特許第6663379号(P6663379)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663379
(24)【登録日】2020年2月18日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20200227BHJP
   F16L 19/025 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   E02F9/00 B
   F16L19/025
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-53404(P2017-53404)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-155039(P2018-155039A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田 恭弘
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−106580(JP,A)
【文献】 特開2000−088165(JP,A)
【文献】 特開2009−047213(JP,A)
【文献】 特開平05−231581(JP,A)
【文献】 特開2014−152833(JP,A)
【文献】 米国特許第04696326(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F16L 19/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、ブーム及びアームを有し、前記上部旋回体に搭載される作業機と、前記作業機に具備された複数の管路とを備える建設機械であって、
前記複数の管路それぞれは、互いに接続可能な継手が端部に取付けられた配管同士の誤接続防止機能を備えた配管接続構造を有し
前記配管接続構造は、一方の配管の前記継手とは隔たった箇所と他方の配管の前記継手とは隔たった箇所とにそれぞれ取付け固定される一対のクランプ継手と、対向する端面が突き合わされて嵌合する形状を持つと共に、当該対向する端面と反対側の離間する端面近傍が前記一対のクランプ継手の所定箇所にそれぞれ取付け固定される一対の識別プレートと、を備え、
前記一対の識別プレートにおける前記嵌合する形状は、前記管路毎に異なるパターンとされたことを特徴とする建設機械
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記一対の識別プレートにおける前記嵌合する形状は、少なくとも1以上の凸部と当該凸部の相手側の嵌合部となる1以上の凹部とであることを特徴とする建設機械
【請求項3】
請求項1記載の建設機械において、
前記一対のクランプ継手は、前記配管の径方向での寸法が異なり、
前記一対の識別プレートにおける前記一対のクランプ継手の前記配管の径方向での寸法が小さい側のクランプ継手に取付けられる識別プレートは、スペーサを介在させて当該一対のクランプ継手の当該寸法の大きい側のクランプ継手に取付けられた相手側の識別プレートに対して同一面となるように位置調節されて当該配管の径方向での寸法が小さい側のクランプ継手に取付け固定されることを特徴とする建設機械
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤接続防止機能を備えた配管接続構造及びそれを適用した建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧や空圧を動力として作動する機械では、動力源であるポンプや圧縮機、制御用のバルブ類、各種アクチュエータがパイプやホースで構成される配管によって接続されている。これらの配管は、機械の配置や組立上の都合等から管路の途中で分離できるように配管継手(クランプ)を用いてパイプ同士、ホース同士、或いはパイプとホースとを接続して中継箇所を設けている。
【0003】
ところで、こうした配管の中継箇所では、同一種類の配管継手が隣接している場合、組立時に誤って異なる組み合わせで接続してしまう可能性もある。異なる組み合わせで接続すると、機械の誤動作による事故、油圧機や空圧機の破損等を起こす可能性があるため、誤接続を防止する対策が求められている。特に建設機械の散水機に具備される配管の接続構造については様々な工夫が施されている。
【0004】
このような配管の誤接続対策に関連する周知技術として、組付け後の油圧ホースの誤組のチェックを容易にし、種類の異なる油圧ホースの接続ミスによる災害を未然に防止する「建設機械の油圧ホース誤組防止装置」(特許文献1参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−106580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載の技術では、複数種類の油圧ホースが種類毎に各種油圧機器等のホース接続部に接続して組付けられる際、油圧ホースの種別を識別するための識別テープを各油圧ホースの接続端近傍に複数貼り付けている。
【0007】
ところが、識別テープを各油圧ホースに貼り付ける手法では、識別テープの汚れや色褪せ、印刷の薄れ等の劣化を生じると識別が困難になってしまうという課題がある。その他、プラグとソケットとを接続するタイプの継手では、溝と突起とで構成される識別部を設ける手法も知られている。この場合には配管の本数分だけ異なる形状の継手を使用する必要があるため、配管部品の汎用性や互換性の面で課題が残る。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、劣化により識別困難にならず、しかも配管部品の汎用性や互換性が高い配管接続構造及びそれを適用した建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、ブーム及びアームを有し、前記上部旋回体に搭載される作業機と、前記作業機に具備された複数の管路とを備える建設機械であって、前記複数の管路それぞれは、互いに接続可能な継手が端部に取付けられた配管同士の誤接続防止機能を備えた配管接続構造を有し前記配管接続構造は、一方の配管の前記継手とは隔たった箇所と他方の配管の前記継手とは隔たった箇所とにそれぞれ取付け固定される一対のクランプ継手と、対向する端面が突き合わされて嵌合する形状を持つと共に、当該対向する端面と反対側の離間する端面近傍が前記一対のクランプ継手の所定箇所にそれぞれ取付け固定される一対の識別プレートと、を備え、前記一対の識別プレートにおける前記嵌合する形状は、前記管路毎に異なるパターンとされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、劣化により識別困難にならず、しかも配管部品の汎用性や互換性が高い配管接続構造を提供できる。それ以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る配管接続構造が適用される建設機械の一例である解体機の外観構成を示す図である。
図2図1に示す解体機に備えられる配管の上面方向から一部破断して拡大して示した図である。
図3】本発明の実施形態に係る配管接続構造の概略構成を組み付前状態で示した図であり、(a)は上面方向から一部破断にして示した図、(b)は左側面方向での断面図、(c)は側面方向から一部破断にして内部構造を露呈して示した図である。
図4図3に示す配管接続構造に使用される識別プレートの変形例を上面方向から示した図であり、(a)は図3(a)に示す形状の図、(b)は変形した形状の一例の図、(c)は変形した形状の他例の図である。
図5図3に示す配管接続構造の概略構成を組み付後状態で示した図であり、(a)は上面方向から一部破断にして示した図、(b)は側面方向から一部破断にして示した図、(c)は側面方向から一部破断にして内部構造を露呈して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の配管接続構造及びそれを適用した建設機械の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る配管接続構造が適用される建設機械の一例である解体機15の外観構成を示す図である。
【0014】
図1を参照すれば、解体機15は、クローラ式の下部走行体11に運転室、操縦装置、表示装置、コントローラ、エンジン、各種の配管(管路)14、作業機13等を備えた上部旋回体12を旋回可能に搭載して構成される。作業機13は、ブーム、アーム、固定側バケット、可動側バケット、これらのバケットをアームに対して回転可能に支持するための回転基台、固定側バケットを駆動するためのバケットシリンダ、少なくとも散水用を含む各種の配管14等を備えて構成される。このような解体機15は、旋回式建設機械、或いは油圧ショベルとも呼ばれる。尚、解体機15の構成自体は公知であるため、ここでの説明は省略する。
【0015】
図2は、上述した解体機15に備えられる配管14の上面方向から一部破断して拡大して示した図である。
【0016】
図2を参照すれば、作業機13の要部には配管14が各種別に複数具備されており、本発明の配管接続構造はそれらの配管14の接続箇所への採用が好適なものである。特に作業機13のブームの腕の長さを調整する際には油圧ホースの着脱が頻繁に行われるため、接続相手先の配管を適確に識別できることが望まれる。
【0017】
図3は、本発明の実施形態に係る配管接続構造の概略構成を組み付前状態で示した図である。図3(a)は上面方向から一部破断にして示した図である。図3(b)は左側面方向での断面図である。図3(c)は側面方向から一部破断にして内部構造を露呈して示した図である。
【0018】
図3(a)、図3(b)、図3(c)を参照すれば、この配管接続構造は、互いに接続可能な雄型タイプの継手3aが端部に取付けられた配管14の一例であるパイプ1と、雌型タイプの継手3bが端部に取付けられた配管14の他例であるホース2との接続に際して、誤接続防止機能が備えられている。
【0019】
具体的に云えば、この誤接続防止機能は、パイプ1の継手3aから隔たった箇所とホース2の継手3bから隔たった箇所とにそれぞれ取付け固定されるリング状の一対のクランプ継手5a、5bを一部材とする。その他、対向する端面が突き合わされて嵌合する形状を持つと共に、その対向する端面と反対側の離間する端面近傍が一対のクランプ継手5a、5bの所定箇所にそれぞれ取付け固定される略長方形状の一対の識別プレート4a、4bを他部材とする。
【0020】
一対のクランプ継手5a、5bは何れも一対の半円殻状部材を蝶番で結合した開閉可能な構造である。一対のクランプ継手5a、5bを開けた状態でパイプ1、ホース2の外周面に被せて蝶番の反対側の鍔部に設けられたネジ穴にネジ10を挿入することで、一対のクランプ継手5a、5bはパイプ1、ホース2の外周面にそれぞれ取付け固定される。一対の識別プレート4a、4bは、対向する端面が識別プレート4aでは凸部6となっており、識別プレート4bでは凹部7となっている。一対の識別プレート4a、4bの対向する端面と反対側の離間する端面近傍に設けられた2箇所のネジ穴にネジ9を挿入することで、一対の識別プレート4a,4bは、一対のクランプ継手5a、5bにそれぞれ取付け固定される。
【0021】
ところで、図3(a)、図3(c)に示されるように、クランプ継手5aのパイプ1の口径方向における寸法はクランプ継手5bのホース2の口径方向における寸法よりも小さくなっている。そこで、そのまま識別プレート4aをクランプ継手5aに取付けると、クランプ継手5bに取付けた識別プレート4bとの間で段差を生じてしまい、嵌合状態に支障を来す虞がある。そこで、識別プレート4aについては、図3(b)、図3(c)に示されるようにクランプ継手5aのパイプ1の径方向でスペーサ8を介在させてクランプ継手5bに取付けられた相手側の識別プレート4bに対して同一面となるように位置調節する。こうした上で、パイプ1の外周面に対して取付けられたクランプ継手5aに対してネジ9を締結して識別プレート4aの取付け固定を行う。
【0022】
図4は、上述した配管接続構造に使用される識別プレート4a、4bの変形例を上面方向から示した図であり、同図(a)は図3(a)に示す形状の図、同図(b)は変形した形状の一例の図、同図(c)は変形した形状の他例の図である。
【0023】
図4(a)を参照すれば、一対の識別プレート4a、4bは外観が何れも略長方形状のステンレスや鋼鉄等による金属製板であり、それらの短辺における対向する端面と反対側の離間する端面近傍にネジ9を締結するためのネジ穴が2箇所設けられている。短辺における対向する端面について、識別プレート4aでは中央部分の一箇所に凸部6が設けられ、識別プレート4bでは中央部分の一箇所に凹部7が設けられている。
【0024】
また、図4(b)を参照すれば、変形した形状の一例である一対の識別プレート4a′、4b′も外観や材質は一対の識別プレート4a、4bの場合とほぼ同様となっている。また、それらの短辺における対向する端面と反対側の離間する端面近傍にネジ9を締結するための孔が2箇所設けられている点も同様である。但し、短辺における対向する端面について、識別プレート4a′では上方箇所の一箇所に凸部6′が設けられ、識別プレート4b′では上方箇所の一箇所に凹部7′が設けられている点が相違している。
【0025】
更に、図4(c)を参照すれば、変形した形状の他例である一対の識別プレート4a″、4b″も外観や材質は一対の識別プレート4a、4bの場合とほぼ同様となっている。また、それらの短辺における対向する端面と反対側の離間する端面近傍にネジ9を締結するための孔が2箇所設けられている点も同様である。但し、短辺における対向する端面について、識別プレート4a″では上方箇所と下方箇所との二箇所に凸部6a、6bが設けられ、識別プレート4b″では上方箇所と下方箇所との二箇所に凹部7a、7bが設けられている点が相違している。
【0026】
上述した識別プレート4aに対する識別プレート4b、識別プレート4a′に対する識別プレート4b′、識別プレート4a″に対する識別プレート4b″のように嵌合される形状を配管接続種別(管路)毎に異なるパターンにした上で取付ければ良い。こうした場合、嵌合相手が違えば接続することができないため、誤接続を適確に防止することができる。因みに、嵌合される形状は、上述した凸部6、6′、6a、6bや凹部7、7′、7a、7b以外の形状、例えば半円形状や三角形状の凸部、半円形状や三角形状の凹部にしても構わない。何れにしても図4(a)、図4(b)、図4(c)を参照して説明したように配管接続種別毎に嵌合される形状が異なるパターンとされていれば良い。
【0027】
図5は、図3に示す配管接続構造の概略構成を組付け後状態で示した図である。図5(a)は上面方向から一部破断にして示した図である。図5(b)は側面方向から一部破断にして示した図である。図5(c)は側面方向から一部破断にして内部構造を露呈して示した図である。
【0028】
図5(a)、図5(b)、図5(c)を参照すれば、この配管接続構造の組み付後状態では、雄型タイプの継手3aの先端が雌型タイプの継手3bに挿入されて組付けられる。このときに同時に識別プレート4aの凸部6が識別プレート4bの凹部7に嵌合される。この配管接続構造では、クランプ継手5aにスペーサ8を介在して取付けられた識別プレート4aとクランプ継手5bに取付けられた識別プレート4bとがパイプ1の継手3aとホース2の継手3bとの接続を行う際の補強部材にもなる。また、識別プレート4aの凸部6が識別プレート4bの凹部7に嵌合された状態からホース2の接続状態(緩み)を確認することができる。例えば、凸部6と凹部7とが隙間を有して嵌合しているような場合、配管の接続状態に不具合があることを目視確認により容易に発見できる。
【0029】
上記した実施形態では配管同士の接続として、主にパイプ1とホース2との接続を行う場合を例示したが、パイプ1同士を接続したり、或いはホース2同士を接続する場合でも適用できる。例えばパイプ1同士の接続には図4(b)に示した識別プレート4a′に対する識別プレート4b′を適用させ、ホース2同士の接続には図4(c)に示した、識別プレート4a″に対する識別プレート4b″を適用させる場合を例示できる。何れにしても、本実施形態に係る配管接続構造を配管同士の接続に適用すれば、補強部材としての機能が接続を機械的に安定させ、嵌合される形状が崩れ難いために劣化により識別困難にならない。しかも配管部品の汎用性や互換性が高い(損われない)という長所を奏する。
【0030】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能であるが、これらは添付した特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。また、上記した実施形態では、金属製の識別プレートを例示したが、識別プレートの材質は金属製以外にも、例えば硬質のプラスティック等も本発明において適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 パイプ
2 ホース
3a、3b 継手
4a、4a′、4a″、4b、4b′、4b″ 識別プレート
5a、5b クランプ継手
6、6′、6a、6b 凸部
7、7′、7a、7b 凹部
8〜10 ネジ
11 下部走行体
12 上部旋回体
13 作業機
14 配管(管路)
15 解体機
図1
図2
図3
図4
図5