(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663370
(24)【登録日】2020年2月18日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】転圧機械のモニタ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20200227BHJP
E01C 19/26 20060101ALI20200227BHJP
B60R 1/00 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
B60R11/02 C
E01C19/26
B60R1/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-30112(P2017-30112)
(22)【出願日】2017年2月21日
(65)【公開番号】特開2018-134941(P2018-134941A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正和
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 鉄朗
(72)【発明者】
【氏名】池田 豊
【審査官】
宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭52−156039(JP,U)
【文献】
特開2014−083984(JP,A)
【文献】
特開2007−223338(JP,A)
【文献】
特開2016−010129(JP,A)
【文献】
実開平02−074225(JP,U)
【文献】
特開2004−276829(JP,A)
【文献】
特開2000−204514(JP,A)
【文献】
特開2005−188156(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0008299(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B60R 1/00
E05F 15/00−15/79
B60K 35/00−37/06
E01C 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席に設けられた計器盤を覆うよう開閉可能に設けられ、非運転時には閉じて前記計器盤上の計器類を保護する一方、運転時には開くことでオペレータによる転圧機械の周囲の可視限界を狭めることなく所定位置に保持される計器盤保護カバーと、
前記計器盤保護カバーの該計器盤保護カバーが閉じたときに前記計器盤に臨む面に設けられ、該計器盤保護カバーが前記所定位置にまで開き保持された状態でオペレータが表示画面を視認可能なモニタと、
転圧機械の周辺の状況を撮影し監視する監視カメラと、を備え、
前記モニタは、前記計器盤保護カバーが開かれ保持されたときに前記計器盤保護カバーの端面と前記計器盤の上端縁との間に位置し、前記監視カメラにより撮影された映像を前記表示画面に表示する転圧機械のモニタ装置。
【請求項2】
前記所定位置は、前記計器盤保護カバーの該計器盤保護カバーが開かれ保持されたときに前記計器盤に臨む面がオペレータ側に向く位置である、請求項1に記載の転圧機械のモニタ装置。
【請求項3】
前記モニタは、前記表示画面の向きを可変である、請求項1または2に記載の転圧機械のモニタ装置。
【請求項4】
前記監視カメラは、転圧機械の後方の状況を撮影し監視する後方監視カメラであり、
前記モニタは、前記後方監視カメラにより撮影された映像を前記表示画面に表示する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の転圧機械のモニタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧機械のモニタ装置に係り、特にモニタを運転席に搭載する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
道路舗装工事では、オペレータが搭乗し運転をして、凝固前のアスファルトを平らにしながら締固める装置として、前後輪に締固め用ローラを採用した車両型の転圧機械が広く用いられている。このような転圧機械では、特に後輪の接地部付近の目視が容易ではなく、締固め範囲の細かい調整が難しいという問題がある。
【0003】
この場合、例えば後方監視カメラを転圧機械の後部に設置し、後方監視カメラからの映像を運転室内のモニタに表示することで、後方を監視する技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−167748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術では、モニタを運転室内の任意の位置に取り付けるようにしているところ、運転室を構成する屋根や窓、壁などがなく、運転席と外部との隔たりがないような転圧機械においては、特許文献1に開示される位置にモニタを取り付けようとする場合、モニタを取り付けるために別途ピラーを設置する必要があり好ましいことではない。
【0006】
更に、このような転圧機械では、モニタが雨や埃、紫外線等の環境に晒されることで劣化したり、オペレータが離れる転圧機械の非作動時においてモニタが盗難に遭う虞もある。これらの対策として、オペレータが転圧機械から離れる際にモニタを取り外すことが考えられるが、取り外して持ち歩くことによりモニタを紛失する虞があり、簡単に取り外せるとモニタを却って盗み易いという問題がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、既存の構造を極力維持しながら、目視可能範囲を狭めることなく、環境による劣化防止対策や盗難防止対策を施しつつ周辺確認を良好に行うことができる転圧機械のモニタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の転圧機械のモニタ装置は、運転席に設けられた計器盤を覆うよう開閉可能に設けられ、非運転時には閉じて前記計器盤上の計器類を保護する一方、運転時には開くことでオペレータによる転圧機械の周囲の可視限界を狭めることなく所定位置に保持される計器盤保護カバーと、該計器盤保護カバーが閉じたときに前記計器盤に臨む面に設けられ、該計器盤保護カバーが前記所定位置にまで開き保持された状態でオペレータが表示画面を視認可能なモニタと
、転圧機械の周辺の状況を撮影し監視する監視カメラと、を備え
、前記モニタは、前記計器盤保護カバーが開かれ保持されたときに前記計器盤保護カバーの端面と前記計器盤の上端縁との間に位置し、前記監視カメラにより撮影された映像を前記表示画面に表示することを特徴とする。
【0009】
これにより、計器盤保護カバーを開いたときに視認可能となり、計器盤保護カバーを閉じたときに計器盤保護カバーに覆われるようにモニタを設置することで、転圧機械を使用する際には計器盤保護カバーを開けると、オペレータによる転圧機械の周囲の可視限界を狭めることなく計器盤とモニタとを一度に視認可能となり、転圧機械を駐機する際には計器盤保護カバーを閉じることで、計器盤とモニタとを一度に覆うことが可能とされる。
また、転圧機械の周辺の状況を撮影し監視する監視カメラにより撮影された映像をモニタの表示画面に表示することで、目視では確認しにくい転圧機械の周辺の状況を容易に視認可能とされる。
【0010】
その他の態様として、前記所定位置は、前記計器盤保護カバーの該計器盤保護カバーが
開かれ保持されたときに前記計器盤に臨む面がオペレータ側に向く位置であるのがよい。これにより、オペレータがモニタを容易に視認可能とされる。
【0011】
また、前記モニタは、前記表示画面の向きを可変であるのが好ましい。これにより、オペレータの身長や着席位置に応じてモニタの表示画面を見やすい向きに変えることが可能とされる。
【0013】
特に、前記監視カメラは、転圧機械の後方の状況を撮影し監視する後方監視カメラであり、前記モニタは、前記後方監視カメラにより撮影された映像を前記表示画面に表示するのが好ましい。これにより、特に目視では確認しにくい転圧機械の後方の状況を容易に視認可能とされる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の転圧機械のモニタ装置によれば、モニタを計器盤保護カバーの該計器盤保護カバーが閉じたときに計器盤に臨む面に設置するので、既存の構造を変更することなく安価にモニタを設置しつつ、モニタを開いた状態では、オペレータによる転圧機械の周囲の可視限界、即ち目視可能範囲を狭めることなく、モニタを視認でき、例えば転圧機械の周辺、特に後方の状況をモニタで容易に確認するようにでき、転圧機械を駐機する際には計器盤保護カバーでモニタを覆い隠すようにでき、良好にモニタの環境による劣化防止対策や盗難防止対策を施すことができる。
また、転圧機械の周辺の状況を撮影し監視する監視カメラにより撮影された映像をモニタの表示画面に表示することで、目視では確認しにくい転圧機械の周辺の状況を容易に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るモニタ装置を搭載した転圧機械を横方向から見た概略構成図である。
【
図2】計器盤保護カバーが開かれた状態のモニタ装置の概略構成図である。
【
図3】計器盤保護カバーが閉じられた状態のモニタ装置の概略構成図である。
【
図4】第2実施形態に係る2つのモニタを横並びに設けた場合の概略構成図である。
【
図5】第3実施形態に係る折りたたみ式モニタが設けられた計器盤保護カバーを搭載したモニタ装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明に係るモニタ装置を搭載した転圧機械(例えば、タイヤローラ)1を横方向から見た概略構成図である。
【0017】
転圧機械1は、前輪ローラ4と後輪ローラ5を備え、運転席には、オペレータ9が座るシート10、前輪ローラ4を転舵するためのステアリングホイール13、転圧機械1の走行速度や燃料の量などの転圧機械1の情報を出力する計器や各種操作スイッチ類を有する計器盤16が設けられている。そして、駐機時における計器盤16の雨や埃、紫外線等の環境による劣化を防止したり、いたずら等を防止するため、計器盤保護カバー20が搭載されている。詳しくは、計器盤保護カバー20は、シート10と反対側となる計器盤16の前部を支点に転圧機械1の前後方向に開閉可能であり、閉じた状態で計器盤16に臨む面が計器盤16上の計器類と干渉しないよう、当該計器盤16に臨む面と計器盤16の表面との間には所定の空間を有して構成されている。
【0018】
転圧機械1は、道路の舗装工事に用いられ、地面やアスファルトを平らにし、押し固めて道路を舗装する機械である。より詳しくは、転圧機械1は、前輪ローラ4と後輪ローラ5で地面やアスファルトを平らにしながら押し固め、前輪ローラ4を転舵させて、進行方向を調整しながら前進あるいは後退し、道路の舗装をする。
【0019】
このような転圧機械1では、オペレータ9は、シート10に座った状態で、視点23から周囲の状況を確認しながら転圧機械1の運転操作を行う。なお、視点23からの可視限界24のうち、転圧機械1の前部の形状に起因して、前方可視下限24aより下の部分、および転圧機械1の後部の形状に起因して、後方可視下限24bより下の部分は目視にて確認できない範囲となっている。従って、計器盤保護カバー20は、開いた状態で上端が前方可視下限24aより下になるように配設され、また、転圧機械1の後部には、転圧機械1の後方のうち主に後方可視下限24bより下の死角の範囲を撮影するバックカメラ(後方監視カメラ)8が搭載されている。
【0020】
図2を参照すると、計器盤保護カバー20が開かれ所定位置に保持された状態のモニタ装置の概略構成図が示されている。ここでは、所定位置は、計器盤保護カバー20が開かれ保持された状態で、計器盤16に臨む面がオペレータ9側を向くような位置に規定されている。
【0021】
モニタ装置は、計器盤保護カバー20の計器盤16に臨む面のうちオペレータ9が視認可能な位置に、バックカメラ8の映像を表示するモニタ26を配設して構成されている。モニタ26は、例えば液晶パネルで構成されている。より詳しくは、モニタ26は、計器盤保護カバー20を開いた状態で、計器盤保護カバー20の端面と計器盤16の上端縁部との間の部分に位置するようにして、計器盤保護カバー20の計器盤16に臨む面に取り付けられている。
【0022】
なお、モニタ26については、オペレータ9が見やすい角度になるように画面の向きを変えることが可能に構成してもよい。
【0023】
図3を参照すると、計器盤保護カバー20が閉じられた状態のモニタ装置の概略構成図が示されている。
【0024】
上述したようにモニタ26は計器盤保護カバー20の計器盤16に臨む面に取り付けられており、計器盤保護カバー20の計器盤16に臨む面と計器盤16の表面との間には所定の空間を有しているので、計器盤保護カバー20は、閉じることで計器盤16と共にモニタ26をも覆うことが可能に構成されている。これにより、計器盤保護カバー20が閉じているときには、計器盤16やモニタ26が雨や埃、紫外線等の環境に晒されることを防止可能であり、また、計器盤保護カバー20を例えば錠30で施錠することで、モニタ26のいたずらや盗難を防止することが可能である。
【0025】
以上のように、モニタ26を計器盤保護カバー20の計器盤16に臨む面に設置し、計器盤保護カバー20を開いたときに視認可能となり、計器盤保護カバー20を閉じたときに計器盤保護カバー20に覆われるようにモニタ装置を構成するようにした。これにより、転圧機械1を使用する際には、計器盤保護カバー20を開くことで、計器盤16とモニタ26を一度に視認でき、転圧機械1の後方の状況をモニタ26で容易に確認できる。一方、転圧機械1を駐機する際には、計器盤保護カバー20を閉じることで、計器盤16とモニタ26を一度に覆い隠すことができ、モニタ26のいたずらや盗難を好適に防止することができる。
【0026】
また、計器盤保護カバー20の計器盤16に臨む面にモニタ26を設置するので、例えば計器盤16にモニタ26を設置する場合に比べ、既存の構造を変更することなくモニタ26を設置することができる。
【0027】
また、モニタ26は、開いた状態で、計器盤保護カバー20の端面と計器盤16の上端縁部との間に位置されるので、計器盤保護カバー20を開いたときのオペレータ9の可視限界24を狭めることもない。
【0028】
また、モニタ26の表示画面の向きを可変とすることにより、オペレータ9の身長や着席位置に応じてモニタ26の表示画面を見やすい向きに調節することができる。
【0029】
次に、
図4及び
図5を用いて本発明の別実施形態について説明する。
図4を参照すると、2つのモニタ26、27を横並びに設けた場合の概略構成図が示されており、同図に基づき第2実施形態について説明する。なお、上記同様の構成部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0030】
2つのモニタ26、27は、横並びにして、計器盤保護カバー20の計器盤16に臨む面に上述の一つのモニタ26と同様に配設され、それぞれ異なる映像を表示することが可能に構成されている。
【0031】
これにより、上記同様の作用効果を奏しつつ、例えば、転圧機械1の後方以外に死角となる転圧機械1の周辺の他の部分を撮影する監視カメラ(図示せず)を設け、一方のモニタ26にはバックカメラ8からの映像を表示し、他方のモニタ27には上記監視カメラからの他の部分の映像を表示したり、その他の情報を表示することが可能である。
【0032】
図5を参照すると、折りたたみ式モニタ28を設けた場合の概略構成図が示されており、同図に基づき第3実施形態について説明する。
【0033】
折りたたみ式モニタ28は、上側モニタ28a及び下側モニタ28bで構成されている。例えば、下側モニタ28bは、上記モニタ26と同様に計器盤保護カバー20の計器盤16に臨む面に取り付けられる。一方、上側モニタ28aは、蝶番29を介して計器盤保護カバー20の端部に取り付けられており、蝶番29回りに約180°回動可能にして、下側モニタ28bと画面同士が重なるように折りたたむことが可能に構成されている。
【0034】
このような構成の折りたたみ式モニタ28により、上記同様の作用効果を奏しつつ、計器盤保護カバー20を開いたとき、上側モニタ28aを蝶番29回りに回動させて画面を出現させ、上側モニタ28aと下側モニタ28bとでそれぞれ異なる映像を表示することが可能である。例えば、後方可視下限24bより上方を撮影する監視カメラ(図示せず)を設け、下側モニタ28bにはバックカメラ8の映像を表示し、上側モニタ28aには上記監視カメラによる後方可視下限24bより上方の映像を表示することが可能である。これにより、オペレータ9が前方を向いたまま、直感的に後方可視下限24bより上方の映像と、後方可視下限24bより下方の映像とを視認することができる。
【0035】
なお、この場合、オペレータ9の視界を狭めないようにするため、前方可視下限24aより下側に上側モニタ28aの上端が位置するように折りたたみ式モニタ28を配設することが望ましい。
【0036】
以上で本発明に係るモニタ装置の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
【0037】
例えば、バックカメラ8で撮影する範囲は、後方可視下限24bより下の部分にこだわらず、例えば転圧機械の後方全体であってもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、計器盤保護カバー20が開かれ保持された状態では、計器盤保護カバー20の計器盤16に臨む面、ひいてはモニタ26、27や折りたたみ式モニタ28がオペレータ9側を向くように設定されているが、オペレータ9がモニタを視認可能であれば、計器盤保護カバー20の計器盤16に臨む面は必ずしもオペレータ9側を向いていなくてもよい。
【0039】
また、モニタ26、27や折りたたみ式モニタ28に表示する主たる映像は、バックカメラ8からの転圧機械の後方の映像に限られず、転圧機械1の周辺、例えば前方可視下限24aより下の部分を撮影する監視カメラ(図示せず)を設け、当該範囲の映像を主たる映像として表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 転圧機械
4 前輪ローラ
5 後輪ローラ
8 バックカメラ(後方監視カメラ)
9 オペレータ
10 シート
13 ステアリングホイール
16 計器盤
20 計器盤保護カバー
23 視点
24 可視限界
24a 前方可視下限
24b 後方可視下限
26 モニタ
27 モニタ
28 折りたたみ式モニタ
28a 上側モニタ
28b 下側モニタ