたはCARを発現するように改変され、次いで増大のために培養される。
【0192】
一実施形態では、本明細書において意図されている方法によって製造されたT細胞は、高い増殖能および自己再生する能力を示すマーカーを発現するが、T細胞分化のマーカーを発現しないまたは実質的に検出不能なマーカーを発現する、増加した数のT細胞を含む。このようなT細胞は、頑強な様式で繰り返し活性化および増大させ、それにより、改善された治療用T細胞組成物を提供することができる。
【0193】
一実施形態では、PI3K/AKT/mTOR細胞シグナル伝達経路を阻害する1種または複数の薬剤の存在下で活性化および増大させたT細胞の集団は、PI3K/AKT/mTOR阻害剤なしで活性化および増大させたT細胞の集団と比較して、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも250倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍またはそれ超に増大する。
【0194】
一実施形態では、若いT細胞のマーカーの発現によって特徴付けられるT細胞の集団は、PI3K/AKT/mTOR細胞シグナル伝達経路を阻害する1種または複数の薬剤の存在下で活性化および増大され、PI3K/AKT/mTOR阻害剤なしで活性化および増大させたT細胞の集団と比較して、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも250倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍またはそれ超に増大する。
【0195】
一実施形態では、本明細書において意図されている方法によって活性化されたT細胞の増大は、数時間(約3時間)から約7日間から約28日間またはその間のいずれかの時間的整数値の間、T細胞を含む細胞の集団を培養することをさらに含む。別の実施形態では、T細胞組成物は、14日間培養することができる。特定の実施形態では、T細胞は、約21日間培養される。別の実施形態では、T細胞組成物は、約2〜3日間培養される。T細胞の培養時間が、60日間またはそれを超えることができるように、数サイクルの刺激/活性化/増大が望ましい場合もある。
【0196】
特定の実施形態では、T細胞培養に適切な条件は、適切な培地(例えば、基礎培地またはRPMI培地1640またはX−vivo 15(Lonza))、ならびにこれらに限定されないが、血清(例えば、ウシ胎仔またはヒト血清)、インターロイキン−2(IL−2)、インスリン、IFN−γ、IL−4、IL−7、IL−21、GM−CSF、IL−10、IL−12、IL−15、TGFβおよびTNF−αまたは当業者に公知の細胞の成長に適した任意の他の添加物を含めた、増殖および生存度に必要な1種または複数の因子を含む。
【0197】
細胞培養培地のさらなる実例として、これらに限定されないが、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミンが添加された、無血清であるかまたは適量の血清(または血漿)もしくはホルモンの定義済みのセット、ならびに/もしくはT細胞の成長および増大に十分な量のサイトカイン(複数可)を補充した、RPMI 1640、Clicks、AIM−V、DMEM、MEM、a−MEM、F−12、X−Vivo 15およびX−Vivo 20、Optimizerが挙げられる。
【0198】
T細胞増大のための他の添加物の実例として、これらに限定されないが、界面活性剤、piasmanate、HEPESなどのpH緩衝液ならびにN−アセチル−システインおよび2−メルカプトエタノールなどの還元剤が挙げられる。
【0199】
抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験培養物のみに含まれ、被験体に注入するための細胞の培養物には含まれない。標的細胞は、成長を支持するのに必要な条件下で、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気プラス5%CO2)下に維持される。
【0200】
特定の実施形態では、PBMCまたは単離されたT細胞は、IL−2、IL−7および/またはIL−15など、適切なサイトカインを含有する培養培地において、ビーズまたは他の表面に一般に付着された抗CD3および抗CD28抗体など、刺激剤および共刺激剤と接触させられる。
【0201】
他の実施形態では、人工APC(aAPC)は、様々な共刺激分子およびサイトカインの安定的な発現および分泌を導くようK562、U937、721.221、T2およびC1R細胞を工学的に作製することにより作製される。特定の実施形態では、K32またはU32 aAPCは、AAPC細胞表面における1種または複数の抗体に基づく刺激分子の提示を導くように使用される。T細胞の集団は、これらに限定されないが、CD137L(4−1BBL)、CD134L(OX40L)および/またはCD80またはCD86を含めた、様々な共刺激分子を発現するaAPCによって増大させることができる。最後に、aAPCは、遺伝子改変されたT細胞を増大させ、CD8 T細胞におけるCD28発現を維持するための効率的なプラットフォームを提供する。WO03/057171およびUS2003/0147869に提供されるaAPCは、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0202】
3.薬剤
種々の実施形態では、T細胞を細胞におけるPI3K/AKT/mTOR経路をモジュレートする薬剤と接触させるステップを含む、未分化または発生的に能力あるT細胞を増大させる、T細胞を製造するための方法が提供される。細胞は、活性化および増大の前、最中および/または後に接触させることができる。T細胞組成物は、分化の実質的な増加を伴わずに複数ラウンドの増大を受けることができるように、十分なT細胞効力を保持する。
【0203】
本明細書で使用される場合、用語「モジュレート」、「モジュレーター」もしくは「モジュレート剤」または同等の用語は、細胞シグナル伝達経路に変化を誘発する薬剤の能力を指す。モジュレーターは、経路構成成分の量、活性を増加もしくは減少させることができる、または細胞シグナル伝達経路の所望の効果もしくはアウトプットを増加もしくは減少させることができる。一実施形態では、モジュレーターは、阻害剤である。別の実施形態では、モジュレーターは、活性化因子である。
【0204】
「薬剤」は、PI3K/AKT/mTOR経路のモジュレーションにおいて使用される化合物、小分子、例えば、有機小分子、核酸、ポリペプチド、またはその断片、アイソフォーム、バリアント、アナログもしくは誘導体を指す。
【0205】
「小分子」は、約5kD未満、約4kD未満、約3kD未満、約2kD未満、約1kD未満または約.5kD未満の分子量を有する組成物を指す。小分子は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣薬(peptidomimetic)、ペプトイド、炭水化物、脂質、それらの構成成分または他の有機もしくは無機分子を含むことができる。真菌、細菌または藻類抽出物など、化学的および/または生物学的混合物のライブラリーは、当技術分野で公知であり、本発明のアッセイのいずれかによりスクリーニングすることができる。分子ライブラリーの合成のための方法の例は、(Carellら、1994a年;Carellら、1994b年;Choら、1993年;DeWittら、1993年;Gallopら、1994年;Zuckermannら、1994年)に見出すことができる。
【0206】
「アナログ」は、本発明の所望の活性を有する化合物、ヌクレオチド、タンパク質またはポリペプチドまたは化合物と同様または同一の活性または機能(複数可)を保持するが、好ましい実施形態の配列または構造と同様または同一である配列または構造を含む必要が必ずしもない、小型有機化合物、ヌクレオチド、タンパク質またはポリペプチドを指す。
【0207】
「誘導体」は、アミノ酸残基置換、欠失もしくは付加の導入によって変更された親タンパク質もしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む化合物、タンパク質もしくはポリペプチド、またはヌクレオチド置換もしくは欠失、付加もしくは変異の導入のいずれかにより改変された核酸もしくはヌクレオチドのいずれかを指す。誘導体核酸、ヌクレオチド、タンパク質またはポリペプチドは、親ポリペプチドと同様または同一の機能を保持する。
【0208】
種々の実施形態では、PI3K/AKT/mTOR経路をモジュレートする薬剤は、経路の構成成分を活性化する。「活性化因子」または「アゴニスト」は、PI3K、AktまたはmTOR(またはmTORC1、mTORC2複合体)の1種または複数の活性を阻害する分子を限定することなく含む、PI3K/AKT/mTOR経路における分子の1種または複数の活性を促進、増加または誘導する薬剤を指す。
【0209】
種々の実施形態では、PI3K/AKT/mTOR経路をモジュレートする薬剤は、経路の構成成分を阻害する。「阻害剤」または「アンタゴニスト」は、PI3K、AktまたはmTOR(またはmTORC1、mTORC2複合体)を限定することなく含む、PI3K/AKT/mTOR経路における分子の1種または複数の活性を阻害、減少または低下させる薬剤を指す。一実施形態では、阻害剤は、二重分子阻害剤である。一実施形態では、阻害剤は、mTORC1または関連する複合体など、タンパク質複合体の形成を防止する。特定の実施形態では、阻害剤は、同じもしくは実質的に同様の活性を有する分子のクラスを阻害することができる(汎阻害剤)、または分子の活性を特異的に阻害することができる(選択的または特異的な阻害剤)。阻害は、不可逆的であっても可逆的であってもよい。
【0210】
一実施形態では、阻害剤は、少なくとも1nM、少なくとも2nM、少なくとも5nM、少なくとも10nM、少なくとも50nM、少なくとも100nM、少なくとも200nM、少なくとも500nM、少なくとも1μM、少なくとも10μM、少なくとも50μMまたは少なくとも100μMのIC50を有する。IC50決定は、当技術分野で公知の任意の従来の技法を使用して達成することができる。例えば、IC50は、ある範囲の濃度の研究中の阻害剤の存在下で所与の酵素の活性を測定することにより決定することができる。次いで、酵素活性の実験により得られる値を、使用されている阻害剤濃度に対しプロットする。50%酵素活性(あらゆる阻害剤の非存在下での活性と比較して)を示す阻害剤の濃度を、「IC50」値とする。類似して、他の阻害濃度は、活性の適切な決定により定義することができる。
【0211】
種々の実施形態では、T細胞は、少なくとも1nM、少なくとも2nM、少なくとも5nM、少なくとも10nM、少なくとも50nM、少なくとも100nM、少なくとも200nM、少なくとも500nM、少なくとも1μM、少なくとも10μM、少なくとも50μM、少なくとも100μMまたは少なくとも1Mの濃度のPI3K/AKT/mTOR経路の1種または複数のモジュレーターと、接触または処理または培養される。
【0212】
特定の実施形態では、T細胞は、少なくとも12時間、18時間、少なくとも1、2、3、4、5、6もしくは7日間、少なくとも2週間、少なくとも1、2、3、4、5もしくは6ヶ月間またはそれを超えて、1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10またはそれを超えるラウンドの増大により、PI3K/AKT/mTOR経路の1種または複数のモジュレーターと接触または処理または培養することができる。
【0213】
a.PI3K/AKT/mTOR経路
ラパマイシンのホスファチジル−イノシトール−3キナーゼ/Akt/哺乳動物標的(PI3K/Akt/mTOR)経路は、細胞増殖、分化、代謝および生存と増殖因子シグナル伝達を統合するためのルート(conduit)として働く。PI3Kは、高度に保存された細胞内脂質キナーゼのファミリーである。クラスIA PI3Kは、直接的に、またはアダプター分子のインスリン受容体基質ファミリーとの相互作用により、増殖因子受容体チロシンキナーゼ(RTK)によって活性化される。この活性は、セリン/スレオニンキナーゼAktの調節因子である、ホスファチジル−イノシトール−3,4,5−三リン酸(trisphospate)(PIP3)の産生をもたらす。mTORは、別個の活性を与える異なる結合パートナーによりそれぞれ特徴付けられる、2個の別個の複合体を介した正準PI3K経路により作用する。mTORC1(PRAS40、raptorおよびmLST8/GbLとの複合体におけるmTOR)は、タンパク質翻訳、細胞成長、増殖および生存と増殖因子シグナルを関連付ける、PI3K/Aktシグナル伝達の下流エフェクターとして作用する。mTORC2(rictor、mSIN1、protorおよびmLST8との複合体におけるmTOR)は、Aktの上流活性化因子として作用する。
【0214】
PI3Kの増殖因子受容体媒介性活性化により、Aktは、そのプレクストリン相同性ドメインとPIP3との相互作用により膜にリクルートされ、したがって、その活性化ループを露出し、構成的に活性を有するホスホイノシチド依存性タンパク質キナーゼ1(PDK1)によるスレオニン308(Thr308)におけるリン酸化を可能にする。最大活性化のため、Aktは、そのC末端疎水性モチーフのセリン473(Ser473)が、mTORC2によってもリン酸化される。DNA−PKおよびHSPも、Akt活性の調節において重要であると示されてきた。Aktは、TSC2の阻害性リン酸化によりmTORC1を活性化し、TSC2はTSC1と共に、mTORC1の正の調節因子であるRheb GTPaseを阻害することにより、mTORC1を負に調節する。mTORC1は、2種の十分に定義された基質、p70S6K(以後、S6K1と称される)および4E−BP1を有し、これら両者共に、タンパク質合成を決定的に調節する。したがって、mTORC1は、タンパク質翻訳および細胞増殖と増殖因子シグナル伝達を関連付ける、PI3Kの重要な下流エフェクターである。
【0215】
b.mTOR阻害剤
用語「mTOR阻害剤」または「mTORを阻害する薬剤」は、例えば、その基質(例えば、p70S6キナーゼ1、4E−BP1、AKT/PKBおよびeEF2)のうち少なくとも1種におけるセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ活性など、mTORタンパク質の少なくとも1種の活性を阻害する核酸、ペプチド、化合物または有機小分子を指す。mTOR阻害剤は、mTORC1、mTORC2またはmTORC1およびmTORC2の両方に直接的に結合し、これを阻害することができる。
【0216】
mTORC1および/またはmTORC2活性の阻害は、PI3K/Akt/mTOR経路のシグナル伝達の低下によって決定することができる。多種多様な読み出し情報(readout)を利用して、このようなシグナル伝達経路のアウトプットの低下を確立することができる。一部の非限定的な例示的な読み出し情報は、(1)これらに限定されないが、5473およびT308を含めた残基におけるAktのリン酸化の減少;(2)例えば、これらに限定されないが、Fox01/O3a T24/32、GSK3a/β;S21/9およびTSC2 T1462を含めたAkt基質のリン酸化の低下によって証明されるAktの活性化の減少;(3)これらに限定されないが、リボソームS6 S240/244、70S6K T389および4EBP1 T37/46を含めたmTORの下流のシグナル伝達分子のリン酸化の減少;ならびに(4)がん性細胞の増殖の阻害を含む。
【0217】
一実施形態では、mTOR阻害剤は、活性部位阻害剤である。これらは、mTORのATP結合部位(ATP結合ポケットとも称される)に結合し、mTORC1およびmTORC2の両方の触媒活性を阻害するmTOR阻害剤である。本明細書において意図されているT細胞製造方法における使用に適した活性部位阻害剤の1クラスは、PI3KおよびmTORの両方を標的とし、これらを直接的に阻害する二重特異性阻害剤である。二重特異性阻害剤は、mTORおよびPI3KのATP結合部位の両方に結合する。このような阻害剤の実例として、これらに限定されないが、イミダゾキナゾリン、ワートマニン、LY294002、PI−103(Cayman Chemical)、SF1126(Semafore)、BGT226(Novartis)、XL765(Exelixis)およびNVP−BEZ235(Novartis)が挙げられる。
【0218】
本明細書において意図されている方法における使用に適したmTOR活性部位阻害剤の別のクラスは、1種または複数のI型ホスファチジル(phophatidyl)イノシトール3−キナーゼ、例えば、PI3キナーゼα、β、γまたはδと比べて、mTORC1およびmTORC2活性を選択的に阻害する。このような活性部位阻害剤は、PI3KではなくmTORの活性部位に結合する。このような阻害剤の実例として、これらに限定されないが、ピラゾロピリミジン、Torin1(GuertinおよびSabatini)、PP242(2−(4−アミノ−1−イソプロピル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル)−1H−インドール−5−オール)、PP30、Ku−0063794、WAY−600(Wyeth)、WAY−687(Wyeth)、WAY−354(Wyeth)およびAZD8055(Liuら、Nature Review、8巻、627〜644頁、2009年)が挙げられる。I
【0219】
一実施形態では、選択的mTOR阻害剤は、1、2、3種もしくはそれを超えるI型PI3−キナーゼまたは全てのI型PI3−キナーゼに関する阻害剤のIC50の10分の1以下、20分の1以下、50分の1以下、100分の1以下、1000分の1以下またはそれ未満である、mTORC1および/またはmTORC2に関する50%阻害濃度(IC50)を示す薬剤を指す。
【0220】
本発明における使用のためのmTOR阻害剤の別のクラスは、本明細書において、「ラパログ(rapalog)」と称される。本明細書で使用される場合、用語「ラパログ」は、mTOR FRBドメイン(FKBPラパマイシン結合性ドメイン)に特異的に結合し、ラパマイシンと構造的に関連し、mTOR阻害特性を保持する化合物を指す。用語、ラパログは、ラパマイシンを除外する。ラパログは、ラパマイシンのエステル、エーテル、オキシム、ヒドラゾンおよびヒドロキシルアミン、ならびにラパマイシンコア構造における官能基が、例えば、還元または酸化によって改変された化合物を含む。このような化合物の薬学的に許容される塩も、ラパマイシン誘導体であるとみなされる。本明細書において意図されている方法における使用に適したラパログの実例は、テムシロリムス(CC1779)、エベロリムス(RAD001)、デフォロリムス(AP23573)、AZD8055(AstraZeneca)およびOSI−027(OSI)を限定することなく含む。
【0221】
一実施形態では、薬剤は、mTOR阻害剤ラパマイシン(シロリムス)である。
【0222】
特定の実施形態では、本発明における使用のための例示的なmTOR阻害剤は、約200nMまたはそれ未満、好ましくは約100nmまたはそれ未満、さらにより好ましくは約60nMまたはそれ未満、約25nM、約10nM、約5nM、約1nM、100μM、50μM、25μM、10μM、1μMまたはそれ未満のIC50(活性の50%を阻害する濃度)で、mTORC1、mTORC2またはmTORC1およびmTORC2の両方のいずれかを阻害する。一態様では、本発明における使用のためのmTOR阻害剤は、約2nM〜約100nm、より好ましくは約2nM〜約50nM、さらにより好ましくは約2nM〜約15nMのIC50で、mTORC1、mTORC2またはmTORC1およびmTORC2の両方のいずれかを阻害する。
【0223】
一実施形態では、例示的なmTOR阻害剤は、約200nMまたはそれ未満、好ましくは約100nmまたはそれ未満、さらにより好ましくは約60nMまたはそれ未満、約25nM、約10nM、約5nM、約1nM、100μM、50μM、25μM、10μM、1μMまたはそれ未満のIC50(活性の50%を阻害する濃度)で、PI3KおよびmTORC1もしくはmTORC2のいずれかまたはmTORC1およびmTORC2およびPI3Kの両方を阻害する。一態様では、本発明における使用のためのmTOR阻害剤は、約2nM〜約100nm、より好ましくは約2nM〜約50nM、さらにより好ましくは約2nM〜約15nMのIC50で、PI3KおよびmTORC1もしくはmTORC2またはmTORC1およびmTORC2およびPI3Kの両方を阻害する。
【0224】
本明細書において意図されている特定の実施形態での使用に適したmTOR阻害剤のさらなる実例として、これらに限定されないが、AZD8055、INK128、ラパマイシン、PF−04691502およびエベロリムスが挙げられる。
【0225】
mTORは、ウエスタンブロッティングにおけるホスホ(phosphor)特異的抗体によって測定される通り、生理学的基質タンパク質、p70 S6リボソームタンパク質キナーゼI(p70S6K1)およびeIF4E結合タンパク質1(4EBP1)に向けた頑強かつ特異的な触媒活性を実証することが示された。
【0226】
一実施形態では、PI3K/AKT/mTOR経路の阻害剤は、BI−D1870、H89、PF−4708671、FMKおよびAT7867からなる群より選択されるs6キナーゼ阻害剤である。
【0227】
c.PI3K阻害剤
本明細書で使用される場合、用語「PI3K阻害剤」は、PI3Kに結合し、その少なくとも1種の活性を阻害する核酸、ペプチド、化合物または有機小分子を指す。PI3Kタンパク質は、3つのクラス、クラス1 PI3K、クラス2 PI3Kおよびクラス3 PI3Kに分けることができる。クラス1 PI3Kは、4種のp110触媒サブユニット(p110α、p110β、p110δおよびp110γ)のうち1種および調節性サブユニットの2種のファミリーのうち1種からなるヘテロ二量体として存在する。本発明のPI3K阻害剤は、好ましくは、クラス1 PI3K阻害剤を標的とする。一実施形態では、PI3K阻害剤は、クラス1 PI3K阻害剤の1種または複数のアイソフォームに対する選択性(すなわち、p110α、p110β、p110δおよびp110γ、またはp110α、p110β、p110δおよびp110γのうち1種もしくは複数に対する選択性)を示すであろう。別の態様では、PI3K阻害剤は、アイソフォーム選択性を示さず、「汎PI3K阻害剤」とみなされるであろう。一実施形態では、PI3K阻害剤は、PI3K触媒ドメインへの結合に関してATPと競合するであろう。
【0228】
ある特定の実施形態では、PI3K阻害剤は、例えば、PI3Kと共にPI3K−AKT−mTOR経路における追加的なタンパク質を標的とすることができる。特定の実施形態では、mTORおよびPI3Kの両方を標的とするPI3K阻害剤は、mTOR阻害剤またはPI3K阻害剤のいずれかと称することができる。PI3Kのみを標的とするPI3K阻害剤は、選択的PI3K阻害剤と称することができる。一実施形態では、選択的PI3K阻害剤は、mTORおよび/または経路における他のタンパク質に関する阻害剤のIC50の10分の1以下、20分の1以下、30分の1以下、50分の1以下、100分の1以下、1000分の1以下またはそれ未満である、PI3Kに関する50%阻害濃度を示す薬剤を指すものと理解することができる。
【0229】
特定の実施形態では、例示的なPI3K阻害剤は、約200nMまたはそれ未満、好ましくは約100nmまたはそれ未満、さらにより好ましくは約60nMまたはそれ未満、約25nM、約10nM、約5nM、約1nM、100μM、50μM、25μM、10μM、1μMまたはそれ未満のIC50(活性の50%を阻害する濃度)でPI3Kを阻害する。一実施形態では、PI3K阻害剤は、約2nM〜約100nm、より好ましくは約2nM〜約50nM、さらにより好ましくは約2nM〜約15nMのIC50でPI3Kを阻害する。
【0230】
本明細書において意図されているT細胞製造方法における使用に適したPI3K阻害剤の実例として、これらに限定されないが、BKM120(クラス1 PI3K阻害剤、Novartis)、XL147(クラス1 PI3K阻害剤、Exelixis)、(汎PI3K阻害剤、GlaxoSmithKline)およびPX−866(クラス1 PI3K阻害剤;p110α、p110βおよびp110γアイソフォーム、Oncothyreon)が挙げられる。
【0231】
選択的PI3K阻害剤の他の実例として、これらに限定されないが、BYL719、GSK2636771、TGX−221、AS25242、CAL−101、ZSTK474およびIPI−145が挙げられる。
【0232】
汎PI3K阻害剤のさらなる実例として、これらに限定されないが、BEZ235、LY294002、GSK1059615およびGDC−0941が挙げられる。
【0233】
d.AKT阻害剤
本明細書で使用される場合、用語「AKT阻害剤」は、AKTの少なくとも1種の活性を阻害する核酸、ペプチド、化合物または有機小分子を指す。AKT阻害剤は、脂質に基づく阻害剤(例えば、AKTが原形質膜に局在化するのを防止する、AKTのプレクストリン相同性ドメインを標的とする阻害剤)、ATP競合的阻害剤およびアロステリック阻害剤を含むいくつかのクラスにグループ化することができる。一実施形態では、AKT阻害剤は、AKT触媒部位に結合することにより作用する。特定の実施形態では、Akt阻害剤は、mTORなど、下流AKT標的のリン酸化を阻害することにより作用する。別の実施形態では、AKT活性は、例えば、AKTのDNA−PK活性化、AKTのPDK−1活性化および/またはAktのmTORC2活性化を阻害することにより、Aktを活性化するためのインプットシグナルを阻害することにより阻害される。
【0234】
AKT阻害剤は、全3種のAKTアイソフォーム、AKT1、AKT2、AKT3を標的とすることができる、またはアイソフォーム選択的となり、AKTアイソフォームのうち1もしくは2種のみを標的とすることができる。一実施形態では、AKT阻害剤は、AKTと共に、PI3K−AKT−mTOR経路における追加的なタンパク質を標的とすることができる。AKTのみを標的とするAKT阻害剤は、選択的AKT阻害剤と称することができる。一実施形態では、選択的AKT阻害剤は、経路における他のタンパク質に関する阻害剤のIC50の10分の1以下、20分の1以下、30分の1以下、50分の1以下、100分の1以下、1000分の1以下またはそれ未満である、AKTに関する50%阻害濃度を示す薬剤を指すものと理解することができる。
【0235】
特定の実施形態では、例示的なAKT阻害剤は、約200nMまたはそれ未満、好ましくは約100nmまたはそれ未満、さらにより好ましくは約60nMまたはそれ未満、約25nM、約10nM、約5nM、約1nM、100μM、50μM、25μM、10μM、1μMまたはそれ未満のIC50(活性の50%を阻害する濃度)でAKTを阻害する。一実施形態では、AKTは、約2nM〜約100nm、より好ましくは約2nM〜約50nM、さらにより好ましくは約2nM〜約15nMのIC50でAKTを阻害する。
【0236】
オーリスタチン(auristatin)に基づく抗体−薬物コンジュゲートと組み合わせた使用のためのAKT阻害剤の実例として、例えば、ペリフォシン(Keryx)、MK2206(Merck)、VQD−002(VioQuest)、XL418(Exelixis)、GSK690693、GDC−0068およびPX316(PROLX Pharmaceuticals)が挙げられる。
【0237】
選択的Akt1阻害剤の非限定的な実例は、A−674563である。
【0238】
選択的Akt2阻害剤の非限定的な実例は、CCT128930である。
【0239】
特定の実施形態では、Akt阻害剤は、AktのDNA−PK活性化、AktのPDK−1活性化、AktのmTORC2活性化またはAktのHSP活性化を阻害する。
【0240】
DNA−PK阻害剤の実例として、これらに限定されないが、NU7441、PI−103、NU7026、PIK−75およびPP−121が挙げられる。
【0241】
D.工学的に作製されたT細胞受容体およびキメラ抗原受容体
意図されるT細胞製造方法は、改変T細胞の分化の付随する増加を伴わない、高親和性T細胞受容体(工学的に作製されたTCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変されたT細胞の増大に特に有用である。一実施形態では、T細胞は、1種または複数の工学的に作製されたTCRまたはCARを発現するように遺伝子改変される。本明細書で使用される場合、本明細書において意図されている工学的に作製されたTCRまたはCARを発現するように改変されたT細胞は、「抗原特異的に向け直されたT細胞」と称することができる。
【0242】
1.工学的に作製されたTCR
天然に存在するT細胞受容体は、α−サブユニットとβ−サブユニットの2つのサブユニットを含み、そのそれぞれが、各T細胞のゲノムにおける組換え事象によって生じる独特のタンパク質である。TCRのライブラリーを、特定の標的抗原に対するそれらの選択性についてスクリーニングすることができる。このように、標的抗原に対して高いアビディティおよび反応性を有する天然TCRを選択し、クローニングし、その後、養子免疫療法のために使用するT細胞の集団に導入することができる。
【0243】
一実施形態では、T細胞を、標的抗原を発現する腫瘍細胞に対する特異性をT細胞に付与するTCRを形成する能力を有するTCRのサブユニットをコードするポリヌクレオチドを導入することによって改変する。特定の実施形態では、サブユニットが、トランスフェクトされると、標的細胞に向かい、免疫学的に関連するサイトカインシグナル伝達に関与する能力をT細胞に付与するTCRを形成する能力を保持する限り、サブユニットは天然に存在するサブユニットと比較して1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または改変を有する。工学的に作製されたTCRは、関連性のある腫瘍関連ペプチドをディスプレイする標的細胞にも高いアビディティで結合することが好ましく、場合によって、関連性のあるペプチドを提示する標的細胞のin vivoでの効率的な死滅を媒介する。
【0244】
工学的に作製されたTCRをコードする核酸は、T細胞の(天然に存在する)染色体におけるそれらの天然の状況から単離されていることが好ましく、本明細書の他の箇所に記載されている適切なベクターに組み入れることができる。核酸およびこれらを含むベクターの両方は、細胞に有用に移入することができ、この細胞はT細胞であることが好ましい。次いで、改変T細胞は、形質導入された核酸(単数または複数)によってコードされるTCRの1種または複数の鎖(好ましくは、2種の鎖)を発現することができる。好ましい実施形態では、工学的に作製されたTCRは、特定のTCRを通常発現しないT細胞に導入されるため、外因性TCRである。工学的に作製されたTCRの本質的な側面は、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)または同様の免疫学的構成成分によって提示される腫瘍抗原に対する高いアビディティを有することである。工学的に作製されたTCRとは対照的に、CARは、MHC非依存的様式で標的抗原に結合するように工学的に作製される。
【0245】
本発明の核酸によりコードされるタンパク質は、本発明のTCRのα−鎖またはβ−鎖のアミノ末端またはカルボキシル末端部分に付着させた追加的なポリペプチドと、当該付着させた追加的なポリペプチドがα−鎖またはβ−鎖の機能的なT細胞受容体を形成する能力およびMHC依存性抗原認識に干渉しない限りは、共に発現させることができる。
【0246】
本明細書において意図されている工学的に作製されたTCRによって認識される抗原としては、これに限定されないが、血液学的がんと固形腫瘍のどちらの抗原も含めた、がん抗原が挙げられる。例示的な抗原としては、これらに限定されないが、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7−H3、B7−H6、CAIX、D19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD4v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン−3(GPC3)、HL−A1+MAGE1、HLA−A2+MAGE1、HLA−A3+MAGE1、HLAA1+NY−ESO−1、HLA−A2+NY−ESO−1、HLA−A3+NY−ESO−1、IL−11Rα、IL−13Rα2、ラムダ、Lewis−Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY−ESO−1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、およびVEGFR2が挙げられる。
【0247】
2.キメラ抗原受容体(CAR)
本明細書において意図されているT細胞製造方法は、T細胞を、本明細書において意図されている1つまたは複数のCARを発現するように改変するステップを含む。種々の実施形態では、本発明は、腫瘍細胞に対する細胞傷害性を向け直すCARを発現するように設計されたベクターを用いて遺伝子工学的に作製されたT細胞を提供する。CARは、標的抗原(例えば、腫瘍抗原)に対する抗体に基づく特異性とT細胞受容体活性化細胞内ドメインを組み合わせて、特異的な抗腫瘍細胞免疫活性を示すキメラタンパク質を生成する分子である。本明細書で使用される場合、「キメラ」という用語は、異なる起源由来の異なるタンパク質またはDNAの部分で構成されていることを記載するものである。
【0248】
本明細書において意図されているCARは、特異的な標的抗原に結合する細胞外ドメイン(結合性ドメインまたは抗原特異的結合性ドメインとも称される)、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。CARの主要な特性は、免疫エフェクター細胞特異性を向け直し、それにより、増殖、サイトカイン産生、食作用またはモノクローナル抗体、可溶性リガンドもしくは細胞特異的共受容体の細胞特異的標的化能力を活用して標的抗原発現細胞の細胞死を主要組織適合性(MHC)非依存的に媒介することが可能な分子の産生を誘発する能力である。
【0249】
特定の実施形態では、CARは、アルファ葉酸受容体、5T4、α
vβ
6インテグリン、BCMA、B7−H3、B7−H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン−3(GPC3)、HLA−A1+MAGE1、HLA−A2+MAGE1、HLA−A3+MAGE1、HLA−A1+NY−ESO−1、HLA−A2+NY−ESO−1、HLA−A3+NY−ESO−1、IL−11Rα、IL−13Rα2、ラムダ、Lewis−Y、カッパ、メソセリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY−ESO−1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEMおよびVEGFR2からなる群より選択される標的抗原に特異的に結合する、これらに限定されないが、抗体もしくはその抗原結合性断片、係留されたリガンドまたは共受容体の細胞外ドメインを含めた細胞外結合性ドメイン;1種または複数のヒンジドメインまたはスペーサードメイン;これらに限定されないが、CD8α、CD4、CD45、PD−1およびCD152由来の膜貫通ドメインを含めた膜貫通ドメイン;これらに限定されないが、CD28、CD54(ICAM)、CD134(OX40)、CD137(41BB)、CD152(CTLA4)、CD273(PD−L2)、CD274(PD−L1)およびCD278(ICOS)由来の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含めた1種または複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζまたはFcRγ由来の一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0250】
a.結合性ドメイン
特定の実施形態では、本明細書において意図されているCARは、腫瘍細胞上に発現される、標的ポリペプチド、例えば、標的抗原に特異的に結合する細胞外結合性ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「結合性ドメイン」、「細胞外ドメイン」、「細胞外結合性ドメイン」、「抗原特異的結合性ドメイン」、および「細胞外抗原特異的結合性ドメイン」という用語は、互換的に使用され、目的の標的抗原に特異的に結合する能力を有するCARを提供する。結合性ドメインは、生体分子(例えば、細胞表面受容体または腫瘍タンパク質、脂質、多糖、または他の細胞表面標的分子、またはその構成成分)を特異的に認識し、それに結合する能力を有する任意のタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、またはペプチドを含み得る。結合性ドメインは、任意の天然に存在する、合成の、半合成の、または組換えによって作製された、目的の生体分子の結合パートナーを含む。
【0251】
特定の実施形態では、CARの細胞外結合性ドメインは、抗体またはその抗原結合性断片を含む。「抗体」とは、免疫細胞によって認識されるものなどの抗原決定基を含有するペプチド、脂質、多糖、または核酸などの標的抗原のエピトープを特異的に認識し、それに結合する、少なくとも軽鎖または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドである結合剤を指す。抗体はその抗原結合性断片を含む。この用語は、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体など)およびその抗原結合性断片などの遺伝子工学的に作製された形態も含む。Pierce Catalog and Handbook、1994年〜1995年(Pierce Chemical Co.、Rockford、IL);Kuby, J.、Immunology、第3版、W. H. Freeman & Co.、New York、1997年も参照されたい。
【0252】
特定の実施形態では、標的抗原は、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7−H3、B7−H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン−3(GPC3)、HLA−A1+MAGE1、HLA−A2+MAGE1、HLA−A3+MAGE1、HLA−A1+NY−ESO−1、HLA−A2+NY−ESO−1、HLA−A3+NY−ESO−1、IL−11Rα、IL−13Rα2、ラムダ、Lewis−Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY−ESO−1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、またはVEGFR2ポリペプチドのエピトープである。
【0253】
軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも称される3つの超可変領域が間に存在する「フレームワーク」領域を含有する。CDRは、例えば、Kabatら(Wu, TTおよびKabat, E. A.、J Exp Med. 132巻(2号):211〜50頁、(1970年);Borden, P.およびKabat E. A.、PNAS、84巻:2440〜2443頁(1987年);(これによって参照により組み込まれるKabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S. Department of Health and Human Services、1991年を参照されたい)による配列によって、または、Chothiaら(Choithia, C.およびLesk, A.M.、J Mol. Biol.、196巻(4号):901〜917頁(1987年)、Choithia、C.ら、Nature、342巻:877〜883頁(1989年))による構造によってなど、従来の方法によって定義または同定することができる。
【0254】
異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、ヒトなどの種の中で比較的保存されている。構成要素である軽鎖および重鎖の組み合わせたフレームワーク領域である抗体のフレームワーク領域はCDRを3次元空間内に位置付け、整列させるのに役立つ。CDRは、主に、抗原のエピトープへの結合に関与する。各鎖のCDRは、一般には、N末端から開始して逐次的に番号が付され、CDR1、CDR2、およびCDR3と称され、また、一般には、特定のCDRが位置する鎖によって同定される。したがって、抗体の重鎖の可変ドメインに位置するCDRはCDRH1、CDRH2、およびCDRH3と称され、抗体の軽鎖の可変ドメインに位置するCDRはCDRL1、CDRL2、およびCDRL3と称される。異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は異なるCDRを有する。CDRは抗体間で変動するが、抗原結合に直接関与するのはCDR内の限られた数のアミノ酸位置である。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と称される。
【0255】
「VH」または「VH」への言及は、抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab、または本明細書に開示されている他の抗体断片のものを含めた、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」または「VL」への言及は、抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab、または本明細書に開示されている他の抗体断片のものを含めた、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0256】
「モノクローナル抗体」は、Bリンパ球の単一のクローンによって、または単一の抗体の軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって産生される抗体である。モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法によって、例えば、骨髄腫細胞と免疫脾臓細胞の融合によるハイブリッドの抗体形成細胞を作出することにより産生される。モノクローナル抗体はヒト化モノクローナル抗体を含む。
【0257】
「キメラ抗体」は、1つの種、例えばヒトなどに由来するフレームワーク残基と、別の種、例えばマウスなどに由来するCDR(一般に、抗原結合を付与する)を有する。特定の好ましい実施形態では、本明細書において意図されているCARは、キメラ抗体またはその抗原結合性断片である抗原特異的結合性ドメインを含む。
【0258】
ある特定の好ましい実施形態では、抗体は、腫瘍細胞上の表面タンパク質に特異的に結合するヒト化抗体(例えば、ヒト化モノクローナル抗体など)である。「ヒト化」抗体は、ヒトフレームワーク領域と非ヒト(例えば、マウス、ラット、または合成)免疫グロブリン由来の1つまたは複数のCDRとを含む免疫グロブリンである。ヒト化抗体は、遺伝子工学によって構築することができる(例えば、米国特許第5,585,089号を参照されたい)。
【0259】
特定の実施形態では、CARの細胞外結合性ドメインは、これらに限定されないが、ラクダIg(ラクダ科動物抗体(VHH))、Ig NAR、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、単鎖Fv抗体(「scFv」)、ビス−scFv、(scFv)2、ミニボディ(minibody)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、および単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ(Nanobody))を含めた、抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0260】
「ラクダIg」または「ラクダ科動物VHH」とは、本明細書で使用される場合、重鎖抗体の最小の公知の抗原結合単位を指す(Koch−Nolteら、FASEB J.、21巻:3490〜3498頁(2007年))。「重鎖抗体」または「ラクダ科動物抗体」とは、VHドメインを2つ含有し、軽鎖を含有しない抗体を指す(Riechmann L.ら、J. Immunol. Methods 231巻:25〜38頁(1999年);WO94/04678;WO94/25591;米国特許第6,005,079号)。
【0261】
「IgNAR」または「免疫グロブリン新抗原受容体(immunoglobulin new antigen receptor)」とは、1つの可変新抗原受容体(variable new antigen receptor)(VNAR)ドメインおよび5つの定常新抗原受容体(constant new antigen receptor)(CNAR)ドメインのホモ二量体からなるサメ免疫レパートリーに由来する抗体のクラスを指す。
【0262】
抗体のパパイン消化により、それぞれが単一の抗原結合性部位を有する、「Fab」断片と称される2つの同一の抗原結合性断片と、容易に結晶化できることが名称に反映されている、残りの「Fc」断片が生じる。Fab断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、Fab断片とは、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端において抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステインを含めた数個の残基が付加されていることによって異なる。Fab’−SHは、本明細書では、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離のチオール基を有するFab’に対する名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として作製された。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
【0263】
「Fv」は、完全な抗原結合性部位を含有する最小の抗体断片である。単鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインを、柔軟なペプチドリンカーによって共有結合により連結することができ、したがって、軽鎖および重鎖が、二本鎖Fv種におけるものと類似した「二量体」構造に会合し得る。
【0264】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合性部位を有する抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖内で接続した重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)(VH−VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間での対形成が可能になるには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、強制的に別の鎖の相補的なドメインと対形成し、2つの抗原結合性部位が創出される。ダイアボディは二価または二特異性であってよい。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudsonら、Nat. Med. 9巻:129〜134頁(2003年);およびHollingerら、PNAS USA 90巻:6444〜6448頁(1993年)においてより詳細に記載されている。トリアボディおよびテトラボディもHudsonら、Nat. Med. 9巻:129〜134頁(2003年)に記載されている。
【0265】
「単一ドメイン抗体」または「sdAb」または「ナノボディ」とは、抗体重鎖の可変領域(VHドメイン)または抗体軽鎖の可変領域(VLドメイン)からなる抗体断片を指す(Holt, L.ら、Trends in Biotechnology、21巻(11号):484〜490頁)。
【0266】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内にいずれかの方向で存在する(例えば、VL−VHまたはVH−VL)。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それにより、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することが可能になる。scFvの概説については、例えば、Pluckthuen、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編、(Springer−Verlag、New York、1994年)、269〜315頁を参照されたい。
【0267】
好ましい実施形態では、本明細書において意図されているCARは、がん細胞上で発現される抗原に結合するscFv(マウス、ヒトまたはヒト化scFv)である抗原特異的結合性ドメインを含む。ある特定の実施形態では、scFvは、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7−H3、B7−H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、’グリピカン−3(GPC3)、HLA−A1+MAGE1、HLA−A2+MAGE1、HLA−A3+MAGE1、HLA−A1+NY−ESO−1、HLA−A2+NY−ESO−1、HLA−A3+NY−ESO−1、IL−11Rα、IL−13Rα2、ラムダ、Lewis−Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY−ESO−1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、およびVEGFR2に結合する。
【0268】
b.リンカー
ある特定の実施形態では、本明細書において意図されているCARは、分子の適切な間隔およびコンフォメーションのために付加される、種々のドメイン間、例えば、VHドメインとVLドメインの間にリンカー残基を含んでよい。本明細書において意図されているCARは、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つまたはそれ超のリンカーを含み得る。特定の実施形態では、リンカーの長さは、約1〜約25アミノ酸、約5〜約20アミノ酸、または約10〜約20アミノ酸、または間に入る任意のアミノ酸の長さである。一部の実施形態では、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ超のアミノ酸長である。
【0269】
リンカーの実例としては、グリシンポリマー(G)n;グリシン−セリンポリマー(G1−5S1−5)n(式中、nは、少なくとも1、2、3、4、または5の整数である);グリシン−アラニンポリマー;アラニン−セリンポリマー;および当技術分野で公知の他の柔軟なリンカーが挙げられる。グリシンおよびグリシン−セリンポリマーは、比較的構造化されておらず、したがって、本明細書に記載のCARなどの融合タンパク質のドメイン間の中性テザーとして機能することが可能であり得る。グリシンはアラニンに対してさえ、それよりも有意に多くphi−psi空間に近づき、また、側鎖が長い残基よりも制限がはるかに少ない(Scheraga、Rev. Computational Chem. 11173〜142頁(1992年)を参照されたい)。特定の実施形態では、CARの設計には、全体的にまたは部分的に柔軟であるリンカーを含めることができ、したがって、リンカーは、所望のCAR構造をもたらすために、柔軟なリンカーならびにより柔軟性の低い構造を付与する1つまたは複数の部分を含んでよいことが当業者には認識されよう。
【0270】
他の例示的なリンカーとしては、これらに限定されないが、以下のアミノ酸配列:GGG;DGGGS(配列番号1);TGEKP(配列番号2)(例えば、Liuら、PNAS 5525〜5530頁(1997年)を参照されたい);GGRR(配列番号3)(Pomerantzら、1995年、上記);(GGGGS)n(式中、=1、2、3、4または5)(配列番号4)(Kimら、PNAS 93巻、1156〜1160頁(1996年);EGKSSGSGSESKVD(配列番号5)(Chaudharyら、1990年、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87巻:1066〜1070頁);KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号6)(Birdら、1988年、Science 242巻:423〜426頁)、GGRRGGGS(配列番号7);LRQRDGERP(配列番号8);LRQKDGGGSERP(配列番号9);LRQKd(GGGS)2ERP(配列番号10)が挙げられる。あるいは、柔軟なリンカーは、DNA結合性部位とペプチド自体の両方をモデリングすることが可能なコンピュータプログラムを使用して(DesjarlaisおよびBerg、PNAS 90巻:2256〜2260頁(1993年)、PNAS 91巻:11099〜11103頁(1994年)、またはファージディスプレイ法によって合理的に設計することができる。
【0271】
特定の実施形態では、CARは、可変領域連結配列をさらに含むscFVを含む。「可変領域連結配列」とは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を接続し、2つのサブ結合性ドメインの相互作用に適合するスペーサー機能をもたらすアミノ酸配列であり、したがって、結果生じるポリペプチドは、同じ軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む抗体と同じ標的分子に対する特異的な結合親和性を保持する。一実施形態では、可変領域連結配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ超のアミノ酸長である。特定の実施形態では、可変領域連結配列は、グリシン−セリンポリマー(G1−5S1−5)n(式中、nは、少なくとも1、2、3、4、または5の整数である)を含む。別の実施形態では、可変領域連結配列は、(G4S)3アミノ酸リンカーを含む。
【0272】
c.スペーサードメイン
特定の実施形態では、CARの結合性ドメインの後ろに、1つまたは複数の「スペーサードメイン」が続き、これは、抗原結合性ドメインをエフェクター細胞表面から離して適切な細胞間接触、抗原結合および活性化を可能にする領域を指す(Patelら、Gene Therapy、1999年;6巻:412〜419頁)。スペーサードメインは、天然、合成、半合成、または組換え供給源のいずれかに由来するものであってもよい。ある特定の実施形態では、スペーサードメインは、これらに限定されないが、1つまたは複数の重鎖定常領域、例えば、CH2およびCH3を含めた、免疫グロブリンの部分である。スペーサードメインは、天然に存在する免疫グロブリンヒンジ領域または変更された免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含んでよい。
【0273】
一実施形態では、スペーサードメインは、IgG1のCH2およびCH3を含む。
【0274】
d.ヒンジドメイン
CARの結合性ドメインの後ろには、一般に、1つまたは複数の「ヒンジドメイン」が続き、これは、抗原結合性ドメインをエフェクター細胞表面から離して位置づけ適切な細胞間接触、抗原結合および活性化を可能にすることにおいて役割を果たす。CARは、一般に、結合性ドメインと膜貫通ドメイン(TM)の間に1つまたは複数のヒンジドメインを含む。ヒンジドメインは、天然、合成、半合成、または組換え供給源のいずれかに由来するものであってもよい。ヒンジドメインは、天然に存在する免疫グロブリンヒンジ領域または変更された免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含んでよい。
【0275】
本明細書に記載のCARでの使用に適した例示的なヒンジドメインとしては、CD8α、CD4、CD28およびCD7などの1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域が挙げられ、これは、これらの分子由来の野生型ヒンジ領域であってもよく、変更することもできる。別の実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αヒンジ領域を含む。
【0276】
e.膜貫通(TM)ドメイン
「膜貫通ドメイン」は、細胞外結合性部分と細胞内シグナル伝達ドメインを融合し、CARを免疫エフェクター細胞の原形質膜に係留する、CARの部分である。TMドメインは、天然、合成、半合成、または組換え供給源のいずれかに由来するものであってもよい。
【0277】
例示的なTMドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD4、CD5、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152およびCD154に由来する(すなわち、少なくともその膜貫通領域(複数可)を含む)ものであってもよい。
【0278】
一実施形態では、本明細書において意図されているCARは、CD8αに由来するTMドメインを含む。別の実施形態では、本明細書において意図されているCARは、CD8αに由来するTMドメイン、ならびに、CARのTMドメインと細胞内シグナル伝達ドメインを連結する、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸の間の長さであることが好ましい短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーを含む。グリシン−セリンリンカーは、特に適切なリンカーをもたらす。
【0279】
f.細胞内シグナル伝達ドメイン
特定の実施形態では、本明細書において意図されているCARは、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「細胞内シグナル伝達ドメイン」とは、標的抗原への有効なCAR結合のメッセージを免疫エフェクター細胞の内部に伝達して、エフェクター細胞機能、例えば、CARと結合した標的細胞への細胞傷害性因子の放出、または細胞外CARドメインへの抗原結合に伴って引き出される他の細胞応答を含めた、活性化、サイトカイン産生、増殖および細胞傷害活性を引き出すことに関与するCARの部分を指す。
【0280】
「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性またはサイトカインの分泌を含めた補助もしくは活性であり得る。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞を、特殊機能を行うように誘導するタンパク質の部分を指す。通常は、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用することができるが、多くの場合、ドメイン全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮された部分を使用する範囲内で、そのような短縮された部分を、エフェクター機能シグナルを伝達する限りは、ドメイン全体の代わりに使用することができる。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な、細胞内シグナル伝達ドメインの任意の短縮された部分を包含するものとする。
【0281】
TCR単独によって生成されるシグナルはT細胞の完全な活性化に不十分であること、および二次または共刺激シグナルも必要であることが公知である。したがって、T細胞の活性化は、2つの別個のクラスの細胞内シグナル伝達ドメイン:TCR(例えば、TCR/CD3複合体)によって抗原依存的一次活性化を開始する一次シグナル伝達ドメインと、抗原非依存的に作用して二次または共刺激シグナルをもたらす共刺激シグナル伝達ドメインとによって媒介されるということができる。好ましい実施形態では、本明細書において意図されているCARは、1つまたは複数の「共刺激シグナル伝達ドメイン」および「一次シグナル伝達ドメイン」を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0282】
一次シグナル伝達ドメインは、TCR複合体の一次活性化を刺激性に、または阻害性に調節する。刺激性に作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容活性化チロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine−based activation motif)またはITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含有してよい。
【0283】
本発明において特に使用される、一次シグナル伝達ドメインを含有するITAMの実例としては、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、CARは、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインおよび1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。細胞内一次シグナル伝達および共刺激シグナル伝達ドメインは、任意の順序でタンデムに膜貫通ドメインのカルボキシル末端と連結することができる。
【0284】
本明細書において意図されているCARは、CAR受容体を発現するT細胞の有効性および増大を増強するための1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「共刺激シグナル伝達ドメイン」または「共刺激ドメイン」という用語は、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを指す。
【0285】
そのような共刺激分子の実例としては、CD27、CD28、4−1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD30、CD40、PD−1、ICOS(CD278)、CTLA4、LFA−1、CD2、CD7、LIGHT、TRIM、LCK3、SLAM、DAP10、LAG3、HVEMおよびNKD2C、およびCD83が挙げられる。一実施形態では、CARは、CD28、CD137、およびCD134、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインからなる群より選択される1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0286】
一実施形態では、CARは、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7−H3、B7−H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン−3(GPC3)、HLA−A1+MAGE1、HLA−A2+MAGE1、HLA−A3+MAGE1、HLA−A1+NY−ESO−1、HLA−A2+NY−ESO−1、HLA−A3+NY−ESO−1、IL−11Rα、IL−13Rα2、ラムダ、Lewis−Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY−ESO−1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、またはVEGFR2ポリペプチドに結合するscFv;CD8α;CD4、CD45、PD1、およびCD152からなる群より選択されるポリペプチドに由来する膜貫通ドメイン;ならびに、CD28、CD54、CD134、CD137、CD152、CD273、CD274、およびCD278からなる群より選択される1つまたは複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0287】
別の実施形態では、CARは、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7−H3、B7−H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン−3(GPC3)、HLA−A1+MAGE1、HLA−A2+MAGE1、HLA−A3+MAGE1、HLA−A1+NY−ESO−1、HLA−A2+NY−ESO−1、HLA−A3+NY−ESO−1、IL−11Rα、IL−13Rα2、ラムダ、Lewis−Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY−ESO−1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、またはVEGFR2に結合するscFv;IgG1ヒンジ/CH2/CH3およびCD8α、およびCD8αからなる群より選択されるヒンジドメイン;CD8α;CD4、CD45、PD−1、およびCD152からなる群より選択されるポリペプチドに由来する膜貫通ドメイン;ならびに、CD28、CD134、およびCD137からなる群より選択される1つまたは複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0288】
さらに別の実施形態では、CARは、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7−H3、B7−H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン−3(GPC3)、HLA−A1+MAGE1、HLA−A2+MAGE1、HLA−A3+MAGE1、HLA−A1+NY−ESO−1、HLA−A2+NY−ESO−1、HLA−A3+NY−ESO−1、IL−11Rα、IL−13Rα2、ラムダ、Lewis−Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY−ESO−1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、またはVEGFR2ポリペプチドに結合する、リンカーをさらに含むscFv;IgG1ヒンジ/CH2/CH3およびCD8α、およびCD8αからなる群より選択されるヒンジドメイン;CD8α;CD4、CD45、PD−1、およびCD152からなる群より選択されるポリペプチドに由来するTMドメインと、TMドメインをCARの細胞内シグナル伝達ドメインに連結する、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸の間の長さであることが好ましい短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーとを含む膜貫通ドメイン;ならびに、CD28、CD134、およびCD137からなる群より選択される1つまたは複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0289】
特定の実施形態では、CARは、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7−H3、B7−H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン−3(GPC3)、HLA−A1+MAGE1、HLA−A2+MAGE1、HLA−A3+MAGE1、HLA−A1+NY−ESO−1、HLA−A2+NY−ESO−1、HLA−A3+NY−ESO−1、IL−11Rα、IL−13Rα2、ラムダ、Lewis−Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY−ESO−1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、およびVEGFR2ポリペプチドに結合するscFv;CD8αポリペプチドを含むヒンジドメイン;約3アミノ酸のポリペプチドリンカーを含むCD8α膜貫通ドメイン;CD28、CD134、およびCD137からなる群より選択される1つまたは複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0290】
E.ポリペプチド
本発明は、一部には、工学的に作製されたTCRおよびCARポリペプチドおよびその断片、これを含む細胞および組成物、ならびにポリペプチドを発現するベクターを意図する。「ポリペプチド」、「ポリペプチド断片」、「ペプチド」および「タンパク質」は、反対のことが記されていない限り、互換的に使用され、従来の意味に従う、すなわち、アミノ酸の配列として使用される。ポリペプチドは、特定の長さに限定されない、例えば、全長タンパク質配列または全長タンパク質の断片を含むことができ、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などと共に、天然に存在するものと天然に存在しないものの両方の当技術分野で公知の他の修飾を含むことができる。種々の実施形態では、本明細書において意図されているポリペプチドは、タンパク質のN末端にシグナル(またはリーダー)配列を含み、この配列は、翻訳と同時に(cotranslationally)または翻訳後に、タンパク質の移入を導く。本明細書に開示されている有用な適切なシグナル配列の実例として、これらに限定されないが、IgG1重鎖シグナル配列およびCD8αシグナル配列が挙げられる。ポリペプチドは、様々な周知の組換えおよび/または合成技法のいずれかを使用して調製することができる。本明細書において意図されているポリペプチドは、本開示のCAR、または本明細書において意図されているポリペプチドの1個もしくは複数のアミノ酸からの欠失、それらへの付加および/もしくはそれらの置換を有する配列を特に包含する。
【0291】
ポリペプチドは、「ポリペプチドバリアント」を包含する。ポリペプチドバリアントは、天然に存在するポリペプチドと、1つまたは複数の置換、欠失、付加および/または挿入の点で異なり得る。そのようなバリアントは、天然に存在するものであってもよく、例えば上記のポリペプチド配列のうちの1つまたは複数を修飾することによって合成により生成することもできる。例えば、特定の実施形態では、1つまたは複数の置換、欠失、付加および/または挿入を導入することにより、工学的に作製されたTCRまたはCARの結合親和性および/または他の生物学的性質を改善することが望ましい場合がある。好ましくは、本発明のポリペプチドは、それに対して少なくとも約65%、70%、75%、85%、90%、95%、98%、または99%のアミノ酸の同一性を有するポリペプチドを含む。
【0292】
ポリペプチドは、「ポリペプチド断片」を包含する。ポリペプチド断片とは、天然に存在するまたは組換えによって作製されたポリペプチドのアミノ末端における欠失、カルボキシル末端における欠失、および/または内部の欠失もしくは置換を有する、単量体であっても多量体であってもよいポリペプチドを指す。ある特定の実施形態では、ポリペプチド断片は、少なくとも5〜約500アミノ酸長のアミノ酸の鎖を含んでよい。ある特定の実施形態では、断片は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、または450アミノ酸長であることが理解されよう。
【0293】
ポリペプチドは、ポリペプチド(例えば、ポリ−His)の合成、精製もしくは同定を容易にするため、または固体支持体へのポリペプチドの結合を増強するために、インフレームで融合することもでき、リンカーまたは他の配列とコンジュゲートすることもできる。
【0294】
上記の通り、本発明のポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、短縮および挿入を含む種々の仕方で変更することができる。このような操作のための方法は、当技術分野で一般に公知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNAにおける変異により調製することができる。変異誘発およびヌクレオチド配列変更のための方法は、当技術分野で周知である。例えば、Kunkel(1985年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA.82巻:488〜492頁)、Kunkelら(1987年、Methods in Enzymol、154巻:367〜382頁)、米国特許第4,873,192号、Watson, J. D.ら(Molecular Biology of the Gene、第4版、Benjamin/Cummings、Menlo Park、Calif.、1987年)およびこれらの中に引用されている参考文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoffら(1978年)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl. Biomed. Res. Found.、Washington, D.C.)のモデルに見出すことができる。
【0295】
ある特定の実施形態では、バリアントは保存的置換を含有する。「保存的置換」とは、あるアミノ酸により同様の性質を有する別のアミノ酸が置換されているものであり、したがって、ポリペプチドの二次構造およびハイドロパシー的性質は実質的に変化しないことがペプチド化学の当業者には予想されよう。本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造に改変を行っても、望ましい特性を有するバリアントまたは誘導体ポリペプチドをコードする機能分子をまだ得ることができる。
【0296】
ポリペプチドバリアントは、グリコシル化された形態、他の分子との集合的コンジュゲート、および無関係の化学的部分(例えば、ペグ化分子)との共有結合コンジュゲートをさらに含む。共有結合バリアントは、当技術分野で公知の通り、アミノ酸の鎖内またはN末端もしくはC末端の残基に見いだされる基に官能基を連結することによって調製することができる。バリアントとしては、対立遺伝子バリアント、種バリアント、および変異タンパク質も挙げられる。タンパク質の機能活性に影響を及ぼさない領域の短縮または欠失もバリアントである。
【0297】
一実施形態では、2種またはそれ超のポリペプチドの発現が望まれる場合、それらをコードするポリヌクレオチド配列を、本明細書の他の箇所で論じられているIRES配列によって分離することができる。別の実施形態では、2種またはそれ超のポリペプチドを、1つまたは複数の自己切断性ポリペプチド配列を含む融合タンパク質として発現させることができる。
【0298】
本発明のポリペプチドは、融合ポリペプチドを包含する。好ましい実施形態では、融合ポリペプチドおよび融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。融合ポリペプチドおよび融合タンパク質とは、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個またはそれ超のポリペプチドセグメントを有するポリペプチドを指す。融合ポリペプチドは、一般には、C末端とN末端を連結したものであるが、C末端とC末端、N末端とN末端、またはN末端とC末端を連結することもできる。融合タンパク質のポリペプチドは任意の順序であっても指定の順序であってもよい。融合ポリペプチドまたは融合タンパク質は、融合ポリペプチドの所望の転写活性が保存される限りは、保存的に改変されたバリアント、多型バリアント、対立遺伝子、変異体、部分配列、および種間ホモログも包含し得る。融合ポリペプチドは、化学的な合成方法によって、または2つの部分間の化学結合によって作製することもでき、一般に、他の標準の技法を使用して調製することもできる。融合ポリペプチドを含むライゲーションされたDNA配列は、本明細書の他の箇所で論じられている適切な転写または翻訳制御エレメントに作動可能に連結している。
【0299】
一実施形態では、融合パートナーは、ネイティブな組換えタンパク質よりも高収量でのタンパク質の発現を補助する配列(発現エンハンサー)を含む。他の融合パートナーは、タンパク質の溶解度が増加するように、またはタンパク質を所望の細胞内区画にターゲティングすることが可能になるように、または融合タンパク質の細胞膜を通る輸送が容易になるように、選択することができる。
【0300】
融合ポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドドメインのそれぞれの間にポリペプチド切断シグナルをさらに含んでよい。さらに、ポリペプチド部位を任意のリンカーペプチド配列に入れることができる。例示的なポリペプチド切断シグナルは、プロテアーゼ切断部位、ヌクレアーゼ切断部位(例えば、希な制限酵素認識部位、自己切断性リボザイム認識部位)、および自己切断性ウイルスオリゴペプチドなどのポリペプチド切断認識部位を含む(deFelipeおよびRyan、2004年、Traffic、5巻(8号);616〜26頁を参照されたい)。
【0301】
適切なプロテアーゼ切断部位および自己切断性ペプチドは当業者に公知である(例えば、Ryanら、1997年、J. Gener. Virol. 78巻、699〜722頁;Scymczakら(2004年)Nature Biotech. 5巻、589〜594頁を参照されたい)。例示的なプロテアーゼ切断部位としては、これらに限定されないが、ポティウイルスNIaプロテアーゼ(例えば、タバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ)、ポティウイルスHCプロテアーゼ、ポティウイルスP1(P35)プロテアーゼ、ビオウイルス(byovirus)NIaプロテアーゼ、ビオウイルス(byovirus)RNA−2にコードされるプロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコルナ3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(イネツングロ球状ウイルス)3C様プロテアーゼ、PYVF(パースニップ黄斑ウイルス)3C様プロテアーゼ、ヘパリン、トロンビン、第Xa因子およびエンテロキナーゼの切断部位が挙げられる。一実施形態では、切断ストリンジェンシーが高いことに起因して、TEV(タバコエッチ病ウイルス)プロテアーゼ切断部位、例えば、EXXYXQ(G/S)(配列番号11)、例えば、ENLYFQG(配列番号12)およびENLYFQS(配列番号13)(式中、Xは任意のアミノ酸を表す)(TEVによる切断は、QとGの間またはQとSの間で起こる)が好ましい。
【0302】
特定の実施形態では、自己切断性ペプチドは、ポティウイルスおよびカルジオウイルス2Aペプチド、FMDV(口蹄疫ウイルス)、ウマ鼻炎Aウイルス、Thosea asignaウイルスおよびブタテッショウウイルスから得られるポリペプチド配列を含む。
【0303】
ある特定の実施形態では、自己切断性ポリペプチド部位は、2Aまたは2A様部位、配列またはドメインを含む(Donnellyら、2001年、J. Gen. Virol. 82巻:1027〜1041頁)。
【0304】
F.ポリヌクレオチド
特定の実施形態では、本明細書において意図されている1種または複数の工学的に作製されたTCRまたはCARポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、ゲノムRNA(gRNA)、プラス鎖RNA(RNA(+))、マイナス鎖RNA(RNA(−))、ゲノムDNA(gDNA)、相補的DNA(cDNA)または組換えDNAを指す。ポリヌクレオチドは、一本および二本鎖ポリヌクレオチドを含む。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に記載されている参照配列(例えば、配列表を参照)のいずれかに対し少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはバリアントを含み、典型的には、この場合、バリアントは、参照配列の少なくとも1種の生物学的活性を維持する。種々の例示的な実施形態では、本発明は、一部には、発現ベクター、ウイルスベクターおよび移入プラスミドを構成するポリヌクレオチドならびにこれを含む組成物および細胞を意図する。
【0305】
特定の実施形態では、本発明により、少なくとも約5個、10個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、500個、1000個、1250個、1500個、1750個、または2000個またはそれ超の本発明のポリペプチドの連続したアミノ酸残基、ならびに全ての中間の長さの本発明のポリペプチドの連続したアミノ酸残基をコードするポリヌクレオチドが提供される。「中間の長さ」とは、この文脈において、引用された値の間の任意の長さ、例えば、6、7、8、9など;101、102、103など;151、152、153など;201、202、203などを意味することが容易に理解されよう。
【0306】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」などの用語は、参照ポリヌクレオチド配列に対して実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチド、または下で定義されているストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語は、参照ポリヌクレオチドと比較して、1つまたは複数のヌクレオチドが付加されているもしくは欠失している、または異なるヌクレオチドで置き換えられているポリヌクレオチドを包含する。この点について、参照ポリヌクレオチドに対して変異、付加、欠失および置換を含めたある特定の変更を行うことができ、それにより、変更されたポリヌクレオチドが参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性を保持することは当技術分野においてよく理解されている。
【0307】
「配列同一性」または、例えば、「と50%同一の配列」を含む記述は、本明細書で使用される場合、比較のウインドウにわたって、配列がヌクレオチドごとまたはアミノ酸ごとに同一である程度を指す。したがって、「配列同一性の百分率」は、最適にアラインされた2つの配列を比較のウインドウにわたって比較し、両方の配列に同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が存在する位置の数を決定してマッチする位置の数を得、マッチする位置の数を比較のウインドウ内の位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けて、配列同一性の百分率を得ることによって算出することができる。本明細書に記載の参照配列のいずれかに対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するヌクレオチドおよびポリペプチドが包含され、一般には、その場合、ポリペプチドバリアントは参照ポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を維持する。
【0308】
2つまたはそれ超のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列の関係を記載するために使用される用語として、「参照配列」、「比較ウインドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の百分率」、および「実質的な同一性」が挙げられる。「参照配列」は、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含めて長さが少なくとも12単量体単位であるが、15〜18単量体単位の頻度が高く、多くの場合には、少なくとも25単量体単位である。2つのポリヌクレオチドはそれぞれ(1)2つのポリヌクレオチド間で類似した配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)、および(2)2つのポリヌクレオチド間で多岐にわたる配列を含み得るので、2つ(またはそれ超)のポリヌクレオチド間の配列の比較は、一般には、2つのポリヌクレオチドの配列を「比較ウインドウ」にわたって比較して、同定し、配列類似性の局所的な領域を比較することによって実施される。「比較ウインドウ」とは、配列を、2つの配列を最適にアラインした後に、同じ数の連続した位置の参照配列と比較する、少なくとも6カ所、通常は約50〜約100カ所、より通常は約100〜約150カ所の連続した位置の概念的なセグメントを指す。比較ウインドウは、2つの配列を最適にアラインするために、参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して約20%またはそれ未満の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでよい。比較ウインドウをアラインするための配列の最適なアラインメントは、アルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、WI、USA))のコンピュータによる実行によって、または選択された種々の方法のいずれかによって生成される検査および最良のアラインメント(すなわち、比較ウインドウにわたって最も高い百分率相同性がもたらされる)によって行うことができる。例として、Altschulら、1997年、Nucl. Acids Res. 25巻:3389頁により開示されているプログラムのBLASTファミリーに対して参照を行うこともできる。配列解析に関する詳細な論述は、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons Inc、1994〜1998年、15章のUnit 19.3に見いだすことができる。
【0309】
本発明のポリヌクレオチドは、それ自体のコード配列の長さにかかわらず、本明細書の他の箇所で開示されているまたは当技術分野で公知のプロモーターおよび/またはエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、コザック配列、ポリアデニル化シグナル、追加的な制限酵素部位、多重クローニング部位、配列内リボソーム進入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えば、LoxP、FRT、およびAtt部位)、終止コドン、転写終結シグナル、および自己切断性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープタグなどの他のDNA配列と組み合わせることができ、したがって、それらの全体の長さは相当に変動し得る。したがって、ほぼどんな長さのポリヌクレオチド断片でも使用することができ、全長は調製の容易さおよび意図された組換えDNAプロトコールでの使用により限定されることが好ましいことが意図されている。
【0310】
ポリヌクレオチドは、当技術分野において公知であり、利用可能である種々の十分に確立された技法のいずれかを使用して調製し、操作し、かつ/または発現させることができる。所望のポリペプチドを発現させるために、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を適切なベクターに挿入することができる。ベクターの例は、プラスミド、自己複製配列、および転移因子である。追加の例示的なベクターとしては、限定することなく、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体、たとえば、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来の人工染色体(PAC)、ラムダファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージ、および動物ウイルスが挙げられる。ベクターとして有用な動物ウイルスのカテゴリーの例としては、限定することなく、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポーバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。発現ベクターの例は、哺乳動物細胞において発現させるためのpClneoベクター(Promega);哺乳動物細胞におけるレンチウイルス媒介性遺伝子導入および発現のためのpLenti4/V5−DEST(商標)、pLenti6/V5−DEST(商標)、およびpLenti6.2/V5−GW/lacZ(Invitrogen)である。特定の実施形態では、本明細書に開示されているキメラタンパク質のコード配列を、哺乳動物細胞においてキメラタンパク質を発現させるためにそのような発現ベクターにライゲーションすることができる。
【0311】
発現ベクター内に存在する「制御エレメント」または「調節配列」は、宿主細胞のタンパク質と相互作用して転写および翻訳を行うベクターの非翻訳(non−translated)領域−複製起点、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(シャイン・ダルガーノ配列またはコザック配列)イントロン、ポリアデニル化配列、5’および3’非翻訳(untranslated)領域である。そのようなエレメントは、それらの強度および特異性が変動し得る。利用するベクター系および宿主に応じて、遍在プロモーターおよび誘導性プロモーターを含めた、多くの適切な転写および翻訳エレメントを使用することができる。
【0312】
特定の実施形態では、これらに限定されないが、発現ベクターおよびウイルスベクターを含めた、本発明の実施において使用するためのベクターは、プロモーターおよび/またはエンハンサーなどの外因性、内因性、または異種性制御配列を含む。「内因性」制御配列とは、ゲノム内で所与の遺伝子に天然に連結した制御配列である。「外因性」制御配列とは、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技法)によって遺伝子の近位に配置された制御配列であり、したがって、その遺伝子の転写が連結したエンハンサー/プロモーターによって導かれる。「異種性」制御配列とは、遺伝子操作される細胞とは異なる種に由来する外因性配列である。
【0313】
「プロモーター」という用語は、本明細書で使用される場合、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに作動可能に連結したポリヌクレオチドを惹起および転写する。特定の実施形態では、哺乳動物細胞において作動可能なプロモーターは、転写が開始される部位からおよそ25〜30塩基上流に位置するATリッチ領域および/または転写開始から70〜80塩基上流に見いだされる別の配列、CNCAAT領域(Nは任意のヌクレオチドであってよい)を含む。
【0314】
「エンハンサー」という用語は、転写の増強をもたらすことが可能な配列を含み、一部の場合には、別の制御配列に対する方向とは独立して機能し得るDNAのセグメントを指す。エンハンサーは、プロモーターおよび/または他のエンハンサーエレメントと協同的にまたは相加的に機能し得る。「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーター機能とエンハンサー機能の両方をもたらすことが可能な配列を含有するDNAのセグメントを指す。
【0315】
「作動可能に連結した」という用語は、記載されている構成成分が、それらの意図された様式で機能することが可能になる関係にある近位を指す。一実施形態では、この用語は、核酸発現制御配列(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサーなど)と第2のポリヌクレオチド配列、例えば、目的のポリヌクレオチドの機能的な連結を指し、ここで、発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写を導く。
【0316】
本明細書で使用される場合、「構成的発現制御配列」という用語は、作動可能に連結した配列の転写を絶え間なくまたは連続的に可能にするプロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーを指す。構成的発現制御配列は、多種多様な細胞および組織型における発現を可能にする「遍在」プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーであってもよく、それぞれ制限された種類の細胞および組織型における発現を可能にする「細胞特異的」、「細胞型特異的」、「細胞系列特異的」または「組織特異的」プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーであってもよい。
【0317】
本発明の特定の実施形態において使用するのに適した例示的な遍在発現制御配列としては、これらに限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ウイルスシミアンウイルス40(SV40)(例えば、初期または後期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルス由来のH5、P7.5、およびP11プロモーター、伸長因子1−アルファ(EF1a)プロモーター、初期増殖応答1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、真核生物翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、熱ショック70kDaタンパク質5(HSPA5)、熱ショックタンパク質90kDaベータ、メンバー1(HSP90B1)、熱ショックタンパク質70kDa(HSP70)、β−キネシン(β−KIN)、ヒトROSA26遺伝子座(Irionsら、Nature Biotechnology 25巻、1477〜1482頁(2007年))、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ−1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ−アクチン(CAG)プロモーター、β−アクチンプロモーターおよび骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、負の制御領域欠失、dl587revプライマー結合性部位置換(MND)プロモーター(Challitaら、J Virol. 69巻(2号):748〜55頁(1995年))が挙げられる。
【0318】
特定の実施形態では、工学的に作製されたTCRまたはCARを含むポリヌクレオチドを、T細胞における安定かつ長期にわたる発現をもたらすプロモーターから、T細胞を、標的抗原を発現する細胞に向け直すために十分なレベルで発現させることが望ましい場合がある。好ましい実施形態では、プロモーターは、EF1αプロモーターまたはMNDプロモーターである。
【0319】
本明細書で使用される場合、「条件的発現」とは、これらに限定されないが、誘導性発現;抑制可能な発現;特定の生理的状態、生物学的状態、または疾患状態を有する細胞または組織における発現などを含めた、任意の型の条件的発現を指し得る。この定義は、細胞型または組織に特異的な発現を排除するものではない。本発明のある特定の実施形態は、目的のポリヌクレオチドの条件的発現を提供し、例えば、細胞、組織、生物体などを、ポリヌクレオチドの発現が引き起こされる処理もしくは条件、または目的のポリヌクレオチドによりコードされるポリヌクレオチドの発現の増加もしくは減少が引き起こされる処理もしくは条件に供することによって発現を制御する。
【0320】
誘導性プロモーター/系の実例としては、これらに限定されないが、グルココルチコイドまたはエストロゲン受容体(対応するホルモンを用いた処理によって誘導可能)をコードする遺伝子に対するプロモーターなどのステロイド誘導性プロモーター、メタロチオネイン(metallothionine)プロモーター(種々の重金属を用いた処理によって誘導可能)、MX−1プロモーター(インターフェロンによって誘導可能)、「GeneSwitch」ミフェプリストンにより調節可能な系(Sirinら、2003年、Gene、323巻:67頁)、クメート(cumate)誘導性遺伝子スイッチ(WO2002/088346)、テトラサイクリン依存性調節系などが挙げられる。
【0321】
条件的発現は、部位特異的DNAリコンビナーゼを使用することによって達成することもできる。本発明のある特定の実施形態によると、ベクターは、部位特異的リコンビナーゼによって媒介される組換えのための少なくとも1つ(一般には、2つ)の部位を含む。本明細書で使用される場合、「リコンビナーゼ」または「部位特異的リコンビナーゼ」という用語は、1つまたは複数の組換え部位(例えば、2、3、4、5、7、10、12、15、20、30、50など)が関与する組換え反応に関与する、除去的(excisive)または統合的なタンパク質、酵素、補因子または関連タンパク質を含み、これは、野生型タンパク質であってもよく(Landy、Current Opinion in Biotechnology 3巻:699〜707頁(1993年))、その変異体、誘導体(例えば、組換えタンパク質配列またはその断片を含有する融合タンパク質)、断片、およびバリアントであってもよい。本発明の特定の実施形態における使用に適したリコンビナーゼの実例としては、これらに限定されないが、Cre、Int、IHF、Xis、Flp、Fis、Hin、Gin、ΦC31、Cin、Tn3レソルバーゼ、TndX、XerC、XerD、TnpX、Hjc、Gin、SpCCE1、およびParAが挙げられる。
【0322】
G.ウイルスベクター
特定の実施形態では、本明細書において意図されている工学的に作製されたTCRまたはCARをコードするレトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターにより、細胞(例えば、T細胞)を形質導入する。形質導入されたT細胞は、安定的、長期かつ持続性のT細胞応答を誘発する。
【0323】
本明細書で使用される場合、「レトロウイルス」という用語は、そのゲノムRNAを直鎖状二本鎖DNAコピーに逆転写し、その後、そのゲノムDNAを宿主ゲノムに共有結合によって組み込むRNAウイルスを指す。特定の実施形態における使用に適した例示的なレトロウイルスとしては、これらに限定されないが、モロニーマウス白血病ウイルス(M−MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプーマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV))およびレンチウイルスが挙げられる。
【0324】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、複合レトロウイルスのある群(または属)を指す。例示的なレンチウイルスとしては、これらに限定されないが、:HIV(ヒト免疫不全症ウイルス;HIV 1型およびHIV 2型を含む);ビスナ・マエディウイルス(VMV)ウイルス;ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV);ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV);ネコ免疫不全症ウイルス(FIV);ウシ免疫不全症ウイルス(BIV);およびサル免疫不全症ウイルス(SIV)が挙げられる。一実施形態では、HIVに基づくベクターの骨格(すなわち、HIVシス作用性配列エレメント)が好ましい。
【0325】
「ベクター」という用語は、本明細書では、別の核酸分子を移行させるまたは運搬することが可能な核酸分子を指すために使用される。移行される核酸は、一般に、ベクター核酸分子に連結される、例えば、それに挿入される。ベクターは、細胞における自律複製を導く配列を含んでもよく、宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含んでもよい。有用なベクターとしては、例えば、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌人工染色体、およびウイルスベクターが挙げられる。有用なウイルスベクターとしては、例えば、複製欠損性レトロウイルスおよびレンチウイルスが挙げられる。
【0326】
当業者には明らかになる通り、「ウイルスベクター」という用語は、一般には核酸分子の移行もしくは細胞のゲノム内への組み込みを容易にするウイルス由来の核酸エレメントを含む核酸分子(例えば、導入プラスミド)、または、核酸移行を媒介するウイルス粒子のいずれかを指すために広く使用されている。ウイルス粒子は、一般には、核酸(複数可)に加えて、種々のウイルス構成成分および時には宿主細胞構成成分も含む。
【0327】
ウイルスベクターという用語は、核酸を細胞内に移行することが可能なウイルスもしくはウイルス粒子、または移行される核酸自体のいずれかを指し得る。ウイルスベクターおよび導入プラスミドは、主にウイルスに由来する構造的かつ/または機能的な遺伝エレメントを含有する。「レトロウイルスベクター」という用語は、主にレトロウイルスに由来する構造的かつ機能的な遺伝エレメントまたはその一部を含有するウイルスベクターまたはプラスミドを指す。「レンチウイルスベクター」という用語は、主にレンチウイルスに由来するLTRを含めた、構造的かつ機能的な遺伝エレメントまたはその一部を含有するウイルスベクターまたはプラスミドを指す。「ハイブリッドベクター」という用語は、レトロウイルス、例えばレンチウイルス配列とレンチウイルスものではないウイルス配列の両方を含有するベクター、LTRまたは他の核酸を指す。一実施形態では、ハイブリッドベクターとは、逆転写、複製、組み込みおよび/またはパッケージングのための、レトロウイルス、例えばレンチウイルス配列を含むベクターまたは導入プラスミドを指す。
【0328】
特定の実施形態では、「レンチウイルスベクター」、「レンチウイルス発現ベクター」という用語は、レンチウイルス導入プラスミドおよび/または感染性レンチウイルス粒子を指すために使用することができる。本明細書において、例えばクローニング部位、プロモーター、調節エレメント、異種核酸などのエレメントに言及する場合、これらのエレメントの配列は、本発明のレンチウイルス粒子ではRNA形態で存在し、本発明のDNAプラスミドではDNA形態で存在することが理解されるべきである。
【0329】
プロウイルスの各末端には、「長い末端反復」または「LTR」と称される構造がある。「長い末端反復(LTR)」という用語は、レトロウイルスDNAの末端に位置する、それらの天然配列に関しては直接反復配列であり、U3、RおよびU5領域を含有する、塩基対のドメインを指す。LTRは、一般に、レトロウイルス遺伝子の発現(例えば、促進、開始および遺伝子転写物のポリアデニル化)のため、およびウイルス複製のための基本的な機能をもたらす。LTRは、転写制御エレメント、ポリアデニル化シグナルならびにウイルスゲノムの複製および組み込みのために必要な配列を含めた多数の調節シグナルを含有する。ウイルスLTRは、U3、RおよびU5と称される3つの領域に分けられる。U3領域は、エンハンサーおよびプロモーターエレメントを含有する。U5領域は、プライマー結合性部位とR領域の間の配列であり、ポリアデニル化配列を含有する。R(反復)領域は、U3領域とU5領域に挟まれている。LTRは、U3、RおよびU5領域で構成され、ウイルスゲノムの5’末端と3’末端の両方に見られる。5’LTRには、ゲノムの逆転写に必要な配列(tRNAプライマー結合性部位)およびウイルスRNAの、粒子への効率的なパッケージングに必要な配列(プシー部位)が隣接している。
【0330】
本明細書で使用される場合、「パッケージングシグナル」または「パッケージング配列」という用語は、ウイルスRNAのウイルスカプシドまたは粒子への挿入に必要である、レトロウイルスゲノム内に位置する配列を指す。例えば、Cleverら、1995年、J. of Virology、69巻、4号;2101〜2109頁を参照されたい。いくつかのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのカプシド形成に必要な最小のパッケージングシグナル(プシー[Ψ]配列とも称される)を使用する。したがって、本明細書で使用される場合、「パッケージング配列」、「パッケージングシグナル」、「プシー」という用語および「Ψ」という記号は、ウイルス粒子形成の間のレトロウイルスRNA鎖のカプシド形成に必要な非コード配列への言及に使用されている。
【0331】
種々の実施形態では、ベクターは、改変された5’LTRおよび/または3’LTRを含む。LTRのいずれかまたは両方が、これらに限定されないが、1つまたは複数の欠失、挿入、または置換を含めた、1つまたは複数の改変を含んでよい。3’LTRの改変は、多くの場合、レンチウイルスまたはレトロウイルス系の安全性を改善するために、ウイルスを複製欠損性にすることによって行われる。本明細書で使用される場合、「複製欠損性」という用語は、完全な、有効な複製を行うことができず、したがって、感染性ビリオンが産生されないウイルス(例えば、複製欠損性レンチウイルス後代)を指す。「複製コンピテント」という用語は、複製することが可能であり、したがって、ウイルスのウイルス複製が感染性ビリオンを産生可能である野生型ウイルスまたは変異体ウイルス(例えば、複製コンピテントレンチウイルス後代)を指す。
【0332】
「自己不活性化」(SIN)ベクターとは、最初のラウンドのウイルス複製を超えてのウイルス転写を防止するために、U3領域として公知の右側(3’)LTRエンハンサー−プロモーター領域が改変された(例えば、欠失または置換によって)複製欠損性ベクター、例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターを指す。これは、右側(3’)LTR U3領域がウイルス複製の間に左側(5’)LTR U3領域の鋳型として使用され、したがって、ウイルス転写物はU3エンハンサー−プロモーターなしでは作られないことに起因する。本発明のさらなる実施形態では、U5領域が、例えば理想的なポリ(A)配列で置き換えられるように、3’LTRを改変する。3’LTR、5’LTR、または3’LTRと5’LTRの両方に対する改変などのLTRに対する改変も本発明に包含されることに留意するべきである。
【0333】
5’LTRのU3領域を異種プロモーターで置き換えて、ウイルス粒子の産生の間にウイルスゲノムの転写を駆動することにより、追加的な安全性の増強が提供される。使用することができる異種プロモーターの例としては、例えば、ウイルスシミアンウイルス40(SV40)(例えば、初期または後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、最初期の)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、および単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーターが挙げられる。典型的なプロモーターは、Tat非依存的に高レベルの転写を駆動することができる。この置き換えにより、ウイルス産生系に完全なU3配列が存在しなくなるので、複製コンピテントウイルスを生成する組換えの可能性が低下する。ある特定の実施形態では、異種プロモーターは、ウイルスゲノムが転写される様式の制御における追加的な利点を有する。例えば、異種プロモーターは、誘導性であってよく、したがって、ウイルスゲノムの全部または一部の転写は、誘導因子が存在する場合にのみ起こる。誘導因子としては、これらに限定されないが、1つまたは複数の化学化合物または宿主細胞を培養する温度またはpHなどの生理的条件が挙げられる。
【0334】
一部の実施形態では、ウイルスベクターは、TARエレメントを含む。「TAR」という用語は、レンチウイルス(例えば、HIV)LTRのR領域に位置する「トランス活性化応答」遺伝エレメントを指す。このエレメントは、レンチウイルストランス活性化因子(tat)遺伝エレメントと相互作用してウイルス複製を増強する。しかし、このエレメントは、5’LTRのU3領域を異種プロモーターで置き換える実施形態では必要ない。
【0335】
「R領域」とは、キャップ形成基の開始(すなわち、転写の開始)で始まり、ポリAトラクトが始まる直前で終わる、レトロウイルスLTR内の領域を指す。R領域は、U3領域とU5領域に挟まれているとも定義される。R領域は、逆転写の間に新生DNAのゲノムの一方の末端から他方の末端への移行を可能にする役割を果たす。
【0336】
本明細書で使用される場合、「FLAPエレメント」という用語は、その配列に、レトロウイルス、例えば、HIV−1またはHIV−2の中心ポリプリントラクト(central polypurine tract)および中心終結配列(cPPTおよびCTS)を含む核酸を指す。適切なFLAPエレメントは、米国特許第6,682,907号およびZennouら、2000年、Cell、101巻:173頁に記載されている。HIV−1逆転写の間、中心ポリプリントラクト(cPPT)におけるプラス鎖DNAの中心的な開始および中心終結配列(CTS)における中心的な終結により、三本鎖DNA構造:HIV−1中心DNAフラップの形成が導かれる。いかなる理論に縛られることも望むものではないが、DNAフラップは、レンチウイルスゲノム核内移行のシス活性決定因子として作用し得、かつ/またはウイルスの力価を増大させ得る。特定の実施形態では、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターの骨格は、ベクター内の目的の異種遺伝子の上流または下流の1つまたは複数のFLAPエレメントを含む。例えば、特定の実施形態では、導入プラスミドはFLAPエレメントを含む。一実施形態では、本発明のベクターは、HIV−1から単離されたFLAPエレメントを含む。
【0337】
一実施形態では、レトロウイルスまたはレンチウイルス移入ベクターは、1つまたは複数の移出エレメントを含む。「移出エレメント」という用語は、RNA転写物の細胞の核から細胞質への輸送を調節するシス作用性転写後調節エレメントを指す。RNA移出エレメントの例としては、これらに限定されないが、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)rev応答エレメント(RRE)(例えば、Cullenら、1991年、J. Virol. 65巻:1053頁;およびCullenら、1991年、Cell 58巻:423頁を参照されたい)、およびB型肝炎ウイルス転写後調節エレメント(HPRE)が挙げられる。一般に、RNA移出エレメントは、遺伝子の3’UTR内に配置され、また、1つまたは多数のコピーとして挿入することができる。
【0338】
特定の実施形態では、ウイルスベクター内の異種配列の発現を、転写後調節エレメント、効率的なポリアデニル化部位、および場合によって、転写終結シグナルをベクターに組み入れることによって増加させる。種々の転写後調節エレメント、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE;Zuffereyら、1999年、J. Virol.、73巻:2886頁);B型肝炎ウイルスに存在する転写後調節エレメント(HPRE)(Huangら、Mol. Cell. Biol.、5巻:3864頁)などは、異種核酸のタンパク質での発現を増加させることができる(Liuら、1995年、Genes Dev.、9巻:1766頁)。特定の実施形態では、本発明のベクターは、WPREまたはHPREなどの転写後調節エレメントを含む。
【0339】
特定の実施形態では、本発明のベクターは、WPREまたはHPREなどの転写後調節エレメントを欠くまたはそれを含まない。なぜなら、一部の場合には、これらのエレメントが、細胞形質転換のリスクを上昇させ、かつ/または、mRNA転写物の量を実質的にもしくは有意に増加させないまたはmRNA安定性を増加させないからである。したがって、一部の実施形態では、本発明のベクターは、追加的な安全策として、WPREまたはHPREを欠くまたはそれを含まない。
【0340】
異種核酸転写物の効率的な終結およびポリアデニル化を導くエレメントは、異種遺伝子発現を増加させる。転写終結シグナルは、一般に、ポリアデニル化シグナルの下流に見いだされる。特定の実施形態では、ベクターは、発現させるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3’側にポリアデニル化配列を含む。「ポリA部位」または「ポリA配列」という用語は、本明細書で使用される場合、RNAポリメラーゼIIによる新生RNA転写物の終結およびポリアデニル化の両方を導くDNA配列を示す。ポリアデニル化配列は、コード配列の3’末端にポリA尾部を付加することによってmRNA安定性を促進し、したがって、翻訳効率の上昇に寄与することができる。ポリA尾部を欠く転写物は不安定であり、迅速に分解されるので、組換え転写物の効率的なポリアデニル化が望ましい。本発明のベクターに使用することができるポリAシグナルの実例としては、理想的なポリA配列(例えば、AATAAA、ATTAAA、AGTAAA)、ウシ成長ホルモンポリA配列(BGHpA)、ウサギβ−グロビンポリA配列(rβgpA)、または当技術分野で公知の別の適切な異種性もしくは内因性ポリA配列が挙げられる。
【0341】
種々の実施形態では、本発明のベクターは、工学的に作製されたTCRまたはCARポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含む。ベクターは1つまたは複数のLTRを有してよく、いずれのLTRも、1つまたは複数のヌクレオチドの置換、付加、または欠失などの1つまたは複数の修飾を含む。ベクターは、形質導入効率を上昇させるための1つまたは複数のアクセサリーエレメント(例えば、cPPT/FLAP)、ウイルスパッケージングを増加させるための1つまたは複数のアクセサリーエレメント(例えば、プシー(Ψ)パッケージングシグナル、RRE)、および/または治療用遺伝子の発現を増加させる他のエレメント(例えば、ポリ(A)配列)をさらに含んでよく、場合によって、WPREまたはHPREを含んでよい。多くの他の異なる実施形態を既存の本発明の実施形態から適合させることができることが当業者には理解されよう。
【0342】
「宿主細胞」とは、in vivo、ex vivo、またはin vitroにおいて本発明の組換えベクターまたはポリヌクレオチドを用いてトランスフェクト、感染、または形質導入を行った細胞を含む。宿主細胞は、パッケージング細胞、産生細胞、およびウイルスベクターを感染させた細胞を含み得る。特定の実施形態では、本発明のウイルスベクターを感染させた宿主細胞を、療法を必要とする被験体に投与する。ある特定の実施形態では、「標的細胞」という用語は、宿主細胞と互換的に使用され、トランスフェクト、感染、または形質導入を行った所望の細胞型の細胞を指す。好ましい実施形態では、標的細胞は、T細胞である。
【0343】
妥当なウイルス力価を達成するためには、多くの場合、大規模なウイルス粒子産生が必要である。ウイルス粒子は、ウイルス構造遺伝子および/またはアクセサリー遺伝子、例えば、gag、pol、env、tat、rev、vif、vpr、vpu、vpx、またはnef遺伝子または他のレトロウイルス遺伝子を含むパッケージング細胞株に移入ベクターをトランスフェクトすることによって産生される。
【0344】
本明細書で使用される場合、「パッケージングベクター」という用語は、パッケージングシグナルを欠き、1種、2種、3種、4種またはそれ超のウイルス構造遺伝子および/またはアクセサリー遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターまたはウイルスベクターを指す。一般には、パッケージング細胞にパッケージングベクターを含め、トランスフェクション、形質導入または感染によって細胞に導入する。トランスフェクション、形質導入または感染のための方法は当業者に周知である。本発明のレトロウイルス/レンチウイルス移入ベクターをパッケージング細胞株にトランスフェクション、形質導入または感染によって導入して、産生細胞または細胞株を生成することができる。本発明のパッケージングベクターは、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクションまたは電気穿孔を含めた標準の方法によってヒト細胞または細胞株に導入することができる。一部の実施形態では、パッケージングベクターを、ネオマイシン、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、ブラストサイジン、ゼオシン、チミジンキナーゼ、DHFR、GlnシンテターゼまたはADAなどの優性選択可能マーカーと一緒に細胞に導入し、その後、適切な薬物の存在下で選択し、クローンを単離する。選択可能マーカー遺伝子を、パッケージングベクターによりコードされる遺伝子と、例えば、IRESまたは自己切断性ウイルスペプチドによって物理的に連結することができる。
【0345】
ウイルスエンベロープタンパク質(env)は、細胞株から生成される組換えレトロウイルスによって最終的に感染および形質転換することができる宿主細胞の範囲を決定する。HIV−1、HIV−2、SIV、FIVおよびEIVなどのレンチウイルスの場合では、envタンパク質は、gp41およびgp120を含む。本発明のパッケージング細胞によって発現されるウイルスenvタンパク質は、以前記載されている通り、ウイルスgagおよびpol遺伝子とは別のベクター上にコードされることが好ましい。
【0346】
本発明において使用することができるレトロウイルス由来のenv遺伝子の実例としては、これらに限定されないが、MLVエンベロープ、10A1エンベロープ、BAEV、FeLV−B、RD114、SSAV、エボラ、センダイ、FPV(家禽ペストウイルス)、およびインフルエンザウイルスエンベロープが挙げられる。同様に、RNAウイルス(例えば、Picornaviridae、Calciviridae、Astroviridae、Togaviridae、Flaviviridae、Coronaviridae、Paramyxoviridae、Rhabdoviridae、Filoviridae、Orthomyxoviridae、Bunyaviridae、Arenaviridae、Reoviridae、Birnaviridae、RetroviridaeのRNAウイルスファミリー)に由来するエンベロープ、ならびにDNAウイルス(Hepadnaviridae、Circoviridae、Parvoviridae、Papovaviridae、Adenoviridae、Herpesviridae、Poxyiridae、およびIridoviridaeのファミリー)に由来するエンベロープをコードする遺伝子を利用することができる。代表例としては、FeLV、VEE、HFVW、WDSV、SFV、狂犬病、ALV、BIV、BLV、EBV、CAEV、SNV、ChTLV、STLV、MPMV、SMRV、RAV、FuSV、MH2、AEV、AMV、CT10、およびEIAVが挙げられる。
【0347】
他の実施形態では、本発明のウイルスをシュードタイピングするためのエンベロープタンパク質として、これらに限定されないが、以下のウイルスのいずれかが挙げられる:H1N1、H1N2、H3N2およびH5N1(トリインフルエンザ)などのA型インフルエンザ、B型インフルエンザ、C型インフルエンザウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルス群の任意のウイルス、腸内アデノウイルス、パルボウイルス、デング熱ウイルス、サル痘、モノネガウイルス目、リッサウイルス、例えば、狂犬病ウイルス、ラゴスコウモリウイルス(Lagos bat virus)、モコラウイルス(Mokola virus)、ドゥベンヘイジウイルス(Duvenhage virus)、ヨーロッパコウモリウイルス1&2およびオーストラリアコウモリウイルスなど、エフェメロウイルス、ベシクロウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ヘルペスウイルス、例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス(HHV)、ヒトヘルペスウイルス6型および8型、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、パピローマウイルス、マウスガンマヘルペスウイルス、アレナウイルス、例えば、アルゼンチン出血熱ウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、サビア関連出血熱ウイルス、ベネズエラ出血熱ウイルス、ラッサ熱ウイルス、マチュポウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、Bunyaviridiae、例えば、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、ハンタウイルス、腎症候群を伴う出血熱を引き起こすウイルス、リフトバレー熱ウイルス、エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱を含めたFiloviridae(フィロウイルス)、キャサヌール森林病(Kaysanur Forest disease)ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ダニ媒介脳炎を引き起こすウイルスを含めたFlaviviridae、ならびにParamyxoviridae、例えば、ヘンドラウイルスおよびニバーウイルス、大痘瘡および小痘瘡(天然痘)、アルファウイルス、例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、SARS関連コロナウイルス(SARS−CoV)、西ナイルウイルス、任意の脳炎を引き起こすウイルス。
【0348】
一実施形態では、本発明は、組換えレトロウイルス、例えば、VSV−G糖タンパク質を用いてシュードタイピングされたレンチウイルスを産生するパッケージング細胞を提供する。
【0349】
「シュードタイプ」または「シュードタイピング」という用語は、本明細書で使用される場合、ウイルスエンベロープタンパク質が、好ましい特性を有する別のウイルスのエンベロープタンパク質で置換されたウイルスを指す。例えば、HIVエンベロープタンパク質(env遺伝子によりコードされる)は通常ウイルスをCD4+提示細胞にターゲティングするので、HIVを水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV−G)エンベロープタンパク質でシュードタイピングし、それにより、HIVをより広い範囲の細胞に感染させることを可能にすることができる。本発明の好ましい実施形態では、レンチウイルスエンベロープタンパク質をVSV−Gでシュードタイピングする。一実施形態では、本発明は、VSV−Gエンベロープ糖タンパク質を用いてシュードタイピングした組換えレトロウイルス、例えば、レンチウイルスを産生するパッケージング細胞を提供する。
【0350】
本明細書で使用される場合、「パッケージング細胞株」という用語は、パッケージングシグナルを含有しないが、ウイルス粒子の正しいパッケージングに必要なウイルス構造タンパク質および複製酵素(例えば、gag、polおよびenv)を安定にまたは一過性に発現する細胞株に関して使用される。本発明のパッケージング細胞を調製するために、任意の適切な細胞株を使用することができる。一般に、細胞は、哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、パッケージング細胞株を作製するために使用する細胞は、ヒト細胞である。使用することができる適切な細胞株としては、例えば、CHO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、C3H 10T1/2細胞、FLY細胞、Psi−2細胞、BOSC 23細胞、PA317細胞、WEHI細胞、COS細胞、BSC 1細胞、BSC 40細胞、BMT 10細胞、VERO細胞、W138細胞、MRC5細胞、A549細胞、HT1080細胞、293細胞、293T細胞、B−50細胞、3T3細胞、NIH3T3細胞、HepG2細胞、Saos−2細胞、Huh7細胞、HeLa細胞、W163細胞、211細胞、および211A細胞が挙げられる。好ましい実施形態では、パッケージング細胞は、293細胞、293T細胞、またはA549細胞である。
【0351】
本明細書で使用される場合、「産生細胞株」という用語は、パッケージング細胞株およびパッケージングシグナルを含む移入ベクター構築物を含む、組換えレトロウイルス粒子を産生することができる細胞株を指す。感染性ウイルス粒子およびウイルスストック溶液の作製は、従来の技法を使用して行うことができる。ウイルスストック溶液を調製する方法は当技術分野で公知であり、例えば、Y. Soneokaら(1995年)Nucl. Acids Res. 23巻:628〜633頁、およびN. R. Landauら(1992年)J. Virol. 66巻:5110〜5113頁によって例示されている。感染性ウイルス粒子は、従来の技法を使用してパッケージング細胞から収集することができる。例えば、感染性粒子は、当技術分野で公知の通り、細胞溶解、または細胞培養物の上清の収集により収集することができる。場合によって、所望であれば、収集されたウイルス粒子を精製することができる。適切な精製技法は、当業者に周知である。
【0352】
遺伝子(複数可)または他のポリヌクレオチド配列を、トランスフェクションではなく、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターを使用してウイルス感染によって送達することは、「形質導入」と称される。一実施形態では、レトロウイルスベクターを、感染およびプロウイルスの組み込みによって細胞に形質導入する。ある特定の実施形態では、標的細胞、例えば、T細胞は、ウイルスまたはレトロウイルスベクターを使用した感染によって細胞に送達された遺伝子または他のポリヌクレオチド配列を含む場合、「形質導入」されている。特定の実施形態では、形質導入された細胞は、細胞のゲノム内に、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターによって送達された1つまたは複数の遺伝子または他のポリヌクレオチド配列を含む。
【0353】
特定の実施形態では、1つまたは複数のポリペプチドを発現する本発明のウイルスベクターを用いて形質導入を行った宿主細胞を、B細胞悪性疾患を処置および/または予防するために被験体に投与する。本発明のある特定の実施形態に従って利用することができる、遺伝子療法におけるウイルスベクターの使用に関する他の方法は、例えば、Kay, M. A.(1997年)Chest 111巻(補遺6号):138S〜142S頁;Ferry, N.およびHeard, J. M.(1998年)Hum. Gene Ther. 9巻:1975〜81頁;Shiratory, Y.ら(1999年)Liver 19巻:265〜74頁;Oka, K.ら(2000年)Curr. Opin. Lipidol. 11巻:179〜86頁;Thule, P. M.およびLiu, J. M.(2000年)Gene Ther. 7巻:1744〜52頁;Yang, N. S.(1992年)Crit. Rev. Biotechnol. 12巻:335〜56頁;Alt, M.(1995年)J. Hepatol. 23巻:746〜58頁;Brody, S. L.およびCrystal, R. G.(1994年)Ann. N.Y. Acad. Sci. 716巻:90〜101頁;Strayer, D. S.(1999年)Expert Opin. Investig. Drugs 8巻:2159〜2172頁;Smith−Arica, J. R.およびBartlett, J. S.(2001年)Curr. Cardiol. Rep. 3巻:43〜49頁;およびLee, H. C.ら(2000年)Nature 408巻:483〜8頁に見いだすことができる。
【0354】
H.組成物および製剤
本明細書において意図されている組成物は、本明細書において意図されている1つまたは複数のポリペプチド、ポリヌクレオチド、それを含むベクター、およびT細胞組成物を含み得る。組成物としては、これに限定されないが、薬学的組成物が挙げられる。「薬学的組成物」とは、細胞または動物に、単独で、または療法の1つまたは複数の他のモダリティと組み合わせて投与するために、薬学的に許容されるまたは生理的に許容される溶液に製剤化された組成物を指す。所望であれば、本発明の組成物は、他の薬剤、例えば、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、小分子、化学療法薬、プロドラッグ、薬物、抗体、または他の種々の薬学的に活性な薬剤などとも組み合わせて投与することができることも理解されよう。同様に組成物に含めることができる他の構成成分には、追加の薬剤が意図された療法を送達する組成物の能力に悪影響を及ぼさないものであれば、事実上制限はない。
【0355】
「薬学的に許容される」という句は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した、妥当な損益比に見合う化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために使用される。
【0356】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤」としては、限定することなく、米国食品医薬品局により、ヒトまたは家畜動物における使用に関して許容されるとして認可を受けている任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤(glidant)、甘味剤、希釈剤、防腐剤、色素/着色剤、香味増強剤(flavor enhancer)、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤(isotonic agent)、溶媒、界面活性剤、または乳化剤が挙げられる。例示的な薬学的に許容される担体としては、これらに限定されないが、糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロースなど;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなど;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど;トラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバター、ろう、動物性および植物性脂肪、パラフィン、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油など;グリコール、例えば、プロピレングリコールなど;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなど;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど;アルギン酸;発熱物質不含水;等張性の食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;および薬学的製剤に使用される任意の他の適合する物質が挙げられる。
【0357】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、本明細書において意図されている方法によって製造されたある量の改変T細胞を含む。好ましい実施形態では、薬学的T細胞組成物は、次のマーカー:CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122およびCD127のうち1種もしくは複数または全てを有する能力あるT細胞を含む。
【0358】
一般に、本明細書において意図されている方法によって製造されたT細胞を含む薬学的組成物は、体重1kg当たり細胞10
2〜10
10個、体重1kg当たり細胞10
5〜10
9個、体重1kg当たり細胞10
5〜10
8個、体重1kg当たり細胞10
5〜10
7個、体重1kg当たり細胞10
7〜10
9個または体重1kg当たり細胞10
7〜10
8個(これらの範囲内のあらゆる整数値を含む)の投与量で投与することができることが記述され得る。細胞の数は、組成物に含まれる細胞型と同様に、組成物の意図された最終的な使用に左右される。本明細書に提供される使用に関して、細胞は、一般に、1リットルまたはそれ未満の体積であり、500mLまたはそれ未満、さらには250mLまたは100mLまたはそれ未満であってよい。したがって、所望の細胞の密度は、典型的には、1ml当たり細胞10
6個超であり、一般に、1ml当たり細胞10
7個超、一般に、1ml当たり細胞10
8個またはそれ超である。免疫細胞の臨床的に意義がある数は、10
5、10
6、10
7、10
8、10
9、10
10、10
11または10
12個の細胞に累積的に等しいまたはこれを超える、多数の注入に配分することができる。本発明の一部の態様では、特に、注入された細胞は全て、特定の標的抗原(例えば、BCMA)に向け直されるため、10
6/キログラム(患者当たり10
6〜10
11)の範囲内のより少ない数の細胞を投与することができる。工学的に作製されたTCRまたはCARを発現するように改変されたT細胞は、これらの範囲内の投与量で複数回投与することができる。細胞は、療法を受ける患者にとって同種異系、同系、異種または自己由来であってもよい。所望であれば、処置は、注入されたT細胞の生着および機能を増強させるために、本明細書に記載されているマイトジェン(例えば、PHA)またはリンホカイン、サイトカインおよび/またはケモカイン(例えば、IFN−γ、IL−2、IL−7、IL−15、IL−12、TNF−アルファ、IL−18およびTNF−ベータ、GM−CSF、IL−4、IL−13、Flt3−L、RANTES、MIP1αなど)の投与を含むこともできる。
【0359】
一般に、本明細書に記載の通り活性化し増大させた細胞を含む組成物を、免疫無防備状態である個体において生じる疾患の処置および予防において利用することができる。具体的には、本明細書において意図されている方法によって製造される改変T細胞を含む組成物が、がんの処置において使用されている。本発明の改変T細胞は、単独で、あるいは、担体、希釈剤、賦形剤と、ならびに/または、IL−2、IL−7、および/もしくはIL−15または他のサイトカインもしくは細胞集団などの他の構成成分と組み合わせた医薬組成物として投与することができる。特定の実施形態では、本明細書において意図されている薬学的組成物は、ある量の遺伝子改変T細胞を、1種または複数種の薬学的にまたは生理的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含む。
【0360】
本明細書において意図されている改変T細胞を含む薬学的組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝液;グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;グリシンなどのポリペプチドまたはアミノ酸;抗酸化剤;EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および防腐剤をさらに含んでよい。本発明の組成物は、非経口投与、例えば、血管内(静脈内または動脈内)、腹腔内または筋肉内投与用に製剤化することが好ましい。
【0361】
液体の薬学的組成物は、溶液か、懸濁物か、または他の同様の形態であるかにかかわらず、以下のうちの1つまたは複数を含んでよい:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、好ましくは生理的食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、溶媒または懸濁媒体としての機能を果たし得る合成モノグリセリドまたはジグリセリドなどの不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸、クエン酸またはリン酸などの緩衝液、および、張度を調整するための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースなど。非経口的調製物は、ガラスまたはプラスチックでできたアンプル、使い捨てシリンジまたは複数用量バイアルに封入することができる。注射用薬学的組成物は、滅菌されていることが好ましい。
【0362】
特定の実施形態では、本明細書において意図されている組成物は、有効量の増大させた改変T細胞組成物を、単独で、または1種または複数種の治療剤と組み合わせて含む。したがって、T細胞組成物は、単独で、または、例えば放射線療法、化学療法、移植、免疫療法、ホルモン療法、光ダイナミック療法などの他の公知のがん処置と組み合わせて投与することができる。組成物は、抗生物質と組み合わせて投与することもできる。そのような治療剤は、特定のがんなどの本明細書に記載の特定の疾患状態に対する標準の処置として当技術分野において許容され得る。意図されている例示的な治療剤としては、サイトカイン、増殖因子、ステロイド、NSAID、DMARD、抗炎症薬、化学療法薬、放射線療法薬、治療用抗体、または他の活性な薬剤および補助的な薬剤が挙げられる。
【0363】
ある特定の実施形態では、本明細書において意図されているT細胞を含む組成物は、多くの化学療法剤と併せて投与することができる。化学療法剤の実例としては、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、およびウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチルオロメラミンレジュメ(trimethylolomelamine resume)を含めたエチレンイミンおよびメチルアメラミン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソ尿素;アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5−FUなどのピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤(anti−adrenal);フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J)およびドセタキセル(doxetaxel)(TAXOTERE(登録商標)、Rhne−Poulenc Rorer、Antony、France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン(novantrone);テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluoromethylomithine)(DMFO);Targretin(商標)(ベキサロテン)、Panretin(商標)(アリトレチノイン)などのレチノイン酸誘導体;ONTAK(商標)(デニロイキンジフチトクス);エスペラミシン;カペシタビン;および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)、およびトレミフェン(Fareston)を含めた抗エストロゲン;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体などもこの定義に含まれる。
【0364】
種々の他の治療剤は、本明細書に記載の組成物と併せて使用することができる。一実施形態では、T細胞を含む組成物を抗炎症剤と共に投与する。抗炎症剤または抗炎症薬としては、これらに限定されないが、ステロイドおよびグルココルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンを含む)、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬、シクロホスファミドおよびミコフェノーレートを含めた非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が挙げられる。
【0365】
他の例示的なNSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、VIOXX(登録商標)(ロフェコキシブ)およびCELEBREX(登録商標)(セレコキシブ)、およびシアリレートなどのCox−2阻害剤からなる群より選択される。例示的な鎮痛薬は、アセトアミノフェン、オキシコドン、トラマドールまたは塩酸プロポキシフェンからなる群より選択される。例示的なグルココルチコイドは、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、またはプレドニゾンからなる群より選択される。例示的な生物学的反応修飾物質としては、細胞表面マーカー(例えば、CD4、CD5など)を対象とする分子、TNFアンタゴニスト(例えば、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))およびインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))などのサイトカイン阻害剤、ケモカイン阻害剤および接着分子阻害剤が挙げられる。生物学的反応修飾物質としては、モノクローナル抗体ならびに組換え型の分子が挙げられる。例示的なDMARDとしては、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ペニシラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、Gold(経口用(オーラノフィン)および筋肉内用)およびミノサイクリンが挙げられる。
【0366】
本明細書において意図されているCARで改変されたT細胞と組み合わせるのに適した治療用抗体の実例としては、これらに限定されないが、アバゴボマブ(abagovomab)、アデカツムマブ(adecatumumab)、アフツズマブ(afutuzumab)、アレムツズマブ、アルツモマブ(altumomab)、アマツキシマブ、アナツモマブ(anatumomab)、アルシツモマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ(bectumomab)、ベバシズマブ、ビバツズマブ(bivatuzumab)、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カンツズマブ、カツマキソマブ、セツキシマブ、シタツズマブ(citatuzumab)、シクツムマブ(cixutumumab)、クリバツズマブ(clivatuzumab)、コナツムマブ(conatumumab)、ダラツムマブ、ドロジツマブ(drozitumab)、デュリゴツマブ(duligotumab)、デュシジツマブ(dusigitumab)、デツモマブ(detumomab)、ダセツズマブ(dacetuzumab)、ダロツズマブ(dalotuzumab)、エクロメキシマブ(ecromeximab)、エロツズマブ、エンシツキシマブ(ensituximab)、エルツマキソマブ(ertumaxomab)、エタラシズマブ(etaracizumab)、ファーレツズマブ(farietuzumab)、フィクラツズマブ(ficlatuzumab)、フィギツムマブ、フランボツマブ(flanvotumab)、フツキシマブ(futuximab)、ガニツマブ(ganitumab)、ゲムツズマブ、ギレンツキシマブ(girentuximab)、グレムバツムマブ(glembatumumab)、イブリツモマブ、イゴボマブ(igovomab)、イムガツズマブ(imgatuzumab)、インダツキシマブ(indatuximab)、イノツズマブ、インテツムマブ(intetumumab)、イピリムマブ、イラツムマブ(iratumumab)、ラベツズマブ、レクサツムマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブ(lorvotuzumab)、ルカツムマブ(lucatumumab)、マパツムマブ、マツズマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ(minretumomab)、ミツモマブ(mitumomab)、モキセツモマブ(moxetumomab)、ナルナツマブ(narnatumab)、ナプツモマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ノフェツモマブ(nofetumomab)、オカラツズマブ(ocaratuzumab)、オファツムマブ、オララツマブ(olaratumab)、オナルツズマブ(onartuzumab)、オポルツズマブ(oportuzumab)、オレゴボマブ、パニツムマブ、パルサツズマブ(parsatuzumab)、パトリツマブ(patritumab)、ペムツモマブ(pemtumomab)、ペルツズマブ、ピンツモマブ(pintumomab)、プリツムマブ(pritumumab)、ラコツモマブ(racotumomab)、ラドレツマブ(radretumab)、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ(robatumumab)、サツモマブ(satumomab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、シルツキシマブ、シムツズマブ(simtuzumab)、ソリトマブ(solitomab)、タカツズマブ(tacatuzumab)、タプリツモマブ(taplitumomab)、テナツモマブ(tenatumomab)、テプロツムマブ(teprotumumab)、ティガツズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブ(tucotuzumab)、ウブリツキシマブ(ublituximab)、ベルツズマブ、ボルセツズマブ(vorsetuzumab)、ボツムマブ(votumumab)、ザルツムマブ、CC49および3F8が挙げられる。
【0367】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物をサイトカインと併せて投与する。「サイトカイン」とは、本明細書で使用される場合、1つの細胞集団により放出され、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用するタンパク質に対する一般的な用語を意味する。そのようなサイトカインの例は、リンフォカイン、モノカイン、ケモカイン、および従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインには、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;レラキシン;プロレラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝臓増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子−アルファおよび腫瘍壊死因子−ベータ;ミュラー阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−ベータなどの神経増殖因子;血小板増殖因子;TGF−アルファおよびTGF−ベータなどの形質転換増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子−Iおよびインスリン様増殖因子−II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導性因子;インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、およびインターフェロン−ガンマなどのインターフェロン;マクロファージ−CSF(M−CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF);および顆粒球−CSF(G−CSF);IL−1、IL−1アルファ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15などのインターロイキン(IL)、TNF−アルファまたはTNF−ベータなどの腫瘍壊死因子;ならびにLIFおよびkitリガンド(KL)を含めた他のポリペプチド因子が含まれる。本明細書で使用される場合、サイトカインという用語は、天然の供給源または組換え細胞培養物に由来するタンパク質、およびネイティブな配列のサイトカインの生物活性のある等価物を包含する。
【0368】
I.標的細胞および抗原
本発明は、一部には、標的細胞、例えば、腫瘍またはがん細胞に向け直された遺伝子改変された、細胞上の標的抗原に結合する結合性ドメインを有する工学的に作製されたT細胞受容体またはCARを含む免疫エフェクター細胞を意図する。がん細胞は、血液およびリンパ系を介して身体の他の部分に拡散する可能性もある。がんにはいくつかの主要な型が存在する。癌腫は、皮膚または内臓を裏打ちするもしくは覆う組織において生じるがんである。肉腫は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管または他の結合組織もしくは支持組織において生じるがんである。白血病は、骨髄などの血液形成組織において開始し、多数の異常な血液細胞の産生および血液への侵入を引き起こすがんである。リンパ腫および多発性骨髄腫は、免疫系の細胞において生じるがんである。中枢神経系がんは、脳および脊髄の組織において生じるがんである。
【0369】
一実施形態では、標的細胞は、抗原、例えば、他の正常な(所望の)細胞の表面上では実質的に見いだされない標的抗原を発現する。一実施形態では、標的細胞は、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、ニューロン、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、グリア細胞、脂肪細胞(fat cell)、骨細胞、軟骨細胞、膵島細胞、CNS細胞、PNS細胞、肝臓細胞、脂肪細胞(adipose cell)、腎細胞、肺細胞、皮膚細胞、卵巣細胞、濾胞細胞、上皮細胞、免疫細胞、または内皮細胞である。
【0370】
ある特定の実施形態では、標的細胞は膵組織、神経組織、心臓組織、骨髄、筋組織、骨組織、皮膚組織、肝臓組織、毛包、血管組織、脂肪組織、肺組織、および腎臓組織の一部である。
【0371】
特定の実施形態では、標的細胞は、腫瘍細胞である。別の特定の実施形態では、標的細胞は、がんを有する患者の細胞などの、がん細胞である。開示されている方法を用いて死滅させることができる例示的な細胞としては、以下の腫瘍の細胞が挙げられる:液性腫瘍、例えば、急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、および骨髄芽球性白血病、前骨髄球性(promyelocytic)白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病および赤白血病など)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病など)を含めた白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病など。
【0372】
別の実施形態では、細胞は、肉腫および癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌、肺がん、結腸直腸がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌(例えば、膵臓、結腸、卵巣、肺、乳房、胃、前立腺、子宮頸部(cervix)、または食道の腺癌)、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、膀胱癌、CNS腫瘍(例えば、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫など)などの固形腫瘍細胞である。
【0373】
一実施形態では、がんは、請求項1に記載の方法では、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、神経内分泌腫瘍、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、黒色腫、皮膚がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、肝臓がん、腎がん、膵がん、肺がん、胆管がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、甲状腺髄様癌、卵巣がん、神経膠腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫および膀胱がんからなる群より選択される。
【0374】
一実施形態では、標的細胞は、肝臓、膵臓、肺、乳房、膀胱、脳、骨、甲状腺、腎臓、皮膚、および造血系の悪性細胞である。別の実施形態では、標的細胞は、肝臓がん、膵がん、肺がん、乳がん、膀胱がん(bladder cancer)、脳がん、骨がん、甲状腺がん、腎臓がん、皮膚がん、または血液学的がんの細胞である。
【0375】
一実施形態では、標的細胞は、細胞、例えば、これらに限定されないが、CMV、HPVおよびEBVを含めたウイルスによって感染したがん細胞である。
【0376】
一実施形態では、標的抗原は、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7−H3、B7−H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、CMV、EBV、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン−3(GPC3)、HLA−A1+MAGE1、HLA−A2+MAGE1、HLA−A3+MAGE1、HLA−A1+NY−ESO−1、HLA−A2+NY−ESO−1、HLA−A3+NY−ESO−1、HPV、IL−11Rα、IL−13Rα2、ラムダ、Lewis−Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY−ESO−1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、またはVEGFR2のエピトープである。
【0377】
J.治療方法
本明細書において意図されている方法によって製造される改変T細胞は、限定することなく、がん、感染症、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全症を含めた種々の状態の処置において使用するための改善された養子免疫療法をもたらす。特定の実施形態では、本明細書において意図されている工学的に作製されたTCRまたはCARを用いて初代T細胞を遺伝子改変することにより、初代T細胞の特異性を腫瘍またはがん細胞に向け直す。一実施形態では、本発明は、T細胞を、標的抗原を発現するがん細胞を標的とする工学的に作製されたTCRまたはCARを発現するように改変し、改変T細胞を、それを必要とするレシピエントに注入する細胞療法の一種を含む。注入された細胞は、レシピエント内の腫瘍細胞を死滅させることができる。抗体療法とは異なり、工学的に作製されたTCRまたはCARで改変されたT細胞は、in vivoで複製することが可能であり、したがって、持続したがん療法をもたらすことができる長期持続に寄与する。
【0378】
一実施形態では、本発明の工学的に作製されたTCRおよびCAR T細胞は、頑強なin vivoにおけるT細胞増大を行うことができ、また、長時間にわたって持続することができる。別の実施形態では、本発明の工学的に作製されたTCRまたはCAR T細胞は、再活性化してあらゆる追加的な腫瘍形成または成長を阻害することが可能な特異的なメモリーT細胞に進化する。
【0379】
特定の実施形態では、CARをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含むベクターを用いて遺伝子改変された免疫エフェクター細胞を含む組成物を、限定することなく、肝臓がん、膵がん、肺がん、乳がん、膀胱がん(bladder cancer)、脳がん、骨がん、甲状腺がん、腎臓がん、または皮膚がんを含めた固形腫瘍またはがんの処置に使用する。
【0380】
特定の実施形態では、PSCAまたはMUC1のエピトープに結合する抗原特異的結合性ドメインを含む工学的に作製されたTCRまたはCARをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含むベクターを用いて遺伝子改変された免疫エフェクター細胞を含む組成物を、これらに限定されないが、膵臓、膀胱、および肺を含めた種々のがんの処置に使用する。
【0381】
特定の実施形態では、工学的に作製されたTCRまたはCARをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含むベクターを用いて遺伝子改変された免疫エフェクター細胞を含む組成物を、急性白血病(例えば、ALL、AML、および骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病および赤白血病)、慢性白血病(例えば、CLL、SLL、CML、HCL)を含めた白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、および重鎖病を含めた液性腫瘍の処置に使用する。
【0382】
特定の実施形態では、工学的に作製されたTCRまたはCARをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含むベクターを用いて遺伝子改変された免疫エフェクター細胞を含む組成物を、これらに限定されないが、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、および慢性リンパ球性白血病(CLL)を含めたB細胞悪性疾患の処置に使用する。
【0383】
多発性骨髄腫は、成熟形質細胞形態のB細胞悪性疾患であり、これらの型の細胞の単一のクローンの腫瘍性形質転換を特徴とする。これらの形質細胞は、BMにおいて増殖し、近接する骨、および時には血液に浸潤し得る。多発性骨髄腫のバリアント形態としては、顕性多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌型骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫および髄外性形質細胞腫が挙げられる(例えば、Braunwaldら(編)、Harrison’s Principles of Internal Medicine、第15版(McGraw−Hill 2001年)を参照されたい)。
【0384】
非ホジキンリンパ腫は、リンパ球(白血球)のがんの大きな群を包含する。非ホジキンリンパ腫は、あらゆる年齢で生じ得、多くの場合、正常よりも大きいリンパ節、発熱、および体重減少を特徴とする。非ホジキンリンパ腫には多くの異なる型が存在する。例えば、非ホジキンリンパ腫は、侵襲性(成長が早い)型と無痛性(成長が遅い)型に分けることができる。非ホジキンリンパ腫は、B細胞およびT細胞に由来し得るが、本明細書で使用される場合、「非ホジキンリンパ腫」および「B細胞非ホジキンリンパ腫」という用語は、互換的に使用される。B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)としては、バーキットリンパ腫、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫が挙げられる。骨髄または幹細胞移植後に生じるリンパ腫は、通常はB細胞非ホジキンリンパ腫である。
【0385】
慢性リンパ球性白血病(CLL)は、Bリンパ球またはB細胞と称される未成熟白血球のゆっくりとした増加を引き起こす無痛性(成長が遅い)がんである。がん細胞は血液および骨髄を通じて拡散し、リンパ節または肝臓および脾臓などの他の器官にも影響を及ぼす可能性がある。CLLは、最終的には骨髄不全を引き起こす。時には、当該疾患の後期には、当該疾患は小リンパ球性リンパ腫と称される。
【0386】
特定の実施形態では、本明細書において意図されている改変T細胞またはそれを含む組成物の治療有効量を、それを必要とする患者に、単独で、または1種もしくは複数種の治療剤と組み合わせて投与するステップを含む方法が提供される。ある特定の実施形態では、本発明の細胞を、がんが発生するリスクがある患者の処置に使用する。したがって、本発明は、がんを処置または予防するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の改変T細胞の治療有効量を投与するステップを含む方法を提供する。
【0387】
一実施形態では、それを必要とする被験体においてがんを処置する方法は、本明細書において意図されている遺伝子改変免疫エフェクター細胞を含む組成物の有効量、例えば、治療有効量を投与するステップを含む。投与の数量および頻度は、患者の状態、ならびに患者の疾患の型および重症度などの因子によって決定されるが、適切な投与量は、臨床試験によって決定することができる。
【0388】
一実施形態では、被験体に投与される組成物におけるT細胞の量は、少なくとも0.1×10
5個の細胞、少なくとも0.5×10
5個の細胞、少なくとも1×10
5個の細胞、少なくとも5×10
5個の細胞、少なくとも1×10
6個の細胞、少なくとも0.5×10
7個の細胞、少なくとも1×10
7個の細胞、少なくとも0.5×10
8個の細胞、少なくとも1×10
8個の細胞、少なくとも0.5×10
9個の細胞、少なくとも1×10
9個の細胞、少なくとも2×10
9個の細胞、少なくとも3×10
9個の細胞、少なくとも4×10
9個の細胞、少なくとも5×10
9個の細胞または少なくとも1×10
10個の細胞である。特定の実施形態では、約1×10
7個のCAR T細胞〜約1×10
9個のCAR T細胞、約2×10
7個のCAR T細胞〜約0.9×10
9個のCAR T細胞、約3×10
7個のCAR T細胞〜約0.8×10
9個のCAR T細胞、約4×10
7個のCAR T細胞〜約0.7×10
9個のCAR T細胞、約5×10
7個のCAR T細胞〜約0.6×10
9個のCAR T細胞または約5×10
7個のCAR T細胞〜約0.5×10
9個のCAR T細胞が、被験体に投与される。
【0389】
一実施形態では、被験体に投与される組成物におけるT細胞の量は、体重1kg当たり細胞少なくとも0.1×10
4個、体重1kg当たり細胞少なくとも0.5×10
4個、体重1kg当たり細胞少なくとも1×10
4個、体重1kg当たり細胞少なくとも5×10
4個、体重1kg当たり細胞少なくとも1×10
5個、体重1kg当たり細胞少なくとも0.5×10
6個、体重1kg当たり細胞少なくとも1×10
6個、体重1kg当たり細胞少なくとも0.5×10
7個、体重1kg当たり細胞少なくとも1×10
7個、体重1kg当たり細胞少なくとも0.5×10
8個、体重1kg当たり細胞少なくとも1×10
8個、体重1kg当たり細胞少なくとも2×10
8個、体重1kg当たり細胞少なくとも3×10
8個、体重1kg当たり細胞少なくとも4×10
8個、体重1kg当たり細胞少なくとも5×10
8個または体重1kg当たり細胞少なくとも1×10
9個である。特定の実施形態では、体重1kg当たりCAR T細胞約1×10
6個〜体重1kg当たりCAR T細胞約1×10
8個、体重1kg当たりCAR T細胞約2×10
6個〜体重1kg当たりCAR T細胞約0.9×10
8個、体重1kg当たりCAR T細胞約3×10
6個〜体重1kg当たりCAR T細胞約0.8×10
8個、体重1kg当たりCAR T細胞約4×10
6個〜体重1kg当たりCAR T細胞約0.7×10
8個、体重1kg当たりCAR T細胞約5×10
6個〜体重1kg当たりCAR T細胞約0.6×10
8個または体重1kg当たりCAR T細胞約5×10
6個〜体重1kg当たりCAR T細胞約0.5×10
8個が、被験体に投与される。
【0390】
所望の療法をもたらすために、本発明の組成物の複数回投与が必要になる場合があることが当業者には認識されよう。例えば、組成物を、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、1年、2年、5年、10年、またはそれ超の期間にわたって1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれ超の回数、投与することができる。
【0391】
ある特定の実施形態では、活性化T細胞を被験体に投与し、その後、再採血し(またはアフェレーシスを実施し)、その血液から本発明に従ってT細胞を活性化し、患者にこれらの活性化し増大させたT細胞を再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、数週間ごとに複数回行うことができる。ある特定の実施形態では、10ccから400ccまでの採血からT細胞を活性化することができる。ある特定の実施形態では、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、100cc、150cc、200cc、250cc、300cc、350cc、または400ccまたはそれ超の採血からT細胞を活性化する。理論に縛られずに、この複数の採血/複数の再注入プロトコールを使用することは、ある特定のT細胞の集団を選択するのに役立ち得る。
【0392】
本明細書において意図されている組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、埋め込みまたは移植によるものを含めた任意の都合のよい様式で行うことができる。好ましい実施形態では、組成物を非経口的に投与する。「非経口投与」および「非経口的に投与する」という句は、本明細書で使用される場合、経腸および局所投与以外の投与形式、通常は注射によるものを指し、限定することなく、血管内、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、腫瘍内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内および胸骨内への注射および注入が挙げられる。一実施形態では、本明細書において意図されている組成物を、被験体に、腫瘍、リンパ節、または感染部位に直接注射することによって投与する。
【0393】
一実施形態では、それを必要とする被験体に、被験体におけるがんに対する細胞性免疫応答を増加させるために有効量の組成物を投与する。免疫応答は、感染細胞を死滅させることが可能な細胞傷害性T細胞、調節性T細胞によって媒介される細胞性免疫応答、およびヘルパーT細胞応答を含み得る。B細胞を活性化し、したがって、抗体産生を導くことが可能なヘルパーT細胞によって主に媒介される体液性免疫応答も誘導することができる。本発明の組成物によって誘導される免疫応答の型を分析するために様々な技法を使用することができ、それらは当技術分野で十分に記載されている。例えば、Current Protocols in Immunology、John E. Coligan、Ada M. Kruisbeek、David H. Margulies、Ethan M. Shevach、Warren Strober編(2001年)John Wiley & Sons、NY、N.Y.。
【0394】
T細胞媒介性死滅の場合では、CAR−リガンド結合により、T細胞へのCARシグナル伝達が開始され、それにより、種々の機構によって標的細胞のアポトーシスを誘導することができるタンパク質を産生または放出するようにT細胞を誘導する種々のT細胞シグナル伝達経路が活性化される。これらのT細胞媒介性機構としては(これらに限定されないが)、細胞内細胞傷害性顆粒のT細胞から標的細胞への移行、標的細胞の死滅を直接(または他のキラーエフェクター細胞の動員によって間接的に)誘導することが可能な炎症促進性サイトカインのT細胞による分泌、および、標的細胞上のそれらの同族の細胞死受容体(例えば、Fas)に結合した後、標的細胞のアポトーシスを誘導する、T細胞表面上の細胞死受容体リガンド(例えば、FasL)の上方制御が挙げられる。
【0395】
一実施形態では、本発明は、がんと診断された被験体を処置する方法であって、被験体から免疫エフェクター細胞を取り出すステップと、前記免疫エフェクター細胞を本明細書において意図されている工学的に作製されたTCRまたはCARをコードする核酸を含むベクターを用いて遺伝子改変するステップと、それにより、改変免疫エフェクター細胞の集団を作製するステップと、改変免疫エフェクター細胞の集団を同じ被験体に投与するステップとを含む方法を提供する。好ましい実施形態では、免疫エフェクター細胞はT細胞を含む。
【0396】
ある特定の実施形態では、本発明は、被験体内の標的細胞集団に対する、免疫エフェクター細胞に媒介される免疫モジュレーター応答を刺激するための方法であって、被験体に、工学的に作製されたTCRまたはCAR分子をコードする核酸構築物を発現する免疫エフェクター細胞集団を投与するステップを含む方法も提供する。
【0397】
本明細書に記載の細胞組成物を投与するための方法は、被験体において工学的に作製されたTCRまたはCARのいずれかを直接発現するex vivoで遺伝子改変された免疫エフェクター細胞の再導入、または、被験体に導入されると、工学的に作製されたTCRまたはCARを発現する成熟免疫エフェクター細胞に分化する、免疫エフェクター細胞の遺伝子改変された前駆体の再導入をもたらすために有効な任意の方法を含む。1つの方法は、末梢血T細胞に、ex vivoにおいて本発明による核酸構築物を用いて形質導入を行い、形質導入された細胞を被験体に戻すステップを含む。
【0398】
本明細書において引用されている刊行物、特許出願、および発行された特許は全て、個々の刊行物、特許出願、または発行された特許のそれぞれが参照により組み込まれることが具体的にかつ個別に示されたものと同じく参照により本明細書に組み込まれる。
【0399】
前述の発明は、明瞭な理解のために図解および実施例により少し詳細に記載されているが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の主旨または範囲から逸脱することなく、それらに対してある特定の変化および改変を成すことができることが当業者には容易に明らかになろう。以下の実施例は、単に例示として提供され、限定としては提供されない。基本的に同様の結果を得るために変化または改変することができる種々の重大でないパラメータは当業者には容易に認識されよう。
【実施例】
【0400】
(実施例1)
AKT阻害剤と共に培養したT細胞の増殖
本実験の目的は、T細胞増殖に対するAkt阻害剤の効果を決定することであった。T細胞分裂を測定することにより、T細胞増殖に対するMK−2206(Selleckchem)の影響を評価した。
【0401】
末梢血単核細胞(PBMC)は、T細胞を含有する不均一な細胞集団である。正常ドナーからPBMCを採取し、その強度が細胞分裂毎に2倍に漸進的に希釈される、蛍光色素(CellTrace(登録商標)Violet、Molecular Probes)で標識した。標識されたPBMCは、T細胞増大のための細胞の供給源として使用した。IL−2(CellGenix)を含有する培地においてCD3およびCD28抗体(Miltenyi Biotec)と共に標識PBMCを培養することにより、T細胞を活性化および増大させた。
【0402】
0日目におけるT培養物への0.025μM、0.074μM、0.222μM、0.67μMまたは2.0μM MK−2206の添加後に、フローサイトメトリーによりCellTrace Violet希釈を評価することにより、細胞分裂に対するMK−2206の影響をアッセイした。IL−2およびMK−2206を含有する新鮮なXVIVO−15に基づく培養培地を、2〜3日毎に合計7日間、T細胞培養物に添加して、T細胞を過成長および増大させた。MK−2206処理は、培養開始3日後に、T細胞分裂を実質的に減少させなかった(
図1A)。加えて、MK−2206の存在下で7日間培養したT細胞は、ビヒクルまたは無処理対照と比較して、T細胞分裂における統計的な有意差を示さなかった(
図1B)。全7日目培養物においてペアワイズt検定を行った;(各濃度のMK−2206は、0μM MK−2206と比較した:培養物は、p≦0.05レベルにおいて統計的に異ならなかった)。
【0403】
(実施例2)
MK−2206で処理したT細胞におけるCD62L発現
本実験の目的は、T細胞効力のためのT細胞マーカーに対するAkt阻害剤の効果を決定することであった。実施例1で製造されたT細胞培養物におけるCD62L発現を測定することにより、T細胞効力に対するMK−2206(Selleckchem)の影響を評価した。
【0404】
マウスモデルは、CD62L発現が、能力あるT細胞;養子移入後により優れた抗腫瘍有効性を有するT細胞を同定することを示した。しかし、in vitroでIL−2と共に培養したT細胞は、CD62L発現を低下させ、したがって、腫瘍特異的T細胞の抗腫瘍効力低下と相関することが示された。驚くべきことに、本発明者は、AKT阻害剤MK−2206が、7日間の培養後に、IL−2の存在下で、検査した全濃度のMK−2206においてCD62L発現を有意に増加させることを発見した。
図2。全7日目培養物において、ペアワイズT検定を行った(各濃度のMK−2206は、0μM MK−2206と比較した:*p<.05、**p<.01)。
【0405】
(実施例3)
MK−2206またはZSTK474で処理したCAR T細胞におけるCD62L発現
MK−2206またはリン酸トリシリビン(triciribine phosphate)−TCN(AKT阻害剤)またはZSTK474(PI3K阻害剤)のいずれかと共にCAR T細胞を培養した。これらの実験セットにおいて、B細胞成熟抗原(BCMA)に特異的なCAR T細胞を使用した。大規模臨床製造プロセスに対し直接的に拡張可能なシステムを使用して、CAR T細胞培養を行った。簡潔に説明すると、静止した(static)フラスコ内で、IL−2(CellGenix)ならびにCD3およびCD28に特異的な抗体(Miltenyi Biotec)を含有する培地において、末梢血単核細胞(PBMC)を培養した。抗BCMA CARをコードする2×10
8形質導入単位のレンチウイルスを、培養開始から1日後に添加した。合計10日間の培養において、IL−2および最適化された用量の阻害剤を含有する新鮮培地を添加することにより、抗BCMA CAR T細胞を対数期に維持した。培養の終わりに、抗BCMA CAR T細胞を表現型に関して調べた。
【0406】
培養の終わりにフローサイトメトリーにより、抗BCMA CAR T細胞におけるCD62Lの発現を評価した。PEにコンジュゲートされた組換えヒトBCMA−IgG Fcを使用して、抗BCMA CAR T細胞を特異的に同定した。CD62Lに特異的な抗体を使用した共染色により、CD62L発現を決定した。IL−2およびMK2206と共に培養した、3種の正常ドナー由来の抗BCMA CAR T細胞は、IL−2単独による培養と比較して、有意により高いCD62L発現を有した。抗BCMA CARを発現させるためのレンチウイルス形質導入は、MK2206に起因する改善された表現型を低下させなかった。TCNではなく、培養中にZST474を使用して、同様の改善が観察された(
図3)。
【0407】
(実施例4)
MK−2206またはZSTK474で処理したCAR T細胞は、改善された治療活性を示す
実施例3に記載されている通りにMK−2206、TCNまたはZSTK474で処理した抗BCMA CAR T細胞を検査して、CD62L発現増加が、抗腫瘍活性増加に関連したかどうかを評価した。IL−2と、MK2206、TCNまたはZSTK474のいずれかとの培養後に、抗BCMA CARを発現するT細胞を生成した。CAR T細胞のアリコートは、CAR T細胞の治療有効性を改善することが以前に実証された用量のIL−7およびIL−15を補充した培地においても培養した。100mm
3皮下多発性骨髄腫腫瘍(RPMI−8226)を有する動物に、等しいCAR T細胞用量(1×10
6CAR陽性細胞)を注入した。
【0408】
IL−2と共に培養した抗BCMA CAR T細胞は、完全腫瘍退縮を引き起こすのに十分であった。IL−7と、IL−15、MK−2206またはZST747と共に培養した抗BCMA CAR T細胞は、この多発性骨髄腫動物モデルにおける標準IL−2と共に培養した抗BCMA CAR T細胞と比較して、同様のレベルの抗腫瘍活性を示した。対照的に、TCNと共に培養した抗BCMA CAR T細胞は、いかなる抗腫瘍応答も完全に消失させた。これらの実験の結果を
図4に示す。
【0409】
(実施例5)
Mk−2206またはZSTK474で処理したCAR T細胞は、侵襲性腫瘍モデルにおける改善された治療活性を示す
より侵襲性で処置が困難な腫瘍モデルを使用して、IL−2、MK−2206、TCN、ZSTK474、IL7/15またはビヒクルで処理したCAR T細胞の抗腫瘍活性を確認した。Daudi腫瘍細胞は、低レベルのBCMAタンパク質を発現し、抗BCMA CAR T細胞を使用して有効に処置することができる。Daudi腫瘍進行は、IL−2またはIL7/15培養抗BCMA CAR T細胞による処置後に影響されなかった。際だったことに、MK−2206またはZST474のいずれかと共に培養した抗BCMA CAR T細胞は、完全な腫瘍退縮を引き起こした。これらの実験の結果を
図5に示す。
【0410】
(実施例6)
MK−2206またはZSTK474で処理したCAR T細胞は、改善された持続性を示す
CAR T細胞で処置した患者における臨床データは、持続性が、客観的な腫瘍応答に関連することを示唆する。完全な退縮を有するマウスにおいて腫瘍を再負荷することにより、抗BCMA CAR T細胞の持続性を評価した。完全に退縮した100mm
3RPMI−8226腫瘍を有した、IL−2、MK−2206またはZSTK474培養抗BCMA CAR T細胞で処置した動物に、13日間後に、反対側の側腹部にRPMI−8226を再負荷した。IL−2培養CAR T細胞で処置した動物は、腫瘍過成長を防止することができなかった。対照的に、ZSTK474培養抗BCMA CAR T細胞で処置した動物はいずれも、腫瘍生着のいかなる証拠もなかった。これらのデータは、治療活性を有する抗BCMA CAR T細胞が、ZSTK474培養抗BCMA CAR T細胞において持続することを示す。これらの実験の結果を
図6に示す。
【0411】
一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を本明細書および特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、全ての可能性のある実施形態を、そのような特許請求の範囲に権利が与えられる等価物の全範囲と共に包含すると解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示により限定されない。