(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の質量減弱係数は、X線のエネルギーによって変化するとともに、物質の材質の違いの影響を受ける。ここで、異物の有無を検査するX線検査装置では、被検査物と異物との判別が容易となるように、材質による質量減弱係数の差異が顕著となる低エネルギーのX線を含む透過画像データが好適となる場合がある。
【0007】
一方、低エネルギーのX線を含む透過画像データを用いて被検査物の質量を測定すると、被検査物の材質のばらつきにより実際の質量減弱係数が影響を受け、それによって質量の測定精度が低下することがあった。特に、チョコチップ入りクッキーのように、異なる物質が混じり、且つ、その割合が個体毎に変化するものが被検査物である場合、質量の測定精度が低下していた。
【0008】
本発明は、上記課題を解決し、被検査物に混入した異物の有無を検査するとともに、この被検査物の質量を高精度で測定可能なX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1のX線検査装置は、
搬送中の被検査物にX線を照射するとともに、前記被検査物を透過したX線を検出して検出情報を出力するX線検査部10と、
前記検出情報を用いて、第1のエネルギー領域のX線と前記第1のエネルギー領域のX線よりもエネルギーの高い第2のエネルギー領域のX線とを含む、複数の異なるエネルギー領域のX線の透過画像データをそれぞれ生成する透過画像データ生成部21と、
複数の前記透過画像データのうちの、少なくとも2つの透過画像データの間で差分処理を行ない、この差分処理された透過画像データを用いて前記被検査物に混入した異物の有無を判定する判定部23と、
前記第2のエネルギー領域のX線の透過画像データである第2の透過画像データに基づいて、前記被検査物の質量を測定する質量測定部24と、を備え
、
前記被検査物は複数の元素で構成されており、
前記質量測定部は、前記第2の透過画像データの透過画像における前記被検査物の撮像領域を特定し、前記第2の透過画像データの画素単位の濃度データを前記撮像領域内の全画素で総和し、この総和した値と、前記第2のエネルギー領域のX線に対応し、前記被検査物の質量減弱係数を表す定数とを用いて、前記被検査物の質量を算出することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2のX線検査装置は、請求項1に記載のX線検査装置において、
前記第2のエネルギー領域のX線は、X線のエネルギーが50keV以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項
3のX線検査装置は、請求項1乃至
2に記載のX線検査装置において、
前記X線検査部は、X線発生部11と、前記被検査物を透過したX線の光子が入力される毎に該光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型のX線検出部12とを有し、
前記透過画像データ生成部は、前記パルス信号の波高値が、前記複数の異なるエネルギー領域のいずれに入るかを判定し、パルス信号入力数をエネルギー領域毎に累積した累積結果を用いて、前記複数の異なるエネルギー領域のX 線の透過画像データを生成することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項
4のX線検査装置は、請求項1乃至
2に記載のX線検査装置において、
前記X線検査部は、X線発生部11と、前記被検査物を透過した前記第1のエネルギー領域のX線を検出する第1のX線検出部12aと、前記被検査物を透過した前記第2のエネルギー領域のX線を検出する第2のX線検出部12bと、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項
5のX線検査装置は、請求項1乃至
2に記載のX線検査装置において、
前記X線検査部は、前記第1のエネルギー領域のX線を照射する第1のX 線発生部11aと、前記第2のエネルギー領域のX線を照射する第2のX線発生部11bと、前記被検査物を透過した前記第1のX線発生部からのX線を検出する第1のX線検出部12aと、前記被検査物を透過した前記第2のX線発生部からのX線を検出する第2のX線検出部12bと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、複数の異なるエネルギー領域のX線の透過画像データをそれぞれ生成し、これらの複数の透過画像データの間で差分処理を行ない、この差分処理された透過画像データを用いて被検査物に混入した異物の有無を判定するとともに、生成した複数の透過画像データのうちの、高いエネルギー領域のX線の透過画像データを用いて、被検査物の質量を測定している。このため、材質が均一ではない被検査物であっても、質量減弱係数の影響を低減して、被検査物の質量測定の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用したX線検査装置1の全体構成を示している。
【0018】
このX線検査装置1は、搬送部2、X線検査部10、処理部20、表示部30を有している。
【0019】
搬送部2は、被検査物Zを所定方向(図では矢印Yの方向、以下では搬送方向という)に搬送するためのものであり、一般的には、コンベアのように被検査物Zを一定速度で水平に搬送するものが使用されるが、必ずしも動力源をもつ搬送装置を用いる必要はなく、被検査物の重さを利用して傾斜路を滑走させる方式や、上方から落下させる方式であってもよい。
【0020】
X線検査部10は、X線発生部11、X線検出部12を有している。
【0021】
X線発生部11は、搬送部2によって所定方向に被検査物Zが搬送される搬送路にX線を出射する。この実施形態では、搬送部2によって搬送される被検査物Zの上方からX線を出射するものとするが、X線の出射方向はこれに限らず、被検査物Zの側方から側面方向へ出射してもよいし、下方から上方向へ出射してもよい。
【0022】
X線発生部11のX線源には、例えば、過熱したフィラメントから放出される電子を加速して陽極のターゲットに衝突させてX線を放出させる熱陰極X線管や、格子制御型熱陰極X線管が用いられる。
【0023】
X線検出部12は、X線を受けて電気信号に変換する複数のセンサを有しており、これにより、X線を検出し、その検出情報を電気信号として出力する機能を備えている。これらの複数のセンサは、X線発生部11から出射されて被検査物Zを透過したX線を受ける位置で、被検査物Zの搬送方向と直交する方向(搬送路の幅方向)に隙間がほとんど無い状態で一列に並んでいる。
【0024】
実際には、X線検出部12は、複数のセンサが一体的に連結された一本のラインセンサで構成され、搬送部2の搬送路の下面側に配置されている。ここで、例えばセンサの幅を1mm、センサ同士の隙間を幅に対して無視できる程小さいとし、被検査物Zを搬送する搬送路の幅を200mmとすれば、概略200個のセンサを有するラインセンサを用いればよい。
【0025】
なお、X線検出部12は、複数の異なるエネルギー領域のX線に対し、この複数のエネルギー領域のそれぞれで検出情報を出力可能となっている。この構成の詳細については、後述する。
【0026】
処理部20は、透過画像データ生成部21、透過画像データ記憶部22、判定部23、質量測定部24を有している。処理部20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、CPUで実行されるプログラムとの組合せで実現されている。または、処理部20は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やDSP(Digital Signal Processor)等のハードウェアで実現される構成であってもよい。
【0027】
透過画像データ生成部21は、X線発生部11とX線検出部12の間を被検査物Zが通過している間にX線検出部12の複数のセンサからそれぞれ出力される電気信号(検出情報)をスキャン時間ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物Zの搬送方向とセンサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、その位置毎の信号処理結果からなる被検査物Zの透過画像データを生成する。
【0028】
また、X線検出部12が複数のエネルギー領域のそれぞれで検出情報を出力するのに対応して、透過画像データ生成部21は、複数のエネルギー領域のそれぞれに対応した被検査物Zの透過画像データを生成する。
【0029】
具体的には、X線検出部12が、あるエネルギー領域(第1のエネルギー領域)における検出情報を出力し、透過画像データ生成手段21は、この検出情報に基づいて透過画像データ(第1の透過画像データ:
図1のA)を生成する。この第1のエネルギー領域は、例えば、X線のエネルギーが20keV〜40keVのエネルギー領域である。また、X線検出部12が、第1のエネルギー領域と異なるエネルギー領域(第2のエネルギー領域)における検出情報を出力し、透過画像データ生成手段21は、この検出情報に基づいて透過画像データ(第2の透過画像データ:
図1のB)を生成する。この第2のエネルギー領域は、例えば、X線のエネルギーが50keV〜70keVのエネルギー領域である。
【0030】
即ち、X線のエネルギーについて、「第1のエネルギー領域」<「第2のエネルギー領域」の大小関係となっている。なお、上述した例では、第1のエネルギー領域を20keV〜40keVとし、第2のエネルギー領域を50keV〜70keVとして、これら2つのエネルギー領域が離間した状態で説明したが、それに限定されるものではない。これら2つのエネルギー領域の関係は、離間、隣接、一部重複のいずれでもよく、それぞれのエネルギー領域の中央値が上記の大小関係を満たしていればよい。また、エネルギー領域の数は2つに限定されるものでは無く、中央値が異なる3以上のエネルギー領域でもよい。
【0031】
透過画像データ記憶部22は、透過画像データ生成部21が複数のエネルギー領域のそれぞれに対応して生成した透過画像データを記憶する。
【0032】
判定部23は、透過画像データ記憶部22に記憶された複数の透過画像データのうち、少なくとも2つの透過画像データを受け、これらの透過画像データの間で差分処理(エナジーサブトラクション処理)を行う。この差分処理の結果に基づいて、被検査物Z内の異物の有無を判定する。この差分処理により、異物が強調された透過画像データが得られるので、判定の精度を向上させることができる。この判定結果(異物の有無を示す信号)は、図示しない後続の選別装置に送られ、異物有りと判定された被検査物Zが、良品の経路から排除される。
【0033】
質量測定部24は、透過画像データ記憶部22に記憶された透過画像データを受け、この透過画像データに所定の演算を行うことにより、被検査物Zの質量を測定する。ここで、 質量測定部24が透過画像データ記憶部22から受ける透過画像データは、複数のエネルギー領域のそれぞれに対応して生成された透過画像データのうち、前述した第2のエネルギー領域に対応した透過画像データ(第2の透過画像データ)である。質量測定部24の詳細については、後述する。
【0034】
表示部30は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等の表示機器で構成されている。表示部30は、判定部23からの判定結果、質量測定部からの測定結果、透過画像データ記憶部22または判定部23からの透過画像データを受け、これらの情報を検査者が
視認容易な表示形式で表示する。
【0035】
ここで、X線と被測定物Wの相互作用について説明する。X線が被検査物Zを透過すると、被検査物Zとの相互作用(吸収や散乱など)により減弱される。この減弱の割合は線減弱係数μで示され、線減弱係数μを被検査物Zの密度ρで除した結果を質量減弱係数μ
mと呼ぶ。質量減弱係数μ
mの単位は、[cm
2/g]または[pixel/g](画像処理のために画素(ピクセル)を基準とする場合)である。
【0036】
図2は、異なる元素毎に、X線エネルギーと質量減弱係数μ
mの関係を示したグラフである。このグラフに示すように、X線エネルギーが低いと、元素による質量減弱係数μ
mの差が大きくなる。一方、X線エネルギーが高くなるにつれて、元素による質量減弱係数μ
mの差が小さくなり、X線エネルギーが概ね50keV以上になると、元素による質量減弱係数μ
mの差が無視できるほど小さくなる。これは、X線エネルギーが高くなるにつれて、前述した相互作用のうちのコンプトン散乱が支配的となり、元素による差異が小さくなるためである。
【0037】
次に、質量測定部24による質量測定について説明する。透過画像上の任意の画素の位置を(i,j)で表すとき、この画素において、被検査物Zに入射するX線の光子数をI
0(i,j) 、透過後の光子数をI(i,j)、被検査物Zの質量をx(i,j)とすれば、光子数の関係は数式[数1]で表される。
【0039】
[数1]を変形することにより、画素単位の質量x(i,j)を求める数式[数2]が得られる。ここで、[数2]中のlog(I
0(i,j)/ I(i,j))は、透過画像データにおける濃度データに対応する。
【0041】
従って、透過画像における被検査物Zの撮像領域をTとするとき、被検査物Zの総質量Wは、画素単位の質量x(i,j)を撮像領域Tにおける全画素で総和したものとなり、数式[数3]で表される。
【0043】
ところで、被検査物Zが複数の材質(元素)で構成されている場合、質量減弱係数μ
mは、ある元素の質量減弱係数μ
mとその元素の含有割合との積を、全ての含有元素について総和した値となる。線減弱係数をμ、元素の密度をρ、元素の種類をk、元素kの含有
割有をw
kとしたとき、質量減弱係数μ
mは数式[数4]で表される。
【0045】
ここで、[数4]中の(μ/ ρ)
kは、X線のエネルギーが十分に高ければ、数式[数5]に示すように近似できる。ここで、τは光電効果による減弱係数、σ
cはコンプトン効果による散乱係数、σ
Tはトムソン散乱による散乱係数、κは電子対生成による減弱係数である。X線エネルギーが高くなるにつれ、σ
cに比べて、τおよびσ
Tは早く減少する。また、電子対生成は1.02MeV以下では起こらないため、κは無視できる。このように、X線エネルギーが高くなるとコンプトン散乱が支配的となり、元素の種類kを無視できるようになるため、[数5]の近似式を用いることができる。
【0047】
従って、質量減弱係数μ
mは、数式[数6]に示すように、定数Cで表すことができる。
【0049】
定数Cの逆数をC’とすると、[数3]を変形することにより、被検査物Zの総質量Wは、数式[数7]のように表すことができる。前述したように、log(I
0(i,j)/
I(i,j))は、透過画像データにおける濃度データに対応する。これにより、被検査物Zの総質量Wは、画素単位の濃度データを撮像領域Tにおける全画素で総和したものと、定数C’との積ということができる。別な観点からは、画素単位の濃度データを撮像領域Tにおける全画素で総和したものは、被検査物Zの質量を相対的に示す相対質量であり、定数C’は、相対質量を実際の質量に換算する換算値ということもできる。
【0051】
すなわち、質量測定部24は、[数7]に従い、以下に説明する演算を行うことにより、被検査物Zの総質量Wを測定している。まず、質量測定部24は、第2のエネルギー領
域に対応した透過画像データ(第2の透過画像データ)を透過画像データ記憶部22から受け、この透過画像における被検査物Zの撮像領域Tを特定する。そして、この透過画像データの画素単位の濃度データを撮像領域Tにおける全画素で総和する。そして、質量測定部24は、この総和した値と、第2のエネルギー領域のX線に対応した質量減弱係数μ
mの逆数である定数C’の値との積をとることにより、被検査物Zの総質量Wを算出する。
【0052】
定数C’は、質量測定部24に予め記憶しておく。また、異なるエネルギー領域のそれぞれに対応した複数の定数C’を記憶しておき、透過画像データ記憶部22から受けた透過画像データに対応した定数C’を質量測定部24が選択して用いるようにしてもよい。このように、質量測定部24は、簡易な演算を行う構成でありながら、被検査物Zの総質量Wを高い精度で測定可能となっている。
【0053】
次に、X線検査部10の構成の詳細について説明する。
図3は、X線検出部12のセンサとして光子検出型センサを用いた場合のX線検査部10、および、光子検出型センサに対応した透過画像データ生成部21の例を示している。この透過画像データ生成部21は、A/D変換部41
1〜41
N、波高値検出部42
1〜42
N、領域判定部43
1〜43
N、領域別累積部44
1〜44
N、透過画像データ出力部45を有している。なお、
図3は、搬送部2とX線検査部10を、
図1の矢印Yの方向から見た図となっている。
【0054】
X線検出部12は、被検査物Zを透過したX線の光子が入力される毎に、その光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を検出情報として出力する光子検出型のセンサ13
1〜13
Nを搬送幅方向にN個並べたラインセンサを用いて構成され、各センサが単位時間当りに出力するパルス数が透過画像の濃度を表すことになる。
【0055】
センサ13
1〜13
Nは、一つの光子の入力に対して、その光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を一つ出力する。X線発生部11は、エネルギーの異なるX線の光子が混在しているX線を出射するため、
図4に示すように、各センサから出力されるパルス信号P
1、P
2、P
3、…の波高値H
1、H
2、H
3、…にばらつきが生じる。
【0056】
スキャン時間内に一つのセンサから出力されるパルス信号の波高値H
1、H
2、H
3、…が、予め波高値の出力範囲全体を複数M(
図4ではM=4)に区分けした領域R
1〜R
Mのいずれに入るかを判定し、そのスキャン時間内のパルス信号入力数を領域毎に累積すれば、そのスキャン時間に対応する部位についてX線透過エネルギーの範囲が異なる複数の透過画像データを生成することができる。
【0057】
上記X線透過エネルギーの範囲が異なる複数の透過画像データを生成するために、透過画像データ生成部21は、各センサ13
1〜13
Nの出力信号を、それぞれA/D変換部41
1〜41
Nによってデジタルのデータ列に変換し、波高値検出部42
1〜42
Nに入力する。
【0058】
各波高値検出部42
1〜42
Nは、入力されるデータ列からパルス信号の波高値を検出するためのものであり、例えば、入力されるデータ列に対して微分処理を行い、微分値(信号の傾き)が所定以上の正の値から所定以下の負の値に切り換わるときのゼロクロスタイミングを検出し、そのゼロクロスタイミングにおけるデータ値をパルス信号の波高値として検出し、それぞれ領域判定部43
1〜43
Nに出力する。
【0059】
領域判定部43
1〜43
Nは、前記した波高値の出力範囲を複数Mの領域R
1〜R
Mに区分けする境界値領域L
1〜L
M−1と、波高値検出部42
1〜42
Nで検出された波高値とを比較し、その波高値がいずれの領域に入るかを判定し、波高値が入る領域を表す領
域識別信号を領域別累積部44
1〜44
Nに出力する。
【0060】
各領域別累積部44
1〜44
Nは、スキャン時間内に領域判定部43
1〜43
Nからそれぞれ出力される領域識別信号を受け、同一領域を示す領域識別信号の入力数をそれぞれ累積して、スキャン時間内における領域毎の累積数を求めて順次出力する。この領域識別信号の累積数は、スキャン時間内に1つのセンサから出力されるパルス信号のうち、その波高値が入る領域が同じパルス信号同士の累積数である。
【0061】
透過画像データ出力部45は、各領域別累積部44
1〜44
Nからスキャン時間毎に出力される領域識別信号の累積数を、並列的に且つ時系列に配列されたデータにし、このデータを領域ごとの被検査物に対する透過画像データとして出力する。
【0062】
なお、上記の波高値の領域の区分けの仕方は任意であり、一つの例としては、X線発生部11から出射されるX線の光子のエネルギーの最大値(X線管の場合、電子の加速電圧に依存する理論値)に対してセンサが出力するパルス信号の波高値と、所定の基準値(例えば0)との間の複数に等分すればよい。また、領域数も2つ以上で任意であり、最初に多くの領域で透過画像データを生成しておき、それらの透過画像データの中から異物検出や質量測定にそれぞれ適した透過画像データを選択して使用するようにしてもよい。
【0063】
具体的には、例えば、初期の領域数を10として、それぞれの領域で透過画像データを生成しておき、エネルギーの高い方から数えて1番目の領域を前述の領域R
1に割当て、3番目の領域を前述の領域R
2に割当て、…というように、初期の領域から最終的な領域に選択的に割り当てて、この割り当てられた領域の透過画像データを使用してもよい。また、エネルギーの高い方から数えて1番目と2番目の領域の透過画像データを合成して、これを前述の領域R
1の透過画像データとし、3番目と4番目の領域の透過画像データを合成して、これを前述の領域R
2の透過画像データとし、…というように初期の複数の領域の透過画像データを合成して最終的な1つの領域の透過画像データとし、その合成された透過画像データを使用してもよい。
【0064】
上記具体例では、初期の領域の数だけ透過画像データを生成しておき、異物の検出に最適な透過画像データの組合せに応じて、領域の割当てや透過画像データの合成を行なうようにしているが、被検査物に対して異物検出や質量測定に最適な透過画像データの組合せが既知の場合には、割当てられる領域についての透過画像データのみを生成すればよく、また、複数の透過画像データを合成する代わりに、複数の領域の領域識別信号の累積数を加算して、一つの透過画像データを生成してもよい。これにより、透過画像データ記憶部22の記憶領域を節約することができる。
【0065】
上記の領域R
1〜R
Mは、それぞれ異なるX線のエネルギー領域ということができる。すなわち、光子検出型センサを用いることにより、前述した第1の透過画像データと第2の透過画像データとを含む、複数の異なるエネルギー領域のX線の透過画像データが得られる。例えば、上記の領域R
4の透過画像データを第1の透過画像データとし、領域R
4よりもX線のエネルギーの高い領域R
2の透過画像データを第2の透過画像データとして、判定部23や質量測定部24は処理を行う。
【0066】
このように、光子検出型センサとそれに対応した透過画像データ生成部とを用いた構成では、所望のエネルギー領域のX線の透過画像データを取得することが容易にできる。すなわち、異物検出に適したエネルギー領域のX線の透過画像データや質量測定に適したエネルギー領域のX線の透過画像データをそれぞれ取得できるので、異物検出と質量測定の両方の機能を有するX線検査装置に好適である。
【0067】
X線検査部10は、前述の構成に限定されるものではない。
図5は、別の構成のX線検査部10の例を示している。
図5のX線検査部10は、X線発生部11、2つのX線検出部12a、12bを有している。
図5と
図1とにおいて、X線発生部11は、同様の構成である。
【0068】
X線検出部12a、12bは、入射したX線により可視光を発生し、この発生した可視光をフォトセンサで受けて電気信号に変換するシンチレータ型フォトセンサを用いて構成されている。また、X線検出部12a、12bは、一方が第1のエネルギー領域における検出情報を出力し、他方が第2のエネルギー領域における検出情報を出力するようになっている。このX線検出部12a、12bの特性の差異は、異なる特性のセンサを用いたり、異なる特性のX線フィルタを用いたりすることにより実現できる。なお、
図5においてX線検出部12a、12bは並べて配置されているが、これに限らず、重ね配置であってもよいし、TDI(Time Delay Integration)型検出器のようにセンサを2次元に配置した検出器において、所定の画素毎に交互に並べて配置するものであってもよい。
【0069】
そして、透過画像データ生成手段21は、X線検出部12a、12bからの検出情報を個別に受け、第1の透過画像データと第2の透過画像データとをそれぞれ生成する。この例では、X線検出部12a、12bはシンチレータ型フォトセンサであるので、前述した光子検出型センサを用いた例とは透過画像データ生成手段21の構成が異なる。この例の透過画像データ生成手段21は、検出情報をスキャン時間で積分した値を各画素の濃度データとする透過画像データを生成する。
【0070】
図6は、さらに別の構成のX線検査部10の例を示している。
図6のX線検査部10は、2つのX線発生部11a、11b、2つのX線検出部12a、12bを有している。
【0071】
X線発生部11a、11bは、一方が第1のエネルギー領域のX線を出射し、他方が第2のエネルギー領域のX線を出射するようになっている。X線検出部12a、12bはシンチレータ型フォトセンサを用いて構成されており、X線検出部12aは、X線発生部11aからのX線を受けて検出情報を出力し、X線検出部12bは、X線発生部11bからのX線を受けて検出情報を出力するようになっている。その結果、X線検出部12a、12bは、一方が第1のエネルギー領域における検出情報を出力し、他方が第2のエネルギー領域における検出情報を出力するようになっている。
【0072】
この例では、X線発生部11a、11bが異なるエネルギー領域のX線を出射するようになっているので、X線検出部12a、12bは同一の特性とすることができる。そして、透過画像データ生成手段21は、X線検出部12a、12bからの検出情報を個別に受け、第1の透過画像データと第2の透過画像データとをそれぞれ生成する。